JPH0616442A - 脆性板切断方法およびその装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 脆性板を如何なるパターンの形状にも高い精
度で切断する。 【構成】 被加工脆性板に所定パターンの切り溝を形成
工程（１）と、被加工脆性板の前記切り溝に対して当該
切り溝パターンに沿って突起部材を移動させながら圧力
を加え加圧工程（２）とを含み、被加工脆性板の切り溝
に沿って面方向互いに反対向きの引っ張り力を印加して
切断する。 【効果】 切り溝に沿って均一な引っ張り力を与えて脆
性板を切断するものであるため、切断すべき形状にこだ
わらず高精度な脆性板切断が可能である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、脆性板切断方法および
その装置に係り、特に半導体センサ，太陽電池セル，Ｉ
Ｃチップ，あるいは液晶表示素子等のように、一枚の薄
いガラス等の脆性板の上に多数の素子を形成した後、こ
れを個々の素子単位に切断して部品とするための上記脆
性板切断方法およびその装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に、ガラス等の脆性板を切断する方
法としては、ダイヤモンドや超硬のチップを用い、脆性
板に切り溝を設け、切り溝部のクラックを促進する事に
より切断する方法が知られている。そして、特開昭５３
−８８８１７号公報に記載のように、上記クラックを促
進する手段としてモーメントを用いる方法、特開昭５９
−９７５４５号公報に記載のように切り溝部にレーザビ
ームを照射してガラス内部に発生する熱応力により切断
する方法、あるいは切り溝を設けた脆性板を当該脆性板
よりも低い弾性係数を持つ加圧板で挟み、その全体を上
下方向からプレスし、加圧板がつぶれて面方向外側へ広
がろうとする力を摩擦を介して脆性板の切り溝部に与
え、脆性板を切り溝部で切断する「摩擦を利用した切断
方法」（日本機械学会論文集（Ｃ編）５５巻５１３号
（１９８９−５））が既知である。

【０００３】また、切り溝を利用せずにガラス等の脆性
板を直接切断する方法としては、レーザーによる熱溶
断、ウォータジェット、スライサ、ワイヤソー等を用い
切削する方法がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】切り溝を用いずに脆性
板を直接切断する方法は、切断形状の自由度が高く、切
断面の真直度が高い等の長所があるが、上記したどの方
法も切削速度が遅く設備費が高く非能率的であるという
欠点がある。切り溝を設ける方法の中では前記したモ−
メントを用いる方法が代表的であり、直線状の割断（切
断）であれば最も短時間で高精度に割断できる。しか
し、曲線状の割断を行う場合には、切断線に沿って均一
なモ−メントをかける事ができないため、希望どうりの
割断ができなかったり、切断エッジが斜めに反れ不良な
切断面を生じるという問題点がある。

【０００５】また、前記摩擦力を用いる方法は、モ−メ
ントを用いず脆性板の面方向に引っ張り力を与えるもの
であるため、曲線形状の割断も可能である。しかし、加
圧板がその面方向に広がる力を利用して脆性板の切り溝
に対し切断に必要な力を与えるためには大きな押圧力を
要し、大がかりなプレス装置が必要となる。切断対象が
前記半導体センサ，太陽電池セル，ＩＣチップ，あるい
は液晶表示素子等である場合は、当該脆性板の面上には
複雑かつ微細なチップパターンが形成されている場合が
多く、プレスによる押圧力がチップパターンに損傷を及
ぼす危険性が高い。

【０００６】そして、前記熱応力を用いる方法は、切り
溝部のみにエネルギーを与えていることから上記のよう
な問題点はないが、熱がチップパターンに損傷を及ぼし
たり、脆性板内部に溜まっている残留応力や切り溝以外
の微細なクラックの影響を受け、希望どうりの方向にク
ラックが進行して行かない場合があるという欠点を持っ
ている。

【０００７】本発明の第１の目的は、上記従来技術の欠
点を解消し、如何なるパターンの形状の脆性板でも、高
い切断精度と高歩留まりで切断する脆性板切断方法を提
供することにある。本発明の第２の目的は、上記従来技
術の欠点を解消し、如何なるパターンの形状の脆性板で
も、高い切断精度と高歩留まりで切断する脆性板切断装
置を提供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記第１の目的を達成す
るため、本発明は、被加工脆性板に所定の切り溝パター
ンを形成する切り溝加工工程１と、前記被加工脆性板に
形成した切り溝に対して当該切り溝のパターンに沿って
突起部材を移動しながら前記被加工脆性板の面に直角な
方向の圧力を加える加圧工程２とを有することを特徴と
する。

