JPH06145066A - 化学療法剤の作用増強並びに感染症予防及び治療用の医薬組 成物 - Google Patents

化学療法剤の作用増強並びに感染症予防及び治療用の医薬組 成物

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JPH06145066A
JPH06145066A JP4075119A JP7511992A JPH06145066A JP H06145066 A JPH06145066 A JP H06145066A JP 4075119 A JP4075119 A JP 4075119A JP 7511992 A JP7511992 A JP 7511992A JP H06145066 A JPH06145066 A JP H06145066A
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conalbumin
chemotherapeutic agent
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Kunio Ando
邦雄 安藤
Junichi Kishimoto
純一 岸本
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IMUNO JAPAN KK
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IMUNO JAPAN KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】宿主の生体防御能を亢進させることにより、化
学療法剤の効力を増強すると同時に、従来、治療が困難
視されていた生体防御能が低下した宿主における日和見
菌並びに化学療法剤耐性菌の感染症を治療・予防する手
段を提供することを目的とする。 【構成】上記の目的は、卵白から得られるコンアルブミ
ンを、単独ないし化学療法剤と併用して動物に経口投与
することにより達成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
【0002】本発明は、鶏卵の卵白中に存在する生理活
性タンパク質であるコンアルブミンの活用に関するもの
である。さらに詳しくは、本発明はコンアルブミンから
なる静菌的化学療法剤の作用増強剤、ならびに静菌的化
学療法剤及びコンアルブミンからなるヒト及び動物の感
染症予防治療用の医薬組成物に関する。すなわち、本発
明は感染症の新規予防及び治療に関し画期的かつ普遍的
な効果を発揮する化学療法剤の作用増強剤及び静菌性化
学療法剤を含む医薬組成物を提供するものである。
【従来の技術】
【0003】ニワトリ・コンアルブミンは、鶏卵中に多
量に存在し、別名をオボトランスフェリンと言うことか
らもわかるように、哺乳動物の乳汁及び好中球中に存在
するラクトフェリン並びに血液中に存在するトランスフ
ェリンと同様、3価鉄イオンをキレートする代表的な非
ヘム鉄タンパク質で、構造も類似しているところから同
一起源に由来する蛋白と考えられている。コンアルブミ
ンは、リゾチームと並んで弱い抗菌活性を示すことか
ら、微生物感染から鶏卵を守る生体防御蛋白と考えられ
てきた。この蛋白は容易に熱変性するため、卵白リゾチ
ームとは異なり、これまでさしたる用途がないままに放
置されてきた。
【0004】先に本発明者らは、牛乳のラクトフェリン
を動物に経口投与すると、生体防御能を亢進させること
により、βラクタム系抗生物質の効力を増強するこ
と、単独で経口投与した場合、日和見感染菌を含む病
原菌感染症の予防及び治療効果を示すこと、動物、特
に、弱齢期動物の体重増加を有意に促進すること、など
を明らかにした。コンアルブミンは、哺乳動物のラクト
フェリンに相当する鉄蛋白であり、生体内ではラクトフ
ェリンと同様の役割を果たしていることが予想される。
そうだとすれば、ラクトフェリンと同様の効果を期待で
きるからである。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】このように病原菌の感染に対して何らかの
役割を演じていると考えられていたコンアルブミンは、
動物に対し何らかの作用、特に、感染症予防及び治療に
関連した作用を示すであろうと予測されていた。
【0006】一方、化学療法剤と病原微生物との関係
は、終着駅のない果てしない戦いであることも次第に明
瞭になってきた。つまり、感染症に対し画期的に有効な
化学療法剤が出現すると、数年を経ずにそれを無効にす
る耐性菌が出現するからである。当初、病原菌に対する
輝かしい勝利と思われた化学療法剤の研究開発は、実は
