JPH0615695B2 - 鉄損の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
鉄損の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法Info
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- JPH0615695B2 JPH0615695B2 JP1759185A JP1759185A JPH0615695B2 JP H0615695 B2 JPH0615695 B2 JP H0615695B2 JP 1759185 A JP1759185 A JP 1759185A JP 1759185 A JP1759185 A JP 1759185A JP H0615695 B2 JPH0615695 B2 JP H0615695B2
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Description
【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 一方向性電磁鋼板は、主として変圧器その他の電気機器
の鉄心として用いられ、その磁気特性が良好であること
が要求される。特に鉄心として使用した際のエネルギー
損失、即ち鉄損が低いことが重要であり、近年のエネル
ギー事情の悪化からとくに鉄損の低い電磁鋼板に対する
要求は一段と高まりつつある。
の鉄心として用いられ、その磁気特性が良好であること
が要求される。特に鉄心として使用した際のエネルギー
損失、即ち鉄損が低いことが重要であり、近年のエネル
ギー事情の悪化からとくに鉄損の低い電磁鋼板に対する
要求は一段と高まりつつある。
(従来の技術) ところで鉄損を減少させるためには、結晶包囲を(110)
〔001〕方位により高度に揃えること、Si含有量を上
げ、それにより鋼板き電気抵抗を増加させること、そし
て不純物の低減させること、などが種々に試みられた。
しかしながら、これらの方法による鉄損の低減は近年の
技術の向上によりほぼ限界近くに達している。
〔001〕方位により高度に揃えること、Si含有量を上
げ、それにより鋼板き電気抵抗を増加させること、そし
て不純物の低減させること、などが種々に試みられた。
しかしながら、これらの方法による鉄損の低減は近年の
技術の向上によりほぼ限界近くに達している。
一方特開昭50−137819号公報では、鋼板に二次再結晶阻
止領域を形成させることにより、二次粒径を小さくし、
鉄損を減少させる方法が提案されているが、この方法は
実用化が難かしく、実際には用いられていない。
止領域を形成させることにより、二次粒径を小さくし、
鉄損を減少させる方法が提案されているが、この方法は
実用化が難かしく、実際には用いられていない。
このように冶金学的な手法による鉄損の低減はほぼ限界
近くに達していて、たとえば、板厚0.30mmの場合W
17/50で0.95W/kg以下の鋼板を製造することは不可能
に近かった。ここでW17/50は磁束密度1.7T,周波
数50Hzでの鉄損である。
近くに達していて、たとえば、板厚0.30mmの場合W
17/50で0.95W/kg以下の鋼板を製造することは不可能
に近かった。ここでW17/50は磁束密度1.7T,周波
数50Hzでの鉄損である。
したがつて鉄損の飛躍的な減少を達成するためには冶金
学的手段以外の手法を講ずる必要がある。
学的手段以外の手法を講ずる必要がある。
このような方法の一つとして特開昭49−96920号公報に
提案されているように鋼板表面を鏡面にする方法も知ら
れているが、鋼板の絶縁などの問題があり実用化されて
いない。
提案されているように鋼板表面を鏡面にする方法も知ら
れているが、鋼板の絶縁などの問題があり実用化されて
いない。
また仕上げ焼なましずみ鋼板にナイフやかみそりの刃先
