JPH06184556A - 低級オレフィンの製造方法 - Google Patents

低級オレフィンの製造方法

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JPH06184556A
JPH06184556A JP5229665A JP22966593A JPH06184556A JP H06184556 A JPH06184556 A JP H06184556A JP 5229665 A JP5229665 A JP 5229665A JP 22966593 A JP22966593 A JP 22966593A JP H06184556 A JPH06184556 A JP H06184556A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 少なくとも低級オレフィンの沸点範囲よりも
高い沸点のフラクションを有する炭化水素供給物から低
級オレフィンを製造する方法。 【構成】 この方法は炭化水素供給物の少なくとも1部
が水素化処理された合成油フラクションである炭化水素
供給物を熱分解することからなっている。水素化処理さ
れた合成油フラクションは、合成油フラクションの水素
化および/または水素化変換および/または水素化熱分
解によって作成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、少なくとも低級オレフ
ィンの沸点範囲よりも高い沸点のフラクションを有する
炭化水素供給物から低級オレフィンを製造する方法に関
し、この方法は炭化水素供給物の熱分解からなってい
る。
【0002】
【従来の技術】低級オレフィン(すなわち2〜4個の炭
素原子を有するオレフィン)はたとえばアルキル化、オ
リゴマー化および重合の各方法のような多数の化学工程
に使用するための特に適する出発物質である。炭化水素
供給物の熱分解によるこの供給物からの低級オレフィン
の製造は周知の方法であって、多数の石油化学コンビナ
ートで工業的に用いられる。典型的には、原油の蒸留フ
ラクション(一般に原油のナフサフラクション)が熱分
解処理に炭化水素供給物として使用される。産業上の理
由から、低級オレフィンに対し高い選択性を有すると共
にできるだけメタンの生成を回避する熱分解法が要求さ
れる。メタンの生成を最小化させるには、熱分解処理を
比較的緩和な条件下で行なう。しかしながら、かなり多
量の炭化水素供給物が未分解のまま残留する。これに対
し、熱分解処理を比較的過酷な条件下で行なって炭化水
素変換を増大させれば、かなり多量の炭化水素供給物が
メタンまで熱分解される。したがって、最適な熱分解処
理は炭化水素供給物の高変換率と低級オレフィンに対す
る高い選択率とを組合せる。
【0003】ヨーロッパ特許出願第161705号公報
(EP 161705号)には、フィッシャ・トロプシ
ュ合成法の生成物フラクションを熱分解法における炭化
水素供給物として用いうることが開示されている。EP
161705号は線状C10〜C20オレフィンの製造方
法に関するものであって、高められた温度および圧力に
て特定の触媒を用い一酸化炭素と水素との混合物を実質
的に線状パラフィンよりなる炭化水素の混合物(フィッ
シャ・トロプシュ生成物)まで変換させ、実質的にC20
+ パラフィンよりなる炭化水素の混合物の重質フラクシ
ョンを緩和な熱分解により線状C10〜C20オレフィンま
で変換させることからなっている。実質的に線状パラフ
ィンよりなる炭化水素の混合物におけるC19 - フラクシ
ョンは熱水蒸気分解により低級オレフィンまで変換する
ことができる。熱分解処理の供給物としてこのC19 -
ラクションを用いる場合、低級オレフィンに対する選択
性は原油のナフサオレフィンと対比して増大することが
判明した。今回、低級オレフィンに対する熱分解処理の
選択性は、たとえばフィッシャ・トロプシュ生成物のよ
うな合成油フラクション(この合成油フラクションは水
素化処理されたものである)を熱分解処理における炭化
水素供給物として使用すれば、さらに顕著に増大させう
ることが判明した。
【0004】
【発明の要点】したがって本発明は、少なくとも低級オ
レフィンの沸点範囲よりも高い沸点のフラクションを有
する炭化水素供給物から低級オレフィンを製造するに際
し、炭化水素供給物の少なくとも1部が水素化処理され
た合成油フラクションである炭化水素供給物を熱分解す
