JPH06169241A - 短絡保護回路及び電力用ダーリントン・トランジスタ・モジュール - Google Patents

短絡保護回路及び電力用ダーリントン・トランジスタ・モジュール

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JPH06169241A
JPH06169241A JP5223391A JP22339193A JPH06169241A JP H06169241 A JPH06169241 A JP H06169241A JP 5223391 A JP5223391 A JP 5223391A JP 22339193 A JP22339193 A JP 22339193A JP H06169241 A JPH06169241 A JP H06169241A
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transistor
base
darlington
emitter
circuit
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Ikunori Takada
育紀 高田
Masaki Inoue
雅規 井上
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Mitsubishi Electric Corp
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Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電力用ダーリントン・トランジスタの”負荷
短絡破壊”を効果的に防止する。 【構成】 電力用ダーリントン・トランジスタ20の最
後段のベースBXとエミッタEの間の電位差が、保護用
バイポーラトランジスタ32のベース・エミッタ間順方
向電圧で決まる所定の電圧以上に高くなると、保護用バ
イポーラトランジスタ32がオンして、ダーリントン・
トランジスタ20の最前段のベース電流IB が最後段の
エミッタEへバイパスされるので、ダーリントン・トラ
ンジスタ20のコレクタ電流IC の過度の上昇が抑制さ
れ、”負荷短絡破壊”が防止される。 【効果】 前記電位差はダーリントン・トランジスタの
段数にも温度にも依存しないので、様々な段数のダーリ
ントン・トランジスタに対して、全使用温度範囲で所定
のバイパス動作を保障すべく短絡保護回路を設計するこ
とが容易である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電力用ダーリントン
・トランジスタの負荷短絡時の保護を行う短絡保護回路
と、この短絡保護回路を内蔵した電力用ダーリントン・
トランジスタ・モジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
<この発明の一般的な背景>電力用ダーリントン・トラ
ンジスタなどの電力用回路素子においては、負荷が短絡
したときに電力用回路素子が曝される動作条件、すなわ
ち電圧及び電流は、電力用回路素子の使用の可否を左右
する最も大きな要因である。特に、インバータに利用さ
れる電力用トランジスタにおいて負荷が短絡すると、当
該トランジスタには、電源電圧が印加された状態で定格
電流の4〜10倍の大きな電流が流れる。このとき、ト
ランジスタに印加される電力は、定格消費電力の100
0倍程度にも達する。従って、この短絡状態が持続され
れば、トランジスタは破壊に至る。この破壊は、”負荷
短絡破壊”と呼ばれており、一般にトランジスタの使用
の可否を左右する最大の要因の一つである。
【0003】実用的には、電力用トランジスタは、少な
くとも10〜20μsec以上持続する、負荷が短絡し
た状態(負荷短絡状態)に耐えることが要求される。こ
の期間の間にトランジスタの駆動回路が、負荷に流れる
電流の異常な増大を検出してトランジスタを遮断すべく
制御することができるので、トランジスタの破壊が免れ
得る。
【0004】”負荷短絡破壊”に関する試験のための回
路(試験回路)を図8に示す。この試験回路において、
測定対象としてのトランジスタ1のコレクタCとエミッ
タEに並列に、電源2及びコンデンサ3が接続されてい
る。トランジスタ1、電源2、及びコンデンサ3の間を
接続する配線は、極力短いことが肝要である。試験で
は、電源電圧VCCをある値に設定し、トランジスタ1の
ベース電流IB を30μsecの幅を有する単発のパル
スの形で供給して、トランジスタ1を瞬時の間導通(オ
ン)させる。そして、そのときのコレクタ電流IC の最
大値とコレクタ・エミッタ間電圧VCEとが測定される。
【0005】図9は、図8の試験回路を用いて、保護回
路を有しない従来のトランジスタ1を被測定サンプルと
して測定した結果を示すグラフである。3種類のベース
電流IB に対して、トランジスタ1が破壊に至るまで電
源電圧VCCを段階的に上昇させ、そのときのコレクタ電
流IC の最大値を測定した。図9における縦軸は、この
コレクタ電流IC の最大値を表している。図9において
×印はトランジスタ1の破壊点を表している。図9か
ら、ベース電流IB を小さくすると、同一のコレクタ・
エミッタ間電圧VCEに対してコレクタ電流IC が小さく
なり、その結果破壊に至るコレクタ・エミッタ間電圧V
CE(破壊電圧)が高くなることが分かる。
【0006】トランジスタの”負荷短絡破壊”は、トラ
ンジスタを構成する半導体チップの温度上昇が原因とな
る破壊モード(熱破壊モード)と、トランジスタへの印
加電力が特定の値になった瞬間に破壊する破壊モード
(電力破壊モード)の2種類に分類される(参考文献
1:H. Nishiumi et al.,”High Voltage High Power T
ransistor Modules for 440V AC Line Voltage Inverte
r Applications”,in Conference Record of IPEC-Toky
o 83,pp.297-305,1983)。図8に示した試験回路で
は、トランジスタ1には、30μsec程度のごく短い
時間に電力が印加されるので、図9に示される破壊点は
電力破壊モードに相応する。
【0007】”負荷短絡状態”での電力破壊モードの破
壊に対する強さ(破壊耐量)を改善する方法は、基本的
に過大なコレクタ電流IC が流れないように、コレクタ
電流IC を制限することであり、そのためには負荷短絡
時にベース電流IB を小さくすればよいことを、上述の
試験結果は示している。そのための具体的方法として、
コレクタ電流IC が大きくなるとベース・エミッタ間順
方向電圧VBEが高くなるというトランジスタの一般的な
性質を利用することができる。すなわち、適切に設定さ
れた基準電圧回路を設けて、この回路が供給する基準電