【０００９】上記第１の目的を達成するため、本発明
は、被加工脆性板に所定の切り溝パターンを形成する切
り溝加工工程１と、前記被加工脆性板に形成した切り溝
に対して弾性材を介して当該切り溝のパターンに沿って
突起部材を移動しながら前記被加工脆性板の面に直角な
方向の圧力を加える加圧工程２’とを有することを特徴
とする。

【００１０】上記第１の目的を達成するため、本発明
は、被加工脆性板に所定の切り溝パターンを形成する切
り溝加工工程１と、前記被加工脆性板に形成した切り溝
に対して弾性材からなる突起部材を該切り溝のパターン
に沿って突起部材を当接移動しながら前記被加工脆性板
の面に直角な方向の圧力を加える加圧工程２”とを有す
ることを特徴とする。

【００１１】上記第２の目的を達成するために、本発明
は、所定のパターンの切り溝２１を形成した被加工脆性
板２０を載置する板体載置台２４と、前記被加工脆性板
に形成された切り溝に対して前記脆性板の面と直角方向
に加圧する突起部材２３を有する加圧治具２５と、前記
板体載置台上に載置する被加工脆性板と前記加圧治具と
の間に介在させる弾性板２２と、前記加圧治具に圧力を
加える加圧機構２７と、前記加圧治具を前記被加工脆性
板の面と平行な２方法に移動させる移動機構２８とを備
え、前記加圧治具の前記被加工脆性板に形成した切り溝
に沿う移動と、前記弾性板を介して印加される前記突起
による前記切り溝に対する前記脆性板の面方向と直角方
向の圧力で前記脆性板を前記切り溝パターンで切断する
ことを特徴とする。

【００１２】上記第２の目的を達成するために、本発明
は、所定のパターンの切り溝２１を形成した被加工脆性
板２０を載置する板体載置台２４と、前記被加工脆性板
に形成された切り溝に対して前記脆性板の面と直角方向
に加圧する突起部材２３を有する加圧治具２５と、前記
板体載置台上に載置する被加工脆性板と前記加圧治具と
の間に介在させる弾性板２２と、前記加圧治具に圧力を
加える加圧機構２７と、前記板体載置台を前記被加工脆
性板の面と平行な２方法に移動させる移動テーブル２９
とを備え、前記板体載置台の前記被加工脆性板に形成し
た切り溝に沿う前記突起部材に対する移動と、前記弾性
板を介して印加される前記突起部材による前記切り溝に
対する前記脆性板の面方向と直角方向の圧力で前記脆性
板を前記切り溝パターンで切断することを特徴とする。

【００１３】上記第２の目的を達成するために、本発明
は、所定のパターンの切り溝２１を形成した被加工脆性
板２０を載置する板体載置台２４と、前記被加工脆性板
に形成された切り溝に対して前記脆性板の面と直角方向
に加圧する弾性材からなる突起部材２３を有する加圧治
具２５と、前記加圧治具に圧力を加える加圧機構２７
と、前記加圧治具を前記被加工脆性板の面と平行な２方
法に移動させる移動機構２８とを備え、前記加圧治具の
前記被加工脆性板に形成した切り溝に沿う移動と、前記
突起部材による前記切り溝に対する前記脆性板の面方向
と直角方向の圧力で前記脆性板を前記切り溝パターンで
切断することを特徴とする。

【００１４】上記第２の目的を達成するために、本発明
は、所定のパターンの切り溝２１を形成した被加工脆性
板２０を載置する板体載置台２４と、前記被加工脆性板
に形成された切り溝に対して前記脆性板の面と直角方向
に加圧する弾性材２３０からなる突起部材２３を有する
加圧治具２５と、前記加圧治具に圧力を加える加圧機構
２７と、前記板体載置台を前記被加工脆性板の面と平行
な２方法に移動させる移動テーブル２９とを備え、前記
板体載置台の前記被加工脆性板に形成した切り溝に沿う
前記突起部材に対する移動と、前記弾性板を介して印加
される前記突起部材による前記切り溝に対する前記脆性
板の面方向と直角方向の圧力で前記脆性板を前記切り溝
パターンで切断することを特徴とする。

