JPH06174755A - 変圧器の励磁電流検出装置 - Google Patents

変圧器の励磁電流検出装置

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JPH06174755A
JPH06174755A JP4327679A JP32767992A JPH06174755A JP H06174755 A JPH06174755 A JP H06174755A JP 4327679 A JP4327679 A JP 4327679A JP 32767992 A JP32767992 A JP 32767992A JP H06174755 A JPH06174755 A JP H06174755A
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茂 田中
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、電流電力変換器の交流側に接続さ
れる変圧器の励磁電流を正確に検出できる変圧器の励磁
電流検出装置を提供することを目的とする。 【構成】 変圧器と、当該変圧器の1次及び2次電流を
検出する電流検出器と、当該1次電流検出値と2次電流
検出値から前記変圧器の励磁電流を演算する手段と、前
記変圧器の磁束に対する励磁電流の位相角を求める手段
と、当該位相角が零になるように前記励磁電流演算手段
に用いられる前記1次電流検出値を補正する手段とを具
備したことを特徴とする変圧器の励磁電流検出装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インバ―タ等の電力変
換器の交流側端子に接続される変圧器の励磁電流検出装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、大容量の自己消弧形素子(例えば
ゲ―トタ―ンオフサイリスタ等)の開発が盛んに行わ
れ、インバ―タ等の電力変換装置に用いられるようにな
ってきた。インバ―タ等の電力変換器の交流側端子には
絶縁の目的で、或いは交流電圧を昇圧したり、降圧した
りする目的で、更に複数台のインバ―タを多重接続する
目的で変圧器が設置される。
【0003】この変圧器は、上記電力変換器を構成する
素子のスイッチング特性のバラツキにより、或いは外部
的要因により直流バイアス電圧が印加され、励磁電流が
増大し、やがては片側方向に磁気飽和(偏磁)すること
がある。このような変圧器の直流偏磁は、上記電力変換
器の素子電流を増大させ、過電流によって素子を破壊す
ることにもなる。また、変圧器が偏磁すると必要な出力
電圧が出なくなり、装置全体としての機能を発揮できな
くなる。従って、変圧器の励磁電流を検出し、励磁電流
が過大にならないように電力変換器の交流側出力電圧を
調整している。図9は従来の変圧器の励磁電流検出装置
を示す構成図である。図中、TRは変圧器、W1 ,W2
は変圧器TRの1次、2次巻線、CT1 ,CT2 は電流
検出器、Kは比例回路、Aは加減算器である。変圧器T
Rの1次/2次巻線比をa1 対a2 とした場合、比例回
路Kによって(a2 /a1 )倍する増幅器を用意する。
【0004】電流検出器CT1 ,CT2 により、各々1
次電流I1 および2次電流I2 を検出する。2次電流検
出値I2 を比例回路Kにより(a2 /a1 )倍し、加減
算器Aにより、前記1次電流検出値I1 との差I0 =I
1 −(a2 /a1 )・I2 を求める。この演算値I0 が
変圧器の励磁電流の検出値となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の変圧
器の励磁電流検出装置は、次のような問題がある。
【0006】即ち、変圧器の励磁電流I0 の値は、1次
電流I1 や2次電流(1次側換算値)I2 ´に比較する
と極僅かな値であり、電流検出器の精度が悪いと、上記
のようにして検出された励磁電流は信頼性のない値とな
ってしまう。
【0007】例えば、大容量の変圧器では、励磁電流I
0 は1次電流の2〜3%となるので、1次電流I1 の定
格を1,000Aとした場合、励磁電流I0 の定格は3
0A程度となる。ここで、電流検出器CT1 ,CT2 の
精度誤差を1%とした場合、10Aの検出誤差が出て、