果てしなく続く耐性菌との戦いであることが明らかにな
った。このように空しい戦いに終止符を打つ技術は、か
ねてから待望されていたのである。
【0007】耐性菌との戦いに加え、優れた化学療法剤
をもってしても救えない感染症が、最近、大きくクロー
ズアップされてきた。寝たきり老人、末期ガン患者、外
科手術後の患者など、いわゆるコンプロマイズド・ホス
トと称される生体防御能が著しく低下した状態では、い
ったん、感染症が起こると、化学療法剤を投与しても救
命できない場合が多い。しかも、コンプロマイズド・ホ
ストに感染する病原菌は、健常人を発病させることがで
きない弱毒性の常在菌、いわゆる日和見菌が大部分を占
める。寝たきり老人及び末期ガン患者は、過半数が感染
症で死亡しているのである。動物が感染症から治癒する
過程は、化学療法剤と宿主の生体防御系との協同作業に
よるものだから、生体防御能が低下した状態ではいかに
優れた化学療法剤でも効果が薄いからである。従って、
コンプロマイズド・ホストを日和見菌の感染症から救う
方法も、医療側から強く求められていたのである。
【0008】従って、本発明で解決しようとする課題
は、未利用資源であるコンアルブミンの活用、新規
化学療法剤開発と耐性菌出現の悪循環を断ち切ること、
コンプロマイズド・ホストにおける感染症の治療法及
び予防法の確立である。
【課題を解決するための手段】
【0009】本発明者らはラクトフェリンとともにコン
アルブミンの活用法を研究した結果、コンアルブミンを
ヒトあるいは動物に経口投与すると、同時に経口投与
された静菌性化学療法剤の効果が、数倍にも高まるこ
と、単独で経口投与しても日和見感染症を惹起する弱
毒性病原菌の感染症を治療及び予防する効果があるこ
と、などを見いだし本発明を完成するに至った。以下、
本発明を詳細に説明する。
【0010】卵白・コンアルブミンは卵白のタンパク質
中で約12パーセントを占める主要な蛋白の一つであ
る。生体内におけるコンアルブミンの役割は、ほとんど
解明されていないが、鉄を貯蔵するキャリアーとしての
役割及び抗菌活性による鶏卵中ヘの微生物の侵入と増殖
を抑制することが役割と考えられている。
【0011】鶏卵は最も安価で良質な蛋白源であるた
め、加工食品の原料としても大量に消費されている。し
かし、加工食品への用途としては、マヨネーズ・ソース
を始めとして卵黄のみが使われる場合が多く、そのさい
分離された卵白は大きな用途がない。大部分の卵白蛋白
は、熱変性を避けながら乾燥・粉末化して、ハム・ソー
セージ及び水産練製品を製造する際の増量剤として使わ
れている。一方、特殊な用途としては、卵白中に多量に
含まれるリゾチームを抽出し、炎症及び風邪などの疾患
に対し消炎剤として活用する医薬品としての用途が知ら
れている。
【0012】コンアルブミンもラクトフェリンと同様
に、1分子あたり2個の3価鉄イオンとキレート結合し
て、錯化合物を形成することができる。ラクトフェリン
の場合と同様にして、天然のコンアルブミンからは、全
く鉄イオンを含まないアポコンアルブミン及び鉄が10
0パーセント飽和されたホロコンアルブミンまで、種々
の鉄飽和段階を持つコンアルブミンを調整することが可
能である。本発明者らは、鉄飽和度を異にするコンアル
ブミンを用いて、βラクタム系抗生物質の効力増強作用
を調べたが、この3者間に増強効果の優劣は認められな
かった。したがって、ここで述べるコンアルブミンと
は、鉄飽和度が0〜100パーセントのコンアルブミン
を意味することは言うまでもない。
【作用】
【0013】本発明者らは、卵白からコンアルブミンを
分離精製し、寒天培地希釈平板法で各種病原菌に対する
最少阻止濃度を測定した。結果は表1に示すとおり、コ
ンアルブミンの抗菌活性は、病原微生物の種類によって
異なるが、概して微弱ないし活性がない。
【0014】
【表1】
【0015】しかし、マウスの実験的な感染症を治療す
る目的で、コンアルブミンをβラクタム系抗生物質と併
用したところ、ウシ・ラクトフェリンと同様にその効果
を数倍に高めることが明らかになった。このコンアルブ
ミンとβラクタム系抗生物質との併用効果における特徴
は、コンアルブミンの経口投与で発現すること、β
ラクタム系抗生物質のみならず、マクロライド系、テト
ラサイクリン系、サルファ剤などの静菌的化学療法剤の
いずれでも認められること、動物種がヒト及び他の動
物種でも同様の効果が認められることなどである。併用
効果をもたらすコンアルブミンの投与量は、動物の体重
換算で0.05〜100mg/kgを経口的に与えるこ
とが望ましく、最適投与量は1〜10mg/kgの範囲
にある。従って、コンアルブミンの作用は明らかに宿主
介在性(host−mediated)で、その本質は
宿主の生体防御系を強化する点にある。