【００１５】すなわち、本発明は、切断すべき脆性板
（被加工脆性板）２０に超哽チップ、ダイヤモンドチッ
プ等の加工工具で所望のパターン形状の切り溝２１を形
成し、突起部材２３として切り溝２１部分に当接する領
域を有するローラーを用いるのを好適とし、このローラ
ーを弾性板２２を介して脆性板の切り溝に沿って圧力を
印加しながら移動させて行くことにより、あるいは上記
ローラーの少なくとも脆性板当接部分を弾性材２３０で
形成し、これを直接上記切り溝にそって圧力を印加しな
がら移動させることにより、脆性板を希望のパターン形
状に切断する方法としたことを特徴とするものである。

【００１６】このときローラーが当接する面は、脆性板
の切り溝側面，切り溝側面とは反対側面，切り溝側面と
切り溝側面とは反対側面の両側の何れでもよい。また、
本発明は、切り溝２１と同一パターンにローラーを移動
させながら弾性板２２を介した当該ローラー、あるいは
少なくとも脆性板当接部分を弾性材２３０で形成したロ
ーラーで脆性板を加圧する構成、または加圧したローラ
ーの直下で脆性板をその切り溝に沿って移動させる構成
としたものである。

【００１７】そして、本発明の脆性板切断装置は、切り
溝２１の形成加工装置とは別個の装置であっても、また
この脆性板切断装置は切り溝２１を形成するための加工
装置と同様の動作をするため、切り溝加工装置の切り溝
カッターに代えてローラーホルダ（加圧治具２５）及び
ローラー（突起部材２３）を取り付けるだけで、一つの
装置で切り溝２１の形成と当該切り溝に沿った上記脆性
板の切断の両方の作業を行うようにすることもできると
いう特徴を有している。

【００１８】なお、上記の加圧治具を１方向に、また板
体載置台をこれと直交する方向に移動する構成としても
よい。

【００１９】

【作用】上記弾性板２２は例えば樹脂材料等の弾性材か
らなる薄膜を好適とし、上記突起部材２３（ローラー）
により押しつぶされたとき、その面方向に伸びようとす
る。この伸びようとする力を脆性板２０との間の摩擦に
よって当該脆性板の切り溝２１部分に与え、切り溝２１
を中心として互いに反対方向に引っ張り力を作用させて
切り溝の割れ目を押し広げることで当該脆性板２０をそ
の切り溝２１のパターンに沿って切断する。

【００２０】このため、弾性板２２はつぶされても切れ
ずに伸びる性質を持っていなければならない。また弾性
板２２の伸びる力を脆性板２０に効率よく伝達するため
には弾性板と脆性板との間の摩擦係数は大きいほど良
い。突起部材２３（ローラー）は弾性板を適度に押しつ
ぶす形状を有していなければならない。また曲線形状の
切り溝パターンに沿って切断する場合は、ローラーを回
転可能なホルダー２６を介して加圧機構２７に取り付
け、当該切り溝パターンの曲線形状に沿ってローラーを
回転させることが望ましい。

【００２１】弾性板２２の材質としてはウレタンが適し
ている。シリコンやポリエチレン等で成形したものでも
使用可能であるが、圧力印加で破断したり、面方向への
伸びが迅速でないために大きな押圧力を要する。弾性板
２２の厚さは、０．０５ｍｍから０．２ｍｍの範囲とす
ることで、良好な切断作業が可能である。突起部材２３
としてのローラーの先端形状は弾性板２２をつぶして押
し広げる効果があればどんな形状でもかまわないが、半
径１ｍｍ程度の円弧形状とすることで効率よく弾性板を
押し広げることができる。

【００２２】また、ローラーの材質は、印加圧力に耐え
られれば特に限定されないが、ローラーに弾性板の機能
を持たせるため弾性係数の小さい材料を用いたり、硬い
突起の表面に弾性材の膜をコーティングして用いること
も可能である。しかし脆性板の切断部に突起が直接当た
ってしまうため、多数の繰り返し使用に耐えることは困
難である。

【００２３】なお、突起部材は上記のローラーに限るも
のではなく、脆性板の切り溝に対して押し圧力を効果的
に印加できるものであればどのような形状，構造のもの
でもよい。