などで線状疵を導入することによって鉄損を減少させる
試みもあるけれども、この方法では疵による絶縁被膜の
劣化、疵の周辺に生ずるかえりによる占積率の劣化、磁
歪の劣化などの問題があり、とくに鋼板を積層した際に
単板での鉄損特性がそのまま生かされないという欠点を
もつ。したがって積層して使用するトランスや巻鉄心に
対しては実用上のメリットがなく、実際には使用されて
いない。
などで線状疵を導入することによって鉄損を減少させる
試みもあるけれども、この方法では疵による絶縁被膜の
劣化、疵の周辺に生ずるかえりによる占積率の劣化、磁
歪の劣化などの問題があり、とくに鋼板を積層した際に
単板での鉄損特性がそのまま生かされないという欠点を
もつ。したがって積層して使用するトランスや巻鉄心に
対しては実用上のメリットがなく、実際には使用されて
いない。
さらに別の方法として特開昭53−137016号、特開昭55−
18566号および特開昭57−188810号各公報などには、仕
上げ焼なまし後鋼板に微小歪を生じさせることによる鉄
損特性改善方法が提案され、これらはそれぞれボールペ
ン状の小球によるスクラッチ、レーザーによるスクラッ
チ、放電加工と手段は異なるが、いずれも、仕上げ焼な
ましのあと、上記微小歪を導入することにより磁区の細
分化をはかり、鉄損を減少させようとする基本構想を同
じくしている。
18566号および特開昭57−188810号各公報などには、仕
上げ焼なまし後鋼板に微小歪を生じさせることによる鉄
損特性改善方法が提案され、これらはそれぞれボールペ
ン状の小球によるスクラッチ、レーザーによるスクラッ
チ、放電加工と手段は異なるが、いずれも、仕上げ焼な
ましのあと、上記微小歪を導入することにより磁区の細
分化をはかり、鉄損を減少させようとする基本構想を同
じくしている。
しかしながらこれらの方法には、その後高温での焼なま
しが行われたときに、鉄損は劣化するという欠点があ
り、高温での歪取焼なましを必要とする巻鉄心用材料と
しては実用上の効果が得られない。
しが行われたときに、鉄損は劣化するという欠点があ
り、高温での歪取焼なましを必要とする巻鉄心用材料と
しては実用上の効果が得られない。
そののち、類似の歪の導入ではあるが、上記のものに対
してより複雑な歪を導入し、さらに550゜−900℃で加熱
して歪部を再結晶させる、いわゆる複雑歪方法、特開昭
56−130454号公報が提案され、巻鉄心材にも用いられる
様にはなった。
してより複雑な歪を導入し、さらに550゜−900℃で加熱
して歪部を再結晶させる、いわゆる複雑歪方法、特開昭
56−130454号公報が提案され、巻鉄心材にも用いられる
様にはなった。
(発明が解決すべき問題点) 上記したような各種の磁性向上策が提案されて来たもの
の、近年ますます省エネルギー要請が強まり徹底化さ
れ、さらにより以上低鉄損化された電磁鋼板の出現が望
まれている。特に上記の微小歪さらには複雑歪法など
は、素材となる鋼板の磁球密度B8(磁場の強さ800A
/mにおける磁球密度)が高い程低鉄損化効果が大きい
ため、よりB8値の高い材料の製造方法の開発が望まれ
ている。もちろん、微小歪、複数歪法などを前提とせず
とも良好な鉄損値を示すものが望ましいことは云うまで
もない。
の、近年ますます省エネルギー要請が強まり徹底化さ
れ、さらにより以上低鉄損化された電磁鋼板の出現が望
まれている。特に上記の微小歪さらには複雑歪法など
は、素材となる鋼板の磁球密度B8(磁場の強さ800A
/mにおける磁球密度)が高い程低鉄損化効果が大きい
ため、よりB8値の高い材料の製造方法の開発が望まれ
ている。もちろん、微小歪、複数歪法などを前提とせず
とも良好な鉄損値を示すものが望ましいことは云うまで
もない。
(問題を解決するための手段) この発明は二次再結晶粒のサイズの磁束密度を改善する
ことにより、上記問題点を解決すまもので、この結果鉄
