JPH06207279A - 極低炭素含有鋼の腐食液及びその腐食方法 - Google Patents
極低炭素含有鋼の腐食液及びその腐食方法Info
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- JPH06207279A JPH06207279A JP1685193A JP1685193A JPH06207279A JP H06207279 A JPH06207279 A JP H06207279A JP 1685193 A JP1685193 A JP 1685193A JP 1685193 A JP1685193 A JP 1685193A JP H06207279 A JPH06207279 A JP H06207279A
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- C23—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
- C23F—NON-MECHANICAL REMOVAL OF METALLIC MATERIAL FROM SURFACE; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL; MULTI-STEP PROCESSES FOR SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL INVOLVING AT LEAST ONE PROCESS PROVIDED FOR IN CLASS C23 AND AT LEAST ONE PROCESS COVERED BY SUBCLASS C21D OR C22F OR CLASS C25
- C23F1/00—Etching metallic material by chemical means
- C23F1/10—Etching compositions
- C23F1/14—Aqueous compositions
- C23F1/16—Acidic compositions
- C23F1/28—Acidic compositions for etching iron group metals
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 結晶粒を脱落させることなく、健全なフェラ
イト組織を明瞭に現出させることができる、極低炭素含
有鋼の腐食液及びその腐食方法を提供するものである。 【構成】 水100mlに対して、ピクリン酸1.0〜
6.0gとドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム
2.0〜15.0gとを溶解すると共に、鉄粉0.1〜
0.5gを添加したものである。
イト組織を明瞭に現出させることができる、極低炭素含
有鋼の腐食液及びその腐食方法を提供するものである。 【構成】 水100mlに対して、ピクリン酸1.0〜
6.0gとドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム
2.0〜15.0gとを溶解すると共に、鉄粉0.1〜
0.5gを添加したものである。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は炭素含有量が極めて少な
い炭素鋼・合金鋼の顕微鏡組織観察を行うための極低炭
素含有鋼の腐食液及びその腐食方法に関するものであ
る。
い炭素鋼・合金鋼の顕微鏡組織観察を行うための極低炭
素含有鋼の腐食液及びその腐食方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】一般に、炭素鋼から採取した供試材の顕
微鏡組織観察を行う場合、該供試材を樹脂に埋め込み、
これに鏡面仕上げ加工を施した後、供試材の鏡面をナイ
タールと称する腐食液で腐食して、その組織を現出させ
ている。このナイタールは、周知の如く、硝酸アルコー
ルであり、100mlのナイタールを調合する場合、エチ
ルアルコール95mlに対して硝酸5mlが混合されてい
る。
微鏡組織観察を行う場合、該供試材を樹脂に埋め込み、
これに鏡面仕上げ加工を施した後、供試材の鏡面をナイ
タールと称する腐食液で腐食して、その組織を現出させ
ている。このナイタールは、周知の如く、硝酸アルコー
ルであり、100mlのナイタールを調合する場合、エチ
ルアルコール95mlに対して硝酸5mlが混合されてい
る。
【0003】しかし、炭素含有量が50ppm以下の極
低炭素鋼や、更にこれにTi,Nb等の炭窒化物形成元
素を添加し固溶炭素量が極めて少なくなった合金鋼は、
結晶粒界が腐食され難い。従って、図3に示すように、
上記ナイタールによる腐食では組織を十分に現出させる
ことが困難であり、組織を正確に把握することができな
かった。尚、図3に示した顕微鏡組織写真の倍率は20
0倍である。
低炭素鋼や、更にこれにTi,Nb等の炭窒化物形成元
素を添加し固溶炭素量が極めて少なくなった合金鋼は、
結晶粒界が腐食され難い。従って、図3に示すように、
上記ナイタールによる腐食では組織を十分に現出させる
ことが困難であり、組織を正確に把握することができな
かった。尚、図3に示した顕微鏡組織写真の倍率は20
0倍である。
【0004】そこで、これらの極低炭素含有鋼には、特
開平1−185444号公報で提案の腐食液を使用して
腐食を行っていた。この腐食液は、蒸留水100mlに対
して、ピクリン酸5g,ドデシルベンゼンスルフォン酸
ナトリウム10g,しゅう酸0.1g及び塩酸(6N)
2〜3mlを溶解し、これに鉄粉0.1〜0.5gを添加
したものである。そして、このSULC−G液による極
低炭素含有鋼の腐食方法は、該SULC−G液を53〜
57℃に加熱し、その液中に極低炭素含有鋼から採取し
た供試材の鏡面を60〜180秒間浸漬させ、その後、
水洗いして1〜2分間乾燥させていた。この腐食液及び
その腐食方法によれば、図4に示すように、フェライト
粒界を明瞭に現出させることができた。尚、図4に示し
た顕微鏡組織写真の倍率は200倍である。
開平1−185444号公報で提案の腐食液を使用して
腐食を行っていた。この腐食液は、蒸留水100mlに対
