JPH06192794A - 優れたクリープ強度を有する高Crフェライト鋼 - Google Patents

優れたクリープ強度を有する高Crフェライト鋼

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JPH06192794A
JPH06192794A JP4344864A JP34486492A JPH06192794A JP H06192794 A JPH06192794 A JP H06192794A JP 4344864 A JP4344864 A JP 4344864A JP 34486492 A JP34486492 A JP 34486492A JP H06192794 A JPH06192794 A JP H06192794A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は、優れたクリープ強度を有す
る高Crフェライト鋼を提供することにある。 【構成】 重量%にて、C:0.05〜0.15%、S
i:0.01〜0.5%、Mn:0.02〜0.2%、
Cr:8〜13%、W:0.9%超3.2%以下、M
o:0.05〜0.35%未満、V:0.05〜0.2
5%、Nb:0.005〜0.12%、Al:0.00
5〜0.05%、S:0.005%以下、P:0.00
05〜0.01%、N:0.005〜0.1%を含み、
Mn(%)×P(%)が0.001以下であり、残部F
eおよび不可避的不純物からなる、優れたクリープ強度
を有する高Crフェライト鋼。 【効果】 本発明による高Cr耐熱鋼は適切な引張強さ
でありながら、優れたクリープ強度を有しており、高温
高圧で使用される火力発電や化学プラント用として極め
て有用なものであり、工業上価値が大きい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、火力発電、化学プラン
ト等に用いられる高Cr耐熱鋼において、優れたクリー
プ強度を有する高Crフェライト鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】9〜12%Crを含有する高Cr耐熱鋼
では、適用されるプラントの高温高圧化への対応から、
クリープ破断強度の改善が強く求められている。また、
プラントの安全性確保の点から、靭性の劣化抑制、溶接
性の向上も望まれている。このため、数多くの成分改良
が進められてきた。例えば、特開昭62−297436
号公報に開示される如く、従来のCr−Mo−V−Nb
系の基本成分に対し、WやBを添加する技術がある。ま
た、特開昭63−238244号公報で開示されたCo
添加、特開昭63−65059号公報でのCu、Ni添
加等の技術が開発されてきた。
【0003】これらは何れも合金元素の添加量を増加す
る方向の技術であり、クリープ破断強度が向上する反
面、合金コストの上昇、製造性の低下、靭性の低下、溶
接性の低下、を随伴することとなる。一方、少数ではあ
るが、成分組合せを適正化して、高価な合金元素の添加
量を抑制しようとする試みもある。特開平2−1335
46号公報では、Mn添加量を低下させることによりク
リープ破断強度を向上することが述べられている。
【0004】しかしながら、特開平2−133546号
公報ではクリープ破断強度が不十分なため、工業的に広
く利用されるに至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、徒に合金元
素を多量添加することなく、優れたクリープ強度を得る
ことのできる高Crフェライト鋼を提供するを目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するため、クリープ破断強度への合金元素の効
果について種々調査研究した結果、MnとPが相乗効果
を示し、両者の積を一定値以下とすることによりクリー
プ破断強度を向上できることを見出した。本発明はこの
知見に基づきなされたものであり、重量%にて、C:
0.05〜0.15%、Si:0.01〜0.5%、M
n:0.02〜0.2%、Cr:8〜13%、W:0.
9%超3.2%以下、Mo:0.05〜0.35%未
満、V:0.05〜0.25%、Nb:0.005〜
0.12%、Al:0.005〜0.05%、S:0.
005%以下、P:0.0005〜0.01%、N:
0.005〜0.1%、を含み、Mn(%)×P(%)
が0.001以下であり、残部Feおよび不可避的不純
物からなる優れたクリープ強度を有する高Crフェライ
ト鋼を要旨とする。
【0007】
【作用】以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
0.10%C−0.1%Si−0.01〜0.2%Mn
−0.0001〜0.02%P−0.001%S−9%
Cr−0.2%Mo−1.2%W−0.18%V−0.
