JPH0616366B2 - 直流電力ケーブル - Google Patents

直流電力ケーブル

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JPH0616366B2
JPH0616366B2 JP16031288A JP16031288A JPH0616366B2 JP H0616366 B2 JPH0616366 B2 JP H0616366B2 JP 16031288 A JP16031288 A JP 16031288A JP 16031288 A JP16031288 A JP 16031288A JP H0616366 B2 JPH0616366 B2 JP H0616366B2
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勝徳 小川
建哉 鈴木
亨 高橋
道則 畑田
利夫 丹羽
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Tokyo Electric Power Company Holdings Inc
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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、破壊強度の向上を図った直流電力ケーブルに
関するものである。
「従来の技術」 直流電力ケーブルは交流電力ケーブルに比べて、誘電損
失がなく、充電電流に対する無効分を補償するための設
備が不要である等の長所を持つ。
また、一般に、絶縁物の絶縁耐圧は、交流より直流の方
が大きく安定度を考慮する必要がないことから、送電距
離が長く、かつ大容量送電になればなる程、直流ケーブ
ルのメリットがでてくる。
現在、高電圧直流送電ケーブルは、主に低粘度油を用い
油圧をかけたタイプのOFケーブルが使用されている
が、その一方が、給油設備が不要で、防災性に優れたプ
ラスチックを絶縁体とするプラスチック絶縁ケーブルの
開発が望まれている。
プラスチック絶縁ケーブルは、交流電力ケーブルに対し
ては現在、架橋ポリエチレン(XLPE)ケーブルが汎
用されているが、直流電圧に対する空間電荷特性等の絶
縁上の問題から高電圧直流送電ケーブルとして、未だ実
用化されていない。
すなわち、XLPEケーブルでは直流高電圧印加によっ
て絶縁体中に、同極性の空間電荷が蓄積され、例えば、
逆極性のインパルス電圧が課電された場合や、直流極性
反転がなされた場合、その絶縁特性の低下が大きいとい
う理由から、高電圧直流送電ケーブルとしての実用化が
見送られている。
以上のようなことからXLPEに替る直流絶縁性能の優
れたプラスチック絶縁ケーブルの提供が望まれている。
「発明が解決しようとする課題」 ところで、一般にポリエチレン(PE)の固有絶縁破壊
強度は、結晶化度が高い程、すなわち密度が大きい程、
向上するとされ、また、ポリエチレンに直流電圧を印加
した時に、電極から電荷が注入されて形成される同極性
の空間電荷は、該ポリエチレンの結晶−非晶の界面等、
結晶に関係した領域にトラップされ易いとされている。
このような観点から、本発明者らは、上記の空間電荷特
性が、無極性のポリエチレンに或る種の極性基を導入す
ることによって変化することを見い出した。
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであっ
て、ポリエチレンの種類を特定し、また極性基の種類を
特定して、絶縁体中に局部的に形成される空間電荷の蓄
積を抑制し、その絶縁性能の向上を図った直流電力ケー
ブルを得ることを目的とするものである。
「課題を解決するための手段」 上記目的を達成するために、本発明では、固有絶縁破壊
強度の優れる結晶化度の高い低圧法ポリエチレンについ
て、極性基導入の効果を検討した結果、無水マレイン酸
をグラフト化した密度0.94g/cm3以上の低圧法ポ
リエチレンが空間電荷特性を含めた直流絶縁性能に優れ
ることわかった(請求項1に対応)。
更に無水マレイン酸の導入量は望ましくは0.02〜5
wt%に設定すれば、前記絶縁性能が特に向上することが
わかった(請求項2に対応)。
なお、前記無水マレイン酸の導入量を0.02〜5wt%
の範囲に設定したのは、0.02%未満では、空間電荷
特性の改善に効果がなく、また、5%を越えると、絶縁
破壊の原因となる空間電荷量は低い値に保たれるもの
の、一方で結晶化度の低下を招いて逆に、破壊強度の低
下を引き起こすことになるからである。
また、ケーブルへの押出加工性を考慮するとメルトフロ
ーレシオ(Melt Flow Rati;MFR)の望ましい範囲