損の極めて優れた一方向性電磁鋼板を得ることが出来る
ものである。本発明法が磁束密度をも改善するものであ
るから、公知の微小ひずみ法、さらには複雑ひずみ法な
どによる磁区制御法への適用素材鋼板としても適してい
ることは云うまでもない。
ことにより、上記問題点を解決すまもので、この結果鉄
損の極めて優れた一方向性電磁鋼板を得ることが出来る
ものである。本発明法が磁束密度をも改善するものであ
るから、公知の微小ひずみ法、さらには複雑ひずみ法な
どによる磁区制御法への適用素材鋼板としても適してい
ることは云うまでもない。
この発明はSi 4.5重量%(以下単に%と略す)以下
を含むけい素鋼熱延板を必要に応じて900゜〜1200℃で
の焼なましを行なったのち1回または中間焼なましをは
さむ2回以上の冷間圧延により最終製品板厚となし、脱
炭焼なましののち最終仕上げ焼なましを行なう一方向性
電磁鋼板の製造方法において、脱炭焼なまし工程と最終
仕上げ焼なまし工程との間で、鋼板表面に形成されてい
る酸化層の厚みの一部を、鋼板の片面あるいは必要に応
じて両面の全表面積の3〜97%の範囲内で、好ましく
は機械的、熱的、化学的又は電気化学的手法により部分
的に除去し、しかもかゝる除去部が、鋼板の各50mm×
50mmの面積範囲内に少なくとも1つ以上存在すること
を要する。
を含むけい素鋼熱延板を必要に応じて900゜〜1200℃で
の焼なましを行なったのち1回または中間焼なましをは
さむ2回以上の冷間圧延により最終製品板厚となし、脱
炭焼なましののち最終仕上げ焼なましを行なう一方向性
電磁鋼板の製造方法において、脱炭焼なまし工程と最終
仕上げ焼なまし工程との間で、鋼板表面に形成されてい
る酸化層の厚みの一部を、鋼板の片面あるいは必要に応
じて両面の全表面積の3〜97%の範囲内で、好ましく
は機械的、熱的、化学的又は電気化学的手法により部分
的に除去し、しかもかゝる除去部が、鋼板の各50mm×
50mmの面積範囲内に少なくとも1つ以上存在すること
を要する。
以下上記構成については詳細に解説を加える。
一方向性電磁鋼板はSi4.5%以下を含むけい素鋼熱
延板を必要に応じて900゜〜1200での焼なましを行なっ
たのち、1回または中間焼なましをはさむ2回以上の冷
間圧延により最終製品板厚となし、脱炭焼なましを施し
たのち、最終仕上げ焼なましを行なうことにより製造さ
せるのが通例である。
延板を必要に応じて900゜〜1200での焼なましを行なっ
たのち、1回または中間焼なましをはさむ2回以上の冷
間圧延により最終製品板厚となし、脱炭焼なましを施し
たのち、最終仕上げ焼なましを行なうことにより製造さ
せるのが通例である。
なお、熱延板の焼なまし工程は、たとえば最終製品の板
厚が薄い場合には二次再結晶粒の確保の観点から必要な
工程であるが、製品板圧が厚い場合には必ずしも必要で
なく、省略して良い。
厚が薄い場合には二次再結晶粒の確保の観点から必要な
工程であるが、製品板圧が厚い場合には必ずしも必要で
なく、省略して良い。
最終仕上げ焼なましは、鋼板に主としてMgOよりなる焼
鈍分離剤を塗布し、コイル状にして約1200℃の水素雰囲
気中で行なわれ、この焼なましでは二次再結晶と鋼中の
不純物の純化が行なわれる。
鈍分離剤を塗布し、コイル状にして約1200℃の水素雰囲
気中で行なわれ、この焼なましでは二次再結晶と鋼中の
不純物の純化が行なわれる。
仕上げ焼なまし後鋼板は未反応のMgOを除去し、その上
にりん酸塩などの絶縁被膜処理が行なわれる。この被膜
処理では、鋼板は800℃程度に加熱され、仕上げ焼なま
し時のコイルセットを除去することが同時に行なわれ
る。
にりん酸塩などの絶縁被膜処理が行なわれる。この被膜
処理では、鋼板は800℃程度に加熱され、仕上げ焼なま
し時のコイルセットを除去することが同時に行なわれ
る。
発明者らは、脱炭焼なまし工程終了材に関して種々検討
した結果、特に鋼板表面に形成されている酸化層に関
