JPH0612779U - ベーンポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 案内部の流速の極端な増大を抑える。それに
より、案内部周域のエロージョンやベーンの振動による
側壁部材の摩耗を防止する 【構成】 カムリング１７の側部を閉塞するサイドプレ
ート１８に、吸入ポート７と吐出ポート２を形成する。
吐出ポート２の縁部に一定幅のテーパ溝２３を形成す
る。ポンプ作動時に、ポンプ室４と吐出ポート２とは、
一定幅のテーパ溝２３を通して漸次連通する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、自動車のパワーステアリング装置等に使用されるベーンポンプに関 する。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、ベーンポンプは、略放射方向に複数個のベーンを出没自在に備えたロ ータがカムリング内に収容されると共に、このカムリングの両側部がケーシング や別体のサイドプレート等の側壁部材によって閉塞され、それによって各隣接す るベーン間に容積変化可能なポンプ室が形成されている。そして、各ベーンはカ ムリングの略楕円状の内周面に摺接して出没動作を行うようになっており、側壁 部材には、カムリング内の吸入領域つまりベーンが突出する領域に開口する吸入 ポートと、吐出領域つまりベーンが後退する領域に開口する突出ポートとが形成 されている。したがって、ロータの回転により、ポンプ室が容積を膨張させつつ 吸入ポートと連通すると、そこでポンプ室内に作動油を吸入し、つづいてそのポ ンプ室が容積を収縮させつつ吐出ポートと連通すると、そこでポンプ室内の作動 油を吐出ポートに吐出する。

【０００３】 ところが、このようなベーンポンプの場合、ポンプ室が吸入領域から吐出領域 に移行するまでの間ポンプ室内の液圧が吸入領域と略同圧となっているため、ポ ンプ室が吐出ポートと連通した瞬間に吐出ポートからポンプ室に急激に作動油が 流れ込み、吐出ポートの液圧が一時的に急低下してしまう。このため、この吐出 ポートの液圧の一時的な急低下がポンプ脈動を招来するという不具合を生じる。

【０００４】 そこで従来では、これに対処するものとして、図４に示すように側壁部材１の 吐出ポート２の縁部に案内部としてＶ字状のノッチ３を形成し、このノッチ３に より、ポンプ作動時にポンプ室４と吐出ポート２とを漸次連通させるようにした ベーンポンプが開発されている。尚、同図中５はロータ、６はこのロータ５に取 り付けられたベーン、７は側壁部材１に形成された吸入ポートを示す。また、こ の技術は、例えば、特開昭５７−３８６８６号公報等に示されている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、上記従来のベーンポンプの場合、ポンプ室４と吐出ポート２と を漸次連通される案内部をＶ字状のノッチ３によって構成するようにしため、ノ ッチ３とポンプ室４が連通した瞬間におけるノッチ３部分の作動油の流速が極端 に速くなり（開口部の面積が小さいために速くなる。）、それにより、ノッチ３ の周域（図４中Ａで示す領域）にエロージョンが発生したり、ベーン６が振動し て側壁部材１（図４中Ｂで示す領域）を摩耗させるという不具合を生じる。

【０００６】 そこで本考案は、案内部の流速が極端に速くならないようにして、案内部周域 のエロージョンやベーンの振動による側壁部材の摩耗を防止することが出来るベ ーンポンプを提供しようとするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本考案は上述した課題を解決するための手段として、略放射方向に複数個のベ ーンを出没自在に備えたロータがカムリング内に収容され、このカムリングの側 部を閉塞する側壁部材に、カムリング内の吸入領域に開口する吸入ポートと吐出 領域に開口する吐出ポートとが設けられ、この吐出ポートの縁部に、隣接するベ ーン間のポンプ室と吐出ポートとを漸次連通させる案内部が設けられているベー ンポンプにおいて、案内部を一定幅のテーパ溝で構成するようにした。

【０００８】

【作用】

ポンプ作動時に、ポンプ室と吐出ポートとは、一定幅のテーパ溝を通して漸次 連通する。テーパ溝は一定幅であるため、テーパ溝がポンプ室に開口した際にお けるテーパ溝の流速は極端に大きくならない。

【０００９】

【実施例】 次に、本考案の一実施例を図１〜図３に基づいて説明する。尚、図４に示した 従来のものと同一部分には同一符号を用いるものとする。

【００１０】 図面において、１０は駆動軸であり、１１は、この駆動軸を軸受１２、１３を 介して回動可能に支持するポンプケーシングである。このポンプケーシング１１ は、凹状部１４を備えたケース本体１５と、この凹状部１４を閉塞するカバープ レート１６とから構成されていて、ケース本体１５の凹状部１４には、前記駆動 軸１０にスプライン嵌合されたロータ５と、このロータ５を収容するカムリング １７と、このカムリング１７の一側面に摺動可能に当接するサイドプレート１８ と、このサイドプレート１８をカムリング１７とロータ５の側面に押し付けるス プリング１９とが収容されている。

【００１１】 ロータ５は、外周側に複数個のベーンスロット２０が放射状に形成されており 、その各ベーンスロット２０には、先端部がカムリング１７の内周面と摺接する ベーン６が出没自在に収容されている。各ベーン６は、ロータ５の回転による遠 心力とベーンスロット２０の底部に導入される圧力室２１の液圧とによって径方 向外方に飛び出すようになっている。