【0016】コンアルブミンのコンプロマイズド・ホス
トにおける日和見菌感染症及び化学療法剤耐性菌感染症
に対する効果は、慢性尿路感染症の病態モデルである
上向性尿路感染マウス、副腎皮質ホルモン投与による
免疫抑制マウスの日和身菌感染モデル、マクロライド
耐性黄色ぶどう球菌のマウス皮下感染症モデルにおいて
確認することができた。コンアルブミンは、これらの感
染症モデルにおいて単独で経口投与しても効果がある
が、さらに効果的に感染症を治療するためには、注射な
いし経口用抗生物質と併用するとよい。
【0017】卵白・コンアルブミン粉末は鉄イオンの飽
和度にかかわりなしに。常温で非常に安定であり、錠
剤、顆粒剤、液剤及び粉剤などに製剤化することができ
る。溶液状態の場合には、3価鉄イオンの存在により安
定化される。製剤化の際に注意すべきことは、加熱によ
る蛋白変性をできる限り避けることである。一方、経口
投与用に開発された静菌性化学療法剤を任意の割合でコ
ンアルブミンと混合し、乳糖、ぶどう糖、麦芽糖、デキ
ストリン、でんぷん、種々の糖アルコール、製剤用セル
ロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム及びタルクな
どと混合して製剤化することは容易である。液剤とする
場合には、コンアルブミンの水溶液に乳酸、リンゴ酸な
いし酒石酸などを加えてpH4.0−3.1に調節した
後、抗カビ剤としてパラアミノ安息香酸エステルを加え
て長期保存を可能にするとよい。
【0018】卵白コンアルブミンを経口投与用の静菌的
化学療法剤の効力増強剤として使用する場合は、まず、
該化学療法剤と同時ないしは該化学療法剤の投与前後の
一定時間以内、例えば、投与前後の1時間以内に経口投
与し、それ以降、必要に応じてコンアルブミンを1回あ
るいは頻回経口的に投与するのが望ましい。
【0019】また、コンアルブミンは種々の食品に添加
して摂取させることもできる。コンアルブミンの混入に
適した食品としては、ヨーグルト、粉乳、牛乳、乳飲
料、チョコレート、錠菓ないし粉末飲料があげられる。
いずれの場合においても、生物学的効果を発揮させる上
では、タンパク質を未変性の状態に保持させることが最
も重要である。以下、実施例を示す。
【実施例1】
【0020】5週令のICR系雄性マウス(平均体重2
1.3±1.2g)72頭をランダムに6頭づつに群分
けし、肺炎桿菌(Klebsiella pneumo
niae k35)を接種量1×10CFU/マウス
で腹腔内に移植・感染させた。感染1時間後に対照群に
は0.2mlの生理食塩水を経口投与し、コンアルブミ
ン群には0.5mgのコンアルブミンを0.2mlの生
理食塩水に溶かして経口投与した。第3〜7群までは
0.2mlの生理食塩水に懸濁したアンピシリンをマウ
ス1頭あたり、第3群で10mg、第4群で5mg、第
5群では2.5mg、第6群では1.25mg及び第7
群で0.625mgずつ経口投与した。第8群から第1
2群までは、0.25%のコンアルブミンを含む生理食
塩水0.2mlに懸濁したアンピシリンを、マウス1頭
あたり第8群が5mg、第9群が2.5mg、第10群
が1.25mg,第11群が0.625mg,第12群
が0.3125mgになるように経口投与した。マウス
は恒温恒湿の動物室に収容し、飲料水と飼料を自由に摂
取させながら1週間飼育・観察した。第1群(食塩水対
照)と第2群(コンアルブミン対照)は、すべてのマウ
スが感染24時間以内に死亡した。一方、アンピシリン
群及びアンピシリン+コンアルブミン併用群の半数救命
量を計算したところ、前者が8.77mg/mous
e,後者が1.33mg/mouseであった。この結
果からコンアルブミンは、アンピシリンの生体内におけ
る効力を約6.6倍増強したことがわかる。
【実施例2】
【0021】平均体重22.5gのddY系マウス48
頭をランダムに12群に分け、左右の側腹部皮下に黄色
ぶどう球菌(Staphylococcus aure
us 209P)を4×10CFU/マウスの接種量
で感染させた。第1群は、対照群として感染1時間後か
ら一日2回(午前10時と午後5時)、連続3日間、生
理食塩水を0.2mlずつ経口投与した。第2群は生理
食塩水にコンアルブミンを0.5%溶解して、対照群と
同様の投与スケジュールで経口投与した。第3群から第
7群までは、エリスロマイシンを毎回1頭当たり、第3
群に10mg,第4群に5mg,第5群に2.5mg、
第6群に1.25mg及び第7群に0.625mgずつ
経口投与した。第8群から第12群までは、0.5%の
コンアルブミンを含有する生理食塩水にエリスロマイシ
ンを懸濁し、第8群には4mg、第9群に2mg、第1
0群に1mg、第11群に0.5mg、第12群に0.