【００２４】

【実施例】以下、本発明の実施例につき、図面を参照し
て詳細に説明する。図１は本発明による脆性板切断方法
の１実施例を説明する概略工程図であって、被加工脆性
板としてガラス板に所定のパターンの切り溝を形成す
る。・・・・切り溝加工工程（１） この切り溝形成はダイヤモンドチップや超硬材料のチッ
プを有するカッターで行う。

【００２５】次に、上記切り溝を形成したガラス板の上
に弾性板としてウレタンを重積し、このウレタンを介し
て突起部材を押し当て、加圧しながら当該切り溝パター
ンに沿って移動させる。・・・・突起部材の移動による
加圧工程（２） このとき、ガラス板に形成した切り溝は、突起部材側
面，あるいは突起部材側面とは反対側面の何れの側でも
よい。

【００２６】上記各工程を経ることにより、ガラス板は
その切り溝パターンに沿って正確に切断され、切断面が
それたり、クラックが生じることなく所望パターンのガ
ラス板部品を得ることができる。図２は本発明による脆
性板切断装置の１実施例を説明する要部斜視図であっ
て、２０は被加工脆性板としてのガラス板、２１はガラ
ス板に形成した切り溝、２２は弾性板としてのウレタ
ン、２３は突起部材としてのローラー、２４はガラス板
を載置する板体載置台、２５はローラーを支持する加圧
治具、２６はホルダー、２７は加圧機構を構成するエア
シリンダ装置、２８はローラー２３をガラス板の平面上
でＸ−Ｘ，Ｙ−Ｙの２方向に移動させる移動機構であ
る。

【００２７】同図において、まず、ガラス板２０の片面
に切断すべき形状と同一の切り溝２１のパターンを設け
る。そして、切り溝２１を形成したガラス板２０を板体
載置台２４上に載置する。載置したガラス板２０の上に
ウレタンフォーム２２を重積し、ガラス板２０の面と平
行な面で回転自由なホルダー２５に取り付けたローラー
２３をエア−シリンダ２７により加圧し、ローラー２３
が点線で示すガラス板２０の切り溝２１の真上を実線２
１１で示したように転がりながらガラス板２０を加圧し
ていく。

【００２８】このときローラー２３は弾性板２２を押し
つぶす働きをする。そして該弾性板２２に印加される上
記押しつぶし圧力はその面方向に指向され、ローラー２
３の押圧部を中心とする面方向への引っ張力に変換され
る。この引っ張圧力は弾性板２２とガラス板２０との間
の摩擦力で当該ガラス板２０に伝達され、その切り溝２
１を中心に互いに反対方向に向かう引っ張力となり、ガ
ラス板２０はその切り溝２１で切断される。

【００２９】ここでガラス板２０は板厚１．１ｍｍのホ
ウケイ酸ガラス、ローラーは先端半径１ｍｍ、厚さ０．
６５ｍｍ、外径２．５ｍｍの超硬材、弾性板２２として
は０．１ｍｍ厚のウレタンを用いた。また、加圧機構で
あるエアーシリンダ２７による加圧力は５Ｋｇ程度であ
る。ローラー２３の移動速度は曲線部分で２ｍｍ／ｓｅ
ｃ、曲線部分で１０ｍｍ／ｓｅｃであり、図２の形状に
切断するためには約３０秒を要している。

【００３０】ローラー２３の移動速度は、切り溝２１の
クラックの深さ、曲線半径等を考慮して決める必要があ
る。本実施例のように曲率の小さいパターンの場合には
ゆっくり移動させる必要があり、クラックが深く、直線
に近い形状であれば速度を早める事が可能である。切り
溝と反対面の切断精度はチッピングを含め切り溝に対し
て±０．１ｍｍ以内である。

【００３１】これにより、切り溝パターンに従ったガラ
ス板の正確な切断が可能となり、当該パターンが曲線を
含む複雑なものでも、またパターン自体が複雑なもので
あっても、正確かつ歩留りよくガラス板を切断すること
ができる。図３は本発明による脆性板切断装置の他の実
施例を説明する要部斜視図であって、図２と同一符号は
同一部分に対応し、２９はＸ−Ｙテーブルである。

