JPH06198324A - 圧延機の板厚制御方法 - Google Patents

圧延機の板厚制御方法

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JPH06198324A
JPH06198324A JP5001557A JP155793A JPH06198324A JP H06198324 A JPH06198324 A JP H06198324A JP 5001557 A JP5001557 A JP 5001557A JP 155793 A JP155793 A JP 155793A JP H06198324 A JPH06198324 A JP H06198324A
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JP
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rolling
control system
variation
disturbance
plate thickness
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JP5001557A
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Yoshiharu Nishida
▲吉▼晴 西田
Akira Kitamura
章 北村
Masao Yamamoto
昌生 山本
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 圧延速度が低いときでもむだ時間の影響を受
けることなく常に高い板厚精度が得られる圧延機の板厚
制御方法。 【構成】 この方法は,圧延材1の入側板厚変動ΔH,
出側板厚変動Δh等と,圧延ロール3a,3bの圧下力
変動ΔP,状態量C1,C2,…等とを検出し,この状
態量に係る外乱要素を除去し,入側板厚変動ΔHに含ま
れるむだ時間L B の動特性を近似してデータ補正し,出
側板厚変動Δhに含まれるむだ時間LFの動特性を推定
してデータ補正し,圧下力変動ΔPをミル定数の公称値
M′でデータ補正し,上記補正データ等に基づいて外乱
ΔD,Δdを推定し,この推定値ΔD′,Δd′を合成
して外乱補償量ΔUD を演算し,張力制御系と圧下制御
系の非干渉化を施すと共に外乱補償量ΔUD を圧下制御
系のギャップ指令ΔUsにフィードバックし,外乱補償
量ΔUD に含まれる重みを変化させて板厚制御特性を変
化させるように構成されている。上記構成により圧延速
度が低い時でもむだ時間の影響を受けることなく常に高
い板厚精度を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は圧延機の板厚制御方法に
係り,詳しくは金属材料の冷間圧延に用いられる圧延機
の板厚制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】圧延機において圧延状態が変化する非定
常状態で精度よく板厚を制御することを目的として,本
発明者らは,非定常状態で問題となるモデル化誤差やパ
ラメータ変動などの影響を外乱として扱い,オブザーバ
を用いて外乱を推定し,外乱の推定値をフィードバック
することによって高い板厚精度を得ようとする圧延機の
板厚制御装置A0を開発した(特願平4−2834)。
図7はこのような従来の圧延機の板厚制御装置A0の一
例における全体概要を示す模式図,図8(a),(b)
は従来の板厚制御系の一例を示すシステムブロック図で
ある。図7に示す如く,従来の圧延機の板厚制御装置A
0は,圧延ロール3a,3bのギャップをギャップ指令
ΔUsにより調整する圧下制御系と,圧延材1の張力を
速度指令ΔUvにより調整する張力制御系とを備えてお
り,両制御系が互いに影響を及ぼす関係にある。この従
来装置A0は,圧延材1を供給する供給リール2aと,