圧とトランジスタのベース・エミッタ間順方向電圧VBE
とを相互に比較して、ベース・エミッタ間順方向電圧V
BEの方が高くなればトランジスタのベース電流IB を低
減させることにより、過大なコレクタ電流IC を抑制す
ることができる。図10〜図12は、この方法に基づく
3種の具体例を示す。
【0008】<第1の従来例>図10に示す回路例で
は、トランジスタ5と分圧抵抗R1、R2で構成され、
電圧を一定値以下に維持する回路が、短絡保護回路6と
してダーリントン・トランジスタ4のベース(最前段の
ベース)Bとエミッタ(最後段のエミッタ)Eの間に介
挿されている。ダーリントン・トランジスタ4にはコレ
クタCとエミッタEの間にフリーホイールダイオード7
が並列に接続されている。例えば”負荷短絡”の場合の
ように定格電流の数倍の大きさのコレクタ電流IC (主
電流)が流れる状況においては、ダーリントン・トラン
ジスタ4のベース・エミッタ間順方向電圧が上昇する。
ベース・エミッタ間順方向電圧を分圧抵抗R1、R2で
分圧した電圧が、トランジスタ5のベース・エミッタ間
順方向電圧に達すると、ダーリントン・トランジスタ4
のベース電流IB がトランジスタ5へバイパスされ、ダ
ーリントン・トランジスタ4へ供給されるベース電流I
B が抑制される。その結果、ダーリントン・トランジス
タ4のコレクタ電流IC の過度な上昇が抑えられる。
【0009】<第2の従来例>図11に示す従来例で
は、図10における分圧抵抗R1、R2の代わりに、ト
ランジスタ5のベースとダーリントン・トランジスタ4
のベースBの間にダイオード8が介挿されている。短絡
保護回路6は、ダーリントン・トランジスタ4のベース
・エミッタ間順方向電圧が、ダイオード8の順方向閾電
圧の和とトランジスタ5のベース・エミッタ間順方向電
圧との総和を超えないように機能する。順方向に接続さ
れたダイオード8の代わりに、逆方向に接続されたツェ
ナーダイオードを使用しても同様の機能が得られる。ま
た、順方向のダイオードと逆方向のツェナーダイオード
とを直列に接続した回路で、ダイオード8を置き換えて
も同様の機能が得られる。
【0010】<第3の従来例>図12に示す従来例で
は、ダーリントン・トランジスタ4のエミッタEとエミ
ッタ側の出力端子EEとの間に抵抗10が介挿され、ダ
ーリントン・トランジスタ4のベースBと出力端子EE
の間に、ダイオード9がダーリントン・トランジスタ4
と並列に介挿される。ダーリントン・トランジスタ4の
コレクタ電流ICが増大し、ベース・エミッタ間順方向
電圧がダイオード9の順方向閾電圧の和よりも高くなる
と、ダーリントン・トランジスタ4のベース電流IB
ダイオード9へバイパスされる。ダイオード9の順方向
閾電圧を適切に調整することは一般に困難であるが、ダ
ーリントン・トランジスタ4のコレクタ電流IC が増大
すると、これに比例して抵抗10の両端電圧が増大する
ので、この従来例ではダイオード9の順方向閾電圧の選
択の幅を広くとることができる。この従来例において
も、順方向に介挿されるダイオード9を、逆方向に介挿
されるツェナーダイオードで置き換えてもよく、更に順
方向のダイオードと逆方向のツェナーダイオードの直列
回路で置き換えてもよい。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の従来の技術は以下に示すような問題点を有している。
【0012】<第1の従来例における問題点>第1の従
来例では、トランジスタ5が有する電流増幅率hFEに相
応したベース電流を、トランジスタ5へ十分に供給する
ためには、分圧抵抗R1、R2の値を相当に低く設定す
る必要がある。分圧抵抗R1、R2の値が低いと、図1
0に示す回路におけるベース電流IB を大きくする必要
があり、当該回路を駆動するために大きな電力を必要と
するので、当該回路を駆動する駆動装置(図示を略す
る)が高価になるという問題点があった。
【0013】また、この従来例の回路を例えばインバー
タに応用した場合には、フリーホイールダイオード7に
還流電流が流れる動作期間が生じる。この期間に、ダー
リントン・トランジスタ4を遮断(オフ)するために、
ダーリントン・トランジスタ4のベースBとエミッタE
の間に逆バイアス電圧を加えると、トランジスタ5は逆
接続トランジスタとして動作する。すなわち、分圧抵抗
R2を通じてトランジスタ5のベース電流が供給され、
トランジスタ5のエミッタ〜トランジスタ5のコレクタ
〜ダーリントン・トランジスタ4のベースB〜ダーリン
トン・トランジスタ4のコレクタCという経路に沿って
電流が流れる。この電流は主電流IC に比べれば微弱で
あるが、高速でスイッチングを行うインバータでは、容
易にダーリントン・トランジスタ4を破壊するという問
題点があった。なぜならば、ダーリントン・トランジス
タ4は、フリーホイールダイオード7に還流電流が流れ
る動作期間の直後に電源電圧が急峻に印加される状況に
曝され、このときに微小であっても素子の内部に電荷が
残留していれば、その電荷が倍増された電流が流れるた
めである(参考文献1)。
【0014】<第2の従来例における問題点>第2の従
来例は、ダイオード8の順方向閾電圧の和を適切な大き
さに選択するのが困難であるという問題点を有してい
た。しかも、この選択は装置の使用温度範囲である室温
から125゜Cの温度範囲に対応して行われる必要があ
るために、一層困難である。また、段数の異なるダーリ
ントン・トランジスタ毎に、ダイオード8の選定を行う
必要があるという問題点があった。更に、トランジスタ
5のベースのインピーダンスが高いために、発振が起こ
り易いという問題点もあった。これを防止する対策とし
ては、トランジスタ5のベースとエミッタの間に抵抗を
接続することが一般的である。しかしながら、そうすれ
ば第1の従来例におけると同様に残留電荷が発生するた
めに、この従来例の回路はインバータには応用できない
という問題点があった。
【0015】<第3の従来例における問題点>第3の従
来例では、抵抗10が設けられているためにダイオード
9の順方向閾電圧の調整が比較的容易であるとはいえ、
上記の使用温度範囲にわたって適切な値に設定するのは
容易ではないという問題点があった。また、抵抗10に
は主電流IC が流れるので、抵抗10は余分な電力損失
をもたらすという問題点があった。
【0016】<この発明の目的>この発明は、ダーリン
トン・トランジスタの駆動電力を低くすることができ、
ダーリントン・トランジスタを破壊することなくインバ
ータに応用することができ、全使用温度範囲にわたって
所定の動作を容易に実現し得て、異なる段数を有するダ
ーリントン・トランジスタ毎に素子の選定を行う必要が
なく、発振現象が起こりにくく、かつ余分な電力損失の
ない電力用ダーリントン・トランジスタの”負荷短絡破
壊”を防止する短絡保護回路と、この短絡保護回路を内
蔵した電力用ダーリントン・トランジスタ・モジュール