ることを特徴とする低級オレフィンの製造方法を提供す
る。本明細書の目的で、「水素化処理された合成油フラ
クション」という用語は、油フラクションがたとえばフ
ィッシャ・トロプシュ法またはオリゴマー化法のような
合成法から得られ、次いで水素の存在下に工程処理され
ることを示すべく使用される。
【0005】炭化水素供給物中に存在する水素化処理さ
れた合成油フラクションの量は臨界的でなく、広範囲に
変化することができる。典型的には、炭化水素供給物は
原油の適する蒸留フラクションまたは合成油フラクショ
ンをさらに含むことができる。供給物中に存在する水素
化処理された合成油フラクションが多いほど、低級オレ
フィンに対する熱分解処理の選択性も高くなる。水素化
処理された合成油フラクションは炭化水素供給物の10
0重量%までを構成することができる。しかしながら、
たとえば5重量%の水素化処理された合成油フラクショ
ンを含む炭化水素供給物を、特に炭化水素供給物におけ
る低級オレフィン、水素化処理された合成油フラクショ
ンおよび他の成分の市場価格に応じて使用することが望
ましい。好ましくは炭化水素供給物は少なくとも20重
量%、より好ましくは少なくとも50重量%の水素化処
理された合成油フラクションを含む。一層好ましくは、
炭化水素供給物は少なくとも90重量%の水素化処理さ
れた合成油フラクションを含む。炭化水素供給物の沸点
範囲は広範囲に変化することができる。典型的には、炭
化水素供給物は96重量%の最高560℃の沸点を有す
る。沸点および沸点範囲は大気圧における温度であると
了解される。好ましくは、炭化水素供給物は30〜35
0℃の沸点範囲を有する。より好ましくは炭化水素供給
物は30〜200℃の沸点範囲を有する。水素化処理さ
れた合成油フラクションは、炭化水素供給物の高い沸点
フラクションもしくはより低い沸点フラクションを構成
しうることも了解すべきである。典型的には、水素化処
理された合成油フラクションは、全炭化水素供給物の沸
点範囲と実質的に同じ範囲にある沸点範囲を有すること
ができる。
【0006】熱分解処理の程度は炭化水素供給物の重質
度、すなわち沸点範囲に或る程度依存する。たとえば比
較的低い沸点範囲を有する炭化水素供給物は、比較的高
い沸点範囲を有する炭化水素供給物と比べより緩和な熱
分解条件を必要とする。したがって、熱分解条件は広範
囲に変化することができる。典型的には熱分解は500
〜1200℃、好ましくは700〜1000℃、より好
ましくは750〜900℃の温度にて行なわれる。典型
的には、熱分解は絶対圧0.1〜15バール、好ましく
は絶対圧1〜5バールの圧力にて行なわれる。熱分解装
置における炭化水素供給物の滞留時間は、たとえば炭化
水素供給物の重質度および用いる熱分解条件に応じて変
化する。典型的には熱分解は0.01〜1.0秒、好ま
しくは0.04〜0.5秒の滞留時間にて行なわれる。
炭化水素供給物の熱分解は典型的には不活性ガス希釈
剤、好ましくは窒素もしくは水蒸気、より好ましくは水
蒸気の存在下で行なわれる。用いるべき不活性ガス希釈
剤の量は臨界的でなく広範囲に変化しうるが、典型的に
は不活性ガス希釈剤を炭化水素供給物100重量部当り
20〜100重量部の量で存在させる。
【0007】1具体例において、熱分解工程への炭化水
素供給物に存在する水素化処理された合成油フラクショ
ンは、合成油フラクションを高められた温度および圧力
にて水素および水素化触媒の存在下に水素化して製造す
ることができる。水素化工程の作用は、たとえば合成油
中に存在する不飽和炭化水素および酸素化物を実質的に
水素化熱分解が生ずることなく水素化することである。
好ましくは水素化は100〜300℃、より好ましくは
150〜275℃、特に175〜250℃の温度にて行
なわれる。水素化は比較的広範囲の圧力にて行ないうる
が、好ましくは水素化は5〜150バール、より好まし
くは20〜120バールの水素分圧にて行なわれる。水
素化はたとえば流動床、移動床、スラリー床または固定
床のような任意の種類の触媒床配置を用いて行うことが
でき、各種類の触媒床はそれ自身の特徴的な利点および
欠点を有する。しかしながら、好ましくは固定触媒床が
用いられる。たとえば温度、圧力および空間速度のよう
な反応条件は、用いる特定種類の触媒床に応じて変化し
うることが了解されよう。固定触媒床を用いる場合、合
成油供給物は好ましくは0.1〜5kg/l/hの重量
空時速度、より好ましくは0.25〜2.5kg/l/