は0.05〜10g/minである。
さらに、絶縁材には耐熱安定剤、触媒重合残渣吸収剤等
の必要な添加剤を加えて用いることができることは云う
までもない。
「作用」 電極から注入される空間電荷はポリエチレンの結晶−非
晶の界面等にトラップされ易いとされている。一方、グ
ラフト化された無水マレイン酸は側鎖としてバルキー
(bulky)であるために、規則正しい折り畳み鎖になる
ことができず、結晶−非晶の界面に多く存在することが
考えられる。
前記無水マレイン酸には、無極性のポリエチレン鎖部と
比較し、電子親和性のあるいは電子共鳴性の高いカルボ
ニル基が存在することにより、注入される空間電荷のト
ラップを低減させると考えられる。このような空間電荷
の低減によって、極性反転や逆極性インパルス破壊強度
が改善されるものと考えられる(請求項1に対応)。
なお、上述したように無水マレイン酸をポリエチレンに
グラフト重合すれば、確かに空間電荷特性の向上を図る
ことができるが、一方で、該無水マレイン酸のグラフト
量が多すぎると、結晶化度の低下を招き、結果として直
流破壊電圧値の低下を招来することになる(請求項2に
対応)(後述する実験結果によって裏付ける)。
「実験例」 ◇実験例(1) 密度の異なる各種ポリエチレンに対して所定量のマレイ
ン酸をグラフト化した試料を180℃×10分の条件で
シート状にプレス成型し、その絶縁破壊特性及び空間特
性を評価した。
絶縁破壊試験は、第2図に符号1で示すようにリセス形
状のシート試料(リセス部厚さ200〜300μm)を
用い、90℃の温度で高電圧を印加して、直流破壊特性
(DC)、インパルス特性(Imp)及び直流極性反転
特性を試験した。このときの課電条件は下記の通りであ
る。
なお、この試験は絶縁油中2で行い、かつ試料1の表面
には導電塗料3を予め塗布しておいた。
(課電条件) ・D.C.(+)−2KV/sec連続昇圧した、 ・Imp.(+)−予想破壊値70%でスタートした。
5KV/3回で昇圧した。
・極性反転 −予想破壊値70%でスタートした。
5KVで10分間に亘って(−),(+)と極性の反転
をさせつつステップアップした。
空間電荷特性は、第3図に符号4で示す厚さ200μm
のシート試料の上面及び下面に、それぞれ上部電極5A
及び下部電極5Bからなる金蒸着電極5(電極面積1
2.6cm2)を設け、試験回路によるコレクティング電
圧熱刺激電流法により評価した。
すなわち、ヒーター6によって試料4を90℃の温度に
保ち、スチッチSを閉じて−2KVの直流バイアス電
圧(Vb)を印加した状態で液体窒素N2により試料4
を冷却し(このとき他のスチッチS・S3は開となっ
ている)、次にスイッチS1を開いてスイッチSを閉
じ、これによって、所定のコレクティング電圧(Vc)
を印加して、試料を7℃/分の速度で昇温し、かつ電流
計7において熱刺激電流(TSC)を測定した。
なお、このとき電流計7によって測定した熱刺激電流
(TSC)は、符号8で示すレコーダーに記録した。ま
た、熱刺激電流(TSC)の測定に際しては、試料4を
10-5〜10-6torrに保持し真空容器内に配置した。
本試料系では、いずれも100〜120℃の温度におい
て、電極から注入された電子によるTSCピーク電流
(I max)が認められた(第4図(A)参照)。
そして、更に、直流バイアス電圧(Vb)とコレクティ
ング電圧(Vc)との比を種々設定するとともに、これ
らVc/Vbに対して得られたI maxを、プロットし
(第4図(B)参照)、更に、この第4図(B)に示す
とIとの和から金蒸着電極5からの注入空間電荷
量を評価した。
なお、前述したIとIとの和I+Iは、注入さ
れた空間電荷量に比例する(この試験結果は後述する第
5図の表の右欄に相対値として示す)(参考資料;日野
太郎著「電気材料物性工学」1985年3月刊行)。
上記の実験装置によって種々のシート試料No.1〜No.1
0を試験し、その結果を第5図の表にまとめた。
前記シート試料No.1〜No.10の内、No.3〜No.6、N
o.9〜No.10は本発明の請求項1・2で示されたシー
ト試料(実施例と表示)であり、低圧法ポリエチレンの
密度が0.94g/cm3以上、かつ、無水マレイン酸量
が0.02〜5wt%に設定されたものである。その内、
No.3〜No.6に示すシート試料は低圧法ポリエチレンの
密度を一定にして、無水マレイン酸の重量%を変化させ
たものであり、逆に、No.9〜No.10に示すシート試料
は、無水マレイン酸量を一定にして、低圧法ポリエチレ
ンの密度を変化させたものである。
また、No.1〜No.2、No.7〜No.8は、比較用のシート
試料(比較例と表示)であって、その内、No.1〜No.