を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】この発明に係る請求項1
に記載の短絡保護回路は、複数段に組み込まれた複数の
トランジスタを有する電力用ダーリントン・トランジス
タの負荷短絡時の保護を行う短絡保護回路であって、
(a)前記ダーリントン・トランジスタの最前段のベー
スと最後段のエミッタとに結合して設けられ、前記ベー
スと前記エミッタの間を導通させる放電経路と、(b)
前記放電経路に介挿され、前記ダーリントン・トランジ
スタの最後段のベースとエミッタの間の電位差が所定の
値以上に高いときに、前記放電経路を実質的に導通させ
る制御手段と、を備える。
【0018】この発明に係る請求項2に記載の短絡保護
回路は、請求項1に記載の短絡保護回路であって、前記
制御手段が、(b−1)前記放電経路に介挿された保護
用バイポーラトランジスタであって、当該保護用バイポ
ーラトランジスタのコレクタが前記ダーリントン・トラ
ンジスタの最前段のベースに結合され、前記保護用バイ
ポーラトランジスタのエミッタが前記ダーリントン・ト
ランジスタの最後段のエミッタに結合され、前記保護用
バイポーラトランジスタのベースが前記ダーリントン・
トランジスタの最後段のベースに結合された保護用バイ
ポーラトランジスタと、(b−2)前記放電経路に、前
記保護用バイポーラトランジスタの順方向コレクタ電流
が順方向電流となる方向に介挿されるダイオードと、を
備える。
【0019】この発明に係る請求項3に記載の短絡保護
回路は、請求項1に記載の短絡保護回路であって、前記
制御手段が、(b−1)前記放電経路に介挿された保護
用MOS型FETであって、当該保護用MOS型FET
のドレインが前記ダーリントン・トランジスタの最前段
のベースに結合され、前記保護用MOS型FETのソー
スが前記ダーリントン・トランジスタの最後段のエミッ
タに結合され、前記保護用MOS型FETのゲートが前
記ダーリントン・トランジスタの最後段のベースに結合
された保護用MOS型FETと、(b−2)前記放電経
路に、前記保護用MOS型FETの順方向ドレイン電流
が順方向電流となる方向に介挿されるダイオードと、を
備える。
【0020】この発明に係る請求項4に記載の短絡保護
回路は、請求項1に記載の短絡保護回路であって、前記
制御手段が、(b−1)前記放電経路に介挿され、当該
放電経路のインピーダンスを制御するインピーダンス変
成手段と、(b−2)所定の基準電圧を供給する基準電
圧発生手段と、(b−3)前記ダーリントン・トランジ
スタの最後段のベースとエミッタの間の電位差と前記基
準電圧発生手段で供給される前記基準電圧とを比較し、
前記電位差が前記基準電圧よりも高ければ、前記インピ
ーダンス変成手段へ前記インピーダンスを低減させるべ
く指示する比較手段と、を備える。
【0021】この発明に係る請求項5〜請求項8に記載
の電力用ダーリントン・トランジスタ・モジュールは、
電力用ダーリントン・トランジスタに請求項1〜請求項
4に記載の短絡保護回路をそれぞれ組み込んだ構成を有
する。
【0022】この発明に係る請求項9に記載の電力用ダ
ーリントン・トランジスタ・モジュールは、請求項5に
記載の電力用ダーリントン・トランジスタ・モジュール
であって、前記電力用ダーリントン・トランジスタが1
個のチップに集積化されている。
【0023】
【作用】この発明に係る短絡保護回路及び電力用ダーリ
ントン・トランジスタ・モジュールでは、電力用ダーリ
ントン・トランジスタの最後段のベースとエミッタの間
の電位差が参照され、この電位差が所定の値以上に高く
なると、ダーリントン・トランジスタの最前段のベース
電流が最後段のエミッタへバイパスする。このことによ
り、ダーリントン・トランジスタのコレクタ電流が過度
に上昇することが防止される(請求項1〜請求項8)。
【0024】この発明に係る短絡保護回路及び電力用ダ
ーリントン・トランジスタ・モジュールでは、電力用ダ
ーリントン・トランジスタの最後段のベースとエミッタ
の間の電位差が保護用バイポーラトランジスタのベース
・エミッタ間順方向電圧で決まる所定の電圧以上に高く
なると、保護用バイポーラトランジスタがオンして、ダ
ーリントン・トランジスタの最前段のベース電流が最後
段のエミッタへバイパスされる。このことにより、ダー
リントン・トランジスタのコレクタ電流が過度に上昇す
ることが防止される(請求項2及び請求項6)。
【0025】この発明に係る短絡保護回路及び電力用ダ
ーリントン・トランジスタ・モジュールでは、電力用ダ
ーリントン・トランジスタの最後段のベースとエミッタ
の間の電位差が、保護用MOS型FETのゲート・ソー
ス間の閾電圧で決まる所定の電圧以上に高くなると、保
護用MOS型FETがオンして、ダーリントン・トラン
ジスタの最前段のベース電流が最後段のエミッタへバイ
パスされる。このことにより、ダーリントン・トランジ
スタのコレクタ電流が過度に上昇することが防止される
(請求項3及び請求項7)。
【0026】この発明に係る短絡保護回路及び電力用ダ
ーリントン・トランジスタ・モジュールでは、電力用ダ
ーリントン・トランジスタの最後段のベースとエミッタ
の間の電位差が基準電圧と比較され、この電位差の方が
基準電圧に比べて高ければ、ダーリントン・トランジス
タの最前段のベースと最後段のエミッタの間のインピー
ダンスが低減させられるので、ダーリントン・トランジ
スタの最前段のベース電流が最後段のエミッタへバイパ
スする。このことにより、ダーリントン・トランジスタ
のコレクタ電流が過度に上昇することが防止される(請
求項4及び請求項8)。
【0027】この発明に係る電力用ダーリントン・トラ
ンジスタ・モジュールでは、電力用ダーリントン・トラ
ンジスタが1個のチップに集積化されているので、モジ
ュールの特性の均一性および信頼性が向上するととも
に、モジュールの製造工程を単純化し得る(請求項
9)。
【0028】
【実施例】
[1.ダーリントン・トランジスタの特性] <実測データ>図2は、定格電圧及び定格電流がそれぞ
れ1200V及び75Aである電力用ダーリントン・ト
ランジスタの一例の回路図である。このダーリントン・
トランジスタ20は、4段に組み込まれた4個のトラン
ジスタ21a〜21dを有している。最前段のトランジ
スタ21aのベース電流、すなわちダーリントン・トラ
ンジスタ20のベース電流IB に応答して、コレクタ電
流IC が流れる。コレクタ電流IC は、主として最後段
のトランジスタ21dのコレクタ電流によって分担され
ている。
【0029】各トランジスタ21a〜21dのベースと
エミッタの間には、発振防止のための抵抗22a〜22
dが接続されている。またトランジスタ21a〜21c
のベースとエミッタの間には、トランジスタ・モジュー
ルのオフを速める目的で、スピードアップダイオード2
3a〜23cが更に接続されている。ダーリントン・ト
ランジスタ20のコレクタCとエミッタEの間、すなわ
