JPH0617389A - 可撓性のある複合撚合型抗張力条体及びその製造方法 - Google Patents

可撓性のある複合撚合型抗張力条体及びその製造方法

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JPH0617389A
JPH0617389A JP19627492A JP19627492A JPH0617389A JP H0617389 A JPH0617389 A JP H0617389A JP 19627492 A JP19627492 A JP 19627492A JP 19627492 A JP19627492 A JP 19627492A JP H0617389 A JPH0617389 A JP H0617389A
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strip
roll
resin
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Hiroshi Kimura
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Abstract

(57)【要約】 【目的】曲げ剛性が小さく可撓性に富み、軽量性と相乗
して搬送性や取扱性を向上することができ、また、コン
クリート部材や地中等の内部に曲線状に埋設されたパイ
プ中に容易に挿入することができるとともにその曲線状
態での緊張の用途に有効に用いることができる複合撚合
型抗張力条体とその製造法を提供することにある。 【構成】複数の素線を撚合した構造を有し、その素線が
高強度低伸度繊維に熱硬化性樹脂を含浸し硬化させた複
合抗張力条体において、該複合抗張力条体の構成素線が
互いに非接着状態にあり、複合抗張力条体の曲げ剛性が
構成素線の曲げ剛性を合計したものと略同等となってい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は構造物を構成する部材の
補強や、構造物の緊張支持などに使用されるのに好適な
可撓性のある複合撚合型抗張力条体に関する。
【0002】
【従来の技術】土木、建築などにおける抗張力補強部材
として、鉄筋や鋼より線が汎用されているが、近年で
は、高強度低伸度繊維に熱硬化性樹脂等を含浸、硬化し
て成形した種々の断面形状を有する複合抗張力材が開発
されている。これらの複合抗張力条体は、鋼より線に匹
敵する引張り強度と引張り弾性を有し、しかも軽量性、
耐蝕性、非磁性などの優れた特性を有しているため、鉄
筋や鋼より線に代替して、取付け作業、架設作業の省力
化、塩害対策、軽量長大構造物の支持、補強などの各種
用途に供されている。前記複合抗張力条体は、非撚合タ
イプと撚合タイプの2種があるが、いずれのタイプも樹
脂が硬化した後はその構造を変えることができないの
で、所定の断面形状に賦形する工程ないしは編組や撚り
合わせ工程は、樹脂硬化工程と同時かもしくはそれより
以前に行う必要がある。
【0003】たとえば、前者の代表例としてのロッド状
の抗張力体を得る場合には、樹脂槽に繊維集束体を導い
て浸漬するなどの方法で繊維に樹脂を含浸し、次いでを
ダイス等によりしごいて含浸樹脂量を調整し、しごかれ
た樹脂含浸繊維集束体を加熱された金型に導いて、賦形
と樹脂硬化を同時に行なう方法がとられる。また、後者
では、繊維を編組したり撚り合せた後に樹脂を含浸する
か、あるいは樹脂を含浸した後樹脂が未硬化の状態で編
組したり撚り合わせして所定構造にしてから、最終的に
熱処理工程で樹脂を硬化する方法がとられる。これら
は、特公昭57−25679号公報、特公昭62−18
679号公報に示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この場合、複合抗張力
条体の表面に繊維が露出していると、繊維の化学的劣化
が生じたり、擦れによって容易に繊維が毛羽立ち、それ
が原因となって機械的特性を低下させたりする。このた
め、含浸樹脂量の調整、さらに必要に応じて加えられる
樹脂塗布により、複合抗張力条体やこれを構成する線条
