JPH06201915A - 酸化タンタル−シリカ干渉フィルタおよびそれを用いたランプ - Google Patents

酸化タンタル−シリカ干渉フィルタおよびそれを用いたランプ

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JPH06201915A
JPH06201915A JP5278764A JP27876493A JPH06201915A JP H06201915 A JPH06201915 A JP H06201915A JP 5278764 A JP5278764 A JP 5278764A JP 27876493 A JP27876493 A JP 27876493A JP H06201915 A JPH06201915 A JP H06201915A
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tantalum oxide
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titanium oxide
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interference filter
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Frederick W Dynys
フレデリック・ダブリュ・ダイニス
Jean Parham Thomas
トーマス・ジーン・パーハム
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電球エンベロープなどの光透過性ガラス質基
板上に形成する光干渉フィルタを提供する。 【構成】 酸化タンタル層とシリカ層とを交互に積層し
てなり、各酸化タンタル層が酸化チタンを約10モル%
未満の量含有し、これにより酸化タンタル層の微細組織
を後続の結晶化時に制御し、酸化タンタル層の外因応力
を低減する。また、各酸化タンタル層に酸化チタンを含
有させる代りに、あるいは含有させた上で、酸化タンタ
ル層の少なくとも数層を酸化チタン層(前置層および/
または後置層)と接触関係に配置することもでき、これ
により酸化タンタル層の微細組織を後続の結晶化時に制
御し、酸化タンタル層の外因応力を低減する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、酸化タンタル層およ
びシリカ層を交互に積層してなる光干渉フィルタおよび
そのランプへの使用に関する。この発明は、特に、酸化
タンタル層およびシリカ層を交互に積層してなり、酸化
タンタルに酸化チタンを導入するか、酸化タンタル層を
酸化チタン層と接触させるか、またはその両方により、
後で結晶化により酸化タンタル層に生じる外因応力を軽
減した光干渉フィルタおよびこのようなフィルタのラン
プへの使用に関する。
【0002】
【従来の技術】屈折率の異なる2種以上の材料の層を交
互に積層した光学的薄膜コーティングは、干渉フィルタ
とも呼ばれ、当業界でよく知られている。このような光
学的コーティングは、電磁波スペクトルの種々の部分か
らの光放射線を選択的に反射するか透過するのに用いら
れ、また電球(ランプ)工業において反射器(リフレク
タ)やランプエンベロープを被覆するのに用いられてい
る。
【0003】フィルタが約500°C以上の高温にさら
される用途に用いる干渉フィルタは、低屈折率材料とし
てのシリカ(SiO2 )の層と高屈折率材料としての酸
化タンタル(五酸化タンタルTa2 5 )の層を交互に
積層して構成されている。このようなフィルタおよびそ
れを用いたランプが、たとえば、米国特許第4,94
9,005号、第4,689,519号、第4,66
3,557号および第4,588,923号に開示され
ている。これらの米国特許明細書をこの発明の先行技術
として援用しておく。
【0004】シリカ層と酸化タンタル層とを交互に積層
した干渉フィルタを高温で使用した場合に生じる過酷な
応力形成の問題が、米国特許第4,734,614号で
認識されている。この米国特許明細書もこの発明の先行
技術として援用しておく。この特許明細書によれば、酸
化タンタルは、物理的および化学的安定性に限界があ
り、800°Cで約30分後に多結晶形態に結晶化する
が、このような加熱によりクラクール(craquele)とし
て見える応力亀裂が生じる。この結果得られるフィルタ
は、可視光も赤外線も散乱させるため、所定の目的には
不適当である。
【0005】複雑な形状の物体に比較的均一な皮膜を設