05%Nb−0.015%Al−0.055%Nを合金
成分とする真空溶解鋼塊を用い、1250℃で加熱の
後、25mm厚に熱間圧延した。1050℃で1時間の
加熱保持から空冷により焼ならしを行った後、760℃
で3時間の焼もどしを行った。この後、圧延方向に直角
(C方向)にクリープ破断試験片を採取し、600℃、
21kgf/mm2 の条件でクリープ破断試験を行い、
クリープ破断時間を求めた。図1にMn(%)×P
(%)がクリープ破断強度におよぼす影響を示す。
【0008】Mn(%)×P(%)が0.001まで低
下してもクリープ破断時間は余り変化しないが、0.0
01未満に低下するとクリープ破断時間、即ちクリープ
破断強度が顕著に向上することを発見した。これは次の
ような理由による。Mnは極めて偏析し易い元素であ
る。一方、クリープ破断強度向上に有効なMo、W、
V、Nb等は、所謂フェライト生成元素であり、Mnの
非濃化部に濃縮する性質を有する。このため、Mnの偏
析により、Mo、W、V、Nb等の偏析が助長される。
従って、Mnの濃化部では、Mo、W、V、Nb等の濃
度が低下するばかりでなく、Mnの濃縮自体が炭窒化物
の安定性を阻害し、クリープ破断強度が低下する。逆に
Mnの非濃化部では、Mo、W、V、Nb等が濃化し、
δフェライトの生成を促進する。このため、クリープ破
断強度を改善する目的でMo、W、V、Nb等を多量添
加するとδフェライトが生成し、Mnの非濃化部でもク
リープ破断強度が低下する原因となる。
【0009】Mnの偏析度はP添加の増量により相乗的
に上昇し、P量の増加はMnの偏析を通してクリープ破
断強度低下を招く。このため、Mn(%)×P(%)を
0.001以下に抑制することがクリープ破断強度向上
に極めて有効な手段となる。また、0.2%超のMn添
加ではMn(%)×P(%)を0.001%以下とする
ことが困難になるため、Mn量を0.2%以下とする。
Mn量が0.02%未満では、MnSとしてのSの固定
が出来なくなるため、下限を0.02%とする。
【0010】Pについても、Mn(%)×P(%)を
0.001以下を達成するため、上限を0.01%とす
る。また、下限については可及的に低いことが望ましい
が、工業的な達成限界から下限を0.0005%とす
る。以下にその他の成分元素の限定理由について述べ
る。Cは常温および高温の強度を高めるのに有効な元素
であり、高Cr耐熱鋼として要求される強度レベルか
ら、少なくても0.05%を必要とする。しかし、C量
の増加とともに、鋼材の靭性が低下し、溶接性も悪くな
るため、上限を0.15%とする。
【0011】Siは脱酸および強度上昇のため0.01
%以上添加するが、添加量が多いと靭性を低下するため
上限を0.5%とする。Crは焼入れ性を増すととも
に、焼もどしおよび溶接後熱処理で炭窒化物を析出し、
高温強度を向上させる。またCrは密着性の良い酸化皮
膜を形成し、耐酸化性を向上させるため、8%以上添加
する。しかし、13%超の添加は不必要なため、上限を
13%とする。
【0012】Wは高温強度、特にクリープ破断強度を増
す効果を有する元素であり、0.9%超添加する。しか
し、3.2%超を添加するとδフェライトの生成等によ
りクリープ破断強度が却って低下し、また靭性にも悪影
響を与えるため、上限を3.2%とする。MoはWとの
複合添加により高温強度、特にクリープ破断強度を増す
ために添加する。しかし、添加量が0.05%未満では
効果が認められず、0.35%以上では複合添加効果が
飽和する傾向を示すため、添加範囲を0.05〜0.3
5%未満とする。
【0013】Vはそれ自体炭窒化物を形成し、強度を上
昇するとともに、Crの炭窒化物に固溶し、Cr炭窒化
物をさらに安定化する効果がある。しかし、0.05%
未満では効果が認められず、0.25%超では効果が飽
和し、添加量に応じた効果が得られないため、0.05
〜0.25%とする。Nbは焼もどしあるいは溶接後熱
処理時に安定な炭窒化物を形成し、またVの炭窒化物と
複合析出し、鋼のクリープ破断強度を向上させる効果を
有する。このため、0.005%以上を添加するが、
0.12%超では添加量に見合った効果が得られないた
め、経済的な理由で0.12%以下に抑制する。
【0014】Alは鋼の脱酸に不可欠な元素であり、こ