して、ピクリン酸5g,ドデシルベンゼンスルフォン酸
ナトリウム10g,しゅう酸0.1g及び塩酸(6N)
2〜3mlを溶解し、これに鉄粉0.1〜0.5gを添加
したものである。そして、このSULC−G液による極
低炭素含有鋼の腐食方法は、該SULC−G液を53〜
57℃に加熱し、その液中に極低炭素含有鋼から採取し
た供試材の鏡面を60〜180秒間浸漬させ、その後、
水洗いして1〜2分間乾燥させていた。この腐食液及び
その腐食方法によれば、図4に示すように、フェライト
粒界を明瞭に現出させることができた。尚、図4に示し
た顕微鏡組織写真の倍率は200倍である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の極低
炭素含有鋼の腐食液及びその腐食方法にあっては、図4
に示したように、顕微鏡組織の一部に結晶粒の脱落現象
(写真において黒色に見える部分)が現れることがある
という問題があった。特に、前記Nb及びTiを添加し
た極低炭素鋼については脱落現象が現れ易い。
炭素含有鋼の腐食液及びその腐食方法にあっては、図4
に示したように、顕微鏡組織の一部に結晶粒の脱落現象
(写真において黒色に見える部分)が現れることがある
という問題があった。特に、前記Nb及びTiを添加し
た極低炭素鋼については脱落現象が現れ易い。
【0006】このような顕微鏡組織写真を鋼材納入に際
して発注先に提出した場合、この結晶粒の脱落位置が介
在物やパーライト組織等であると誤解され、健全なフェ
ライト組織を有するにもかかわらず顕微鏡組織写真作成
時の不具合により、鋼材の品質が疑われる要因となる慮
れがあった。
して発注先に提出した場合、この結晶粒の脱落位置が介
在物やパーライト組織等であると誤解され、健全なフェ
ライト組織を有するにもかかわらず顕微鏡組織写真作成
時の不具合により、鋼材の品質が疑われる要因となる慮
れがあった。
【0007】本発明の目的は、上記課題に鑑み、結晶粒
を脱落させることなく、健全なフェライト組織を明瞭に
現出させることができる、極低炭素含有鋼の腐食液及び
その腐食方法を提供することにある。
を脱落させることなく、健全なフェライト組織を明瞭に
現出させることができる、極低炭素含有鋼の腐食液及び
その腐食方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、本発明に係
る極低炭素含有鋼の腐食液によれば、水100mlに対し
て、ピクリン酸1.0〜6.0gとドデシルベンゼンス
ルフォン酸ナトリウム2.0〜15.0gとを溶解する
と共に、鉄粉0.1〜0.5gを添加したことにより、
達成される。
る極低炭素含有鋼の腐食液によれば、水100mlに対し
て、ピクリン酸1.0〜6.0gとドデシルベンゼンス
ルフォン酸ナトリウム2.0〜15.0gとを溶解する
と共に、鉄粉0.1〜0.5gを添加したことにより、
達成される。
【0009】また、上記目的は、本発明に係る極低炭素
含有鋼の腐食方法によれば、極低炭素含有鋼から採取し
た供試材の鏡面を上記腐食液に所定時間接触させて第1
段腐食を行い、これを水洗いし乾燥後、硝酸アルコール
に所定時間接触させ第2段腐食を行い、これを水洗いし
乾燥するようにしたことにより、達成される。
含有鋼の腐食方法によれば、極低炭素含有鋼から採取し
た供試材の鏡面を上記腐食液に所定時間接触させて第1
段腐食を行い、これを水洗いし乾燥後、硝酸アルコール
に所定時間接触させ第2段腐食を行い、これを水洗いし
乾燥するようにしたことにより、達成される。
【0010】上記極低炭素含有鋼の腐食方法の構成にお
いて、好ましくは、上記第1段腐食に使用する腐食液が
50〜60℃に加熱され、この腐食液への接触時間が6
0〜150秒であることにより、達成される。
いて、好ましくは、上記第1段腐食に使用する腐食液が
50〜60℃に加熱され、この腐食液への接触時間が6
0〜150秒であることにより、達成される。
【0011】
【作用】上記極低炭素含有鋼の腐食液の構成によれば、
水100mlに対して、ピクリン酸1.0〜6.0gとド
デシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム2.0〜15.
0gとが溶解されている。上記ピクリン酸を溶解するの
は、極低炭素含有鋼のフェライト粒界に存在するMn,
P又はセメンタイトと反応してフェライト組織を現出さ
せる作用を有するからである。そして、その溶解量を水
100mlに対して1.0〜6.0gに設定したのは、
1.0g未満では反応速度が遅過ぎ、一方、6.0gを
超えると反応速度が速過ぎてそのコントロールが困難に
なるからである。
水100mlに対して、ピクリン酸1.0〜6.0gとド
デシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム2.0〜15.
0gとが溶解されている。上記ピクリン酸を溶解するの
は、極低炭素含有鋼のフェライト粒界に存在するMn,
P又はセメンタイトと反応してフェライト組織を現出さ
せる作用を有するからである。そして、その溶解量を水
100mlに対して1.0〜6.0gに設定したのは、
1.0g未満では反応速度が遅過ぎ、一方、6.0gを
超えると反応速度が速過ぎてそのコントロールが困難に
なるからである。
【0012】また、上記ドデシルベンゼンスルフォン酸
ナトリウムを溶解するのは、腐食液と供試材の界面を活
性化する働きを有するからである。そして、その溶解量
を水100mlに対して2.0〜15.0gに設定したの
は、2.0g未満では活性化作用が不十分だからであ
り、一方、15.0gを超えても活性化作用の増大がな
いからである。
ナトリウムを溶解するのは、腐食液と供試材の界面を活
性化する働きを有するからである。そして、その溶解量
を水100mlに対して2.0〜15.0gに設定したの
は、2.0g未満では活性化作用が不十分だからであ
り、一方、15.0gを超えても活性化作用の増大がな
いからである。
【0013】さらに、この腐食液に上記鉄粉を添加する
のは、上記極低炭素含有鋼から採取した供試材の鏡面に
該腐食液を馴染ませるためである。そして、その添加量
を0.1〜0.5gに設定したのは、0.1g未満では
上記腐食液が馴染まず、一方、0.5gを超えると上記
腐食液が上記鉄粉と反応し過ぎて腐食性を有しなくなる
からである。