従来の手法により変圧器の励磁電流I0 を求めると単純
に考えても約30%の誤差を含むことになる。実際に
は、上記励磁電流I0 の計算は、1次電流I1 と2次電
流I2 ´のベクトルの差となるので上記励磁電流I0 の
検出誤差は更に大きくなる。
【0008】この励磁電流の検出誤差は、励磁電流を制
御したとき、指令値と実電流との相違をもたらし、変圧
器から必要な電圧が得られなくなるということにもな
る。また、変圧器の直流偏磁対策を行う場合でも正確な
励磁電流検出ができないため、前記電力変換器側から適
正な補償電圧を発生できなくなるという欠点があった。
本発明は、以上の問題点に鑑みなされたものであって、
変圧器の励磁電流を正確に検出できる変圧器の励磁電流
検出装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の変圧器の励磁電流検出装置は、変圧器と、
当該変圧器の1次及び2次電流を検出する電流検出器
と、当該1次電流検出値と2次電流検出値から前記変圧
器の励磁電流を演算する手段と、前記変圧器の磁束に対
する励磁電流の位相角を求める手段と、当該位相角が零
になるように前記励磁電流演算手段に用いられる前記1
次電流検出値あるいは2次電流検出値の一方又は両方を
補正する手段とを具備したことを特徴とするものであ
る。
【0010】
【作用】変圧器の1次/2次巻数比をa1 対a2 とした
場合、変圧器の励磁電流I0 は、1次電流検出値I1 と
2次電流検出値I2 から、 I0 =I1 −(a2 /a1 )・I2 によって求められる。一方、変圧器に印加される電圧V
1 (交流電圧の基本波)と変圧器の相互インダクタンス
Mから、直流偏磁しないときの変圧器の励磁電流I0 *
が次式のように近似計算できる。 I0 * =V1 /(jω・M) ここで、ωは交流電圧V1 の角周波数である。即ち、上
記励磁電流I0 * は変圧器の磁束Φ0 と同相になり、印
加電圧V1 に対し、位相が90°遅れる。
【0011】本発明は、この磁束Φ0 に対する前記励磁
電流検出値I0 の位相角ψを求め、その位相角ψが零に
なるように前記1次電流検出値I1 或いは2次電流検出
値I2 の一方又は両方を補正する。
【0012】いま仮に、a1 =a2 として説明する。1
次電流I1 が1%大きく、2次電流I2 が1%小さく検
出されたとする。励磁電流I0 は1次電流I1 と2次電
流I2 のベクトル差であるから、その大きさは言うに及
ばず、磁束Φ0 (印加電圧V1 に対して直交)に対する
位相角ψは進みとなる。この位相角ψが零になるように
2次電流検出値I2 の大きさを補正すると、結果的に2
次電流I2 も1%大きく検出されるようになる。1次及
び2次電流が共に1%だけ大きくなった場合、三角形の
相似関係から、励磁電流I0 も1%だけ大きく検出され
る。
【0013】また、前記位相角ψが零になるように1次
電流検出値I1 の大きさを補正すると、結果的に1次電
流I1 は1%小さく検出されるようになる。1次及び2
次電流が共に1%だけ小さくなった場合、三角形の相似
関係から、励磁電流I0 も1%だけ小さく検出される。
即ち、励磁電流の検出誤差は1%となり、大幅な精度向
上が達成できる。
【0014】
【実施例】以下、本発明を図面を参照して説明する。
【0015】図1は、本発明の一実施例を示す変圧器の
励磁電流検出装置の構成図である。図中、SUPは交流
電圧源、TRは変圧器、LOADは交流負荷、CT1 ,
CT2 は電流検出器、Kは比例回路、Hは係数補正器、
Aは加減算器、CAL位相角演算器である。
【0016】変圧器TRの1次/2次巻数比はa1 対a
2 で、その1次巻線には交流電圧源SUPが接続されて
いる。変圧器TRの1次巻線W1 に電圧V1 が印加され
ると、2次巻線W2 には電圧V2 =(a2 /a1 )・V
1 が発生し、負荷LOADに電流I2 が流れる。このと
き、1次電圧V1 の角周波数をω=2πf,変圧器TR
の相互インダクタンスをMとした場合、変圧器TRの励
磁電流I0 は、I0 =V1 /(jω・M)のように近似
できる。変圧器TRの1次電流I1は上記2次電流I2
の1次側換算値と励磁電流I0 のベクトル和で、 I1 =(a2 /a1 )・I2 +I0 で表される。
【0017】即ち、変圧器TRの1次及び2次電流が正