ち最後段のトランジスタ21dのコレクタとエミッタの
間には、還流電流によるダーリントン・トランジスタ2
0の破壊を防止するために、還流電流をバイパスさせる
ためのフリーホイールダイオード24が接続されてい
る。
【0030】図3は図2に回路図を示したダーリントン
・トランジスタ20の特性に関する測定を実行して得た
データを示すグラフである。実測は、異なる2種類の温
度下においてベース電流IB を段階的に変化させたとき
のコレクタ電流IC 、ベース・エミッタ間順方向電圧V
BE、および最後段のトランジスタ21dのベース・エミ
ッタ間順方向電圧VBXE に関して行われた。全ての実測
を通じて、コレクタ・エミッタ間電圧VCEは400Vに
設定された。図3において、丸印はベース・エミッタ間
順方向電圧VBEに関する実測データ、三角印はベース・
エミッタ間順方向電圧VBXE に関する実測データを表し
ており、更にそれぞれの白抜きは室温(25゜C)下で
の実測データ、黒塗りは高温(125゜C)下での実測
データを表している。
【0031】図3は、ダーリントン・トランジスタ20
のコレクタ電流IC とベース・エミッタ間順方向電圧V
BEの間、コレクタ電流IC とベース・エミッタ間順方向
電圧VB XEの間にはともに、明瞭な対応関係が存在する
ことを示している。すなわち、コレクタ電流IC の増加
に伴って、ベース・エミッタ間順方向電圧VBE、及びベ
ース・エミッタ間順方向電圧VBXE はともに増加する。
図3は更に、コレクタ電流IC とベース・エミッタ間順
方向電圧VBEの間の関係は温度に強く依存しているが、
一方コレクタ電流IC とベース・エミッタ間順方向電圧
BXE の間の関係は、温度に殆ど依存しないという重要
な事実を示している。
【0032】一般にダイオードの順方向閾電圧、ツェナ
ーダイオードのツェナー電圧、及びトランジスタのベー
ス・エミッタ間順方向電圧は、いずれも温度依存性を有
している。また、短絡保護回路が設置される位置はダー
リントン・トランジスタが設置される位置とは一般に異
なるので、短絡保護回路における温度とダーリントン・
トランジスタにおける温度との間の関係は複雑である。
前述の従来例1〜従来例3の技術では、使用温度範囲の
全域にわたってダーリントン・トランジスタのベース・
エミッタ間順方向電圧VBEに適応すべく、分圧抵抗R
1、R2、又はダイオード8、9を選択するのは困難で
ある。
【0033】<この発明の基本的特徴>これに対して、
この発明の技術では、最終段のトランジスタ21dのベ
ース・エミッタ間順方向電圧VBXE に基づいて、コレク
タ電流IC が調整される。従って、この発明の技術にお
いては、使用温度範囲の全域にわたるコレクタ電流IC
の調整が適切かつ容易に行われる。
【0034】また、ベース・エミッタ間順方向電圧VBE
は、ダーリントン・トランジスタの段数が変わると、そ
れに伴って大きく変わる。したがって、前述の従来例の
技術では段数の異なる製品毎に、短絡保護回路に使用す
る素子の選定を行う必要があった。これに対して、この
発明の技術では最終段のトランジスタのベース・エミッ
タ間順方向電圧VBXE を参照してコレクタ電流IC の調
整を行うので、使用する素子の選定はダーリントン・ト
ランジスタの段数に依存しない。これらの結果、この発
明の技術では、短絡保護回路の設計及び製造が大幅に簡
略化され、設計及び製造のコストが低減される。
【0035】[2.第1の実施例] <回路の構成>図1はこの発明の第1の実施例を示す回
路図である。この実施例は、図2に示したダーリントン
・トランジスタ20に、短絡保護回路30が組み込まれ
た電力用ダーリントン・トランジスタ・モジュールであ
る。短絡保護回路30には、ダーリントン・トランジス
タ20のベースBとエミッタEとに結合して、これらの
間を導通させる経路である放電経路31が設けられ、互
いに直列に接続された保護用バイポーラトランジスタ3
2とショットキーバリアダイオード33とが、放電経路
31に介挿される形で更に設けられている。すなわち、
保護用バイポーラトランジスタ32のコレクタはダーリ
ントン・トランジスタ20のベースBに結合され、保護
用バイポーラトランジスタ32のエミッタはショットキ
ーバリアダイオード33を介してダーリントン・トラン
ジスタ20のエミッタEに結合されている。ショットキ
ーバリアダイオード33は、保護用バイポーラトランジ
スタ32の順方向コレクタ電流が順方向電流となる方向
に配置されている。保護用バイポーラトランジスタ32
のベースは、抵抗34を介して最後段のトランジスタ2
1dのベースBXに接続されている。
【0036】<回路の動作>次にこの実施例の回路の動
作について説明する。ダーリントン・トランジスタ20
のコレクタCに接続される負荷(図示しない)が短絡す
るなどにより、コレクタ電流IC が増加すると、図3の
グラフに示したように、それに応じてトランジスタ21
dのベース・エミッタ間順方向電圧VBXE が高くなる。
ベース・エミッタ間順方向電圧VBXE が、ショットキー
バリアダイオード33の順方向閾電圧とバイポーラトラ
ンジスタ32のベース・エミッタ間順方向電圧の和以上
に高くなると、バイポーラトランジスタ32がオンす
る。バイポーラトランジスタ32がオンすると、ダーリ
ントン・トランジスタ20のベース電流IB が放電経路
31、保護用バイポーラトランジスタ32及びショット
キーバリアダイオード33を経由して、ダーリントン・
トランジスタ20のエミッタEへバイパスされる。その
結果、最前段のトランジスタ21aのベースへ供給され
るベース電流が制限されるので、コレクタ電流IC のそ
れ以上の増加が抑制される。
【0037】適切な順方向閾電圧を有するショットキー
バリアダイオード33を選択して使用することにより、
コレクタ電流IC の上限値を要求に応じて任意に設定す
ることができる。ショットキーバリアダイオード33の
製造方法を適宜変えることにより、様々な順方向閾電圧
を有するショットキーバリアダイオード33を得ること
が可能である。
【0038】ショットキーバリアダイオード33は、コ
レクタ電流IC の上限値を任意の値への設定を可能にす
るだけではなく、ダーリントン・トランジスタ20をイ
ンバータにも応用することをも可能にしている。すなわ
ち、ダーリントン・トランジスタ20のベースBとエミ
ッタEの間に逆バイアス電圧が加えられたときに、バイ
ポーラトランジスタ32の逆方向のコレクタ電流がショ
ットキーバリアダイオード33によって阻止される。こ
のため、ダーリントン・トランジスタ20に残留電荷が
蓄積されないので、ダーリントン・トランジスタ20が
残留電荷の増倍作用によって破壊することがない。この
ため、この実施例の回路はインバータに応用することが
可能である。
【0039】更にこの実施例の回路では、ダーリントン
・トランジスタ20のベースBとエミッタEの間に抵抗