圧延材1の張力を調整する入側/出側張力リール2b,
2cと,圧延ロール3a,3bのギャップを調整するロ
ーラミル3zと,圧延ロール3a,3bの圧下力変動Δ
Pをミル定数の公称値M′で補正する圧下力補正系13
aと,圧延材1の圧延速度Vを検出する速度センサ4
と,圧延材1の入側張力変動Δσを検出する張力センサ
5と,圧延材1の出側板厚変動Δhを検出する出側板厚
センサ6bと,圧延ロール3a,3bのギャップ変動Δ
Sを検出するギャップセンサ7と,圧延ロール3a,3
bの状態量(ロール偏心,ロール摩耗,ロール熱膨張,
ギャップの零点のずれ等)C1,C2,…を検出する状
態量センサ群8a,8b,…と,圧下力補正系13aに
より補正された圧下力変動ΔPを検出する圧下力センサ
9と,速度センサ4,張力センサ5,出側板厚センサ6
b,ギャップセンサ7及び圧下力センサ9により検出さ
れた各検出データに基づいて圧下制御系に加わる外乱と
して張力変動Δσに影響を及ぼす第1の外乱ΔDと圧下
力変動ΔPに影響を及ぼす第2の外乱Δdとの各外乱推
定値ΔD′,Δd′を算出する外乱推定オブザーバ10
と,外乱推定オブザーバ10により算出された外乱推定
値ΔD′,Δd′にそれぞれ重みをつけて両者を合成す
ることにより外乱補償量ΔUD を算出する外乱補償器1
1とから構成されている。圧延ロール3a,3bの状態
量に係る外乱要素は状態量センサ8a,8b,…により
検出された圧延ロール3a,3bの状態量C1,C2,
…を圧下制御系のギャップの指令ΔUsにフィードフォ
ワードすることにより圧下制御系から除去される。ま
た,張力制御系の速度指令ΔUvに圧下制御系のギャッ
プ指令ΔUに基づく速度指令の変化量ΔUE を付加して
圧下制御系と張力制御系との非干渉化を施すことによ
り,張力制御系と圧下制御系とを見掛け上切り離して圧
下制御系のみによる板厚制御を行うことができる。即ち
, 圧下制御系に影響を及ぼす張力制御系のデータに基づ
いて圧下制御系による板厚制御を行うことができる。以
下,この従来装置A0による板厚制御方法の基本原理を
図8(a),(b)を参照して概略説明する。従来装置
A0の板厚制御系は図8(a)に示すように油圧システ
ムを制御する油圧圧下系12と,圧延特性を制御する圧
延特性系13とからなる。このような板厚制御系におい
て,出側の移送に起因するむだ時間Lを無視すればその
状態方程式は次式で表される。
【数1】 ここで,Mはミル定数,Qは塑性係数,ΔHは入側板厚
変動,∂P/∂σは張力の荷重に対する影響係数であ
る。この内,ミル定数Mや塑性係数Qの様なパラメータ
は定常状態では既知であるが,非定常状態ではそれらの
パラメータは大きく変動する。また,入側板厚変動ΔH
も大きく変動するため通常の制御方法では高い板厚精度
を達成することはできない。そこで,この従来装置A0
では,図8(b)に示すようにパラメータM,Qの公称
値M′,Q′を用いて制御対象を記述し直すことにより
簡略化し,パラメータM,Qが変動し公称値M′,Q′
からずれたときの影響や入側板厚変動ΔHの影響を外乱
ΔD,Δdという形で表す。そして,この外乱ΔD,Δ
dをオブザーバを用いて推定し,その推定値ΔD′,Δ
d′をフィードバックする。このオブザーバは例えば次
式で表されるものであり,装置A0の外乱推定オブザー
バ10により実行されるものである。
【数2】 だだし,sはラプラス演算子,ω1 ,ω2 は収束ゲイン
である。このような外乱推定オブザーバ10を用いた従
来装置A0によって非定常状態においてパラメータM,
Qや入側板厚変動ΔHが変動しても安定に制御すること
ができ,板厚精度を向上させることができた。尚,この
従来装置A0の実際の運転に際しては, 図8(a),
(b)に示すように出側板厚変動Δhには圧延速度Vに
よって変化するむだ時間Lが存在し,その影響を受けな
いようにするために外乱推定オブザーバ10の収束ゲイ