確に検出できれば、励磁電流I0 も正確に検出できるこ
とになる。しかし、電流検出器CT1 ,CT2 には検出
誤差があり、従来装置で説明したような問題点が出てく
る。
【0018】図1の装置において、まず、電流検出器C
T1 ,CT2 により1次電流I1 及び2次電流I2 を検
出する。2次電流検出値I2 は比例回路Kにより、(a
2/a1 倍されて1次側量に換算される。即ち、2次電流
I2 の1次側換算値I2 ´はI2 ´=(a2 /a1 )・
I2 となる。2次電流I2 の1次側換算値I2 ´は係数
補正器Hを介して、I2 ´´=K・I2 ´に補正され、
加減算器Aに入力される。また、1次電流検出値I1 は
そのまま加減算器Aに入力され、励磁電流I0 がI0 =
I1 −I2 ´´として出力される。位相角演算器CAL
は変圧器TRの磁束Φ0 に対する励磁電流検出値I0 の
位相ずれψを演算するもので、変圧器TRの1次側に印
加される電圧V1 に同期した単位正弦波sinωtと前
記励磁電流検出値I0 を用いて位相ずれψを演算する。
その動作は後で説明する。前記係数補正器Hは前記位相
角ψに応じてその補正係数Kを調整するもので、ψが正
ならばKを増加させ、ψが負ならばKを減少させる。
【0019】図2は図1の装置の電圧電流波形を示すも
ので。V1 は変圧器TRの1次電圧、I0 * は励磁電流
基準値、I0 は励磁電流検出値を表す。ここで、1次電
圧V1 を、V1 =Vm ・sin(ωt)とした場合、励
磁電流基準値I0 * は、I0* =−Im * ・cos(ω
t)と近似できる。なお、Im * =Vm /(ωM)の関
係がある。即ち、励磁電流基準値I0 * は変圧器TRの
磁束Φ0 と同相で、1次電圧V1 より位相角π/2ラジ
アンだけ遅れている。これに対し、励磁電流検出値I0
は前記励磁電流基準値I0 * (磁束Φ0 )より位相角ψ
だけ進んでいる場合を示している。即ち、励磁電流検出
値I0 は、 I0 =Im ・cos(ωt+ψ)=−Im (cosωt
・cosψ−sinωt・sinψ) のように表される。図3は図1の装置の位相角演算器C
ALの具体的な実施例を示す演算ブロック図である。
【0020】図中、UN1 ,UN2 は単位正弦波を求め
るための正規化回路、ADは加算器、MLは乗算器、D
Vは割算器、ROM1,ROM2はテ―ブルメモリ回
路、SHはサンプルホ―ルド回路を示す。
【0021】まず、正規化回路UN1 に1次電圧検出値
V1 を入力し、その波高値Vm で割って、その電圧に同
期した単位正弦波sinωtを求める。これを微分する
と、単位余弦波cosωtが得られる。また、正規化回
路UN2 に励磁電流検出値I0 を入力し、その波高値I
m で割って、その電流に同期した単位正弦波−cos
(ωt+ψ)を求める。乗算器MLは正規化回路UN1
の出力cosωtとサンプルホ―ルド回路SHの出力c
osψとを掛け算し、cosωt・cosψを求める。
加算器ADは正規化回路UN2 の出力−cos(ωt+
ψ)と上記乗算器MLの出力cosωt・cosψを加
えて、 sinωt・sinψ=cosωt・cosψ−cos
(ωt+ψ) を出力する。更に、割算器DVにより、加算器ADの出
力sinωt・sinψを正規化回路UN1 の出力si
nωtで割って、sinψを求める。
【0022】テ―ブルメモリROM1は逆正弦関数si
-1xを表として記憶したもので、メモリのアドレスに
x=sinψを入力すると、位相角ψがもとめられる。
又、テ―ブルメモリROM2は余弦関数cosxを表と
して記憶したもので、x=ψをメモリのアドレスに入力
すると、cosψが出力される。サイプルホ―ルド回路
SHは上記テ―ブルメモリROM2の出力cosψをあ
る演算周期毎に保持し、前記乗算器MLに入力する。即
ち、乗算器MLは位相角出力ψの前の演算値を使って掛
け算することになる。
【0023】このようにして、位相角演算器CALは、
変圧器TRの1次電圧V1 と励磁電流検出値I0 を入力
とし、励磁電流基準値I0 * (磁束Φ0 )に対する励磁
電流検出値I0 の位相角ψを演算することができる。
尚、上記演算はマイクロコンピュ―タを用いて演算プロ
グラムにより実現することもできる。励磁電流検出値I
0 の位相角ψは別の方法によっても求めることができ
る。