要素の表面は多かれ少なかれ樹脂層で覆われている。そ
して、このように表面に樹脂層がある状態で最後に熱処
理が施されるため、樹脂は隣接する複合抗張力体要素を
接着させた状態で硬化する。したがって、ロッドタイプ
の場合は勿論のこと、組紐や撚合体などの撚合タイプ構
造の場合にも素線相互の移動の自由がなく、ロッドタイ
プと同様に可撓性が低かった。ことに、高強度低伸度繊
維を使用し繊維そのものの伸びを期待できないため、き
わめて曲げの剛性が高く、いわゆる棒のような性状をし
ていた。
【0005】このような剛性が高いことは次のような問
題を生じさせていた。すなわち、複合抗張力条体の直径
が小さければ、1mないし2m程度のコイル径に巻くこ
とができるが、複合抗張力条体の直径が10〜15mm
あるいはそれ以上に大きくなると、これを巻取るには数
メートルにも及ぶ大きなコイル径にする必要があり、搬
送に支障をきたす。その対策として、車両の荷台の長さ
を上限として切断すれば、束状の荷姿で搬送することが
できるが、この長さを越える条長での使用が制約され、
連続性という本来の特性がうまく利用できなくなる。ま
た、可撓性に乏しいため、直線状での使用は問題がない
が、コンクリート部材や地中等の内部に曲線状に埋設さ
れたパイプ中に挿入するなどの曲線状態での緊張の用途
に適用することが困難となる。さらに、複合抗張力条体
の径が大きいためコイルからの反発力が増大し、取扱い
を誤ってコイル端を放すようなことがあると、コイルの
強い跳ね返り力によって作業者が危険にさらされるなど
安全面でも支障が生じていた。
【0006】本発明は前記のような問題点を解消するた
めに創案されたもので、その目的とするところは、曲げ
剛性が小さく可撓性に富み、軽量性と相乗して搬送性や
取扱性を向上することができ、また、コンクリート部材
や地中等の内部に曲線状に埋設されたパイプ中に容易に
挿入することができるとともにその曲線状態での緊張の
用途に有効に用いることができる複合撚合型抗張力条体
を提供することにある。 また、本発明の他の目的は、
上記特性の複合撚合型抗張力条体を簡単に製造すること
ができる方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明は、複数本の素線を撚合した構造を有し、その素
線が高強度低伸度繊維に熱硬化性樹脂を含浸しその樹脂
を硬化した形式の複合抗張力条体において、該複合抗張
力条体の構成素線が互いに非接着状態にあり、複合抗張
力条体の曲げ剛性が構成素線の曲げ剛性を合計したもの
と略同等となっている構成としたものである。また、本
発明は、高強度低伸度繊維に熱硬化性樹脂を含浸した複
合線条体を複数本撚合し、熱処理して含浸樹脂を硬化さ
せて複合抗張力条体を得た後、複合抗張力条体に曲げな
いしねじり等の機械的作用を加えることにより構成素線
間の接着を破壊させるようにしたものである。複合抗張
力条体に曲げないしねじり等の機械的作用を加える手段
としては好適にはロールが用いられ、複合抗張力条体を
走行させながら複合抗張力条体に曲げないしねじりを加
える。
【0008】
【作用】本発明の複合抗張力条体においては、構成素線
間の熱硬化性樹脂接着がなく素線同士が滑動することが
でき、複合抗張力条体の曲げ剛性が構成素線の曲げ剛性
を合計したものと略同等となっているため、曲げに対す
る反発力が低減され、製品をリール枠に巻いたり、ある
いは現地でリール枠から外して展開するときの作業性が
向上する。また、曲げ可能な曲率半径が小さくなるので
製品の巻き径を小さくでき、コンパクトな荷姿に製品を
梱包できるので、製品の搬送性が向上する。また、可撓
性に富むため、コンクリート部材や地中等の内部に曲線
状に埋設されたパイプ中に容易に挿入することができる
とともに、その曲線状態での緊張の用途に有効に用いる
ことができる。
【0009】
【実施例】以下本発明の実施例を添付図面に基づいて説
明する。図1と図2は本発明による可撓性のある複合撚
合型抗張力条体の一例を示している。Aは複合撚合型抗
張力条体、1は心用複合線条体、2は心用複合線条体の
回りに配置され撚り合わされた複数本の側用複合線条体