のは、上記極低炭素含有鋼から採取した供試材の鏡面に
該腐食液を馴染ませるためである。そして、その添加量
を0.1〜0.5gに設定したのは、0.1g未満では
上記腐食液が馴染まず、一方、0.5gを超えると上記
腐食液が上記鉄粉と反応し過ぎて腐食性を有しなくなる
からである。
【0014】尚、前記特開平1−185444号公報で
提案の腐食液のようにしゅう酸及び塩酸を溶解させない
のは、しゅう酸及び塩酸による強い腐食性を回避するた
めである。即ち、前述したNb、Tiを添加した極低炭
素鋼では、該しゅう酸や塩酸が結晶粒界のNb、Tiな
どとより強く反応するため、粒界が深く浸食され過ぎ、
その浸食部分の結晶粒が脱落してしまうと推測されるか
らである。
提案の腐食液のようにしゅう酸及び塩酸を溶解させない
のは、しゅう酸及び塩酸による強い腐食性を回避するた
めである。即ち、前述したNb、Tiを添加した極低炭
素鋼では、該しゅう酸や塩酸が結晶粒界のNb、Tiな
どとより強く反応するため、粒界が深く浸食され過ぎ、
その浸食部分の結晶粒が脱落してしまうと推測されるか
らである。
【0015】また、上記極低炭素含有鋼の腐食方法の構
成によれば、極低炭素含有鋼から採取した供試材の鏡面
は、2段階で腐食される。即ち、第1段腐食は、供試材
の鏡面に上記極低炭素含有鋼の腐食液を所定時間浸漬さ
せて行われる。この第1段腐食によれば、極低炭素含有
鋼のフェライト粒界は薄く現出される。そして、この状
態を維持するため、第1段腐食終了後、供試材の鏡面を
水洗いし乾燥させる。
成によれば、極低炭素含有鋼から採取した供試材の鏡面
は、2段階で腐食される。即ち、第1段腐食は、供試材
の鏡面に上記極低炭素含有鋼の腐食液を所定時間浸漬さ
せて行われる。この第1段腐食によれば、極低炭素含有
鋼のフェライト粒界は薄く現出される。そして、この状
態を維持するため、第1段腐食終了後、供試材の鏡面を
水洗いし乾燥させる。
【0016】次に、第2段腐食は、上記乾燥させた供試
材の鏡面に硝酸アルコールを所定時間浸漬させて行われ
る。この第2段腐食によれば、薄く現出した極低炭素含
有鋼のフェライト粒界が適度な濃さに現出される。そし
て、この状態を維持するため、第2段腐食終了後、供試
材の鏡面を水洗いし乾燥させるものである。
材の鏡面に硝酸アルコールを所定時間浸漬させて行われ
る。この第2段腐食によれば、薄く現出した極低炭素含
有鋼のフェライト粒界が適度な濃さに現出される。そし
て、この状態を維持するため、第2段腐食終了後、供試
材の鏡面を水洗いし乾燥させるものである。
【0017】特に、上記第1段腐食に使用する腐食液を
50〜60℃に加熱すれば、第1段腐食の腐食時間が短
縮される。上記腐食液の加熱温度を50〜60℃に設定
したのは、50℃未満では腐食速度は加熱しない場合と
殆ど変わらず、一方、60℃を超えると腐食速度が速過
ぎそのコントロールが困難になるからである。
50〜60℃に加熱すれば、第1段腐食の腐食時間が短
縮される。上記腐食液の加熱温度を50〜60℃に設定
したのは、50℃未満では腐食速度は加熱しない場合と
殆ど変わらず、一方、60℃を超えると腐食速度が速過
ぎそのコントロールが困難になるからである。
【0018】また、上記第1段腐食に使用する腐食液を
50〜60℃に加熱した場合、この腐食液へ供試材の鏡
面を浸漬させる時間を設定する必要がある。この浸漬時
間を60〜150秒に設定にすれば、極低炭素含有鋼の
フェライト粒界は薄く現出される。この浸漬時間を60
〜150秒設定したのは、60秒未満ではその後に第2
段腐食を施してもフェライト粒界が不鮮明になるからで
あり、一方、150秒を超えるとその後に第2段腐食を
施すと結晶粒の脱落が生じるからである。
50〜60℃に加熱した場合、この腐食液へ供試材の鏡
面を浸漬させる時間を設定する必要がある。この浸漬時
間を60〜150秒に設定にすれば、極低炭素含有鋼の
フェライト粒界は薄く現出される。この浸漬時間を60
〜150秒設定したのは、60秒未満ではその後に第2
段腐食を施してもフェライト粒界が不鮮明になるからで
あり、一方、150秒を超えるとその後に第2段腐食を
施すと結晶粒の脱落が生じるからである。
【0019】さらに、上記第2段腐食に使用する硝酸ア
ルコールの硝酸濃度を2〜5%にすれば、上記第1段腐
食により薄く現出した極低炭素含有鋼のフェライト粒界
が濃く現出される。この硝酸濃度を2〜5%に設定した
のは、2%未満ではフェライト粒界は濃くならないから
であり、一方、5%を超えるとフェライト粒界が浸食さ
れ過ぎるからである。
ルコールの硝酸濃度を2〜5%にすれば、上記第1段腐
食により薄く現出した極低炭素含有鋼のフェライト粒界
が濃く現出される。この硝酸濃度を2〜5%に設定した
のは、2%未満ではフェライト粒界は濃くならないから
であり、一方、5%を超えるとフェライト粒界が浸食さ
れ過ぎるからである。
【0020】そして、上記第1段腐食に使用する硝酸ア
ルコールの硝酸濃度を2〜5%にした場合、この腐食液
へ供試材の鏡面を浸漬させる時間を設定する必要があ
る。この浸漬時間を10〜30秒に設定にすれば、上記
第1段腐食により薄く現出した極低炭素含有鋼のフェラ
イト粒界が適度な濃さに現出される。この浸漬時間を1
0〜30秒に設定したのは、10秒未満ではフェライト
粒界が不鮮明になるからであり、一方、30秒を超える
とフェライト粒界が浸食され過ぎて結晶粒の脱落現象が
生じるからである。
ルコールの硝酸濃度を2〜5%にした場合、この腐食液
へ供試材の鏡面を浸漬させる時間を設定する必要があ
る。この浸漬時間を10〜30秒に設定にすれば、上記
第1段腐食により薄く現出した極低炭素含有鋼のフェラ
イト粒界が適度な濃さに現出される。この浸漬時間を1
0〜30秒に設定したのは、10秒未満ではフェライト
粒界が不鮮明になるからであり、一方、30秒を超える
とフェライト粒界が浸食され過ぎて結晶粒の脱落現象が
生じるからである。
【0021】
【実施例】以下、本発明に係る極低炭素含有鋼の腐食液
及びその腐食方法の好適な実施例を詳細に説明する。本
実施例の極低炭素含有鋼の腐食液は、蒸留水100mlに
対して、ピクリン酸を1.0〜6.0gの範囲で、ドデ
シルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを2.0〜15.