【００３２】前記実施例と同様に、本実施例でもガラス
板２０と突起部材であるローラー２３との間に介在させ
る弾性板２２としてウレタンを用いており、ガラス板２
０を載置する板体載置台を当該ガラス板２０の面に平行
なＸ−Ｘ，Ｙ−Ｙの２方向に移動させるＸ−Ｙテーブル
２９を備えている。同図において、同様にまず、ガラス
板２０の片面に切断すべき形状と同一の切り溝２１のパ
ターンを設ける。そして、切り溝２１を形成したガラス
板２０を板体載置台２４上に載置する。板体載置台２４
はＸ−Ｙテーブル２９上に固定され、ローラー２３に対
してガラス板２０の面と平行な面で２方向に移動され
る。

【００３３】板体載置台２４上に載置したガラス板２０
の上にウレタン２２を重積し、ホルダー２５に取り付け
たローラー２３をエアーシリンダ２７により加圧し、Ｘ
−Ｙテーブル２９の移動によりローラー２３が点線で示
すガラス板２０の切り溝２１の真上を実線２１１で示し
たように転がりながらガラス板２０を加圧していく。ホ
ルダー２６は特に回転可能である必要はないが、Ｘ−Ｙ
テーブル２９の操作を簡略にするために前記実施例と同
様にガラス板２０の面と平行な方向に自由回転できるよ
うに構成したほうが好適である。

【００３４】このときローラー２３は弾性板２２を押し
つぶす働きをする。そして該弾性板２２に印加される上
記押しつぶし圧力はその面方向に指向され、ローラー２
３の押圧部を中心とする面方向への引っ張力に変換され
る。この引っ張圧力は弾性板２２とガラス板２０との間
の摩擦力で当該ガラス板２０に伝達され、その切り溝２
１を中心に互いに反対方向に向かう引っ張力となり、ガ
ラス板２０はその切り溝２１で切断される。

【００３５】ガラス板２０の板厚、材質、ローラー先端
半径とその厚さ、外径、および弾性板２２、エアーシリ
ンダ２７による加圧力、その他の諸元は前記実施例と同
様である。また、ローラー２３の移動速度も同様に、切
り溝２１のクラックの深さ、曲線半径等を考慮して決め
る。

【００３６】これにより、切り溝パターンに従ったガラ
ス板の正確な切断が可能となり、当該パターンが曲線を
含む複雑なものでも、またパターン自体が複雑なもので
あっても、正確かつ歩留りよくガラス板を切断すること
ができる。図４は前記図２で説明した脆性板切断装置に
おける切断部分の拡大断面図であって、２３１はローラ
ー２３の回転軸、図２と同一符号は同一部分に対応す
る。

【００３７】同図において、ローラー２３は超硬材から
なり、ガラス板２０の切り溝２１直上に稜線が一致する
ような曲率を有し、移動機構２７による移動にしたがっ
て切り溝２１上を弾性板２２を介在して押圧移動する。
ローラー２３の押圧力Ａが弾性板２２を押しつぶすと、
この押しつぶす力は当該弾性板２２に上記稜線に対して
面方向で互いに反対向きの力（引っ張力）Ｂ，Ｂ’を生
じさせる。この力Ｂ，Ｂ’はガラス板２０との間の摩擦
力でガラス板２０にその面方向で互いに反対向きの引っ
張力Ｃ，Ｃ’を与える。

【００３８】これにより、ガラス板２０は切り溝２１と
中心として割断される状態で切断されるのである。図５
は前記図３で説明した脆性板切断装置における切断部分
の拡大断面図であって、２３１はローラー２３の回転
軸、図３と同一符号は同一部分に対応する。同図におい
て、ローラー２３は超硬材好適とする芯材２３２と、こ
の芯材の外周に弾性材２３０をコーティングあるいは接
着，はめ込み等の固定手段で設置してなる。

【００３９】この弾性材２３０は、図示したようにその
外周がガラス板２０に面接触するような形状であること
を可とするが、特にこのような形状に限定されない。ま
た、この弾性材２３０はガラス板と接触する側の面積を
図示したものよりも大としてガラス板２０との接触面積
を大きくしてもよいものである。ローラー２３の心材２
３２の断面は、押圧力が切り溝２１の部分に集中し易い
ように図示したような曲率を外周側に有せしめるのが望
ましく、その稜線がガラス板２０の切り溝２１直上部分
に一致するように位置させ、Ｘ−Ｙテーブル２９による
ガラス板２０の移動にしたがってローラー２３が切り溝
２１上を押圧移動する。