2、No.7に示すシート試料は、無水マレイン酸量が
0.02〜5wt%の範囲から外れるもの、No.8に示す
シート試料は、無水マレイン酸量が0.02〜5wt%の
範囲内に設定される一方で、ポリエチレンに0.92g
/cm3の高圧法ポリエチレンが使用されてなるものであ
る。
結果の表に示すように、無水マレイン酸量が0.02%
未満では、空間電荷量が多く、極性反転の低下も大き
い。5%を越えると、破壊強度の低下が顕著となった
(No.1〜No.7の比較による)。
また、密度の小さい高圧法ポリエチレンでは空間電荷量
は小さいが破壊強度が低く、密度0.94g/cm3 以上の
低圧法ポリエチレンにおいて良好な破壊特性が得られた
(No.7〜No.10の比較による)。
なお、この実験では、実施例のNo.3〜No.6、No.9〜N
o.10に示すように、無水マレイン酸の量を0.02〜
5wt%の範囲すれば、空間電荷量の低減を図ることがで
き、かつ破壊強度の向上を図ることができるが、一方
で、比較例のNo.1とNo.2とを比較してわかるように、
無水マレイン酸の量を必ずしも0.02〜5wt%の範囲
に設定しなくとも、少量の無水マレイン酸を含有してい
るだけで、空間電荷量の低減を図ることができ、かつ破
壊強度の向上を図ることができることがわかる。
◇実験例(2) 第5図の表に示すNo.1とNo.4の絶縁体と、XLPEと
を絶縁体して直流電力ケーブルを造り、その破壊強度を
比較した。なお、ここで比較する直流電力ケーブルは、
胴体断面積60mm2、絶縁厚3.5mm、押出による内部
及び外部半導電層を施した3層構造をとっている。
それぞれの直流電力ケーブルについて、90℃の温度で
第6図に示す条件で破壊試験を行ない、その結果を第7
図の表に示す如くまとめた。
そして、第7図に示すようにNo.4の絶縁体によって作
製したケーブルは、No.1の絶縁体によって作製したケ
ーブル、XLPEによって作製したケーブルと比較し
て、直流破壊特性(DC)、インパルス特性(Imp)及
び直流極性反転特性が共に向上し、その破壊強度が向上
したことが明らかとなった。
「発明の効果」 以上詳細に説明したように、この発明によれば、無水マ
レイン酸をグラフト重合させてなる0.94g/cm3
上の低圧法ポリエチレンを絶縁体に用い、また無水マレ
イン酸のグラフト量を0.02〜5wt%の範囲に設定す
ることによって、絶縁体中に局部的に形成される空間電
荷の蓄積を抑制し、その破壊強度(絶縁性能)の向上を
図ることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第7図は本発明の一実施例を示す図であって、
第1図は無水マレイン酸をグラフト重合させてなるポリ
エチレンの構造式、第2図は破壊強度を試験する装置を
示す概略図、第3図は空間電荷量を試験する装置を示す
概略図、第4図(A)は熱刺激電流と温度との関係を示す
グラフ、第4図(A)はImax とVc/Vbとの関係を示
すグラフ、第5図はシート試料の破壊強度と空間電荷量
とを表す試験結果を示す表、第6図は直流電力ケーブル
を破壊させるための試験条件を示す表、第7図は直流電
力ケーブルの破壊強度と空間電荷量とを表す試験結果を
示す表である。
フロントページの続き (72)発明者 高橋 亨 東京都江東区木場1丁目5番1号 藤倉電 線株式会社内 (72)発明者 畑田 道則 東京都江東区木場1丁目5番1号 藤倉電 線株式会社内 (72)発明者 丹羽 利夫 東京都江東区木場1丁目5番1号 藤倉電 線株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−150810(JP,A)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】無水マレイン酸をグラフト重合させてなる
    0.94g/cm3 以上の低圧法ポリエチレンを絶縁体に
    用いたことを特徴とする直流電力ケーブル。
  2. 【請求項2】上記無水マレイン酸のグラフト量は0.0
    2〜5wt%の範囲であることを特徴とする請求項1記載
    の直流電力ケーブル。
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