JPH0612289Y2 - 自動変速装置用流体フィルタ装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は自動変速装置用流体フィルタ装置に関し、特
に、効率的に濾過をすることのできる自動変速装置用流
体フィルタ装置の関するものである。

〔従来技術および解決しようとする課題〕

一般に、自動変速装置用流体フィルタ装置にあっては１
２０〜２００メッシュの金網フィルタを板金または樹脂
製の上下ケース内に配設して流体中のダストを捕捉する
ものが使用されている。

しかしながら、近年の自動変速装置の高性能、精密化に
伴い、フィルタ装置においてもダスト捕捉性能の向上を
必要とし、最近ではナイロンやポリエステル等の繊維か
らなるフェルト状をなすフィルタを用いた第１６図に示
すようなものが使用されつつある。

すなわち、第１６図に示す自動変速装置用流体フィルタ
装置にあっては、下ケース５１の流入口５２に、第１７
図に示すように２つ折りしたシート状のフィルタ５３の
開口部５４を位置してかしめ、下ケース５１の上部に、
流出口５５を有する上ケース５６を位置して前記シート
状のフィルタ５３の２つ折りしたａ部以外の３辺部ｂ、
ｃ、ｄをかしめて挟持固定してある。

そして、オイルパン５７内のオイル５８はオイルポンプ
の吸込負圧によって下ケース５１の流入口５２から内部
に流入し、オイル５８中のダストはフィルタ５３によっ
て濾過され、清浄なオイルが流出口５５に向かって流
れ、流出口５５から流出したオイルが自動変速装置に送
りこまれるようになっている。

しかしながら、上記のようにフィルタ５３と２つ折りの
３辺ｂ、ｃ、ｄをかしめて固定しているため、２つ折り
したフィルタ５３の上面側を通過するオイルは、直接、
流出口５５に向かって矢印Ａで示すように流れるが、下
面側を通過したオイルは直接、流出口５５に向かって流
れることができず、すべてａ辺を経由してからでないと
流出口５５には流れることができない。

したがって、下面側を通過したオイルは、ａ辺まではケ
ースの外部を空間Ｃまで矢印Ｂのように横方向に流れ、
空間Ｃにおいてはじめて矢印Ａの流れと合流して流出口
５５に向かって流れる。

このために、フィルタ５３を１まいの単板状にして用い
たものと比べ、２つ折りのために面積的には約２倍にな
っているが、通油量は２倍にはならず、効率的なダスト
補足が行われないという問題点を有していた。

また、油温が下がると通油抵抗が増加するため、フィル
タ５３は膨らむ傾向を呈するので、厚みＨが小さいと、
フィルタ５３が上ケースおよび下ケースに密着し、矢印
Ａの流れおよび矢印Ｂの流れが阻害され、効率の良いダ
スト補足が行われないという問題点を有していた。

この考案は上記の問題点を解決したものであってフィル
タの下面側からの通油量を増加させることにより効率の
良いダスト補足を行うことのできる自動変速装置用流体
フィルタ装置を提供することを目的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上記の目的を達成するためにこの考案は、流入口が設け
られ、かつ、内面に、放射状に延びるとともに、上面が
湾曲している複数の突起およびこの突起の上面間に設け
られた金網を有する下ケースと、該下ケースと組み合わ
されて空所を形成するとともに、下ケースと同様に、内
面に、放射状に延びるとともに、上面が湾曲している複
数の突起、この突起の上面間に設けられた金網および流
出口を有する上ケースと、前記上下ケースで形成される
空所内に配設されるフェルト状フィルタ部材とを具え、
該フェルト状フィルタ部材は上下一対のフェルト状フィ
ルタの周縁部を繋いで袋状に形成してあるとともに、こ
のフェルト状フィルタ部材の内部にオイルを導く連結部
材を前記下ケースの流入口に連結した構成を有してい
る。