し、鋼板全表面にある密度を持たせて、ある領域の酸化
層の厚みを一部除去すると、最終的な鉄損が大巾に減少
することを以下に示す実験により見出したものである。
した結果、特に鋼板表面に形成されている酸化層に関
し、鋼板全表面にある密度を持たせて、ある領域の酸化
層の厚みを一部除去すると、最終的な鉄損が大巾に減少
することを以下に示す実験により見出したものである。
実験にはC0.072%,Si3.15%,Mn0.07%,S0.025
%,Sol,Al0.030%,N0.0078%を含む連続鋳造スラブ
から熱間圧延して2.5mmの一方向性電磁鋼板素材と
し、1100℃の焼なましののち、0.30mmまで冷間圧延し
た。これら冷延材は840℃の湿潤H2気流中で150秒間均
熱することにより脱炭され、Cは0.0017%に減少した。
またかかる弱酸化性雰囲気中での加熱ゆえに、鋼板表面
にはシリカ,ファイアライトならびに酸化鉄から成る厚
み約3ミクロンの酸化層が形成された。これら多数の脱
炭焼なまし材を(A)〜(F)の6つのグループにわけ、(A)
は無処理、(B)〜(F)は以下に説明する処理により鋼板表
面の酸化層の一部を除去した。つまり、(B),(C)は直径
0.5mmの丸型ノズルから100kg/cm2の高圧水流を噴出
させ、鋼板の表面を、圧延方向に平行な方向に、(B)は
間隔15mm、(c)は間隔5mmで掃引したものであって、
掃引個所は巾約1.0mmにわたって酸化層の表面部約1
〜1.5ミクロン程が除去されていた。(D),(E)は、1
0%硝酸水溶液を鋼板片面に噴霧させ、のちに水流する
方法によったもので、直径が約1mmの点状の部分が、深
さ約0.5〜1ミクロンだけ除かれた。(D)ではかかる
点状密度は約1個/cm2、(E)では約5個/cm2であっ
た。
%,Sol,Al0.030%,N0.0078%を含む連続鋳造スラブ
から熱間圧延して2.5mmの一方向性電磁鋼板素材と
し、1100℃の焼なましののち、0.30mmまで冷間圧延し
た。これら冷延材は840℃の湿潤H2気流中で150秒間均
熱することにより脱炭され、Cは0.0017%に減少した。
またかかる弱酸化性雰囲気中での加熱ゆえに、鋼板表面
にはシリカ,ファイアライトならびに酸化鉄から成る厚
み約3ミクロンの酸化層が形成された。これら多数の脱
炭焼なまし材を(A)〜(F)の6つのグループにわけ、(A)
は無処理、(B)〜(F)は以下に説明する処理により鋼板表
面の酸化層の一部を除去した。つまり、(B),(C)は直径
0.5mmの丸型ノズルから100kg/cm2の高圧水流を噴出
させ、鋼板の表面を、圧延方向に平行な方向に、(B)は
間隔15mm、(c)は間隔5mmで掃引したものであって、
掃引個所は巾約1.0mmにわたって酸化層の表面部約1
〜1.5ミクロン程が除去されていた。(D),(E)は、1
0%硝酸水溶液を鋼板片面に噴霧させ、のちに水流する
方法によったもので、直径が約1mmの点状の部分が、深
さ約0.5〜1ミクロンだけ除かれた。(D)ではかかる
点状密度は約1個/cm2、(E)では約5個/cm2であっ
た。
(F)は比較例で(D)(F)と同じ10%硝酸水溶液ではある
が、その中に鋼板全体を浸漬させて鋼板の全領域にわた
って酸化層の厚みを約1ミクロン除去した。こののち全
てのサンプルはMgO塗布し積層したうえで乾燥H2ガス
気流中1200℃で10時間の仕上焼なましを行なって二次
再結晶粒を成長ならびにフォルステライト被膜を形成さ
せると共に純化を行なった。表面の余剰MgOを水洗のの
ち、公知の張力コーティングを塗布・焼付をして磁気的
性質を比較した。
が、その中に鋼板全体を浸漬させて鋼板の全領域にわた
って酸化層の厚みを約1ミクロン除去した。こののち全
てのサンプルはMgO塗布し積層したうえで乾燥H2ガス
気流中1200℃で10時間の仕上焼なましを行なって二次
再結晶粒を成長ならびにフォルステライト被膜を形成さ