ンω1 ,ω2 を圧延速度Vに応じて変化させていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の圧延機の板
厚制御装置A0による板厚制御方法では,外乱を推定す
るオブザーバを用い,むだ時間Lに応じて収束ゲインω
1 ,ω2 を変化させることによりパラメータM,Qの変
動や入側板厚変動ΔHの影響をある程度抑えることがで
きる。しかし,圧延速度Vが低いときむだ時間Lは大き
くなるため,収束ゲインω1 ,ω2 は小さくしなければ
ならない。そのとき,オブザーバの収束が遅くなり,外
乱推定値ΔD′,Δd′の位相遅れも大きくなる。ま
た,制御系の応答性も悪くなり,パラメータM,Qの変
動や入側板厚変動ΔHの影響による外乱ΔD,Δdの影
響をあまり抑えることができなくなる。その結果,圧延
速度Vの遅いときには高い板厚精度を得にくくなる傾向
があった。本発明はこのような従来の技術における課題
を解決するために,圧延機の板厚制御方法を改良し,圧
延速度が低いときでもむだ時間の影響を受けることなく
常に高い板厚精度が得られる圧延機の板厚制御方法を提
供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明は,圧延ロールのギャップをギャップ指令によ
り調整する圧下制御系と,圧延材の張力を速度指令によ
り調整する張力制御系とが所定の関係にある圧延機の板
厚制御方法において,圧延材の圧延速度,入側板厚変動
及び出側板厚変動と,圧延ロールのギャップ変動,圧下
力変動及び状態量とを検出し,上記圧延ロールの状態量
を上記圧下制御系のギャップ指令にフィードフォーワー
ドすることにより該圧下制御系に対する圧延ロールの状
態量に係る外乱要素を除去し,上記圧延材の入側板厚変
動の検出データに含まれるむだ時間要素を近似すること
により該データを補正し,上記圧延材の出側板厚変動の
検出データに含まれるむだ時間要素を推定することによ
り該データを補正し,上記圧延ロールの圧下力変動の検
出データをミル定数の公称値で補正し,上記圧延材の圧
延速度及び圧延ロールのギャップ変動の検出データと,
上記各補正されたデータとに基づいて上記圧下制御系に
加わる第1の外乱と上記圧下力変動に影響を及ぼす第2
の外乱とを推定し,上記第1,第2の外乱の推定値にそ
れぞれ重みをつけて両者を合成することにより外乱補償
量を演算し,上記張力制御系の速度指令に上記圧下制御
系のギャップ指令に基づく速度指令の変化量を付加する
ことにより,上記張力制御系のデータに基づいて上記圧
下制御系による板厚制御を行うと共に,上記外乱補償量
を上記圧下制御系のギャップ指令にフィードバックし,
上記外乱補償量に含まれる上記重みを変化させることに
より,上記圧下制御系による板厚制御特性を適宜変更し
うるようになしたことを特徴とする圧延機の板厚制御方
法として構成される。更には,上記圧延材の入側板厚変
動の検出データに含まれるむだ時間要素をパデ近似する
圧延機の板厚制御方法である。更には,上記圧延材の出
側板厚変動の検出データに含まれるむだ時間要素を予測
制御を用いて推定する圧延機の板厚制御方法である。こ
こで,上記圧下制御系と張力制御系とが所定の関係にあ
るとは,圧下制御系のギャップ指令と張力制御系の速度
指令とが例えば線形関係にあることをいう。
【0005】
【作用】本発明によれば,圧延材の圧延速度,入側板厚
変動及び出側板厚変動と,圧延ロールのギャップ変動,
圧下力変動及び状態量とが検出される。上記圧延ロール
の状態量を上記圧下制御系のギャップ指令にフィードフ
ォワードすることにより該圧下制御系に対する圧延ロー
ルの状態量に係る外乱要素が除去される。上記圧延材の
入側板厚変動の検出データに含まれるむだ時間要素を近
似することにより該データが補正される。上記圧延材の
出側板厚変動の検出データに含まれるむだ時間要素を推
定することにより該データが補正される。上記圧延ロー
ルの圧下力変動の検出データがミル定数の公称値で補正