が並列に接続されないので、ダーリントン・トランジス
タ20の駆動電力を低くすることができ、駆動回路を安
価に構成し得る。更にダーリントン・トランジスタ20
のコレクタ電流IC の経路に抵抗を介挿する必要がない
ので、余分な電力損失がないという利点がある。
【0040】<回路の特性の実測データ>図4は、図1
の回路について特性を実証する試験を行って得られた実
測データを示すグラフである。試験では、被試験回路に
短絡保護回路30がある場合とない場合のそれぞれにつ
いて、通常の使用条件に対応する一定の大きさ(50m
A)のベース電流IB が流れる条件の下で、コレクタC
とエミッタEの間の電圧VCEを段階的に上昇させた。そ
して、各コレクタ・エミッタ間電圧VCEに対するコレク
タ電流IC を計測した。
【0041】図4が示すように、短絡保護回路30がな
い場合には、コレクタ電流IC はコレクタ・エミッタ間
電圧VCEの上昇に伴って際限なく上昇し、VCE=640
Vに達したときに、IC =640Aのコレクタ電流が流
れ、ダーリントン・トランジスタ20は破壊に至った。
一方、短絡保護回路30がある場合には、コレクタ・エ
ミッタ間電圧VCEが上昇しても、コレクタ電流IC はあ
る値(約200A)を超えないように抑制されている。
コレクタ・エミッタ間電圧VCEが780Vに達しても、
なおダーリントン・トランジスタ20は破壊しなかっ
た。
【0042】なお図4は、室温下での試験によって得ら
れたデータを示しているが、高温(125゜C)下での
試験においても、上記の値とほぼ同一の値を超えないよ
うにコレクタ電流IC を抑制することができた(図示を
省略する)。以上のように、この実施例の回路において
は、全使用温度範囲にわたって短絡保護回路30が有効
に作用し、かつその特性が温度に余り依存しないことが
実証された。
【0043】[3.第2の実施例] <回路の構成>図5はこの発明の第2の実施例を示す回
路図である。この実施例は、図2に示したダーリントン
・トランジスタ20に、短絡保護回路40が組み込まれ
た電力用ダーリントン・トランジスタ・モジュールであ
る。短絡保護回路40には、ダーリントン・トランジス
タ20のベースBとエミッタEとに結合して、これらの
間を導通させる経路である放電経路41が設けられ、互
いに直列に接続された保護用MOS型FET42とダイ
オード43とが、放電経路41に介挿される形で更に設
けられている。すなわち、保護用MOS型FET42の
ドレインはダーリントン・トランジスタ20のベースB
に結合され、保護用MOS型FET42のソースはダイ
オード43を介してダーリントン・トランジスタ20の
エミッタEに結合されている。ダイオード43は、保護
用MOS型FET42の順方向ドレイン電流が順方向電
流となる方向に配置されている。保護用MOS型FET
42のゲートは、抵抗44を介して最後段のトランジス
タ21dのベースBXに接続されている。また、このゲ
ートとダーリントン・トランジスタ20のエミッタEの
間には、抵抗45が並列に接続されている。
【0044】<回路の動作>次にこの実施例の回路の動
作について説明する。ダーリントン・トランジスタ20
のコレクタ電流IC が増加し、それに応じてトランジス
タ21dのベース・エミッタ間順方向電圧VBXE が、ダ
イオード43の順方向閾電圧とMOS型FET42のゲ
ート・ソース間閾電圧の和以上に高くなると、MOS型
FET42がオンする。MOS型FET42がオンする
と、ダーリントン・トランジスタ20のベース電流IB
が放電経路41、MOS型FET42及びダイオード4
3を経由して、ダーリントン・トランジスタ20のエミ
ッタEへバイパスされる。その結果、最前段のトランジ
スタ21aのベースへ供給されるベース電流が制限され
るので、コレクタ電流IC のそれ以上の増加が抑制され
る。
【0045】MOS型FET42のチャネル領域の濃
度、ゲート酸化膜の厚さ等を調整することにより、ゲー
ト・ソース間閾電圧を適切に設定するか、あるいは適切
な順方向閾電圧を有するダイオード43を選択して使用
することにより、コレクタ電流IC の上限値を要求に応
じて任意に設定することができる。ダイオード43に
は、例えばショットキーバリアダイオードを用いること
ができる。
【0046】ダイオード43は、第1の実施例における
ショットキーバリアダイオード33と同様に、ダーリン
トン・トランジスタ20が残留電荷の増倍作用によって
破壊することを防止する機能を果たしている。このた
め、この実施例の回路はインバータに応用することが可
能である。
【0047】更にこの実施例の回路では、第1の実施例
の回路におけると同様に、ダーリントン・トランジスタ
20のベースBとエミッタEの間に抵抗が並列に接続さ
れないので、ダーリントン・トランジスタ20の駆動電
力を低くすることができ、駆動回路を安価に構成し得
る。更にダーリントン・トランジスタ20のコレクタ電
流IC の経路に抵抗を介挿する必要がないので、余分な
電力損失がないという利点がある。
【0048】[4.第3の実施例] <回路の構成>図6はこの発明の第3の実施例を示す回
路図である。この実施例は、図2に示したダーリントン
・トランジスタ20に、短絡保護回路50が組み込まれ
た電力用ダーリントン・トランジスタ・モジュールであ
る。短絡保護回路50には、ダーリントン・トランジス
タ20のベースBとエミッタEとに結合して、これらの
間を導通させる経路である放電経路51が設けられ、イ
ンピーダンス変成器(インピーダンス変成手段)52が
放電経路51に介挿される形で更に設けられている。イ
ンピーダンス変成器52にはコンパレータ(比較手段)
53の出力信号が入力されている。コンパレータ53の
2つの入力端子の1つには、抵抗55を介してトランジ
スタ21dのベースBXが接続されており、他の1つに
は基準電源(基準電圧発生手段)54から供給される基
準電圧が入力されている。短絡保護回路50は集積回路
で構成される。
【0049】<回路の動作>次にこの実施例の回路の動
作について説明する。コンパレータ53は、トランジス
タ21dのベース・エミッタ間順方向電圧VBXE と基準
電源54から供給される基準電圧とを比較する。ダーリ
ントン・トランジスタ20のコレクタ電流IC が増加
し、それに応じてトランジスタ21dのベース・エミッ
タ間順方向電圧VBXE が基準電圧以上に高くなると、コ
ンパレータ53はインピーダンス変成器52に所定の信
号を送信する。インピーダンス変成器52は、この信号
に基づいて、放電経路51のインピーダンス、言い替え
るとダーリントン・トランジスタ20のベースBとエミ
ッタEの間のインピーダンスを低減させる。このインピ
ーダンスが低減されると、ダーリントン・トランジスタ
20のベース電流IB が放電経路51、インピーダンス
変成器52を経由して、ダーリントン・トランジスタ2
0のエミッタEへバイパスされる。その結果、最前段の
