JPH06212348A - 被削性に優れた機械構造用鋼 - Google Patents

被削性に優れた機械構造用鋼

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JPH06212348A JP16752292A JP16752292A JPH06212348A JP H06212348 A JPH06212348 A JP H06212348A JP 16752292 A JP16752292 A JP 16752292A JP 16752292 A JP16752292 A JP 16752292A JP H06212348 A JPH06212348 A JP H06212348A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 Pbを用いることなしに、従来のPb複合添加快
削鋼と同程度以上の優れた被削性を、焼入れ処理を施す
必要なしに得ること。 【構成】C:0.10〜1.50%、 Si:0.5 〜2.0 %、Mn:
0.1 〜2.0 %、 P:0.030 %以下、S:0.25%以下、
B:0.0003〜0.0150%、Al:0.01〜0.5 %、 N:
0.0070超〜0.0150%、O:0.0030%以下を含有し、残部
はFeおよび不可避不純物の組成になり、しかも金属組織
が主としてフェライトおよび黒鉛相からなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、産業機械および自動
車部品等の素材として用いられる機械構造用炭素鋼に関
し、とくにそれの被削性の向上を意図した鋼である。
【0002】
【従来の技術】機械構造用炭素鋼の中で、とくに被削性
が要求される鋼材については、従来、Pb, Te, Bi, Pお
よびS等を添加させて、その被削性の向上が図られてき
た。とくに、Pbはその添加によって鋼材の機械的性質が
劣化しないだけでなく、TeやBi等に比較して経済的なこ
とから、快削性元素として多用されている。しかし、Pb
は人体に極めて有害であることから、鋼材の製造工程の
みならず、それを用いた機械部品の製造工程において、
大がかりな排気設備を必要とし、また鋼材のリサイクル
の上からも問題があった。このため従来から、Pbを添加
せずに、Pb添加鋼と同等程度の被削性を有する鋼材の開
発が望まれていた。
【0003】上記の要請に応えるものとして、例えば特
開昭49-67816号、特開昭49−103817号および特開昭50-9
6416号各公報では、鋼中のCを黒鉛として存在させ、こ
の黒鉛の切欠潤滑効果を利用することによって、Pbを用
いることなしに被削性を改善する方法が開示されてい
る。しかしこれらの方法はいずれも、鋼中のCを黒鉛化
する必要上、その前処理として焼入れが不可欠であり、
必ずしも経済的な方法とは言えなかった。また、Pb添加
快削性鋼においては、Pbの他に、SやS−P等を複合添
加することによって被削性の向上を図っているが、上記
の方法ではS量が低いため、Pb複合添加快削鋼と同等程
度の被削性を得ることは困難であった。
【0004】一方、特開平2−111842号公報には、圧延
ままで焼入れを必要とせず、黒鉛化処理のみによって黒
鉛化を可能ならしめる方法が開示されている。しかし、
この方法はその対象が薄板であり、S量の含有を極力低
減しているために、やはりPb複合添加快削鋼と同等の被
削性を得ることはできなかった。しかも、熱間圧延のま
まで黒鉛化を行うことが可能であるとはいえ、依然とし
て黒鉛化に長時間を要するところにも問題を残してい
た。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、Pbを用いる
ことなしに従来のPb複合添加快削鋼と同等またはそれ以
上の被削性を有し、また、黒鉛化処理も容易にでき、し
かも、切削加工後の強度確保も容易な機械構造用鋼を提
案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上述
した問題を解決すべく鋭意検討を行った結果、AlとBと
Nの複合添加が、所期した目的の達成に関し、極めて有
効であることの知見を得た。すなわち、AlとBとNを複
合添加すれば、熱間圧延後に焼入れを必要とせず、黒鉛
化処理のみで効率良く黒鉛化が促進されること、また従
来、黒鉛化を遅らせる成分とされていたSを多量に添加
しても黒鉛化速度には影響せず、従って、効果的に被削
性を高め得ること、さらには切削加工後の強度も良好に
なることの知見を得たのである。本発明は、上記の知見
に立脚するものである。
【0007】すなわち本発明の要旨構成は次のとおりで
ある。 (1) C:0.10〜1.50wt%(以下は単に「%」で示す)、
Si:0.5 〜2.0 %、 Mn:0.1 〜2.0 %、P:0.
