JPH06186601A - 有機非線形光学材料およびその製法 - Google Patents

有機非線形光学材料およびその製法

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JPH06186601A
JPH06186601A JP21447893A JP21447893A JPH06186601A JP H06186601 A JPH06186601 A JP H06186601A JP 21447893 A JP21447893 A JP 21447893A JP 21447893 A JP21447893 A JP 21447893A JP H06186601 A JPH06186601 A JP H06186601A
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Japan
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nonlinear optical
optical material
group
molecule
organic nonlinear
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JP21447893A
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English (en)
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Azuma Matsuura
東 松浦
Tomoaki Hayano
智明 早野
Satoshi Tatsuura
智 辰浦
Wataru Toyama
弥 外山
Katsusada Motoyoshi
勝貞 本吉
Tetsuzo Yoshimura
徹三 吉村
Hisashi Sawada
寿史 澤田
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Fujitsu Ltd
Original Assignee
Fujitsu Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電気光学効果が大きく、加工性、対環境性に
優れた有機非線形光学材料を提供すること。また、光通
信用1.3〜1.55μm波長域の透明性を向上させる
こと。 【構成】 主鎖を形成する分子骨格が芳香環(A)と直
鎖状共役基(B)とからなり、AとBが交互に結合して
形成されて分子骨格自体に分極を有する有機非線形光学
材料。分子骨格の途中にオルト、パラ以外の結合や飽和
結合を挿入して共役長を制御し、分極を増大できる。ア
クセプタやドナーを導入しても分極が増大する。アミノ
基、アルデヒド基の少なくとも1方を2以上有するπ電
子共役分子が出発モノマとして有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は有機非線形光学材料及び
その製造方法に関し、特に分子骨格に共役系を有し、分
子骨格自体の持つ分極を利用した有機非線形光学材料及
びその製造方法に関する。本発明の有機非線形光学材料
は、非常に高い非線形光学特性を有するので、電気光学
素子、光−光素子用材料などとして有用である。さら
に、本発明の材料を用いた素子を用いることにより光通
信、光インターコネクション、あるいは光コンピュータ
など各種の光システム分野において有利に利用すること
ができる。
【0002】
【従来の技術】非線形光学材料は、電圧印加またはレー
ザ光の強電界下で2次あるいは3次の非線形光学効果を
示す材料であり、また現象面から、光周波数交換、光変
調、光スイッチング、光増幅など多くの素子機能を奏す
るので、光通信、光インターコネクションや光コンピュ
ータなどの分野においてキーテクノロジーを握る素材と
して注目されている。従来においては、無機系の非線形
光学材料が広く知られており、LiNbO3 ,KD2
4 (KDP) ,KNbO3 ,LiTaO3 などの結晶
が公知である。そして、1983年ごろから、優れた加
工性、材料設計の柔軟性、大きな分子分極といった点か
ら、有機非線形光学材料の研究・開発が盛んになってき
た。代表的な有機非線形光学材料としては、メチルニ
トロアニリン(MNA)、メトキシニトロベンジリデン
アニリン(MNBA)などの有機結晶、ポリマ母体中
に分極分子を分散させる分散型ポリマ、ポリマ側鎖に
分極分子を導入するペンダント付加型ポリマ、分極分
子をネットワーク化する架橋型ポリマ、などが知られて
いる。
【0003】従来、ポリマの光導波路および非線形光学
材料はポリマ薄膜を形成後、ポーリングして作製してい
る。最近、本出願人はアミノ基を有する分子とエポキシ
基を有する分子を基板上で電界を印加した状態で化学気
相成長(CVD)する方法(電場アシストCVD)を開
示した(特願平3−237864号明細書)。電場アシ
ストCVDは、不純物の少ない膜が得られる、ポー
リングに比べ、分子の配向度を上げられる、ドライプ
ロセスであるため半導体プロセスに適する、主鎖型ポ
リマなどポーリングでは配向困難なポリマを配向させら
れる、薄膜形成と導波路形成を同時に行える(プロセ
スの簡略化)、全ての導波路が非線形光学効果を有す
る、という特徴を有する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記有機非線形光学材
料のうち有機結晶では、1分子自体の分子分極は大きく
ても、双極子−双極子相互作用などの分子間相互作用に
より分子が分極を打ち消すように配向するため材料とし
てのマクロな分極が大きくないという問題がある。ま
た、電気光学素子を実現するために重要な要素となる、
薄膜化などの加工性が悪いという問題点もある。また、
分散型ポリマ及びペンダント付加型ポリマはポリマを母
体に用いることにより成膜性などの加工性は分子性結晶
材料に比べて優れるものの、これらの材料では材料の分
