JPH06208023A - 複屈折フイルム及び該フイルムを用いた液晶表示装置 - Google Patents

複屈折フイルム及び該フイルムを用いた液晶表示装置

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JPH06208023A
JPH06208023A JP5002746A JP274693A JPH06208023A JP H06208023 A JPH06208023 A JP H06208023A JP 5002746 A JP5002746 A JP 5002746A JP 274693 A JP274693 A JP 274693A JP H06208023 A JPH06208023 A JP H06208023A
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淳一 山之内
Kentaro Shirato
健太郎 白土
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Abstract

(57)【要約】 【構成】スチレン系重合体の複屈折フィルムがスチレン
系モノマーとアクリロニトリルまたはメタクリロニトリ
ルを含む共重合体、あるいは主鎖または側鎖に少くとも
不飽和二重結合を有するポリマーに対してスチレン系モ
ノマーを付加したグラフト重合体を非イオン性界面活性
剤または−COOM(Mはカチオンを表わす)を有する
界面活性剤の存在下で乳化重合したものである。 【効果】重合体を粉体化するのが容易であり、フィルム
の透明性がよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ツイステッドネマティ
ック液晶、又はコレステリック液晶を使った液晶表示装
置に関するものである。さらに、本発明は該液晶装置の
着色補正及び視野角増大のために用いる複屈折フィルム
に関し、さらに詳しくは膜の脆性・強度・ヘイズ(膜の
透明性)が改良され、かつ、着色補正及び視野角増大の
特性に優れた複屈折フィルム及びそれを用いた液晶表示
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】液晶表示装置は、低電圧、低消費電力で
IC回路への直結が可能であること、表示機能が多様で
あること、高生産性軽量化が可能であること等多くの特
長を有し、その用途は拡大してきた。ワードプロセッサ
やパーソナルコンピュータ等のOA関連機器に用いるド
ットマトリクス形液晶表示装置には現在、液晶分子のツ
イスト角が160°以上のツイステッドネマチック液晶
表示装置(以後STN−LCD)が実用化され主流にな
っている。それはSTN−LCDが従来のツイスト角が
90°のツイステッドネマチック液晶表示装置(TN−
LCD)に比べ、高マルチプレックス駆動時においても
高コントラストが維持できることによっている。
【0003】STNは液晶表示装置の外観の色相を白く
することは不可能であり、緑色から黄赤色の色味を呈
し、表示装置として不適当であった。この問題を解決す
るために一対の偏光板の間に一層又は複数3層の光学異
方体を備える方法が提案されている。この場合一対の偏
光板の一方を通過した直線偏光が液晶素子の液晶層と光
学異方体を通過したとき約400nmから約700nm
の波長域において長軸方向のほぼ揃った楕円偏光が得ら
れる。結果的には、もう一方の偏光板を通過した時に特
定の波長域が遮断されることはなく、白色光となるもの
である。
【0004】又、STN−LCDに着色除去用として利
用される位相差板単独の特許出願も見られる。例えば特
開昭63−189804号は、偏光顕微鏡によるレター
デーション(複屈折値とフィルム厚みの積)の測定値が
200〜350nmもしくは475〜625nmになる
ように一軸方向に延伸したポリカーボネートフィルムに
関するものである。
【0005】又、特開昭63−167304号は、一軸
方向に延伸処理した複屈折性を有するフィルム又はシー
トを、その光学的主軸が直交するように2枚又はそれ以
上重ねたフィルム積層体に関するものである。上記発明
においては二枚の複屈折フィルム(各々のレターデーシ
ョン値がR1 、R2 )を直交して2枚重ね合わせると積
層体のレターデーションが|R1 −R2 |の位相差フィ
ルムが得られることを利用して、R1 、R2 が大きなレ
ターデーション値を有していても|R1 −R2|を90
〜180nm、200〜350nm、475〜625n
m等の範囲に調節できるという効果を狙ったものであ
る。
【0006】上記発明は全てSTN−LCDの着色除去
を目的としたものであり、その点に関して大幅に改善さ
れ、白/黒表示に近いものが得られている。又、高分子
の複屈折フィルム(以後位相差フィルム)を使用する方
法はコストメリットもあり需要が急速に拡大している。
【0007】しかしながら、この位相差フィルムにおい
ては液晶ディスプレイを真正面から見たときには着色の
除去がほぼ達成できるものの斜めからディスプレイを見
た場合には、わずかな角度変化による着色や画面の表示
内容が消失するというSTN−LCD全般に見られる視
角特性の問題点は解消されておらず、この問題はSTN
−LCDの重大な課題となっている。
【0008】さらに詳細に説明すると、固有複屈折値が
正のポリマーの縦一軸延伸フィルムの延伸軸方向の屈折
率をnMD、延伸軸と直交する方向の屈折率をnTD、フィ
ルム面法線線方向の屈折率をnNDとすると、各々の屈折
率の大小関係は下式で表される。
【0009】
【数1】
【0010】従って入射光がフィルム面に垂直に入る場
合、Re=(nMD−nTD)dとなる。次に入射光が延伸
方向に直交する面を通る場合、複屈折値は入射角の変化
に伴って△n=nMD−nTDから△n=nMD−nNDの範囲
で変化する。ここで下式の関係の関係が成り立つので△
nは斜入射によって無変化又は増大する。
【0011】
【数2】
【0012】一方光路長は斜入射によって増大するた
め、Re=△n・dは斜入射に伴って急激に増大するこ
とになる。
【0013】又、入射光をフィルム法線方向から延伸軸
方向に傾けて入射した場合、△nはnMD−nNDからnND
−nTDまで急激な変化を伴うため、光路長の増大によっ
てもその減少を補償しきれず斜入射に伴ってRe=△n
・dは急激に減少する。原理的にはレターデーションの
変化率が最も小さい一軸延伸フィルムはnMD>nTD=n