【0024】例えば、1次電圧V1 のゼロクロス点を基
準とし、励磁電流検出値I0 のゼロクロス点との時間差
を求め、それを位相角θに直し、ψ=(π/2)−θと
して算出することができる。図4は図1の装置の動作を
説明するための電圧、電流ベクトル図を示す。(a)は
1次電流及び2次電流の検出器の誤差が無いときのベク
トル図、(b)は検出誤差がある場合のベクトル図を示
す。まず、検出誤差が無い時のベクトル図を説明する。
【0025】図4(a)において変圧器TRに1次電圧
V1 が印加されると、励磁電流I0=V1 /(jω・
M)が流れ、磁束Φ0 が発生する。その結果、2次電圧
V2 =(a2 /a1 )・V1 が発生し、負荷に電流I2
を流す。変圧器TRの1次電流I1 は2次電流I2 の1
次側換算値I2 ´=(a2 /a1 )・I2 と、前記励磁
暖流I0 のベクトル和となる。即ち、1次電流I1 及び
2次電流I2 を正確に検出できれば、励磁電流I0 =I
1 −I2 ´を正確に検出することができる。この時、励
磁電流I0 は磁束Φ0 と同相となり、1次電圧V1 に対
して90°遅れている。
【0026】次に、1次電流及び2次電流検出器に誤差
が有る場合のベクトル図を説明する。図4(b)におい
て、i1 は1次電流検出値でI1 よりもΔI1 だけ大き
く検出されている。又、i2 ´は2次電流検出値を1次
側に換算したもので、I2 ´よりΔI2 だけ小さく検出
されている。
【0027】この検出値から励磁電流検出値i0 =i1
−i2 ´を求めると、図示の電流ベクトルとなる。この
励磁電流i0 は磁束Φ0 に対して位相がψだけ進んだベ
クトルとなる。図1の装置では、この位相角ψを位相角
演算器CALで求め、位相角ψに応じて係数補正器Hの
係数kを増減させている。即ち、位相角ψが正(進み)
のとき、係数kを増加させ、位相角kが負(遅れ)の
時、係数kを減少させている。図4(b)の場合、位相
角ψが正(進み)なので、係数kを増加させ、2次電流
検出値I2 ´´=k・i2 ´を増加させる。最終的に
は、ψ=0になる点まで係数kが増加し、図のI2 ´´
となって落ち着く。このとき、1次電流検出値i1 は補
正しない。この結果、励磁電流検出値I0 ´´は、I0
´´=i1 −I2 ´´となる。三角形の相似関係から、
真値I0 に対し、当該励磁電流検出値I0 ´´の誤差は
1次電流の検出誤差に等しくなる。即ち、1次電流I1
の検出精度誤差が1%であった場合、図1の装置による
励磁電流検出誤差は1%となり、検出精度を大幅に向上
させることが可能となる。
【0028】図5は、本発明の変圧器の励磁電流検出装
置の別の実施例を示す構成図である。 図中、SUPは
交流電圧源、TRは変圧器、LOADは交流負荷、CT
1 ,CT2 は電流検出器、kは比例回路、Hは係数補正
器、Aは加減算器、CALは位相角演算器である。
【0029】変圧器TRの1次/2次巻数比はa1 対a
2 で、その1次巻線には交流電圧源SUPが接続されて
いる。変圧器TRの1次巻線W1 に電圧V1 が印加され
ると、2次巻線W2 には電圧V2 =(a2 /a1 )・V
1 が発生し、負荷LOADに電流I2 が流れる。
【0030】図5の装置において、まず、電流検出器C
T1 ,CT2 により1次電流I1 及び2次電流I2 を検
出する。2次電流検出値I2 は比例回路Kにより、(a
2 /a1 )倍されて1次側量に換算される。即ち、2次
電流I2 の1次側換算値はI2 ´=(a2 /a1 )・I
2 となり、加減算器Aに入力される。また、前記1次電
流I1 の検出値は係数補正回路Hを介して、I1 ´=k
・I1 に補正され、加減算器Aに入力される。加減算器
Aは、励磁電流I0 =I1 −I2 ´´を演算し、出力す
る。位相角演算器CALは出力される励磁電流検出値I
0 の基準値I0* に対する位相ずれψを演算するもの
で、変圧器TRの1次側に印加される電圧V1 に同期し
た単位正弦波sinωtと前記励磁電流検出値I0 を用
いてψを演算する。前記係数補正器Hは前記位相角ψに
応じてその補正係数kを調整するもので、ψが正(進
み)ならばkを減少させ、ψが負(遅れ)ならばkを増
加させる。図6は、図5の装置の動作を説明するための
電圧,電流ベクトル図を示す。
【0031】図6において、i1 は1次電流検出値で、