層することができ、得られるフィルムが亀裂を生じたり
基板からはがれたりする原因となる応力を導入しないよ
うにフィルムを形成する方法が必要とされ、この要請に
こたえるべく、本発明の共同発明者であるT.Parhamら
が米国特許第4,949,005号で提案した干渉フィ
ルタ薄膜光学的コーティングは、本質的に酸化タンタル
層とシリカ層とを交互に積層してなり、光散乱が比較的
少なく、高温での使用に適当である。このようなコーテ
ィングを製造するには、化学蒸着(CVD)法、好まし
くは低圧化学蒸着(LPCVD)法を用いて、石英など
の適当な基板上にコーティングを形成する。交互の層を
適用した後、得られる光フィルタをアニールして、約6
00°C以上の温度での酸化タンタルの結晶化に基づく
体積変化による決定的な破壊につながる外因応力が生じ
るのを避ける。さもないと、かかる体積変化は、亀裂や
座屈の原因となり、その結果、接着性が低下し、剥離が
生じ、望ましくない光の光学的散乱が生じる。したがっ
て、被覆した基板を約550−675°Cの温度に加熱
し、この温度に約0.5−5時間維持しなければならな
い。
【0006】しかし、関連技術が発展しているにもかか
わらず、応力を低減するために堆積後に必要なアニール
工程は、必須のままであり、干渉フィルタおよびこれら
の干渉フィルタを含むランプなどの物品を製造するのに
要する費用と時間を押しあげている。
【0007】
【発明の目的】したがって、この発明の目的は、酸化タ
ンタル層の外因応力を低減し、こうして堆積後のアニー
ル処理の必要性を軽減した、酸化タンタル−シリカ光干
渉フィルタを提供することにあり、こうすれば、たとえ
ばシリカ層の応力を解除するアニール処理と組み合わせ
たとき、応力に関連した損傷(ダメージ)の少ないフィ
ルタが得られる。
【0008】この発明の別の目的は、CVDまたは低圧
CVD法により製造した低応力酸化タンタル−シリカ光
干渉フィルタを提供することにある。この発明の他の目
的は、低応力酸化タンタル−シリカ光干渉フィルタを設
けることで、エネルギー効率を改良したランプを提供す
ることにある。
【0009】
【発明の概要】このような目的を達成するこの発明の光
干渉フィルタは、光透過性ガラス質基板と、酸化タンタ
ル(タンタラ)層および酸化けい素(シリカ)層の交互
積層体とを備える。各酸化タンタル層は酸化チタン(チ
タニア)を約10モル%未満の量含有する。酸化チタン
・ドーパントを導入することにより、後での結晶化中の
酸化タンタル層の微細組織を制御し、これにより酸化タ
ンタル層の外因応力を減らす。各酸化タンタル層に酸化
チタンを導入する代りに、あるいは酸化チタンの導入に
加えて、この発明では、酸化チタン層を少なくとも数層
の酸化タンタル層と接触関係に設けること、すなわち酸
化チタンの前置層および/または後置層を設けることも
想定している。酸化チタン導入の場合のように、酸化タ
ンタル層を酸化チタン層と接触させることも、後でフィ
ルムを加熱することによる結晶化中の酸化タンタル層の
微細組織を制御し、これにより酸化タンタル層の外因応
力を減らすのに有効である。
【0010】この発明はさらに、電気光源を包囲する光
透過性ガラス質エンベロープと、前述した通りのこの発
明による光干渉フィルタとを備えるランプを提供する。
この発明の干渉フィルタは、CVD法、特に低圧CVD
法により製造するのが好ましく、その製造方法として
は、CVD、特に低圧CVDにより適当な前駆物質から
光透過性ガラス質基板上に酸化タンタル層およびシリカ
層を交互に堆積して被覆基板を形成し、この際各酸化タ
ンタル層の酸化チタン含有量を約10モル%未満とす
る。酸化チタン添加酸化タンタル層の代りに、またはそ
れに加えて酸化チタンの前置層および/または後置層を
用いるこの発明の実施例では、製造方法が、少なくとも
数層の酸化タンタル層の堆積前または後に酸化チタン層
を堆積する工程を含む。この発明の光干渉フィルタを6
50°C以上の温度で使用する予定であれば、被覆した
基板を、酸化タンタルを結晶化するのに十分な温度に十
分な時間アニールするのが好ましい。特に好ましくは、
被覆基板を約550−800°Cの温度に約1時間以上
保持する。これにより酸化タンタルが結晶化する。特に
好ましくは、被覆基板を約650°Cに約2時間保持す
る。約650−675°Cの範囲の温度では、酸化タン
タルは約1−2時間以内に結晶化し、その後は加熱を継
続しても、それ以上の結晶化は起こらない。
【0011】この発明はさらに、光干渉フィルタを支持
する光透過性ガラス質基板も提供し、この光干渉フィル
タは酸化タンタル層およびシリカ層を交互に積層してな
り、各酸化タンタル層が酸化チタンを約10モル%未満