トランジスタ21aのベースへ供給されるベース電流が
制限されるので、コレクタ電流IC のそれ以上の増加が
抑制される。
【0050】基準電源54が供給する基準電圧を要求に
応じて適切に設定することにより、コレクタ電流IC
上限値を要求に応じて任意に設定することができる。更
にこの実施例の回路では、ダーリントン・トランジスタ
20のコレクタ電流IC の経路に抵抗を介挿する必要が
ないので、余分な電力損失がないという利点がある。
【0051】前述の第1の実施例の回路では、バイポー
ラトランジスタ32によってバイパスされるベース電流
B は、バイポーラトランジスタ32の電流容量と、電
流増幅率によって制限され、これらが相当に大きくない
と段数の低いダーリントン・トランジスタには適用でき
ないという問題がある。しかしながら、この実施例の回
路では、基準電圧とベース・エミッタ間順方向電圧V
BXE との差を増幅する機構を集積化することができる。
このため、この実施例の回路は上述の制限を取り去るこ
とができ、段数の低いダーリントン・トランジスタにも
適用できる利点がある。
【0052】[5.変形例] (1)図7に示すように、第1の実施例において、バイ
ポーラトランジスタ32のベースとエミッタの間に抵抗
35を接続することができる。これによって、バイポー
ラトランジスタ32の発振を防止することができる。こ
の場合にも、バイポーラトランジスタ32の逆方向のコ
レクタ電流は流れないので、ダーリントン・トランジス
タ20が残留電荷の増倍作用で破壊する恐れはない。 (2)この発明は、4段のトランジスタが組み込まれた
ダーリントン・トランジスタ20に限らず、他の段数の
ダーリントン・トランジスタについても適用できる。 (3)ダーリントン・トランジスタ20は、1個の半導
体チップに集積回路として組み込んでもよい。図13
は、図1に示した第1の実施例の電力用ダーリントン・
トランジスタ・モジュールにおいて、ダーリントン・ト
ランジスタ20を集積回路とした例を示す回路図であ
る。図13において、点線で囲まれた回路部分200
が、1チップに集積化されている。この例では、集積回
路200は、トランジスタ21a〜21dと、これらの
トランジスタ21a〜21dのベース・エミッタ間に並
列に介挿される抵抗とを含んでいる。これらの回路素子
を集積回路化することによって、電力用ダーリントン・
トランジスタ・モジュールを製造する工程を簡略化し得
るとともに、特性の均一性および信頼性が向上する。全
ての回路要素、すなわち集積回路200、スピードアッ
プダイオード23a〜23c、フリーホイールダイオー
ド24、バイポーラトランジスタ32、ショットキーバ
リアダイオード33、および抵抗34が、1つのパッケ
ージに組み込まれることによって、モジュールが構成さ
れている。
【0053】図14は、図13に示した電力用ダーリン
トン・トランジスタ・モジュールの回路基板の平面図で
あって、このモジュールにおける回路要素の配列および
配線パターンを示している。回路基板には、ダーリント
ン・トランジスタ20のコレクタCに接続されるコレク
タ配線パターンPC、接続ワイヤWを介してエミッタE
に接続されるエミッタ配線パターンPE、接続ワイヤW
を介してベースBに接続されるベース配線パターンP
B、およびトランジスタ21b〜21dのベースに接続
ワイヤWを介して接続されるベース配線パターンPBb
〜PBdが配設されている。配線パターンPE、PC、
およびPBには、それぞれ端子TE、TC、およびTB
が接続されている。これらの端子TE、TC、およびT
Bの一端(図示しない)は、モジュールの外部に露出
し、外部の装置と電気的に接続される。
【0054】エミッタ配線パターンPEには、ショット
キーバリアダイオード33が搭載されている。コレクタ
配線パターンPCには、1チップで構成される集積回路
200およびフリーホイールダイオード24が搭載され
ている。また、ベース配線パターンPBにはバイポーラ
トランジスタ32とスピードアップダイオード23aが
搭載されている。ベース配線パターンPBbおよびPB
cには、それぞれ1対のスピードアップダイオード23
bおよび23cが搭載されている。また、ベース配線パ
ターンPBcには抵抗34が搭載されている。
【0055】接続ワイヤWは、例えばアルミニウムで構
成され、回路素子および配線パターンの間を電気的に適
宜接続する。すなわち、接続ワイヤWによって、バイポ
ーラトランジスタ32のエミッタ32Eとショットキー
バリアダイオード33のアノード電極の間、バイポーラ
トランジスタ32のベース32Bと抵抗34との間、ス
ピードアップダイオード23aのアノード電極とベース
配線パターンPBbの間、スピードアップダイオード2
3bのアノード電極とベース配線パターンPBcの間、
スピードアップダイオード23cのアノード電極とベー
ス配線パターンPBdの間、ベース配線パターンPBと
集積回路200のベース20Bとの間、ベース配線パタ
ーンPBbとトランジスタ21bのベース21bBとの
間、ベース配線パターンPBcとトランジスタ21cの
ベース21cBとの間、ベース配線パターンPBdとト
ランジスタ21dのベース21dBとの間、集積回路2
00のエミッタ20Eとエミッタ配線パターンPEとの
間、フリーホイールダイオード24のアノード電極とエ
ミッタ配線パターンPEとの間が、それぞれ接続されて
いる。
【0056】図14に示されるように、回路素子および
配線パターンは、接続ワイヤWの長さを最短にし得るよ
うに配置されている。また、コレクタ配線パターンPC
は集積回路200において発生する損失熱を効果的に放
熱板(基板の裏面に接着されている;図示しない)に伝
達するように、集積回路200が占める面積よりも広い
面積をもって形成されている。すなわち、集積回路20
0が搭載されるコレクタ配線パターンPCは、集積回路
200を流れる主電流の経路として機能するだけでな
く、集積回路200における損失熱の伝達および放散の
機能をも兼ねている。
【0057】図14に示されるように、1チップで構成
される集積回路200をコレクタ配線パターンPCの上
に搭載するだけで、ダーリントン・トランジスタ20お
よびこれに付随するベース・エミッタ間抵抗がモジュー
ルに組み込まれる。このため、トランジスタ21a〜2
1dのそれぞれを個別に搭載する場合に比べて、モジュ
ールを製造する工程が簡単である。
【0058】
【発明の効果】この発明の短絡保護回路及び電力用ダー
リントン・トランジスタ・モジュールでは、電力用ダー
リントン・トランジスタの最後段のベースとエミッタの
間の電位差が参照され、この電位差が所定の値以上に高
くなると、ダーリントン・トランジスタの最前段のベー
ス電流が最後段のエミッタへバイパスするので、ダーリ
ントン・トランジスタのコレクタ電流の過度の上昇が抑
制され、”負荷短絡破壊”が防止される効果がある。ま
た、前記電位差はダーリントン・トランジスタの段数に