【００１２】 カムリング１７は内周面が略楕円状に形成されていて、この内部でロータ５が 回転すると、その外周に取り付けられたベーン６がカムリング１７の内周面のプ ロファイルにしたがって出没動作を行うようになっている。また、カムリング１ ７の両側部は側壁部材としてのカバープレート１６とサイドプレート１８とによ って閉塞されていて、ロータ５の円周方向で隣接する各ベーン６、６間に、ベー ン６、６、ロータ５、カムリング１７、及び、両プレート１６、１８によって囲 まれたポンプ室４が形成されている。このポンプ室４は、カムリング１７の内周 のうちの中心からの距離が次第に増大する吸入領域において容積を膨張させ、逆 に次第に減少する吐出領域において容積を収縮させるようになっている。

【００１３】 また、一方の側壁部材であるサイドプレート１８には、図１に示すように、カ ムリング１７内の吸入領域に開口する吸入ポート７と、吐出領域に開口する吐出 ポート２が形成されている。吸入ポート７は、カムリング１７に形成された図示 しない連通孔を介してカバープレート１６の吸入通路２２と連通し、吐出ポート ２は、圧力室２１を介してケース本体１５の図示しない吐出通路と連通している 。そして、吐出ポート２の縁部（ロータ５の回転時にベーン６が最初に臨む側の 縁部）には、ポンプ室４と吐出ポート２とを漸次連通させる案内部として、一定 幅のテーパ溝２３が形成されている。このテーパ溝２３は、吐出ポート２に臨む 基端側が深くなるように形成されているのであるが、先端部には段部２３ａが形 成されており、この段部２３ａによって先端部に所定の深さｄが確保されている 。

【００１４】 このベーンポンプは以上のような構成であるため、ロータ５が駆動軸１０と共 に回転すると、各ベーン６、６間のポンプ室４が吸入領域において作動油を吸入 してその作動油を吐出領域において吐出する。

【００１５】 ここで、ポンプ室４は吸入領域において吸入ポート７と、吐出領域において吐 出ポート２と連通するのであるが、ポンプ室４が吐出ポート２と連通する際には 、ガイド部としてのテーパ溝２３を通して漸次連通する。即ち、テーパ溝２３は 、基端側（吐出ポート２側）に向かって深さが次第に深くなるように形成されて いるため、ポンプ室４が吸入領域から吐出領域に移行していくと、ポンプ室４と 吐出ポート２の間の開口面積が次第に広がり、両者が漸次連通することとなる。 このため、吐出ポート２の作動油は緩やかにポンプ室４内に流入し、吐出ポート ２の液圧は急激に低下しなくなる。この結果、吐出ポート２の液圧の急低下に起 因したポンプ脈動は起こらなくなる。

【００１６】 また、このベーンポンプの場合、テーパ溝２３は一定幅に形成されていて、し かも、その先端側には所定深さｄの段部２３ａが形成されているため、テーパ溝 ２３がポンプ室４に開口した当初にもある程度以上の開口面積が確保されること となり、テーパ溝２３内の流速は極端に大きくならない。したがって、このベー ンポンプを採用した場合には、サイドプレート１８のテーパ溝２３部分にエロー ジョンを生じたり、ベーン６を振動させてサイドプレート１８の側壁を摩耗させ たりする不具合は生じない。

【００１７】 尚、この考案の実施例は以上で説明したものに限るものでなく、例えば、吸入 ポート７や吐出ポート２を形成する側壁部材としては、サイドプレート１８に限 らずカバープレート１６であっても良く、また、ポンプ自体の型式もカムリング １７の両側にサイドプレートを配設するものであっても良い。

【００１８】

【考案の効果】

以上のように本考案は、ポンプ室と吐出ポートを漸次連通させる案内部を一定 幅のテーパ溝で構成するようにしたため、テーパ溝がポンプ室に開口した際にお けるテーパ溝の流速が極端に速くならず、この流速の増大に起因した案内部周域 のエロージョンやベーンの振動、その振動による側壁部材の摩耗等が生じなくな る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す正面図。

【図２】同実施例を示す断面図。

【図３】同実施例を示す図１のＣ−Ｃ線に沿う断面図。

【図４】従来の技術を示す正面図。

【符号の説明】

２…吐出ポート、 ４…ポンプ室、 ５…ロータ、 ６…ベーン、 ７…吸入ポート、 １７…カムリング、 １８…サイドプレート（側壁部材）、 ２３…テーパ溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 略放射方向に複数個のベーンを出没自在
   に備えたロータがカムリング内に収容され、このカムリ
   ングの側部を閉塞する側壁部材に、カムリング内の吸入
   領域に開口する吸入ポートと吐出領域に開口する吐出ポ
   ートとが設けられ、この吐出ポートの縁部に、隣接する
   ベーン間のポンプ室と吐出ポートとを漸次連通させる案
   内部が設けられているベーンポンプにおいて、案内部を
   一定幅のテーパ溝で構成したことを特徴とするベーンポ
   ンプ。