【００４０】この押圧移動において、ローラー２３の押
圧力Ａが弾性材２３０を押しつぶすと、この押しつぶす
力は当該弾性材２３０に上記稜線に対して面方向で互い
に反対向きの力（引っ張力）Ｂ，Ｂ’を生じさせる。こ
の力Ｂ，Ｂ’はガラス板２０との間の摩擦力でガラス板
２０にその面方向で互いに反対向きの引っ張力Ｃ，Ｃ’
を与える。

【００４１】これにより、ガラス板２０は切り溝２１と
中心として割断される状態で切断されるのである。図６
は切り溝加工と突起部材とにより１枚のガラス板を２つ
の部品に切断する具体例を説明するガラス板の平面図で
あって、２０はホウケイ酸ガラス板、２１は切り溝であ
り、もとのガラス板２０のサイズは縦２８０ｍｍ，横８
ｍｍ、厚さ１．１ｍｍで、切り溝２１は縦方向中央部を
２分して端部においては曲率半径４ｍｍで互いに反対方
向横にカーブして縦辺で終端する縦方向長さが２５０ｍ
ｍのパターンに加工されている。

【００４２】前記図４に示したようにこのガラス板２０
の上に弾性板２２を重積しその上方から切り溝２１対応
部分にローラー２３を押し当てるか、あるいは前記図５
に示したように弾性材を備えたローラー２３を直接ガラ
ス板の切り溝２１部分に押し当て、ローラー２３とガラ
ス板２０の何れか一方を当該ガラス板の面と平行な方向
に移動させることにより、切り溝２１に沿ってガラス板
２０を切断する。

【００４３】図７は上記ガラス板を２つの部品に切断し
た状態の説明図であって、（ａ）の被加工ガラス板を本
実施例で（ｂ），（ｃ）の２枚の部品に切断（割断）し
た様子を示す。

【００４４】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
所定のパターンで形成された切り溝に沿って均一な引っ
張り力を与えて脆性板を切断するものであるため、切り
溝パターンの形状にこだわらず高精度な切断が可能であ
る。また切り溝を設ける装置の作業工具部分のみを取替
えることにより、この切り溝加工装置を切断装置として
簡単に利用することが出来るため、切断のための設備を
導入する必要がないという特徴を有している。

【００４５】このように、本発明により、脆性板を少な
いコストで、高精度に、かつ当該脆性板の面上に回路パ
ターンや成膜等が形成されている場合であっても、この
ような回路パターンや成膜等に損傷を与える事なく、所
望の形状に切断することができ、半導体センサ，ＩＣ，
ＬＣＤ、その他の基板の設計自由度が増し、これら素子
の高機能化，小型化，低コスト化を計ることができる優
れた機能の脆性板切断方法およびその装置を提供でき
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明による脆性板切断方法の１実施例を説
明する概略工程図である。

【図２】 本発明による脆性板切断装置の１実施例を説
明する要部斜視図である。

【図３】 本発明による脆性板切断装置の他の実施例を
説明する要部斜視図である。

【図４】 前記図２で説明した脆性板切断装置における
切断部分の拡大断面図である。

【図５】 前記図３で説明した脆性板切断装置における
切断部分の拡大断面図である。

【図６】 切り溝加工と突起部材とにより１枚のガラス
板を２つの部品に切断する具体例を説明するガラス板の
平面図である。

【図７】 上記ガラス板を２つの部品に切断した状態の
説明図であって、（ａ）の被加工ガラス板を本実施例で
（ｂ），（ｃ）の２枚の部品に切断（割断）した様子を
示す。

【符号の説明】

１・・・・切り溝加工工程 ２・・・・突起部材の移動
による加圧工程 ２０・・・・ガラス板 ２１・・・・
切り溝 ２２・・・・弾性板 ２３・・・・ローラー
（突起部材） ２４・・・・板体載置台 ２５・・・・
押圧治具 ２６・・・・ホルダー ２７・・・・エアー
シリンダ ２８・・・・移動機構 ２９・・・・Ｘ−Ｙ
テーブル。

