JPH0616395Y2 - 液体用タ−ゲツトボツクス - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はサイクロトロンで加速した電荷粒子を液体ター
ゲットに照射し、放射性同位元素を作る場合のターゲッ
トボックスに関する。

（従来の技術） 一般に小型のサイクロトロンは第３図の縦断面図、第４
図の横断面図に示すように、上下に対向しているヨーク
２，３と励磁コイル４，５りなる電磁石の対向する磁極
間に水平に加速空間１を設け、磁極の中心部にイオン源
６を設けてある。加速空間１には水平面で上下に対向し
ている２組の同形の扇形状の電極７，７及び８，８をそ
れぞれ中心点に対して対称でかつ水平に配置し、これら
の電極７，８には周波数の発振器９からの高周波電圧
をそれぞれRFファイナルアンプ10、フィーダー11を介し
て印加してある。

また加速空間１は真空ポンプ23，24で真空にしてあり、
励磁コイル４，５は可変直流電源25で励磁されている。

このような構造のサイクロトロンでイオン源６から放出
された荷電粒子は励磁コイル４，５で励磁されている磁
極間の加速空間１内を磁場で拘束され、電極７，８によ
りRF電界で加速されて渦巻状の運動をし、最終的には偏
向デフレクタ14で荷電粒子ビーム15を取出し口16に誘導
する。

この場合荷電粒子ビーム15の速度は電極７，８に印加す
るRF電圧の周波数と、この場合に必要な励磁コイル４，
５の励磁電流の調節により適宜に選ぶことが出来る。

取り出し口16の外部には荷電粒子ビーム15を整形するＱ
マグネット17が設けてあり、荷電粒子ビーム15はＱマグ
ネット17を経てターゲットボックス18に導かれる。

第５図はターゲットボックス18の断面図である。アルミ
ニウム製の保持部材19で保持されたターゲットボックス
18は円筒型で全面にフランジ部18-1が設けてあり、内筒
部の中間には隔壁18-2が設けられて、全体がチタンで一
体に作られている。フランジ部18-1の前面にはアルミ製
の押えリング20でフランジ部18-1との間にチタン箔21を
挟持して封止している。ターゲットボックス18の後面に
はステンレス製の蓋22が設けてあり、この蓋22には冷却
水の入口22-1と出口22-2とが設けてある。前記フランジ
部18-1には液状ターゲットの入口18-3,出口18-4が設け
てある。

なおフランジ部18-1とチタン箔21との間にはＯリングが
挿入してあり、液状ターゲットに対して液体封止してい
る。またターゲットボックス18と保持部材19との間にも
Ｏリングを挿入して冷却水封止してある。

図中太矢印は荷電粒子ビーム15の方向を、細矢印は冷却
水の流れ方向を示してある。

上述のような構造のターゲットボックス18の前側の反応
室18-5には液体ターゲットを充満し、後側の冷却室18-6
には冷却水を循環させた状態でサイクロトロンを運転
し、ターゲットに荷電粒子を照射し、放射性同位元素を
製造するものである。

（考案が解決しようとする問題点） 上述のような構造のターゲットボックス18で荷電粒子を
照射する場合、荷電粒子ビーム15の強さは液体ターゲッ
トで吸収出来る範囲に調節してあるが、液体ターゲット
が反応して沸騰すると気泡が発生し、荷電粒子ビーム15
が隔壁18-2に衝突し、隔壁18-2を発熱させてしまう。こ
のようになると荷電粒子ビーム15は無効に使われ、結果
的には荷電粒子ビーム15を強化しても放射性同位元素の
生産量が増加しない現象がある。このために充分な冷却
が必要になる。実際には７kg/cm²位の圧力水で強制冷却
している。

この結果加熱された隔壁18-2は冷却室18-6側の圧力によ
り、反応室18-5側に湾曲し、周囲にヒビがはいってく
る。このようになるとターゲットボックス18全体を交換
しなければならない。

しかしチタン製のターゲットボックス18は非常に高価で
あるので、コストアップの大きな原因となる。

（問題を解決するための手段） 本考案は上述のような問題を解決して、製品のコストア
ップとならないようなターゲットボックスを提供するこ
とを目的とする。

即ちチタン製の円筒の内筒面の中間で軸方向に垂直な平
面上に段差を設け、この段差の前側は小内径の反応室と
し、後側は大内径の冷却室とし、この段差部分には前記
冷却室側から挿入されたチタン円板の隔壁を設け、前記
冷却室の蓋の内側に冷却室の内筒面に遊嵌する円筒状の
突堤を設けて前記隔壁を前記段差部分に押圧して前記反
応室と冷却室との間を液体封止状態としたものである。

