JPH0615556A - 光コネクタフェルール端面研磨機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 光コネクタのフェルール端面を研磨するに際
し、フェルールを回転や揺動させることなく、所定形状
に高精度で研磨でき、しかも低価格の装置が得られるよ
うにする。 【構成】 光ファイバーｆが接続されたフェルールＦの
保持具２を加圧機構３を介して支持フレーム１４に取り
付け、定置とする。ＸＹステージ４によりＸＹ平面内を
自由に移動自在に支持した研磨定盤１を、回転駆動軸７
・回転軸８・内歯車１０・外歯車１１・駆動ピン１２か
らなる遊星歯車装置により、移動させる。駆動ピン１２
とこれに連結された研磨定盤１が、連続した花びらの外
郭形状に沿って移動し、研磨定盤１に対して定置のフェ
ルールＦの研磨痕軌跡が前記花びら状となり、フェルー
ルを移動させなくても研磨できると共に、研磨方向が常
に変動して高精度の研磨を行える。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、光ファイバー同士を
機械的に接続する光コネクタにおいて、その接合部に取
り付けられるフェルールの先端を研磨する光コネクタフ
ェルール端面研磨機に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】光コネクタは、光ファイバー同士を永久
接続するスプライシングに対し、着脱可能に接続するこ
とのできる接合装置であり、従来より光ファイバー相互
間の接続や切離しを容易に行える各種の光コネクタが使
用されている。例えば、単芯用の光コネクタでは、軸ず
れや角度ずれの少ない（例えば、１０μｍシングルモー
ド光ファイバーでは軸ずれ１μｍ以下）接合を行うた
め、光ファイバーをセラミックス製のフェルール（接合
用補強円筒棒材）の中心に挿入して接着固定し、この光
コネクタフェルールを精密な内径を有する中空円筒内に
挿入し、光コネクタフェルールの先端同士を突き当て、
外側に配置したネジ部材で締結する方式のものが知られ
ている。この光コネクタは、優れた接続特性を有するた
め、特に光通信の分野で広く・大量に使用されている。

【０００３】このような光コネクタは、光コネクタフェ
ルールを直接突き合わせる方式のため、光コネクタフェ
ルールの先端を精密に研磨して接続損失を低くすると共
に、光通信システムのいたる所で用いられるため、短時
間で簡単に研磨することによって光コネクタ価格を低廉
化することなどが必要であり、高精度の光コネクタ特性
が得られると同時に、光コネクタの低価格化を実現でき
る研磨機が求められている。

【０００４】図６に示すのは、光コネクタフェルールの
端面を凸球面状に研磨する場合の従来の研磨機であり、
凹球面状の研磨面１００ａを有する研磨定盤１００と、
この上に配置されたフェルール保持具１０１を備えてい
る。フェルール保持具１０１は、少なくとも３本のフェ
ルールＦが研磨面１００ａの凹球面に垂直になるように
固定され、揺動と回転からなる歳差運動を行う機構を備
えている。研磨に際しては、回転する研磨定盤１００の
研磨面１００ａに研磨剤１０２を供給しながら、フェル
ール保持具１０１を歳差運動させてフェルール端面の研
磨を行っている。

【０００５】図７に示すのは、従来の研磨機の他の例で
あり、回転駆動される研磨基盤２００の上に、研磨定盤
に相当する樹脂系のフィルム２０１を設け、このフィル
ム２０１に、ロッド２０２とバネ２０３により一定張力
を付与し、フェルールＦを正逆回転・揺動させる構造で
ある。研磨に際しては、回転する一定張力のフィルム２
０１の上面に研磨剤２０４を供給しながらフェルールＦ
の先端を押圧し、フェルールＦをその軸心の回りに正逆
回転させつつ、フィルム２０１との接触位置を移動させ
るための揺動運動を与えてフェルール端面の研磨を行っ
ている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
ような従来の研磨機では、次のような問題があった。即
ち、光コネクタフェルールの端面を凸球面に形状加工す
る場合、図６の方法ではフェルールＦに凹球面中心を中
心とする歳差運動を与え、図７の方法では、正逆回転と
揺動運動を与え、研磨位置を移動させることによって研
磨の高精度化を図っている。しかし、このような運動が
必須の条件となっているフェルールの後方には、光ファ
イバーが接続されており、フェルールの回転あるいは揺
動運動によって研磨中に光ファイバーが破断するという
問題が生じている。また、フェルールに回転や揺動運動
を与える機構を高精度化するために装置価格が高価にな
るという欠点も併せ持っている。