の量含有するか、酸化タンタル層の少なくとも数層が酸
化チタン層(前置層および/または後置層)と接触して
いる。
【0012】
【具体的な構成】光干渉フィルムの全応力は、3つの独
立した応力、すなわち熱応力、内部応力および外因応力
の和である。熱応力は、基板とフィルムとの間の熱膨張
の不一致からくる一定の応力である。内部応力と外因応
力はプロセスに依存する。内部応力は、フィルム堆積中
の結合長さおよび角度の不規則から生じる。外因応力
は、無定形(アモルファス)であった材料の結晶化が体
積変化をもたらすことから生じる。たとえば、約600
°C以上の温度でアモルファス酸化タンタルから酸化タ
ンタルの結晶化が生じる。結晶化中の体積変化により外
因応力が生成し、これがフィルムの亀裂や座屈の原因と
なり、この結果、望ましくない光の光学的散乱の起こる
部位が生成し、基板の強度が低下する。
【0013】この発明では、酸化タンタルに酸化チタン
を添加するか、酸化タンタルを前置層および/または後
置層としての酸化チタン層と接触させるか、これらの両
方により、外因応力の減少した酸化タンタル層を光干渉
フィルタに設ける。こうすれば、この発明のフィルタ中
のアモルファス酸化タンタル層が後で結晶化したとき
に、この発明以外で得られるものよりはるかに規則性の
高い結晶性酸化タンタルが得られる。この発明による酸
化タンタル層は結晶粒子構造が細かく、微小割れが少な
い。この発明の方法およびこれらの方法で製造した光干
渉フィルタは、光散乱に基づく光学的損失が少ない。
【0014】酸化チタンをドープした酸化タンタルの単
層を種々のCVD法で製造し、酸化タンタルの微細組織
が酸化チタンの濃度に依存することを確かめた。第1の
CVD法では、酸化チタンの導入(ドーピング)を、気
相でチタンイソブトキシド蒸気とタンタルエトキシド蒸
気とを混合することにより行った。第2のCVD法で
は、酸化チタンの導入(ドーピング)を、液体チタンエ
トキシドと液体タンタルエトキシドとを混合し、混合液
を気相に蒸発させることにより行った。いずれの方法で
も、得られた酸化タンタルはアモルファスで、後での加
熱によるアモルファス酸化タンタルの結晶化が、ドープ
なしの酸化タンタルフィルムの場合より細かい結晶粒子
構造の核生成により区別できることを確かめた。これ
は、酸化チタンの導入が、後での結晶化中に、ドープさ
れた酸化タンタル層の微細組織を「制御」することを意
味する。
【0015】したがって、たとえば、タンタルエトキシ
ドとチタンイソブトキシドを反応器内で別々に蒸発さ
せ、気相組成をチタン含有量0−35モル%の範囲で変
えた場合、酸化チタンを約10モル%未満の量、好まし
くは約0.1−2モル%の量含有するように形成したフ
ィルムは、結晶化後の微細組織が著しく向上していた
が、酸化チタン含有量がそれより多い(10モル%以
上)フィルムは曇っており、望ましくない光学的散乱を
示した。したがって、酸化チタンのドーピングレベルが
高過ぎると、おそらくは望ましくない相が形成されるた
めに、低品質のフィルムが生じる。650°Cで15時
間熱処理した後の酸化チタン添加フィルムの走査型電子
顕微鏡(SEM)写真から、1−2モル%の酸化チタン
を含有するフィルムは微小割れがいちじるしく減少して
おり、光学的散乱が少ないことがわかった。これらのフ
ィルムのいくつかのX線回折(XRD)測定から、少量
の酸化チタンを含有するフィルムが、純粋な酸化タンタ
ルフィルムより規則性がはるかに高い、すなわち、ピー
ク強度がはるかに高いことがわかった。タンタルエトキ
シドとチタンエトキシドを予め混合し、ついで予混合材
料を堆積室内で噴射し、蒸発させた場合にも、同様の結
果が得られた。
【0016】800°Cで24時間加熱した酸化タンタ
ル(ドープなし)の単層は、SEM写真から、結晶粒度
が均一で約1ミクロンであることがわかった。1%の酸
化チタンをドープした酸化タンタルの同様の写真は、結
晶粒度の双峰分布を示した。すなわち、粒度約0.5ミ
クロンの結晶粒子と約1ミクロンの結晶粒子が認められ
た。さらに、ドープなしの酸化タンタルフィルムは微小
割れの密度が高かったが、ドープしたフィルムは微小割
れのレベルが十分に低かった。これら2つの材料のXR
Dパターンから、1モル%の酸化チタンを含有する酸化
タンタルが規則性の高い組織に結晶化したことがわかっ
た。したがって、酸化タンタル中の酸化チタンのドーピ
ングレベルは、後続の結晶化中に酸化タンタル層の微細
組織を制御するのに有効な量であればどのような量でも
よく、一般に約10モル%未満の量である。したがっ
て、有益なドーピング範囲は、酸化タンタル中の約0.