NDの場合であるが、この場合においてもReは斜入射に
伴う光路長の増大によって大きく変化してしまう。
【0014】このような、STN−LCDの視野角の問
題点を位相差フィルムの三次元方向の屈折率を変化させ
ることによって改善できないかどうかの検討も行われて
いる。例えば特開平2−256023号にはフィルムの
複屈折値(△n)と厚み(d)の積として定義されるレ
ターデーション(Re)の視角依存性とLCDの視野角
が密接な関係にあることに基づき、フィルムの法線方向
に実質的に光軸を有するフィルム、具体的には負の固有
複屈折値を有する二軸延伸フィルムと正の固有複屈折値
を有する一軸延伸フィルムとの積層フィルムを液晶セル
と偏光板の間に挿入することによって視野角を大幅に改
善できることが開示されている。
【0015】また、特開平3−206422号には、正
の固有複屈折値を有するポリマーの一軸延伸フィルムと
負の固有複屈折値を有するポリマーの一軸延伸フィルム
の積層体を液晶セルと偏光板の間に挿入することにより
液晶表示装置における視角特性を大幅に改善できること
が開示されている。同様に正と負の固有複屈折を有する
フィルムの積層に基づく視野角の問題改良については、
特開平3−24502号にも開示がなされている。上記
の特許で用いられる負の固有複屈折を有するフィルムと
して開示されているものはいずれもスチレンモノマーを
用いた単独あるいは共重合体である。
【0016】本発明者らはスチレン系共重合体の視野角
特性、耐熱性、脆性(一軸延伸時の破断、加工時の割
れ、液晶表示装置として組み上げた後の熱履歴による割
れ)等の改良を主眼とした改良を鋭意行い、共重合構造
及び共重合比、あるいは延伸条件等によって、性能の改
良された負の固有複屈折を有するフィルムを用いた位相
差フィルムについて特許出願を行った(特開平4−21
5602号、特願平3−293648号、同3−474
42号、同4−321955号)。
【0017】しかしながら、この種のスチレン系共重合
体を乳化重合法で製造した場合、得られるフィルムの透
明性レベルが十分でないため、液晶表示装置として組み
上げたときの表示品位が問題となることがあった。ま
た、乳化重合で得られるラテックスを粉体として取り出
す場合、ラッテクスの凍結、無機塩を用いた凝集、ある
いは酸による凝集等によって得られる濾過可能な大きさ
の凝集物は、強固な凝集体となっていないため濾過プロ
セスでもとの微細な粒子を再生し、濾布等の目づまりに
よる濾過・洗浄効率の低下あるいは収率の低下等をもた
らすという問題を有していた。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は第1に
乳化重合法を用いて効率良く粉体化を行うことができ、
かつ得られフィルムの透明性に優れたスチレン系共重合
体及びそれを用いた複屈折フィルム(位相差フィルム)
を提供することにある。本発明の目的は第2に上記の優
れた特徴を有し、かつ膜物理性に優れ、かつ熱による複
屈折値の変化が少く、視野角改善効果の優れた複屈折フ
ィルムを提供することにある。本発明の目的は第3に上
記の優れた特性を有する複屈折フィルムを用いて性能の
改良された液晶表示装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明の前記目的は以下
の手段により達成された。 (1)延伸された負の固有複屈折を有するスチレン系共
重合体フィルムであって、該共重合体が少くともスチレ
ン系モノマーとアクリロニトリルまたはメタクリロニト
リルを含む共重合体、あるいは主鎖または側鎖に少くと
も不飽和二重結合を有するポリマーに対して少くともス
チレン系モノマーを含む1種以上のモノマーを付加重合
したグラフト重合体であり、かつ、非イオン性界面活性
剤または−COOM(Mは、カチオンを表す)を有する
界面活性剤の存在下での乳化重合により得られる共重合
体であることを特徴とする負の固有複屈折を有する複屈
折フィルム。
【0020】本発明の負の固有複屈折を有するフィルム
の好ましい態様は下記(2)であり、また前記(1)を
用いた液晶表示装置は下記(3)である。 (2)スチレン系共重合体が乳化重合により得られたラ
テックスを強酸条件下で凝集させ、加熱処理することに
より粉体化して得られたものであることを特徴とする請
求項1に記載の負の固有複屈折を有する複屈折フィル
ム。
【0021】(3)対向する2枚の電極基板間にねじれ
配向したネマチック液晶を挟持してなる液晶素子と負の
固有複屈折を有する少くとも1枚のフィルムとを備えた
液晶表示装置において、負の固有複屈折を有するフィル
ムが、前記(1)または(2)に記載のフィルムである
ことを特徴とする液晶表示装置。なお、延伸は一軸延伸
でも二軸延伸でもよいが、一軸延伸の方が好ましい。
【0022】以下に本発明について詳細に説明する。本
発明の複屈折フィルム(位相差フィルム)に用いられる
好ましいスチレン系共重合体の1つとしては、少くとも
スチレン系モノマーとアクリロニトリルまたはメタクリ
ロニトリルを含む共重合体を挙げることができる。
【0023】このうち、スチレン系単量体としては、具
体的には、スチレン及びα−メチルスチレン、o−メチ
ルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレ
ン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カ
ルボキシルスチレン、p−フェニルスチレン、2,5−
ジクロロスチレン、p−t−ブチルスチレンの如きスチ
レン誘導体が含まれ、このうち、スチレン、あるいはス
チレンと他のスチレン誘導体の組合せが特に好ましい。
【0024】また、上記の共重合体中には上記のスチレ
ン系単量体、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリ
ル以外の他の単量体が含まれていてもよく、この様な単
量体としてはα−クロロアクリロニトリル、メタアクリ
ル酸メチル、メタアクリル酸エチル、アクリル酸メチ
ル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル
酸、メタクリル酸、ブタジエン、イソプレン、無水マレ
イン酸、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン等を挙げる
ことができる。