であり、この例では心用複合線条体1が1本、側用複合
線条体2が6本であり、1×7構造となっている。 前
記心用複合線条体1と側用複合線条体2は、それぞれ、
多数本の高強度低伸度繊維aに熱硬化性樹脂bを含浸
し、外周に被覆層cを設けたものからなっており、心用
複合線条体1と側用複合線条体2は撚り合わされた状態
で熱処理を施され、含浸樹脂は硬化している。
【0010】しかし、この時の状態は図3の如くであ
り、心用複合線条体1と側用複合線条体2との隣接領
域、および側用複合線条体2相互の隣接領域はそれぞれ
被覆層cの表面ににじみ出た薄い樹脂層b’によって接
着されている。このため、複合抗張力条体の可撓性は低
かったものである。このような状態となるのは次のよう
な理由による。すなわち、前記のような熱処理の工程に
おいて、含浸状態の熱硬化性樹脂は硬化する前段階で数
10ポイズ程度まで粘度が低下し、流動性を帯びた液体
になる。このため、毛細管現象により被覆層cに浸透
し、やがてこれの表面まで達して表層に樹脂層を形成し
ながら硬化する。このときに、複合線条体間にある樹脂
は互いに接着するからである。この表面の樹脂量は、樹
脂含浸量や被覆工程での被覆材料の張力を変えることな
どで調整することはできるが、最低限でも被覆層cが露
出しない程度の表面樹脂層を意図的に形成することが必
要であるため、接着現象は不可避的であった。
【0011】しかるに、本発明では、接着部としての熱
硬化性樹脂の樹脂層b’を機械的手法によって意図的に
破壊させるものであり、図2のように、心用複合線条体
1と側用複合線条体2との隣接領域、および側用複合線
条体2相互の隣接領域は、所定の撚り形態のまま摩擦接
触しているだけで、複合線条体は相互に滑動可能であ
り、複合撚合型抗張力条体Aの曲げ剛性は、心用複合線
条体1と側用複合線条体2の曲げ剛性を合計したものと
略同等となっている。
【0012】前記高強度低伸度繊維aとしては、炭素繊
維、炭化珪素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリビ
ニールアルコール繊維などが使用される。また、熱硬化
性樹脂bとしては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂など
が用いられる。被覆層cとしては、好適には繊維の巻き
付けであるが、これに代えて織布、不織布などで代表さ
れる多孔質テープをスパイラル状に巻き付けたものであ
ってもよい。これらの被覆材料としては、ポリエステ
ル、ポリアミド、アラミドなどの繊維を用いることがで
きる。さらに被覆層cとしては、前記材質の繊維による
編組体であってもよい。
【0013】次に本発明による複合撚合型抗張力条体の
製造方法について説明する。まず、心用複合線条体1と
側用複合線条体2を得る。次に、前記複合線条体のうち
少なくとも1本を心用複合線条体1とし、これのまわり
に側用複合線条体2を配して所定のピッチで撚り合わせ
ることによって、複合撚合体を得る。次に、複合撚合体
を熱処理し、心用複合線条体1と側用複合線条体2に含
浸されている未硬化または半硬化の熱硬化性樹脂を完全
に硬化させ、複合撚合型抗張力条体A’を得る。そし
て、本発明は、さらに複合撚合型抗張力条体A’を機械
的に曲げたりねじったりすることにより、複合線条体同
士が滑動できるように撚合体を構成している心用複合線
条体1と側用複合線条体2間および側用複合線条体2間
の接着を破壊する。
【0014】ここで、複合撚合型抗張力条体A’を得る
までの工程は任意であり、ことに心用複合線条体1と側
用複合線条体2を得る方法は任意である。たとえば、高
強度低伸度繊維aを撚合もしくは編組して繊維心を構成
し、それに熱硬化性樹脂を含浸し、次いで外周に乾燥粉
末剤をまぶし、その外周に被覆層をほどこしてもよい。
また、これに代えて、高強度低伸度繊維aのフィラメ
ント束に熱硬化性樹脂bを含浸し、このフィラメント束
(半硬化状態)を複数本撚合し、これの外周に被覆層cを
施して複合線条体1,2を得てもよい。後者の方法を詳
述すると、高強度低伸度繊維を平行に引き揃えたフィラ