030 %以下、 S:0.25%以下、B:0.0003〜0.
0150%、 Al:0.01〜0.5 %、N:0.0070超〜0.0150
%、 O:0.0030%以下を含有し、残部はFeおよび不可
避不純物の組成になり、しかも金属組織が主としてフェ
ライトおよび黒鉛相からなる被削性に優れた機械構造用
鋼。 (2) 第1発明において、さらに Ni:0.1 〜3.0 %、 Cu:0.1 〜3.0 % Cr:0.05〜1.0 %、 Mo:0.05〜0.5 % のうちから選んだ一種または二種以上を含有させた被削
性に優れた機械構造用鋼。
【0008】
【作用】本発明に従い、Al,BおよびNを複合添加する
ことによって、前処理としての焼入れを必要とせず黒鉛
化処理のみで、黒鉛化が迅速に進行させることができ
る。 この理由については、まだ明確に解明されたわけ
ではないが、次のとおりと考えられる。すなわち、一般
にセメンタイトの黒鉛化は、セメンタイトの分解、フェ
ライト中のC原子の拡散、黒鉛の結晶化およびFe原子の
拡散の過程からなることが知られているが、Sがフェラ
イト中に固溶した場合には、C原子の拡散速度が遅くな
ることが予測される。この点、Al,B,Nを同時添加し
た場合には、黒鉛の結晶化の核となるBNが多数形成さ
れることから、Cのフェライト中における拡散速度の低
下が補われ、その結果、黒鉛化速度の低下が生じないも
のと考えられる。
【0009】またS量を高めることによって、黒鉛のみ
の場合に比較して被削性の著しい向上を図ることができ
る。特に、高速度工具鋼(ハイス)による比較的低速の
切削時にこの効果が顕著である。この理由は、黒鉛とMn
Sがチップブレーカーとして作用すると共に、黒鉛およ
びMnSの潤滑作用により切削時の工具の温度上昇が抑制
されることによるものと推察される。
【0010】以下、本発明において、鋼材の成分組成を
前記の範囲に限定した理由について説明する。 C:0.10〜1.50% Cは、黒鉛相を形成する上で不可欠なだけでなく、機械
部品の強度を確保する上でも重要な元素であるが、含有
量が0.10%に満たないとその効果が小さく、一方1.50%
を越えて添加してもその効果は飽和に達するので、0.10
〜1.50%の範囲に限定した。
【0011】Si:0.5 〜2.0 % Siは、脱酸のために必要な元素であり、また鋼中のセメ
ンタイトを不安定にして黒鉛化を促進させる元素として
も有用であるので、積極的に添加するが、含有量が 0.5
%未満ではその効果に乏しく、一方 2.0%を超えて含有
させても黒鉛化促進の効果は飽和に達し、また液相の発
生する温度領域が低下し、熱間圧延時の適正温度領域が
狭まるので、 0.5〜 2.0%の範囲とした。
【0012】Mn: 0.1〜 2.0% Mnは、鋼材の強度を確保する上で有効なだけでなく、脱
酸材としても有用な元素である。またSと結合してMnS
を形成し、これが切削時に切欠として作用し、被削性の
向上にも寄与する。しかしながら含有量が 0.1%に満た
ないと、強度に対する寄与が少なく、一方 2.0%を超え
て含有されると靭性の劣化を招くので、0.1 〜2.0 %の
範囲に限定した。
【0013】P:0.030 %以下 Pは、黒鉛化を阻害するだけでなく、焼入れ処理時にγ
粒界に偏析して粒界強度を低下させ、焼割れを発生し易
くするので、極力低減することが望ましいが、0.030 %
以下であれば許容される。
【0014】S:0.25%以下 Sは、Mnと結合してMnSを形成し、これが切削時に切欠
として作用し、被削性を向上させるので積極的に添加す
る。ここに、目的とするPb添加および複合快削鋼以上の
被削性を確保するためには、0.03%を超える量の添加が
望ましい。しかしながら、添加量が0.25%を超えると黒
鉛化が遅れるだけでなく、靭性の急激な低下を招くの
で、0.25%以下(好ましくは0.03%超)で含有させるも
のとした。
【0015】B:0.0003〜0.0150% Bは、BNを形成し、黒鉛の結晶化の核となると同時に、
焼入れ性を高めることから積極的に添加するが、0.0003
%未満ではその添加効果に乏しく、一方0.0150%を超え
て含有させてもその効果は飽和に達するだけでなく、熱
間加工性を低下させるので0.0003〜0.0150%の範囲に限