0gの範囲で溶解すると共に、鉄粉を0.1〜0.5g
の範囲で添加することにより調合されるが、具体的には
次の方法で調合される。
及びその腐食方法の好適な実施例を詳細に説明する。本
実施例の極低炭素含有鋼の腐食液は、蒸留水100mlに
対して、ピクリン酸を1.0〜6.0gの範囲で、ドデ
シルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを2.0〜15.
0gの範囲で溶解すると共に、鉄粉を0.1〜0.5g
の範囲で添加することにより調合されるが、具体的には
次の方法で調合される。
【0022】即ち、先ず、蒸留水100mlをビーカ等の
容器に採り、これをバーナ等で加温しつつピクリン酸
1.0〜6.0gを溶解し、これにドデシルベンゼンス
ルフォン酸ナトリウムを2.0〜15.0gを撹拌しな
がら溶解して腐食原液を調合する。次に、この腐食原液
に鉄粉を0.1〜0.5g添加して撹拌し、これら腐食
原液と鉄粉との反応が終了するまで放置する。腐食原液
の反応が終了すると、本実施例の極低炭素含有鋼の腐食
液(以下、「X液」という。)の調合が完了することに
なる。尚、後述する本実施例の極低炭素含有鋼の腐食方
法を行うに際して、ナイタールを調合する。このナイタ
ール(以下、「Y液」という。)は、前述したように、
硝酸アルコールであり、このY液を調合する場合、エチ
ルアルコールに対して2〜5%の硝酸濃度で混合する。
容器に採り、これをバーナ等で加温しつつピクリン酸
1.0〜6.0gを溶解し、これにドデシルベンゼンス
ルフォン酸ナトリウムを2.0〜15.0gを撹拌しな
がら溶解して腐食原液を調合する。次に、この腐食原液
に鉄粉を0.1〜0.5g添加して撹拌し、これら腐食
原液と鉄粉との反応が終了するまで放置する。腐食原液
の反応が終了すると、本実施例の極低炭素含有鋼の腐食
液(以下、「X液」という。)の調合が完了することに
なる。尚、後述する本実施例の極低炭素含有鋼の腐食方
法を行うに際して、ナイタールを調合する。このナイタ
ール(以下、「Y液」という。)は、前述したように、
硝酸アルコールであり、このY液を調合する場合、エチ
ルアルコールに対して2〜5%の硝酸濃度で混合する。
【0023】また、本実施例の極低炭素含有鋼の腐食方
法は、図1に示す工程で成される。図示されているよう
に、先ず、容器内に収容した上記X液をバーナ等で50
〜60℃に加熱する。そして、極低炭素含有鋼から採取
した供試材の鏡面を上記X液中に60〜150秒浸漬さ
せて第1段腐食を行う。尚、この第1段腐食は上記X液
を加熱しないで室温で行っても良いが、この場合には該
X液の反応速度が遅くなる。次に、供試材を上記X液中
から取り出し、これを蒸留水により水洗いし、ブロワ等
により1〜2分間乾燥させる。
法は、図1に示す工程で成される。図示されているよう
に、先ず、容器内に収容した上記X液をバーナ等で50
〜60℃に加熱する。そして、極低炭素含有鋼から採取
した供試材の鏡面を上記X液中に60〜150秒浸漬さ
せて第1段腐食を行う。尚、この第1段腐食は上記X液
を加熱しないで室温で行っても良いが、この場合には該
X液の反応速度が遅くなる。次に、供試材を上記X液中
から取り出し、これを蒸留水により水洗いし、ブロワ等
により1〜2分間乾燥させる。
【0024】その後、上記乾燥した供試材の鏡面を上記
Y液中に10〜30秒浸漬させて第2段腐食を行う。こ
のY液は加熱せず、室温で使用する。そして、供試材を
上記Y液中から取り出し、これを蒸留水により水洗い
し、ブロワ等により1〜2分間乾燥させる。
Y液中に10〜30秒浸漬させて第2段腐食を行う。こ
のY液は加熱せず、室温で使用する。そして、供試材を
上記Y液中から取り出し、これを蒸留水により水洗い
し、ブロワ等により1〜2分間乾燥させる。
【0025】以上の工程を経て本実施例の極低炭素含有
鋼の腐食方法は成され、この2段階腐食の完了した供試
材は顕微鏡観察へと供される。
鋼の腐食方法は成され、この2段階腐食の完了した供試
材は顕微鏡観察へと供される。
【0026】次に、上記実施例における作用を実験結果
に基づいて説明する。本実施例の極低炭素含有鋼の腐食
方法によれば、極低炭素含有鋼から採取した供試材の鏡
面は、図1に示したように、2段階で腐食される。即
ち、第1段腐食では、図2(a)に示すように、極低炭
素含有鋼のフェライト粒界が薄く現出される。この第1
段腐食の終了後、供試材の鏡面を水洗いし乾燥させるの
は、第1段腐食の腐食進行を停止してこの状態を維持す
るためである。また、第2段腐食では、図2(b)に示
すように、第1段腐食により薄く現出した極低炭素含有