001モル%から約10モル%未満まで、特に好ましく
は約0.1モル%から約2モル%までである。
【0017】良好な酸化タンタル微細組織はほかに、酸
化タンタル層に隣接させて酸化チタンの薄層を設けるこ
とによっても得られる。この場合、酸化タンタルの層を
酸化チタンの薄い前置層の上に堆積するか、薄い酸化チ
タンの後置層を酸化タンタルの層の上に堆積するか、こ
れらの両方を行えばよい。たとえば、厚さ約130オン
グストロームの酸化チタンの前置層をチタンエトキシド
からCVDにより堆積した後、その上に酸化タンタルを
堆積した。このようにして堆積した酸化チタンは、寸法
が約300オングストロームのアナターゼの極端に小さ
い微結晶からなることを確かめた。
【0018】酸化タンタルのアモルファス層に接触させ
て酸化チタンの隣接層を設けることが、酸化タンタルを
後で結晶化させるときに、酸化タンタルに一層微細な結
晶粒子構造の核を生成するのに有効であることを確かめ
た。この結果は、このような酸化チタン/酸化タンタル
2層のSEM調査により確認した。結晶化した酸化タン
タルの微細組織のいちじるしい変態が見られた。結晶化
した酸化タンタルは、粒度が約0.3−0.6ミクロン
の範囲の極めて小さい結晶粒子から構成された。XRD
パターンから、この酸化タンタルが、結晶化後に、1モ
ル%の酸化チタンでドープした酸化タンタル層とほぼ同
じ有利な組織を持つことが確認された。すなわち、酸化
タンタルが規則性の高い状態に結晶化していた。その
上、これらの有利な結果が、2層を約650−900°
Cの範囲のランプ点灯温度に加熱しても、そのまま保た
れた。
【0019】酸化タンタルフィルム中の酸化チタンドー
パントの量が、少量の酸化チタン前駆物質での低圧CV
Dによる堆積時の気相中の酸化チタンの量とは、ある程
度独立であることを確かめた。すなわち、酸化チタンで
ドープした酸化タンタルフィルム中の酸化チタンの量
が、低圧CVD堆積プロセス中の混合酸化チタン/酸化
タンタル前駆物質ガス雰囲気中の酸化チタン前駆物質の
量と同じでない、ことがわかった。
【0020】さらに、隣接酸化チタン層は酸化タンタル
層よりいちじるしく薄くなければならない。限定するわ
けではないが、1例を挙げると、酸化タンタル層は通常
厚さ約500オングストローム以上であるのに対して、
この酸化タンタル層に接触する、前に堆積した酸化チタ
ン層および/または後で堆積した酸化チタン層は通常厚
さ約50−150オングストロームである。もちろん、
酸化タンタルが500オングストロームより薄い例外も
あるが、目標は酸化チタン層を、酸化タンタルが後で結
晶化するときに所望の結晶形態(モルフォロジー)を得
るのに十分な薄さに維持することである。同時に、酸化
チタン層が、光学的特性を不当に妨害したり、フィルム
設計を不当に複雑にするほど厚くてはいけない。これ
は、酸化チタンの熱膨張係数が大きく、その結果熱応力
を生じるからである。さらに、酸化チタンの単層を約9
00°C以上に加熱すると、アナターゼからルチル型酸
化チタンへの変換が起こり、フィルムが曇る。
【0021】ここで図面を参照してこの発明を説明す
る。図1に示すランプは、その外面にこの発明による酸
化タンタル−シリカ干渉フィルタが設けられている。こ
の干渉フィルタが赤外線を反射してフィラメントに戻
し、フィラメントで赤外線を可視光に変換する。図示の
ランプは、この発明の例示であって、この発明を限定す
るものではない。
【0022】図1に示すランプは、約800°C以上の
高温に耐える光透過性ガラス質材料、たとえば石英から
形成したエンベロープ(管)10を備える。エンベロー
プ10の各端部はピンチシール(圧潰)部12となって
おり、このピンチシール部12に導入リード・コネクタ
13がシールされ、コネクタ13がモリブデン箔14に
溶接などの適当な手段で電気的かつ機械的に取り付けら
れ、モリブデン箔14がランプのピンチシール部12に
埋設され気密シールされている。モリブデンまたはタン
グステンなどの適当な耐火金属から形成したリード15
の一端が、モリブデン箔14の他端に取り付けられ、他
端がタングステンフィラメント17に接続されている。
フィラメント17はその軸線上でエンベロープ内に複数
の適当な支持部材18、たとえば米国特許第3,16
8,670号に開示された形式のタングステンの螺旋状
ワイヤ支持部材により支持されている。この発明の薄膜
光干渉フィルタ20が、ランプの外面上に連続皮膜とし
て設けられている。
【0023】フィルム20は、酸化タンタル層とシリカ