25mgを対照群と同じスクジュールで経口投与した。
いずれの群においても1回の投与液量は0,2mlであ
る。菌接種96時間目にマウスを屠殺し、皮下膿瘍の部
分の長径と短径をノギスにより測定し、群ごとに平均値
±標準偏差を算出し、対照を100とした場合の相対値
を記録した。結果は表2に示すとおりである。
【0022】
【表2】
【0023】表2に示すようにエリスロマイシンは、黄
色ぶどう球菌による皮下膿瘍を強く抑制する。コンアル
ブミンは、単独でも皮下膿瘍の抑制効果があり、その効
果はエリスロマイシンと併用することによりいっそう強
化された。
【実施例3】
【0024】平均体重27.6gのICR系雄性マウス
40頭をランダムに8群に分け、尿道に1×10CF
UのProteus mirabilis 27を注入
した。セファロスポリン系経口剤、セファクロールによ
る治療は、感染24時間後から1日2回、合計4回行
い、96時間後にすべてのマウスから腎臓を摘出して腎
臓に定着したProteus mira−bilisの
コロニー数を測定した。結果は表3に示すとおりであ
る。
【0025】
【表3】
【0026】1回あたりセファクロールを1mg/mo
useの投与量で、48時間内に4回経口投与すると、
対照と比べコロニー数は2,000分の1以下に減少す
る。しかし、セファクロールの量を1/10〜1/10
0と減量するにつれて薬効は低下する。一方、コンアル
ブミンのみを投与した場合でも、セファクロール0.0
1mg投与群と同程度のコロニー減少効果があり、セフ
ァクロールと併用すると効力が100倍増強された。
【実施例4】
【0027】平均体重19.3gのICR系雄性マウス
90頭をランダムに15群に分け、そのうちの10群に
ハイドロコーチゾン30mg/kgを腹腔内投与し、残
る5群は無処置対照群として、生理食塩水0.2mlを
腹腔内に投与した。無処置対照群とハイドロコーチゾン
を投与した5群には0.2mlの生理食塩水を1日1回
経口投与し、残る5群のコンアルブミン群は、コンアル
ブミン2mgを0.2mlの生理食塩水に溶かして経口
投与した。48時間後に大腸菌、Escherichi
a coli #11を2×10CFU/ml含む菌
液を起点として10倍ずつ逐次希釈し、その0.2ml
を腹腔内に注入して感染させ、マウスの半数を致死せし
める菌数を求めた。無処置対照群の半数を致死させる菌
量は、1.37×10CFU/mouseであった
が、ハイドロコーチゾンを投与することにより半数致死
量は、100分の1以下である1.09×10CFU
/mouseにまで低下した。一方、コンアルブミン投
与群の半数致死量は、ハイドロコーチゾン対照群の70
倍以上である7.90×10CFU/mouseであ
った。コンアルブミンはハイドロコーチゾンにより減少
する白血球数を回復させる効果はないので、この実験で
認められた生体防御能の上昇は、経口投与されたコンア
ルブミンが生体防御系の活性を亢進させたためである。
従って、コンアルブミンは、コンプロマイズド・ホスト
の感染症に対しても、予防ないし治療効果を有すること
は明きらかである。
【実施例5】
【0028】実施例2で用いた黄色ぶどう球菌による皮
下膿瘍モデルを用いた。平均体重21.7gのddY系
マウス48頭をランダムに12群に分け、左右の側腹部
皮下に黄色ぶどう球菌(Staphylococcus
aureus 209P)とそのマクロライド系抗生
物質耐性株を、1:1で混合した菌懸濁液、6×10
CFU/マウスの接種量で感染させた。第1群は、対照
群として感染1時間後から一日2回(午前10時と午後
5時)、連続3日間、生理食塩水を0.2mlずつ経口
投与した。第2群は生理食塩水にコンアルブミンを1.