鋼のフェライト粒界が適度な濃さに現出される。そし
て、上述したと同様に、この状態を維持するため、第2
段腐食終了後、供試材の鏡面を水洗いし乾燥させるもの
である。尚、図2(a)(b)に示した顕微鏡組織写真
の倍率は200倍である。
に基づいて説明する。本実施例の極低炭素含有鋼の腐食
方法によれば、極低炭素含有鋼から採取した供試材の鏡
面は、図1に示したように、2段階で腐食される。即
ち、第1段腐食では、図2(a)に示すように、極低炭
素含有鋼のフェライト粒界が薄く現出される。この第1
段腐食の終了後、供試材の鏡面を水洗いし乾燥させるの
は、第1段腐食の腐食進行を停止してこの状態を維持す
るためである。また、第2段腐食では、図2(b)に示
すように、第1段腐食により薄く現出した極低炭素含有
鋼のフェライト粒界が適度な濃さに現出される。そし
て、上述したと同様に、この状態を維持するため、第2
段腐食終了後、供試材の鏡面を水洗いし乾燥させるもの
である。尚、図2(a)(b)に示した顕微鏡組織写真
の倍率は200倍である。
【0027】また、本実施例の極低炭素含有鋼の腐食液
及びその腐食方法における各種数値限定を確立すべく、
以下のようにな実験を行った。供試材としては、下記表
1に示すような鋼材を用いた。
及びその腐食方法における各種数値限定を確立すべく、
以下のようにな実験を行った。供試材としては、下記表
1に示すような鋼材を用いた。
【表1】
【0028】上記表1に示した鋼材ABCDから採取し
た供試材について、上記X液及びY液の組成量を変化さ
せると共に、これら腐食液X,Yへの供試材の浸漬時間
を変化させて、上述した腐食方法により実験を行い、フ
ェライト(α)粒界の鮮明度及び結晶粒の脱落状況を確
認した。下記表2は、本実施例の実験結果を示したもの
である。尚、表2中、◎は極めて鮮明を意味し、○は鮮
明を意味する。
た供試材について、上記X液及びY液の組成量を変化さ
せると共に、これら腐食液X,Yへの供試材の浸漬時間
を変化させて、上述した腐食方法により実験を行い、フ
ェライト(α)粒界の鮮明度及び結晶粒の脱落状況を確
認した。下記表2は、本実施例の実験結果を示したもの
である。尚、表2中、◎は極めて鮮明を意味し、○は鮮
明を意味する。
【表2】 上記表2に示したように、本実施例における供試材1〜
5の全てについて、フェライト粒界が鮮明に現出され、
且つ、結晶粒の脱落現象も生じなかった。
5の全てについて、フェライト粒界が鮮明に現出され、
且つ、結晶粒の脱落現象も生じなかった。
【0029】また、本実施例の作用効果を確認すべく、
下記表3に示すような比較例についても、実験を行っ
た。尚、表2中、○は鮮明を、△はやや鮮明を、×は不
鮮明を意味する。
下記表3に示すような比較例についても、実験を行っ
た。尚、表2中、○は鮮明を、△はやや鮮明を、×は不
鮮明を意味する。
【表3】 上記表3に示したように、比較例における供試材11〜
24の全てについて、フェライト粒界がやや鮮明・不鮮
明であったり、又は、結晶粒の脱落現象が生じるという
いずれかの不具合が認められた。
24の全てについて、フェライト粒界がやや鮮明・不鮮
明であったり、又は、結晶粒の脱落現象が生じるという
いずれかの不具合が認められた。
【0030】以上の実験結果を考察することにより、本
実施例の極低炭素含有鋼の腐食液及びその腐食方法にお
ける各種数値限定を確立することができた。即ち、ピク
リン酸の添加量を蒸留水100mlに対して1.0〜6.
0gの範囲で限定したが、この範囲では上記表2に示し
たように、フェライト粒界が鮮明に現出され、且つ、結
晶粒の脱落現象も生じなかった。一方、上記表3に示し
たように、供試材11のピクリン酸の添加量は0.7g
であるが、この場合には結晶粒の脱落現象は生じなかっ
たが、フェライト粒界が不鮮明であった。また、供試材
12のピクリン酸の添加量は6.5gであるが、この場
合にはフェライト粒界は鮮明に現出されたが、結晶粒の
脱落現象が生じた。従って、ピクリン酸の添加量は、蒸
留水100mlに対して1.0〜6.0gの範囲で設定さ
れるものである。このような実験結果が得られたことを
考察するに、ピクリン酸を溶解するのは、極低炭素含有
鋼のフェライト粒界に存在するMn,P又はセメンタイ
トと反応してフェライト組織を現出させる作用を有する
からである。よって、1.0g未満では反応速度が遅過
ぎ、一方、6.0gを超えると反応速度が速過ぎてその
コントロールが困難になるからであると考えられる。
実施例の極低炭素含有鋼の腐食液及びその腐食方法にお
ける各種数値限定を確立することができた。即ち、ピク
リン酸の添加量を蒸留水100mlに対して1.0〜6.