メント束をリールから引き出して熱硬化性樹脂槽中に通
して含浸させ、プリプレグを形成する。そして、このプ
リプレグを賦形ダイスに導入して樹脂含浸量の調整とプ
レプレグ断面形状の整形をおこなう。次いでプリプレグ
を乾燥炉に通して短時間たとえば100℃×5分の条件
で乾燥し、熱硬化性樹脂を半硬化させ、リールに巻き取
る。次に、撚合装置のスタンドにプリプレグを巻収した
リールを所定数装着し、各リールから熱硬化性樹脂が半
硬化状態のプリプレグを引き出して一対の接合ロール間
に通し、下流側に配したリールで全プリプレグを一括し
て巻き取りつつ回転させ、それによって所定のピッチで
撚合する。このようにして得た複合ストランドは、次に
リールから引出し、ガイドローラを介して別のリールに
巻き取りつつ被覆を行う。この被覆は、材料が繊維やテ
ープの場合、移動経路に巻き付け機を配し、これから被
覆材料を繰り出しつつ巻き付け機を複合撚合体の回りで
旋回させ、複合撚合体の軸方向に対して直角に近い角度
で被覆材料を緻密に巻き付けるものである。なお、被覆
工程はプリプレグを撚合する過程で実施してもよい。
【0015】このようにして得た複合線条体1,2は図
4のようにリール10,20に巻かれており、それらリ
ール10,20は撚合装置4に装着され、複合線条体
1,2の撚り方向と反対方向で所定の撚り角にて撚合さ
れることによって1×7などの複合撚合体3となり、リ
ール21に巻き取られる。そして、図5のようにリール
21は熱処理装置5に配され、複合撚合体3はリール2
1から引き出され、熱処理装置5に通される。これによ
って複合撚合体3は加熱され、複合線条体1,2に含浸
している半硬化の熱硬化性樹脂が完全に硬化させられ、
複合撚合型抗張力条体A’となる。前記熱処理条件は1
30℃で90分などの一段処理でもよいし、100℃前
後で所定時間たとえば1時間、130℃前後で所定時間
たとえば1時間というような多段処理としてもよい。
【0016】複合撚合型抗張力条体A’は熱処理装置5
を通過したのちリール22に巻収されるが、本発明は、
このリール22に巻収される前のライン中に接着部破壊
装置6を設けるか、またはリール22に巻収した後の別
ラインに接着部破壊装置6を設け、隣接している各複合
線条体1,2の被覆層cの表面ににじみ出て接合しあっ
た薄い樹脂層b’を強制的に破壊するものである。接着
部破壊装置6による処理は一度に急激に行わず、数回に
わたって徐々に行なうことが好ましく、それによって、
複合抗張力条体の損傷や切断荷重等の機械的特性の低下
を避けることができる。
【0017】図6ないし図8は接着部破壊装置6とそれ
による処理状態の第1実施例を示している。この第1実
施例において、接着部破壊装置6はロール式である。詳
しくは、図8のように胴面に複合撚合型抗張力条体A’
の直径と同径ないしこれに近似した径の溝600を有
し、溝底径Dが複合撚合型抗張力条体A’の撚りピッチ
と同程度の構造を有する第1ロール60a,60b,6
0c,60dを、図6のように、長手方向に複合撚合型
抗張力条体の撚合ピッチの2〜3倍程度の間隔Lにとっ
て複数(この例では4個)直列状に配するとともに、これ
と同じ仕様の第2ロール61a,61b,61c,61
d,61eを前記第1ロール60a,60b,60c,
60dと長手方向で位相をずらせて複数個(この例では
5個)直列状に配置している。間隔Lを撚合ピッチの2
〜3倍程度にする理由は、曲げと同時に捩じりも有効的
に作用させためであり、ロール径を撚合ピッチとほぼ同
等にする理由は、機構上、ロール間隔Lの1/2以下で
なければならないからである。前記第1ロール60a,
60b,60c,60dと第2ロール61a,61b,
61c,61d,61eからなるロール対は、図7(a)
のように同一水平面上に配されてもよいし、図7(b)の
ように、上記第1ロールと第2ロールからなるロール対
62を複数組、直列にしかも曲げ方向が垂直と水平等の
2方向で交互となるように配置してもよい。また、場合
によっては図7(c)(d)のように、ロールの軸が順次偏向
していてもよい。
【0018】そして、図7(a)(b)では各対の第1ロール