極を揃えるために電場をかけなければならない(これを
ポーリングという)。このため、時間の経過とともに分
極分子の配向緩和が進み、電気光学効果が小さくなると
いう問題点がある。架橋型ポリマは分極分子をネットワ
ーク化し、配向緩和を最小限にくいとめた方法である
が、この方法では、成膜した後にポーリングしなければ
ならないので分極分子の配向が不十分であるなどの問題
点がある。さらにポリマ系材料全般にいえることは、ポ
リマ主鎖自身は非線形光学特性を有しない、という点で
ある。ポリマ系材料では、ポリマを分極分子のバインダ
として用いるために分極分子の密度が小さくなり、大き
な電気光学効果が期待できないという問題点があった。
【0005】本発明は上記問題点を解決した材料を提供
すること、すなわち、大きな電気光学効果を奏する有機
非線形光学材料、加工性、対環境特性に優れた有機非線
形光学材料を提供することを目的とする。また、有機非
線形光学材料薄膜の形成方法に関しては、本発明者ら
は、ポリマ主鎖に共役系を導入することにより非線形光
学定数を大きくする可能性があることを見い出したが、
ポリマのガラス転移温度以上で強電界を印加してポリマ
を配向させる従来の手法では、主鎖を大きく回転させる
ことになり、充分な分子配向を得ることは困難であっ
た。そこで、非線形性の大きい主鎖共役型ポリマ薄膜の
形成方法を提供することを本発明はもう1つの目的とす
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記第1の目的
を達成するために、第1の側面において、主鎖を形成す
る分子骨格が芳香族環(A)と直鎖状共役基(B)とか
らなり、AとBが交互に結合して構成されて分子骨格自
体に分極を有することを特徴とする有機非線形光学材料
を提供する。
【0007】本発明の特徴の一つは、分子骨格自体が既
に分極している、すなわち、分子骨格自体が非線形光学
効果を奏することである。ポリマ骨格自体が非線形光学
効果を発現しない場合、材料の非線形光学効果の大きさ
には限界があったが、本発明材料では、骨格自体に分極
があるため従来材料に比べて、大きな非線形光学効果が
期待できる。分子骨格が共役系から成り、分子骨格に炭
素以外の原子を導入するなどにより分子骨格自体に非線
形光学効果を発現させることができる。
【0008】主鎖を形成する分子骨格を構成する芳香環
(A)は、特に限定されないが、下記のものを例示する
ことができる。
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】これら構成要素の組合せ(例えば下記)で
もよい。
【0012】
【化5】
【0013】主鎖を形成する分子骨格を構成する主鎖状
共役基(B)も、特に限定されないが、代表的には、−
CH=CH−,−C≡C−,−CH=N−,−N=N
−、これらの組合せ(例えば−CH=CH−N=N−な
ど)である。本発明の有機非線形光学材料は上記構成要
素AとBを交互に結合して全体としても共役系(π電子
共役系)をなす。交互に並ぶ複数のAとBはそれぞれ同
一である必要はない。
【0014】さらに、本発明の有機非線形光学材料は、
分子骨格自体が分極を持つ。分子骨格に分極を持たせる
ことは、基本的に共役系中に炭素原子と共に炭素、水素
以外の原子を導入することによって実現できるが、さら
に構成要素の分子構造(電子受容性部位、電子供与性部
位)、構成要素の相互配列、アクセプタ基又はドナー基
となる置換基の導入などによっても実現することができ
る。
【0015】代表的な方法の1つは、共役系分子骨格の
一部に、−A−N=CH−A−で表わされるベンジリデ
ンアニリン骨格を用いて、分極を大きくすることであ
る。これは後述する分子軌道計算により容易に確認でき
る。さらに、分子骨格の一部に、 (−N=CH−A−CH=N−A−N=CH−) n が含まれた材料においては、この分子骨格のみで、強力
なドナー、アクセプタを導入したパラニトロアニリンと
同程度の分極が得られる。模式的に表わすと下記の如く
である。
【0016】
【化6】
【0017】分子骨格は分子長軸方向の長さが30Å以
上、より好ましくは1000Å以上の場合に成膜性など
の加工性が向上するので好ましい。本発明の有機非線形
光学材料は、分子骨格自体が既に分極しているためにこ
れだけでも非線形光学効果を示すが、分子骨格の側鎖
に、一般的に、水素原子、アルキル基のほか、−N
2 ,−N(CH3)2 ,−N(C2 5)2 ,−OC
3 ,−OC2 5 ,−SCH3 ,−SC2 5 、など
といった公知のドナー基(電子供与基)、あるいは−N
2 ,−CH,−CF3 ,−Fといった公知のアクセプ
タ基(電子受容基)を導入することにより非線形光学効
果をさらに大きくすることも可能である。下記にこのよ
うな分子骨格の例を示す。
【0018】
【化7】
【0019】さらに、分子軌道計算で得られる分子軌道
を用いたフロンティア電子密度解析から、−N=CH−
A−CH=N−A−N−CH−(Aは特に−C6
4 −)の構造において、=CH−A−CH=が電子受容
性を示し、=N−A−N=の部分が電子供与性を示すこ
とがわかった。従って、ドナー性の部位にドナー基を、
アクセプタ性の部位にアクセプタ基を導入することによ
り、さらに大きな非線形光学効果を得られる。
【0020】そこで、例えば、 (−N=CH−C6 4 −CH=N−C6 4 −N=C
H−) n 〔但し、nは1以上の整数〕が含まれた材料において、
=CH−C6 4 −CH=の部分のベンゼン環水素のう
ち、少なくとも1つ以上の水素をアクセプタで置換する
ことにより非線形性が大きくなり、また、=N−C6
4 −H=の部分のベンゼン環水素のうち、少なくとも1
つ以上の水素をドナーで置換することにより非線形光学
効果が増大する。その構造例を下記に模式的に示す。
【0021】
【化8】
【0022】本発明は、第2の形態として、上記の如き
共役系分子骨格を飽和結合を介して複数個つなげたもの
を提供する。飽和結合を介しては電子が移動しない、す
なわち、飽和結合の導入によりとなりあった2つの共役