される。上記圧延材の圧延速度及び圧延ロールのギャッ
プ変動の検出データと,上記各補正されたデータとに基
づいて上記圧下制御系に加わる第1の外乱と上記圧下力
変動に影響を及ぼす第2の外乱とが推定される。上記第
1,第2の外乱の推定値にそれぞれ重みをつけて両者を
合成することにより外乱補償量が演算される。上記張力
制御系の速度指令に上記圧下制御系のギャップ指令に基
づく速度指令の変化量を付加することにより,上記張力
制御系のデータに基づいて上記圧下制御系による板厚制
御が行われると共に,上記外乱補償量が上記圧下制御系
のギャップ指令にフィードバックされる。上記外乱補償
量に含まれる上記重みを変化させることにより,上記圧
下制御系による板厚制御特性が適宜変更される。従っ
て,圧延速度が小さいときは無視できなくなるむだ時間
要素を,外乱を推定するオブザーバに積極的に取り込む
ことによって収束ゲインを大きくできる。また,従来例
では未知の要素としていた入側板厚変動を検出すること
によって未知の要素を減少し,オブザーバによる外乱の
推定精度を向上させることができる。その結果,圧延速
度が低いときでもむだ時間の影響を受けることなく常に
高い板厚精度が得られる圧延機の板厚制御方法を得るこ
とができる。
【0006】
【実施例】以下,添付図面を参照して本発明を具体化し
た実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以
下の実施例は本発明を具体化した一例であって,本発明
の技術的範囲を限定する性格のものではない。ここに,
図1は本発明の一実施例に係る圧延機の板厚制御方法の
概略構成を示すブロック図,図2は上記板厚制御方法を
用いた装置A1の全体概要を示す模式図,図3は板厚制
御系のシステムブロック図,図4は板厚制御系の簡略化
されたシステムブロック図,図5は板厚制御装置A1と
他の種類の板厚制御装置とのステップ応答比較図,図6
は板厚制御装置A1と他の種類の板厚制御装置とのゲイ
ン特性比較図(a)〜(d)である。また前記図7に示
した従来の圧延機の板厚制御装置A0の一例における全
体概要を示す模式図と共通する要素には同一符号を使用
する。図1に示す如く本実施例に係る圧延機の板厚制御
方法は,圧延材1の圧延速度V,入側板厚変動ΔH及び
出側板厚変動Δhと,圧延ロール3a,3bのギャップ
変動ΔS,圧下変動ΔP及び状態量(ロール偏心,ロー
ル摩耗,ロール熱膨張,ギャップの零点のずれ等)C
1,C2,…とを検出し(S1),圧延ロール3a,3
bの状態量C1,C2,…を圧下制御系のギャップ指令
ΔUsにフィードフォワードすることによりこの圧下制
御系に対する圧延ロール3a,3bの状態量C1,C
2,…に係る外乱要素を除去し(S2),圧延材1の入
側板厚変動ΔHの検出データに含まれるむだ時間LB
動特性をパデ近似することによりこのデータを補正し
(S3),圧延材1の出側板厚変動Δhの検出データに
含まれるむだ時間LF の動特性を予測制御を用いて推定
することによりこのデータを補正し(S4),圧延ロー
ル3a,3bの圧下力変動ΔPの検出データをミル定数
の公称値M′で補正し(S5),圧延材1の圧延速度V
及び圧延ロール3a,3bのギャップ変動ΔSの検出デ
ータと,上記各補正されたデータとに基づいて圧下制御
系に加わる第1の外乱ΔDと圧下力変動ΔPに影響を及
ぼす第2の外乱Δdとを推定し(S6),第1,第2の
外乱ΔD,Δdの推定値ΔD′,Δd′にそれぞれ重み
をつけて両者を合成することにより外乱補償量ΔUD
演算し(S7),張力制御系の速度指令ΔUvに圧下制
御系のギャップ指令ΔUsに基づく速度指令の変化量Δ
E を付加することにより,張力制御系のデータに基づ
いて圧下制御系による板厚制御を行うと共に,外乱補償
量ΔUD を圧下制御系のギャップ指令ΔUsにフィード
バックし(S8),外乱補償量ΔUD に含まれる重みを
変化させることにより圧下制御系による板厚制御特性を