ΔI1 だけ大きく検出されている。また、i2 ´は2次
電流検出値を1次側に換算したものでΔI2 だけ小さく
検出されている。これらの検出値から励磁電流i0 =i
1 −i2 ´を求めると、図示の電流ベクトルとなる。当
該励磁電流i0 は磁束Φ0 に対して位相がψだけ進んだ
ベクトルとなる。
【0032】図5の装置では、この位相角ψを位相演算
器CALで求め、位相角ψに応じて係数補正器Hの係数
kを増減させている。即ち、位相角ψが正(進み)のと
き、係数kを減少させ、位相角ψが負(遅れ)のとき、
係数kを増加させている。
【0033】図6の場合、位相角ψが正(進み)なの
で、係数kを減少させ、1次電流検出値i1 ´=k・i
1 を減少させる。最終的にはψ=0になる点まで係数k
が減少し、図6のi1 ´となって落ち着く。このとき、
2次電流検出値i2 ´は補正しない。この結果、励磁電
流検出値Io ´はIo ´=i1 ´−i2 ´となる。三角
形の相似関係から、真値I0 に対し、当該励磁電流I0
´の誤差は2次電流の検出誤差に等しくなる。即ち、2
次電流I2 の検出精度誤差が1%であった場合、図5の
装置による励磁電流検出誤差は1%となり、検出精度を
大幅に向上させることが可能となる。
【0034】図1の装置では、励磁電流I0 の位相角ψ
が零になるように2次電流検出値を補正しているのに対
し、図5の装置では励磁電流I0 の位相角ψが零になる
ように1次電流検出値を補正している。
【0035】いずれの方式でも励磁電流I0 の検出精度
を向上させることができるが、1次及び2次電流検出器
の検出精度が異なる場合、精度の良い方をそのまま使用
し、精度の悪い方の検出値を補正すると、励磁電流の検
出精度は精度の良い方に合せることができる。又、1次
電流検出値及び2次電流検出値の両方を補正しても同様
に励磁電流の検出精度を向上させることができることは
言うまでも無い。図7は本発明の更に別の実施例を示す
構成図である。
【0036】図中、Vd は直流電圧源、INVは直流を
可変電圧可変周波数の交流に変換するインバ―タ、TR
は変圧器、CT1 ,CT2 は電流検出器、Kは比例回
路、Hは係数補正回路、CALは位相角演算回路、A1
,A2 は加減算器、C1 は比較器、G0(s)は制御補
正回路、PWMはパルス幅変調回路をそれぞれ示す。
【0037】インバ―タINVは自己消弧形素子(例え
ばゲ―トタ―ンオフサイリスタ,以後GTOと記す)S
1 〜S4 と帰還ダイオ―ドD1 〜D4 で構成されてい
る。当該インバ―タINVはパルス幅変調制御され、そ
の出力電圧VINV はPWM制御回路PWMの入力信号
(電圧指令値)ei に比例した値となる。電圧指令値e
iを正弦波状に変化させれば、出力電圧VINV も正弦波
状に変化し、その振幅及び周波数を変えることにより、
可変電圧可変周波数の交流電圧を発生させることができ
る。
【0038】変圧器TRの1次巻線には電圧VINV が印
加され、磁束Φ0 が発生し、変圧器TRの1次/2次巻
数比を(a1 /a2 )とした場合、2次巻線にV2 =
(a2/a1 )・V1 なる電圧が発生する。負荷LOA
Dにはこの2次電圧V2 が印加され、負荷電流(2次電
流)I2 が流れる。
【0039】電流検出器CT1 ,CT2 はそれぞれ変圧
器TRの1次電流I1 及び2次電流I2 を検出する。比
例回路Kは2次電流検出値I2 を1次側に換算するもの
で、変圧器TRの1次/2次巻数比を(a1 /a2 )と
した場合、1次側換算値は、I2 ´=(a2 /a1 )・
I2 となる。
【0040】又、位相角演算器CALは変圧器TRの励
磁電流I0 の磁束Φ0 に対する位相角ψを演算する。詳
細は前に説明したので省略する。係数補正回路Hは位相
角ψに応じて2次電流検出値の補正係数kを補正する。
加減算器A1 により、前記1次電流検出値I1 と上記2
次電流検出値の補正値I2 ´´=k・I2 ´との差を求
め、励磁電流I0 =I1 −I2 ´´を出力する。励磁電
流I0 の磁束Φ0 に対する位相角ψが零になるように係
数kが補正され、そのときの励磁電流I0 の検出精度は
1次電流I1 の検出精度まで向上する。図7の装置で
は、この正確な励磁電流検出値I0 を用いて、変圧器T
Rの偏磁対策を行っている。V1 * はインバ―タINV
が発生すべき出力電圧VINV の指令値で、通常、負荷電