【0025】共重合体中のスチレン系単量体及びアクリ
ロニトリルまたはメタクリロニトリル成分の合計は、全
構成成分の70重量%以上であることが好ましく、特に
好ましくは90重量%以上である。また、スチレン系単
量体とアクリロニトリルまたはメタクリロニトリルの比
は重量比で90/10から50/50であることが好ま
しく、特に好ましくは75/25から60/40の間で
ある。この比が小さいと複屈折の発現性が小さくてる
し、大きすぎると耐熱性の低下、フィルムの脆性の低下
が問題となる。
【0026】重合体の分子量は特に小さいものでなけれ
ば大きな制約はていが、溶液からの製膜を行う場合のポ
リマー溶液の粘度等を勘案すると重量平均分子量で10
万から100万の範囲が好ましく、特に好ましくは20
万から60万の範囲である。上記の少くともスチレン系
モノマーとアクリロニトリルまたはメタクリロニトリル
を含む共重合体の具体的な化合物例を以下に例示するが
本発明がこれらに限定されるものではない(カッコ内は
各成分の重量百分率比を表す)。
【0027】S−1〜4 スチレン/アクリロニトリ
ル共重合体(x/y) S−1 x/y=80/20 S−2 x/y=70/30 S−3 x/y=65/35 S−4 x/y=60/40 S−5〜6 スチレン/メタクリロニトリル共重合体
(x/y) S−5 x/y=70/30 S−6 x/y=65/35
【0028】S−7〜8 スチレン/アクリロニトリ
ル/メチルメタクリレート共重合体(x/y/z) S−7 x/y/z=65/30/5 S−8 x/y/z=60/30/10 S−9〜10 スチレン/α−メチルスチレン/アクリ
ロニトリル共重合体(x/y/z) S−9 x/y/z=60/15/25 S−10 x/y/z=70/5/25 S−11 スチレン/p−t−ブチルスチレン/アク
リロニトリル共重合体(60/10/30) S−12 スチレン/アクリロニトリル/メタクリロ
ニトリル共重合体(70/20/10)
【0029】本発明の位相差フィルムに用いられるもう
1つの好ましいスチレン系重合体である、主鎖または側
鎖に少くとも不飽和二重結合を有するポリマーに
((A)と称する)対して少くともスチレン系モノマー
を含む1種のモノマー((B)と称する)を付加重合し
たグラフト重合体(ポリマー(C)と称する)について
以下に説明する。
【0030】まず本発明のグラフト重合体(C)のいわ
ゆる幹を構成するポリマー(A)について説明する。ポ
リマー(A)は具体的には、主鎖または側鎖に少くとも
不飽和二重結合の繰返し単位を有するポリマーである。
この繰返し単位は、好ましくは共役ジエン構造を有する
単量体の重合によって誘導されるものである。
【0031】具体的な共役ジエン構造を有する単量体の
好ましい例としては、1,3−ブタジエン、イソプレ
ン、1,3−ペンタジエン、2−エチル−1,3−ブタ
ジエン、2−n−プロピル−1,3−ブタジエン、2,
3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,
3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエ
ン、1−α−ナフチル−1,3−ブタジエン、1−β−
ナフチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−
ブタジエン、1−ブロム−1,3−ブタジエン、1−ク
ロルブタジエン、2−フルオロ−1,3−ブタジエン、
2,3−ジクロル−1,3−ブタジエン、1,1,2−
トリクロル−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3
−ブタジエン等を挙げることができ、このうち、1,3
−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタ
ジエンが特に好ましい。
【0032】また、本発明のポリマー(C)の幹を構成
するポリマー(A)は、上記のジエン構造を有する単量
体以外の疎水性単量体が共重合されていてもよい。この
ような疎水性単量体の例としては、エチレン、プロピレ
ン、1−ブテン、イソブテン、スチレン、α−メチルス
チレン、ビニルケトン、脂肪族酸のモノエチレン性不飽
和エステル(例えば酢酸ビニル、酢酸アリル)、エチレ
ン性不飽和のモノカルボン酸もしくはジカルボン酸のエ
ステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリ
レート、n−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタ
クリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジル
メタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシ
ルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、t
−ブチルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2
−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチ
ルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレ
ート)
【0033】またはアミド(例えばt−ブチルアクリル
アミド、t−ブチルメタクリルアミド)、モノエチレン
性不飽和化合物(例えばアクリロニトリル、メタクリロ
ニトリル)等を挙げることができる。このうち、エチレ
ン、プロピレン、スチレン、α−メチルスチレン、アク
リル酸もしくはメタクリル酸のエステル、アクリロニト
リル、メタクリロニトリルが特に好ましい。
【0034】上記の共役ジエン構造を有する単量体、そ
の他の疎水性単量体はそれぞれ2種以上を用いてもよ
い。共役ジエン構造を有する単量体の重合により、ポリ
マー(A)中に導入される不飽和構造は、当該分野でよ
く知られているようにシス−1,4結合であってもよい
し、トランス1,4−結合、あるいはトランス1,2−
結合であってもよい。
【0035】また、ポリマー(A)はジエン構造を有す
る単量体より誘導される単独重合体であってもよいし、
他の疎水性単量体との共重合体であってもよい。共重合
体の場合、各モノマーが任意の割合で共重合されたいわ