適宜変化させる(S9)ように構成されている。
【0007】この板厚制御方法を適用しうる装置A1に
は,図2に示すように従来例と同様の供給リール2a
と,入側/出側張力リール2b,2cと,圧延ロール3
a,3bと,ロールミル3zと,速度センサ4と,出側
板厚センサ6bと,ギャップセンサ7と,状態量センサ
群8a,8b,…と,圧下力センサ9と,外乱推定オブ
ザーバ10と,外乱補償器11と,圧下力補正系13a
等とに加えて,新たに入側板厚変動ΔHを検出する入側
板厚センサ6aと,入側板厚変動ΔHを補正する入側板
厚補正系14と,出側板厚変動Δhを補正する出側板厚
補正系15とが設けられている。ただし,本実施例で
は,入側板厚センサ6aにより入側板厚変動ΔHを検出
し,これにより張力制御系からの外乱要素を表現するた
め,従来例における張力センサは不要である。そして,
この装置A1の上記各センサ4,6a,6b,7,8
a,8b,…,9により上記板厚制御方法の過程S1,
S2が,入側板厚補正系14により過程S3が,出側板
厚補正系15により過程S4が,圧下力補正系13aに
より過程S5が,外乱推定オブザーバ10により過程S
6が,外乱補償器11により過程S8,S9がそれぞれ
実行される。以下,この板厚制御方法の基本原理につい
て図3,図4を参照して説明する。図3は圧延機の板厚
制御系をブロック表現したものであり,従来例と同様油
圧圧下系12と圧延特性系13とからなっている。しか
し,従来例で用いたブロック図(図8(a))では,入
側板厚変動ΔHに係る要素Q・ΔH/Mを第1の外乱Δ
Dに含めて未知量として扱っているのに対し,図3では
入側板厚変動ΔHはその計測値ΔHL を用いてΔH=e
xp(−LB s)・(TB s+1)・ΔHLとして表現
している。本実施例では図3に示すようなシステムを制
御対象として扱うが,従来例と同様に圧下制御系と張力
制御系との非干渉化を施すことにより,見かけ上張力制
御系と圧下制御系とを分離し圧延特性を簡略化する。こ
こで,入側板厚変動ΔH=exp(−LB s)・(TB
s+1)・ΔHL に含まれるむだ時間LB を近似し,制
御対象の状態量の中に取り込み簡略化されたシステムを
制御対象とする。むだ時間LB の近似の一例として,周
知である一次のパデ近似(むだ時間LBを1/(1+T
P s)で近似,ただし,TP はパデ近似における時定
数)を用いたシステムのブロック図を図4に示す。図4
のシステムは,従来例における図8(b)のシステムに
対して入側板厚変動ΔHに含まれるむだ時間LB を考慮
している点で大きな違いがある。図4のシステムの状態
方程式は,次式で表される。
【数3】 ただし,M′はミル定数Mの公称値,Q′は塑性係数Q
の公称値である。
【0008】上記(3a),(3b)式で表されるシス
テムでは圧延状態の変動を以下の第1の外乱ΔD(=Δ
0 +D1 )と,第2の外乱Δdとで記述し,加算的な
外乱として扱っている。
【数4】 ここで,第1の外乱ΔDは具体的にはミル定数Mと塑性
係数Qの変動や入側板厚変動ΔHやロール偏心などによ
る外乱を示し,第2の外乱Δdはミル定数Mの推定誤
差,摩擦係数の変動,荷重の測定誤差,あるいはロール
偏心ΔS0 などによる外乱を表している。上記(3
a),(3b)式において,第1の外乱ΔDの一部ΔD
1 と第2の外乱Δdとをオフセット(一定値)外乱とし
て状態量に含め,最小次元のオブザーバを構成すれば,
次式のようになる。
【数5】 ただし,ω1 ,ω2 はオブザーバの収束ゲインである。
上記(6a),(6b)式のオブザーバはその存在条件
を満足することから,得られる外乱推定値ΔD′,Δ
d′はそれぞれの真値ΔD,Δdに収束することが保証
される。その収束速度は収束ゲインω1 ,ω2 によって
決定される。この得られた推定値を用いてギャップ指令
値ΔUD を次式で与える。 ΔUD =αD ((βD −1)(ΔP−Δd′)/M′−βD ΔD′)…(7) ただし,αD はチューニング率, βD (0≦βD ≦1)