hの重量空時速度にて供給される。水素は100〜10
000 Nl/l/hr、より好ましくは250〜50
00 Nl/l/hrの範囲のガス空時速度にて水素化
工程に用いることができる。水素と供給物との比は10
0〜5000 Nl/kgの範囲とすることができ、好
ましくは250〜2500 Nl/kgである。
【0008】水素化触媒は当業界で周知されており、多
種類の組成物で市販入手することができる。典型的には
水素化触媒は触媒活性成分として元素周期律表第VIB
族および第VIII族から選択される1種もしくはそれ
以上の金属、特にモリブデン、タングステン、コバル
ト、ニッケル、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、
白金およびパラジウムから選択される1種もしくはそれ
以上の金属を含む。好ましくは触媒はニッケル、白金お
よびパラジウムから選択される1種もしくはそれ以上の
金属を触媒活性成分として含む。特に適する触媒は触媒
活性成分としてニッケルを含む。水素化触媒は典型的に
はキャリヤとして耐火性金属酸化物もしくは珪酸塩を含
む。適するキャリヤ材料はシリカ、アルミナ、シリカ−
アルミナ、ジルコニア、チタニアおよびその混合物を包
含する。水素化触媒に含ませるのに好適なキャリヤ材料
はシリカ、アルミナおよびシリカ−アルミナである。
【0009】水素化触媒は、全触媒100重量部当りの
金属として計算し0.05〜80重量部、好ましくは
0.1〜70重量部の量の触媒活性成分を含むことがで
きる。触媒中に存在させる触媒活性金属の量は、用いる
特定金属に応じて変化する。特に適する水素化触媒は、
全触媒100重量部当りの金属として計算し30〜70
重量部の範囲の量でニッケルを含む。適する水素化触媒
は市販入手することができ、或いはたとえば同時混練、
含浸もしくは沈澱のような当業界で周知された方法によ
り製造することができる。本発明の他の具体例におい
て、水素化処理された合成油フラクションは高められた
温度および圧力にて水素および水素化変換触媒の存在下
に合成油フラクションを水素化変換して製造される。水
素化処理された合成油フラクションを水素化変換により
製造するため供給物として使用する合成油フラクション
は一般に、水素化により水素化処理された合成油フラク
ションを製造すべく供給物として使用する合成油フラク
ションと比較して高い沸点範囲を有する。
【0010】水素化変換を行なう条件は、供給物の沸点
範囲および水素化変換工程の生成物の所望沸点範囲に依
存する。水素化変換工程で生ずる主たる反応は供給物の
水素化、供給物の水添異性化および供給物における重質
成分の水素化熱分解である。1つの反応が他の反応より
も多くなる程度は、用いる特定条件および用いる特定触
媒に依存する。典型的には、水素化変換は175〜40
0℃、好ましくは250〜375℃の温度にて行なわれ
る。典型的な水素分圧は10〜250バール、好ましく
は25〜150バールの範囲である。水素化変換はたと
えば流動床、移動床、スラリー床または固定床のような
任意の種類の触媒床配置を用いて行うことができ、各種
類の触媒床はそれ自身の特徴的な利点および欠点を有す
る。しかしながら、固定触媒床が好適に使用される。た
とえば温度、圧力および空間速度のような反応条件は用
いる特定種類の触媒床に応じて変化しうることが了解さ
れよう。固定触媒床を用いる場合、合成油供給物は好ま
しくは0.1〜5kg/l/hの重量空時速度、より好
ましくは0.25〜2kg/l/hの重量空時速度で供
給される。水素は100〜10000Nl/l/hr、
好ましくは500〜5000 Nl/l/hrのガス空
時速度で供給することができる。水素と供給物との比は
100〜5000 Nl/kgの範囲とすることがで
き、好ましくは250〜2500 Nl/kgである。
【0011】典型的な水素化変換触媒は触媒活性成分と
して元素周期列表第VIB族および第VIII族から選
択される1種もしくはそれ以上の金属、特にモリブデ
ン、タングステン、コバルト、ニッケル、ルテニウム、
イリジウム、オスミウム、白金およびパラジウムから選
択される1種もしくはそれ以上の金属を含む。好ましく
は水素化変換触媒はニッケル、白金およびパラジウムか
ら選択される1種もしくはそれ以上の金属を触媒活性成
分として含む。白金を触媒活性成分として含む水素化変
換触媒が特に適すると判明した。水素化変換触媒は典型
的にはキャリヤとして耐火性金属酸化物もしくは珪酸塩