層とを交互に、ランプが発光する放射線の通過帯域と阻
止帯域特性を調節するように積層した構成である。酸化
タンタル層は、この発明にしたがって、酸化チタンでド
ープされているか、酸化チタンの前置層および/または
後置層に隣接しているか、その両方である。シリカおよ
び酸化タンタル層の積層の総数は、できるだけ多くして
最高の光学性能を得るのが理想的であるが、応力への配
慮と光学性能とのバランスをとる必要がある。したがっ
て、総数を8−100とするのが好ましい。層の数が2
0になると、特に層の数が60になると、応力への配慮
が1要因となる。
【0024】1実施例では、干渉フィルム20は、タン
グステンフィラメント17が発する赤外線を反射して、
フィラメントに戻す一方、可視光を透過する。あるいは
また、酸化タンタル層とシリカ層とを交互に積層してな
る干渉フィルムは、可視光を反射する一方、赤外線を透
過するように、周知の態様で設計してもよい。さらに別
の実施例では、フィルム20は、電磁波スペクトルの特
定の領域内の放射線を透過する一方、透過するのが望ま
しくない光を反射するように設計することができる。
【0025】図2−図6はSEM写真で、ドープなしの
酸化タンタル層、酸化チタンでドープした酸化タンタル
層、ドープされていないが、酸化チタン層に隣接してい
る酸化タンタル層を示す。これらの層は、タンタルエト
キシドおよびチタンエトキシドまたはチタンイソブトキ
シドを用いて、低圧CVD法により形成した。図2は、
酸化チタン前置層上に設けた酸化タンタル膜を倍率70
00xで示す。酸化チタン前置層の厚さは130オング
ストローム、全膜厚は3800オングストロームであっ
た。過酷試験として、サンプルを空気中で850°Cに
急速に加熱し、同温度に24時間維持した。
【0026】図3は、酸化チタン前置層なしの酸化タン
タル膜を倍率7000xで示す。酸化タンタル膜の厚さ
は2900オングストロームで、図2との比較のために
作製した。亀裂と座屈が見える。図2と図3を比較する
と、この発明にしたがって酸化チタン前置層を設ける
と、隣接する酸化タンタル層の結晶度が、隣接酸化チタ
ン層のない酸化タンタル層と比べて、はるかに小さくな
り、有利であることがわかる。
【0027】図4は、10モル%の酸化チタンを含有す
る酸化タンタル層の倍率1000xのSEM写真であ
る。サンプルを空気中で650°Cに急速に加熱し、同
温度に15時間維持した。亀裂と座屈が見える。図5
は、1モル%よりわずかに少ない酸化チタンを含有する
酸化タンタル層の倍率1000xのSEM写真である。
サンプルを空気中で650°Cに急速に加熱し、同温度
に15時間維持した。サンプルには実質的に亀裂がな
い。
【0028】図6は、酸化チタンを含有しない酸化タン
タル層の倍率1000xのSEM写真である。サンプル
を空気中で650°Cに急速に加熱し、同温度に15時
間維持した。ひどい亀裂と座屈、それに剥離(スポーリ
ング)のために酸化タンタルがなくなった区域がはっき
り見える。この酸化タンタル層は、図4および図5に示
す酸化チタンを含有する酸化タンタル層との比較のため
に作製した。この発明の、1モル%よりわずかに少ない
酸化チタンを含有する酸化タンタルサンプルについての
図5では、浮きがほとんど見られない。
【0029】この発明にしたがって製造した酸化タンタ
ル層のX線回折(XRD)による分析では、寸法1−2
μmの微結晶を有する結晶粒子構造であるにもかかわら
ず、低強度のブロードなピークが見られた。このXRD
パターンのブロードニングは、膜中の内部応力および/
または結晶欠陥のためであると考えられる。内部応力と
結晶欠陥はいずれも、光学的用途の膜に望ましくなく、
粒界で分離する傾向の大きい弱い膜をつくる。このよう
な膜は基板に与える応力が大きく、膜の基板からの剥離
や浮きが増加する。膜の浮きも剥離も膜の光学的反射率
を低下し、光学的散乱を増加し、望ましくない。
【0030】単層酸化タンタル膜および多層酸化タンタ
ル/シリカ膜に関する剥離(スポーリング)についての
過酷な試験は、800°C以上に急速に加熱することで
ある。このような急速加熱サンプルの膜亀裂パターン
を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。こ
のようにして生じた酸化タンタルの亀裂や浮きは、アモ
ルファス層から結晶性酸化タンタルが核生成し、成長す
る結果である。純粋な酸化タンタル層をSEMで調べる
と、膜の亀裂と割れたエッジの石英基板からの浮きが生
