JPH06183886A - ダイヤモンドの製造方法及び装置 - Google Patents

ダイヤモンドの製造方法及び装置

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JPH06183886A
JPH06183886A JP5103953A JP10395393A JPH06183886A JP H06183886 A JPH06183886 A JP H06183886A JP 5103953 A JP5103953 A JP 5103953A JP 10395393 A JP10395393 A JP 10395393A JP H06183886 A JPH06183886 A JP H06183886A
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和明 栗原
Kenichi Sasaki
謙一 佐々木
Tsukasa Itani
司 井谷
Motonobu Kawarada
元信 河原田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、ダイヤモンドを気相合成するダイ
ヤモンドの製造方法及び装置に関し、高純度且つ高品質
のダイヤモンド膜を高速で大面積にかつ再現性良く安定
して製造することができるダイヤモンドの製造方法及び
装置を提供することを目的とする。 【構成】 直流プラズマトーチを用いて直流アーク放電
により発生させたプラズマジェットを基板に衝突させて
基板上にダイヤモンドを成長させるDCプラズマジェッ
トダイヤモンド気相合成法において、プラズマトーチの
アノードを複数個用いてこれらを同軸上に配置して多重
構造とし、これに必要に応じて磁場を印加してアークを
回転させたり、電極を回転させたりしてダイヤモンドを
気相合成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はダイヤモンドの製造方法
及び装置に関し、更に詳しくは、高品質のダイヤモンド
を高速で気相合成するダイヤモンドの製造方法及び装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドはビッカース硬度10000 と
地球上で最も硬い材料であり、ヤング率も大きく、耐磨
耗性、化学的安定性にも優れている。このような優れた
性質のため、ダイヤモンドは、産業上、特にハイテク産
業に必要不可欠な材料である。また、ダイヤモンドは熱
伝導率が2000W/mKと銅の4倍も高く、また赤外から紫
外域まで広い波長範囲で透明であり、更に、バンドギャ
ップが5.4eV と広い半導体でもある。このため、ダイヤ
モンドはヒートシンク、放熱性回路基板、光学材料(窓
材)、耐熱性半導体デバイス、工具などへの耐摩耗性コ
ーティング等への応用が期待されている。
【0003】近年、化学気相合成法(CVD法)による
ダイヤモンド合成が盛んに研究されているが、気相合成
ダイヤモンドを実用化する際には、その合成速度を高め
ることが製造コストを低下させる上で重要である。
【0004】ダイヤモンドの気相合成方法としては多く
の方法が提案されているが、本願発明者らが開発したD
CプラズマジェットCVD法(特開昭64-33096号公報参
照)によれば 100μm/時間以上の高い生成又は製膜速
度でダイヤモンドを合成することができる。
【0005】図1は、従来例のダイヤモンドの製造装置
のプラズマトーチの構造を説明する図面である。図1に
おいて、1は先端が尖った円柱状のカソード、2はカソ
ード1の周囲を所定の間隔をおいて取り囲むように設け
られたアノードで、カソード1−アノード2間に直流電
圧を印加することにより、アーク放電を生じさせ、カソ
ード1−アノード2間の間隙に導入された反応ガスを間
隙内でプラズマ化する。3はカソード1とアノード2と
の間の間隙に反応ガスを導入するガス導入口である。
【0006】上記のプラズマトーチを有する製造装置を
用いてダイヤモンドを合成する場合、プラズマトーチと
対向する位置に基板7をおき、カソード1とアノード2
との間の間隙のガス導入口3から反応ガスを導入すると
ともに、カソード1とアノード2との間に電圧を印加し
てアーク放電を生じさせ、間隙に導入された反応ガスを
プラズマ化する。これにより、カソード1の先端からア
ノード2のプラズマジェット6の放出口にかけてアーク
柱5が生じる。
【0007】プラズマジェット6はプラズマトーチ先端
の放出口より基板7に向かって放出される。この状態を
所定の時間保持することにより、基板7上にダイヤモン
ド膜8が形成される。
【0008】一般に、直流アーク放電では、同じ放電電
力でもアーク柱5を長くして放電電圧を上げ、かつ放電
電流を下げた方がカソード1、アノード2の電極材の消
耗が少なくなるとともに、電圧変動率が小さくなる。ま
た、ダイヤモンド合成においては、同じ放電電力の場
合、放電電圧を高くするほど、合成速度が速くなる傾向
がある(図2)。このように、アーク柱5を長くして放
電電圧を上げることは、カソード1及びアノード2の電
極の消耗の低減、放電の安定性の向上、合成されたダイ
ヤモンド膜の高純度化、高品質化、及び合成速度の向上
等に大きな効果がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、アーク
柱5をあまり長くすると、アークが消え易くなるため、
直流アーク放電を利用する従来の方法には限界がある。
即ち、カソード1やアノード2の電極材が不純物として
ダイヤモンド膜8中に混入しやすく、また、放電が不安
定で再現性が十分ではないという問題がある。更にプラ
ズマジェットの広がり角度が狭く、合成面積も狭くなら
ざるを得なかった。このように従来法では高品質のダイ
ヤモンド膜8を、特に大きな面積で安定して合成するこ
とが難しかった。
【0010】従って、本発明の目的は、前述の従来技術
の問題点を解決し、高純度且つ高品質のダイヤモンド膜
を高速で大面積に、かつ再現性良く安定して製造するこ
とができるダイヤモンドの製造方法及び装置を提供する
ことにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の態様に従
えば、先ず共通の軸に沿って移動させることができる柱
状のカソードと、該カソードと間隙を隔てて同心状に設
けられ、先端がプラズマの放出口となっている筒状の主
アノードと、前記カソードと前記主アノードとの間の間
隙に、前記カソード及び主アノードと間隙を隔てて同心
状に設けられ、前記共通の軸に沿って移動させることが
できる筒状のパイロットアノードと、前記カソードと前
記パイロットアノードとの間隙にパイロットガスを導入
するパイロットガス導入口と、前記主アノードと前記パ
イロットアノードとの間隙に主ガスを導入する主ガス導
入口と、前記主アノードと前記カソードとの間を接続す
る主電源と、前記カソードと前記パイロットアノードと
の間に接続された補助電源と、前記放出口と対向する位
置に設けられ、ダイヤモンド膜が形成される被形成基板
を保持する基板保持具とを有するダイヤモンドの製造装
置が提供される。
【0012】この装置は、好ましくは前記主アノードの
プラズマの放出口に近接して設けられ、前記放出口から
放出されたプラズマにガスを混入させるガス導入ノズル
を有する。また、前記ダイヤモンドの製造装置は、前記
カソード、前記主アノード及び前記パイロットアノード
が収納される減圧可能なチャンバを有し、該チャンバ壁
には該チャンバ内にガスを導入するガス導入口が設けら
れているのが好ましい。
【0013】本発明の第二の態様に従えば、柱状のカソ
ードと、該カソードの周囲に該カソードと間隙を隔てて
同心状に設けられた筒状のパイロットアノードとの両方
を、該パイロットアノードの周囲に該パイロットアノー
ドと間隙を隔てて同心状に設けられた筒状の主アノード
の先端部のプラズマの放出口に近接させておき、前記カ
ソードと前記パイロットアノードとの間に電圧を印加し
て前記カソードと前記パイロットアノードとの間の間隙
に導入されたパイロットガスをプラズマ化した後、前記
カソードを共通の軸に沿って前記パイロットアノードか
ら離していって、前記カソードと前記パイロットアノー
ドとの間の放電電圧を所定の電圧に保持し、その後、前
記カソードと前記主アノードとの間に電圧を印加して前
記主アノードと前記パイロットアノードとの間の間隙に
導入された主ガスをプラズマ化した後、前記カソードと
前記パイロットアノードとの間の放電電圧を保持したま
ま前記主アノードと近接しているパイロットアノードを
前記カソードと共に前記共通の軸に沿って前記主アノー
ドから離していって、前記カソードと前記主アノードと
の間の放電電圧を所定の電圧に保持し、前記主アノード
と前記カソードとの間で発生している主アークを保持し
た状態で、前記放出口からプラズマを放出することから
なるダイヤモンドの製造方法が提供される。
【0014】前記方法において、前記パイロットガスは
好ましくはアルゴンガス又は他の不活性ガスであり、前
記主ガスは水素ガス又は不活性ガスと原料ガスとしての
炭素化合物からなるガスとの混合ガスであるのが好まし
い。また、前記主アノードのプラズマの放出口から放出
されたプラズマに原料ガスを含むガスを混入することに
よって、所望のダイヤモンドを好適に製造することがで
きる。なお、前記パイロットガスとしては好ましくはア
ルゴンガス又は他の不活性ガスを用いることができ、前
記主ガスは水素ガス又は不活性ガスが好ましく、前記原
料ガスは炭素化合物からなるガスである。更に、本発明
に従ったダイヤモンドの製造は減圧されたチャンバ内で
行い、該チャンバ壁に設けられたガス導入口から前記チ
ャンバ内に雰囲気ガスを導入することによって所望のダ
イヤモンドを好適に製造することができる。本発明の好
ましい態様では、前記パイロットガスはアルゴンガス又
は他の不活性ガスであり、前記主ガスは水素ガス又は不
活性ガスであり、前記雰囲気ガスは炭素化合物からなる
ガスからダイヤモンドを製造することができる。更に、
本発明に従えば、前記パイロットガスがアルゴンガス又
は他の不活性ガスであり、前記主ガスは水素ガス又は不
活性ガスであり、前記雰囲気ガスは炭素化合物からなる
ガスと酸化性ガス、ハロゲンガス又はハロゲン化水素ガ
スとの混合ガスであるダイヤモンドの製造方法が提供さ
れる。
【0015】本発明の第三の態様に従えば、直流プラズ
マトーチを用いて直流アーク放電により発生させたプラ
ズマジェットを基板に衝突させて基板上にダイヤモンド
を成長させるDCプラズマジェットダイヤモンド気相合
成法において、プラズマトーチのアノード複数個を同軸
上に配置した多重構造とするダイヤモンドの気相合成方
法が提供される。
【0016】この第三の態様では、好ましくは、上記プ
ラズマトーチの各電極の一部又は全部がトーチの軸方向
に移動できる構造となっており、プラズマジェット発生
中に電極を移動させ、放電電圧を変化させる。また、本
発明の好ましい態様によれば、前記プラズマトーチの軸
方向に磁場を印加し、アーク柱にローレンツ力を働かせ
ることにより陽極点を強制的に回転させることにより所
望のダイヤモンドを気相合成することができる。
【0017】本発明の第四の態様に従えば、直流アーク
放電によりプラズマジェットを発生させる非移行式プラ
ズマトーチと、基板ホルダと、プラズマトーチと基板ホ
ルダとの位置を変化させることができる移動機構が真空
