JPH06113817A - 薬剤耐性ブドウ球菌測定ユニット - Google Patents

薬剤耐性ブドウ球菌測定ユニット

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JPH06113817A
JPH06113817A JP28944292A JP28944292A JPH06113817A JP H06113817 A JPH06113817 A JP H06113817A JP 28944292 A JP28944292 A JP 28944292A JP 28944292 A JP28944292 A JP 28944292A JP H06113817 A JPH06113817 A JP H06113817A
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敬道 井上
Shiei Tateyama
私英(タテヤマ シエイ) 立山
Toru Wada
徹 和田
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Abstract

(57)【要約】 【構成】メンブランフィルターと吸収性パットを密着し
て装着したフィルターカプセルと薬剤耐性ブドウ球菌培
養液充填容器からなり、メンブランフィルターは空気を
流通せしめることにより表面に浮遊菌を捕集する機能を
有し、吸収性パットはフィルターで菌捕集後、培養液充
填容器から培養液が注入されて培地となり、薬剤耐性ブ
ドウ球菌(MRSA)を選択的に培養してメンブラン表面にコ
ロニーを生成させることを特徴とする、空気中浮遊薬剤
耐性ブドウ球菌測定ユニット、更に培養液充填容器を裏
蓋に組み込んだ測定ユニット及び、測定方法である。 【効果】 最近メチシリンに耐性を有するブドウ球菌に
よる疾病の難治性が問題となっている。本発明の薬剤耐
性ブドウ球菌測定ユニットは、従来の煩雑で長時間を要
する測定法を大幅に簡略化し、MRSA選択培地を使用する
ことにより1度の培養のみで測定を可能としたものでMR
SAに対する環境管理に極めて有効である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、空気中に浮遊する薬剤
耐性ブドウ球菌の測定ユニットに関するもので、更に詳
しく述べると環境測定用の薬剤耐性ブドウ球菌測定装置
に適用され、空気中に浮遊する薬剤耐性ブドウ球菌の数
を測定するための、菌の捕集及び培養ユニット及びその
使用法である。
【0002】
【従来の技術】従来から病院等において室内の環境管理
のため、空気中に浮遊する菌の単位体積あたりの数の測
定がなされている。ブドウ球菌には従来から存在する抗
菌薬に対する耐性がないものの他に、近年メチシリンに
耐性を有するに至ったブドウ球菌がある。薬剤耐性ブド
ウ球菌は最近急速に広まり、各種抗菌薬に対する耐性化
が早く、新しく開発された抗菌薬に対しても急速に耐性
化するため、その感染による疾病の難治性が注目されそ
の重要性が一層高まっている。
【0003】現在採用されているメチシリン耐性黄色ブ
ドウ球菌(Methycillin ResistantStaphyrococcus Aure
us 、以下MRSAという) の検出法は、先ず検体の増菌培
養により全ての菌種のコロニーを成長させ、次に各コロ
ニーを分離培養してブドウ球菌を同定し、更にメチシリ
ン耐性の有無を培養により確認することによって、MRSA
を確認している。従って、多段階の培養試験を必要とす
るためMRSAの確認と測定には最低約2週間が必要となっ
ている。従って、病院等の環境管理のため常時測定を実
施し、その結果に基づいて迅速に室内空気の衛生状態を
管理することは極めて困難であった。
【0004】ここで、ブドウ球菌を選択的に培養する培
地としては、D-マンニット及び食塩を主成分としたマン