は設計パラメータであり,αD を1にすれば出側板厚変
動Δhは零にできる。しかし,上記(6a),(6b)
式のオブザーバはむだ時間LF を無視し,入力として出
側板厚変動Δhを用いているため,オブザーバの収束ゲ
インなどを大きくすることができず,またたとえ収束ゲ
インを大きくしても安定した制御を行いうる所謂ロバス
ト制御の性能を充分に発揮することができない。従っ
て,ここでは入力側の未来のある状態において,作用す
る遅れがどの位になるかを予測する手法として一般的に
知られている予測制御を適用して出側板厚変動Δhを推
定することにより,むだ時間LF の影響を除去する。即
, 予測制御を適用することによって出側板厚変動Δh
の推定値Δh′は次式で与えられる。
【数6】 ただし,Ω1,Ω2は予測制御における係数である。
【0009】上記(8a),(8b)式により,むだ時
間LF を含まない出側板厚変動Δhの推定値Δh′を得
ることができる。(8b)式の部分がむだ時間LF を補
償している箇所である。上記(8a),(8b)式によ
る推定値Δh′を上記(6a),(6b)式のオブザー
バにおける出側板厚変動Δhの代わりに用いれば,むだ
時間LF を別途考慮することなく第1,第2の外乱Δ
D,Δdを推定することができる。以上のように,むだ
時間LB をパデ近似で考慮し,むだ時間LF を予測制御
で補償し,圧延状態の変化をオブザーバで補償すること
により,ロバスト制御系が構成される。以下,この板厚
制御方法の有効性について検討するため,上記実施例に
係る板厚制御装置(以下本装置と記す)A1と,他の種
類の板厚制御装置(従来装置A0,ゲージメータAGC
及び絶対値AGC)とによる制御特性の比較を行う。ま
ず,むだ時間をLF =0.05secとし,出側板厚変
動Δhが1μm変化する場合の各装置のステップ応答を
図5に示す。図5より,絶対値AGCはむだ時間を考慮
していないことからゲインをあげることができず,この
ため5sec後でも出側板厚変動Δhを0.1μmまで
しか制御できない。また,ゲージメータAGCはむだ時
間の影響を受けないが,ギャップ変動ΔSを正帰還して
いるため,油圧圧下系12の応答が遅くなり,2sec
後にしか出側板厚変動Δhを零にすることができない。
さらに,従来装置A0のようにオブザーバのみを用いた
制御系ではむだ時間LF の影響を受けて収束ゲインをあ
げられないため,ゲージメータAGCと同等の応答しか
得られない。これに対し本装置A1では,0.4sec
後には出側板厚変動Δhがほぼ零となるように制御で
き,高速な応答が得られる。これはパデ近似や予測制御
によってむだ時間の影響が減少し,オブザーバによって
速やかに入側板厚変動ΔHを推定し,補償しているため
である。次に,ゲイン特性を比較する。まず,むだ時間
の影響について考察する。図6(a)では,むだ時間を
F =0.05secとしたときの入側板厚変動ΔHか
, 出側板厚変動Δhへのゲイン線図を示している。
【0010】ただし,図中のαG はゲージメータAGC
のチューニング率を示すもので,ここではαG =1の場
合を示す。図6(a)より,各AGCや従来装置A0よ
りも本装置A1の方が入側板厚変動ΔHの影響を受けに
くく,出側板厚変動Δhを小さくできることがわかる。
また,図6(b)ではむだ時間をLF =1secとした
時のゲイン線図を示している。図6(b)より,むだ時
間LF が1sec程度である時はむだ時間LF の影響を
受けないゲージメータAGCは有効であり,絶対値AG
Cや従来装置A0のオブザーバに比べて,よい制御性能
を示している。このゲージメータAGCに比べて,本装
置A1はより優れた制御性能を発揮しており,むだ時間
F に対して充分にロバストであることがわかる。さら
に,図6(c)は各装置の制御ゲインを適正な制御ゲイ
ンの5倍にした時のゲイン線図である。図6(c)よ
り,各AGCや従来装置A0による制御では,周波数1