0gの範囲で限定したが、この範囲では上記表2に示し
たように、フェライト粒界が鮮明に現出され、且つ、結
晶粒の脱落現象も生じなかった。一方、上記表3に示し
たように、供試材11のピクリン酸の添加量は0.7g
であるが、この場合には結晶粒の脱落現象は生じなかっ
たが、フェライト粒界が不鮮明であった。また、供試材
12のピクリン酸の添加量は6.5gであるが、この場
合にはフェライト粒界は鮮明に現出されたが、結晶粒の
脱落現象が生じた。従って、ピクリン酸の添加量は、蒸
留水100mlに対して1.0〜6.0gの範囲で設定さ
れるものである。このような実験結果が得られたことを
考察するに、ピクリン酸を溶解するのは、極低炭素含有
鋼のフェライト粒界に存在するMn,P又はセメンタイ
トと反応してフェライト組織を現出させる作用を有する
からである。よって、1.0g未満では反応速度が遅過
ぎ、一方、6.0gを超えると反応速度が速過ぎてその
コントロールが困難になるからであると考えられる。
【0031】また、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナト
リウムの添加量を蒸留水100mlに対して2.0〜1
5.0gの範囲で限定したが、この範囲では上記表2に
示したように、フェライト粒界が鮮明に現出され、且
つ、結晶粒の脱落現象も生じなかった。一方、上記表3
に示したように、供試材13のドデシルベンゼンスルフ
ォン酸ナトリウムの添加量は1.0gであるが、この場
合には結晶粒の脱落現象は生じなかったが、フェライト
粒界が不鮮明であった。また、供試材14のドデシルベ
ンゼンスルフォン酸ナトリウムの添加量は17.0gで
あるが、この場合にはフェライト粒界は鮮明に現出され
たが、結晶粒の脱落現象が生じた。従って、ドデシルベ
ンゼンスルフォン酸ナトリウムの添加量は、蒸留水10
0mlに対して2.0〜15.0gの範囲で設定されるも
のである。このような実験結果が得られたことを考察す
るに、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを溶解
するのは、上記腐食液と供試材の界面を活性化する働き
を有するからである。よって、2.0g未満では活性化
作用が不十分であり、一方、15.0gを超えても活性
化作用の増大がないからであると考えられる。
リウムの添加量を蒸留水100mlに対して2.0〜1
5.0gの範囲で限定したが、この範囲では上記表2に
示したように、フェライト粒界が鮮明に現出され、且
つ、結晶粒の脱落現象も生じなかった。一方、上記表3
に示したように、供試材13のドデシルベンゼンスルフ
ォン酸ナトリウムの添加量は1.0gであるが、この場
合には結晶粒の脱落現象は生じなかったが、フェライト
粒界が不鮮明であった。また、供試材14のドデシルベ
ンゼンスルフォン酸ナトリウムの添加量は17.0gで
あるが、この場合にはフェライト粒界は鮮明に現出され
たが、結晶粒の脱落現象が生じた。従って、ドデシルベ
ンゼンスルフォン酸ナトリウムの添加量は、蒸留水10
0mlに対して2.0〜15.0gの範囲で設定されるも
のである。このような実験結果が得られたことを考察す
るに、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウムを溶解
するのは、上記腐食液と供試材の界面を活性化する働き
を有するからである。よって、2.0g未満では活性化
作用が不十分であり、一方、15.0gを超えても活性
化作用の増大がないからであると考えられる。
【0032】さらに、この腐食液に対する鉄粉の添加量
を0.1〜0.5gの範囲で限定したが、この範囲では
上記表2に示したように、フェライト粒界が鮮明に現出
され、且つ、結晶粒の脱落現象も生じなかった。一方、
上記表3に示したように、供試材15の鉄粉の添加量は
0gであるが、この場合には結晶粒の脱落現象は生じな
かったが、フェライト粒界がやや不鮮明であった。ま
た、供試材16の鉄粉の添加量は0.7gであるが、こ
の場合にはフェライト粒界は鮮明に現出されたが、結晶
粒の脱落現象が生じた。従って、この腐食液に対する鉄
粉の添加量は、0.1〜0.5gの範囲で設定されるも
のである。このような実験結果が得られたことを考察す
るに、上記腐食液に鉄粉を添加するのは、上記極低炭素
含有鋼から採取した供試材の鏡面に該腐食液を馴染ませ
るためである。よって、0.1g未満では上記腐食液が
馴染まず、一方、0.5gを超えると上記腐食液が上記
鉄粉と反応し過ぎて腐食性を有しなくなるからであると
考える。
を0.1〜0.5gの範囲で限定したが、この範囲では
上記表2に示したように、フェライト粒界が鮮明に現出
され、且つ、結晶粒の脱落現象も生じなかった。一方、
上記表3に示したように、供試材15の鉄粉の添加量は
0gであるが、この場合には結晶粒の脱落現象は生じな
かったが、フェライト粒界がやや不鮮明であった。ま
た、供試材16の鉄粉の添加量は0.7gであるが、こ
の場合にはフェライト粒界は鮮明に現出されたが、結晶
粒の脱落現象が生じた。従って、この腐食液に対する鉄
粉の添加量は、0.1〜0.5gの範囲で設定されるも
のである。このような実験結果が得られたことを考察す
るに、上記腐食液に鉄粉を添加するのは、上記極低炭素
含有鋼から採取した供試材の鏡面に該腐食液を馴染ませ
るためである。よって、0.1g未満では上記腐食液が
馴染まず、一方、0.5gを超えると上記腐食液が上記
鉄粉と反応し過ぎて腐食性を有しなくなるからであると
考える。
【0033】次に、上記第1段腐食に使用するX液の加
熱温度を50〜60℃の範囲で限定したが、この範囲で
は上記表2に示したように、フェライト粒界が鮮明に現
出され、且つ、結晶粒の脱落現象も生じなかった。一
方、上記表3に示したように、供試材17の加熱温度は
45℃であるが、この場合には結晶粒の脱落現象は生じ
なかったが、フェライト粒界が不鮮明であった。また、
供試材18の加熱温度は65℃であるが、この場合には
フェライト粒界は鮮明に現出されたが、結晶粒の脱落現
象が生じた。従って、X液の加熱温度は50〜60℃の
範囲で設定されるものである。このような実験結果が得
られたことを考察するに、X液を加熱するのは第1段腐
食の腐食時間が短縮されるからである。よって、50℃
未満では腐食速度は加熱しない場合と殆ど変わらず、一