せると共に純化を行なった。表面の余剰MgOを水洗のの
ち、公知の張力コーティングを塗布・焼付をして磁気的
性質を比較した。
その平均的な値を下表に一覧する。
この表から判る様に、無処理(A)、あるいは鋼板表面全
領域の酸化層の厚みを一部減少させた(F)に比して、鋼
板の一部の領域の酸化層の厚みを減厚した(B)〜(E)の場
合には、磁束密度、鉄損共に改善されていることがわか
る。
領域の酸化層の厚みを一部減少させた(F)に比して、鋼
板の一部の領域の酸化層の厚みを減厚した(B)〜(E)の場
合には、磁束密度、鉄損共に改善されていることがわか
る。
明確でないが、磁気的性質が厚みの減少により改善され
る理由は脱炭焼なましで鋼板表面に形成される酸化層は
一般にその厚み方向において均質では無く、最下層では
シリカが中間厚の所ではファイアライトに富み、最表層
部で鉄の酸化物に富んでいることに関連するものと推定
される。かゝる鋼板に焼鈍分離剤MgOが塗布され、仕上
げ焼なましされる時、積層間の雰囲気ガスと鋼板が酸化
あるいは還元反応を起こすが、かかる反応が鋼板の最表
面部に露呈している鉄の酸化物、ファイアライト、シリ
ヤの場合で異なるものと推定される。かゝる現象が鋼中
に微細析出分散しているAlNとかMnSなどのインヒ
ビターの析出、溶解挙動に影響を与え、結果として二次
再結晶挙動に影響を与えるものと考えられる。ただし、
上記実験の(F)の場合に見る様な鋼板全面が同一の露呈
状態であることは好ましい結果を見ない。その理由は、
恐らく、上記の様な酸化層の露呈部の異るところが散在
した場合には、二次再結晶粒の核発生とその成長を好ま
しい状態にしているものと推定される。従って、本法は
酸化層の露呈表面部が場所場所で異なることが本質的な
ものであるから、実施態様としては、部分的な除去の前
あるいはのちに鋼板全体が軽酸洗されることがあっても
良い。
る理由は脱炭焼なましで鋼板表面に形成される酸化層は
一般にその厚み方向において均質では無く、最下層では
シリカが中間厚の所ではファイアライトに富み、最表層
部で鉄の酸化物に富んでいることに関連するものと推定
される。かゝる鋼板に焼鈍分離剤MgOが塗布され、仕上
げ焼なましされる時、積層間の雰囲気ガスと鋼板が酸化
あるいは還元反応を起こすが、かかる反応が鋼板の最表
面部に露呈している鉄の酸化物、ファイアライト、シリ
ヤの場合で異なるものと推定される。かゝる現象が鋼中
に微細析出分散しているAlNとかMnSなどのインヒ
ビターの析出、溶解挙動に影響を与え、結果として二次
再結晶挙動に影響を与えるものと考えられる。ただし、
上記実験の(F)の場合に見る様な鋼板全面が同一の露呈
状態であることは好ましい結果を見ない。その理由は、
恐らく、上記の様な酸化層の露呈部の異るところが散在
した場合には、二次再結晶粒の核発生とその成長を好ま
しい状態にしているものと推定される。従って、本法は
酸化層の露呈表面部が場所場所で異なることが本質的な
ものであるから、実施態様としては、部分的な除去の前
あるいはのちに鋼板全体が軽酸洗されることがあっても
良い。
次に、上記実験にて用いたサンプルを中心として噴流水
法ならびに10%硝酸水溶液法により、鋼板の片面のみ
を各種の点状、線状に除去した場合の、鋼板全表面積
(この場合、片面のみ)に対する除去部の面積割合
(α)と磁性向上率(β)との関係、ならびに除去部の
密度(50mm×50mm中の対の個数)と磁性向上率との
関係について調べたところ、第1図に示す結果となっ
た。なお、ここでβは、 である。つまり、本発明による酸化層除去は鉄損値に関
してのみならず磁束密度についても有効なので、便宜上
かゝる指標(β)を用いた。この結果からαは3〜97
%において、しかも50mm×50mm中の除去部が1個以
上の場合に磁性が向上することが判る。なお、第1図の
結果は、鋼板の片面のみの除去の例であるが、両面を処