（作用） サイクロトロンを長時間運転した場合、液体ターゲット
を貫通した荷電粒子の衝突により隔壁は加熱される。こ
の場合、蓋側の冷却水の水圧により隔壁は反応室側に湾
曲し、遂には隔壁に亀裂を生ずることがある。このよう
な場合、上述のように隔壁はターゲットボックスの段差
部分と蓋の円筒状突堤とで挟持されているので、隔壁を
別部品として交換することにより、ターゲットボックス
本体は長期間使用することが出来る。

（実施例） 第１図は本考案の液体用ターゲットボックスの断面図で
ある。アルミニウム製の保持部材19で保持されたターゲ
ットボックス29は円筒型で前面にフランジ部26-1が設け
てあり、内筒部の中間には中心軸に垂直な平面上に段差
が設けてある。この段差の前側は小内径の反応室26-2
に、後側は大内径の冷却室26-3を構成していて、全体が
チタンで作られている。フランジ部26-1の前面にはアル
ミ製の押えリング20でフランジ部26-1との間にチタン箔
21を挟持して封止している。ターゲットボックス26の前
記段差部分には冷却室26-3側からチタン円板の隔壁27が
挿入してあり、前記反応室26-2と冷却室26-3とを分離し
ている。後面にはステンレス製の蓋28が設けてあり、こ
の蓋28には冷却室26-3側に冷却室26-3の内周面に遊嵌す
る環状の突堤28-1が隔壁27を押圧出来る高さで設けてあ
り、さらに冷却水の入口28-2と出口28-3とが設けてあ
る。前記フランジ部26-1には液状ターゲットの入口26-
4，出口26-5が設けてある。

なおフランジ部26-1とチタン箔21との間及びターゲット
ボックス26の内筒面の段差と隔壁27との間にはＯリング
が挿入してあり、液体ターゲット及び液体ターゲットと
冷却水との間に対して液体封止してる。またターゲット
ボックス26と保持部材19との間にもＯリングを挿入して
冷却水封止してある。

図中太矢印は荷電粒子ビーム15の方向を、細矢印は冷却
水の流れ方向を示してある。

第２図は他の実施例の部分断面図で、ターテットボック
ス29はステンレス製とし、第１図の反応室26-2，段差部
分及び前面のチタン箔21に対向する部分のみその表面に
チタンコーティング30を施したものである。

（考案の効果） 上述のようにターゲットボックスのうち変形し易い隔壁
部分のみ別部品としてあるので、変形した場合はこの部
分のみの交換で良く、高価なターゲットボックス全体の
交換は必要でない。

またターゲットボックス自体も構造が簡単になるので製
作が容易となり、安価となるので、このターゲットボッ
クスを使用して作った放射性同位元素のコストダウンを
図ることが出来る。

【図面の簡単な説明】 第１図は本考案のターゲットボックスの断面図、第２図
は他の実施例のターゲットボックスの部分断面図、第３
図はサイクロトロンの縦断面図、第４図は同じく横断面
図、第５図は従来のターゲットボックスの断面図であ
る。 26：ターゲットボックス、26-1：フランジ部、26-2：反
応室、26-3：冷却室、26-4：液状ターゲット入口、26-
5：液状ターゲット出口、27：隔壁、28：蓋、29：ター
ゲットボックス、30：チタンコーティング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】サイクロトロンの液体用ターゲットボック
   スにおいて、チタン製の円筒の内筒面の中間で軸方向に
   垂直な平面上に段差を設け、この段差の前側は小内径の
   反応室とし、後側は大内径の冷却室とし、この段差部分
   には前記冷却室側から挿入されたチタン円板の隔壁を設
   け、前記冷却室の蓋の内側に冷却室の内筒面に遊嵌する
   円筒状の突堤を設けて前記隔壁を前記段差部分に押圧し
   て前記反応室と冷却室との間を液体封止状態としたこと
   を特徴とする液体用ターゲットボックス。