方、60℃を超えると腐食速度が速過ぎそのコントロー
ルが困難になるからであると考える。
熱温度を50〜60℃の範囲で限定したが、この範囲で
は上記表2に示したように、フェライト粒界が鮮明に現
出され、且つ、結晶粒の脱落現象も生じなかった。一
方、上記表3に示したように、供試材17の加熱温度は
45℃であるが、この場合には結晶粒の脱落現象は生じ
なかったが、フェライト粒界が不鮮明であった。また、
供試材18の加熱温度は65℃であるが、この場合には
フェライト粒界は鮮明に現出されたが、結晶粒の脱落現
象が生じた。従って、X液の加熱温度は50〜60℃の
範囲で設定されるものである。このような実験結果が得
られたことを考察するに、X液を加熱するのは第1段腐
食の腐食時間が短縮されるからである。よって、50℃
未満では腐食速度は加熱しない場合と殆ど変わらず、一
方、60℃を超えると腐食速度が速過ぎそのコントロー
ルが困難になるからであると考える。
【0034】また、上記X液を50〜60℃の範囲で加
熱しても、該X液による好適浸漬時間を設定する必要が
ある。本実施例にあっては、その浸漬時間を60〜15
0秒に限定したが、この範囲では上記表2に示したよう
に、フェライト粒界が鮮明に現出され、且つ、結晶粒の
脱落現象も生じなかった。一方、上記表3に示したよう
に、供試材19の浸漬時間は50秒であるが、この場合
には結晶粒の脱落現象は生じなかったが、フェライト粒
界がやや不鮮明であった。また、供試材20のの浸漬時
間は160秒であるが、この場合にはフェライト粒界は
鮮明に現出されたが、結晶粒の脱落現象が生じた。従っ
て、50〜60℃の範囲に加熱したX液への浸漬時間は
60〜150秒の範囲で設定されるものである。
熱しても、該X液による好適浸漬時間を設定する必要が
ある。本実施例にあっては、その浸漬時間を60〜15
0秒に限定したが、この範囲では上記表2に示したよう
に、フェライト粒界が鮮明に現出され、且つ、結晶粒の
脱落現象も生じなかった。一方、上記表3に示したよう
に、供試材19の浸漬時間は50秒であるが、この場合
には結晶粒の脱落現象は生じなかったが、フェライト粒
界がやや不鮮明であった。また、供試材20のの浸漬時
間は160秒であるが、この場合にはフェライト粒界は
鮮明に現出されたが、結晶粒の脱落現象が生じた。従っ
て、50〜60℃の範囲に加熱したX液への浸漬時間は
60〜150秒の範囲で設定されるものである。
【0035】さらに、上記第2段腐食に使用するY液の
好適硝酸濃度を設定する必要がある。本実施例にあって
は、その硝酸濃度を2〜5%の範囲で限定したが、この
範囲では上記表2に示したように、フェライト粒界が鮮
明に現出され、且つ、結晶粒の脱落現象も生じなかっ
た。一方、上記表3に示したように、供試材21の硝酸
濃度は1%であるが、この場合には結晶粒の脱落現象は
生じなかったが、フェライト粒界が不鮮明であった。ま
た、供試材22の硝酸濃度は6%であるが、この場合に
はフェライト粒界は鮮明に現出されたが、結晶粒の脱落
現象が生じた。従って、Y液の硝酸濃度は2〜5%の範
囲で設定されるものである。このような実験結果が得ら
れたことを考察するに、Y液を第2段腐食に使用するの
は、第1段腐食により薄く現出した極低炭素含有鋼のフ
ェライト粒界を適度な濃さに現出させるためである。よ
って、2%未満ではフェライト粒界が濃くならず、一
方、5%を超えるとフェライト粒界が浸食され過ぎるか
らであると考える。
好適硝酸濃度を設定する必要がある。本実施例にあって
は、その硝酸濃度を2〜5%の範囲で限定したが、この
範囲では上記表2に示したように、フェライト粒界が鮮
明に現出され、且つ、結晶粒の脱落現象も生じなかっ
た。一方、上記表3に示したように、供試材21の硝酸
濃度は1%であるが、この場合には結晶粒の脱落現象は
生じなかったが、フェライト粒界が不鮮明であった。ま
た、供試材22の硝酸濃度は6%であるが、この場合に
はフェライト粒界は鮮明に現出されたが、結晶粒の脱落
現象が生じた。従って、Y液の硝酸濃度は2〜5%の範
囲で設定されるものである。このような実験結果が得ら
れたことを考察するに、Y液を第2段腐食に使用するの
は、第1段腐食により薄く現出した極低炭素含有鋼のフ
ェライト粒界を適度な濃さに現出させるためである。よ
って、2%未満ではフェライト粒界が濃くならず、一
方、5%を超えるとフェライト粒界が浸食され過ぎるか
らであると考える。
【0036】そして、上記Y液の硝酸濃度を2〜5%の
範囲で設定しても、該Y液による好適浸漬時間を設定す
る必要がある。本実施例にあっては、その浸漬時間を1
0〜30秒に限定したが、この範囲では上記表2に示し
たように、フェライト粒界が鮮明に現出され、且つ、結
晶粒の脱落現象も生じなかった。一方、上記表3に示し
たように、供試材23の浸漬時間は5秒であるが、この
場合には結晶粒の脱落現象は生じなかったが、フェライ
ト粒界が不鮮明であった。また、供試材24のの浸漬時
間は35秒であるが、この場合にはフェライト粒界は鮮
明に現出されたが、結晶粒の脱落現象が生じた。従っ
て、硝酸濃度を2〜5%の範囲で設定したY液への浸漬
時間は10〜30秒の範囲で設定されるものである。
範囲で設定しても、該Y液による好適浸漬時間を設定す
る必要がある。本実施例にあっては、その浸漬時間を1
0〜30秒に限定したが、この範囲では上記表2に示し
たように、フェライト粒界が鮮明に現出され、且つ、結
晶粒の脱落現象も生じなかった。一方、上記表3に示し
たように、供試材23の浸漬時間は5秒であるが、この
場合には結晶粒の脱落現象は生じなかったが、フェライ
ト粒界が不鮮明であった。また、供試材24のの浸漬時
間は35秒であるが、この場合にはフェライト粒界は鮮
明に現出されたが、結晶粒の脱落現象が生じた。従っ
て、硝酸濃度を2〜5%の範囲で設定したY液への浸漬
時間は10〜30秒の範囲で設定されるものである。
【0037】尚、特開平2−141590号公報に「フ
ェライト結晶粒界現出液及びエッチング」に関する発明
が開示されているが、この公報記載のフェライト結晶粒
界現出液は塩酸又は硫酸を含有している。このように塩
酸又は硫酸を含有したのでは、前述したNb、Tiを添
加した極低炭素鋼を腐食すると、該現出液が結晶粒界の
化学成分とより強く反応するため、粒界が深く浸食され
過ぎ、その浸食部分の結晶粒が脱落してしまう。また、