理した場合には一般にその効果はさらに増大する傾向に
ある。
法ならびに10%硝酸水溶液法により、鋼板の片面のみ
を各種の点状、線状に除去した場合の、鋼板全表面積
(この場合、片面のみ)に対する除去部の面積割合
(α)と磁性向上率(β)との関係、ならびに除去部の
密度(50mm×50mm中の対の個数)と磁性向上率との
関係について調べたところ、第1図に示す結果となっ
た。なお、ここでβは、 である。つまり、本発明による酸化層除去は鉄損値に関
してのみならず磁束密度についても有効なので、便宜上
かゝる指標(β)を用いた。この結果からαは3〜97
%において、しかも50mm×50mm中の除去部が1個以
上の場合に磁性が向上することが判る。なお、第1図の
結果は、鋼板の片面のみの除去の例であるが、両面を処
理した場合には一般にその効果はさらに増大する傾向に
ある。
ところで、本発明の特徴とする、脱炭焼なまし工程で生
成した酸化層の、部分的な除去の方法に関しては、先述
の各種の実験結果ならびに効果メカニズムの推定結果か
ら必然的に帰結される如く、酸化層の表面露呈部の内質
を鋼板面内で部分的に変化させる方法であれば何でもよ
い。従って、脱炭焼なまし中に、湿潤雰囲気ガスの良く
当る場所と当らない場所が出来る様にするのも良い方法
であるが、脱炭性が阻害される恐れがあるので好ましく
ない。一般には脱炭焼なましののち前記した実験例の様
な噴流水とかショット,グリッドのブラスチングなどの
機械的手法によって局部的に酸化層の上層部を削ぎ取る
とか、高エネルギーの光線、あるいはレーザー光線、さ
らには電子ビーム、放電あなどによる酸化層の上層部の
瞬間的な蒸発などの熱的手段によるとか、酸洗液あるい
は電解などによる化学的又は電気化学的手法によっても
よい。場合によっては、これらの方法の組合せ例えばレ
ーザー照射、あるいは放電と酸洗法の組合せであっても
よい。
成した酸化層の、部分的な除去の方法に関しては、先述
の各種の実験結果ならびに効果メカニズムの推定結果か
ら必然的に帰結される如く、酸化層の表面露呈部の内質
を鋼板面内で部分的に変化させる方法であれば何でもよ
い。従って、脱炭焼なまし中に、湿潤雰囲気ガスの良く
当る場所と当らない場所が出来る様にするのも良い方法
であるが、脱炭性が阻害される恐れがあるので好ましく
ない。一般には脱炭焼なましののち前記した実験例の様
な噴流水とかショット,グリッドのブラスチングなどの
機械的手法によって局部的に酸化層の上層部を削ぎ取る
とか、高エネルギーの光線、あるいはレーザー光線、さ
らには電子ビーム、放電あなどによる酸化層の上層部の
瞬間的な蒸発などの熱的手段によるとか、酸洗液あるい
は電解などによる化学的又は電気化学的手法によっても
よい。場合によっては、これらの方法の組合せ例えばレ
ーザー照射、あるいは放電と酸洗法の組合せであっても
よい。
これらの方法は、原理的に云って脱炭焼なまし工程と最
終仕上げ焼なまし工程との間であればどこでもよく、例
えば、脱炭焼なまし工程の冷却途上でもよいし、手段は
限定されるがMgO塗布後であってもよい。
終仕上げ焼なまし工程との間であればどこでもよく、例
えば、脱炭焼なまし工程の冷却途上でもよいし、手段は
限定されるがMgO塗布後であってもよい。
なお、本発明は単に鉄損のみならず磁束密度の向上にも
有効である。また、本発明方法は二次再結晶粒に公知の
単純ひずみあるいは複数ひずみ方法などによる磁区細分
化を行なえばさらに鉄損の優れた鋼板になることは云う
までもない。
有効である。また、本発明方法は二次再結晶粒に公知の
単純ひずみあるいは複数ひずみ方法などによる磁区細分
化を行なえばさらに鉄損の優れた鋼板になることは云う
までもない。
(実施例) 以下具体例でもって本発明の効果を示す。
〔実施例1〕 Si3.30%,C0.060%,S0.019%,Mn0.071%を含
む連続鋳造片を再加熱後熱間圧延して得られた板厚2.