ポンプが接続された減圧チャンバ内に配置されたDCプ
ラズマジェットダイヤモンド気相合成法によるダイヤモ
ンド気相合成装置であり、プラズマトーチのアノード複
数個が同軸上に配置された多重構造となっているダイヤ
モンドの気相合成装置が提供される。
【0018】この第四の態様では、好ましくは、上記プ
ラズマトーチの各電極の一部又は全部が、プラズマジェ
ット発生中、トーチの軸方向に移動できる構造とするこ
とができ、また、前記プラズマトーチから発生されるプ
ラズマジェットにガスを吹きつけるための単数又は複数
のノズルをメインアノードの外に設け、前記ノズルにガ
スを供給するためのガス供給系を接続させた構造とする
ことができ、更に、前記プラズマトーチの軸方向に磁場
を印加し、アーク柱にローレンツ力を働かせて陽極点を
強制的に回転させるための永久磁石又は電磁磁石を有す
る構造とすることができる。
【0019】本発明の第五の態様に従えば、直流プラズ
マトーチを用いて直流アーク放電により発生させたプラ
ズマジェットを基板に衝突させて基板上にダイヤモンド
を成長させるDCプラズマジェットダイヤモンド気相合
成法において、アークに対してトーチ軸方向と直交する
方向から磁場を印加してアークを偏向させ、これにより
プラズマジェットも偏向させることで、プラズマジェッ
トの照射面積を広げ、ダイヤモンドの合成面積を拡大で
きるようにし、かつ、プラズマトーチのアノード複数個
を同軸上に配置した多重構造としたダイヤモンドの気相
合成方法が提供される。
【0020】本発明の第六の態様に従えば、直流プラズ
マトーチを用いて直流アーク放電により発生させたプラ
ズマジェットを基板に衝突させて基板上にダイヤモンド
を成長させるDCプラズマジェットダイヤモンド気相合
成法において、プラズマジェットに対してトーチ軸方向
と直交する方向から磁場を印加してプラズマジェットを
偏向させることで、プラズマジェットの照射面積を広
げ、ダイヤモンドの合成面積を拡大できるようにし、か
つ、プラズマトーチのアノード複数個を同軸上に配置し
た多重構造としたダイヤモンドの気相合成方法が提供さ
れる。
【0021】この第五及び第六の態様では、好ましく
は、プラズマジェットに対してトーチ軸方向と直交する
方向から磁場を印加してプラズマジェットを偏向させる
ことで、プラズマジェットの照射面積を広げ、ダイヤモ
ンドの合成面積を拡大できるようにした。前記偏向磁場
の好ましい印加方法は、トーチ軸方向と直交する面内で
お互いに直交するX,Y2方向から磁場を印加すること
により、合成された磁場の方向が前記面内で自由に変え
られる方法であり、これによりプラズマジェットの偏向
の方向を前記面内で2次元的に変えることができる。
【0022】本発明の第七の態様に従えば、直流アーク
放電によりプラズマジェットを発生させる非移行式プラ
ズマトーチと、基板ホルダと、プラズマトーチと基板ホ
ルダとの位置を変化させることができる移動機構が真空
ポンプに接続された減圧チャンバ内に配置されたDCプ
ラズマジェットダイヤモンド気相合成法によるダイヤモ
ンド合成装置であり、カソードとアノードの間からアー
クにトーチ軸方向と直交する方向に磁場を印加できる電
磁磁石及びその制御装置とが接続されており、かつ、プ
ラズマトーチのアノード複数個を同軸上に配置した多重
構造としたダイヤモンド気相合成装置が提供される。
【0023】本発明の第八の態様に従えば、直流アーク
放電によりプラズマジェットを発生させる非移行式プラ
ズマトーチと、基板ホルダと、プラズマトーチと基板ホ
ルダとの位置を変化させることができる移動機構が真空
ポンプに接続された減圧チャンバ内に配置されたDCプ
ラズマジェットCVD法によるダイヤモンド合成装置で
あり、アノードの外からプラズマジェットにトーチ軸方
向と直交する方向に磁場を印加できる電磁磁石及びその
制御装置とが接続されており、かつ、プラズマトーチの
アノード複数個を同軸上に配置した多重構造としたダイ
ヤモンド気相合成装置が提供される。
【0024】前記本発明の第七及び第八の態様では、前
記電磁磁石が、トーチ軸方向と直交する面内でお互いに
直交するX,Y2方向から磁場を印加できるような、2
系統の電磁磁石で構成されているのが好ましい。
【0025】本発明の第九の態様に従えば、直流プラズ
マトーチを用いて直流アーク放電により発生させたプラ
ズマジェットを基板に衝突させて基板上にダイヤモンド
を成長させるDCプラズマジェットダイヤモンド気相合
成法において、プラズマトーチのアノード複数個を同軸
上に配置した多重構造とし、かつ、電極の相対位置を変
化させることを可能にすることで、プラズマの放電位置
を変更し、放電の安定化を可能にしたダイヤモンドの気
相合成方法が提供される。
【0026】この態様では、プラズマジェット発生のた
めの放電電極であるカソードを可変としたり、カソード
をトーチの軸線を軸とし回転させることにより放電位置
を可変にしたり、カソードを任意の振動数で振動させる
ことにより放電位置を可変としたり、プラズマジェット
発生のための放電電極であるアノードを可変としたり、
アノードをトーチの軸線を軸とし回転させることにより
放電位置を可変としたり、アノードを任意の振動数で振
動させることにより放電位置を可変としたりするのが好
ましい。
【0027】本発明の第十の態様によれば、直流アーク
放電によりプラズマジェットを発生させる非移行式プラ
ズマトーチと、基板ホルダと、プラズマトーチと基板ホ
ルダとの位置を変化させることができる移動機構が真空
ポンプに接続された減圧チャンバ内に配置されたDCプ
ラズマジェットCVD法によるダイヤモンド合成装置に
おいて、アーク放電を行うためのアノード電極及びカソ
ード電極と、放電電極の相対位置を変化させるための電
極駆動手段とを備え、かつ、プラズマトーチのアノード
複数個を同軸上に配置した多重構造としたダイヤモンド
合成装置が提供される。
【0028】この態様では、前記電極駆動手段がカソー
ドを駆動し、かつ、トーチの軸線を軸とし回転させるこ
とにより放電位置を可変としたり、前記電極駆動手段が
アノードを駆動し、かつ、トーチの軸線を軸とし回転さ
せることにより放電位置を可変としたり、又は、前記駆
動手段をモータとするのが好ましい。
【0029】
【作用】本発明の第一の態様に従ったダイヤモンドの製
造装置においては、柱状のカソードと、カソードと間隙
を隔てて同心状に設けられた筒状の主アノードとの間の
間隙に、柱状のカソード及び主アノードと間隙を隔てて
同心状に筒状のパイロットアノードを介在させ、カソー
ド及びパイロットアノードは共通の軸に沿って移動させ
ることができる構造となっている。また、カソード及び
パイロットアノード間に補助電源が接続され、かつ主ア
ノード及びカソード間に主電源が接続され、カソード及
びパイロットアノード間の間隙にパイロットガスを導入
するパイロットガス導入口と、主アノード及びパイロッ
トアノード間の間隙に主ガスを導入する主ガス導入口と
を有している。
【0030】従って、本発明の第二の態様に従ったダイ
ヤモンドの製造方法のように、最初、カソードとパイロ
ットアノードとの両方をプラズマの放出口である主アノ
ードの先端部に近接させておき、カソードとパイロット
アノードとの間に電圧を印加してカソードとパイロット
アノードとの間の間隙に導入されたパイロットガスをプ
ラズマ化した後、カソードを共通の軸に沿ってパイロッ
トアノードから離していって、カソードとパイロットア
ノードとの間を所定の電圧に保持し、その後、カソード
と主アノードとの間に電圧を印加して主アノードとパイ
ロットアノードとの間の間隙に導入された主ガスをプラ
ズマ化した後、主アノードと近接しているパイロットア
ノードをカソードと共に共通の軸に沿って主アノードか
ら離していって、カソードと主アノードとの間の放電電
圧を所定の電圧に保持し、主アノードとカソードとの間
の間隙に発生している主アークを保持した状態で、放出
口からプラズマを放出してダイヤモンドの合成を行うこ
とができる。
【0031】これにより、カソードとパイロットアノー
ドとの間隙に発生しているパイロットアークにより、カ
ソードと主アノードとの間に発生している主アークの失
火を防止しつつカソードと主アノードとの間の放電電圧
を制御することができる。特に、主アークの着火時はパ
イロットアノードと主アノードとの間の電極間隔を短く
し、主アークが発生した後、パイロットアノードと主ア
ノードとの間の電極間隔を広げることにより、カソード
と主アノードとの間の放電電圧を従来と比較して大幅に
高くすることができる。これにより、高純度且つ高品質
のダイヤモンド膜を高速にかつ再現性良く安定して製造
することができる。
【0032】更に、パイロットガスとしては安定な放電
が得られるアルゴン(Ar)ガスが最も適しているが、
ヘリウム(He)ガスなど他の不活性ガスや水素
(H2 )ガスが含まれていてもよい。更に、主ガスは放
電電圧が高く、しかもダイヤモンドの気相合成に重要な
役割を演じるH2 ガスが主体であることが望ましいが、
ArガスやHeガスなどの不活性ガスが含まれていても
よい。
【0033】また、ダイヤモンドを合成するためには、
ダイヤモンドの原料となる炭素化合物からなるガスがプ
ラズマ中に供給されなくてはならないが、その供給方法
としては、主ガスに混合させたり、主アノードの外のガ
ス導入ノズルから放出されたプラズマに吹きつけたり、
雰囲気ガスとしてチャンバ内に導入したりする方法があ
る。パイロットガスとして供給する方法はパイロットア
ークの安定性を低下させるため好ましくない。
【0034】更に、ダイヤモンドの膜質を向上させるた
めには、酸素や水蒸気等の酸化性ガスやハロゲンガス、
ハロゲン化水素ガスなどをプラズマ中に供給してもよ
い。この場合、その供給方法としては、主ガスに混合さ
せたり、主アノードの外のガス導入ノズルからプラズマ
に吹きつけたり、雰囲気ガスとしてチャンバ内に導入し
たりする方法がある。パイロットガスとして供給する方
法はパイロットアークの安定性を低下させるため好まし
くない。
【0035】本発明の第三の態様では、DCプラズマジ
ェットCVD法において、プラズマトーチのアノードを
多重構造とすることにより、安定で電極の消耗が少な
く、しかもプラズマジェットの広がり角度が大きいプラ
ズマを発生させることにより、高純度かつ高品質のダイ
ヤモンドを大面積で合成することができる。また、本発
明の第四の態様では、アーク柱に磁場を印加し、陽極点
を強制的に回転させることにより、安定で電極の消耗が
少なく、しかもプラズマジェットの広がり角度が大きい
プラズマを発生させることにより、高純度かつ高品質の
ダイヤモンドを大面積で合成することができる。
【0036】第三の態様については、一般にDCアーク
放電では、同じ放電電力でもアーク柱を長くし放電電圧
を上げ放電電流を下げた方が、電極の消耗が少なくなる
とともに、電圧変動率が小さくなる。また、ダイヤモン
ド合成においては、同じ放電電力の場合、放電電圧を高
くする程、合成速度が速くなる傾向がある(図2参
照)。このように、アーク柱を長くして放電電圧を上げ
ることは、電極の消耗の低減、放電電圧の安定性の向
上、合成されたダイヤモンドの高純度化及び高品質化、
更には合成速度の向上等、大きな効果が期待できる。し
かしながら、あまりアークを長くすると、アークが消え
(失火)やすくなるため、この方法には限界がある。ま
た、プラズマジェットは細いアノードノズルから噴出さ
せるため、プラズマジェットの広がり角度は小さく製膜