と第2ロール60aと61a,60bと61b、60c
と61c、60dと61dはロール間隔Wを調整される
ことで引き抜き力が調整されるようになっている。図7
(c)(d)では偏向するロールの間隔を調整することで実現
される。この場合、複合撚合型抗張力条体A’の各複合
線条体1,2に過度の側圧が作用しないようにすべく、
ロール間隔Wを一様でなく、入側の軸間隔Wを大きく
(引き抜き力が緩やか)、出側の軸間隔Wを相対的に小さ
く(引き抜き力が大きく)なるようにすることが好まし
く、この条件下で複合撚合型抗張力条体A’をゆっくり
と一様な速度で引き抜くものである。このロール間隔W
の大きさはたとえば全部の組のロールでリニアに変化さ
せたり、入り側の2組のロールと出側の2組のロールを
変化させるなど種々にすることができる。この第1実施
例によれば、複合撚合型抗張力条体A’は各対のロール
の溝600を支点として図6において上方向と下方向に
交互に強制的に曲げられつつ引き抜かれる。それによっ
て複合撚合型抗張力条体A’を構成している複合線条体
1,2は曲げ応力が作用すると共に、撚合構造の故にね
じり応力も発生する。このような曲げ成分とねじり成分
の複合した応力が複数対のロールによって繰り返し与え
られるため、図3のように複合線条体1,2の各隣接域
を接着している樹脂層b’には有効に剪断応力が作用す
ることになり、しかも下流に向かうほど前記複合した応
力が増加するため、確実に接着樹脂層b’が剪断破壊さ
れ、図2のように全部の複合線条体1,2が独立した形
態の複合撚合型抗張力条体Aとなる。
【0019】次に図9ないし図11は本発明の接着部破
壊装置6とそれによる処理の第2実施例を示している。
この実施例においては、平行な2本の第1ロール軸62
aと第2ロール軸62bに、段階的に径を変えた複数個
の第1ロール60a〜60eと第2ロール61a〜61
eをそれぞれ装備させており、各々のロール60a〜6
0e,61a〜61eは独立して回転できるようになっ
ている。ロール数はこの例では5個ずつであるがこれに
限定されるものではなく、もっと多くても、少なくても
よい。各ロール60a〜60e,61a〜61eは、図
10に示されるようにやはり胴面に複合撚合型抗張力条
体A’の直径と同径ないしこれに近似した径の溝600
を有し、溝底径Dが複合撚合型抗張力条体A’の直径の
少なくとも33倍となっている。その理由は、複合撚合
型抗張力条体の素線の許容圧縮歪みが約1%であるた
め、7本撚り構成の複合撚合型抗張力条体の場合、素線
の曲げ歪みが1%以下となるようにするには、(d/3)
D≦0.01の関係で規定されるからである。溝底径D
は、ロール60a≒ロール61eとし、ロール61a>
60a>61b>60b>61c>60c>61d>6
0d>61eの関係となるようにすることが好ましい。
【0020】複合撚合型抗張力条体A’は図9と図11
のように、ロール61aの上から半周巻回されて下側か
ら左上がりに導かれてロール60aに到り、これを左半
周経由して下側から右上がりに導かれてロール61bの
右半周を巻回し、次いで下側から左上がりにロール60
bに導かれるというようにたすき掛け状に順次小径のロ
ールへと掛け回され、最後にロール60eの左半周を経
由して入線方向と平行状に引き出される。このときに、
引き側の張力を送り側の張力よりもやや高くするよう
に、ゆっくりと一様な速度で複合撚合型抗張力条体A’
を送るものである。 こうすれば、やはり複合撚合型抗
張力条体A’は機械的に曲げ成分とねじれ成分の複合し
た作用を受け、前記と同様に複合線条体1,2の各隣接
域を接着している樹脂層b’には有効に剪断応力が作用
することになり、確実に接着樹脂層b’が剪断破壊され
る。ロール数が多く、徐々にロール径が小さくなってい
るため複合撚合型抗張力条体Aに損傷を与えることなし
に徐々に複合線条体間の接着が剥離され、可撓性の付与
された複合撚合型抗張力条体Aを得ることができる。
【0021】第1実施例も第2実施例もロールによる処
理を複数回にわたって徐々に行うため側圧による複合撚
合型抗張力条体のつぶれや座屈などの損傷が生じず、切