も温度にも依存しないので、様々な段数のダーリントン
・トランジスタに対して、全使用温度範囲で所定のバイ
パス動作を保障すべく短絡保護回路を設計することが容
易であるという効果がある(請求項1〜請求項8)。
【0059】この発明に係る短絡保護回路及び電力用ダ
ーリントン・トランジスタ・モジュールでは、電力用ダ
ーリントン・トランジスタの最後段のベースとエミッタ
の間の電位差が、保護用バイポーラトランジスタのベー
ス・エミッタ間順方向電圧で決まる所定の電圧以上に高
くなると、保護用バイポーラトランジスタがオンして、
ダーリントン・トランジスタの最前段のベース電流が最
後段のエミッタへバイパスされるので、ダーリントン・
トランジスタのコレクタ電流の過度の上昇が抑制さ
れ、”負荷短絡破壊”が防止される効果がある。また、
前記電位差はダーリントン・トランジスタの段数にも温
度にも依存しないので、様々な段数のダーリントン・ト
ランジスタに対して、全使用温度範囲で所定のバイパス
動作を保障すべく短絡保護回路を設計することが容易で
あるという効果がある。更に、保護用バイポーラトラン
ジスタと直列にダイオードが設けられているために、残
留電荷を発生させないので、ダーリントン・トランジス
タを破壊することなくインバータにも応用することがで
きる効果がある。更に、残留電荷を発生させることな
く、保護用バイポーラトランジスタのベースのインピー
ダンスを低くして発振が起こりにくくすることができる
という効果がある。更にダーリントン・トランジスタの
最前段のベースと最後段のエミッタの間に抵抗が介挿さ
れないので、ダーリントン・トランジスタの駆動電力を
低くすることができ、駆動回路を安価に構成し得る効果
がある。更にダーリントン・トランジスタの主電流の経
路に抵抗を介挿する必要がないので、余分な電力損失が
ないという効果がある(請求項2及び請求項6)。
【0060】この発明に係る短絡保護回路及び電力用ダ
ーリントン・トランジスタ・モジュールでは、電力用ダ
ーリントン・トランジスタの最後段のベースとエミッタ
の間の電位差が、保護用MOS型FETのゲート・ソー
ス間の閾電圧で決まる所定の電圧以上に高くなると、保
護用MOS型FETがオンして、ダーリントン・トラン
ジスタの最前段のベース電流が最後段のエミッタへバイ
パスされるので、ダーリントン・トランジスタのコレク
タ電流の過度の上昇が抑制され、”負荷短絡破壊”が防
止される効果がある。また、前記電位差はダーリントン
・トランジスタの段数にも温度にも依存しないので、様
々な段数のダーリントン・トランジスタに対して、全使
用温度範囲で所定のバイパス動作を保障すべく短絡保護
回路を設計することが容易であるという効果がある。更
に、保護用MOS型FETと直列にダイオードが設けら
れているために、残留電荷を発生させないので、ダーリ
ントン・トランジスタを破壊することなくインバータに
も応用することができる効果がある。更に、残留電荷を
発生させることなく、保護用MOS型FETのゲートの
インピーダンスを低くして発振が起こりにくくすること
ができるという効果がある。更にダーリントン・トラン
ジスタの最前段のベースと最後段のエミッタの間に抵抗
が介挿されないので、ダーリントン・トランジスタの駆
動電力を低くすることができ、駆動回路を安価に構成し
得る効果がある。更にダーリントン・トランジスタの主
電流の経路に抵抗を介挿する必要がないので、余分な電
力損失がないという効果がある(請求項3及び請求項
7)。
【0061】この発明に係る短絡保護回路及び電力用ダ
ーリントン・トランジスタ・モジュールでは、電力用ダ
ーリントン・トランジスタの最後段のベースとエミッタ
の間の電位差が基準電圧と比較され、基準電圧に比べて
この電位差の方が高ければ、ダーリントン・トランジス
タの最前段のベースと最後段のエミッタの間のインピー
ダンスが低減させられる。このため、ダーリントン・ト
ランジスタの最前段のベース電流が最後段のエミッタへ
バイパスするので、ダーリントン・トランジスタのコレ
クタ電流の過度の上昇が抑制され、”負荷短絡破壊”が
防止される効果がある。また、前記電位差はダーリント
ン・トランジスタの段数にも温度にも依存しないので、
様々な段数のダーリントン・トランジスタに対して、全
使用温度範囲で所定のバイパス動作を保障すべく短絡保
護回路を設計することが容易であるという効果がある
(請求項4及び請求項8)。
【0062】この発明に係る電力用ダーリントン・トラ
ンジスタ・モジュールでは、電力用ダーリントン・トラ
ンジスタが1個のチップに集積化されているので、モジ
ュールの特性の均一性および信頼性が向上する効果が得
られるとともに、モジュールの製造工程を単純化できる
という効果が得られる(請求項9)。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施例を示す回路図である。
【図2】電力用ダーリントン・トランジスタの一例の回
路図である。
【図3】ダーリントン・トランジスタの特性に関する実
測データを示すグラフである。
【図4】図1の回路に関する実測データを示すグラフで
ある。
【図5】この発明の第2の実施例を示す回路図である。
【図6】この発明の第3の実施例を示す回路図である。
【図7】この発明の第1の実施例の変形例を示す回路図
である。
【図8】負荷短絡破壊に関する試験回路の回路図であ
る。
【図9】負荷短絡破壊に関する試験の結果を示すグラフ
である。
【図10】第1の従来例を示す回路図である。
【図11】第2の従来例を示す回路図である。
【図12】第3の従来例を示す回路図である。
【図13】変形例を示す回路図である。
【図14】変形例における回路基板の平面図である。
【符号の説明】
20 ダーリントン・トランジスタ 21a〜21d トランジスタ 30、40、50 短絡保護回路 31、41、51 放電経路 32 保護用バイポーラトランジスタ 33 ショットキーバリアダイオード 42 保護用MOS型FET 43 ダイオード 52 インピーダンス変成器(インピーダンス変成手
段) 53 コンパレータ(比較手段) 54 基準電源(基準電圧発生手段) B ダーリントン・トランジスタ20のベース E ダーリントン・トランジスタ20のエミッタ C ダーリントン・トランジスタ20のコレクタ BX トランジスタ21dのベース
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H03K 17/615

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数段に組み込まれた複数のトランジス
    タを有する電力用ダーリントン・トランジスタの負荷短
    絡時の保護を行う短絡保護回路であって、(a)前記ダ
    ーリントン・トランジスタの最前段のベースと最後段の
    エミッタとに結合して設けられ、前記ベースと前記エミ