〔作用〕

この考案は前記のような手段を採用したことにより、流
入したオイルはフェルト状フィルタ部材の内部に流入
し、フェルト状フィルタ部材の全面を通過して濾過され
たのちに流出口から流出するものであり、この場合、フ
ェルト状フィルタ部材の流出口と反対側を通過したオイ
ルは、フェルト状フィルタ部材の全周囲が流出口に向か
って開放しているので流れが阻害されることがなく円滑
に流れて濾過されるので効率良く濾過されることとな
る。

〔実施例〕

以下、図面に示すこの考案の実施例について説明する。

第１図にはこの考案による自動変速装置用流体フィルタ
装置の縦断面図が示されていて、この自動変速装置用流
体フィルタ装置は、流出口４を有する上ケース１と、流
入口５を有する下ケース２と、前記上下ケース１、２の
内部に配設されるフェルト状フィルタ部材３とを有して
いる。

前記下ケース２は、第１０図および第１１図に示すよう
に円板状をなし、上面に放射状に延びる複数の突起６、
６、……が設けられるとともに、この突起６、６、……
の上面は一定の曲率で湾曲しており、また、中央部には
流入口５が設けられている。

そして、放射状に設けられた各突起６、６、……の上面
間には、オイルの通過を妨げないような目の粗さとなっ
ている金網８が設けられ、この金網８は後述するフェル
ト状フィルタ部材３を補強するためのものであり、金網
８を熱板で加熱して各突起６、６、……の上面に一体的
に埋め込んだり、あるいは高周波誘導加熱法により金網
８を発熱させて治具により加圧することによって各突起
６、６、……の上面に一体的に埋め込んだりする。

また、上ケース１も前記下ケース２と同様に円板状をな
し、中央部に流出口４が設けられるとともに、放射状に
延びる複数の突起９、９、……が設けられ、さらに、各
突起９、９、……の上面は一定の曲率で湾曲していて、
前記下ケース２と協働して、各突起９、９、……の湾曲
上面間で凸レンズ状の空所が形成されるようになってお
り、各突起９、９、……の上面間には前記下ケース２と
同様に金網１０が埋め込まれて一体的に構成されてい
る。

前記フェルト状フィルタ部材３は、第２図および第３図
に示す下側フェルト状フィルタ１２と、第４図〜第５図
に示す上側フェルト状フィルタ１３とから構成されてい
る。

前記下側フェルト状フィルタ１２は、ナイロンやポリエ
ステル等の繊維のフェルト状をなすとともに、前記上下
ケース１、２の内部に収納可能な大きさの円板状となっ
ているフェルト１４と、このフェルト１４の中央部に穿
設された孔１５内に位置する２つの連結部材１６、１７
とからなり、両連結部材１６、１７は一端が外方に延び
るフランジ部１６ａ、１７ａとなっている円筒状をなす
とともに、一方の円筒部材１６の内部に、他方の円筒部
材１７が圧入するようになっている。

そして、前記フェルト１４と両連結部材１６、１７とを
組み立てる場合には、まず、他方の円筒部材１７を、前
記フェルト１４の孔１５内に挿入して、そのフランジ部
１７ａを当接し、この状態で他方の円筒部材１７を、前
記一方の円筒部材１６のフランジ部１６ａ側から圧入す
ると、フェルト１４の中央部に設けた孔１５の周縁部を
両連結部材１６、１７のフランジ部１６ａ、１７ａ間で
挟持した状態で、前記フェルト１４および両連結部材１
６、１７が一体に組み立てられる。

前記上側フェルト状フィルタ１３は、前記下側フェルト
状フィルタ１２のフェルト１４と同一の大きさで同一の
形状となっているフェルト２０と、このフェルト２０の
中央部の上下面に設けられるリング部材２１、２２とか
らなり、両リング部材２１、２２は３箇所に拡張部２１
ａ、２２ａを有し、上側に位置するリング部材２１の拡
張部２１ａには凹部２１ｂがそれぞれ形成され、一方、
上側のリング部材２１の凹部２１ｂを受け入れる孔２０
ａが前記フェルト２０に穿設され、これにより、上側の
リング部材２１の凹部２１ｂはフェルト２０の孔２０ａ
に位置した際に下側のリング部材２２の拡張部２２ａに
当接可能であり、上側のリング部材２１および下側のリ
ング部材２２は、その拡張部２１ａ、２２ａどうしをス
ポット溶接２３することで、前記フェルト２０および両
リング部材２１、２２が一体に組み立てられている。