系分子が相互作用することは少ない。このため、飽和結
合を介して複数個の本発明共役系分子骨格を連結させる
ことにより複数倍の非線形光学効果が発現する。
【0023】共役系を構成する構成要素の例は本発明の
第1の態様に関連して挙げた如きものであることができ
る。また、飽和結合でつなげられる個々の共役系も長軸
方向の長さが30Å以上であってもよい。共役系どうし
をつなぐ飽和結合を含む構成要素としては−(CR1
2)n −〔式中、R1 ,R2 はアルキル基又は芳香族基を
表わすが、その中にC,H以外の原子を含んでもよ
い〕,−(CH2)n −,−O−,−S−、これらの組合
せなどを例示でき、そのためのモノマとして下記の如き
ものを使用できる。
【0024】
【化9】
【0025】本発明は、第3の態様として、主鎖を形成
する分子骨格が −(A……B−A)−〔B−A……B〕− なる繰り返し単位を含み、(A−B……A)ではB−A
−Bの結合の2つのBがAに対してオルト位又はパラ位
に結合しており、〔B−A…B〕ではB−A−Bの結合
の2つのBがAに対してオルト位以外かつパラ位以外の
位置に結合している請求項1に記載の有機非線形光学材
料、及び主鎖を形成する分子骨格が −(A……B−A)−B− なる繰り返し単位を含み、(A−B……A)ではB−A
−Bの結合の2つのBがAに対してオルト位又はパラ位
に結合しており、(A……B−A)の右のBが(A…B
−A)の右端のB−Aに対してオルト位以外かつパラ位
以外の位置に結合している請求項1又は2に記載の有機
非線形光学材料を提供する。
【0026】これらの有機非線形光学材料の特徴は、共
役系をなす分子骨格自体において、BがAに対してパラ
位又はオルト位に結合している部分とそうでない部分が
あることである。パラ位又はオルト位の結合と比べてそ
れ以外の結合では共役し易さに大きな差があるために、
パラ位又はオルト位以外の結合の部分で共役が相対的に
切れたように働き、結果として共役長を制御することが
できる。非線形性(分極)を増大させるためには、適当
な長さの共役系が数多く連結している方が望ましいので
ある。またオルト位の結合は共役系の幅が広がって非線
形性を大きくする効果があり、好ましい。
【0027】第3の態様の有機非線形光学材料の分子骨
格を例示すると下記の如くである。
【0028】
【化10】
【0029】
【化11】
【0030】この第3の態様の有機非線形光学材料も、
飽和結合を介して複数個つなげてもよい。飽和結合を介
しては電子が移動しない、すなわち、飽和結合の導入に
よりとなりあった2つの共役系分子が相互作用すること
は少ない。このため、飽和結合を介して複数個の本発明
共役系分子骨格を連結させることにより複数倍の非線形
光学効果が発現する。
【0031】飽和結合及びそれを形成するためのモノマ
は前記と同じでよい。また、この有機非線形光学材料
も、分子骨格の側鎖に−NH2 ,−N(CH3) 2 ,−N
(C2 5)2 ,−OCH3 ,−OC2 5 ,−SC
3 ,−SC2 5、などといった公知のドナー基(電
子供与基)、あるいは、−NO2 ,−CN,−CF3
−Fといった公知のアクセプタ基(電子受容基)を導入
することにより非線形光学効果を大きくすることができ
る。
【0032】また、Aにドナーあるいはアクセプタを導
入することにより本材料系の非線形光学特性を増大する
ことが可能になる。特に、−B−A−B−において2つ
のBがAに対してオルト位に結合しているグループで、
ドナーあるいはアクセプタを一方のBに対しパラ位(従
って他方のBに対してはメタ位)に導入することによ
り、ミクロな分極の向きを揃えることができるので非線
形性は飛躍的に増大する。この系の概念図を下記に示
す。
【0033】
【化12】
【0034】上記は共役系がオルト位結合した例である
が、共役系がパラ位結合したものに下記の如くアクセプ
タ(A′)とドナー(D)を導入することも効果があ
る。
【0035】
【化13】
【0036】上記概念図では、−A−B−A−B−A−
B−A−B−A−B−A−と、Aが6個、Bが5個の系
であり、Aがベンゼン環、Bがアゾメチン−CH=N−
である。−A−B−A−B−A−B−A−B−A−B−
A−を−<A−B−A>−B−<A−B−A>−B−<
A−B−A>−のように分割して考えると1つの<A−
B−A>に生じる分極はドナー、アクセプタを導入する
ことにより大きくなる。<A−B−A>において、ドナ
ー、アクセプタをBに対してパラ位に導入した時、特に
非線形性は大きくなる。これは、パラニトロアニリン
が、オルトやメタニトロアニリンに比べ非線形性が大き
いのと同様の理由による。また、A>−B−<Aに生じ
る分極は、ドナーあるいはアクセプタがBに対しメタ位
に導入されていることから、<A−B−A>の分極に比
べて非常に小さい。以上の理由から、ドナーあるいはア
クセプタを一方のBに対しパラ位(従って他方のBに対
してはメタ位)に導入することにより、材料の非線形性
は飛躍的に増大する。下記にこのような系を例を示す。
【0037】
【化14】
【0038】また、特にAがベンゼンでBがアゾメチン
結合−CH=N−の時、非線形効果が大きくなるととも
に製造性も良くなる。またA,Bがこれらの系の場合、
上記の飽和結合で共役系を複数個連結することにより材
料の非線形性はさらに向上する。以上の如き本発明の有
機非線形光学材料は、電場アシストCVD法、MLD
(分子層堆積法、特願平3−132448号参照)など
により製造可能である。
【0039】本発明は、前記第2の目的を達成するため
に、第2の側面として、分子内でπ電子共役であって、
2つのアミノ基、又は2つのアルデヒド基、又は1つの
アルデヒド基と1つのアミノ基を有する分子を1種類又
は2種類以上用い、真空中に気相で供給し、アミノ基と
アルデヒド基とが反応して結合した共役ポリマ薄膜を基
板上に形成する方法を提供する。
【0040】この方法で用いる分子はH2 N−A−NH
2 ,OHC−A−CHO,H2 N−A−CHOで表わさ
れる構造を有し、代表的には
【0041】