0rad/sec付近でゲインが0dBを越えており,
入側板厚変動ΔHの振幅より出側板厚変動Δhの振幅が
大きく,各AGCや従来装置A0のオブザーバが悪影響
を及ぼしていることがわかる。これに対して,本装置A
1では制御ゲインを5倍に上げても入側板厚変動ΔHか
ら出側板厚変動Δhへのゲインは0dB以下で,むだ時
間やゲインの変化に対してロバストである。また,図6
(d)はむだ時間をLF =1secとし,ミル定数Mと
塑性係数Qにそれぞれ30%のパラメータ変動があった
場合のゲイン線図である。図6(d)に示されるよう
に,本装置A1は他のAGCや従来装置A0に比べて出
側板厚変動Δhの変動が小さく,非定常状態におけるパ
ラメータM,Qの変動に対してもロバストであることが
わかる。従って,本装置A1はむだ時間LF ,LB やパ
ラメータM,Qの変動や入側板厚変動ΔHなどに対して
ロバストであり,非定常な圧延状態においても有効であ
ることがわかる。以上のように,この板厚制御方法によ
れば,むだ時間の動特性を積極的に取り込むことによっ
てオブザーバの収束ゲインを大きく取ることが可能であ
る。また,収束ゲインが小さく抑えられている場合も,
むだ時間LB ,LF の動特性が制御対象のモデルに含ま
れていること,さらに従来例では未知の要素としていた
入側板厚変動ΔHを検出することによって,未知の要素
を減少し,オブザーバにより,より正確に外乱を推定す
ることができ,制御性能を向上させることができる。ま
た,パデ近似や予測制御といった手法を用いることによ
って,むだ時間LB,LF の影響を受けにくいオブザー
バを構成することが可能となり,より精度よく外乱を推
定可能である。その結果,圧延速度Vが低いときでもむ
だ時間LB ,LF の影響を受けることなく常に高い板厚
精度が得られる圧延機の板厚制御方法を得ることができ
る。
【0011】
【発明の効果】本発明に係る圧延機の板厚制御方法は上
記したように構成されているため,むだ時間の動特性を
積極的に取り込むことによってオブザーバの収束ゲイン
を大きく取ることが可能である。また,収束ゲインが小
さく抑えられている場合も,むだ時間の動特性が制御対
象のモデルに含まれていることと,さらに従来例では未
知の要素としていた入側板厚変動を検出することによっ
て,未知の要素を減少し,オブザーバにより,より正確
に外乱を推定することができ,制御性能を向上させるこ
とができる。また,パデ近似や予測制御といった手法を
用いることによって,むだ時間の影響を受けにくいオブ
ザーバを構成することが可能となり,より精度よく外乱
を推定可能である。その結果,圧延速度が低いときでも
むだ時間の影響を受けることなく常に高い板厚精度が得
られる圧延機の板厚制御方法を得ることができる。尚,
上記実施例では板厚制御方法の各過程S1〜S9を装置
A1により順次実行したが,実使用に際しては過程S3
〜S4の実行順を入れ換えもしくは同時実行しても何ら
支障はない。尚,上記実施例では入側板厚変動の検出デ
ータに含まれるむだ時間要素を一次のパデ近似にて近似
したが,実使用に際しては更に高次のパデ近似又は他の
種類の近似手法により近似しても何ら支障はない。尚,
上記実施例では出側板厚変動の検出データに含まれるむ
だ時間要素を予測制御を用いて推定したが,実使用に際
しては伝達関数をもとにしたスミス法等他の種類の推定
手法を用いても何ら支障はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例に係る圧延機の板厚制御方
法の概略構成を示すブロック図。
【図2】 上記板厚制御方法を用いた装置A1の全体概
要を示す模式図。
【図3】 板厚制御系のシステムブロック図。
【図4】 板厚制御系の簡略化されたシステムブロック
図。
【図5】 板厚制御装置A1と他の種類の板厚制御装置
とのステップ応答比較図。
【図6】 板厚制御装置A1と他の種類の板厚制御装置
とのゲイン特性比較図(a)〜(d)。