を含む。キャリヤ材料は非晶質もしくは結晶質とするこ
とができる。適するキャリヤ材料はシリカ、アルミナ、
シリカ−アルミナ、ジルコニア、チタニアおよびその混
合物を包含する。キャリヤは1種もしくはそれ以上のゼ
オライトを単独で或いは上記キャリヤ材料の1種もしく
はそれ以上と組合せて含むことができる。水素化変換触
媒に含ませるのに好適なキャリヤ材料はシリカ、アルミ
ナ、シリカ−アルミナである。特に好適な触媒はシリカ
−アルミナキャリヤに支持された白金からなっている。
【0012】触媒は、全触媒100重量部当りの金属と
して計算し0.05〜80重量部、好ましくは0.1〜
70重量部の量の触媒活性成分を含むことができる。触
媒中に存在させる触媒活性金属の量は、用いる特定金属
に応じて変化する。特に好適な水素化変換触媒は全触媒
100重量部当りの金属として計算し0.05〜2重量
部、より好ましくは0.1〜1重量部の範囲の量の白金
を含む。水素化処理された合成油フラクションを製造す
る際に使用するのに適した水素化変換触媒は市販入手す
ることができ、或いはたとえば同時混練、含浸もしくは
沈澱のような当業界で周知された方法により製造するこ
とができる。他の具体例において、水素化処理された合
成油フラクションは高められた温度および圧力にて水素
および水素化熱分解触媒の存在下に合成油フラクション
を水素化熱分解して作成される。一般に、水素化熱分解
により水素化処理された合成油フラクションを製造する
ための合成油供給物は、水素化により水素化処理された
合成油フラクションを製造するための合成油供給物と比
較して、より高い沸点範囲を有する。
【0013】典型的には、水素化熱分解は250〜50
0℃、好ましくは300〜450℃の温度にて行なわれ
る。典型的な水素分圧は10〜300バールの範囲であ
り、好ましくは25〜200バールの範囲である。水素
化熱分解はたとえば流動床、移動床、スラリー床または
固定床のような任意の種類の触媒床配置を用いて行うこ
とができ、各種類の触媒床はそれ自身の特徴的な利点お
よび欠点を有する。しかしながら、好ましくは固定触媒
床が用いられる。たとえば温度、圧力および空間速度の
ような反応条件は用いる特定種類の触媒に応じて変化し
うることが了解されよう。固定触媒床を用いる場合、好
ましくは合成油供給物は0.1〜10kg/l/hの重
量空時速度、より好ましくは0.2〜5kg/l/hの
重量空時速度にて供給される。水素と供給物との比は1
00〜5000 Nl/kgの範囲とすることができ、
好ましくは250〜2000 Nl/kgである。典型
的には、水素化熱分解触媒はゼオライトキャリヤを含
む。好適キャリヤはフォージャサイト型のゼオライトを
無機酸化物結合剤の存在下に含む。フォージャサイト型
のゼオライトの例は米国特許第3,130,007号公
報に記載された合成ゼオライトY、米国特許第3,53
6,605号公報に記載された超安定性ゼオライトYお
よび英国特許出願第2,014,970号公報に記載さ
れた超疎水性ゼオライトYを包含する。典型的には水素
化熱分解触媒のキャリヤは5〜90重量%のフォージャ
サイト型ゼオライトと10.95重量%の非晶質もしく
は結晶質無機酸化物結合剤とを含む。適する結合剤の例
はアルミナ、マグネシア、チタニア、粘土およびその混
合物を包含し、必要に応じたとえばジルコニアおよびシ
リカのような他の無機酸化物を存在下させる。アルミナ
が好適な結合剤である。
【0014】典型的には、水素化熱分解触媒は元素周期
律表第VIB族および/または第VIII族の1種もし
くはそれ以上の金属成分、好ましくはニッケルおよび/
またはコバルトの1種もしくはそれ以上の成分、および
モリブデンおよび/またはタングステンの1種もしくは
それ以上の成分をさらに含む。好ましくは、水素化熱分
解触媒における金属成分は全触媒100重量部当りの金
属として計算し0.05〜10重量%の第VIII族の
金属成分および2〜40重量%の第VIB族の金属成分
の範囲である。水素化熱分解触媒における金属成分は酸
化型および/またはスルフィド型とすることができ、特
にスルフィド型である。少なくとも第VIB族の金属成
分と第VIII族の金属成分との組合せを(混合)酸化
物として存在させる場合、一般に水素化熱分解で適切に
使用する前にスルフィド化処理にかけられる。適する水
素化熱分解触媒は市販入手することができ、或いはたと
えばキャリヤに対する金属成分の含浸または沈澱のよう