【０００７】この発明は、前述のような事情に鑑みてな
されたもので、その目的は、フェルールに回転あるいは
揺動運動を与えることなく、フェルール端面を所定の形
状に高精度で研磨でき、しかも低価格の装置とすること
のできる光コネクタフェルール端面研磨機を提供するこ
とにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】この発明は前記目的を達
成するために、次のような構成とした。すなわち、光コ
ネクタフェルールと研磨定盤とを相対移動させて光コネ
クタフェルール端面を研磨する光コネクタフェルール端
面研磨機において、フェルールを固定し、研磨定盤の方
を所定のパターンで移動できるようにする。このような
研磨機は、前記光コネクタフェルールを研磨定盤に押圧
する加圧機構を介して支持フレームに取り付けられたフ
ェルール保持具と、前記研磨定盤を平面内を自由に移動
自在に支持するＸＹステージと、回転駆動源により回転
駆動される回転駆動軸と、この回転駆動軸内に、この回
転駆動軸の回転中心から偏心して配置された回転軸と、
支持フレームに固定配置された内歯車と、前記回転軸
に、この回転軸と共に回転可能に設けられ、かつ前記内
歯車に噛合する外歯車と、この外歯車に、この外歯車の
回転中心から偏心して配置され、前記研磨定盤に接続さ
れる駆動ピンから構成する。

【０００９】

【作用】前述のような構成において回転駆動軸・回転軸
・内歯車・外歯車・駆動ピンにより遊星歯車装置が構成
され、回転駆動源により回転駆動軸を回転させると、回
転駆動軸内の偏心した回転軸により、外歯車が内歯車に
沿って公転しつつ、回転軸の回りを自転し、この外歯車
に設けられた駆動ピンが連続した花びらの外郭形状に沿
って移動する。この駆動ピンと共に、ＸＹステージによ
り支持された研磨定盤が移動し、研磨定盤に対して定置
されたフェルールの研磨痕軌跡が前記花びら状となる。
フェルールを移動させなくても研磨できると共に、研磨
の基礎である研磨条痕の方向が常に変動するため、高精
度の面・形状のフェルール端面が得られる。

【００１０】

【実施例】以下、この発明を図示する一実施例に基づい
て詳細に説明する。図１は、この発明の光コネクタフェ
ルール端面研磨盤を示す断面図であり、研磨盤は、主と
してラッピング面１ａを有する研磨定盤１、加圧機構３
を備えたフェルール保持具２、研磨定盤１を支持するＸ
Ｙステージ４、回転駆動軸７・回転軸８・固定軸９・内
歯車１０・外歯車１１・駆動ピン１２からなる回転駆動
機構５、回転駆動用の電動モータ６から構成し、フェル
ール保持具２を定置とし、研磨定盤１を回転駆動機構５
により移動させて研磨を行う。

【００１１】フェルール保持具２は、光ファイバーｆが
接続された光コネクタフェルールＦが挿入される取付け
孔１３を円周方向に間隔をおいて多数穿設した円板であ
り、取付け孔１３に挿入されたフェルールＦをネジ部材
等により固定して保持する。このフェルール保持具２
は、フェルールＦの先端を研磨定盤１に押し付ける加圧
機構３を介して支持フレーム１４の上部に取り付ける。

【００１２】この加圧機構３は、下端がフェルール保持
具２に固定される連結ロッド１５、支持フレーム１４の
上部に固定されるスリーブ１６、フェルール保持具２を
下方に押圧する圧縮コイルバネ１７、連結ロッド１５を
スライド可能にスリーブ１６に取り付ける調整ボルト１
８などからなる。この調整ボルト１８は、回転させるこ
とにより、加圧量を調整することができ、またナットか
らなるストッパー１９によりフェルール保持具２の下限
位置が設定される。

【００１３】研磨定盤１は、基盤２０上に設置され、ピ
ン２１，２２を介して取り替え可能に基盤２０に固定さ
れる。この基盤２０の中央下面には、連結軸２３が突設
され、この連結軸２３がＸＹステージ４の中央部に挿入
され、軸受け２４により回転可能にＸＹステージ４に支
持される。

【００１４】ＸＹステージ４は、一対のＸ軸用のガイド
ロッド２５が貫通してＸ軸方向に移動自在とされる。さ
らに、このガイドロッド２５の両端にはスライダ（図示
省略）が固定され、このスライダにＹ軸用のガイドロッ
ド２６が貫通し、ＸＹステージ４がＹ軸方向に移動自在
とされる。ガイドロッド２６は支持フレーム１４に固定
される。従って、ＸＹステージ４は、ガイドロッド２
５，２６により支持フレーム１４に支持され、ＸＹステ
ージ４と一体の研磨定盤１は、ＸＹ平面内を自由に移動
可能に支持されることになる。