【図7】 従来の圧延機の板厚制御装置A0の一例にお
ける全体概要を示す模式図。
【図8】 従来の制御系の一例を示すシステムブロック
図(a),(b)。
【符号の説明】
1…圧延材 2b,2c…入側/出側張力リール 3z…ローラミル 3a,3b…圧延ロール 4…速度センサ 6a…入側板厚センサ 6b…出側板厚センサ 7…ギャップセンサ 8a,8b…状態量センサ群 9…圧下力センサ 10…外乱推定オブザーバ 11…外乱補償器 13a…圧下力補正系 14…入側板厚補正系 15…出側板厚補正系 ΔUs,ΔU…ギャップ指令 ΔUv,ΔU′…速度指令 ΔUD …外乱補償量 ΔUE …速度指令の変化量 V…圧延速度 ΔH…入側板厚変動 Δh…出側板厚変動 ΔS…ギャップ変動 ΔP…圧下力変動 C1,C2…圧延ロールの状態量 ΔD…第1の外乱 Δd…第2の外乱 ΔD′…第1の外乱の推定値 Δd′…第2の外乱の推定値 LB ,LF …むだ時間

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧延ロールのギャップをギャップ指令に
    より調整する圧下制御系と,圧延材の張力を速度指令に
    より調整する張力制御系とが所定の関係にある圧延機の
    板厚制御方法において,圧延材の圧延速度,入側板厚変
    動及び出側板厚変動と,圧延ロールのギャップ変動,圧
    下力変動及び状態量とを検出し,上記圧延ロールの状態
    量を上記圧下制御系のギャップ指令にフィードフォーワ
    ードすることにより該圧下制御系に対する圧延ロールの
    状態量に係る外乱要素を除去し,上記圧延材の入側板厚
    変動の検出データに含まれるむだ時間要素を近似するこ
    とにより該データを補正し,上記圧延材の出側板厚変動
    の検出データに含まれるむだ時間要素を推定することに
    より該データを補正し,上記圧延ロールの圧下力変動の
    検出データをミル定数の公称値で補正し,上記圧延材の
    圧延速度及び圧延ロールのギャップ変動の検出データ
    と,上記各補正されたデータとに基づいて上記圧下制御
    系に加わる第1の外乱と上記圧下力変動に影響を及ぼす
    第2の外乱とを推定し,上記第1,第2の外乱の推定値
    にそれぞれ重みをつけて両者を合成することにより外乱
    補償量を演算し,上記張力制御系の速度指令に上記圧下
    制御系のギャップ指令に基づく速度指令の変化量を付加
    することにより,上記張力制御系のデータに基づいて上
    記圧下制御系による板厚制御を行うと共に,上記外乱補
    償量を上記圧下制御系のギャップ指令にフィードバック
    し,上記外乱補償量に含まれる上記重みを変化させるこ
    とにより,上記圧下制御系による板厚制御特性を適宜変
    更しうるようになしたことを特徴とする圧延機の板厚制
    御方法。
  2. 【請求項2】 上記圧延材の入側板厚変動の検出データ
    に含まれるむだ時間要素をパデ近似する請求項1記載の
    圧延機の板厚制御方法。
  3. 【請求項3】 上記圧延材の出側板厚変動の検出データ
    に含まれるむだ時間要素を予測制御を用いて推定する請
    求項1又は2記載の圧延機の板厚制御方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108655180A (zh) * 2018-04-27 2018-10-16 北京科技大学 一种热轧铝板带升速过程厚度减薄的补偿方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108655180A (zh) * 2018-04-27 2018-10-16 北京科技大学 一种热轧铝板带升速过程厚度减薄的补偿方法
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