上記のように構成された上側フェルト状フィルタ１３と
下側フェルト状フィルタ１２とを組み立ててフェルト状
フィルタ部材３に形成する場合には、まず、下側フェル
ト状フィルタ１２の上部に上側フェルト状フィルタ１３
を重ね、第７図に示すように両フェルト状フィルタ１
２、１３の周縁部をミシン等を用いて糸２４で縫い合わ
せ、これによって完成する。

上記のように構成した上下ケース１、２およびフェルタ
状フィルタ部材３を組み立てる場合には、まず、第８図
に示すようにかしめ具２５を用いて下側フェルト状フィ
ルタ１２の連結部材１６、１７を前記下ケース２の流入
口５内に圧入する。

この時、フェルト状フィルタ部材３の上側フェルト状フ
ィルタ１３には上下面にリング部材２１、２２が設けら
れ、このリング部材２１、２２が押圧されることによ
り、フェルト２０が破損する恐れは防止される。

また、前記リング部材２２と下側フェルト状フィルタ１
２の連結部材１７が当接するので下側フェルト状フィル
タ１２のフェルト１４も破損する恐れはまったく無く、
第９図に示すように、下側ケース２の流入口５の内部に
フェルト状フィルタ部材３の連結部材１７が圧入され
る。

そして、前記下ケース２にフェルト状フィルタ部材３の
連結部材１７を圧入したのちに、下ケース２の溝２９内
にパッキン２６を位置し、受け治具２７を用いて連結部
材の下端部をかしめて下ケース２に固定する。

これによって、前記下ケース２にフェルト状フィルタ部
材３を固定することができる。

つぎに、前記下ケース２の上に上ケース１を位置して、
上下ケース１、２の周縁部を超音波溶着、または板金ハ
ンドでかしめて一体に接合する。

つぎに、前記フェルト状フィルタ部材３の内部に広げる
ために、第１２図および第１３図に示すようなスペーサ
３０を用いるものであり、このスペーサ３０は円柱３１
を軸芯にして３枚の羽根３２が放射状に設けられ、各羽
根３２の外方下端部に段付き部３３が設けられている。

そして、各羽根３２を捩じることにより各羽根３２の外
端までの径が初期の状態よりも小さくなり、この状態で
前記フェルト状フィルタ部材３の連結部材１７の内部に
挿入すると、スペーサ３０の上端が、フェルト状フィル
タ部材３のうちの上側フェルト状フィルタ１３を前記リ
ング部材２２を介して持ち上げ、スペーサ３０は押し込
まれたのちに前記各羽根３２が初期の状態に復帰するこ
とにより、外方下端部の段付き部３３が連結部材１７に
係止して、フェルト状フィルタ部材３の内部を上下方向
に広げた状態に保持するものである。

つぎに前記のものの作用について説明する。

この考案による自動変速装置用流体フィルタ装置にあっ
ても、前記従来のものと同様に、オイルパンの内部に配
設して、吸込負圧を作用させるものであり、下ケース２
の流入口５、すなわち、フェルト状フィルタ部材３の連
結部材１７の内部に流入したオイルはフェルト状フィル
タ部材３の内部に流入する。

この場合、前記フェルト状フィルタ部材３の両フェルト
１４、２０は上下ケース１、２の突起６、９間にそれぞ
れ設けられた金網８、１０に支持されているので、上下
ケース１、２に密着することはなく、矢印Ａおよび矢印
Ｂの流れを確保できる。