断荷重などの機械的特性を維持することができる。な
お、第1実施例と第2実施例において、ロール材質を鋼
などの金属のほか、プラスチックやゴムなどとすれば、
面圧による損傷防止に効果的である。なお、接着部破壊
はロール式がインラインで連続的に行える点から効果的
であるが、それ以外にも、たとえば複合撚合型抗張力条
体A’の一方端を把持して回転しないように止め、他端
を回転してねじる方法も適用できる。さらには、横ゆれ
振動を与えて複合撚合型抗張力条体A’を弓状に繰返し
曲げる方法も適用できる。
【0022】次に本発明の具体例を示す。 〔具体例1〕直径7μm、フィラメント数12000本
を平行に引き揃えた炭素繊維のマルチフィラメントにエ
ポキシ樹脂を含浸し、賦形ダイスによって樹脂含浸量3
5重量%に調整し、100℃×5分の条件で半硬化状態
に乾燥し、プリプレグを形成した。このプリプレグを2
本撚合し、ついで、外周に4000デニールマルチフィ
ラメントのポリエステル繊維を密に巻き付け被覆し、複
合線条体とした。この複合線条体を用いて、1本を心
に、その周囲に6本を配して、ピッチ60mmで撚り合
せた。これを、100℃雰囲気で1時間、さらに130
℃で1時間熱処理してエポキシ樹脂を硬化し、外径5.
0mmの1×7構造を有する抗張力条体を得た。
【0023】次に、この複合抗張力条体を、図6に示す
ような鋼製ロール対に導いた。各ロール面には抗張力条
体の直径Rと同径の2R=5mmの溝を持ち、溝底径
(D)は50mmである。ロールは長手方向に90mm間
隔で固定し、第1ロールと第2ロールのロール間隔を調
整して、引抜き力を6kgfないし10kgfになるよ
うにした。このロール対を4組用い、図7(b)に示すよ
うに直列にしかも曲げ方向が垂直方向と水平方向に交互
となるように配置し、入り側の2つのロール対はいずれ
も引抜き力を6kgfとし、出側の2つのロール対はい
ずれも引抜き力を10kgfにして、ゆっくりと一様な
速度で引き抜いた。
【0024】可撓性を評価するため、長さ50cmの試
験片を採取し、2点支持中央点載荷方式による単純梁の
荷重、たわみの関係を適用して、曲げ剛性EIを測定し
た。その結果、ロール処理する前の複合抗張力条体の曲
げ剛性は、810kgf・cm2であったのに対し、ロ
ール処理したものは122kgf・cm2であった。すな
わち、曲げ剛性比でみると、ロール処理することで可撓
性が6.6倍向上した。前記複合抗張力条体を構成する
直径1.7mmの心素線(心用複合線条体)のみを取り出
し、その曲げ剛性を測定したところ17kgf・cm2
あった。すなわち、ロール処理したものの曲げ剛性は、
複合線条体の曲げ剛性の7.1倍であるので、ロール処
理したものの曲げ剛性は構成する7本の素線の曲げ剛性
の和にほぼ等しく、したがって、素線間の接着を有効に
剥離できていることが明らかである。
【0025】ロール処理による損傷の有無を調べるため
に、長さ1.6mの試験片を採取し、両端に定着加工を
して引張試験した。その結果、ロール処理する前の複合
抗張力条体の切断荷重は2100kgfであり、ロール
処理したものは2080kgfであった。すなわち、ロ
ール処理しても切断荷重の低下はなかった。また、両者
の弾性係数にも変化がなかった。なお、4つのロール対
をすべて引抜き力が10kgfになるように調整してロ
ール処理してみた。この場合にも上記と同様に可撓性の
向上がみられたが、切断荷重は1900kgfとなり、
約10%の強度低下が認められた。それは、入り側のロ
ール対において、ロールと接触している複合抗張力体の
素線に過度な側圧が作用して損傷したことによるもので
あり、したがって、入り側を緩やかにしたロール処理条
件にすることが好ましいといえる。
【0026】〔具体例2〕具体例1におけるプリプレグ
を15本撚合し、これに8000デニールマルチフィラ
メントのポリエステル繊維を密に巻き付け被覆し、複合
線条体とした。この複合線条体を用いて、1本を心に、
その周囲に6本を配して、ピッチ150mmで撚り合せ
た。これを、100℃雰囲気で1時間、さらに130℃
で1時間熱処理してエポキシ樹脂を硬化し、外径12.