定した。
【0016】N:0.0070超〜0.0150% Nは、Bと結合しBNを形成することにより、これを核と
して黒鉛の結晶化が進行するので積極的に用いる。BNを
形成させるためには、化学量論的にはBとほぼ当量を添
加すれば良いわけであるが、BNを均一分散させるために
はNを化学量論的な値よりも幾分過剰側に設定した方が
好ましい。また、Nは動的な歪み時効により切削の切り
屑の生成を容易にするので、その意味でもBに対して化
学量論的当量よりも過剰となる量を添加した方が良い。
上記の点を考慮すると0.0070%を超える量が必要である
が、0.0150%を超えて含有させてもその効果は飽和する
ので、0.0070超〜0.0150%の範囲で含有させるものとし
た。
【0017】Al:0.01〜0.5 % Alは、脱酸に寄与するだけでなく、黒鉛化を促進させる
有用元素でもある。また、Alの添加により鋼中に生成さ
れるAl酸化物は、BNの析出核となり、黒鉛の結晶化を促
進させる点でも効果が認められる。そこで本発明では、
Alを積極的に添加するが、含有量が0.01%に満たないと
その添加効果に乏しく、一方 0.5%を超えて含有させる
と熱間変形能の著しい低下を招くので、0.01〜0.5 %の
範囲で含有させるものとした。
【0018】O:0.0030%以下 Oは、硬質な酸化物系非金属介在物を形成し、これが切
削時に切削工具を損傷させ、被削性を低下させるので、
極力低減することが望ましいが、0.0030%までの含有は
許容される。
【0019】以上、基本成分について説明したが、本発
明ではさらに、Ni,Cu,CrおよびMoのうちから選んだ少
なくとも一種を含有させることができる。これらの元素
は、鋼の焼入れ性を高めることから、焼入れ・焼戻しに
よって機械部品の強度を一層高める必要がある場合に好
適である。しかしながら、これらの元素の一部は、微細
な炭窒化物を形成し鋼の強度を上昇させるから、焼入れ
・焼戻し処理によらずに強度を上昇させる場合にも有効
である。以下に各元素の限定理由について説明する。
【0020】Ni:0.1 〜3.0 % Niは、黒鉛化を促進すると同時に鋼の焼入れ性を向上さ
せる元素であるので、焼入れ・焼戻し処理によってより
高い強度を確保する場合に必要に応じて用いられるが、
0.1%未満ではその添加効果が小さく、また高価な元素
であるので3%を超えて添加すると経済的でないので、
0.1〜3.0 %の範囲に限定した。
【0021】Cu:0.1 〜3.0 % Cuは、黒鉛化促進に有効なだけでなく、被削性を改善す
ると共に焼入れ性を高め、さらには析出強化により強度
を上昇させる有用元素であるので、必要に応じて用いる
が、 0.1%未満ではその添加効果が小さく、一方 3.0%
を超えて含有してもその効果は飽和に達するので、 0.1
〜3.0 %の範囲に限定した。
【0022】Cr:0.05〜1.0 % Crは、鋼の焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入
れ・焼戻し処理により強度の確保が必要な場合に用い
る。しかし一方で、黒鉛化を阻害する元素でもあるので
多量の添加は好ましくない。ここに含有量が、0.05%未
満では焼入れ性の向上効果に乏しく、一方 1.0%を超え
て含有されると鋼中のセメンタイトを著しく安定化し、
黒鉛化を遅らせるので、0.05〜1.0 %の範囲で含有させ
るものとした。
【0023】Mo:0.05〜0.5 % Moは、焼入れ性を向上させる元素であるので、焼入れ・
焼戻し処理により強度を上昇させる必要のある場合に用
いる。しかしながら、0.05%未満ではその添加効果に乏
しく、一方 0.5%を超えて含有されると黒鉛化速度を低
下させるので、0.05〜0.5 %の範囲で含有させるものと
した。
【0024】また本発明では、成分組成範囲だけでな
く、金属組織が重要であり、主にフェライトと黒鉛の組
織とする。というのは、黒鉛の潤滑作用により切削時に
切削工具の温度上昇を抑制し、それにより切削工具の寿
命を向上させようとするのが、本発明に必須の条件だか
らである。ここに鋼中における黒鉛量の好適含有量は、
90〜100 %である。そのためには、黒鉛化処理として 6
00〜750 ℃の温度領域において5〜20h保持する処理が