流制御の出力信号等から与えられる。
【0041】又、I0 * は変圧器TRの励磁電流指令値
で、前記電圧指令値V1 * と変圧器TRの相互インダク
タンスM及び出力角周波数ωにより、次のように与えら
れる。 I0 * =V1 * /(jω・M)
【0042】この励磁電流指令値I0 * と前記励磁電流
検出値I0 を比較器C1 に入力し、偏差ε0 =I0 *
I0 を求めて、制御補償回路G0 (s)で増幅して、加
算器A2 に入力する。従って、PWM制御回路PWMの
入力信号ei は、 ei =V1 * +G0(s)・ε0 となる。次に、励磁電流
制御について説明する。
【0043】I0 * >I0 となった場合、偏差ε0 は正
となり、PWM制御入力信号ei を増加させインバ―タ
INVの出力電圧VINV を増加させ、変圧器TRの励磁
電流I0 を増やす。逆に、I0 * <I0 となった場合、
偏差ε0 は負となり、PWM制御入力信号ei を減少さ
せインバ―タINVの出力電圧VINV を減少させ、変圧
器TRの励磁電流I0 を減らす。
【0044】このようにして、変圧器TRの励磁電流I
0 はその指令値I0 * に一致するように制御される。I
0 =I0 * に制御されていれば、変圧器TRの直流偏磁
は発生せず、1次電流I1 が過大になるのを防止でき、
かつ、負荷LOADに必要な電圧V2 を供給することが
できる。図8は本発明の更に別の実施例を示す構成図
で、PWMインバ―タを多重運転したときの実施例を示
す。
【0045】図中、Vd は直流電圧源、INV1,IN
V2は直流を可変電圧可変周波数の交流に変換するイン
バ―タ、TR1 ,TR2 は変圧器、LOADは交流負
荷、CT1 〜CT3 は電流検出器、Kは比例回路、H1
,H2 は係数補正回路、CAL1 ,CAL2 は位相角
演算回路、CAL0 は励磁電流指令値演算器、A1 〜A
5は加減算器、c1 〜C3 は比較器、G01(s),G02
(s),GL (s)は電流制御補正回路、PWM1 ,P
WM2 はパルス幅変調制御回路をそれぞれ示す。
【0046】この装置では、2台のインバ―タINV
1.INV2を変圧器TR1 ,TR2を介して多重運転
している。即ち、第1のPWM制御回路PWM1 に与え
る搬送波信号X1 ,Y1 (X1 の反転)と第2のPWM
制御回路PWM2 に与える搬送波信号X2 ,Y2 (X2
の反転)との位相を90°ずつずらしてPWM制御を行
っている。ここで、変圧器TR1 の1次/2次巻数比
1:1と仮定すれば、変圧器TR1 の2次電圧V12はイ
ンバ―タINV1の出力電圧V11に一致する。同様に、
変圧器TR2 の出力電圧V22もV21に一致する。
【0047】負荷LOADは変圧器TR1 ,TR2 の2
次電圧V12とV22の和が印加される。負荷電圧VL =V
12+V22の等価キャリア周波数は上記多重運転の効果に
より、PWM制御搬送波周波数の4倍の値が得られる。
故に、負荷LOADに供給される電流の脈動は極めて小
さな値となる。負荷電流IL は2台のインバ―タINV
1,INV2の出力電圧を同時に調整することにより制
御している。
【0048】即ち、電流検出器CT3 で負荷電流IL を
検出し、比較器C3 により負荷電流指令値IL * との偏
差εL =IL * −IL を求める。その偏差εL を電流制
御補償回路GL (s)で増幅し、加算器A3 を介してP
WM1 の入力信号ei1とし、加算器A4 を介してPWM
2 の入力信号ei2としている。
【0049】IL * >IL となった場合、偏差εL は正
の値となり、入力信号ei1,ei2を増やし、負荷電圧V
L =V12+V22を増加させる。故に、負荷電流IL が増
加し、IL はIL * に制御される。逆に、IL * <IL
となった場合、偏差εL は負の値となり、入力信号ei
1,ei2を減らし、負荷電圧VL =V12+V22を減少さ
せる。故に、負荷電流IL が減少し、やはり、IL はI
L * に制御される。ここで、加算器A5 に加えられる信
号VL * /2は上記負荷電流制御の応答を改善するため
のもので、負荷側の電圧を前向に補償している。このV
L * は次式のように与えられる。 VL * =(Vc * +jωLL ・IL * +RL ・IL * ) ただし、Vc * は負荷の逆起電力、ωは出力角周波数、