5mmの一方向性電磁鋼板用熱延板を1000℃で焼なましし
てのち、0.65mmまで冷間圧延し、再び1000℃で焼なまし
を行なった。その後、最終板厚の0.175mmまで冷間圧延
し、830℃の湿潤H2気流中で脱炭焼なましを行なっ
た。
む連続鋳造片を再加熱後熱間圧延して得られた板厚2.
5mmの一方向性電磁鋼板用熱延板を1000℃で焼なましし
てのち、0.65mmまで冷間圧延し、再び1000℃で焼なまし
を行なった。その後、最終板厚の0.175mmまで冷間圧延
し、830℃の湿潤H2気流中で脱炭焼なましを行なっ
た。
この段階でサンプルを2つのグループに分け、一方は処
理なし、一方は0.1mm のノズルから500kg/cm2な
る高圧噴流水を鋼板表面に縦横の格子状に吹きつけ、鋼
板の両表面に形成されている酸化層の合縫み約3ミクロ
ンのうち、約1ミクロン程を除去した。
理なし、一方は0.1mm のノズルから500kg/cm2な
る高圧噴流水を鋼板表面に縦横の格子状に吹きつけ、鋼
板の両表面に形成されている酸化層の合縫み約3ミクロ
ンのうち、約1ミクロン程を除去した。
除去された全体の面積割合は約40%であり、鋼板の5
0mm×50mmの範囲内に約100個程存在していた。これ
らのサンプルにMgOを塗布し、乾燥H2気流中1200℃で
15時間最終仕上げ焼なましを行なったのち、磁気特性
は以下の如くであった。
0mm×50mmの範囲内に約100個程存在していた。これ
らのサンプルにMgOを塗布し、乾燥H2気流中1200℃で
15時間最終仕上げ焼なましを行なったのち、磁気特性
は以下の如くであった。
無処理剤:B8 1.84(T),W17/50 1.05(W/k
g) 処理剤 :B8 1.87(T),W17/50 1.98(W/k
g) 本発明の方法で処理したものは、B8,W17/50共
に改善されているのが判る。
g) 処理剤 :B8 1.87(T),W17/50 1.98(W/k
g) 本発明の方法で処理したものは、B8,W17/50共
に改善されているのが判る。
〔実施例2〕 Si3.25%,C0.070%,Mn0.075%,S0.025%,So
l.Al0.030%,N0.0075%を含む連続鋳造片を熱間圧延
して得られた板厚2.0mmの一方向電磁鋼板用熱延板を
1100℃で焼なまししてのち、0.23mmまで冷間圧延し、83
5℃の湿潤H2気流中で脱炭焼なましを行った。この段
階でサンプルを(A)〜(D)の4つのグループに分け、(A)
は無処理、(B)は実施例1の場合と同じ条件の噴流水
で、(C)は直径が約0.5mmの、角の尖った鋼製の小粒
を、エアーと共に鋼板約45゜上方から吹きつける方法
で、(D)は硝酸水溶液中に短時間鋼板を浸漬して、鋼板
全体の酸化膜の最表層部を約0.5ミクロン程除去して
のち、(C)と同一方法によって部分的な個所の酸化層を
さらに除去した。これらの処理ののち、全てのサンプル
はMgOを塗布され、乾燥H2気流中1200℃で15時間の
最終仕上げ焼なましを行ない、最終的に張力コーティン
グを塗布・焼付けし、磁性を測定した。その結果を、各
々の場合の全表面積に対する除去面積割合ならびに50
mm×50mm当りの除去部の個数と共に下表に一覧する。
l.Al0.030%,N0.0075%を含む連続鋳造片を熱間圧延
して得られた板厚2.0mmの一方向電磁鋼板用熱延板を
1100℃で焼なまししてのち、0.23mmまで冷間圧延し、83
5℃の湿潤H2気流中で脱炭焼なましを行った。この段
階でサンプルを(A)〜(D)の4つのグループに分け、(A)
は無処理、(B)は実施例1の場合と同じ条件の噴流水
で、(C)は直径が約0.5mmの、角の尖った鋼製の小粒
を、エアーと共に鋼板約45゜上方から吹きつける方法
で、(D)は硝酸水溶液中に短時間鋼板を浸漬して、鋼板
全体の酸化膜の最表層部を約0.5ミクロン程除去して
のち、(C)と同一方法によって部分的な個所の酸化層を
さらに除去した。これらの処理ののち、全てのサンプル
はMgOを塗布され、乾燥H2気流中1200℃で15時間の
最終仕上げ焼なましを行ない、最終的に張力コーティン
グを塗布・焼付けし、磁性を測定した。その結果を、各
々の場合の全表面積に対する除去面積割合ならびに50