面積も狭い。ノズル径を大きくしても、熱プラズマ自
体、表面積を小さくして熱の放散を少なくしようとする
働きがあるためその効果は小さい。更に、ノズル径をあ
まり大きくしすぎると、アーク長が長くなり失火しやす
くなる。
【0037】本発明の第三の態様では、アノードを多重
構造とすることで、上記の問題を解決しようとするもの
である。即ち、 (1)アノードを複数とすることでアーク電流を分散さ
せ、アノードの消耗を低減する。 (2)プラズマを維持するためのアノード、プラズマジ
ェットを発生させるためのメインのアノード、プラズマ
ジェットを広げるためのアノード等、それぞれのアノー
ドに役割を分担させる。 (3)単一アノードでは放電しないような条件であって
も、他のアノードにより常にプラズマジェットが発生し
ているため、そのような条件でも放電を維持させること
ができる。 (4)複数の放電が起きているため、個々の電極で電圧
変動などがあってもその影響は平均化されてしまい、小
さくなる。
【0038】図3は本発明の第三の態様の原理を示すも
ので、代表的な三つのアノードを有するプラズマトーチ
によるダイヤモンド合成を示したものであり、図中1は
カソード、2aは第一アノード、2bは第二アノード、
2cは第三アノード、4aは第一電源、4bは第二電
源、4cは第三電源、5はアーク柱、6はプラズマジェ
ット、7は基板、8はダイヤモンド膜、9aは第一ガ
ス、9bは第二ガス、9cは第三ガス、10は絶縁体、11
は磁石をそれぞれ示す。
【0039】図3の例で、最もカソードに近い第一アノ
ード2aは放電を維持させるためのパイロットアノード
であり、小電力で安定に放電させる。第二アノード2b
はメインアノードで、単一アノードでは失火してしまう
ような、アーク長の長い高電圧放電を発生させる。第三
アノード2cはプラズマジェットを広げるための電極
で、ノズル径を大きくしてプラズマジェットの広がり角
度を大きくする。放電ガスとしては、第一ガス9aに安
定な放電が得られやすいAr、第二及び第三ガス9b及
び9cとしてはダイヤモンドの気相合成に重要な役割を
演ずる水素を用いる。ダイヤモンドの原料となるメタン
は第三ガスとして水素とともに導入する。
【0040】本発明の方法において放電ガスとしては、
ダイヤモンドの気相合成に重要な役割を演ずる水素が用
いられている必要がある。またArやHeなどの不活性
ガスも、安定な放電を得るために好ましいガスである。
複数アノードであるために放電ガス導入口も複数あるの
で、トーチ構造や必要に応じてこれらのガスを単独に、
又は混合して供給すればよい。好ましくは、カソードに
最も近い第一ガスとしては、カソードの保護と安定放電
のためにArを用い、第二ガス以降に放電電圧の高い水
素を用いると良い。
【0041】ダイヤモンド合成のためには、ダイヤモン
ドの原料となる炭素化合物ガスがプラズマジェット中に
供給されなくてはならないが、その供給方法としては、
放電ガスに混合させたり、アノードの外のノズルからプ
ラズマジェットに吹きつけたり、雰囲気ガスとして供給
したりして行われる。第一ガスとして供給しても構わな
いが、放電安定性を低下させたり、カソードに影響を及
ぼしたりするため好ましくない。
【0042】ダイヤモンドの膜質を向上させるために、
酸素や水などの酸化性ガスやハロゲンガス、ハロゲン化
水素ガスなどをプラズマジェット中に供給しても良い。
この場合、その供給方法としては、プラズマガスに混合
させたり、アノードの外のノズルからプラズマジェット
に吹きつけたり、雰囲気ガスとして供給したりして行わ
れる。第一ガスとして供給しても構わないが、放電安定
性を低下させたり、カソードに影響を及ぼしたりするた
め好ましくない。また放電電圧を制御するために、カソ
ード及び各アノードを放電中に移動できる構造とし、放
電中にこれらの電極を移動させ、所定の放電電圧となる
ように調整させることもできる。特に、アークの着火時
は電極間隔を短くし、アークが発生した後、電極間隔を
広げることで、放電電圧を更に高くすることができる。
【0043】一般に直流アーク放電は、陰極点と陽極点
との間の線上の放電である。ここで問題となるのは、放
電電流が陽極電極上で陽極点一点に集中するため、この
部分の温度が極めて高くなり陽極材が蒸発し、プラズマ
ジェット中に混入してしまうことである。また陽極点は
不規則に移動するため、そのたびに放電電圧やプラズマ
ジェットの形状が変化してしまい安定な放電が得られな
い。このような問題があるため、通常、プラズマガスを
旋回流として電極間に供給し、陽極点を回転させる方法
がとられている。しかし、この方法で陽極点を安定して
回転させるためには高いガス流量を必要とするため、放
電条件が限定されてしまう。
【0044】本発明の第四の態様では、トーチの軸方向
に磁場を印加することで、アークにローレンツ力を働か
せ、陽極点を強制的に回転させることで、以下のような
効果を得ようとするものである。 (1)陽極点の温度上昇を防ぎ、陽極材の蒸発によるプ
ラズマジェット中への不純物の混入を低減させるととも
に、陽極の寿命を延ばす。 (2)アークの変動を平均化することで、放電電圧やプ
ラズマジェットの形状の変動を抑え、安定なプラズマジ
ェットを発生させる。 (3)見掛け上、アークの広がりが大きくなるため、プ
ラズマジェットの広がりも大きくなる。 (4)旋回流の効果が期待できない少ないガス流量でも
容易に陽極点を回転させることができる。 図3の原理図中の11は陽極点回転用の磁石である。
【0045】磁場を発生させる手段としては永久磁石を
用いる方法と電磁磁石を用いる方法とがあるが、陽極点
近傍にのみ磁場を印加すれば良いので、永久磁石を用い
る方が少ない体積で強い磁場を発生できるので効果的で
ある。永久磁石としてはNd−Fe−B系やSm−Co
系などの強力な磁石が好ましい。設置方法はできるだけ
陽極点に近い場所が良く、アノード電極の中に設置する
のが好ましい。この際、磁石の温度上昇や冷却水による
錆の発生を防ぐように注意する必要がある。
【0046】図4は本発明の第五の態様を説明する概念
図で、図中1はカソード、2aは第一アノード、2bは
第二アノード、5はアーク、6はプラズマジェット、7
は基板、8はダイヤモンド膜、9は導入原料ガス、12は
磁力線、13はヨーク、14はコイルである。アーク5に対
して、これと直交方向に磁場12を印加すると、電流(ア
ーク)及び磁場と直交する方向(図4の紙面の垂直方
向)にローレンツ力が発生する。このローレンツ力によ
りアークは紙面垂直方向に曲げられ、それに伴いプラズ
マジェットもその方向に曲げられる。磁場を発生するた
めのコイル14に交流を印加すると、アークに働く力の方
向は紙面垂直方向で上下し、プラズマジェット6の偏向
も振動する。このプラズマジェット6を基板7に照射し
てダイヤモンド膜8を合成させると、ダイヤモンドの製
膜面積は横方向(紙面垂直方向)に拡大する。
【0047】更に磁場をお互いに直交するX,Y2方向
から印加すると、ローレンツ力の方向をXY平面内で自
由に変えることができる。従って、プラズマジェットの
偏向方向を走査することでダイヤモンドの合成面積を大
幅に拡大させることができる。また、アークを偏向させ
ることで、アークとアノードとの接点である陽極点を移
動させることができる。陽極点は極めて温度が高くなる
ため、電極材が蒸発してプラズマジェットを汚染してし
まうが、アークを偏向させ陽極点が一点に留まる時間を
短くすることで、電極材の消耗を抑え、プラズマジェッ
トの純度を上げることで、ダイヤモンドの純度を高める
ことにも効果がある。
【0048】ところで、本発明による磁場偏向の効果を
高くするためには、アノードノズルの径を大きくすると
ともに磁場が作用するアークを長くする必要がある。し
かし、アークを長くするとアークが消えやすくなる(失
火しやすくなる)。従って、本発明を有効に利用するた
めには、アーク長を長くできる多重アノード構造のプラ
ズマトーチが適している。
【0049】本発明の第六の態様は、アノードから噴出
したプラズマジェットに磁場を作用させる方法である。
アノード付近のプラズマジェットは温度が高く、電離度
も高い。このため、アークに磁場を印加させるのと同様
にプラズマジェットを偏向させることができる。また、
磁場をお互いに直交するX,Y2方向から印加して、ロ
ーレンツ力の方向をXY平面内で変えることも同様にで
きる。
【0050】この態様は、本発明の第五の態様であるア
ークに磁場を印加させる方法と比べると、磁気回路をア
ノードの外に設置できるので構造が単純であり、アーク
長を長くしたり、ノズル径を大きくする必要はない。し
かし、プラズマジェットはアークに比べて電荷密度が低
いので、偏向の効果は小さく、また、陽極点の移動の効
果は発現されない。
【0051】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
ながら更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例
に限定するものでないことは言うまでもない。実施例1〜3 図5は、本発明の実施例1に係るプラズマトーチを用い
たダイヤモンドの製造装置の構成図、図6は本発明の実
施例1に係るプラズマトーチの詳細構成図である。
【0052】図5及び図6において、15は減圧下、ダイ
ヤモンドの合成が行われるチャンバ、16はチャンバ15外
からチャンバ15内に雰囲気ガスを導入するガス導入口、
17はチャンバ15内を排気するとともに、不要なガスを排
出する排気口、18は基板19を載置するXYステージ(基
板保持具)、20はXYステージ18を移動させるマニピュ
レータ、21はXYステージ18を上下移動させるリニアモ
ータ、22はダイヤモンド膜の形成に必要な数種類のガス
を供給するガス供給手段で、ガス配管23a〜23dが接続
されている。ガス配管23a〜23dの他端はそれぞれ、カ
ソード24とパイロットアノード25との間の間隙のパイロ
ットガス導入口27、主アノード26とパイロットアノード
25との間の間隙の主ガス導入口28、ガス導入ノズル29及
びチャンバ15壁のガス導入口16に接続されている。
【0053】図5及び6において、24はタングステン及
び/又は銅からなる先端が尖った柱状のカソード、30
a、30bは冷却水等の冷媒をカソード24に供給し、排出
する冷媒配管、31はカソード24を上下させるカソード移
動手段で、例えば図7(a),(b)に示すように、放
電中にカソード24をパイロットアノード25との共通の軸
に沿って移動させることができる。25はカソード24と主
アノード26の間にカソード24及び主アノード26と同心状
に設けられ、放電状態の維持を補助する筒状のパイロッ
トアノード25で、カソード24とパイロットアノード25と
の間の間隙にパイロットガスを導入するパイロットガス
導入口27が形成されている。32a、32bは冷却水等の冷
媒をパイロットアノード25に供給し、排出する冷媒配
管、33はパイロットアノード25を上下させるパイロット
アノード移動手段で、図7(b)、図8に示すように、
放電中にパイロットアノード25をカソード24との共通の
軸に沿って移動させることができる。
【0054】26はパイロットアノード25の周辺部に同心
状に設けられたタングステン及び/又は銅からなる筒状
の主アノードで、主アノード26とパイロットアノード25
との間の間隙に主ガスを導入する主ガス導入口28が形成