ニット培地及び、ピルビン酸ナトリウム、塩化リチウム
及びグリシンを主成分としたベアードパーカー培地が従
来から知られている。
【0005】本出願人は環境管理に使用するため、先に
簡便で且つ短時間に空気中に浮遊する菌の数を測定する
方法を開発した(特願平3-87697 号) 。従来はシャーレ
に滅菌済の培地を入れ、一定時間蓋を開けて放置し、そ
の間に培地の表面に、空気中から落下した菌を捕集し、
培養後のコロニー数により、環境を表示する方法が採用
されていた。しかし、この方法は操作が煩雑で測定に長
時間を要する他、得られた測定値のばらつきも大きかっ
た。そこで本出願人はメンブランフィルターの菌捕集性
に着目して、捕集装置及び培養方法を簡略化して、短時
間で空気中に浮遊する菌の数の測定を可能にしたもので
ある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】最近MRSAの測定は病院
等における環境管理上重要な課題になっている。このた
めMRSA測定方法の簡略化、測定時間の短縮化すなわち、
能率的な測定方法及び装置の開発が強く要望されてい
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、先に開発
した簡単で且つ短時間に空気中に浮遊する菌の数を測定
出来る菌捕集装置及び操作が容易な培養方法を、MRSAの
測定に適用する方法について研究した。その結果測定値
の再現性を高めるためには、空中に浮遊する菌をメンブ
ランフィルターで捕集するとき、菌がメンブランに衝突
して細胞膜が損傷し死滅するためであることを考慮し
て、空気のフィルター通過速度の限定及びカプセルの構
造について検討し、更に1回の培養のみでMRSAのコロニ
ーのみを成長させ得る選択性が高い培養液の組成につい
て研究した。また簡単な操作で且つ短時間に培地を調整
する方法についても検討し、それらの結果に基づいて本
発明に到達した。
【0008】すなわち、メンブランフィルターと吸収性
パットを密着して装着したフィルターカプセルと薬剤耐
性ブドウ球菌培養液充填容器からなり、メンブランフィ
ルターは空気を流通せしめることにより表面に浮遊菌を
捕集する機能を有し、吸収性パットはフィルターで菌捕
集後、培養液充填容器から培養液が注入されて培地とな
り、薬剤耐性ブドウ球菌を選択的に培養してメンブラン
表面にコロニーを生成させることを特徴とする、空気中
浮遊薬剤耐性ブドウ球菌測定ユニット、更に培養液充填
容器を裏蓋に組み込んだ測定ユニット及び、測定方法で
ある。
【0009】ここで薬剤耐性ブドウ球菌を選択的に培養
し得る培養液としては、D-マンニット及び塩化ナトリウ
ムを主成分としたマンニット培地或いは、ピルビン酸ナ
トリウム、グリシン及び塩化リチウムを主成分としたベ
アードパーカー培地に、メチシリン及び/またはオキサ
シリンを含有させ、炭酸ソーダまたは塩酸によりpHを調
整した培地が使用可能であり、好ましい。
【0010】以下本発明について詳しく説明する。
【0011】本発明の薬剤耐性ブドウ球菌測定ユニット
のフィルターカプセルは、通常一定の流速で、一定量の
空気を流通させる様に作られた、浮遊菌測定装置に取り
付けられて使用される。カプセルは内部にメンブランフ
ィルターと吸収性パットを密着して装着された構造にな
っている。その一態様は図1に示す様に、その内部にメ
ンブランフィルターと吸収性パットが重ねて装着され、
空気は入口より入りフィルター→パットの順に通過する
様になっている。メンブランフィルターは空気を流通さ
せた時、空気中に浮遊する菌を捕集する機能を有する必
要がある。空気中には通常多くの種類の菌が浮遊してい
るが、その中で最も多く存在しているのは、ミクロコッ
カス(micrococcus) 及びブドウ球菌(staphyrococcus)
である。一般に細菌は直径 1〜2 μm の球状で、ペプチ
ドグリカンを主成分とする細胞膜で包まれている。細胞