【化15】
【0042】〔式中、R3 〜R8 のうち2つ以上が−N
2 又は−CHOで、残りは水素原子又は置換基、好ま
しくはドナー基又はアクセプタ基である。〕であるが、
中央のAはベンゼン環のほか、他のπ電子共役系でもよ
い。例えば下記の如し。
【0043】
【化16】
【0044】用いる分子として、−NH2 と−CHOの
両方を有する分子、又は−NH2 を有する分子と−CH
Oを有する分子の両方を用いることにより、アミンとア
ルデヒドは、下記の如く、 −NH2 +−CHO→−N=CH−+H2 O 共役結合を形成してポリアゾメチンとなる。従ってこれ
らの出発分子がπ電子共役の分子であるので、得られる
ポリマはπ電子共役ポリマとなる。アゾメチン系ポリマ
は、現在CVDで作製可能な共役ポリマであり、アゾメ
チン系ポリマは大きな2次の非線形光学定数を持つ(下
記参照)。
【0045】
【化17】
【0046】なお、出発分子として−NH2 と−CHO
の両方を有するπ電子共役分子を用いる場合には、2種
類の分子を用いる場合と比べると、下記の点で効果が期
待される。 モノマの分極の向きとポリマの分極の向き、さらに
2次非線形光学係数の向きの3つが一致するため配向度
の向上、実効的な非線形光学定数の増大が見込まれる。 共役系の重なりが大きくなり、ポリマの化学的安定
度が増す。 成膜時に制御するパラメータが少なくなり、プロセ
スが容易になる。
【0047】なお、2つの−NH2 を有する分子にドナ
ー、2つの−CHOを有する分子にアクセプタを付加し
たとき、得られるポリマの非線形性が増大する。ドナー
基としては−O−CH3 ,−N(CH3)2 ,−CH3
ど、アクセプタ基としては−NO2 ,−CNなどを挙げ
ることができる。また、ポリマ鎖がジグザグ構造を取る
と分極の打ち消しが少ないので、非線形光学定数が大き
くなる。この観点からベンゼン環ではオルト体が優れて
いる。オルト体、メタ体、パラ体の反応例を下記に示
す。
【0048】
【化18】
【0049】好ましい例として、オルト体にドナーとア
クセプタを付けた例を下記に示す。
【0050】
【化19】
【0051】また、共役分子の水素原子の少なくとも一
部をフッ素原子又は重水素原子で置換したものを用いる
と、光通信で用いられる1.3〜1.55μmの近赤外
波長域の透明性が向上する効果がある。C−H結合は
1.3〜1.5μm付近に吸収があるため、光通信用の
1.3〜1.55μmの波長を吸収するが、水素原子を
フッ素原子又は重水素原子と置換することにより、吸収
波長が長波長側へシフトして1.3〜1.5μm域から
外れ、近赤外域での透明性が向上する。共役分子の一部
をフッ素原子に置換した例を下記に示す。
【0052】
【化20】
【0053】また、ポリマを形成する前記π電子共役分
子に加えて、分子内にアミノ基とドナー基をパラ位に
有する分子と、分子内にアルデヒド基とアクセプタ基を
パラ位に有する分子、又は分子内にアミノ基とアクセ
プタ基をパラ位に有する分子と、分子内にアルデヒド基
とドナー基をパラ位に有する分子を併用することによ
り、ポリマ主鎖の両末端にアクセプタとドナーを導入す
ることができ、その結果、分子分極が増大し、2次の非
線形光学定数がさらに増大させることが可能である。
【0054】,の分子の一般形は下記の如くであ
る。
【0055】
【化21】
【0056】〔式中、Dはドナー性を有する置換基、例
えば−N(CH3)2 ,−OCH3 などであり、A′はア
クセプタ性を有する置換基、例えば−NO2 ,−CNな
どである。〕例えば、電場アシストCVD法で、上記
,の形の分子を加えずに成膜した場合の分子構造は
図1(A)の如くであり、これにの形分の分子〔O2
N−C 6 4 −CHOとH2 N−C6 4 −N(CH3)
2 〕を加えた場合の分子構造は図1(B)の如く、分子
両末端にアクセプタ基とドナー基が挿入されるので、分
子分極が増大し、2次の非線形光学定数が増大する。
【0057】MLD法で成膜する場合も同様で、上記
,の形の分子を加えない場合は図2(A)の如くで
あるが、の形の分子を加えると図2(B)の如く、両
端にアクセプタ基とドナー基が挿入され、分子分極及び
2次の非線形光学定数が増大する。本発明の共役ポリマ
薄膜の製造は、出発共役分子の蒸着重合法によりアゾメ
チン系共役ポリマを成膜することにより、この蒸着重合
反応は室温以下でも進行し、MLD (Molecular Layer
Deposition) 法 (特願平3−132448号明細書)を
用いることにより、分子オーダーでの配列・薄膜化が容
易に行なえる。
【0058】またCVD(Chemical Vapor Deposition)
法により薄膜をモニタしながら成膜してもMLD法と同
等の材料が作成可能である。CVD法による薄膜気相成
長法については日経New Materials 1989年12/1
1号 p93、などを参照のこと。さらに、MBD(Mol
ecular Beam Deposition) を用いてもMLD法、CVD
法と同等の材料が作成可能となる。
【0059】例えば、電場アシストCVD法では、図3
に示す如き装置で、真空チャンバ1内に2つのガスソー
ス2,3から分子A、分子Bを蒸発させると、基板4上
で重合しながら堆積する。本発明では、この基板上に電
界を印加しながら蒸着させることにより、分子は極性を
持つため分子が配向しながら重合する。また、MLD法
では、図4(A)〜(D)に示すように、工程ごとに、
異なる分子を分子層レベルで順番に制御して堆積(反
応)させることができる。
【0060】本発明で用いる気相成長による薄膜成形で
はモノマ同士を結合させるための官能基が必要である
が、これらの官能基には気相反応として知られている反
応、 −CHO+−NH2 →−CH=N− を用いると良いことは前記の通りである(上記日経ニュ
ーマテリアル)。この反応を用いる場合、窒素にかかわ
る共役系部位ではドナー性を有することから、逆にドナ
ー性を有するモノマにアミノ基を導入することにより分
極を大きくすることができる。アミノ基の数は、最低で