LL 及びRL は負荷のインダクタンスと抵抗である。
【0050】さて、図8の装置において、インバ―タI
NV1,INV2を構成する素子のスイッチング特性の
バラツキ等により若干の直流バイアスが変圧器TR1 ,
TR2 に印加され、直流偏磁を発生させる可能性があ
る。そこで、図8の装置では、2台の変圧器TR1 ,T
R2 の励磁電流を検出し、各インバ―タによって励磁電
流制御を行っている。
【0051】まず、電流検出器CT1 によって変圧器T
R1 の1次電流I11を検出し、係数補正器H1 を介して
k1 倍し、加減算器A1 に入力する。又、電流検出器C
T3により負荷電流IL を検出し、比例回路Kを介し
て、加減算器A1 に入力する。比例回路Kは変圧器の2
次電流を1次電流に換算するもので、2台の変圧器TR
1 ,TR2 は同一とし、その1次/2次巻数比をa1 対
a2 とした場合、k=(a2 /a1 )となる。加減算器
A1 の出力が変圧器TR1 の励磁電流Io1で、 I01=k1 ・I11−(a2 /a1 )・IL となる。位相角演算器CAL1 は変圧器TR1 の磁束Φ
01に対する励磁電流検出値I01の位相角ψ1 を演算する
もので、具体的には、図3で説明したものと同様に、イ
ンバ―タINV1の出力電圧検出値V11と前記励磁電流
検出値I01とを用いて演算することができる。ここで
は、電圧検出値V11の代りにインバ―タINV1の出力
電圧指令値V11* =VL * /2を用いている。前記係数
補正器H1 は上記位相角ψ1 が零になるように係数k1
を補正し、前述のように励磁電流検出値I01の検出精度
を向上させることができる。変圧器TR2 の励磁電流I
02も同様に、比例回路K,係数補正器H2 、加減算器A
2 及び位相角演算器CAL2 により、精度良く検出する
ことができる。CAL0 は励磁電流の指令値I0 * を演
算する演算器で、2台の変圧器の相互インダクタンスM
が同一であるとした場合、 I0 * =VL * /(jω・2・M) の演算式から求められる。変圧器TR1 の励磁電流は次
のように制御される。
【0052】即ち、上記励磁電流指令値I0 * と前記励
磁電流検出値I01を比較器C1 に入力し、偏差ε01=I
0 * −Io1を求める。当該偏差ε01を電流制御補償回路
G01(s)で増幅し、加減算器A3 を介してPWM制御
回路PWM1 に入力する。
【0053】I01* >I01となった場合、偏差ε01は正
の値となり、PWM制御回路PWM1 の入力信号ei1を
増加させる。故に、インバ―タINV1の出力電圧V11
が増えて、変圧器TR1 の励磁電流I01を増加させる。
【0054】逆に、I01* <I01となった場合、偏差ε
01は負の値となり、PWM制御回路PWM1 の入力信号
ei1を減少させる。故に、インバ―タINV1の出力電
圧V11が減って、変圧器TR1 の励磁電流I01は減少す
る。従って、Io1はI01* となるように制御される。変
圧器TR2 の励磁電流I02も同様に制御される。このよ
うにして、各変圧器TR1 ,TR2 の励磁電流が制御さ
れ、変圧器の直流偏磁を防止することができる。
【0055】励磁電流制御によって、負荷電流制御に多
少とも影響を与えるが、通常は、励磁電流制御のゲイン
を低めにし、負荷電流制御のゲインを高めにして干渉を
和らげることができる。同様に、3台以上のインバ―タ
の多重運転でも各出力変圧器の励磁電流を制御しながら
負荷電流を制御することができる。以上は単相出力のイ
ンバ―タについて説明したが、2相以上のPWMインバ
―タでも同様に実施できることは言うまでもない。
【0056】以上の励磁電流検出に際し、1次電流又は
2次電流検出値の補正をオンラインで行なったが、オフ
ラインで係数を補正することもできる。即ち、変圧器の
定格電圧、定格電流及び定格周波数付近で上記補正を行
ない、その補正係数を用いて励磁電流を検出するように
しても良い。オフラインで補正係数をkを決定した場
合、運転中はその設定値を変化させないで済む。そのた
め刻々と変化する電流検出値に基づいて励磁電流検出値
の位相各等を演算する必要がなくなり、運転中の演算時
間を短くできる利点がある。
【0057】また、オンラインで係数補正を行う場合、
すべての領域で補正するのでなく、例えば、定格電圧、