必要である。なおかかる黒鉛化処理において、前処理と
しての焼入れは必要ない。
【0025】
【実施例】表1に示す成分組成になる鋼材を、転炉溶製
し、連続鋳造によりブルームとしたのち、ビレット圧延
を経て52mmφの棒鋼とした。ついで、 700℃,10hの均
熱処理後空冷する黒鉛化処理を施し、黒鉛化焼きなまし
後の黒鉛化率、硬さおよび高速度工具鋼による被削性試
験を行った。硬さは、 870℃, 30 minの加熱後、焼入れ
し、ついで 550℃, 1hの焼戻し処理後における硬さで
ある。被削性試験は、高速度工具鋼SKH4を用い、切込
み:2mm、送り:0.25mm/rev.切削速度:70 m/minの条
件で実施し、切削不能となるまでの時間を工具寿命とし
て評価した。得られた試験結果を表2に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】供試材No.1〜10は本発明鋼である。また、
No.16 はPb−S−Pの複合添加快削鋼である SAE規格の
12L14相当鋼であり、No.17 はJISS45CにPbを添加した
快削鋼である。表2から明らかなように、本発明鋼はい
ずれも、黒鉛化処理後、鋼中Cのほぼ100 %が黒鉛化し
ている。このために、被削性に優れ SAE12L14のPb複合
添加快削鋼とほぼ同じ工具寿命を有している。とくにN
o.8および10は、NiおよびCuの析出強化のために、黒鉛
化率は高いにもかかわらず高度が上昇しており、機械部
品としての強度を焼入れ・焼戻し処理によらず、上昇さ
せる必要がある場合に有効なことが示される。一方、S
i、Al、BおよびNが本発明の範囲外であるNo.11 〜15
は黒鉛化が充分に進行せず、このため被削性が劣ってい
る。また、Sが本発明の範囲外であるNo. 16は黒鉛化率
が高いにもかかわらず、被削性は SAE12L14よりも劣っ
ている。また、焼入れ・焼戻し後の硬さを見ると、Cu、
Ni、CrおよびMoを添加した鋼は、同一C量のNo.4鋼に比
較して焼入れ・焼き戻し後の硬度が上昇しており、QT処
理により最終的な部品としての強度確保が必要な場合に
有効であることを示している。
【0029】
【発明の効果】以上説明したとおり本発明によれば、Pb
を用いることなく、従来のPb複合添加快削鋼と同程度の
優れた被削性を得ることができ、従って、環境に悪影響
を及ぼすことなしに工業的に優れた機械部品の製造が可
能となる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.10〜1.50wt%、 Si:0.5 〜2.0 wt
    %、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.030 wt%以下、 S:0.25wt%以下、 B:0.0003〜0.0150wt%、 Al:0.01〜0.5 wt%、 N:0.0070超〜0.0150wt%、 O:0.0030wt%以下 を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になり、
    しかも金属組織が主としてフェライトおよび黒鉛相から
    なることを特徴とする被削性に優れた機械構造用鋼。
  2. 【請求項2】C:0.10〜1.50wt%、 Si:0.5 〜2.0 wt
    %、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.030 wt%以下、 S:0.25wt%以下、 B:0.0003〜0.0150wt%、 Al:0.01〜0.5 wt%、 N:0.0070超〜0.0150wt%、 O:0.0030wt%以下を含み、かつNi:0.1 〜3.0 wt%、
    Cu:0.1 〜3.0 wt% Cr:0.05〜1.0 wt%、 Mo:0.05〜0.5 wt% のうちから選んだ一種または二種以上を含有し、残部は
    Feおよび不可避的不純物の組成になり、しかも金属組織
    が主としてフェライトおよび黒鉛相からなることを特徴
    とする被削性に優れた機械構造用鋼。
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