そして、矢印Ｂの流れは下側フェルト状フィルタ１２と
下ケース２と下ケースの突起６との間で形成された空間
を円滑に流れ、さらに、前記フェルト状フィルタ部材の
外側に形成した隙間Ｄを経て矢印Ａの流れと合流し、上
ケース１の流出口４に向かって流れて効率良くダストが
除去された清浄なオイルがエンジンに供給されるもので
ある。

なお、前記実施例においては上下ケース１、２およびフ
ェルト状フィルタ部材３を円形にしたが、これに限定す
ることなく、たとえば、第１５図に示すように四角形に
することもできるものである。

〔考案の効果〕

この考案は前記のように構成したことにより、流入口側
である下側のフィルタの全周囲に渡って流出口に至る流
れが形成されることにより、下側のフィルタから流出口
に至る流れを大幅に増大することができて従来のものの
ように下側のフィルタからの流れが阻害されるというこ
とがまったくなくて円滑な流れを形成できることとな
り、これによって通油量を大きく確保することができ、
しかも、通油量を大きくしてもフィルタが上下ケースに
密着することは、上下ケースに設けた突起の作用によっ
て阻止できて、突起によってフィルタと上下ケースとの
間の隙間を確保できることにより、効率的にダストの捕
捉を行うことができるなどのすぐれた効果を有するもの
である。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案による自動変速装置用流体フィルタ装
置の全体概略縦断面図、第２図は下側フェルト状フィル
タを示す平面図、第３図は第２図の断面図、第４図は上
側フェルト状フィルタの平面図、第５図は第４図の断面
図、第６図は第４図のVI−VI線に沿って見た図、第７図
はフェルト状フィルタ部材の平面図、第８図は第７図に
示すものを下ケースに圧入する状態を示す断面図、第９
図はフェルト状フィルタ部材を下ケースに圧入した後に
かしめて固定する状態を示す断面図、第１０図は下ケー
スの平面図、第１１図は第１０図の断面図、第１２図は
スペーサの斜視部、第１３図はスペーサを取付ける場合
の羽根の状態を示す説明図、第１４図はスペーサを取付
けた時の状態を示す説明図、第１５図は他の実施例に示
す概略図、第１６図および第１７図は従来の自動変速装
置用流体フィルタ装置を示し、第１６図は断面図、第１
７図はフェルト状フィルタを示す概略図である。 １、５６……上ケース ２、５１……下ケース ３……フェルト状フィルタ部材 ４、５５……流出口 ５、５２……流入口 ６、９……突起 ８、１０……金網 １２……下側フェルト状フィルタ １３……上側フェルト状フィルタ １４、２０……フェルト １５、２０ａ……孔 １６、１７……連結部材 １６ａ，１７ｂ……フランジ部 ２１、２２……リング部材 ２１ａ、２２ａ……拡張部 ２１ｂ……凹部 ２３……スポット溶接 ２４……糸 ２５……かしめ具 ２６……パッキン ２７……受け治具 ３０……スペーサ ３１……円柱、３２……羽根 ３３……段付き部 ５３……フィルタ、５４……開口部 ５７……オイルパン、５８……オイル

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】流入口（５）が設けられ、かつ、内面に、
   放射状に延びるとともに、上面が湾曲している複数の突
   起（６）およびこの突起（６）の上面間に設けられた金
   網（８）を有する下ケース（２）と、該下ケース（２）
   と組合わされて空所を形成するとともに、下ケース
   （２）と同様に、内面に、放射状に延びるとともに、上
   面が湾曲している複数の突起（９）、この突起（９）の
   上面間に設けられた金網（１０）および流出口（４）を
   有する上ケース（１）と、前記上下ケース（１）（２）
   で形成される空所内に配設されるフェルト状フィルタ部
   材（３）とを具え、該フェルト状フィルタ部材（３）は
   上下一対のフェルト状フィルタ（１２）（１３）の周縁
   部を繋いで袋状に形成してあるとともに、この内部にオ
   イルを導く連結部材（１７）が前記下ケース（２）の流
   入口（５）に連結されていることを特徴とする自動変速
   装置用流体フィルタ装置。