1つ以上が望ましく、通常2つである。
【0061】また、同様の理由から、アクセプタ性を有
するモノマにアルデヒドを導入することにより材料の分
極を大きくすることができる。アルデヒドの数は、最低
で1つ以上が望ましく、通常2つである。共役系を切断
するためのモノマとしては、アミノ基、あるいはアルデ
ヒド基、又はこれらの基を含む官能基が通常2つ結合し
ていればよい。例えば、R−(CH2)−R′の如し
(R,R′は官能基)。
【0062】なお、水素原子をフッ素原子又は重水素原
子で置換したアゾメチン系共役ポリマ薄膜も、電場アシ
ストCVD法、MLDで成膜することが好ましいが、こ
の薄膜の近赤外域透明性の利点は液相成膜法(スピンコ
ート、ポーリングその他)による場合にも得られる。本
発明によるポリマ薄膜の用途としては光学材料、光導波
路、非線形光学材料、エレクトロニクス関連材料などが
ある。
【0063】本発明においては、分子軌道計算により分
子の2次の周波数依存分極率を計算することにより、材
料設計を行なったので、分子軌道計算について説明を付
け加える。材料の非線形性に相当するミクロな量(分子
レベルでの量)は、周波数依存超分極率である。この超
分極率は、量子力学的手法(時間依存摂動法)により書
き下すことができる(文献:J.F.Ward, Rev.Mod.Phys.,
37, 1 (1965))。この式から分子の超分極率は、入射光
のエネルギー、分子の光励起エネルギー、分子の基底−
励起状態間の遷移モーメントおよび励起状態間の遷移モ
ーメントの関数になっていることがわかる。これらの量
はいずれも分子軌道計算により計算できる量であること
から、現在では、分子軌道計算をもちいて、分子の非線
形性を調べるケースが多くなってきている(例えば、No
nlinear Optical Properties of Organic Molecules an
d Crystals, edited by D.S.Chemla and J.Zyss (Acade
mic, New York, 1987)を参照のこと) 。分子軌道計算が
盛んに用いられる理由は、計算により非線形性が定性的
に求められるほか、実験で分子の超分極率を求めるのが
難しいこと、溶媒など実験条件によって超分極率の測定
結果が大きく異なる、ということもある(例えば、S.P.
Karna et.al., J.Chem.Phys., 94, 1171 (1991)を参照
のこと) 。
【0064】また分子のどの部位がドナー性を示し、ど
の部位がアクセプタ性を示すかも分子軌道計算によりわ
かる。以下では話を簡単にするために、閉殻系(分子軌
道に充填している分子がすべて対をなしている系)につ
いての場合である。分子軌道計算の結果、分子軌道が得
られるか、分子軌道のうち電子のつまっている軌道でエ
ネルギーが最も高い軌道を最高被占分子軌道 (Highest
Occupied Molecular Orbital, HOMO) と呼び、電子のつ
まっていない軌道で最もエネルギーが低い軌道を最低空
軌道 (Lowest Unoccupied Molecular Orbital, LUMO)と
呼ぶ。また、これらの分子軌道を合わせてフロンティア
分子軌道と呼ぶ。もし、分子から電子が取られるとすれ
ば、それはHOMOから取られる。HOMOから取られ
るのがエネルギー的に一番安定だからである。すなわ
ち、HOMOの電子密度が大きい部位がドナー性が大き
いのである。また、LUMOについて、HOMOと同様
の考え方を行なうことにより、LUMOの電子密度が大
きい部位がアクセプタ性が大きいことが説明できる。こ
のようにして、分子のフロンティア電子密度を調べるこ
とにより分子のどの分子がドナー性かアクセプタ性かを
知ることができる。
【0065】
【実施例】本発明の実施においては、MLD,CVD,
MBD法などを用いて薄膜を作成することができること
は上述の通りである。例えば、モノマとして、テレフタ
ルアルデヒド(TPA,CHO−C6 4 −CHO)、
パラフェニレンジアミン(PPDA,NH2 −C6 4
−NH2)を用いると、公知の反応により薄膜が形成でき
ることが知られている(飯島ら、日経ニューマテリア
ル、1989年12月11日号、93〜101頁)。す
なわち、
【0066】
【化22】
【0067】この化合物のモデル分子として、ベンゼン
環4つを含む分子を考え、分子軌道計算により超分極率
βを計算した結果、代表的非線形光学材料分子であるパ
ラニトロアニリンと同程度の値を有することがわかっ
た。したがって、モデル分子に比べて共役長の大きい上
記化合物は大きい電気光学係数を有することが期待でき
る。この膜をMLD法で作成することにより分子オーダ
ーでの配列・薄膜化が容易に行なえる。
【0068】かかるMLD法は、例えば、図5に示すよ
うな成膜装置を用いて実施することができる。また、同
様の装置を用いることにより、CVD法を行うこともで
きる。この装置は、2個の分子蒸発用Kセル7(シャッ
タ8付き)および2個のモノマガスボンベもしくはモノ
マガス供給セル9(バルブ10付き)を備える。この装
置では、基板ホルダ11により支承された基板6の加熱
および冷却が可能であり、基板に形成された電極12お
よび13間に電圧を印加することができる。材料系によ
っては電場を印加することにより反転対称性をなくすこ
とができ、非線形光学効果が大きくなる場合がある。し
かしながら、電極形成や電場印加は必ずしも必要としな
い材料系もある。また、基板6上に形成されるポリマ膜
の膜厚を膜厚モニタ14により監視し、熱電対15を介
して基板温度を制御することができる。当然ながら、分
子蒸発用Kセルおよびモノマガスボンベもしくはモノマ
ガス供給セルの数は、例示のものに制限されない。ま
た、膜厚モニタ法は、光学式モニタなど種々の方式を併
用することが望ましい。図6にTPAとPPDAによる
MLDの例を示した。ガス分子のバルブにより切り換え
により、1分子層ステップでの成膜が膜厚モニタで観測
されている。成膜スピードは、基板温度、ガス圧などで