じているのがわかる。130オングストロームの酸化チ
タン膜の上に酸化タンタルを堆積すると、図2に示すよ
うに、酸化タンタルの結晶化の際の膜亀裂や浮きが、劇
的になくなる。酸化チタン層は1ミクロン未満のアナタ
ーゼ粒子からなる。(酸化チタン前置層を有する)酸化
タンタル膜の結晶粒度は1ミクロン未満であり、前述し
たように、図3に示すような隣接する酸化チタン層なし
で結晶化したドープなし酸化タンタル層と比べて、約3
分の1に減少、すなわち1−2μmから0.3−0.6
μmに減少している。結晶粒度の減少から、酸化チタン
層が酸化タンタル粒子の核生成頻度を増大することが明
らかである。酸化タンタルに約10モル%未満の少量の
酸化チタンをドープすることも、膜の亀裂や浮きを減少
させるのに有効であることを確かめた。酸化タンタルに
ドープする酸化チタンが1モル%以下のごく少量であっ
ても、図5に示すように、膜の亀裂や浮きが減少する。
40°傾斜(図中40tilt)も、浮いた膜エッジの
高さが減少したことを示す。したがって、以上を要約す
ると、厚さ約50−500オングストローム、好ましく
は厚さ約50−150オングストロームの薄い酸化チタ
ン層の上または下に酸化タンタルを堆積するか、酸化タ
ンタルに10モル%未満の酸化チタンをドープすること
により、膜の亀裂や浮きを抑制することができる。
【0031】図7は、コンピュータで作製した、この発
明の干渉フィルタの他の例の反射率のチャートである。
干渉フィルタは、合計35層の、酸化チタン前置層を有
する酸化タンタル/シリカIR反射フィルタである。多
層光学コーティング用のFILM*STAR(商標)ソ
フトウェアを用い、酸化タンタル層およびシリカ層を
(それぞれ12層)交互に有する通常の24層設計の干
渉フィルタから出発した。酸化タンタル層のほとんど
は、その前に酸化チタンの薄い層が存在し、それと接触
していた。酸化タンタル膜厚を酸化チタン層を考慮して
薄くし、設計の最適化をやりなおした。この特定の設計
で、酸化タンタル層28の前の酸化チタン層を除くのが
有利なことを確かめた。
【0032】米国特許第5,138,219号7欄53
−63行に記載されている通り、多層コーティングを最
適化するためのコンピュータプログラムは多数が市販さ
れており、約15の販売元およびプログラムのリスト
が、光学工業業界紙であるPHOTONICS SPECTRA 誌の19
88年9月号の144頁に記載されている。このリスト
には、たとえば、Optikos(143 Albany Street,
Cambridge, MA 02139,USA )から入手できる商品名C
AMSや、FTG Software Associates (P.O.Box 57
9, Princeton, NJ 08524, USA )から入手できる商品名
FILM*STAR(商標)が含まれているが、プログ
ラム例はこれらに限らない。
【0033】以下に、図7の干渉フィルタの35層のリ
ストを示す。高屈折率材料(H)は屈折率約2.19の
酸化タンタルであり、低屈折率材料(L)は屈折率約
1.45のシリカであり、層(T)は屈折率2.54の
酸化チタンの薄層である。屈折率は600μmで測定し
た。 1 110.0T 14 1137.7H 27 1801.5L 2 917.8H 15 1987.2L 28 2386.3H 3 1737.4L 16 110.0T 29 1801.5L 4 110.0T 17 1137.7H 30 110.0T 5 917.8H 18 1987.2L 31 2279.6H 6 1737.4L 19 110.0T 32 1801.5L 7 110.0T 20 1137.7H 33 110.0T 8 917.8H 21 1987.2L 34 2197.4H 9 1737.4L 22 110.0T 35 804.7L 10 110.0T 23 1137.7H 11 917.8H 24 1987.2L 12 1737.4L 25 110.0T 13 110.0T 26 2279.6H この発明の干渉フィルタ薄膜光学的コーティングは、蒸
着、スパッタリング、溶液塗工法(ディップコーティン
グなど)およびCVDを含む種々の方法で製造すること
ができる。しかし、前述したように、この発明の干渉フ
ィルタ薄膜光学的コーティングは、CVD法、特に低圧
CVD法で製造するのが好ましく、薄膜の各材料ごとの
適当な金属酸化物前駆物質(1種または複数種)を別々
に分解室に導入し、そこで前駆物質を分解するか反応さ