定格電流付近でのみ補正することもできることは言うま
でもない。
【0058】
【発明の効果】以上説明のように、本発明の変圧器の励
磁電流検出装置によれば、変圧器の励磁電流を精度良く
検出することが可能となり、正確な励磁電流制御がで
き、しかも、変圧器の直流偏磁を防止することが可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の変圧器の励磁電流検出装置の一実施例
を示す構成図。
【図2】[図1]の変圧器の励磁電流検出装置の動作を
説明するための電圧電流波形図。
【図3】[図1]の変圧器の励磁電流検出装置を構成す
る位相演算器の具体的実施例を示す構成図。
【図4】[図1]の変圧器の励磁電流検出装置の動作を
説明するための電圧、電流ベクトル図。
【図5】本発明の他の実施例を示す変圧器の励磁電流検
出装置の構成図。
【図6】[図5]に示す変圧器の励磁電流検出装置の動
作を説明するための電圧,電流ベクトル図。
【図7】本発明の他の実施例を示す変圧器の励磁電流検
出装置の構成図。
【図8】本発明の他の実施例を示す変圧器の励磁電流検
出装置の構成図。
【図9】従来の変圧器の励磁電流検出装置の構成図であ
る。
【符号の説明】
SUP ……交流電圧源、 TR,TR1 ,TR2 ……アノ―ドリアクト
ル、 LOAD ……交流負荷、 CT1 〜CT3 ……電流検出器、 K ……比例回路、 H ……係数補正器、 CAL,CAL1 ,CAL2 ……位相角演算器、 A,A1 〜A5 ……加減算器、 Vd ……直流電圧源、 PWM,PWM1 ,PWM2 ……パルス幅変調制御回
路、 C1 〜C3 ……比較器、 G0(s),G01(s) ,G02(s) ……励磁電流制御補償回
路、 GL (s) ……負荷電流制御補償回
路、 INV,INV1 ,INV2 ……インバ―タ、 CAL0 ……励磁電流指令演算
器。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 変圧器と、当該変圧器の1次及び2
    次電流を検出する電流検出器と、当該1次電流検出値と
    2次電流検出値から前記変圧器の励磁電流を演算する手
    段と、前記変圧器の磁束に対する励磁電流の位相角を求
    める手段と、当該位相角が零になるように前記励磁電流
    演算手段に用いられる前記1次電流検出値を補正する手
    段とを具備したことを特徴とする変圧器の励磁電流検出
    装置。
  2. 【請求項2】 前記励磁電流演算手段に用いられる
    前記1次電流検出値の補正をオフラインで行うようにし
    たことを特徴とする請求項1に記載の変圧器の励磁電流
    検出装置。
  3. 【請求項3】 変圧器と、当該変圧器の1次及び2
    次電流を検出する電流検出器と、当該1次電流検出値と
    2次電流検出値から前記変圧器の励磁電流を演算する手
    段と、前記変圧器の磁束に対する励磁電流の位相角を求
    める手段と、当該位相角が零になるように前記励磁電流
    演算手段に用いられる前記2次電流検出値を補正する手
    段とを具備したことを特徴とする変圧器の励磁電流検出
    装置。
  4. 【請求項4】 前記励磁電流演算手段に用いられる
    前記2次電流検出値の補正をオフラインで行うようにし
    たことを特徴とする請求項3に記載の変圧器の励磁電流
    検出装置。
  5. 【請求項5】 変圧器と、当該変圧器の1次及び2
    次電流を検出する電流検出器と、当該1次電流検出値と
    2次電流検出値から前記変圧器の励磁電流を演算する手
    段と、前記変圧器の磁束に対する励磁電流の位相角を求
    める手段と、当該位相角が零になるように前記励磁電流
    演算手段に用いられる前記1次電流検出値及び前記2次
    電流検出値を補正する手段とを具備したことを特徴とす
    る変圧器の励磁電流検出装置。
  6. 【請求項6】 前記励磁電流演算手段に用いられる
    前記1次電流検出値及び2次電流検出値の補正をオフラ
    インで行うようにしたことを特徴とする請求項5に記載
    の変圧器の励磁電流検出装置。
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