ゆるランダム共重合体でもよいし、ブロック共重合体で
もよい。このような共役ジエンモノマーの重合体及び合
成法に関しては、例えば村橋俊介他編「合成高分子II、
1975年、朝倉書店発行」171頁〜308頁に詳細
に記載されている。
【0036】以上述べてきた、ポリマー(A)の好まし
い具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体(一
般にSBRと呼ばれ、溶液重合SBRと乳化重合SBR
がある。溶液重合SBRとしては、ランダム重合体の他
に前記のブロック共重合体(例えば、ブタジエン−スチ
レンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレ
ンブロック共重合体)がある)、
【0037】ブタジエン単独重合体(例えばシス−1,
4−ブタジエン、トランス−1,2−ブタジエン、ある
いは、これらとトランス−1,4−ブタジエン構造の混
在したゴム)、イソプレン単独重合体(立体構造の例
は、ブタジエン重合体に同じ)、スチレン−イソプレン
共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体)、エ
チレン−プロピレン−ジエン共重合体(ジエン単量体と
しては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエ
ン、エチリデンノルボルネン等)、
【0038】アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、
クロロプレン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重
合体、ブタジエン−アクリル酸エステル共重合体(アク
リル酸エステルとしては、アクリル酸エチル、アクリル
酸ブチル等)、ブタジエン−アクリル酸エステル−アク
リロニトリル共重合体(アクリル酸エステルとしては前
記に同じ)等を挙げることができる。
【0039】ポリマー(A)自身のガラス転移温度(T
g)は、位相差フィルムの膜物理性の改良のために重要
であり、Tgとして50℃以下好ましくは30℃以下で
あり、特に好ましくは0℃以下である。またポリマー
(A)中の共役ジエン単量体成分の占める割合について
は上記のガラス転移温度の範囲内であれば特に制限はな
いが10ないし100重量%の範囲が好ましい。
【0040】次にポリマー(A)に対して付加重合する
ことにより、グラフト重合体(C)を得るために用いら
れる単量体(B)について説明する。本発明の重合体
(C)に於いて、ポリマー(A)を幹と称するならば、
単量体(B)の重合体は(A)を起点にしてくし状に伸
びた繰返し単位を有する枝と称することができる。
【0041】本発明に於いて、グラフト重合を行う際の
単量体(B)は少くともスチレン系モノマーを含む1種
以上の単量体であり、具体的には、スチレン及びα−メ
チルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレ
ン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−ア
ミノスチレン、p−カルボキシルスチレン、p−フェニ
ルスチレン、2,5−ジクロロスチレン、p−t−ブチ
ルスチレンの如きスチレン誘導体が含まれ、このうち、
スチレン、あるいはスチレンと他のスチレン誘導体の組
合せが特に好ましい。
【0042】また、単量体(B)としては、上記のスチ
レン系単量体以外の他の単量体が含まれていてもよく、
この様な単量体としては、アクリロニトリル、メタクリ
ロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、メタアクリ
ル酸メチル、メタアクリル酸エチル、アクリル酸メチ
ル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル
酸、メタクリル酸、ブタジエン、イソプレン、無水マレ
イン酸、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン等を挙げる
ことができ、このうち、アクリロニトリル、メタクリロ
ニトリルが特に好ましい。これらは、単独で、スチレン
系誘導体と共重合してもよいし、複数用いてもよい。
【0043】本発明に用いられるグラフト共重合体
(C)に於ける幹成分ポリマー(A)の割合は、その構
造により、膜物理性能への寄与が変化しうることから一
義的に決めることは難しいが、膜物理性能の改良に必要
な量あるいは、多すぎると膜が柔軟化しすぎて、熱によ
るポリマー分子配向緩和が起こりうることを勘案すると
好ましくは1ないし30重量%、特に好ましくは3ない
し20重量%である。
【0044】重合体の分子量は特に小さいものでなけれ
ば大きな制約はないが、溶液からの製膜を行う場合のポ
リマー溶液の粘度等を勘案するとゲル成分を除いた部分
の重量平均分子量で10万から100万の範囲が好まし
く、特に好ましくは15万から50万の範囲である。
グラフトポリマー(C)に於ける全構成成分中のスチレ
ン系単量体成分の占める割合は、複屈折特性発現の観点
から重量で50%以上が好ましく、特に好ましくは60
%以上である。
【0045】本発明のグラフト重合体(C)は組成・構
造の異なる2種を混合して用いてもよい。また、グラフ
ト重合体(C)以外の重合体を混合してもよい。また、
重合法にも依るが本発明に於いて得られる重合体は、グ
ラフト重合体とその他の重合体例えばグラフト反応をう
けない重合体(A)あるいは、グラフト反応をしなかっ
たスチレン系ランダム共重合体が混在しうる。
【0046】以下に本発明のグラフト重合体(C)の好
ましい具体例について、 (A)主鎖または側鎖に少なくとも不飽和二重結合を有
するポリマー(幹) (B)少なくともスチレン系モノマーを含む1種以上の
モノマーを付加させたポリマー部分(枝) の形で例示するが本発明はこれに限定されない。つま
り、(A)に対して(B)をグラフト重合したもの、を
表す。 (A)、(B)各々のカッコ内の数字の比は、各成分に
於ける単量体の共重合比(重量)を表し、(A):
(B)は対応する幹成分・枝成分のポリマーの重量百分
率比を表す。
【0047】P−1,2 (A)スチレン/ブタジエン
共重合体(20/80) (B)スチレン/アクリロニトリル/α−メチルスチレ