されている。また、主アノード26の先端がプラズマの放
出口となっている。34a、34bは冷却水等の冷媒を主ア
ノード26に供給し、排出する冷媒配管である。以上、カ
ソード24、パイロットアノード25及び主アノード26がプ
ラズマトーチを構成する。29はプラズマを放出するプラ
ズマトーチの放出口の付近に放出口がくるように設けら
れたガス導入ノズルである。35はカソード24とパイロッ
トアノード25との間に接続された補助電源で、カソード
24とパイロットアノード25との間の間隙に導入されたパ
イロットガスを直流アーク放電によりプラズマ化する。
36は主アノード26とカソード24との間に接続された主電
源で、主アノード26とパイロットアノード25との間の間
隙に導入された主ガスを直流アーク放電によりプラズマ
化する。なお、19はダイヤモンド膜の形成されるモリブ
デン(Mo)からなる基板である。
【0055】以上のように、本発明の実施例1のダイヤ
モンドの製造装置によれば、カソード24と主アノード26
との間の間隙に同心状にパイロットアノード25を介在さ
せ、カソード24とパイロットアノード25との間に補助電
源35を接続し、かつ、カソード24と主アノード26との間
に補助電源35とは独立に主電源36を接続している。更
に、カソード24及びパイロットアノード25を放電中に共
通の軸に沿って移動させることができる構造となってい
る。
【0056】従って、最初、カソード24及びパイロット
アノード25を主アノード26の放出口に近接させておき、
カソード24とパイロットアノード25との間に電圧を印加
してカソード24とパイロットアノード25との間の間隙に
導入されたパイロットガスをプラズマ化した後、カソー
ド24を共通の軸に沿ってパイロットアノード25から離し
ていって、カソード24とパイロットアノード25との間の
放電電圧を所定の電圧に保持し、カソード24と主アノー
ド26間に電圧を印加して、パイロットアノード25と主ア
ノード26との間の間隙に導入された主ガスをプラズマ化
した後、その後、カソード24とパイロットアノード25と
の間の放電電圧を保持したまま主アノード26と近接して
いるパイロットアノード25を共通の軸に沿って主アノー
ド26から離していって、カソード24と主アノード26との
間の放電電圧を所定の電圧に保持し、発生している主ア
ーク5を保持した状態で、プラズマを放出してダイヤモ
ンドの合成を行うことができる。
【0057】以上より、カソード24とパイロットアノー
ド25との間隙に発生したパイロットアークにより、カソ
ード24と主アノード26との間に発生している主アークの
失火を防止しつつカソード24と主アノード26との間の放
電電圧を制御することができる。特に、主アークの着火
時はパイロットアノード25と主アノード26との間の電極
間隔を狭くし、主アークが発生した後、パイロットアノ
ード25と主アノード26との間の電極間隔を広げることに
より、主アーク5を保持した状態でカソード24と主アノ
ード26との間の放電電圧を従来と比較して大幅に高くす
ることができる。これにより、高純度且つ高品質のダイ
ヤモンド膜を高速にかつ再現性良く安定して製造するこ
とができる。
【0058】なお、この実施例1では、原料ガスの導入
箇所として、主アノード26とパイロットアノード25との
間の間隙の主ガス導入口28、主アノード26のプラズマジ
ェットの放出口の近くに置かれたガス導入ノズル29又は
チャンバ15壁に形成されたガス導入口16を用いることが
できる。このとき、図9に示す実施例2に係るダイヤモ
ンドの製造装置のように、主アノード26のプラズマの放
出口に近接するガス導入ノズル29を用いたり、図10に示
す実施例3に係るダイヤモンドの製造装置のように、チ
ャンバ15壁のガス導入口16からチャンバ15内に導入した
りすることにより、これらを独立に用いてもよいし、任
意の組み合わせで用いることができる。但し、カソード
24とパイロットアノード25間の間隙のパイロットガス導
入口27を用いることはパイロットアークの安定性の面か
ら好ましくない。
【0059】実施例4 次に、図6に示す実施例1のダイヤモンド製造装置を用
い、かつパイロットガス導入口からアルゴンガスを導入
し、主ガス導入口28から原料ガスのメタンガス及び水素
ガスの混合ガスを導入する本発明の実施例4のダイヤモ
ンドの製造方法について、図5、図6、図7(a),
(b)及び図8を参照しながら説明する。
【0060】まず、カソード24、パイロットアノード25
を主アノード26のプラズマの放出口に最も近接した位置
にセットし(図7(a))、50×50×5mmのMo基板か
らなる基板19を水冷されているXYステージ18上に載置
する。次いで、チャンバ15内を排気して、圧力を0.01To
rr以下にした後、パイロットガス導入口27からカソード
24とパイロットアノード25との間隙に流量20リットル/
分のArガスを導入するとともに、主ガス導入口28から
主アノード26とパイロットアノード25との間隙に流量50
リットル/分の水素ガス及び流量1リットル/分のメタ
ンガスを導入する。
【0061】次に、補助電源35に電圧を印加してパイロ
ット電流20Aでパイロットアークを発生させ、放電状態
を保持したままカソード24をパイロットアノード25から
ゆっくり離していき、パイロット電圧を50Vとする(図
7(b))。次いで、主電源36に電圧を印加して主アー
ク電流40Aで主アークを発生させ、放電電圧を保持した
ままパイロットアノード25を主アノード26からゆっくり
離していって、主アーク電圧を 200Vとする(図8)。
このとき、総放電電力は9kWとなる。
【0062】次に、チャンバ15内の圧力を50Torrとし、
XYステージ18をプラズマトーチに近づけ、放出された
プラズマにより昇温する基板19の表面温度が1050℃とな
るようにセットする。次いで、この条件で、1時間保持
すると、基板19上にダイヤモンド膜37が形成される。な
お、本発明の実施例4の効果を調査するため、ダイヤモ
ンド膜37を形成中のアーク電圧の変化及び基板19の温度
の変化を測定した。
【0063】更に、このようにして合成したダイヤモン
ドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察するとともに、
二次イオン質量分析計(SIMS)で不純物の種類及び
その濃度を調査した。その結果によれば、主アーク電圧
の変化は2%以下であり、基板19の温度の変化は±10℃
以下であった。また、合成されたダイヤモンド膜37の膜
厚は 300μmであり、成膜速度は 300μm/時間であっ
た。更に、ダイヤモンド膜37の膜厚が中心部の80%(240
μm)となる中心からの位置は約15mmであった。更に、
SIMSによる不純物分析結果では、主アノード26又は
カソード24の電極材であるタングステン及び/又は銅の
濃度は0.1ppm以下であった。
【0064】以上のように、本発明の実施例4のダイヤ
モンドの製造方法によれば、最初、カソード24とパイロ
ットアノード25を主アノード26のプラズマの放出口に近
接させておき(図7(a))、カソード24とパイロット
アノード25との間に電圧を印加してカソード24とパイロ
ットアノード25との間の間隙に導入されたArガスをプ
ラズマ化した後、放電状態を保持したままカソード24を
パイロットアノード25から離していって(図7
(b))、カソード24とパイロットアノード25との間の
放電電圧を所定の電圧に保持し、カソード24と主アノー
ド2b間に電圧を印加して、パイロットアノード25と主
アノード2bとの間の間隙に導入された主ガスをプラズ
マ化し、その後、放電状態を保持したまま主アノード26
と近接しているパイロットアノード25を主アノード26か
ら離して、カソード24と主アノード26との間の放電電圧
を所定の電圧に保持して主アークを保持した状態(図
8)で、プラズマを放出してダイヤモンドの合成を行っ
ている。
【0065】これにより、カソード24とパイロットアノ
ード25との間隙に発生したパイロットアークにより、カ
ソード24と主アノード26との間の主アークの失火を防止
しつつカソード24と主アノード26との間の放電電圧を制
御することができる。特に、主アークの着火時はパイロ
ットアノード25と主アノード26との間の電極間隔を短く
し、主アークが発生した後、電極間隔を広げることによ
り、カソード24と主アノード26との間の放電電圧を従来
と比較して大幅に高くすることができる。これにより、
高純度且つ高品質のダイヤモンド膜37を高速にかつ再現
性良く安定して製造することができる。
【0066】なお、パイロットガスとして、安定な放電
が得られるArガスを用いているが、Heガスなど他の
不活性ガスや水素ガスが含まれていてもよい。更に、主
ガスとして、放電電圧が高く、しかもダイヤモンドの気
相合成に重要な役割を演じる水素ガスが主体であること
が望ましいが、ArガスやHeガスなどの不活性ガスが
含まれていてもよい。また、ダイヤモンドの原料となる
メタンガスの供給方法として、パイロットアノード25と
主アノード26との間の間隙の主ガス導入口28から導入さ
れた主ガスに混合させているが、図9に示す実施例2に
係るダイヤモンドの製造装置のように放出されたプラズ
マに主アノード26の外のガス導入ノズル29から吹きつけ
たり、図10に示す実施例3に係るダイヤモンドの製造装
置のようにガス導入口16から雰囲気ガスとして供給した
りする方法を用いてもよい。但し、パイロットガス導入
口27からパイロットガスとして供給する方法はパイロッ
トアークの安定性を低下させるため好ましくない。
【0067】実施例5 次に、図9に示す実施例2のダイヤモンドの製造装置を
用い、かつガス導入ノズル29から原料ガスとしてのメタ
ンガスを導入し、パイロットガス導入口27からアルゴン
ガスを導入し、主ガス導入口28から水素ガスを導入する
本発明の実施例5のダイヤモンドの製造方法について、
図5、図7(a),(b)、図8及び図9を参照しなが
ら説明する。
【0068】まず、カソード24及びパイロットアノード
25を最も主アノード26のプラズマの放出口に近接した位
置にセットし(図7(a)参照)、50×50×5mmのMo
基板からなる基板19をXYステージ18に保持する。次い
で、チャンバ15内を排気口17より排気して、圧力を0.01
Torr以下にした後、パイロットガスとして流量20リット
ル/分のArガスをパイロットガス導入口27からカソー
ド24及びパイロットアノード25の間隙に導入するととも
に、主ガスとして流量50リットル/分の水素ガスを主ガ
ス導入口28から主アノード26及びパイロットアノード25
の間隙に導入する。
【0069】次に、パイロット電流20Aでパイロットア
ークを発生させ、パイロットアークを保持した状態でカ
ソード24をパイロットアノード25からゆっくり離してい
って、パイロット電圧を50Vまで上げていき、この放電
電圧を保持する(図7(b)参照)。次いで、カソード
24と主アノード26との間に電圧を印加して主アーク電流
40Aで主アークを発生させ、放電電圧を50Vに保持し、
かつ主アークを保持した状態でパイロットアノード25を
主アノード26からゆっくり離していって、電圧を 200V
まで上げていき、この放電電圧を保持する(図8参
照)。このとき、総放電電力は9kWとなる。
【0070】次に、ガス導入ノズル29から原料ガスとし
て流量2リットル/分のメタンガスを放出されたプラズ