な当業界で周知された方法により製造することができ
る。
【0015】上記方法の任意の組合せを、水素化処理さ
れた合成油フラクションを製造するために使用しうるこ
とが了解されよう。したがって、水素化処理された合成
油フラクションは、合成油フラクションの水素化および
/または水素化変換および/または水素化熱分解によっ
て製造することができる。本発明の好適具体例におい
て、水素化処理された合成油フラクションは、合成油フ
ラクションの水素化および水素化変換および/または水
素化熱分解によって製造される。より好ましくは、水素
化処理された合成油フラクションは合成油フラクション
の水素化に続く水素化変換および/または水素化熱分解
によって製造される。典型的には、水素化処理された合
成油フラクションを製造すべく使用される合成油フラク
ションは、合成油を製造するためのフィッシャ・トロプ
シュ合成法に続く所望の合成油フラクションを得るため
の(減圧)蒸留によって製造される。フィッシャ・トロ
プシュ合成は、一酸化炭素と水素との混合物からこの混
合物を高められた温度および圧力にて適する触媒と接触
させることにより炭化水素を作成する方法に一般的に用
いられる名称である。フィッシャ・トロプシュ合成法に
使用する触媒は、しばしば触媒活性成分として元素周期
律表第VIII族からの金属を含む。特定の触媒活性金
属はルテニウム、鉄、コバルトおよびニッケルを包含す
る。特に好適な合成油は、触媒活性成分としてコバルト
を含む触媒を用いてフィッシャ・トロプシュ合成法で作
成されたものである。
【0016】触媒活性金属は好ましくは多孔質キャリヤ
に支持される。多孔質キャリヤは当業界で知られた任意
適する耐火性金属酸化物もしくは珪酸塩またはその組合
せ物から選択することができる。好適な多孔質キャリヤ
の特定例はシリカ、アルミナ、チタニアおよびその混合
物を包含する。シリカが、合成油の製造に使用される触
媒の特に好適なキャリヤ材料である。キャリヤにおける
触媒活性金属の量は、好ましくはキャリヤ材料の100
pbw当り3〜100pbw、より好ましくは10〜8
0pbw、特に20〜60pbwの範囲である。所望な
らば触媒はさらに促進剤として1種もしくはそれ以上の
金属もしくは金属酸化物をも含むことができる。適する
金属酸化物促進剤は元素周期律表第IIA、IIIB、
IVB、VBおよびVIB族またはアクチニドおよびラ
ンタニドから選択することができる。特にマグネシウ
ム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジ
ウム、イットリウム、ランタン、セリウム、チタン、ジ
ルコニウム、ハフニウム、トリウム、ウラニウム、バナ
ジウムおよびクロムの酸化物が最も適する促進剤であ
る。合成油を製造するため使用される触媒の特に好適な
金属酸化物促進剤は酸化ジルコニウムである。適する金
属促進剤は周期律表第VIIBもしくはVIII族から
選択することができる。レニウムおよび第VIII族の
貴金属が特に適しており、白金およびパラジウムが特に
好適である。触媒に存在する促進剤の量は好ましくはキ
ャリヤ100pbw当り0.1〜150pbwの範囲で
ある。
【0017】合成油の製造に使用するのに特に適する触
媒はコバルト/ジルコニウム/シリカ触媒である。使用
しうる適する触媒の例はヨーロッパ特許出願EP 0
104 672号、EP 0 110 449号、EP
0 127 220号、EP 0 167 215
号、EP 0 180 269号およびEP 0 22
1 598号各公報に開示されている。上記したよう
に、合成油はフィッシャ・トロプシュ合成により製造す
ることができ、一酸化炭素と水素との混合物を上記触媒
と接触させる。合成は典型的には約125〜約350
℃、好ましくは約175〜250℃の温度にて行なわれ
る。合成のための典型的な操作圧力は約5〜100バー
ル、より好ましくは約10〜50バールの範囲である。
合成工程に際し、触媒を典型的には2.5未満、好まし
くは1.75未満の比における水素と一酸化炭素とから
なるガス混合物と接触させる。より好ましくは、混合物
における水素と一酸化炭素との比は0.4〜1.5、特
に0.9〜1.3の範囲である。したがって好適具体例
において、本発明による熱分解処理のための供給物とし
て使用する水素化処理された合成油フラクションは、上
記フィッシャ・トロプシュ法により合成ガス混合物から
合成油を作成し、次いで上記した方法で水素化処理し、