本発明に係る極低炭素含有鋼の腐食液は鉄粉を添加して
おり、この鉄粉により供試材の鏡面に該腐食液を馴染ま
せることができる。従って、上記公報記載のフェライト
結晶粒界現出液及びエッチングでは、本発明の目的を到
底達成し得ないものである。
ェライト結晶粒界現出液及びエッチング」に関する発明
が開示されているが、この公報記載のフェライト結晶粒
界現出液は塩酸又は硫酸を含有している。このように塩
酸又は硫酸を含有したのでは、前述したNb、Tiを添
加した極低炭素鋼を腐食すると、該現出液が結晶粒界の
化学成分とより強く反応するため、粒界が深く浸食され
過ぎ、その浸食部分の結晶粒が脱落してしまう。また、
本発明に係る極低炭素含有鋼の腐食液は鉄粉を添加して
おり、この鉄粉により供試材の鏡面に該腐食液を馴染ま
せることができる。従って、上記公報記載のフェライト
結晶粒界現出液及びエッチングでは、本発明の目的を到
底達成し得ないものである。
【0038】
【発明の効果】以上述べたように、本発明に係る極低炭
素含有鋼の腐食液及びその腐食方法によれば、結晶粒を
脱落させることなく、健全なフェライト組織を明瞭に現
出させることができる、という優れた効果を発揮する。
素含有鋼の腐食液及びその腐食方法によれば、結晶粒を
脱落させることなく、健全なフェライト組織を明瞭に現
出させることができる、という優れた効果を発揮する。
【図1】本発明に係る極低炭素含有鋼の腐食方法の一実
施例を示す工程図である。
施例を示す工程図である。
【図2】本実施例により腐食した極低炭素含有鋼の顕微
鏡組織を示し、(a)は第1段腐食の顕微鏡組織写真、
(b)は第2段腐食の顕微鏡組織写真である。
鏡組織を示し、(a)は第1段腐食の顕微鏡組織写真、
(b)は第2段腐食の顕微鏡組織写真である。
【図3】従来のナイタールによる腐食状況を示す顕微鏡
組織写真である。
組織写真である。
【図4】従来の特開平1−185444号公報で提案の
腐食液による腐食状況を示す顕微鏡組織写真である。
腐食液による腐食状況を示す顕微鏡組織写真である。
【表1】実験に使用する鋼材の化学成分を示すものであ
る。
る。
【表2】本実施例における実験結果を示すものである。
【表3】比較例における実験結果を示すものである。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年7月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】追加
【補正内容】
【図3】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】追加
【補正内容】
【図4】 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年1月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る極低炭素含有鋼の腐食方法の一実
施例を示す工程図である。
施例を示す工程図である。
【図2】本実施例により腐食した極低炭素含有鋼の顕微
鏡組織を示し、(a)は第1段腐食の顕微鏡組織写真、
(b)は第2段腐食の顕微鏡組織写真である。
鏡組織を示し、(a)は第1段腐食の顕微鏡組織写真、
(b)は第2段腐食の顕微鏡組織写真である。
【図3】従来のナイタールによる腐食状況を示す顕微鏡
組織写真である。
組織写真である。
【図4】従来の特開平1−185444号公報で提案の
腐食液による腐食状況を示す顕微鏡組織写真である。
腐食液による腐食状況を示す顕微鏡組織写真である。
【符号の説明】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂本 研哉 大分県大分市大字西ノ洲1番地 新日本製 鐵株式会社大分製鐵所内
Claims (3)
- 【請求項1】 水100mlに対して、ピクリン酸1.0
〜6.0gとドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム
2.0〜15.0gとを溶解すると共に、鉄粉0.1〜
0.5gを添加したことを特徴とする極低炭素含有鋼の
腐食液。 - 【請求項2】 極低炭素含有鋼から採取した供試材の鏡
面を請求項1に記載の腐食液に所定時間浸漬させて第1
段腐食を行い、これを水洗いし乾燥後、硝酸アルコール
に所定時間浸漬させ第2段腐食を行い、これを水洗いし
乾燥するようにしたことを特徴とする極低炭素含有鋼の
腐食方法。 - 【請求項3】 前記第1段腐食に使用する腐食液が50
〜60℃に加熱され、該腐食液への浸漬時間が60〜1
50秒であることを特徴とする請求項2に記載の極低炭
素含有鋼の腐食方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1685193A JPH06207279A (ja) | 1993-01-08 | 1993-01-08 | 極低炭素含有鋼の腐食液及びその腐食方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1685193A JPH06207279A (ja) | 1993-01-08 | 1993-01-08 | 極低炭素含有鋼の腐食液及びその腐食方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06207279A true JPH06207279A (ja) | 1994-07-26 |
Family
ID=11927720
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1685193A Pending JPH06207279A (ja) | 1993-01-08 | 1993-01-08 | 極低炭素含有鋼の腐食液及びその腐食方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH06207279A (ja) |
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1993
- 1993-01-08 JP JP1685193A patent/JPH06207279A/ja active Pending
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