膜の内部には細胞質が含まれている。
【0012】メンブランフィルターとはニトロセルロー
ズ、セルローズアセテート、ポリエーテルスルホン、ポ
リテトラフルオロエチレン等のフィルムから作られ、薄
いフィルムの全面に、孔径がほぼ均一な、円形に近い細
孔が緻密に形成されているフィルム状フィルターであ
る。従来のフィルターは多数の繊維の絡み合いで形成さ
れていたため、細孔の形状が不規則で細菌を濾過したと
きの分離性が不充分であった。しかし、メンブランフィ
ルターは細孔が均一なため、これと比較して非常にシャ
ープな分離性を示す点に特徴がある。空気中に浮遊する
菌の捕集用には、通常孔径 0.3〜0.8 μm 、好ましく
は、0.4 〜0.5 μm のメンブランフィルターが使用され
る。
【0013】本発明の測定ユニットは、多量の空気中か
ら浮遊菌を捕集する点において、従来のシャーレ法に較
べ原理的には優れている。しかし、当初測定結果にかな
りばらつきが認められ、検討の結果流速の影響が大きい
ことが見出され、図3に示す様に空中に浮遊する菌をメ
ンブランフィルターで捕集するとき、菌がメンブランに
衝突して細胞膜が損傷し死滅するためであることが明ら
かとなった。この結果により測定精度を高めるために
は、空気のフィルター通過速度は15cm/秒以下にするこ
とが好ましいことが明らかとなった。
【0014】メンブランフィルターには吸収性パットが
積層され、菌捕集時空気を流通させる時はフィルターを
保持する機能を有し、更に浮遊菌の捕集後はパットに培
養液を含浸させると、そのまま培地が調整出来る様にな
っている。
【0015】本測定ユニットの薬剤耐性ブドウ球菌培養
液はアンプル等に充填されている。この培養液を含む培
地はMRSAのみを選択的に培養し得る性質を持っている。
前記の様にブドウ球菌を選択的に培養出来る培地は既に
市販されている。しかし、この培地では薬剤耐性を有す
るブドウ球菌も従来から存在する薬剤耐性がないブドウ
球菌も繁殖して黄色のコロニーを生成する。この培地に
よる培養のみでは最近問題となっているMRSAの確認は出
来ない
【0016】更にこれらの培地はいずれも寒天培地用の
原料である、粉末の形態で市販されている。このため使
用する場合には精製水で所定の濃度に溶解し、培養に使
用するシャーレ等に注入し、寒天を固化させて調整する
必要がある。従って、MRSAを測定する場合には培地の調
整のみでも相当煩雑な操作が必要となる。
【0017】この操作を簡略化するため本測定ユニット
では、培養液を滅菌した後予めアンプル等に充填してお
き、使用時パットに含浸させると直ちに培地が調整出来
る様になっている。固形状の寒天培地に較べて、極めて
簡単な操作で培地の調整が可能で、本ユニットの大きな
特徴の一つである。
【0018】アンプルに充填されている培養液の組成
は、ブドウ球菌を選択的に培養出来るマンニット培地及
びベアードパーカー培地に基づいて、本測定ユニットに
適合出来る様に開発したもので、既存の培地の含有成分
から寒天を除き炭酸ソーダ或いは希塩酸によって、培養
に適したpHに調整し、更に臨床上の使用条件を考慮して
メチシリン、オキサシリンまたはその他の抗菌剤を加え
て調整したものである。
【0019】すなわち、マンニット及び食塩を主成分と
した培養液の組成は、精製水1リットル当たり、肉エキ
ス2.5g、ペプトン 10g、D-マンニット 10g、塩化ナトリ
ウム75g、フェノールレッド 0.025g 及びメチシリン及
び/またはオキサシリンを含有し、炭酸ソーダまたは塩
酸によりpH 7.2〜7.6 に調整した液である。
【0020】また、ピルビン酸ナトリウム及び塩化リチ
ウムを主成分とした培養液の組成は、精製水1リットル
当たり、肉エキス5g、カゼイン製ペプトン 10g、酵母エ
キス1g 、ピルビン酸ナトリウム 10g、グリシン 12g、