さらに必要に応じ中間(減圧)蒸留することにより製造
される。
【0018】本発明による方法はエネルギー効率的に操
作することが望ましい。したがって本発明による方法
は、合成ガスを作成するための工程、フィッシャ・トロ
プシュ合成工程および水素化処理された合成油フラクシ
ョンの製造工程と同じ場所で操作するのが望ましい。こ
のようにして、廃熱流および/または水蒸気もしくは水
素の廃棄流を最適に利用することができる。本発明の特
に好適な具体例において、合成ガス製造ユニットから生
じた合成ガス流の冷却に際し発生する熱を、本発明の方
法を実施するため熱分解装置に使用する。典型的には、
合成ガス流をフィッシャ・トロプシュ合成法の反応器に
導入する前に、熱分解装置への炭化水素供給物による合
成ガス流の熱交換によって約1200℃から約500℃
まで冷却する。より好ましくは合成ガス流を先ず最初に
約1200℃から約1000℃まで冷却して本発明の熱
分解処理における熱分解反応を発生させる熱を供給し、
次いで約1000℃から約500℃まで冷却して熱分解
工程への炭化水素供給物を気化させると共に加熱するた
めの熱を供給する。本発明の他の具体例において、たと
えばフィッシャ・トロプシュ合成反応器で発生した過剰
の水蒸気を本発明による水蒸気熱分解法に用いることが
できる。熱分解装置からのテールガスにおける水素を用
いてフィッシャ・トロプシュ合成反応器または合成油フ
ラクションの水素化処理に用いるべき合成ガスのH2
CO比を調整することにより、水素化処理された合成油
フラクションを得ることができる。
【0019】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに説明す
る。熱分解処理の実験条件を、匹敵するメタン生成に達
するよう種々異なる供給物を用いる実験で変化させた。実施例1 合成油フラクションの製造 1.1のH2 /CO比を有する合成ガス混合物を、コバ
ルト(酸化コバルトとして計算し18.3重量%)とジ
ルコニウム(酸化ジルコニウムとして計算し8.5重量
%)とシリカとからなる触媒の固定床を含む反応器に供
給した。触媒はヨーロッパ特許出願第428 223号
に記載された方法により作成した。反応器は次の条件下
で操作した: 温度 210−225℃ 圧力 36バール 空間速度 1125 Nl.l-1.h-15 + 収率は90重量%であった。
【0020】実施例2 水素化処理された合成油フラクションの製造 実施例1の生成物のC5 −C9 フラクションを、ハーシ
ョウ社から市販入手しうるニッケル含有触媒の固定床を
含む反応器で水素化した。反応器は次の条件下で操作し
た: 温度 220℃ 水素分圧 30バール 空間速度 1kg.l-1.h-1 水素/供給物比 1000 Nl/kg 水素化は僅かな熱分解しか生ぜず、水素化されたC5 +
の収率は99.2重量%であった。
【0021】実施例3 低級オレフィンの製造 実施例2のC5 + 生成物を不活性希釈剤としての窒素の
存在下に840℃の平均温度、2.25バールの平均圧
力、0.2秒の滞留時間および0.8の窒素/炭化水素
供給物の比にて熱分解した。C2 〜C4 オレフィン収率
は71.3重量%であり、そのうち47.0重量%はエ
テンであり、15.2重量%はプロペンであり、8.1
重量%はC4 −オレフィンであった。メタン生成は1
3.7重量%であった。残余15.0重量%はC5 +
囲で沸騰した。
【0022】実施例4 水素化処理された合成油フラクションの製造 実施例1の生成物のC20 + フラクションを、シリカ−ア
ルミナキャリヤ100重量部当り0.8重量部の白金か
らなる触媒の固定床を含む反応器で水素化変換させた。
触媒は英国特許第1 451 617号に記載された方
法により作成した。反応器は次の条件下で操作した: 温度 335℃ 水素分圧 30バール 空間速度 1.33 kg.l-1.h-1 水素化変換された生成物を蒸留してC5 −C9 フラクシ
ョンを得た。
【0023】実施例5 低級オレフィンの製造 実施例4の生成物のC5 −C9 フラクションを窒素の存
在下に820℃の平均温度、2.25バールの平均圧
力、0.2秒の滞留時間および0.8の窒素/炭化水素
供給物の比にて熱分解した。C2 〜C4 オレフィン収率
は66.4重量%であり、そのうち35重量%はエテン
であり、18.4重量%はプロペンであり、12.1重
量%はC4 −オレフィンであった。メタン生成は13.