変えることができる。
【0069】また、上記薄膜はMBD法によっても作製
できる。図7に略示する装置はMBD(Molecular Beam
Deposition) 装置であり、反応室としての真空ベルジャ
21を有する。真空ベルジャ21内の基板30は、例え
ばシリコン基板や石英基板のような基板であって、基板
ホルダ28によって支承される。基板ホルダ28は、基
板30を加熱又は冷却可能となすために、ヒータ26を
内蔵するとともに、冷却媒体循環のための導管29を装
備する。基板加熱は、基板上に赤外光を照射するなどの
方法で行ってもよい。基板30の前面にはベタ電極14
及び対向電極(グリッド)35を配置する。ベタ電極3
4は、必要に応じてパターン化されていてもよく、ま
た、前記した基板10自身がこの電極の役割を果たして
もよい。また、グリッド35は、図示のようにメッシュ
構造とするほかに、多孔構造などとしてもよい。さら
に、図示の成膜装置は、光源31を含む光照射装置、電
子線照射装置32、反応ガス導入口33、複数個の分子
蒸発用セル(Kセル)32とそのシャッタ34、分子蒸
発用るつぼ33とそのシャッタ35、プラズマ発生装置
(図示せず)を装備する。ベタ電極34−グリッド35
間には電圧を印加可能である。なお、光源11からの光
としては可視光、紫外光などがある。さらに、Kセルな
どの周囲に液体窒素シェラウドなどを設け、また、シャ
ッタを冷却し、分子を吸着させることにより、分子の供
給の制御性、真空度などを向上させることができる。
【0070】図示の成膜装置を使用して、本発明の有機
非線形光学材料は次のようにして製造することができ
る:TPA(分子A)とPPDA(分子B)を別々のセ
ル22から蒸発させる。基板30に飛来した2種類の分
子は基板上で結合し重合して行く。分子にドナー基とア
クセプタ基を付加した場合、基板上に形成された電極3
4及び35間に電圧をかけながら成膜することにより、
アズデポ(付着したまま;以下同様)の状態で分子配向
した膜が得られる。同様に、基板30上に形成された電
極−対向電極(グリッド)間に電圧印加しながら成膜す
ることにより、膜厚方向に配向した膜がアズデポで得ら
れる。ここで、電極−対向電極間の距離は、2ミクロン
から10センチメートル程度が望ましい。特に、電極間
距離が広い場合は、高周波とArなどのガスの導入によ
るプラズマの発生、あるいは電子ビームの発生により、
膜への効率的な電圧の印加を計ることが望ましい。ここ
で、前記したように、基板上の電極は、基板そのものが
電極(ドープされた半導体基板など)でもよいし、基板
上に形成されたものでもよい。また、基板上にUV硬化
樹脂、SiO2 などのバッファ層を形成してもよい。
【0071】電気光学係数(γ33)の測定は反射法によ
り行なった。反射法の詳細については、C.C.Teng and
H.T.Man, Appl.Phys.Lett, 56, 1734 (1990) を参照の
こと。
【0072】(1) MLD法によりTPA・PPD
A系で薄膜を作成した結果、電気光学係数は3pm/Vで
あった。 次に、共役系を飽和結合を介して複数個連結させる
ために、TPA,PPDAのほかにモノマのグリタルジ
アルデヒド、CHO−(CH2)3 −CHO(B1)、ト
リメチレンジアミン、NH2 −(CH2)3 −NH2 (B
2)を用い、以下に示す配列の膜をMLD法により作成
した。
【0073】substrate|−TPA−PPDA−TPA
−PPDA−B1−B2−TPA−PPDA−TPA−
PPDA−B1−B2−… この膜の電気光学係数は12pm/Vであった。この膜の
特徴は共役系の切断にB1とB2を用いたことである。
B1とB2を用いたことによりおのおのの共役系の分極
は同方向を向くのでマクロな非線形性が大きくなるので
ある。
【0074】 次にモノマとして、NH2 −C6 3
OCH3 −NH2 (MPPDA),TPA,B1,B2
を用いて以下に示す配列の膜をMLD法により作製し
た。 substrate|−TPA−MPPDA−TPA−MPPD
A−B1−B2−TPA−MPPDA−TPA−MPP
DA−B1−B2−… この膜の電気光学係数は47pm/Vであった。
【0075】 次にモノマとして、CHO−C6 3
NO2 −CHO(NTPA),PPDA,B1,B2を
用いて以下に示す配列の膜をMLD法により作製した。 substrate|−NTPA−PPDA−NTPA−PPD
A−B1−B2−NTPA−PPDA−NTPA−PP
DA−B1−B2−… この膜の電気光学係数は63pm/Vであった。
【0076】 最後はモノマとして、NTPA,MP
PDA,B1,B2を用いて以下に示す配列の膜をML
D法により作製した。 substrate|−NTPA−MPPDA−NTPA−MP
PDA−B1−B2−NTPA−MPPDA−NTPA
−MPPDA−B1−B2−… この膜の電気光学係数は156pm/Vであった。
【0077】(2) MLD法により、下記
【0078】
【化23】
【0079】の3種類の分子(モノマ)を使用して下記
の構造の薄膜を作製した。電気光学係数は4pm/Vであ
った。
【0080】
【化24】
【0081】 次に、下記
【0082】
【化25】
【0083】の4種類の分子を使用して下記の構造の薄
膜を作製した。電気光学係数は3pm/Vであった。
【0084】
【化26】
【0085】 また、下記
【0086】
【化27】
【0087】の3種類の分子を使用して下記の構造の薄
膜を作製した。電気光学係数は43pm/Vであった。
【0088】
【化28】
【0089】(3) 下記分子を用い、図3の如き装
置で、次の条件下に薄膜を作製した。
【0090】
【化29】
【0091】CVD条件: 基板 石英基板上に10μmギャップのCr電極形
成 印加電圧 500V(0.5MV/cm) 基板温度 2
1℃ ガス圧 1×10-1Torr 蒸着レート
〜20Å/s セル温度 分子A 60〜100℃ 分子B 40〜8
0℃ 膜厚 3.3μm 得られた膜はギャップ間でチャネル型導波路を形成して