せて、加熱基板上に金属酸化物を形成する。
【0034】低圧CVD法は、このようなコーティング
を複雑な形状の表面に設けることができ、厚さを適切に
制御することができる。このようにシリカ層および酸化
タンタル層(および場合により酸化チタン層)を別々に
基板上に、所望のフィルタ設計に達するまで設層する。
このようなCVD法は当業者に周知であり、たとえば、
米国特許第4,006,481号、第4,211,80
3号、第4,393,097号、第4,435,445
号、第4,508,054号、第4,565,747号
および第4,775,203号に開示されている。
【0035】この発明にしたがって基板上に金属酸化物
膜を形成する場合、まず基板を堆積室内に配置する。基
板が、反応または分解を起こし、同時に基板上に金属酸
化物膜を堆積するのに好適な温度に達するように、堆積
室は通常炉内に収容されている。このような温度は、使
用した原料によるが、通常、約350−600°Cであ
る。
【0036】低圧CVD法では、堆積室を排気し、蒸気
状態の所望の金属酸化物の適当な有機金属前駆物質を適
当な手段により堆積室に流す。原料が堆積室に流入する
と、それが分解されて、基板上に金属酸化物膜を堆積す
る。所望の膜厚に達したら、原料流れを停止し、堆積室
を排気し、別の材料用の原料を堆積室に、その材料が所
望の厚さに達するまで、流す。このプロセスを、所望の
多層干渉フィルタが得られるまで、繰り返す。
【0037】この発明において、CVDまたは低圧CV
Dによりシリカ膜を堆積するのに用いる適当な化合物と
しては、ジアセトキシジブトキシシラン、テトラアセト
キシシラン、シリコンテトラキスジエチルオキシアミン
などがあるが、これらに限らない。この発明において、
CVDまたは低圧CVDにより酸化タンタル膜を堆積す
るのに用いる適当な原料としては、タンタルメトキシ
ド、タンタルペンタエトキシド、タンタルイソプロポキ
シド、タンタルブトキシド、タンタルアルコキシド混合
物、タンタルペンタクロライドなどと、水および/また
は酸素がある。この発明において、CVDまたは低圧C
VDにより酸化チタン膜を堆積するのに用いる適当な原
料としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チ
タンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブ
トキシド、チタンイソブトキシド、チタンアルコキシド
混合物などがある。
【0038】堆積室を通しての原料(1種または複数
種)の移動を促進するために堆積室にキャリヤガスを通
す必要はないが、当業界でよく知られているように、所
望に応じて、不活性キャリヤガスを用いることもでき
る。堆積中の室内の圧力は、使用した原料や基板の温度
にもよるが、通常約0.1−5.0Torrの範囲であ
る。CVD法には大気圧を用いればよい。堆積室内の原
料ガスの流量、反応室の寸法、原料、キャリヤガスの有
無、望ましい堆積速度などにもよるが、通常約10−5
0,000SCCMの範囲である。
【0039】この方法を用いることにより、金属酸化物
の個々の層を均一に堆積することができる。±約2%以
内の膜厚の均一性を有する層を、平坦な基板にも湾曲し
た基板にも堆積することができた。厚さ約100−約2
0,000オングストロームの範囲の酸化タンタル、酸
化チタンおよびシリカの均一な膜を形成することができ
る。
【0040】この発明の干渉フィルタのシリカ層および
酸化タンタル層(および適当な場合には酸化チタン層)
を交互に形成するにあたっては、最初に酸化タンタルま
たはシリカの層を堆積し、特定のシリカまたは酸化タン
タル原料の堆積室への流れを停止し、堆積室を排気し、
ついで別の膜の前駆物質、すなわち反応物質である原料
の流れを堆積室に導入する。このプロセスを、干渉フィ
ルタに望ましい数の層を形成し終るまで、繰り返す。
【0041】特定の理論に縛られるものではないが、こ
の発明の干渉フィルタを550−800°Cの温度範囲
内で加熱すると、酸化タンタル層が結晶化し、非常に多
数の酸化タンタル微結晶(クリスタリット)を形成し、
このとき個別の微結晶を有意に成長させることなく、ま
た同時にこのような結晶成長からもたらされる決定的な
破壊につながる応力の生成もないと考えられる。温度を
約650−675°Cとするのが好ましい。約600°
C以下の温度では、微結晶の形成に通常余りに長い時間
がかかり、工業的に採用できないからである。350−
550°Cの温度でCVDまたは低圧CVDにより堆積