5mmの撚合構造を有する抗張力体を得た。
【0027】次に、この複合抗張力条体を図9ないし図
11に示すような鋼製のロール対に導いた。このロール
対は段階的にロール径を変えた数個のロールを、平行し
て間隔をL=1,600mmとした2本の軸に設置して
ある。ロール面には複合抗張力条体の直径と同径の2R
=12.5mmの溝を有している。複合抗張力条体は図
9と図11に示すように、交叉してロールに巻き付け
た。このとき、巻き付けるロールの順を、溝底直径が8
50mm(図9の61a)のものから入線し、順次750mm
(図9の60a)、700mm(図9の61b)、650mm(図9の
60b)、600mm(図9の61c)、550mm(図9の60c)、
500mm(図9の61d)、470mm(図9の60d)、440
mm(図9の61e)、850mm(図9の60e)になるようにし
た。そして引き側の張力を送り側の張力よりやや高くす
ることで、ゆっくりと一様な速度でロール処理した。
【0028】ロール処理する前の複合抗張力条体は、構
成素線どうしが、実施例1と同様に素線表面にあるエポ
キシ樹脂で接着されているため、曲げ剛性は、1600
0kgf・cm2であった。これに対し、ロール処理した
ものは6500kgf・cm2であった。切断荷重は、ロ
ール処理する前が16000kgfであったのに対し、
ロール処理を行なったものは、16100kgfであっ
た。したがってロール処理による強度の低下は見られな
かった。また、両者の弾性係数はいずれも14000k
gf/mm2であり、差は認められなかった。この複合
抗張力条体を構成する直径4.2mmの心素線のみを取
り出して、その曲げ剛性を測定したところ、1000k
gf・cm2であった。したがって、ロール未処理のもの
の曲げ剛性は心素線の曲げ剛性の16倍であるのに対
し、ロール処理したものの曲げ剛性は心素線の曲げ剛性
の6.5倍である。すなわちロール処理したものの曲げ
剛性は、構成する7本の素線の曲げ剛性の和にほぼ等し
い。このことから、素線間の接着を有効に剥離できてい
ることは明らかである。
【0029】このロール処理において、650mmのロ
ールを通過した時点で採取したものの曲げ剛性は100
90kgf/cm2であった。また、550mmのロー
ルを通過した時点で採取したものの曲げ剛性は7600
kgf/cm2であった。ロール処理を、溝底直径が8
50mmのものから入線し、650mm、440mm、
850mmの順で行なった場合の切断荷重は、1460
0kgfであり、約9%の強度低下が認められた。この
時の曲げ剛性は7000kgf/cm2であった。この
強度低下の原因は、強引にロールで曲げたことにより複
合抗張力条体の素線の一部が座屈損傷したためであっ
た。このことからなるべく多くのロールを用いて、徐々
にロール径を小さくしていくことが好ましく、このよう
にすれば、複合抗張力体の損傷を発生することなく、徐
々に素線間の接着を破壊し、同時に可撓性が徐々に付与
され、最終的に、完全に素線間接着が剥離された、可撓
性のある複合抗張力体を得ることができることがわか
る。
【0030】
【発明の効果】以上説明した本発明によれば、高強度低
伸度繊維とマトリックスとして熱硬化性樹脂を用い、構
成素線が撚合した複合抗張力条体において、撚合構造を
構成している各素線間の接着を剥離し、素線どうしが滑
動できるようにしているため、曲げ剛性の小さいすなわ
ち可撓性のある複合抗張力体を得ることができる。各素
線間の接着が完全に破壊されているので、この可撓性付
与された複合抗張力体の曲げ剛性は構成する素線の曲げ