【００１５】固定軸９は、支持フレーム１４に一体的に
形成された中空軸であり、この固定軸９の内部に回転駆
動軸７が軸受け２７を介して回転自在に、かつその回転
中心軸が装置の中心Ｏ₁ に一致するように取り付ける。
回転軸８は回転駆動軸７内に回転中心（装置中心）Ｏ₁
から偏心させて配置し、軸受け２８を介して回転自在と
する。このような固定軸９の上部内面に、回転駆動軸７
の回転中心Ｏ₁ を中心とする内歯車１０を形成すると共
に、回転軸８の上端に、その回転中心Ｏ₂ を回転中心と
する外歯車１１を一体的に取り付け、内歯車１０を太陽
歯車、外歯車１１を遊星歯車とする遊星歯車装置が構成
されるようにする。

【００１６】駆動ピン１２は、外歯車１１の上部に回転
軸８の回転中心Ｏ₂ からＬだけ偏心した位置に突設す
る。この駆動ピン１２は、軸受け２９，接続部材３０を
介して連結軸２３に連結する。電動モータ６と回転駆動
軸７とは、歯付きプーリ３１，３２と歯付きベルト３３
からなるベルト伝動機構により連結する。

【００１７】以上のような構成において、次のように作
動する。 (1) フェルール保持具２にフェルールＦをセットし、所
定のラッピング処理に必要なラッピング面１ａを有する
研磨定盤１を基盤２０上にセットする。 (2) 電動モータ６により回転駆動軸７を回転させると、
図２に示すように、偏心した回転軸８により外歯車１１
が中心Ｏ₁ の回りを公転し、かつ内歯車１０との噛合に
より回転中心Ｏ₂ の回りを公転方向と逆方向に自転す
る。 (3) 駆動ピン１２の中心位置は、外歯車１１の公転と自
転が合成されることにより、図３に示すような花びらの
外郭を表す連続した軌跡で移動していく。

【００１８】図３において、例えば内歯車１０と外歯車
１１の歯数比を３：２とし、外歯車１１の回転中心Ｏ₂
と駆動ピン１２の中心Ｏ₃ との距離（偏心量）Ｌ＝ｍＺ
／４（ｍ：モジュール，Ｚ：外歯車の歯数）すなわち内
歯車１０の中心Ｏ₁ と駆動ピン１２の中心Ｏ₃ を一致さ
せると、（ａ）のような軌跡となる。また、偏心量Ｌを
（ａ）より大きくすると、（ｃ）のような軌跡となり、
小さくすると、（ｂ）のような軌跡となる。さらに、前
述の歯数比では、花びらの３枚で軌跡が重複するが、こ
の歯数比において、外歯車１１の歯数を若干増やし、例
えば３０：２１，４５：３１とすれば、（ｄ）のように
花びらが重複しない軌跡が得られる。また、（ｅ）は
（ｃ）と（ｄ）を組み合わせた例であり、同じ軌跡を通
らないようにすることもできる。

【００１９】(4) 駆動ピン１２の移動と共に、ＸＹステ
ージ４により支持された研磨定盤１が移動し、研磨定盤
１に対して定置されたフェルールＦの研磨痕軌跡が前記
花びら状となる。これにより、フェルールＦの先端は、
研磨方向が順次移動するので、フェルールに回転や揺動
運動を与えずに固定しておいても、従来の研磨機で研磨
したと同等以上の面精度で、しかもフェルールと中心と
凸球面研磨面の頂点とのずれ（偏心）の少ない高精度の
研磨を行うことができる。なお、花びら状の移動軌跡は
遊星歯車の歯数比や偏心量Ｌを変えることにより任意の
形状が得られることはいうまでもない。

【００２０】次に、研磨工程を具体的に説明する。 〔接着剤の除去工程〕図４に示すように、光ファイバー
ｆにフェルールＦを取り付けた状態では、フェルールＦ
の端面からは光ファイバーｆ’，接着剤Ｂが突出してい
る。研磨定盤には、ラッピングフィルム４０を貼り付
け、あるいは円盤状の研削砥石４１を貼り合わせた研磨
定盤１を使用する。この研磨定盤１を図１の研磨機に取
り付け、研磨定盤１の移動により研磨したところ、接着
剤Ｂを取り去り、しかもフェルールＦの端面と光ファイ
バーｆ’の端面とを同一面になるように研磨できた。