おり、He−Neレーザ光の導波が可能であった。導波
路は電気光学応答を示し、マッハ・ツェンダー干渉計に
より求めた値(電気光学係数)はr=10pm/Vであっ
た。また応答は80℃、5時間加熱後も失われず、熱に
対し安定であることが確認された。なおr値は分子設計
により向上が可能である。
【0092】なお、電界印加しないで同様に成膜した場
合には電気光学応答は観測されない。よって印加した電
界により分子が配向したことが確認された。 次に、下記分子を用いて、上記と同様の条件下で成
膜した。
【0093】
【化30】
【0094】得られた膜はギャップ間でチャネル型導波
路を形成していた。導波路は電気光学応答を示し、マッ
ハ・ツェンダー干渉計により求めた値(電気光学係数)
はr=10pm/V(at 633nm)であった。応答は80
℃、5時間加熱後も失われず、熱に対し安定であること
が確認された。また1.3〜1.5μmの導波損失が、
置換前のポリマに比べ大幅に低減され、同材料が1.3
〜1.5μm域での導波路として使用可能なことを確認
した。なおr値は分子設計により向上が可能である。
【0095】(4) 下記分子を用い、図3の如く装
置で、次の条件下に薄膜を作製した。
【0096】
【化31】
【0097】CVD条件: 基板 石英基板上に10μmギャップのCr電極形
成 印加電圧 500V(0.5MV/cm) 基板温度 2
1℃ ガス圧 1×10-3Torr 蒸着レート
〜0.5Å/s セル温度 60〜150℃ 基板上にはオレンジ色の透明薄膜が得られた。膜の吸収
スペクトル(図8)より、分子が反応してポリマ化して
いることがわかる。ギャップ間の膜は電気光学応答を示
し、マッハ・ツェンダー干渉計により求めた値はr=1
0pm/Vであった。また応答は80℃、5時間加熱後も
失われず、熱に対し安定であることが確認された。さら
に3次の非線形光学定数は10-12esuオーダーの値が得
られ、同ポリマが3次非線形光学材料としても有望であ
ることを確認した。なおr値は分子設計により向上が可
能である。
【0098】 次に、上記と同条件で、ドナー基を含
む下記分子を用いてCVDにより成膜した。電気光学定
数は上記より大きな値が得られ、熱安定性、3次の非
線形光学効果については上記と同程度の結果が得られ
た。
【0099】
【化32】
【0100】(5) 下記分子を用い、図3の如き装
置で、次の条件の電場アシストCVD法で成膜した。
【0101】
【化33】
【0102】CVD条件: 基板 石英基板上に10μmギャップのCr電極形
成 印加電圧 500V(0.5MV/cm) 基板温度 2
3℃ ガス圧 1×10-3Torr 蒸着レート
〜0.5Å/s セル温度 60〜150℃ 基板上にはオレンジ色の透明薄膜が得られた。ギャップ
間の膜は電気光学応答を示し、マッハ・ツェンダー干渉
計により求めた値はr=15pm/Vであった。B群の分
子を用いない場合(特許929720に対応)に比べ、
1.5倍の定数の向上が見られた。
【0103】 上記と同じ分子を用い、図7の如き
装置で、次の条件のMLD法で成膜した。 基板 石英 基板温度 23℃ ガス圧 1×10-3Torr セル温度 60〜
150℃ 成長層数 20〜30層 基板上の膜の分極は第2次高調波発生(SHG)により
確認した。またB群の分子を用いない場合に比べ、SH
G強度で1.5倍の増大が観測された。
【0104】 下記分子を用い、上記と同じ装置、
同じ条件下でMLD法で成膜した。
【0105】
【化34】
【0106】得られた薄膜の分子構造は、下記の如く、
エポキシ基を利用したペンダント型ポリマであるが、
のMLD薄膜と同程度のSHG強度を示した。
【0107】
【化35】
【0108】
【発明の効果】以上で説明したように、本発明の有機非
線形光学材料では、分子骨格自体に分極を持ちさらに、
効果的にドナー、アクセプタを導入することで、材料と
してのおおきな非線形性を得ることができる。また、剛
直な共役ポリマ骨格自体が非線形光学特性を発現させる
元になるので200℃を越える耐熱性が期待でき(従来
のペンダント型:80〜120℃)、さらにポリマ主鎖
の一部に共役系の広がりを押えるモノマを導入すること
により共役系の分極を揃えることができるので、従来技
術に比べて非線形光学効果が大きくなる。これらの材料
はMLD法などにより容易に薄膜化できるのでデバイス
化の自由度が大きい。
【0109】また、本発明の成膜法によれば、電場アシ
ストCVD法やMLD法などでアゾメチン系共役ポリマ
薄膜を得ることにより光回路用光導波路、導波型光変調
器、導波型光スイッチなどの光学材料及び非線形光学材
料が提供され、特にアゾメチン系共役ポリマの≡C−H
の水素原子をフッ素原子又は重水素原子で置換して光通
信用1.3〜1.55μm域の透明性を向上させること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電場アシストCVD法で成膜した有機非線形光
学材料の分子構造模式図である。
【図2】MLD法で成膜した有機非線形光学材料の分子
構造模式図である。
【図3】電場アシストCVD装置を示す。
【図4】MLD法による成膜の様子を説明する図であ
る。
【図5】MLD法、CVD法の成膜装置の例である。
【図6】MLD法の一例である。
【図7】MBD法による成膜装置の例である。
【図8】実施例で作製した有機非線形光学材料薄膜の吸
収スペクトル図である。
【符号の説明】