マジェット6内に放出し、混合する(図9)。これによ
り、メタンガスもプラズマ化されて、基板19上に供給さ
れる。次いで、チャンバ15内の圧力を100Torr とし、X
Yステージ18をプラズマトーチに近づけ、基板19の表面
温度が1050℃となるようにセットする。
【0071】次いで、この条件で1時間保持し、ダイヤ
モンド膜37を基板19上に形成するとともに、アーク電圧
の変化及び基板温度の変化を測定する。更に、合成した
ダイヤモンドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察する
とともに、二次イオン質量分析計(SIMS)で不純物
濃度を調査した。その結果、主アーク電圧の変化は2%
以下であり、基板19の温度の変化は±10℃以下であっ
た。合成されたダイヤモンド膜37の膜厚は 350μmであ
り、成膜速度は 350μm/時間であった。更に、合成さ
れたダイヤモンド膜37の膜厚が中心部の80%(280μm)
となる中心からの位置は約15mmであった。また、SIM
Sによる不純物分析結果では、電極材であるタングステ
ン及び/又は銅の濃度は0.1ppm以下であった。
【0072】以上のように、本発明の実施例5のダイヤ
モンドの製造方法によれば、主アノード26外のガス導入
ノズル29から原料ガスとしてのメタンガスをプラズマト
ーチから放出されたプラズマジェットに放出し、混合し
ている。これによっても、実施例4と同様に、主アーク
を保持した状態でカソード24と主アノード26との間の放
電電圧を従来と比較して大幅に高くすることができ、高
純度且つ高品質のダイヤモンド膜を高速にかつ再現性良
く安定して製造することができる。
【0073】実施例6 次に、図5及び図10に示す実施例3のダイヤモンド製造
装置を用い、かつチャンバ15壁のガス導入口16から原料
ガスのメタンガスを導入し、パイロットガス導入口27か
らアルゴンガスを導入し、主ガス導入口から水素ガスを
導入する、本発明の実施例6のダイヤモンドの製造方法
について、図5、図7(a),(b)、図8及び図10を
参照しながら説明する。
【0074】まず、カソード24及びパイロットアノード
25を主アノード26のプラズマの放出口に最も近い位置に
セットし(図7(a))、50×50×5mmのMo基板から
なる基板19をXYステージ18に保持する。
【0075】次いで、チャンバ15内を排気して、圧力を
0.01Torr以下にした後、パイロットガスとして流量20リ
ットル/分のArガスをパイロットガス導入口27からカ
ソード24及びパイロットアノード25の間隙に導入すると
ともに、主ガスとして流量50リットル/分の水素ガスを
主ガス導入口28から主アノード26及びパイロットアノー
ド25の間隙に導入する。次に、カソード24とパイロット
アノード25との間に電圧を印加してパイロット電流20A
でパイロットアークを発生させ、このパイロットアーク
を保持したまま、カソード24をパイロットアノード25か
らゆっくり離していき、パイロット電圧を50Vとする
(図7(b)参照)。
【0076】次いで、カソード24と主アノード26との間
に電圧を印加して主アーク電流40Aで主アークを発生さ
せ、この主アークを保持したまま、パイロットアノード
25を主アノード26からゆっくり離していき、主アーク電
圧を 200Vとする(図8参照)。このとき、総放電電力
は9kWとなる。次に図10の、ガス導入口16から流量2リ
ットル/分のメタンガスをチャンバ15内に導入する。こ
れにより、メタンガスは放出されたプラズマジェット6
内に混合してプラズマ化され、基板19上に供給される。
【0077】次いで、チャンバ15内の圧力を100Torr と
し、XYステージ18をプラズマトーチに近づけ、基板19
の表面温度が1050℃となるようにセットする。次いで、
この条件で1時間保持し、ダイヤモンド膜37を基板19上
に形成するとともに、主アーク電圧の変化及び基板19の
温度の変化を測定した。
【0078】更に、合成したダイヤモンドを走査型電子
顕微鏡(SEM)で観察するとともに、二次イオン質量
分析計(SIMS)で不純物濃度を調査した。その調査
結果によれば、主アーク電圧の変化は2%以下であり、
基板19の温度の変化は±10℃以下であった。合成された
ダイヤモンド膜37の膜厚は 300μmであり、成膜速度は
300μm/時間であった。更に、合成されたダイヤモン
ド膜37の膜厚が中心部の80%(240μm)となる中心から
の位置は約15mmであった。また、SIMSによる不純物
分析結果では、電極材であるタングステン及び銅の濃度
は0.1ppm以下であった。
【0079】以上のように、本発明の実施例6のダイヤ
モンドの製造方法によれば、チャンバ15壁のガス導入口
16からチャンバ15内に原料ガスとしてのメタンガスを導
入し、プラズマ化している。これによっても、実施例4
と同様に、主アークを保持した状態でカソード24と主ア
ノード26との間の放電電圧を従来と比較して大幅に高く
することができ、高純度且つ高品質のダイヤモンド膜を
高速にかつ再現性良く安定して製造することができる。
【0080】実施例7 次に、図5及び図10に示す実施例3のダイヤモンド製造
装置を用い、かつチャンバ15壁のガス導入口16からメタ
ンガス及び酸素ガスの混合ガスを導入し、パイロットガ
ス導入口27からアルゴンガスを導入し、主ガス導入口28
から水素ガスを導入する本発明の実施例7のダイヤモン
ドの製造方法について、図5、図7(a),(b)、図
8及び図10を参照しながら説明する。
【0081】まず、カソード24、パイロットアノード25
を主アノード26のプラズマの放出口に最も近い位置にセ
ットし(図7(a)参照)、50×50×5mmのMo基板か
らなる基板19をXYステージ18上に載置する。次いで、
チャンバ15内を排気して、圧力を0.01Torr以下にした
後、パイロットガスとして流量20リットル/分のArガ
スを、主ガスとして流量50リットル/分の水素ガスをプ
ラズマトーチのパイロットガス導入口27及び主ガス導入
口28に各々導入する。
【0082】次に、パイロット電流20Aでパイロットア
ークを発生させ、このパイロットアークを保持したまま
カソード24をパイロットアノード25からゆっくり離して
いき、パイロット電圧を50Vとする(図7(b)参
照)。次いで、主アーク電流40Aで主アークを発生さ
せ、この主アークを保持したままパイロットアノード25
を主アノード26からゆっくり離していき、主アーク電圧
を 200Vとする(図8参照)。このとき、総放電電力は
9kWとなる。
【0083】次に、ガス導入口16から流量3リットル/
分のメタンガスと流量 0.5リットル/分の酸素ガスとの
混合ガスをチャンバ15内に導入する。これにより、メタ
ンガス及び酸素ガスは放出されたプラズマジェット6内
に混合してプラズマ化され、基板19上に供給される。次
いで、チャンバ15内の圧力を100Torr とし、XYステー
ジ18をプラズマトーチに近づけ、基板19の表面温度が10
50℃となるようにセットする。
【0084】次いで、この条件で1時間保持し、ダイヤ
モンド膜37の合成を行う。このとき、ダイヤモンド膜37
の合成中のアーク電圧の変化及び基板19の温度の変化を
測定する。更に、合成したダイヤモンドを走査型電子顕
微鏡(SEM)で観察するとともに、二次イオン質量分
析計(SIMS)で不純物濃度を調査した。
【0085】その結果によれば、主アーク電圧の変化は
2%以下であり、基板19の温度の変化は±10℃以下であ
った。合成されたダイヤモンド膜37の膜厚は 300μmで
あり、成膜速度は 300μm/時間であった。更に、合成
されたダイヤモンド膜37の膜厚が中心部の80%(240μ
m)となる中心からの位置は約20mmであった。また、S
IMSによる不純物分析結果では、電極材であるタング
ステン及び/又は銅の濃度は0.1ppm以下であった。
【0086】以上のように、本発明の実施例7のダイヤ
モンドの製造方法によれば、チャンバ15壁のガス導入口
16からチャンバ15内に原料ガスとしてのメタンガスと酸
化性ガスとしての酸化ガスとの混合ガスを導入し、プラ
ズマ化している。ところで、酸化性ガスを加えることに
より、ダイヤモンド膜37の膜質を更に向上することがで
きる。これにより、実施例4と同様に、主アークを保持
した状態でカソード24と主アノード26との間の放電電圧
を従来と比較して大幅に高くすることができ、高純度且
つ更に高品質のダイヤモンド膜37を高速にかつ再現性良
く安定して製造することができる。
【0087】なお、実施例7では、酸化性ガスとして酸
素ガスを用いているが、酸素ガスの代わりに水蒸気等の
他の酸化性ガスやハロゲンガス、ハロゲン化水素ガスな
どを用いてもよい。
【0088】比較例1 次に、図1に示す従来例のダイヤモンド製造装置を用い
たダイヤモンドの製造方法について図1を参照しながら
説明する。
【0089】まず、50×50×5mmのMo基板からなる基
板7をXYステージに保持する。次いで、チャンバ内を
排気して、圧力を0.01Torr以下にした後、プラズマガス
として流量20リットル/分のArガス、流量50リットル
/分の水素ガス及び流量1リットル/分のメタンガス
を、先端が尖った柱状のカソード1とカソード1の周辺
に同心状に設けられた筒状のアノード2との間の間隙に
導入する。
【0090】次に、チャンバ内の圧力を50Torrに保持
し、アーク電流90A、アーク電圧を 200Vでアークを起
こした後、XYステージをプラズマトーチに近づけ、基
板7の表面温度が1050℃となるようにセットした。
【0091】次いで、この条件で1時間保持し、ダイヤ
モンド膜8の合成を行うとともに、アーク電圧の変化及
び被形成基板温度の変化を測定した。更に、合成したダ
イヤモンドを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると
ともに、二次イオン質量分析計(SIMS)で不純物濃
度を調査した。
【0092】その結果によれば、アーク電圧の変化は約
5%であり、基板7の温度の変化は±30℃であった。ま
た、合成されたダイヤモンド膜8の膜厚は 200μmであ
り、成膜速度は 200μm/時間であった。更に、合成さ
れたダイヤモンド膜8の膜厚が中心部の80%(160μm)
となる中心からの位置は約10mmであった。また、SIM
Sによる不純物分析結果では、電極材であるタングステ
ン及び/又は銅の濃度は数ppm であった。
【0093】以上のように、比較例1によれば、成膜速
度がいずれの実施例と比較しても遅く、基板7内の合成
されたダイヤモンド膜8の膜厚の均一性も劣っている。
【0094】比較例2 次に、図11に示す従来例の改造型のダイヤモンド製造装
置を用い、カソードを移動させて放電電圧を調整する比
較例2のダイヤモンドの製造方法について図11を参照し
ながら説明する。比較例1と異なるところは、カソード
1を共通の軸に沿って移動させることができることであ
る。そして、アーク電流を40Aと低くし、放電電圧を 2
00Vまで上げようとしていることである。
【0095】まず、先端が尖った柱状のカソード1をカ
ソード1の周辺に同心状に設けられた筒状のアノード2
のプラズマの放出口に最も近い位置にセットし、50×50
×5mmのMoからなる基板をXYステージに載置する。
【0096】次いで、チャンバ内を排気して、圧力を0.