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 被加工脆性板に所定の切り溝パターンを
   形成する切り溝加工工程と、前記被加工脆性板に形成し
   た切り溝に対して当該切り溝のパターンに沿って突起部
   材を移動しながら前記被加工脆性板の面に直角な方向の
   圧力を加える加圧工程とを有することを特徴とする脆性
   板切断方法。
2. 【請求項２】 被加工脆性板に所定の切り溝パターンを
   形成する切り溝加工工程と、前記被加工脆性板に形成し
   た切り溝に対して弾性材を介して当該切り溝のパターン
   に沿って突起部材を移動しながら前記被加工脆性板の面
   に直角な方向の圧力を加える加圧工程とを有することを
   特徴とする脆性板切断方法。
3. 【請求項３】 被加工脆性板に所定の切り溝パターンを
   形成する切り溝加工工程と、前記被加工脆性板に形成し
   た切り溝に対して当該切り溝のパターンに沿って弾性材
   を当接移動させながら前記被加工脆性板の面に直角な方
   向の圧力を加える加圧工程とを有することを特徴とする
   脆性板切断方法。
4. 【請求項４】 所定のパターンの切り溝を形成した被加
   工脆性板を載置する板体載置台と、前記被加工脆性板に
   形成された切り溝に対して前記脆性板の面と直角方向に
   加圧する突起部材を有する加圧治具と、前記板体載置台
   上に載置する被加工脆性板と前記加圧治具との間に介在
   させる弾性板と、前記加圧治具に圧力を加える加圧機構
   と、前記加圧治具を前記被加工脆性板の面と平行な２方
   向に移動させる移動機構とを備え、 前記加圧治具の前記被加工脆性板に形成した切り溝に沿
   う移動と、前記弾性板を介して印加される前記突起部材
   による前記切り溝に対する前記脆性板の面方向と直角方
   向の圧力で前記脆性板を前記切り溝パターンで切断する
   ことを特徴とする脆性板切断装置。
5. 【請求項５】 所定のパターンの切り溝を形成した被加
   工脆性板を載置する板体載置台と、前記被加工脆性板に
   形成された切り溝に対して前記脆性板の面と直角方向に
   加圧する突起部材を有する加圧治具と、前記板体載置台
   上に載置する被加工脆性板と前記加圧治具との間に介在
   させる弾性板と、前記加圧治具に圧力を加える加圧機構
   と、前記板体載置台を前記被加工脆性板の面と平行な２
   方向に移動させる移動テーブルとを備え、 前記板体載置台の前記被加工脆性板に形成した切り溝に
   沿う前記突起部材に対する移動と、前記弾性板を介して
   印加される前記突起部材による前記切り溝に対する前記
   脆性板の面方向と直角方向の圧力で前記脆性板を前記切
   り溝パターンで切断することを特徴とする脆性板切断装
   置。
6. 【請求項６】 所定のパターンの切り溝を形成した被加
   工脆性板を載置する板体載置台と、前記被加工脆性板に
   形成された切り溝に対して前記脆性板の面と直角方向に
   加圧する弾性材からなる突起部材を有する加圧治具と、
   前記加圧治具に圧力を加える加圧機構と、前記加圧治具
   を前記被加工脆性板の面と平行な２方向に移動させる移
   動機構とを備え、 前記加圧治具の前記被加工脆性板に形成した切り溝に沿
   う移動と、前記突起部材による前記切り溝に対する前記
   脆性板の面方向と直角方向の圧力で前記脆性板を前記切
   り溝パターンで切断することを特徴とする脆性板切断装
   置。
7. 【請求項７】 所定のパターンの切り溝を形成した被加
   工脆性板を載置する板体載置台と、前記被加工脆性板に
   形成された切り溝に対して前記脆性板の面と直角方向に
   加圧する弾性材からなる突起部材を有する加圧治具と、
   前記加圧治具に圧力を加える加圧機構と、前記板体載置
   台を前記被加工脆性板の面と平行な２方向に移動させる
   移動テーブルとを備え、 前記板体載置台の前記被加工脆性板に形成した切り溝に
   沿う前記突起部材に対する移動と、前記弾性板を介して
   印加される前記突起部材による前記切り溝に対する前記
   脆性板の面方向と直角方向の圧力で前記脆性板を前記切
   り溝パターンで切断することを特徴とする脆性板切断装
   置。