0%溶解して、対照群と同様の投与スケジュールで経口
投与した。第3群から第7群までは、エリスロマイシン
を毎回1頭当たり、第3群に10mg,第4群から第1
2群までの投与スケジュールは、実験例2と同様であ
る。菌接種96時間目にマウスを屠殺し、皮下膿瘍の部
分の長径と短径をノギスにより測定し、群ごとに平均値
±標準偏差を算出した。
【0029】エリスロマイシンは、マクロライド耐性黄
色ぶどう球菌感染による皮下膿瘍をまったく抑制しなか
った。しかし、コンアルブミンは、単独でもマクロライ
ド耐性菌の皮下膿瘍に対し抑制効果があり、その効果は
実施例2と同様、エリスロマイシンを併用することによ
りいっそう強化された。
【実施例6】
【0030】5週令のICR系雄性マウス(平均体重2
1.3±1.2g)180頭をランダムに6頭づつに群
分けし、30個のケージに収容した。30個のケージ
を、5個ずつの6群に分け、ケージ#1〜5を対照群、
#6〜30をコンアルブミン2500,250,25,
2.5及び0.25mg/kg投与群とした。すべての
マウスに大腸菌(Escheichia coli #
11)を接種量1×10CFU/マウスで腹腔内に移
植・感染させた。感染1時間後に対照群及び各コンアル
ブミン群、5ケージには0.2mlの生理食塩水に懸濁
した4mg/mouseを起点とする2倍希釈系列のセ
ファクロールを経口投与した。マウスは恒温恒湿の動物
室に収容し、飲料水と飼料を自由に摂取させながら1週
間飼育・観察し、コンアルブミンがセファクロールのE
50に及ぼす影響を検討した。
【0031】コンアルブミン無投与対照群におけるセフ
ァクロールのED50が、1.88mg/mouseで
あったのに対し、コンアルブミンを2.5mg/kg以
上投与した群におけるセファクロールのED50は、す
べて等しく0.72mg/mouseであった。しか
し、コンアルブミン投与量を0.25mg/kgまで低
下させると、セファクロールのED50は、1.05m
g/kgまで高まった。従って、コンアルブミンの生体
防御能亢進作用は、投与量が0.25mg/kgと2.
5mg/kgの間でプラトーに達し、コンアルブミン投
与量を2.5mg/kg以上に増量しても、セファクロ
ールの必要量は減少しないことが確かめられた。従っ
て、コンアルブミンによる化学療法剤の抗菌活性増強
は、明らかに飽和点があり、それを越えて投与してもさ
らに活性が増強されることはないが、低分子化合物のよ
うに過量投与による毒性発現が見られなことは特筆すべ
き所見と思われる。
【実施例7】
【0032】5週令のICR系雄性マウス(平均体重2
1.7±1.0g)180頭をランダムに6頭づつに群
分けし、30のケージに収容した。総計30個のケージ
を、5個ずつの6群に分け、ケージ#1〜5をコンアル
ブミン無投与対照群、#6〜30をコンアルブミン1m
g/kg投与群とした。ケージ#6−10のマウスは、
感染7日前に、ケージ#11−15は感染5日前、ケー
ジ#16−20は3日前、ケージ#21−25は1日
前、並びにケージ#26−30は感染1時間後にコンア
ルブミン含有食塩水、0.2mlを経口投与した。すべ
てのマウスに大腸菌(Escheichia coli
#11)を接種量1×10CFU/マウスで腹腔内
に移植・感染させた。感染1時間後に対照群及び各コン
アルブミン群に属す5ケージに、0.2mlの生理食塩
水に懸濁したセファクロールを、最高投与量2mg/m
ouseを起点とする2倍希釈系列として経口投与し
た。すなわち、各群共通に投与量は、2,1,0.5,
0.25及び0.125mg/mouseである。マウ
スは恒温恒湿の動物室に収容し、飲料水と飼料を自由に
摂取させながら1週間飼育・観察し、コンアルブミンの
投与タイミングが、セファクロールのED50に及ぼす
影響を検討した。
【0033】コンアルブミン無投与対照群におけるセフ
ァクロールのED50が、0.97mg/mouseで
あったのに対し、コンアルブミンを感染1時間後に投与
した群のED50は、約44%の0.43mg/mou
seに低下した。コンアルブミンを感染1日前に投与し
た群のED50は、コンアルブミン無投与対照群の58
%の0.56mg/mouseまで低下していたが、3
〜7日前に投与した群は、それぞれ0.88,1.05
及び1.02mg/mouseで、紺投与によるセファ
クロールの効力増強は認められなかった。従って、コン
アルブミン1回経口投与による化学療法剤の効力増強
は、投与24時間以内に認めら得るごく短期的な反応
で、ザイモザン、BCGなどの細菌製剤、担子菌多糖な
どを注射した際にみられる病原菌に対する生体防御能亢
進反応とは質的に異なる個とが明らかになった。
【実施例8】
【0034】実施例1と同じ実験系を用いコンアルブミ
ン(25mg/kg,po)が種々の化学療法剤のED
50に与える影響を検討した。その結果、Klebsi
ella pneumoniae K35の腹腔内感染
症に対し、コンアルブミンはセフォテタンの効力を3.