01Torr以下にした後、プラズマガスとして流量20リット
ル/分のArガス、流量50リットル/分の水素ガス及び
流量1リットル/分のメタンガスを、カソード1とアノ
ード2との間の間隙のガス導入口3へ導入する。
【0097】次に、チャンバ内の圧力を50Torrに保持
し、カソード1とアノード2との間に接続された電源4
から電圧を供給してアーク電流40Aを流して、カソード
1とアノード2との間にアーク柱5を発生させ、アーク
を保持したままカソード1をアノード2からゆっくり離
して放電電圧を 200Vまで上げようと試みた。その結
果、 200Vを実現することはできたが、数分で停止して
しまい、安定な放電が得られなかった。
【0098】以上説明したように、本発明のダイヤモン
ドの製造装置によれば、カソードと主アノードとの間の
間隙にパイロットアノードを介在させ、カソードと主ア
ノードとの間に主電源を接続するとともにカソードとパ
イロットアノードとの間に補助電源を接続し、放電中に
カソード及びパイロットアノードを共通な軸に沿って移
動させることができる構造としている。
【0099】従って、本発明のダイヤモンドの製造方法
のように、アノードを複数個設け、最初、カソードとパ
イロットアノードとの間で放電させてプラズマ化してパ
イロットアークを発生させた後、必要に応じてカソード
をパイロットアノードから離し、放電電圧を所定の電圧
に保持し、その後、カソードと主アノード間に主アーク
を発生させた後、放電状態を保持したまま主アノードと
近接しているパイロットアノードを主アノードから離し
ていって、カソードと主アノードとの間の放電電圧を所
定の電圧に保持し、プラズマを放出してダイヤモンド膜
の合成を行うことができる。
【0100】これにより、カソードとパイロットアノー
ドとの間隙に発生したパイロットアークにより、カソー
ドと主アノードとの間の主アークの失火を防止しつつ、
カソードと主アノードとの間の放電電圧を従来と比較し
て大幅に高くすることができる。これにより、高純度且
つ高品質のダイヤモンド膜を高速にかつ再現性良く安定
して製造することができる。
【0101】実施例8 本発明による三重アノード型プラズマトーチ38及びこの
トーチを用いたダイヤモンド合成装置39の概略図を図12
及び図13に示す。図中40は電極移動機構、41はプラズマ
トーチ、42は冷却水、43aは第一ガス、43bは第二ガ
ス、43cは第三ガス、44aは第一電源、44bは第二電
源、44cは第三電源、45はガス供給系、46は基板ホル
ダ、47はマニュプレータ、48はチャンバ、49は排気系、
50は原料ガス導入ノズル、51は雰囲気ガス導入口であ
る。このトーチ38はカソード52及び第一アノード53a、
第二アノード53b、第三アノード53cがプラズマジェッ
ト発生中でも移動できる構造となっている。
【0102】この装置を用い、以下の方法でダイヤモン
ドを合成した。 1)各電極をそれぞれ最も接近した位置にし、 100×10
0 ×5mmのMo基板を水冷基板ホルダに装着した。 2)チャンバ内を0.01Torr以下に排気後、第一ガスとし
てArを10リットル/min 、第二ガスとして水素20リッ
トル/min 、メタン 0.6リットル/min 、第三ガスとし
て水素10リットル/min 流した。 3)まずカソード52と第一アノード53a間に電圧を印加
し、第一アノード電流20Aで放電を起こし、カソード42
をゆっくり上げて第一アノード電圧を50Vとした。 4)次にカソード52と第二アノード53b間に電圧を印加
し、第二アノード電流40Aで放電を起こし、第一アノー
ド53aとカソード52bをゆっくり上げて第二アノード電
圧を 200Vとした。 5)次にカソード52と第三アノード53c間に電圧を印加
し、第三アノード電流30Aで放電を起こし、カソードと
第一アノード53aと第二アノード53bをゆっくり上げて
第三アノード電圧を 300Vとした。総放電出力は18kWと
なる。 6)チャンバ内圧力を50Torrとし、基板ホルダをトーチ
に近づけ、基板表面温度が1000℃となるようにセットし
た。 7)この条件で1時間ダイヤモンドの合成を行うととも
に基板温度の変化を測定した。 8)合成したダイヤモンドを走査電子顕微鏡(SEM)
で観察し、X線回折、ラマン分光でダイヤモンドの質を
評価するとともに、二次イオン質量分析計(SIMS)
で不純物濃度を分析した。
【0103】その結果、基板温度の変化は±10℃以下で
あった。合成されたダイヤモンド膜の厚さは 400μmで
あり製膜速度は 400μm/hであった。また、膜厚が中
心部の80%(320μm)となるまでの中心からの距離は約
20mmであった。X線回折ではダイヤモンドのピークのみ
が検出され、ラマン分光では1333cm-1のダイヤモンドの
ピークのみが検出され、グラファイトや非晶質炭素は検
出されなかった。更にSIMSによる分析結果では、電
極材であるタングステン及び/又は銅の濃度は0.1ppm以
下であった。
【0104】実施例9 実施例8と同様に図12のトーチ及び図13のダイヤモンド
合成装置を用い、以下の方法でダイヤモンドを合成し
た。 1)各電極をそれぞれ最も接近した位置にし、 100×10
0 ×5mmのMo基板を水冷基板ホルダに装着した。 2)チャンバ内を0.01Torr以下に排気後、第一ガスとし
てArを10リットル/min 、第二ガスとして水素20リッ
トル/min 、第三ガスとして水素10リットル/min 流し
た。 3)まずカソード52と第一アノード53a間に電圧を印加
し、第一アノード電流20Aで放電を起こし、カソード42
をゆっくり上げて第一アノード電圧を50Vとした。 4)次にカソード52と第二アノード53b間に電圧を印加
し、第二アノード電流40Aで放電を起こし、第一アノー
ド53aとカソード52をゆっくり上げて第二アノード電圧
を 200Vとした。 5)次にカソード52と第三アノード53c間に電圧を印加
し、第三アノード電流30Aで放電を起こし、カソード52
と第一アノード53aと第二アノード53bをゆっくり上げ
て第三アノード電圧を 300Vとした。総放電出力は18kW
となる。 6)原料ガス導入ノズル(50)からメタンを 0.6リット
ル/min 流し、チャンバ内圧力を50Torrとして基板ホル
ダをトーチに近づけ、基板表面温度が1000℃となるよう
にセットした。 7)この条件で1時間ダイヤモンドの合成を行うととも
に基板温度の変化を測定した。 8)合成したダイヤモンドを走査電子顕微鏡(SEM)
で観察するとともに、二次イオン質量分析計(SIM
S)で不純物濃度を分析した。
【0105】その結果、基板温度の変化は±10℃以下で
あった。合成されたダイヤモンド膜の厚さは 400μmで
あり製膜速度は 400μm/hであった。また、膜厚が中
心部の80%(320μm)となるまでの中心からの距離は約
25mmであった。X線回折ではダイヤモンドのピークのみ
が検出され、ラマン分光では1333cm-1のダイヤモンドの
ピークのみが検出され、グラファイトや非晶質炭素は検
出されなかった。更にSIMSによる分析結果では、電
極材であるタングステン及び/又は銅の濃度は0.1ppm以
下であった。
【0106】実施例10 実施例8と同様に図12のトーチ及び図13のダイヤモンド
合成装置を用い、以下の方法でダイヤモンドを合成し
た。 1)各電極をそれぞれ最も接近した位置にし、 100×10
0 ×5mmのMo基板を水冷基板ホルダに装着した。 2)チャンバ内を0.01Torr以下に排気後、第一ガスとし
てArを10リットル/min 、第二ガスとして水素20リッ
トル/min 、第三ガスとして水素10リットル/min 流し
た。 3)まずカソード52と第一アノード53a間に電圧を印加
し、第一アノード電流20Aで放電を起こし、カソード52
をゆっくり上げて第一アノード電圧を50Vとした。 4)次にカソード52と第二アノード53b間に電圧を印加
し、第二アノード電流40Aで放電を起こし、第一アノー
ド53aと第二アノード53bをゆっくり上げて第二アノー
ド電圧を 200Vとした。 5)次にカソード52と第三アノード53c間に電圧を印加
し、第三アノード電流30Aで放電を起こし、カソード52
と第一アノード53aと第二アノード53bをゆっくり上げ
て第三アノード電圧を 300Vとした。総放電出力は18kW
となる。 6)雰囲気ガス導入口51からメタンを 0.6リットル/mi
n 流し、チャンバ内圧力を50Torrとして基板ホルダをト
ーチに近づけ、基板表面温度が1000℃となるようにセッ
トした。 7)この条件で1時間ダイヤモンドの合成を行うととも
に基板温度の変化を測定した。 8)合成したダイヤモンドを走査電子顕微鏡(SEM)
で観察するとともに、二次イオン質量分析計(SIM
S)で不純物濃度を分析した。
【0107】その結果、基板温度の変化は±10℃以下で
あった。合成されたダイヤモンド膜の厚さは 350μmで
あり製膜速度は 350μm/hであった。また、膜厚が中
心部の80%(280μm)となるまでの中心からの距離は約
30mmであった。X線回折ではダイヤモンドのピークのみ
が検出され、ラマン分光では1333cm-1のダイヤモンドの
ピークのみが検出され、グラファイトや非晶質炭素は検
出されなかった。更にSIMSによる分析結果では、電
極材であるタングステン及び/又は銅の濃度は0.1ppm以
下であった。
【0108】実施例11 本発明による二重アノード型プラズマトーチ及びこのト
ーチを用いたダイヤモンド合成装置の概略図を図14及び
図15に示す。この装置を用い、以下の方法でダイヤモン
ドを合成した。 1) 100×100 ×5mmのMo基板19を水冷基板ホルダ46
に装着した。 2)チャンバ48内を0.01Torr以下に排気後、第一ガスと
してArを10リットル/min 、第二ガスとして水素20リ
ットル/min 、メタン 0.6リットル/min 流した。 3)まずカソード52と第一アノード53a間に電圧を印加
し、第一アノード電流20Aで放電を起こした。この時の
放電電圧は40Vである。 4)次にカソード52と第二アノード53b間に電圧を印加
し、第二アノード電流40Aで放電を起こした。この時の
放電電圧は 180Vである。総放電出力は8kWとなる。 5)チャンバ内圧力を50Torrとし、基板ホルダをトーチ
に近づけ、基板表面温度が1000℃となるようにセットし
た。 6)この条件で1時間ダイヤモンドの合成を行うととも
に基板温度の変化を測定した。 8)合成したダイヤモンドを走査電子顕微鏡(SEM)
で観察し、X線回折、ラマン分光でダイヤモンドの質を
評価するとともに、二次イオン質量分析計(SIMS)
で不純物濃度を分析した。
【0109】その結果、基板温度の変化は±10℃以下で
あった。合成されたダイヤモンド膜の厚さは 400μmで
あり製膜速度は 400μm/hであった。また、膜厚が中
心部の80%(320μm)となるまでの中心からの距離は約
8mmであった。X線回折ではダイヤモンドのピークのみ
が検出され、ラマン分光では1333cm-1のダイヤモンドの
ピークのみが検出され、グラファイトや非晶質炭素は検
出されなかった。更にSIMSによる分析結果では、電
極材であるタングステン及び/又は銅の濃度は0.1ppm以
下であった。
【0110】比較例3 図1に示すような従来型の構造のトーチを用い、プラズ
マガスとしてAr20リットル/min 、水素20リットル/
min 、メタン 0.4リットル/min 、アーク電流90A、ア
ーク電圧 100V、チャンバ内圧力50Torr、基板表面温度
が1000℃で1時間ダイヤモンドの合成を行った。その結
果、基板温度の変化は±30℃、ダイヤモンドの膜厚は 2
00μm、膜厚が中心部の80%(160μm)となる距離は約
8mmであった。またSIMSによる分析結果では、タン
グステン及び/又は銅が数ppm 検出された。
【0111】比較例4 図1に示すような構造の従来型トーチを用い、プラズマ
ガスとしてAr20リットル/min 、水素20リットル/mi
n 、メタン 0.4リットル/min 流し、放電電流40Aでカ
ソードをアノードからゆっくり離して放電電圧を 200V
にまで上げようと試みた。その結果、 200Vを実現する
ことはできたが、数分で放電が停止してしまい、安定な
放電は得られなかった。
【0112】以上の通り、本発明の多重アノードのトー
チを用いることにより、放電安定性が増し、基板温度な
どの合成条件の制御性が良くなり、合成の再現性、信頼
性が向上した。また電極の消耗が減り、ダイヤモンドの
純度が高くなった。更に合成速度が向上するとともに、
製膜面積も広くなった。
【0113】実施例12 本発明による偏向磁場印加装置を備えた三重アノード型
プラズマトーチ及びこのトーチを用いたダイヤモンド合
成装置の概略図を図16及び図17に示す。図中、54はカソ
ード、55a は第一アノード、55b は第二アノード、55c
は第三アノード、56は絶縁体、57は永久磁石、58はヨー
ク、59はコイル、60はアーク、61はプラズマジェット、
62はダイヤモンド膜、63は磁場発生装置付きプラズマト
ーチ、64は冷却水、65a は第一ガス、65b は第二ガス、
65c は第三ガス、66a は第一電源、66b は第二電源、66
c は第三電源、67はガス供給系、68は基板ホルダ、69は
マニュプレータ、70はチャンバ、71は排気系、72は原料
ガス導入ノズル、73は雰囲気ガス導入口、74は磁場発生
装置用電源、75は基板である。
【0114】このトーチはカソード54及び三つのアノ
ード 55a, 55b 及び 55cが水冷のタングステン製であ
り、第三アノードのノズル径は40mmである。第二及び第
三アノードには防錆加工を施したNd−Fe−B系の永
久磁石57が配置されており、トーチ軸方向に磁場を印加
して陽極点の回転を促している。偏向磁場発生用の電磁
磁石はX,Yの2方向、合計4個配置されており、コイ
ルは水冷されている。磁場発生装置用電源は位相が90°
異なる周波数可変型のX,Y2系統の交流電源からな
り、それぞれ独立して出力電流を変化できる。発生磁束
密度は中心軸で最高1000Gauss である。