【００２１】〔凸球面研磨〕図５に示すように、接着剤
の除去工程が終了したフェルールＦの端面を凸球面状に
研磨する工程であり、研磨定盤１の上面には、押圧する
と、押圧された表面の一部が凹状に弾性変形する特性を
持つ、例えばコルク入り合成ゴム、またはバフ研磨材の
ような弾性体５０を貼り付け、その上にアルミナおよび
ダイヤモンド粒子の研磨層を有するラッピングフィルム
５１を貼り付けて研磨定盤１を構成する。この研磨定盤
１を図１の研磨機に取り付け、研磨剤５２を供給しつつ
研磨定盤１の移動により研磨したところ、フェルールＦ
の端面を凸球面状に研磨することができた。

【００２２】同様に、図５のにおいて、弾性体５０を使
用し、その上にセルロース樹脂フィルム５３を貼り付
け、研磨剤５２として、ダイヤモンド、あるいはAl₂O₃,
CeO₂,SiO₂,CrO₂等の酸化物系微粒子を含んだ水溶液を供
給しながら研磨することにより、フェルールＦの端面を
凸球面状に研磨することができた。

【００２３】

【発明の効果】前述の通り、この発明の光コネクタフェ
ルール端面研磨機は、光ファイバー付きのフェルールを
固定し、静止させた状態で、研磨定盤を内歯車を用いた
遊星歯車装置で花びらの外郭形状の軌跡で移動させるよ
うにしたため、次のような効果を奏する。 (1) フェルールを回転あるいは揺動運動させることがな
いので、光ファイバーを破損させることがない。 (2) 研磨定盤を研磨方向が順次変わるように移動させる
ことができ、従来の研磨機のようにフェルールに回転あ
るいは揺動運動させて研磨した時と同様の高精度でフェ
ルール端面を研磨できる。 (3) フェルールは単に固定するだけの構造でよいため、
従来のような高精度の回転あるいは揺動機構を必要とせ
ず、装置を簡易で安価なものとすることができ、また作
業性も向上する。 (4) フェルール保持具に取り付けるフェルール本数に制
限がなく、１本から多数本のフェルールを一括研磨する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の光コネクタフェルール端面研磨機を
示す断面図である。

【図２】図１の遊星歯車装置を示す概略平面図である。

【図３】駆動ピンの移動軌跡の種々の例を示す説明図で
ある。

【図４】この発明におけるフェルール端面の接着剤を除
去するための研磨定盤を示す概略断面図である。

【図５】この発明におけるフェルール端面を凸球面に研
磨するための研磨定盤を示す概略断面図である。

【図６】従来の研磨機の一例を示す断面図である。

【図７】従来の研磨機の他の例を示す断面図である。

【符号の説明】

Ｆ 光コネクタフェルール ｆ 光フ
ァイバー Ｂ 接着剤 １ 研磨定盤 １５ 連結
ロッド １ａ ラッピング面 １６ スリ
ーブ ２ フェルール保持具 １７ 圧縮
コイルバネ ３ 加圧機構 １８ 調整
ボルト ４ ＸＹステージ １９ スト
ッパー ５ 回転駆動機構 ２０ 基盤 ６ 電動モータ ２３ 連結
軸 ７ 回転駆動軸 ２５ ガイ
ドロッド ８ 回転軸 ２６ ガイ
ドロッド ９ 固定軸 ４０ ラッ
ピングフィルム １０ 内歯車 ４１ 研
削砥石 １１ 外歯車 ５０ 弾
性体 １２ 駆動ピン ５２ 研
磨剤 １３ 取付け孔 ５３ セ
ルロース樹脂フィルム １４ 支持フレーム

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 光コネクタフェルールと研磨定盤とを相
   対移動させて光コネクタフェルール端面を研磨する光コ
   ネクタフェルール端面研磨機において、 前記光コネクタフェルールを研磨定盤に押圧する加圧機
   構を介して支持フレームに取り付けられたフェルール保
   持具と、前記研磨定盤を平面内を自由に移動自在に支持
   するＸＹステージと、回転駆動源により回転駆動される
   回転駆動軸と、この回転駆動軸内に、この回転駆動軸の
   回転中心から偏心して配置された回転軸と、支持フレー
   ムに固定配置された内歯車と、前記回転軸に、この回転
   軸と共に回転可能に設けられ、かつ前記内歯車に噛合す
   る外歯車と、この外歯車に、この外歯車の回転中心から
   偏心して配置され、前記研磨定盤に接続される駆動ピン
   とを備えていることを特徴とする光コネクタフェルール
   端面研磨機。