    ッタの間を導通させる放電経路と、(b)前記放電経路
    に介挿され、前記ダーリントン・トランジスタの最後段
    のベースとエミッタの間の電位差が所定の値以上に高い
    ときに、前記放電経路を実質的に導通させる制御手段
    と、を備える短絡保護回路。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の短絡保護回路であっ
    て、 前記制御手段が、(b−1)前記放電経路に介挿された
    保護用バイポーラトランジスタであって、当該保護用バ
    イポーラトランジスタのコレクタが前記ダーリントン・
    トランジスタの最前段のベースに結合され、前記保護用
    バイポーラトランジスタのエミッタが前記ダーリントン
    ・トランジスタの最後段のエミッタに結合され、前記保
    護用バイポーラトランジスタのベースが前記ダーリント
    ン・トランジスタの最後段のベースに結合された保護用
    バイポーラトランジスタと、(b−2)前記放電経路
    に、前記保護用バイポーラトランジスタの順方向コレク
    タ電流が順方向電流となる方向に介挿されるダイオード
    と、を備える短絡保護回路。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の短絡保護回路であっ
    て、 前記制御手段が、(b−1)前記放電経路に介挿された
    保護用MOS型FETであって、当該保護用MOS型F
    ETのドレインが前記ダーリントン・トランジスタの最
    前段のベースに結合され、前記保護用MOS型FETの
    ソースが前記ダーリントン・トランジスタの最後段のエ
    ミッタに結合され、前記保護用MOS型FETのゲート
    が前記ダーリントン・トランジスタの最後段のベースに
    結合された保護用MOS型FETと、(b−2)前記放
    電経路に、前記保護用MOS型FETの順方向ドレイン
    電流が順方向電流となる方向に介挿されるダイオード
    と、を備える短絡保護回路。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の短絡保護回路であっ
    て、 前記制御手段が、(b−1)前記放電経路に介挿され、
    当該放電経路のインピーダンスを制御するインピーダン
    ス変成手段と、(b−2)所定の基準電圧を供給する基
    準電圧発生手段と、(b−3)前記ダーリントン・トラ
    ンジスタの最後段のベースとエミッタの間の電位差と前
    記基準電圧発生手段で供給される前記基準電圧とを比較
    し、前記電位差が前記基準電圧よりも高ければ、前記イ
    ンピーダンス変成手段へ前記インピーダンスを低減させ
    るべく指示する比較手段と、を備える短絡保護回路。
  5. 【請求項5】 電力用ダーリントン・トランジスタ・モ
    ジュールであって、(a)複数段に組み込まれた複数の
    トランジスタを有する電力用ダーリントン・トランジス
    タと、(b)前記ダーリントン・トランジスタの最前段
    のベースと最後段のエミッタとに結合して設けられ、前
    記ベースと前記エミッタの間を導通させる放電経路と、
    (c)前記放電経路に介挿され、前記ダーリントン・ト
    ランジスタの最後段のベースとエミッタの間の電位差が
    所定の値以上に高いときに、前記放電経路を実質的に導
    通させる制御手段と、を備える電力用ダーリントン・ト
    ランジスタ・モジュール。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の電力用ダーリントン・
    トランジスタ・モジュールであって、 前記制御手段が、(c−1)前記放電経路に介挿された
    保護用バイポーラトランジスタであって、当該保護用バ
    イポーラトランジスタのコレクタが前記ダーリントン・
    トランジスタの最前段のベースに結合され、前記保護用
    バイポーラトランジスタのエミッタが前記ダーリントン
    ・トランジスタの最後段のエミッタに結合され、前記保
    護用バイポーラトランジスタのベースが前記ダーリント
    ン・トランジスタの最後段のベースに結合された保護用
    バイポーラトランジスタと、(c−2)前記放電経路
    に、前記保護用バイポーラトランジスタの順方向コレク
    タ電流が順方向電流となる方向に介挿されるダイオード
    と、を備える電力用ダーリントン・トランジスタ・モジ
    ュール。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載の電力用ダーリントン・
    トランジスタ・モジュールであって、 前記制御手段が、(c−1)前記放電経路に介挿された
    保護用MOS型FETであって、当該保護用MOS型F
    ETのドレインが前記ダーリントン・トランジスタの最
    前段のベースに結合され、前記保護用MOS型FETの
    ソースが前記ダーリントン・トランジスタの最後段のエ
    ミッタに結合され、前記保護用MOS型FETのゲート
    が前記ダーリントン・トランジスタの最後段のベースに
    結合された保護用MOS型FETと、(c−2)前記放
    電経路に、前記保護用MOS型FETの順方向ドレイン
    電流が順方向電流となる方向に介挿されるダイオード
    と、を備える電力用ダーリントン・トランジスタ・モジ
    ュール。
  8. 【請求項8】 請求項5に記載の電力用ダーリントン・
    トランジスタ・モジュールであって、 前記制御手段が、(c−1)前記放電経路に介挿され、
    当該放電経路のインピーダンスを制御するインピーダン
    ス変成手段と、(c−2)所定の基準電圧を供給する基
    準電圧発生手段と、(c−3)前記ダーリントン・トラ
    ンジスタの最後段のベースとエミッタの間の電位差と前
    記基準電圧発生手段で供給される前記基準電圧とを比較
    し、前記電位差が前記基準電圧よりも高ければ、前記イ
    ンピーダンス変成手段へ前記インピーダンスを低減させ
    るべく指示する比較手段と、を備える電力用ダーリント
    ン・トランジスタ・モジュール。
  9. 【請求項9】 請求項5に記載の電力用ダーリントン・
    トランジスタ・モジュールであって、 前記電力用ダーリントン・トランジスタが1個のチップ
    に集積化された電力用ダーリントン・トランジスタ・モ
    ジュール。
JP5223391A 1992-10-01 1993-09-08 短絡保護回路及び電力用ダーリントン・トランジスタ・モジュール Pending JPH06169241A (ja)

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