ン(60/20/20) P−1 (A):(B)=10:90 P−2 (A):(B)=5:95 P−3,4 (A)スチレン/ブタジエン共重合体(2
0/80) (B)スチレン/アクリロニトリル(80/20) P−3 (A):(B)=10:90 P−4 (A):(B)=12.5:87.5 P−5 (A)スチレン/ブタジエン共重合体(5
0/50) (B)スチレン/アクリロニトリル(75/25) (A):(B)=12.5:87.5
【0048】P−6,7 (A)スチレン/ブタジエン
共重合体(50/50) (B)スチレン/アクリロニトリル/α−メチルスチレ
ン(60/30/10) P−6 (A):(B)=15:85 P−7 (A):(B)=10:90 P−8 (A)スチレン/ブタジエン共重合体(5
0/50) (B)スチレン/アクリロニトリル(75/25) (A):(B)=10:90 P−9 (A)ポリブタジエン (B)スチレン/アクリロニトリル(70/30) (A):(B)=5:95 P−10 (A)ポリブタジエン (B)スチレン/アクリロニトリル/メタクリロニトリ
ル(75/15/10) (A):(B)=10:90
【0049】P−11 (A)スチレン/ブタジエン
共重合体(50/50) (B)スチレン (A):(B)=12:88 P−12 (A)スチレン/ブタジエン共重合体(2
3/77) (B)スチレン/メチルメタクリレート/アクリロニト
リル(70/10/20) (A):(B)=10:90 P−13 (A)ポリイソプレン (B)スチレン/t−ブチルスチレン(70/30) (A):(B)=10:90
【0050】P−14 (A)アクリロニトリル/ブ
タジエン共重合体(50/50) (B)スチレン/アクリロニトリル(80/20) (A):(B)=10:90 P−15 (A)アクリロニトリル/ブタジエン共重
合体(25/75) (B)スチレン/アクリロニトリル/α−メチルスチレ
ン(60/20/20) (A):(B)=12:88 P−16 (A)アクリル酸エチル/ブタジエン共重
合体(50/50) (B)スチレン/メチルメタクリレート(80/20) (A):(B)=10:90 P−17 (A)アクリル酸エチル/スチレン/ブタ
ジエン共重合体(40/30/30) (B)スチレン/メタクリロニトリル(75/25) (A):(B)=15:85
【0051】上記の共重合体のうち、得られるフィルム
の脆性・膜の強度の観点からすると特に好ましいのは、
主鎖または側鎖に少くとも不飽和二重結合を有するポリ
マーに対して、少くともスチレン系モノマーを含む1種
のモノマーを付加したグラフト重合体である。
【0052】本発明に於けるスチレン系共重合体は非イ
オン性または−COOM(Mはカチオン原子。例えば、
ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウ
ム塩等が挙げられる)を有する界面活性剤の存在下で乳
化重合により得られることが1つの特徴である。以下に
本発明の共重合体の製造に有用な界面活性剤を例示する
が本発明はこれらに限定されない。
【0053】
【化1】
【0054】
【化2】
【0055】
【化3】
【0056】
【化4】
【0057】
【化5】
【0058】
【化6】
【0059】本発明の共重合体の乳化重合は、水あるい
は水と水に混和しうる有機溶媒(たとえばメタノール、
エタノール、アセトン、イソプロピルアルコール等)の
混合溶媒中でモノマーを乳化させラジカル重合開始剤を
用いて一般に30℃ないし約100℃、好ましくは40
℃ないし約90℃の温度で行なわれる。水に混和しうる
有機溶媒の量は水に対して体積比で0〜100%、好ま
しくは0〜30%である。
【0060】重合反応は、通常重合すべき単量体にたい
し0.05〜5重量%のラジカル重合開始剤と上記の界
面活性剤の約0.1〜10重量%を用いて行なわれる。
重合開始剤としては、アゾビス化合物、パーオキサイ
ド、ハイドロパーオキサイド、レドックス触媒など、た
とえば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、tert−ブ
チルパーオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、イ
ソプロピルパーカーボネート、2,4−ジクロロベンゾ
イルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイ
ド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキ
サイド、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾ
ビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライドなど
がある。
【0061】用いることのできる乳化剤としては、得ら
れるフィルムの透明性を実質的に損わない範囲で、上記
のノニオン性あるいは−COOMで表される界面活性剤
以外の化合物、具体的にはスルホン酸塩や硫酸モノエス
テルの塩(例えば、ラウリン酸ナトリウム、ドデシル硫
酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウ
ム)やカチオン性界面活性剤(例えばN−ドデシルピリ
ジニウムクロリド)等を併用しても良い。但し、これら
の乳化剤は少量でもフィルムの透明性に大きく影響する
ため、その使用量はスチレン系共重合体に対し、0.1
重量%以下が好ましい。
【0062】本発明のうち、主鎖または側鎖に少くとも
不飽和二重結合を有するポリマーに対して少くともスチ
レン系モノマーを含む1種以上のモノマーを付加重合し
たグラフト重合体は、先ず共役ジエン構造を有する単量
体を含む1種以上の単量体の乳化重合により、幹を構成
するポリマー(A)のラテックスを合成したのちに少く
ともスチレン系モノマーを含む1種以上のモノマーを添
加して重合反応を行うことにより得ることができる。
【0063】この際にスチレン系モノマーを含む1種以
上のモノマーは、全量一括で添加してもよいが、重合熱
の回避等の観点から、分割ないし滴下等の手段を用いる
のが好ましい。また界面活性剤は幹を構成するポリマー
調製時に全量添加しておいても良いし、各重合プロセス
で各々分割添加しても良い。
【0064】次に本発明の乳化重合で得られたラテック
スを粉体化する過程について説明する。得られたラテッ