【0115】基板ホルダは水冷銅製でXYZ方向に移動
できるマニュプレータの上に設置されている。チャンバ
は水冷二重構造であり、メカニカルブースターポンプと
ロータリーポンプに接続されている。ガス供給口はトー
チ内の3ヵ所と、トーチ出口及びチャンバ壁の5ヵ所に
ある。通常第一ガスとしてAr、第二ガスとして水素、
第三ガスとして水素を供給し、炭素源となるメタンを必
要に応じて5ヵ所の供給口から供給する。
【0116】基板として 100×100 ×5mmのMo板を用
い、この表面に下記の手順でダイヤモンド膜を合成し
た。 1)チャンバ内を0.01Torr以下に排気後、第一ガスとし
てArを10リットル/min 、第二ガスとして水素20リッ
トル/min 、メタン 0.6リットル/min 、第三ガスとし
て水素10リットル/min 流した。 2)まずカソード54と第一アノード55a間に電圧を印加
し、第一アノード電流20Aで放電させた。 3)次にカソード54と第二アノード55b間に電圧を印加
し、第二アノード電流40Aで放電させた。 4)次にカソード54と第三アノード55c間に電圧を印加
し、第三アノード電流60Aで放電させた。この時の総放
電出力は20kWとなった。 5)偏向磁場発生装置を働かせ、周波数100Hz 、ピーク
磁束密度500Gaussとした。 6)チャンバ内圧力を50Torrとし、基板ホルダをトーチ
に近づけ、基板表面温度が1000℃となるようにセットし
た。 7)この条件で1時間ダイヤモンドの合成を行った。 8)合成したダイヤモンドを走査電子顕微鏡(SEM)
で観察し、X線回折、ラマン分光でダイヤモンドの質を
評価するとともに、二次イオン質量分析計(SIMS)
で不純物濃度を分析した。
【0117】図18に合成したダイヤモンド膜の厚さ分布
を示す。また比較のために、偏向磁場を印加せず、あと
はすべて実施例11と同じ条件でダイヤモンドを合成した
場合の膜厚分布も図18に示す。偏向磁場なしでは製膜面
積は直径40mm程度で中心部が厚い分布となっているが、
偏向磁場を印加した場合、直径約60mmに渡りほぼ均一の
膜厚が得られていることがわかる。製膜速度は磁場印加
により中心部の製膜速度は落ちるが、体積製膜速度で見
るとほとんど変わらない。また、X線回折ではダイヤモ
ンドのピークのみが検出され、ラマン分光では1333cm-1
のダイヤモンドのピークのみが検出され、グラファイト
や非晶質炭素は検出されなかった。更にSIMSによる
分析結果では、電極材であるタングステンの濃度は0.1p
pm以下であった。
【0118】実施例13 本発明による偏向磁場印加装置を備えた二重アノード型
プラズマトーチ及びこのトーチを用いたダイヤモンド合
成装置の概略図を図19及び図20に示す。図中、76はカソ
ード、77a は第一アノード、77b は第二アノード、78は
絶縁体、79は永久磁石、80はヨーク、81はコイル、82は
アーク、83はプラズマジェット、84はダイヤモンド膜、
85は磁場発生装置付きプラズマトーチ、86は冷却水、87
a は第一ガス、87b は第二ガス、88a は第一電源、88b
は第二電源、89はガス供給系、90は基板ホルダ、91はマ
ニュプレータ、92はチャンバ、93は排気系、94は原料ガ
ス導入ノズル、95は雰囲気ガス導入口、96は磁場発生装
置用電源、97は基板である。
【0119】このトーチはカソード76及び二つのアノー
ド 77a,77b が水冷のタングステン製であり、第二アノ
ード 77bのノズル径は50mmである。第二アノード 77bに
は防錆加工を施したNd−Fe−B系の永久磁石が配置
されており、トーチ軸方向に磁場を印加して陽極点の回
転を促している。偏向磁場発生用の電磁磁石はX,Yの
2方向、合計4個配置されており、コイルは水冷されて
いる。磁場発生装置用電源は位相が90°異なる周波数可
変型のX,Y2系統の交流電源からなり、それぞれ独立
して出力電流を変化できる。発生磁束密度は中心軸で最
高1000Gauss である。
【0120】基板ホルダは水冷銅製でXYZ方向に移動
できるマニュプレータの上に設置されている。チャンバ
は水冷二重構造であり、メカニカルブースターポンプと
ロータリーポンプに接続されている。ガス供給口はトー
チ内の2ヵ所と、トーチ出口及びチャンバ壁の4ヵ所に
ある。通常第一ガスとしてAr、第二ガスとして水素を
供給し、炭素源となるメタンを必要に応じて4ヵ所の供
給口から供給する。
【0121】基板として 100×100 ×5mmのMo板を用
い、この表面に下記の手順でダイヤモンド膜を合成し
た。 1)チャンバ内を0.01Torr以下に排気後、第一ガスとし
てArを10リットル/min 、第二ガスとして水素20リッ
トル/min 、原料ガスとしてメタン 0.4リットル/min
流した。 2)まずカソード76と第一アノード77a間に電圧を印加
し、第一アノード電流20Aで放電させた。 3)次にカソード76と第二アノード77b間に電圧を印加
し、第二アノード電流100Aで放電させた。この時の総
放電出力は15kWとなった。 4)偏向磁場発生装置を働かせ、周波数100Hz 、ピーク
磁束密度500Gaussとした。 5)チャンバ内圧力を50Torrとし、基板ホルダをトーチ
に近づけ、基板表面温度が1000℃となるようにセットし
た。 6)この条件で1時間ダイヤモンドの合成を行った。 7)合成したダイヤモンドを走査電子顕微鏡(SEM)
で観察し、X線回折、ラマン分光でダイヤモンドの質を
評価するとともに、二次イオン質量分析計(SIMS)
で不純物濃度を分析した。
【0122】図21に合成したダイヤモンド膜の厚さ分布
を示す。また比較のために、偏向磁場を印加せず、あと
はすべて実施例12と同じ条件でダイヤモンドを合成した
場合の膜厚分布も図21に示す。偏向磁場なしでは製膜面
積は直径30mm程度で中心部が厚い分布となっているが、
偏向磁場を印加した場合、直径約40mmに渡りほぼ均一の
膜厚が得られていることがわかる。製膜速度は磁場印加
により中心部の製膜速度は落ちるが、体積製膜速度で見
るとほとんど変わらない。また、X線回折ではダイヤモ
ンドのピークのみが検出され、ラマン分光では1333cm-1
のダイヤモンドのピークのみが検出され、グラファイト
や非晶質炭素は検出されなかった。更にSIMSによる
分析結果では、電極材であるタングステンの濃度は0.1p
pm以下であった。
【0123】本発明の偏向磁場印加型のトーチを用いる
ことにより、プラズマジェットの照射面積が広がり、ダ
イヤモンドの合成面積を広くすることができる。
【0124】実施例14 図22に示すように、まず、チャンバー98内を真空ポンプ
99により、10-2Torr程度まで排気した。その後、第一ガ
スとしてArを10リットル/min 、第二ガスとして水素
20リットル/min 、メタン 0.6リットル/min 、第三ガ
スとして水素を10リットル/min 流した(ガス系110)。
チャンバー98内圧力を50Torrとして、直流電源 100によ
って、第一アノード電流20A、第二アノード電流40A、
第三アノード電流30Aで放電を開始した。トーチ内部に
は永久磁石 101がカソードを軸線として磁界が下に発生
するように設置されている。このとき、トーチ先端部に
おける磁界を測定すると、2000ガウスであった。プラズ
マジェット 102はプラズマトーチ先端より水冷している
基板ホルダ 103の上に固定されている基板に照射されダ
イヤモンドが生成した。
【0125】放電の安定性は、アノード・カソード間の
電圧即ち、放電電圧により調べることができるが、放電
電圧の時間変化を調べると図23のようになった。即ち、
放電電圧が、平均化されて安定していったことがわかっ
た。
【0126】実施例15 図24に示すように、まず、チャンバー 104内を真空ポン
プ 105により、10-2Torr程度まで排気した。その後、第
一ガスとしてArを10リットル/min 、第二ガスとして
水素20リットル/min 、メタン 0.6リットル/min 、第
三ガスとして水素を10リットル/min 流した。チャンバ
ー 104内圧力を50Torrとして、直流電源 106によって、
第一アノード電流20A、第二アノード電流40A、第三ア
ノード電流30Aで放電を開始した。それと同時に第三ア
ノード電極を60rpm でアノード回転用モータ107 で回転
させて製膜を行った。プラズマジェット 108はプラズマ
トーチ先端より水冷している基板ホルダ 109の上に固定
されている基板に照射されダイヤモンドが生成した。な
お 110はガス系である。
【0127】放電の安定性は、アノード・カソード間の
電圧即ち、放電電圧により調べることができるが、放電
電圧の時間変化を調べると図25のようになった。即ち、
放電電圧が、平均化されて安定していったことがわかっ
た。更に、同様の効果はカソードを動かすことにより得
ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例に係るダイヤモンドの製造装置のプラズ
マトーチの詳細構成図である。
【図2】ダイヤモンドの気相合成における放電電圧と製
膜速度との関係を示すグラフ図である。
【図3】本発明の第三の態様の製造装置の原理を示す構
成図である。
【図4】本発明の第五の態様に係るダイヤモンドの製造
装置の原理を示す構成図である。
【図5】本発明の実施例1に係るダイヤモンドの製造装
置の構成図である。
【図6】本発明の実施例1に係るダイヤモンドの製造装
置のプラズマトーチの詳細構成図である。
【図7】本発明の実施例4に係るダイヤモンドの製造方
法について説明するプラズマトーチの側面図(その1)
である。
【図8】本発明の実施例4に係るダイヤモンドの製造方
法について説明するプラズマトーチの側面図(その2)
である。
【図9】本発明の実施例2に係るダイヤモンドの製造装
置の構成図である。
【図10】本発明の実施例3に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図11】本発明に係るダイヤモンドの製造装置に対す
る比較例2について説明するプラズマトーチの側面図で
ある。
【図12】本発明の実施例8に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図13】本発明の実施例8に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図14】本発明の実施例11に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図15】本発明の実施例11に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図16】本発明の実施例12に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図17】本発明の実施例12に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図18】本発明の実施例12で合成したダイヤモンド膜
の厚さ分布を示すグラフ図である。
【図19】本発明の実施例13に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図20】本発明の実施例13に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図21】本発明の実施例13で合成したダイヤモンド膜
の厚さ分布を示すグラフ図である。
【図22】本発明の実施例14に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図23】本発明の実施例14における放電電圧の時間変
化を示すグラフ図である。
【図24】本発明の実施例15に係るダイヤモンドの製造
装置の構成図である。
【図25】本発明の実施例15における放電電圧の時間変
化を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1,24,52,54,76…カソード 2…アノード 2a,53a,55a,77a…第一アノード 2b,53b,55b,77b…第二アノード 2c,53c,55c…第三アノード 3…ガス導入口 4…電源 4a,44a,66a,88a…第一電源 4b,44b,66b,88b…第二電源 4c,44c,66c…第三電源 5,60,82…アーク柱 6,61,83,102 ,108 …プラズマジェット 7,19,75,97…基板 8,37,62,84…ダイヤモンド膜 9,19…導入原料ガス 9a,43a,65a,87a…第一ガス 9b,43b,65b,87b…第二ガス 9c,43c,65c…第三ガス 10,56,78…絶縁体 11,57,79,101 …磁石(永久磁石) 12…磁力線 13,58,80…ヨーク 14,59,81…コイル 15,48,70,92,98,104 …チャンバ 16…ガス導入口 17…排気口 18…X,Yステージ 20,47,69,91…マニピュレータ 21…リニアモータ 22…ガス供給手段 23a〜23d…ガス配管 25…パイロットアノード 26…主アノード 27…パイロットガス導入口 28…主ガス導入口 29…ガス導入ノズル 30a,30b,32a,32b,34a,34b…冷媒配管 31…カソード移動手段 33…パイロットアノード移動手段 35…補助電源 36…主電源 40…電極移動機構 41,63,85…プラズマトーチ 42,64,86…冷却水 45,67,89…ガス供給系 46,68,90,103 ,109 …基板ホルダ 49,71,93…排気系 50,72,94…原料ガス導入ノズル 51,73,95…雰囲気ガス導入ノズル 74,96…磁場発生用電源 99,105 …真空ポンプ 100 ,106 …直流電源 107 …アノード回転用モータ 110 …ガス系
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河原田 元信 神奈川県川崎市中原区上小田中1015番地 富士通株式会社内

Claims (34)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 共通の軸に沿って移動させることができ