mm×50mm当りの除去部の個数と共に下表に一覧する。
本発明例(B)〜(D)は(A)に比してB8,W17/50共に向上
していることが判る。特に(D)の如く、一部を軽酸洗し
たのちさらに部分的に酸化層を除去した場合にはさらに
磁性が改善されていることが判る。
していることが判る。特に(D)の如く、一部を軽酸洗し
たのちさらに部分的に酸化層を除去した場合にはさらに
磁性が改善されていることが判る。
(発明の効果) 以上のとおり、この発明によって有利に、鉄損低減高の
著しい改善が一方向性電磁鋼板の製造過程のさしたる変
更を要せずに実現される。
著しい改善が一方向性電磁鋼板の製造過程のさしたる変
更を要せずに実現される。
第1図は、脱炭焼なまし工程で形成された酸化層を除去
した面積の、鋼板全面積に対する割合α(%)ならびに
除去部の個数の磁性向上率との関係を示す図である。
した面積の、鋼板全面積に対する割合α(%)ならびに
除去部の個数の磁性向上率との関係を示す図である。
Claims (2)
- 【請求項1】Si 4.5重量%以下を含むけい素鋼熱延板
を、必要に応じて行なう900゜〜1200℃での焼なましの
後、1回または中間焼なましをはさむ2回以上の冷間圧
延により最終製品板厚となし、脱炭焼なましののち最終
仕上げ焼なましを行なう一方向性電磁鋼板の製造方法に
おいて、 前記脱炭焼なまし工程と前記最終仕上げ焼なまし工程と
の間で、鋼板表面に形成されている酸化層の厚み方向の
一部を鋼板表面上部分的に除去し、該除去部が、鋼板の
片面あるいは両面の全表面積の3〜97%の範囲内で、
しかも50mm×50mmの面積範囲内に少なくとも1つ以
上存在することを特徴とする磁気特性の優れた一方向性
電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項2】前記酸化層の一部を機械的,熱的,化学的
又は電気化学的手段により除去する特許請求の範囲第1
項記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1759185A JPH0615695B2 (ja) | 1985-01-31 | 1985-01-31 | 鉄損の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1759185A JPH0615695B2 (ja) | 1985-01-31 | 1985-01-31 | 鉄損の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS61177319A JPS61177319A (ja) | 1986-08-09 |
JPH0615695B2 true JPH0615695B2 (ja) | 1994-03-02 |
Family
ID=11948138
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1759185A Expired - Lifetime JPH0615695B2 (ja) | 1985-01-31 | 1985-01-31 | 鉄損の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0615695B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0657857B2 (ja) * | 1986-08-06 | 1994-08-03 | 川崎製鉄株式会社 | 低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法 |
CN117344210A (zh) * | 2022-06-29 | 2024-01-05 | 宝山钢铁股份有限公司 | 取向硅钢及其制造方法 |
-
1985
- 1985-01-31 JP JP1759185A patent/JPH0615695B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS61177319A (ja) | 1986-08-09 |
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