JPH0614889U - ガス吹きノズル付き炉底出湯式アーク炉 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 炉底出湯式アーク炉において、出湯時の炉体
傾動によりスラグが炉体の張り出し部の側壁および上壁
の内面に付着することを防止する。 【構成】 炉体傾動方向に向かって張り出した張り出し
部を炉体側壁に設け、該張り出し部の底部より出湯する
炉底出湯式アーク炉において、前記張り出し部の側壁部
で、かつ炉体傾動時でも溶湯面より上方になる位置に、
１本以上のガス吹きノズルを設け、炉体傾動時にガスを
吹き込みスラグを排除する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、炉底出湯機能を有する製鋼用アーク炉に関する。

【０００２】

【従来の技術】

近年、製鋼用アーク炉においては、出湯方式としてスラグを随伴せずに溶融金 属のみの出湯を可能とする炉底出湯式アーク炉が採用されてきている。これは、 アーク炉以降の工程の炉外精錬設備との関連において、特に特殊鋼の分野でスラ グ成分の調整を容易にする目的等のために多く採用されており、現在ではその他 のメリットが判明したことから普通鋼の分野でも普及し始めている。

【０００３】 この炉底出湯式アーク炉の構造としては、例えば、特開昭６０−１６２９８号 公報や特開平２−１０６５９２号公報に記載されているように、炉体傾動方向に 向かって張り出した張り出し部を炉体側壁に設け、該張り出し部の底部には出湯 口があり出湯を可能とするための蓋開閉装置が取り付けられている。通常、張り 出し部は密閉構造となっているが、張り出し部の上部には出湯を容易にするため に出湯口に砂などを投入する開口を設けたり、又は、該開口部分に炉内点検等を 行うための開閉可能な蓋を取り付けている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、、上述の構造においては、アーク炉の製鋼過程で発生するスラ グや地金等が、張り出し内側面や上面に付着・増大し、砂等の投入用開口が閉塞 されたり、炉内点検のため蓋を開いてもスラグや地金等で覆われ点検が出来なく なったりし、スラグや地金等を除去する労力は多大なものになっている。

【０００５】 この問題点を解決するため、例えば、特開平２−２１３６９２号公報にて記載 されている方法のように、補助電極を使用してスラグや地金等を溶かす方法が考 えられるが、この方法では、（１）設備費が高い、（２）設備スペースが大きく メンテナンスが容易でない、（３）電極貫通孔のシール構造が複雑等の欠点を有 している。そこで本考案の目的は、スラグや地金の炉体張り出し部内側面や上面 への付着を防止し、砂投入や炉内点検を容易にする炉底出湯式アーク炉を提供す ることである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

本考案は、前記問題点を解決するものであって、炉体傾動方向に向かって張り 出した張り出し部を炉体側壁に設け、該張り出し部の底部より出湯する炉底出湯 式アーク炉において、前記張り出し部の側壁部で、かつ炉体傾動時でも溶湯面よ り上方になる位置に、１本以上のガス吹きノズルを設けたことを特徴とするガス 吹きノズル付き炉底出湯式アーク炉である。

【０００７】

【作用】

本考案のガス吹きノズル付き炉底出湯式アーク炉においては、出湯のため炉体 を傾動し始めると同時にガス吹きノズルよりガスを吹き込む操業を行う。これに より、溶湯面上部のスラグを炉内側に押しやるため、張り出し部内側面や上面に スラグが付着しにくくなる。また、ガス吹きノズルは、必ず溶湯面より上部に位 置していることから、溶損しにくく、かつ溶湯のヘッド圧を受けないため僅かの ガス量にて十分な効果が得られる。

【０００８】

【実施例】

以下、本考案の好適な実施例を添付の図面によって詳しく説明する。図１は、 本考案に基づくガス吹きノズルを設けた炉底出湯式アーク炉の縦断面図であり、 図２は、図１のＡ−Ａ矢視断面図である（便宜上溶鋼が無い状態、すなわち出湯 穴３が露出した状態を示す）。炉底出湯式アーク炉は、炉体１の側壁１ａに、炉 体傾動方向に向かって張り出した張り出し部２を設け、該張り出し部２の底部２ ａに出湯を可能とするための出湯穴３と蓋開閉装置４が取り付けられており、通 常出湯穴３には出湯までに湯洩れが生じないように砂５が詰められている。張り 出し部２の上部は、なるべく密閉構造としているが、出湯穴３に砂５を投入可能 なように砂投入用蓋６が取り付けられ、砂投入用蓋６を開けて張り出し部２の上 壁２ｂに開けられた開口７から砂５を出湯後に投入するようになっている。