    る柱状のカソードと、該カソードと間隙を隔てて同心状
    に設けられ、先端がプラズマの放出口となっている筒状
    の主アノードと、前記カソードと前記主アノードとの間
    の間隙に、前記カソード及び主アノードと間隙を隔てて
    同心状に設けられ、前記共通の軸に沿って移動させるこ
    とができる筒状のパイロットアノードと、前記カソード
    と前記パイロットアノードとの間隙にパイロットガスを
    導入するパイロットガス導入口と、前記主アノードと前
    記パイロットアノードとの間隙に主ガスを導入する主ガ
    ス導入口と、前記主アノードと前記カソードとの間を接
    続する主電源と、前記カソードと前記パイロットアノー
    ドとの間に接続された補助電源と、前記放出口と対向す
    る位置に設けられ、ダイヤモンド膜が形成される基板を
    保持する基板保持具とを有するダイヤモンドの製造装
    置。
  2. 【請求項2】 前記主アノードのプラズマの放出口に近
    接して設けられ、前記放出口から放出されたプラズマに
    ガスを混入させるガス導入ノズルを有する請求項1に記
    載の装置。
  3. 【請求項3】 前記ダイヤモンドの製造装置は、前記カ
    ソード、前記主アノード及び前記パイロットアノードが
    収納される減圧可能なチャンバを有し、該チャンバ壁に
    は該チャンバ内にガスを導入するガス導入口が設けられ
    ている請求項1又は2に記載の装置。
  4. 【請求項4】 柱状のカソードと、該カソードの周囲に
    該カソードと間隙を隔てて同心状に設けられた筒状のパ
    イロットアノードとの両方を、該パイロットアノードの
    周囲に該パイロットアノードと間隙を隔てて同心状に設
    けられた筒状の主アノードの先端部のプラズマの放出口
    に近接させておき、前記カソードと前記パイロットアノ
    ードとの間に電圧を印加して前記カソードと前記パイロ
    ットアノードとの間の間隙に導入されたパイロットガス
    をプラズマ化した後、前記カソードを共通の軸に沿って
    前記パイロットアノードから離していって、前記カソー
    ドと前記パイロットアノードとの間の放電電圧を所定の
    電圧に保持し、その後、前記カソードと前記主アノード
    との間に電圧を印加して前記主アノードと前記パイロッ
    トアノードとの間の間隙に導入された主ガスをプラズマ
    化した後、前記カソードと前記パイロットアノードとの
    間の放電電圧を保持したまま前記主アノードと近接して
    いるパイロットアノードを前記カソードと共に前記共通
    の軸に沿って前記主アノードから離していって、前記カ
    ソードと前記主アノードとの間の放電電圧を所定の電圧
    に保持し、前記主アノードと前記カソードとの間で発生
    している主アークを保持した状態で、前記放出口からプ
    ラズマを放出させることからなるダイヤモンドの製造方
    法。
  5. 【請求項5】 前記パイロットガスはアルゴンガス又は
    他の不活性ガスであり、前記主ガスは水素ガス又は不活
    性ガスと原料ガスとしての炭素化合物からなるガスとの
    混合ガスである請求項4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記主アノードのプラズマの放出口から
    放出されたプラズマに原料ガスを含むガスを混入する請
    求項4に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記パイロットガスはアルゴンガス又は
    他の不活性ガスであり、前記主ガスは水素ガス又は不活
    性ガスであり、前記原料ガスは炭素化合物からなるガス
    である請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記ダイヤモンドの製造は減圧されたチ
    ャンバ内で行い、該チャンバ壁に設けられたガス導入口
    から前記チャンバ内に雰囲気ガスを導入する請求項4に
    記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記パイロットガスはアルゴンガス又は
    他の不活性ガスであり、前記主ガスは水素ガス又は不活
    性ガスであり、前記雰囲気ガスは炭素化合物からなるガ
    スである請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記パイロットガスはアルゴンガス又
    は他の不活性ガスであり、前記主ガスは水素ガス又は不
    活性ガスであり、前記雰囲気ガスは炭素化合物からなる
    ガスと酸化性ガス、ハロゲンガス又はハロゲン化水素ガ
    スとの混合ガスである請求項8に記載の方法。
  11. 【請求項11】 直流プラズマトーチを用いて直流アー
    ク放電により発生させたプラズマジェットを基板に衝突
    させて基板上にダイヤモンドを成長させるDCプラズマ
    ジェットダイヤモンド気相合成法において、プラズマト
    ーチのアノード複数個を同軸上に配置した多重構造とす
    るダイヤモンドの気相合成方法。
  12. 【請求項12】 上記プラズマトーチの各電極の一部又
    は全部がトーチの軸方向に移動できる構造となってお
    り、プラズマジェット発生中に電極を移動させ、放電電
    圧を変化させる請求項11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 上記プラズマトーチの軸方向に磁場を
    印加し、アーク柱にローレンツ力を働かせることにより
    陽極点を強制的に回転させる請求項11に記載の方法。
  14. 【請求項14】 直流アーク放電によりプラズマジェッ
    トを発生させる非移行式プラズマトーチと、基板ホルダ
    と、プラズマトーチと基板ホルダとの位置を変化させる
    ことができる移動機構が真空ポンプが接続された減圧チ
    ャンバ内に配置されたDCプラズマジェットダイヤモン
    ド気相合成法によるダイヤモンド気相合成装置であり、
    プラズマトーチのアノード複数個が同軸上に配置された
    多重構造となっているダイヤモンドの気相合成装置。
  15. 【請求項15】 上記プラズマトーチの各電極の一部又
    は全部が、プラズマジェット発生中、トーチの軸方向に
    移動できる構造となっている請求項14に記載の装置。
  16. 【請求項16】 上記プラズマトーチから発生されるプ
    ラズマジェットにガスを吹きつけるための単数又は複数
    のノズルがメインアノードの外に設けられており、前記
    ノズルにガスを供給するためのガス供給系が前記ノズル
    に接続されている請求項14に記載の装置。
  17. 【請求項17】 上記プラズマトーチの軸方向に磁場を
    印加し、アーク柱にローレンツ力を働かせて陽極点を強
    制的に回転させるための永久磁石又は電磁磁石を有する
    請求項14に記載の装置。
  18. 【請求項18】 直流プラズマトーチを用いて直流アー
    ク放電により発生させたプラズマジェットを基板に衝突
    させて基板上にダイヤモンドを成長させるDCプラズマ
    ジェットダイヤモンド気相合成法において、アークに対
    してトーチ軸方向と直交する方向から磁場を印加してア
    ークを偏向させ、これによりプラズマジェットも偏向さ
    せることで、プラズマジェットの照射面積を広げ、ダイ
    ヤモンドの合成面積を拡大できるようにし、かつ、プラ
    ズマトーチのアノード複数個を同軸上に配置した多重構
    造としたダイヤモンドの気相合成方法。
  19. 【請求項19】 直流プラズマトーチを用い直流アーク
    放電により発生させたプラズマジェットを基板に衝突さ
    せて基板上にダイヤモンドを成長させるDCプラズマジ
    ェットダイヤモンド気相合成法において、プラズマジェ
    ットに対してトーチ軸方向と直交する方向から磁場を印
    加してプラズマジェットを偏向させることで、プラズマ
    ジェットの照射面積を広げ、ダイヤモンドの合成面積を
    拡大できるようにし、かつ、プラズマトーチのアノード
    複数個を同軸上に配置した多重構造としたダイヤモンド
    の気相合成方法。
  20. 【請求項20】 上記偏向磁場の印加方法が、トーチ軸
    方向と直交する面内でお互いに直交するX,Y2方向か
    ら磁場を印加することで、合成された磁場の方向が前記
    面内で自由に変えられる方法であり、これによりプラズ
    マジェットの偏向の方向を前記面内で2次元的に変えら
    れるようにした請求項18又は19に記載の方法。
  21. 【請求項21】 直流アーク放電によりプラズマジェッ
    トを発生させる非移行式プラズマトーチと、基板ホルダ
    と、プラズマトーチと基板ホルダとの位置を変化させる
    ことができる移動機構が真空ポンプに接続された減圧チ
    ャンバ内に配置されたDCプラズマジェットダイヤモン
    ド気相合成法によるダイヤモンド合成装置において、カ
    ソードとアノードの間からアークにトーチ軸方向と直交
    する方向に磁場を印加できる電磁磁石及びその制御装置
    が接続されており、かつ、プラズマトーチのアノード複
    数個を同軸上に配置した多重構造としたダイヤモンド気
    相合成装置。
  22. 【請求項22】 直流アーク放電によりプラズマジェッ
    トを発生させる非移行式プラズマトーチと、基板ホルダ
    と、プラズマトーチと基板ホルダとの位置を変化させる
    ことができる移動機構が真空ポンプに接続された減圧チ
    ャンバ内に配置されたDCプラズマジェットCVD法に
    よるダイヤモンド合成装置であり、アノードの外からプ
    ラズマジェットにトーチ軸方向と直交する方向に磁場を
    印加できる電磁磁石及びその制御装置が接続されてお
    り、かつ、プラズマトーチのアノード複数個を同軸上に
    配置した多重構造としたダイヤモンド気相合成装置。
  23. 【請求項23】 上記電磁磁石が、トーチ軸方向と直交
    する面内でお互いに直交するX,Y2方向から磁場を印
    加できるような、2系統の電磁磁石で構成されている請
    求項21又は22に記載の装置。
  24. 【請求項24】 直流プラズマトーチを用いて直流アー
    ク放電により発生させたプラズマジェットを基板に衝突
    させて基板上にダイヤモンドを成長させるDCプラズマ
    ジェットダイヤモンド気相合成法において、プラズマト
    ーチのアノード複数個を同軸上に配置した多重構造と
    し、かつ、電極の相対位置を変化させることを可能にす
    ることで、プラズマの放電位置を変更し、放電の安定化
    を可能にしたダイヤモンドの気相合成方法。
  25. 【請求項25】 プラズマジェット発生のための放電電
    極であるカソードを可変とする請求項24に記載の方法。
  26. 【請求項26】 カソードをトーチの軸線を軸とし回転
    させることにより放電位置を可変にした請求項25に記載
    の方法。
  27. 【請求項27】 カソードを任意の振動数で振動させる
    ことにより放電位置を可変とした請求項25に記載の方
    法。
  28. 【請求項28】 プラズマジェット発生のための放電電
    極であるアノードを可変とした請求項24に記載の方法。
  29. 【請求項29】 アノードをトーチの軸線を軸とし回転
    させることにより放電位置を可変とした請求項28に記載
    の方法。
  30. 【請求項30】 アノードを任意の振動数で振動させる
    ことにより放電位置を可変とした請求項29に記載の方
    法。
  31. 【請求項31】 直流アーク放電によりプラズマジェッ
    トを発生させる非移行式プラズマトーチと、基板ホルダ
    と、プラズマトーチと基板ホルダとの位置を変化させる
    ことができる移動機構が真空ポンプに接続された減圧チ
    ャンバ内に配置されたDCプラズマジェットCVD法に
    よるダイヤモンド合成装置において、アーク放電を行う
    ためのアノード電極及びカソード電極と、放電電極の相
    対位置を変化させるための電極駆動手段とを備え、か
    つ、プラズマトーチのアノード複数個を同軸上に配置し
    た多重構造としたダイヤモンド合成装置。
  32. 【請求項32】 前記電極駆動手段がカソードを駆動
    し、かつ、トーチの軸線を軸とし回転させることにより
    放電位置を可変とする請求項31に記載の装置。
  33. 【請求項33】 前記電極駆動手段がアノードを駆動
    し、かつ、トーチの軸線を軸とし回転させることにより
    放電位置を可変とする請求項31に記載の装置。
  34. 【請求項34】 前記駆動手段がモータである請求項3
    1、32又は33に記載の装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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GB2407050A (en) * 2003-10-01 2005-04-20 C A Technology Ltd Rotary ring cathode for plasma spraying
CN104302082A (zh) * 2014-02-18 2015-01-21 河北普莱斯曼金刚石科技有限公司 用于化学气相沉积的等离子炬
CN106658932A (zh) * 2016-12-13 2017-05-10 江苏帕斯玛环境科技有限公司 电弧等离子体发生器

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