クスを粉体化する手段として簡便なのは、ラテックスを
濾過可能なレベルまで凝集させ、濾過、乾燥を行い粉体
とする方法である。乳化重合分野でよく知られている様
に、ラッテクスの凝集法に対しては、ラテックスを凍結
したのち解凍する、あるいは塩の添加(例えば塩化ナト
リウム等)、あるいは液pHを急激に変化させる等の方
法が考えられる。
【0065】このうち、凍結−解凍法は手間のかかるプ
ロセスで実用性がなく、食塩(水)等の添加は凝集に効
果があるものの、得られた凝集物の融着性が不十分なた
め濾過時の再分散化等により濾過効率が低下しやすいと
いう欠点を有している。
【0066】本発明に於いては、液pHの急激な変化、
より具体的には強酸条件下で凝集させるのが好ましい。
また、用いられる界面活性剤としては、−COOMを有
する界面活性剤にこの手法を適用すると、界面活性剤が
中和により、ラテックスの安定化能を失うため、効率の
良い凝集を行うことができるという点で特に好ましい。
【0067】さらに、得られた凝集物の濾過性の改良の
点からは、凝集させた液を加熱処理するのが有効であ
る。これは、強酸により生成した凝集物中の各ラテック
ス間の融着が加熱により、強化されるため濾過時に壊れ
ることのない十分な強度の凝集物が生じるものと考えら
れる。
【0068】上記の凝集時のpH条件、加熱処理条件の
好ましい範囲については、使用する界面活性剤の種類や
量、スチレン系重合体の構造等により種々異なり得る
が、pHに関しては凝集完了時の液pHが3以下である
ことが好ましく、2以下であることが特に好ましい。ま
た、加熱温度としては、最終到達温度が50℃以上、特
に好ましくは75℃以上の時に十分な凝集物の濾過性を
得ることができる。以下に、本発明の共重合体の好まし
い合成法について例示するが本発明がこれらに限定され
るものではない。
【0069】合成例1 例示化合物S−2の合成 攪拌装置、還流冷却管を装着した2リットル三つ口フラ
スコに、オレイン酸ソーダ4.40g、亜硫酸水素ナト
リウム0.56g、炭酸水素ナトリウムの1モル/リッ
トル液7.0g、蒸留水1100gを入れ、窒素気流下
65℃に加熱した。過硫酸カリウム0.64gを蒸留水
40gにとかしたものを添加した後、スチレン308
g、アクリロニトリル132gの混合液、及び過硫酸カ
リウム0.32gを蒸留水100gにとかした液をそれ
ぞれ5時間で滴下が完了するように等速で滴下を開始し
た。
【0070】滴下終了後、1時間加熱攪拌を行ったの
ち、過硫酸カリウム0.32gを蒸留水40gにとかし
た液を加え、さらに3時間加熱攪拌を続けた。室温まで
冷却、濾過してラテックス1720g(平均粒子径80
nm:コールターサブミクロンアナライザー(日科機)
で測定)を得た。
【0071】0.32%硫酸水溶液(pH=1.48)
1000gを入れた3リットル三つ口フラスコに、攪拌
しながら上記のラテックス1000gを30分間にわた
って滴下し、ラテックスを凝集させた。滴下完了後、3
0分かけてフラスコ内温が85℃となるまで加熱し、さ
らに20分間85℃で加熱攪拌を続けた。室温まで冷却
した後、凝集したポリマー分を濾紙を用いて減圧濾過
し、水洗、乾燥して例示化合物S−2の白色粉末245
g得た。得られた粉体の重量平均分子量は42万であっ
た。
【0072】合成例2 例示化合物P−3の合成 攪拌装置、還流冷却管を装着した2リットル三つ口フラ
スコに、オレイン酸ソーダ4.40g、亜硫酸水素ナト
リウム0.56g、炭酸水素ナトリウムの1モル/リッ
トル液7.0g、イソプロピルアルコール110ml、蒸
留水990g、スチレン/ブタジエン(23/77:重
量比)ラテックス(乳化剤としてオレイン酸ソーダをモ
ノマーに対して3重量%使用、粒子径85nm、固形分
40.5%)108.6gを入れ、窒素気流下、65℃
に加熱した。
【0073】過硫酸カリウム0.64gを蒸留水40g
にとかしたものを添加した後、スチレン352g、アク
リロニトリル88gの混合液、及び過硫酸カリウム0.
32gを蒸留水100gにとかした液をそれぞれ5時間
で滴下が完了するように等速で滴下を開始した。
【0074】滴下終了後、1時間加熱攪拌を行ったの
ち、過硫酸カリウム0.32gを蒸留水40gにとかし
た液を加え、さらに3時間加熱攪拌を続けた。室温まで
冷却、濾過してラテックス1810g(平均粒子径13
5nm:コールターサブミクロンアナライザー(日科
機)で測定)を得た。
【0075】0.32%硫酸水溶液(pH=1.48)
1000gを入れた3リットル三つ口フラスコに、攪拌
しながら上記のラテックス1000gを20分間にわた
って滴下し、ラテックスを凝集させた。滴下完了後30
分かけてフラスコ内温が85℃となるまで加熱し、さら
に20分間85℃で加熱攪拌を続けた。室温まで冷却し
た後、凝集したポリマー分を濾紙を用いて減圧濾過し、
水洗、乾燥して例示化合物P−3の白色粉末257g得
た。得られた粉体の重量平均分子量は39.6万であっ
た。本発明の複屈折フィルムは前記のようにして得られ
た共重合体を有機溶媒に溶解して、流延し、通常の延伸
法によって延伸して作ることができる。膜厚や延伸倍率
を調整することによってレターデーション値を調整でき
る。
【0076】本発明の負の固有複屈折を有するフィルム
をねじれ配向したネマチック液晶を挟持してなる液晶素
子と組合せて液晶表示装置に導入する際には、本発明の
負の固有複屈折を有するフィルムの1枚のみを用いても
よいし、同一またはそれぞれ異なる負の固有複屈折を有
する2枚以上の位相差フィルムを用いてもよい。また正
の固有複屈折を有する少くとも1枚のフィルムと組合せ
て用いてもよい。フィルムは一軸延伸でも二軸延伸でも
よいが、好ましい一軸延伸フィルムを中心に述べる。
【0077】好ましい態様である正の固有複屈折値を有
するポリマーから形成される一軸延伸フィルムと負の固
有複屈折値を有するポリマーから形成される一軸延伸フ
ィルムとの積層体について説明すると、フィルム法線方
向のレターデーションは互いに加算され、消滅されるこ
となしに全方位斜入射に対してレターデーションの変化
が極めて小さいフィルムや適度なレターデーション変化
を有するフィルムなど、目的により自在にコントロール
できるという優れた効果がある。
【0078】特にこれらの効果が顕著に現われるケース
は、正の固有複屈折値を有するポリマーの一軸延伸フィ
ルムと負の固有複屈折値を有するポリマーの一軸延伸フ