1…真空チャンバ 2,3…ガスソース 4…基板 6…基板 7…分子蒸発用Kセル 9…モノマガス供給セル 11…基板ホルダ 12,13…電極 14…薄膜モニタ 15…熱電対 21…真空ベルジャ 22…分子蒸発用セル 23…分子蒸発用るつぼ 24,25…シャッタ 26…ヒータ 28…基板ホルダ 30…基板 31…光源 34…ベタ電極 35…対向電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 外山 弥 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内 (72)発明者 本吉 勝貞 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内 (72)発明者 吉村 徹三 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内 (72)発明者 澤田 寿史 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主鎖を形成する分子骨格が芳香族環
    (A)と直鎖状共役基(B)とからなり、AとBが交互
    に結合して構成されて分子骨格自体に分極を有すること
    を特徴とする有機非線形光学材料。
  2. 【請求項2】 主鎖を形成する分子骨格が −(A……B−A)−〔B−A……B〕− なる繰り返し単位を含み、(A−B……A)ではB−A
    −Bの結合の2つのBがAに対してオルト位又はパラ位
    に結合しており、〔B−A…B〕ではB−A−Bの結合
    の2つのBがAに対してオルト位以外かつパラ位以外の
    位置に結合している請求項1に記載の有機非線形光学材
    料。
  3. 【請求項3】 主鎖を形成する分子骨格が −(A……B−A)−B− なる繰り返し単位を含み、(A−B……A)ではB−A
    −Bの結合の2つのBがAに対してオルト位又はパラ位
    に結合しており、(A……B−A)の右のBが(A…B
    −A)の右端のB−Aに対してオルト位以外かつパラ位
    以外の位置に結合している請求項1に記載の有機非線形
    光学材料。
  4. 【請求項4】 前記共役系を飽和結合を介して複数個連
    結し、かつ分子骨格自体に分極を有する請求項1,2又
    は3に記載の有機非線形光学材料。
  5. 【請求項5】 飽和結合が−(CR1 2)n −〔式中、
    1 ,R2 はアルキル基又は芳香族基を表わすが、その
    他C,H以外の原子を含んでもよい。〕、−CH2)
    n −,−O−,−S−、これらの組合せのいずれかであ
    る請求項4記載の有機非線形光学材料。
  6. 【請求項6】 Bが−CH=CH−,−C≡C−,−C
    H=N−,−N=N−、これらの組合せのうちいずれか
    である請求項1〜5のいずれか1項記載の有機非線形光
    学材料。
  7. 【請求項7】 Aが下記のうちいずれかである請求項1
    〜6のいずれか1項記載の有機非線形光学材料。 【化1】 【化2】
  8. 【請求項8】 分子骨格の分子長軸方向の長さが30Å
    以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機非
    線形光学材料。
  9. 【請求項9】 Aの1以上の水素をアクセプタで置換し
    た請求項1〜7のいずれか1項記載の有機非線形光学材
    料。
  10. 【請求項10】 Aの1以上の水素をドナーで置換した
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機非線形光学材
    料。
  11. 【請求項11】 (A−B……A)中のA−B−A結合
    の2つのAにアクセプタ及びドナーをそれぞれ導入しそ
    の導入部位がBに対してパラ位である請求項9又は10
    記載の有機非線形光学材料。
  12. 【請求項12】 〔B−A……B〕中のA−B−A結合
    の2つのAにアクセプタ及びドナーをそれぞれ導入しそ
    の導入部位がBに対してパラ位である請求項9又は10
    記載の有機非線形光学材料。
  13. 【請求項13】 分子内でπ電子共役であって、2つの
    アミノ基、又は2つのアルデヒド基、又は1つのアルデ
    ヒド基と1つのアミノ基を有する分子を1種類又は2種
    類以上用い、真空中に気相で供給し、アミノ基とアルデ
    ヒド基とが反応して結合した共役ポリマ薄膜を基板上に
    形成することを特徴とする有機非線形光学材料の製造方
    法。
  14. 【請求項14】 電場アシストCVD法で成膜する請求
    項13記載の方法。
  15. 【請求項15】 MLD法で成膜する請求項13記載の
    方法。
  16. 【請求項16】 アミノ基とアクセプタ基を有するπ電
    子共役分子と、アルデヒド基とドナー基を有するπ電子
    共役分子とをさらに気相で供給し、これらの分子を共役
    ポリマの末端に導入した薄膜を得る請求項13,14又
    は15記載の方法。
  17. 【請求項17】 さらに、アミノ基とドナー基を有する
    π電子共役分子と、アルデヒド基とアクセプタ基を有す
    るπ電子共役分子とをさらに気相で供給し、これらの分
    子を共役ポリマの末端に導入した薄膜を得る請求項1
    3,14又は15記載の方法。
  18. 【請求項18】 共役ポリマの主鎖中に導入されて共役
    結合を切る分子を適当量でさらに気相中に供給する請求
    項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 【請求項19】 基板上に2〜8分子層からなる共役ポ
    リマ薄膜を形成した後、2以上のエポキシ基を含む分子
    を気相中に供給して共役ポリマ薄膜の末端アミノ基とエ
    ポキシ基とを結合させてペンダント型ポリマを得る請求
    項13又は18記載の方法。
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JP2000095773A (ja) * 1997-05-16 2000-04-04 Natl Starch & Chem Investment Holding Corp 放射線または熱開始カチオン硬化性エポキシド化合物及びそれらの化合物から製造された組成物
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