2倍、セフォテトラムのそれを2.7倍、アンピシリン
を5.3倍、オキシテテトラサイクリンを2.6倍、ド
キシサイクリンを3.7倍増強した。
【発明の効果】
【0035】本発明は、単に化学療法剤の効力を増強す
るのみならず、単独投与でも日和見菌の感染症に対し
治療・予防効果を示す、化学療法剤耐性菌による感染
症においても、化学療法剤の効力を増強するなど、従
来、実用上は問題が多いとされていた生物反応修飾剤
(Biological Response Modi
fier,BRM)としてコンアルブミンを実用が可能
な域に到達させた点で画期的な意義を有する。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】卵白由来のコンアルブミンからなることを
    特徴とする化学療法剤の効力増強用医薬組成物
  2. 【請求項2】卵白由来のコンアルブミンが3価鉄イオン
    飽和度0パーセントのアポコンアルブミンから、3価鉄
    イオン飽和度100パーセントのホロコンアルブミンに
    至るまで、種々の鉄飽和度を示すコンアルブミンから選
    択される1種または2種以上の混合物である請求項1記
    載の効力増強剤。
  3. 【請求項3】化学療法剤及び卵白由来のコンアルブミン
    からなることを特徴とするヒト及び動物の感染症予防及
    び治療用の医薬組成物。
  4. 【請求項4】コンアルブミンが3価鉄イオンをまったく
    キレートしていない鉄飽和度0パーセントのアポコンア
    ルブミンから、鉄飽和度が100パーセントのホロコン
    アルブミンに至るまで、種々の鉄飽和度を示すコンアル
    ブミンから選択される1種または2種以上の混合物であ
    る請求項3記載の医薬組成物。
  5. 【請求項5】静菌的に作用する化学療法剤及び卵白由来
    のコンアルブミンからなる医薬組成物を動物に投与する
    ことを特徴とする動物の感染症の新規予防及び治療方
    法。
  6. 【請求項6】卵白由来のコンアルブミンからなる化学療
    法剤の効力増強剤を、化学療法剤と同時ないしは該化学
    療法剤の投与前後の一定時間以内に動物に投与すること
    を特徴とする動物の感染症の新規予防及び治療方法。
  7. 【請求項7】卵白コンアルブミンを活性成分とする難治
    性感染症の予防・治療剤
  8. 【請求項8】卵白コンアルブミンを活性成分とする日和
    見感染症の予防・治療剤
  9. 【請求項9】卵白コンアルブミンを活性成分とする化学
    療法剤耐性病原菌感染症の予防・治療剤
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005539070A (ja) * 2002-09-18 2005-12-22 674738 ブリティッシュ・コロンビア・リミテッド・ドゥーイング・ビジネス・アズ・イノバティック・バイオプロダクツ 抗菌性組成物および使用のための方法
JP2006508925A (ja) * 2002-09-23 2006-03-16 カー・イュー・ルーヴェン・リサーチ・アンド・ディヴェロップメント 重篤患者を治療するための方法および調製物
EP1499341A4 (en) * 2002-04-18 2010-10-27 Univ Iowa Res Found PROCESS FOR INHIBITING AND PROCESSING BIOLOGICAL FILMS USING METAL CHELATORS

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