ィルムがその延伸軸が互いに直交するように積層された
ときである。これと同様の効果即ち全方位に対してレタ
ーデーション変化の小さいフィルム積層体は、正の固有
複屈折値を有するポリマーから形成される一軸延伸フィ
ルムと正の固有複屈折値を有するポリマーから形成され
る一軸延伸フィルムとの直交積層体や、負の固有複屈折
値を有するポリマーから形成される一軸延伸フィルムと
負の固有複屈折値を有するポリマーから形成される一軸
延伸フィルムとの直交積層体においては共に実現されな
いものであり、特開平3−206422号の構成によっ
てのみ実現されるものである。
【0079】さて、正の固有複屈折を有するポリマーか
ら形成される一軸延伸フィルムと負の固有複屈折値を有
するポリマーから形成される一軸延伸フィルムとの積層
体においては、各々の一軸延伸フィルムの分子の配向レ
ベルを延伸等によって制御することによって、積層体の
レターデーションの視角依存性をほとんどなくすること
も適度の変化をつけることも自在にコントロールできる
ため、STN−LCDの光学特性に応じて、レターデー
ションの視角特性を適合できるため、STN−LCDに
おける偏光板と液晶セルの間に位相差フィルムとして配
設した場合にSTN−LCDの視野角を大幅に拡大でき
ることが認められた。
【0080】更に詳細に説明すると、90°以上特に1
80°〜330°のねじれ角を有するツイスティッドネ
マティック液晶、又はコレステリック液晶を使った液晶
表示装置における液晶セルの複屈折性に起因する着色現
象をなくすると共に視野角、高コントラスト域の拡大を
可能とする液晶表示装置に関するものであり、フィルム
法線方向のレターデーションに関しては、正の固有複屈
折値を有するポリマーから形成されるフィルムの一軸延
伸におけるレターデーションと負の固有複屈折値を有す
るポリマーから形成されるフィルムの一軸延伸における
レターデーションの加算値が得られる。
【0081】ただし、該正、負の固有複屈折値を有する
ポリマーの一軸延伸フィルムの延伸軸が一致した場合に
はレターデーションは打ち消され、好ましくはない。従
って該フィルム積層体の延伸軸は互いに略直交に配置さ
れるのが好ましい。具体的には該フィルムの延伸軸のな
す角度が70°乃至110°が最も好ましい。
【0082】ただし、該正、負の固有複屈折値を有する
フィルムが液晶セルを介して両側に配置される場合はそ
の限りでない。つまり該フィルムは常に積層されて使わ
れなくても、液晶セルの両サイドに配置されてもよい
し、偏光板の液晶セル側の保護フィルムを兼用しても構
わない。特に偏光板保護フィルムとして使った場合は視
野角拡大の機能と共に低コスト化を実現できるメリット
がある。又、本発明におけるフィルムとは、一般的に考
えられているフィルムだけでなく、ある基材に塗布され
た膜状物も含まれる。又、一軸延伸フィルムとは、純粋
な一軸性フィルムだけでなく、若干二軸性が付与されて
いても本質的に一軸性フィルムとして機能するものであ
れば本発明の対象となる。
【0083】従って、テンター法による横一軸延伸、ロ
ール間の周速の差を利用した縦一軸延伸、この場合幅方
向の延伸時の自然収縮を行う場合も制限する場合も含ま
れる。さて、本発明において正の固有複屈折値を有する
フィルムは、光の透過性が70%以上で無彩色であるこ
とが好ましく、更に好ましくは光の透過性が90%以上
で無彩色である。ここで固有複屈折値(△n°)は分子
が理想的に一方向に配向したときの複屈折値を意味し、
近似的に下式で表される。
【0084】
【数3】
【0085】該、正の固有複屈折値を有するフィルムに
用いるポリマーとして制約はないが、具体的にはポリカ
ーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレ
ート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファ
イド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホ
ン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリオレフィン、
ポリ塩化ビニル、セルロース、ポリエステル系高分子等
が好ましく、特にポリカーボネート系高分子、ポリアリ
レート系高分子、ポリエステル系高分子等、固有複屈折
値が大きく溶液製膜により面状の均質なフィルムを作り
やすい高分子が好ましい。
【0086】又、上記ポリマーは、単にホモポリマーだ
けでなく、コポリマー、それらの誘導体、ブレンド物等
であってもよい。本発明における負の固有複屈折値を有
するフィルムにおいても、光の透過性が70%以上で無
彩色であることが好ましく、更に好ましくは光の透過性
が85%以上で無彩色である。
【0087】固有複屈折値の絶対値は小さくても厚みを
大きくするか延伸倍率を大きくすることによって十分に
利用できるのであるがそれらの制約を受けないために
は、固有複屈折値は好ましくは絶対値で0.02以上、
より好ましくは0.04以上である。又、一旦延伸によ
って配向した分子がLCDの製造工程や表示中での昇温
による配向緩和を防ぐためには素材のTg(ガラス転移
点)が90度以上、より好ましくは100度以上更に好
ましくは110度以上である。また、一軸延伸されて複
屈折値を持つフィルムの厚みは特に制限はないが、10
μ〜1mmの範囲が好ましい。以下、実施例によって本発
明を詳細に説明する。
【0088】
【実施例】
実施例1 本発明の重合体S−2、P−3について、表1の如く界
面活性剤を変えた以外は合成例1、2と全く同じ方法で
共重合体ラテックスを合成した。得られたラッテクス7
00gを硫酸水を用いた処理(基本的には合成例1、2
と同じだが、硫酸水pH、加熱処理の温度を一部変更し
た。)、あるいは凍結させた後解凍させる処理により凝
集させ、処理後の液を内径18.5cmのADVANTE
C TOYO 131(東洋濾紙製)を用い、20torr
の減圧度で濾過を行い濾過に要する時間を調べた。結果
を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】表1に示すように本発明の乳化剤を用いた
重合体は酸性水溶液での処理を施すことにより濾過製に
優れ、この効果は、低pH、高加熱温度処理条件に於い
て顕著である。一方、乳化剤を用いない場合やスルホン
酸塩硫酸エステル塩系の乳化剤は、酸性水溶液や凍結処