の目的から0.005%以上を添加する。しかし、Al
添加量が高くなるとクリープ破断強度を害するため添加
量の上限を0.05%とする。SはMnS介在物を形成
し、クリープ破断強度を低下させる。このため、低い程
鋼の特性に望ましく、0.005%以下に限定する。
【0015】NはCと同様、鋼の強度を上昇させるが、
通常の溶製方法では0.1%超の添加で鋼塊内に気孔を
形成する。気孔が圧延によっても未圧着であると、延性
および靭性を低下させるため、添加量を0.1%以下と
する。次に、素材の製造条件について述べる。前記のよ
うな化学成分を有する鋼は転炉、電気炉で溶製した後、
必要に応じて取鍋精錬や真空脱ガス処理を施して得ら
れ、通常鋳型あるいは一方向凝固鋳型で造塊した後、分
塊でスラブとされる。スラブあるいはビレットは連続鋳
造法により溶鋼から直接製造しても良い。分塊での均熱
・圧下はいかなるものであっても構わない。即ち、スラ
ブを冷却した後均熱してもよく、分塊のまま熱片で均熱
炉に装入しても良い。1000〜1300℃で均熱の
後、圧延または鍛造によりスラブあるいはビレットとす
る。これらの寸法は製品寸法の2倍以上が好ましい。
【0016】スラブあるいはビレットは鋼に含有される
Nbの一部あるいは全部が固溶する温度で加熱されるこ
とが望ましい。したがって、1100℃以上の加熱温度
で加熱する。しかし、1280℃を超えると、オーステ
ナイト粒が粗大化しすぎ、圧延あるいは鍛造によっても
微細化できなくなることがあるため、1280℃以下が
好ましい。
【0017】加熱されたスラブあるいはビレットは、複
数パスの圧延、鍛造、押出、引抜あるいは穴拡げにより
所定の形状寸法とされる。成形の終了後はマルテンサイ
ト変態温度である約300℃以下まで冷却するのが望ま
しい。冷却は空冷でもよく、水冷等の加速冷却を採用し
てもよい。冷却した素材は焼もどしにより所定の強度に
調整する。本発明の高Cr耐熱鋼のAc1温度は概ね8
30〜850℃であり、焼もどしはこの温度以下とす
る。
【0018】
【実施例】表1に示す化学成分を有する鋼を用い、表2
に示す条件で熱処理を施し、同表中に示す形状の製品と
した。得られた製品からサンプルを切り出し、引張強さ
を求めるとともに、クリープ破断試験を実施した。結果
を併せて表2に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】鋼材1A〜9AのAシリーズは本発明によ
るものであり、引張強さが70〜75kgf/mm2
加工性および靭性の確保に適切な値であり、650℃−
10、000時間のクリープ破断強度も9kgf/mm
2 を超えており、優れた値を示している。これに対し、
鋼材2Bおよび8BではP含有量が本発明範囲を超えて
おり、鋼材5BではMn量が本発明範囲より高く、Mn
(%)×P(%)が0.001を超えており、引張強さ
が70〜75kgf/mm2 と妥当な値であるにも拘ら
ず、650℃−10、000時間のクリープ破断強度が
9kgf/mm2 未満と低く、クリープ破断強度が劣
る。
【0022】
【発明の効果】本発明による高Cr耐熱鋼は適切な引張
強さでありながら、優れたクリープ強度を有しており、
高温高圧で使用される火力発電や化学プラント用として
極めて有用なものであり、工業上価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】Mn(%)×P(%)とクリープ破断時間の関
係を示す図である。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%にて、 C:0.05〜0.15%、 Si:0.01〜0.5%、 Mn:0.02〜0.2%、 Cr:8〜13%、 W:0.9%超3.2%以下、 Mo:0.05〜0.35%未満、 V:0.05〜0.25%、 Nb:0.005〜0.12%、 Al:0.005〜0.05%、 S:0.005%以下、 P:0.0005〜0.01%、 N:0.005〜0.1% を含み、Mn(%)×P(%)が0.001以下であ
    り、残部Feおよび不可避的不純物からなる優れたクリ
    ープ強度を有する高Crフェライト鋼。
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