【０００９】 スクラップが溶解されると、炉体１が水平の場合溶湯上面は８ａの位置になり 、溶湯上面８ａの上方には、スクラップ中に含まれていた不純物や精錬用に投入 された副原料にて生成されたスラグ９が浮遊している。出湯時に炉体を傾動させ ると、溶湯上面８ａは最大でも８ｂの位置を越えない範囲にて出湯されるので、 溶湯上面８ｂよりも上方にガス吹きノズル１０を、張り出し部２の側壁２ｃに取 り付ける。

【００１０】 本考案によれば、出湯のために炉体を傾動させた場合、溶湯上面８ｂの上方の スラグ９が溶湯の流れによって張り出し部２の方に寄ってきて、溶湯上面８ｂと 砂投入用蓋６や蓋１１（図３）との間に充満し耐火物１２及び砂投入用蓋６や蓋 １１に付着しようとするが、ガス吹きノズル１０よりガスを吹き込むことにより 、スラグ９が炉内側に押し戻されようとする。

【００１１】 図３は第２の実施例で、張り出し部２の他の構造を示す縦断面図であり、張り 出し部２の上壁２ｂに開けられる開口７を大きくし、その上面に砂投入用蓋６を 設けた開閉可能な蓋１１を取り付けている。この蓋１１を開けることにより、炉 内の点検及び張り出し部内部の耐火物１２の補修を行うようにすることがある。 更に、片炉にてスクラップの溶解を行い、もう一方の炉にて装入されたスクラッ プを溶解炉側の排ガスの熱を利用して予熱を行う１電源２炉方式のアーク炉にお いて使用する場合は、蓋１１を開けて開口７の上方にダクト（本説明図には図示 せず）を接続し排ガスを引くようになるが、本考案によってスラグが付着せず開 口７が常に維持されるようになる。

【００１２】 図４は、第３の実施例を示す張り出し部の平面図で、ガス吹きノズル１０を３ 本、張り出し部２の側壁２ｃに対して水平面内において傾斜をつけて取り付けた 例である。この例では、張り出し部２の側壁２ｃに対して水平面内において傾斜 をつけて取り付けたガス吹きノズル１０よりガスを吹き込むことにより、スラグ ９に旋回流を与えることになるため、少量のガス量にて蓋１０へのスラグ付着を 防止することが可能となる。

【００１３】 １本のガス吹きノズルを設けた本考案による１００ｔｏｎのアーク炉で、適用 の試験を行ったが、ノズルから約１００Ｎｌ／ｍｉｎ吹いて、開口７が閉塞され ないことが確認された。

【００１４】

【考案の効果】

このように本考案によれば、出湯時の炉体傾動による耐火物１２及び蓋２ｂへ のスラグ付着が解消されるため、砂投入時の障害となるものがなくなるため短時 間にて砂投入が完了する。また、張り出し部の点検、張り出し部内部の耐火物補 修や出湯穴３を形成している煉瓦１３の交換が容易に行えるようになる。また、 ガス吹きノズル１０は、溶湯上面８ｂの上方に位置しているため湯洩れの心配も なく溶損もしにくく、かつ張り出し部２の側壁２ｃに取り付いているため交換も 容易である。

【００１５】 更に、１電源２炉方式のアーク炉において使用する場合は、開口７が常に維持 されているため効率の良い予熱が連続的に行えると共に、スラグ除去のための休 止時間がなくなるため炉の稼働率が向上する等、その効果は極めて大である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の炉底出湯式アーク炉の実施例の縦断面
図

【図２】図１のＡ−Ａ矢視断面図

【図３】第２の実施例を示す張り出し部の縦断面図

【図４】第３の実施例を示す張り出し部の平面図

【符号の説明】

１ 炉体 ２ 張り出し部 ２ａ 底部 ２ｃ 側壁 ３ 出湯穴 ４ 蓋開閉装置 ５ 砂 ８ａ 溶湯上面 ８ｂ 溶湯上面 ９ スラグ １０ ガス吹きノズル

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 炉体傾動方向に向かって張り出した張り
   出し部を炉体側壁に設け、該張り出し部の底部より出湯
   する炉底出湯式アーク炉において、前記張り出し部の側
   壁部で、かつ炉体傾動時でも溶湯面より上方になる位置
   に、１本以上のガス吹きノズルを設けたことを特徴とす
   るガス吹きノズル付き炉底出湯式アーク炉。