剛性の和にほぼ等しくなり、その軽量性と相乗して、巻
き取り径を著しく小さくできるため搬送、展開などの作
業を容易にすることができ、さらに長尺体としての使用
や曲率条件での使用が容易になるというすぐれた効果が
得られる。また、高強度低伸度繊維に熱硬化性樹脂を含
浸した複合線条体を複数本撚合し、熱処理して含浸樹脂
を硬化させて複合抗張力条体を得た後、複合抗張力条体
に曲げないしねじり等の機械的作用を加えることにより
構成素線間の接着を破壊させる方法をとっているため、
容易かつ安価に実施することができるというすぐれた効
果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による複合抗張力条体の一実施例を示す
部分切欠側面図である。
【図2】同じくその断面図である。
【図3】本発明による処理前の複合抗張力条体の断面図
である。
【図4】本発明における複合抗張力条体の撚合過程を例
示する説明図である。
【図5】本発明における熱処理工程と接着部破壊工程を
例示する説明図である。
【図6】本発明における接着部破壊工程の第1実施例を
示す平面図である。
【図7】本発明における接着部破壊工程の第1実施例を
示す説明図である。
【図8】第1実施例におけるロールの部分的側面図であ
る。
【図9】本発明における接着部破壊工程の第2実施例を
示す平面図である。
【図10】第2実施例におけるロールの部分的側面図で
ある。
【図11】本発明における接着部破壊工程の第2実施例
を示す正面図である。
【符号の説明】
A 複合撚合型抗張力条体 a 高強度低伸度繊維 b 熱硬化性樹脂 b’ 樹脂層 c 被覆層 1 心用複合線条体 2 側用複合線条体 6 接着部破壊装置

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数本の素線を撚合した構造を有し、その
    素線が高強度低伸度繊維に熱硬化性樹脂を含浸しその樹
    脂を硬化した形式の複合抗張力条体において、該複合抗
    張力条体の構成素線が互いに非接着状態にあり、複合抗
    張力条体の曲げ剛性が構成素線の曲げ剛性を合計したも
    のと略同等となっていることを特徴とする可撓性のある
    複合撚合型抗張力条体。
  2. 【請求項2】高強度低伸度繊維に熱硬化性樹脂を含浸し
    た複合線条体を複数本撚合し、熱処理して含浸樹脂を硬
    化させて複合抗張力条体を得た後、複合抗張力条体に曲
    げやねじり等の機械的作用を加えることにより構成素線
    間の接着を剪断破壊させることを特徴とする可撓性のあ
    る複合撚合型抗張力条体の製造方法。
  3. 【請求項3】複合抗張力条体に機械的作用を加える手段
    として複数の溝付きロールを用いる請求項2に記載の可
    撓性のある複合撚合型抗張力条体の製造方法。
  4. 【請求項4】溝付きロールが直列状に複数組配置され、
    構成素線間の接着がロールを通過する際に徐々破壊され
    るようになっている請求項3に記載の可撓性のある複合
    撚合型抗張力条体の製造方法。
  5. 【請求項5】溝付きロールが1対からなり、各対のロー
    ルが段階的に径を変えた複数個のロール群からなってお
    り、これらロール群に複合抗張力条体が掛け回されて引
    っ張られらることによって徐々に構成素線間の接着を剥
    離する請求項3に記載の可撓性のある複合撚合型抗張力
    条体の製造方法。
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