した直後の酸化タンタル層はアモルファスであり、その
後の550−800°Cでの熱処理によって、斜方晶系
酸化タンタル微結晶の異方性成長からもたらされる決定
的な破壊につながる応力の生成を避けるのに十分な量の
微結晶の形成が可能になると考えられる。この発明は、
アニール処理の必要を減らし、そしてたとえばシリカ層
の応力を解除するためのアニール処理と組み合わせた場
合には、割れ、浮き、剥離、その他の応力に関係した損
傷の少ないフィルタが得られる。
【0042】当業者には、この発明の要旨から逸脱しな
い範囲内で、種々の他の変更が明らかであり、簡単に採
用できる。したがって、この発明の要旨は前述した好適
な実施例の説明に限定されることなく、当業者に均等物
として扱われるすべての事項を含めて、その範囲内のあ
らゆる事項を包含すると解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による光干渉膜を外面に設けた細長い
タングステン−ハロゲンランプの側面図である。
【図2】この発明による酸化チタン前置層を有する酸化
タンタル膜のSEM写真(倍率7000x)であり、そ
の結晶構造を示す。
【図3】図2と比較するための、酸化チタン前置層のな
い酸化タンタル膜のSEM写真(倍率7000x)であ
り、その結晶構造を示す。
【図4】この発明による10モル%の酸化チタンを含有
する酸化タンタル膜のSEM写真(倍率1000x)で
あり、その結晶構造を示す。
【図5】この発明による1モル%の酸化チタンを含有す
る酸化タンタル膜のSEM写真(倍率1000x)であ
り、その結晶構造を示す。
【図6】図4および図5と比較するための、酸化チタン
を含有しない酸化タンタル膜のSEM写真(倍率100
0x)であり、その結晶構造を示す。
【図7】この発明による酸化チタン前置層を有する酸化
タンタル/シリカIR反射性フィルタの反射率を示すコ
ンピュータによるグラフである。
【符号の説明】
10 ランプ 17 フィラメント 20 干渉フィルタ

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸化タンタル層およびシリカ層を交互に
    積層してなり、各酸化タンタル層が酸化チタンを10モ
    ル%未満の量含有する光干渉フィルタ。
  2. 【請求項2】 基板上に酸化タンタル層およびシリカ層
    を交互に積層して被覆基板を形成し、この被覆基板を酸
    化タンタルを結晶化するのに十分な所定の温度および時
    間加熱することを含む方法により製造した請求項1に記
    載の光干渉フィルタ。
  3. 【請求項3】 電気光源を包囲する光透過性ガラス質エ
    ンベロープと、このガラス質エンベロープ上に形成した
    光干渉フィルタとを含むランプであって、この光干渉フ
    ィルタが酸化タンタル層およびシリカ層を交互に積層し
    てなり、各酸化タンタル層が酸化チタンを10モル%未
    満の量含有しているランプ。
  4. 【請求項4】 基板上に酸化タンタル層およびシリカ層
    を交互に積層し、この際各酸化タンタル層の酸化チタン
    含有量を10モル%未満とし、こうして得られた被覆基
    板を、酸化タンタルを結晶化するのに十分な所定の温度
    および時間加熱する工程を含む光干渉フィルタの製造方
    法。
  5. 【請求項5】 交互に積層した酸化チタン層、酸化タン
    タル層およびシリカ層を含む光透過性ガラス質基板を備
    えた干渉フィルタであって、前記酸化タンタル層の少な
    くとも数層が対応する酸化チタン層に接触しており、各
    酸化チタン層の厚さがそれと接触している酸化タンタル
    層の厚さより小さい光干渉フィルタ。
  6. 【請求項6】 前記酸化タンタルが結晶性である請求項
    5に記載の光干渉フィルタ。
  7. 【請求項7】 電気光源を包囲する光透過性ガラス質エ
    ンベロープと、このガラス質エンベロープ上に形成した
    光干渉フィルタを含むランプであって、この光干渉フィ
    ルタが酸化チタン層、酸化タンタル層およびシリカ層を
    交互に積層してなり、前記酸化タンタル層の少なくとも
    数層が対応する酸化チタン層に接触しており、各酸化チ
    タン層の厚さがそれと接触している酸化タンタル層の厚
    さより小さいランプ。
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