3重量%であった。残余20.3重量%はC5 + 範囲で
沸騰した。
【0024】比較例A 低級オレフィンの製造 原油の直留C5 −C9 フラクションを実施例5の条件下
で熱分解した。C2 〜C4 オレフィン収率は僅か56.
7重量%であり、そのうち27.6重量%はエテン、1
7.2重量%はプロペン、および11.4重量%はC4
−オレフィンであった。メタン生成は12.9重量%で
あった。残余30.4重量%はC5 + 範囲で沸騰した。
【0025】比較例B 低級オレフィンの製造 実施例1の合成油のC5 −C9 フラクションを実施例3
の条件下で熱分解した。C2 〜C4 オレフィン収率は僅
か63.2重量%であり、そのうち40.1重量%はエ
テン、13.9重量%はプロペン、および8.3重量%
はC4 −オレフィンであった。メタン生成は12.9重
量%であった。残余23.9重量%はC5 + 範囲で沸騰
した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ヤコブス・エイラース オランダ国 1031 シー・エム アムステ ルダム、バトホイスウエヒ 3

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも低級オレフィンの沸点範囲よ
    りも高い沸点のフラクションを有する炭化水素供給物か
    ら低級オレフィンを製造するに際し、炭化水素供給物の
    少なくとも1部が水素化処理された合成油フラクション
    である炭化水素供給物を熱分解することを特徴とする低
    級オレフィンの製造方法。
  2. 【請求項2】 炭化水素供給物が96重量%の最高56
    0℃の沸点を有する請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 炭化水素供給物が30〜350℃、好ま
    しくは30〜200℃の沸点範囲を有する請求項1また
    は2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 炭化水素供給物が少なくとも20%、好
    ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも
    90%の水素化処理された合成油フラクションからなる
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 炭化水素供給物の熱分解を不活性ガス希
    釈剤、好ましくは窒素もしくは水蒸気、より好ましくは
    水蒸気の存在下に行なう請求項1〜4のいずれか一項に
    記載の方法。
  6. 【請求項6】 不活性ガス希釈剤を炭化水素供給物10
    0重量部当り20〜100重量部の量で存在させる請求
    項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 熱分解を700〜1000℃、好ましく
    は750〜900℃の温度にて行なう請求項1〜6のい
    ずれか一項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 熱分解を絶対圧0.1〜15バール、好
    ましくは絶対圧1〜5バールの圧力にて行なう請求項1
    〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 熱分解を0.01〜1.0秒、好ましく
    は0.04〜0.5秒の滞留時間にて行なう請求項1〜
    8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 水素化処理された合成油フラクション
    が、高められた温度および圧力にて水素および水素化触
    媒の存在下に合成油フラクションを水素化して製造され
    てなる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 【請求項11】 水素化処理された合成油フラクション
    が、高められた温度および圧力にて水素および水素化変
    換触媒の存在下に合成油フラクションを水素化変換して
    製造されてなる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方
    法。
  12. 【請求項12】 水素化処理された合成油フラクション
    が、高められた温度および圧力にて水素および水素化熱
    分解触媒の存在下に合成油フラクションを水素化熱分解
    して製造されてなる請求項1〜9のいずれか一項に記載
    の方法。
  13. 【請求項13】 水素化処理された合成油フラクション
    が、水素化に続く合成油フラクションの水素化変換およ
    び/または水素化熱分解によって製造されてなる請求項
    1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 【請求項14】 合成油フラクションが、高められた温
    度および圧力にて合成ガスを周期律表第VIII族から
    選択された金属を含む触媒と接触させるフィッシャ・ト
    ロプシュ合成法により製造されてなる請求項1〜13の
    いずれか一項に記載の方法。
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