理を施しても濾過性が劣悪であり、本発明の優位性は明
らかである。
【0091】実施例2 前記した本発明のポリマーを含む、表1に示すポリマー
各180gをメチレンクロライド820gに溶解した。
この溶液を10%相対湿度条件下、乾燥後の膜厚が10
0μmになるようガラス板上に流延し、5分間室温で放
置した後、45℃の温風で20分間乾燥し、ガラス板か
ら剥ぎ取った。剥ぎ取ったフィルムを枠に張り付け70
℃で1時間乾燥し、更に110℃で15時間乾燥した
後、ポリマーのガラス転移温度(Tg)+10℃の温度
条件下で市販の引張試験機を用いて200%の一軸延伸
をし試料とした。次に、得られた試料を以下の評価に供
した。
【0092】(1) ヘイズ 作成したフィルムについて、ヘイズメーター(日本電触
(株)モデル1001DP)により5ケ所ヘイズを測定
し、その平均値から該フィルムのヘイズを求めた。 (2) 脆性 延伸方向(MD)に10mm、延伸方向に垂直な方向(T
D)に35mmの試料片を切り出し、図1に示すようにM
Dに平行な折り目ができるように3秒かけて折り曲げ、
破損する角度θを読みとった。破損しない場合には0°
とした。θは小さい方が好ましく、10°以下であるこ
とが特に好ましい。
【0093】(3) 耐熱性 図2に示す18cm×16cmのトムソン打抜機を用い、M
Dが長辺と45℃になるようにしてフィルムを打ち抜い
た。打抜いた試料を粘着剤を用いてガラス板に貼り付
け、クロスニコルにした2枚の偏光板の間に試料のMD
が偏光軸と45°になるように置き透過光強度の波長依
存性からレターデーションを測定した後、90℃4時間
及び70℃120時間の熱処理をした後、もう一度レタ
ーデーションを測定し、レターデーションの低下率
(%)を求めた。実際上3%以下であることが必要とさ
れる。また、該熱処理で割れが生じてはならない。以上
の評価結果を表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】本発明は、脆性、耐熱性レベルを変えるこ
となく、ヘイズのみを著しく改良できることは明らかで
ある。また、脆性・耐熱性の点でアクリロニトリル共重
合体はポリスチレンと比べ改善され、グラフト重合体で
さらに脆性が顕著に改良された。
【0096】実施例3 重量平均分子量10万のポリカーボネートをメチレンク
ロライドに溶解し、20重量%溶液とした。この溶液を
ステンレスバンド上に流延し、連続的に剥ぎ取って乾燥
し、ポリカーボネートフィルムを得た。該フィルムを1
70℃の温度条件下で周速の異なるロール間で一軸延伸
し、430nmのレターデーション値を有するポリカー
ボネート一軸延伸フィルムを得た。得られたポリカーボ
ネーフィルムの一片面に粘着剤シートを、反対側に塩化
ビニル製の保護フィルムを着け試料とした。
【0097】次に図3の(1) に示す構成のシャープ
(株)製ワードプロセッサーWD−A550の液晶セル
の前後にある位相差フィルムを取り除き、後の位相差フ
ィルムのかわりに該ポリカーボネートフィルムを配設
し、前の位相差フィルムのかわりに実施例2の該スチレ
ン系フィルムのうちで、ヘイズの良かった本発明の重合
体からなり、430nmのレターデーション値を有する
フィルムを配設した。但し、各フィルムの光軸は図3
(2) に示すように購入時と全く同一にした。得られた液
晶パネルの表示特性として、駆動状態と非駆動状態にお
ける正面からのコントラスト比及び着色度、コントラス
ト比が2以上になる角度(視野角)を評価した。
【0098】比較例1 実施例3で使用したワードプロセッサーWD−A550
の購入時表示特性を評価した。
【0099】比較例2 実施例3において前後の位相差フィルムのかわりに両方
とも該ポリカーボネートフィルムを用い、表示特性を評
価した。実施例3と比較例1、2の結果を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】表3からわかるように、正面から見た時の
着色度は全てほぼ完全な白黒表示が得られているが、視
野角については比較例1、2に比べて本発明の重合体か
らなるフィルムを使用した実施例3の方がはるかに優れ
たものであった。なお、比較例1と2はほぼ同等の表示
特性であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】脆性測定機に試料をとりつけたところを示す。
【図2】トムソン打抜機の断面を示す。
【図3】 (1) は、WD−A550の液晶セルの構成を示す。 (2) は、 〃 の正面から見た光軸
構成を示す。
【符号の説明】
θ:折り曲げ角 a:試料 b:押え板(塩化ビニル製) c:剛鉄製の刃 d:ゴム製マット e:木製の台 BL:バックライト P1 :偏光板 D1 :後の位相差板 LC:液晶セル D2 :前の位相差板 P2 :偏光板

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 延伸された負の固有複屈折を有するスチ
    レン系共重合体フィルムであって、該共重合体が少くと
    もスチレン系モノマーとアクリロニトリルまたはメタク
    リロニトリルを含む共重合体、あるいは主鎖または側鎖
    に少くとも不飽和二重結合を有するポリマーに対して少
    くともスチレン系モノマーを含む1種以上のモノマーを
    付加重合したグラフト重合体であり、かつ、非イオン性
    界面活性剤または−COOM(Mは、カチオンを表す)
    を有する界面活性剤の存在下での乳化重合により得られ
    る共重合体であることを特徴とする負の固有複屈折を有
    する複屈折フィルム。
  2. 【請求項2】 スチレン系共重合体が乳化重合により得
    られたラテックスを強酸条件下で凝集させ、加熱処理す
    ることにより粉体化して得られたものであることを特徴
    とする請求項1に記載の負の固有複屈折を有する複屈折
    フィルム。
  3. 【請求項3】 対向する2枚の電極基板間にねじれ配向
    したネマチック液晶を挟持してなる液晶素子と負の固有
    複屈折を有する少くとも1枚のフィルムとを備えた液晶
    表示装置において、負の固有複屈折を有するフィルム
    が、請求項1または2に記載のフィルムであることを特
    徴とする液晶表示装置。
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