塩化リチウム 5g 及びメチシリン及び/またはオキサシ
リンを含有し、更に1%亜テルル酸カリウム溶液20mlを
添加し炭酸ソーダまたは塩酸によりpH 6.6〜7.0 に調整
した液である。
【0021】抗菌剤例えば、メチシリン、オキサシリン
等は予め添加してアンプルに充填されているが、培地調
整時シリンジ等で添加してもよい。この様にして得られ
た培地と、予め積層されている空気中の浮遊菌を捕集し
たメンブランフィルターを培養すれば、MRSAのみ繁殖し
てメンブランの表面に通常黄色のコロニーが生成する。
【0022】培養は通常インキューベーター中でされる
が、その条件はマンニット及び食塩を主成分とした培養
液では35〜38℃で、24〜48時間である。MRSAが存在する
ときは黄色のコロニーが生成し、その数によりメンブラ
ンで捕集れたMRSAの個数が分かる。
【0023】また、ピルビン酸ナトリウム及び塩化リチ
ウムを主成分とした培養液の培養条件は、37℃で、24〜
26時間である。MRSAが存在するときは光沢がある黒色コ
ロニーを生成する。生成したコロニーの数によりメンブ
ランで捕集されたMRSAの個数が分かる。
【0024】通常のMRSA検出方法によれば、長期間を要
する多段階の培養試験によって初めてMRSAの測定が可能
になることと比較すれば、1度の培養のみでMRSAの測定
が出来ることは操作的にも時間的にも遙かに優れてお
り、これが本発明の測定ユニットの最も大きな特徴であ
る。
【0025】フィルターカプセルの内部は図1に示す様
に、メンブランフィルター及び吸収性パットが装着さ
れ、空気流入口には蓋により密封されている。カプセル
は組み立て後滅菌して保管されるため、空気流入口の蓋
からメンブランフィルター迄は滅菌状態に保たれてい
る。カプセルは一定の流速で一定量の空気がメンブラン
を通過する様な機能を有する、空気中の浮遊菌の測定装
置に取り付けて使用されることが好ましい。
【0026】空気中には常に多数の種類の細菌が浮遊し
ている。その中最も多いのは、ミクロコッカス及びブド
ウ球菌で、ブドウ球菌の中には最近特に問題となってい
るMRSAが含まれている。空気中に浮遊するMRSAを採取す
る時は、カプセルの蓋を外して浮遊菌測定装置のスイッ
チを入れ、メンブランフィルターに一定の流速で一定量
の空気を通過させる。空気は入口から入ってメンブラン
フィルター→吸収性パットの方向に流れ、空気中に浮遊
するMRSAは他の菌と共にメンブランの表面に捕集され
る。
【0027】この際、メンブランの空気通過速度はMRSA
測定値の再現性に大きな影響を持っている。これは測定
値の再現性をシャーレ法と比較検討中に見出されたこと
で、測定値がばらつく最大の要因は空気中に浮遊する菌
をメンブランで捕集する時、流速が速いと菌がメンブラ
ンと衝突した時細胞膜を損傷して死滅するためであるこ
とが分かった。メンブランの空気通過速度 (空洞速度)
と菌の残存率の関係を図2に示す装置により検討した結
果、図3に示した結果が得られた。これにより、メンブ
ランの空気通過速度は15cm/秒以下に保持することが測
定値の再現性を確保するためには必要である。浮遊菌の
捕集終了後空気流入口は蓋により閉止され、メンブラン
表面は密封された状態で保持され、培養される。
【0028】メンブランフィルターに空気を通過させて
浮遊菌を捕集する時、吸収性パットはメンブランと密着
してそれを保持する機能を持っている。メンブランは非
常に薄く僅かな空気の圧力等で変形し、細孔径も変化す
るおそれがあるためである。浮遊菌の捕集終了後、培養
液は薬剤耐性ブドウ球菌培養液アンプル等を切って吸収
性パットの裏側から注入される。液は毛細管現象により
パットの内部に均一に浸透して、そのままMRSAの培地と
なる。
【0029】吸収性パットに培養液注入後、カプセルに
裏蓋を取り付け、通常インキューベーターに入れて一定
温度で、一定時間保持することにより培養する。培地は
MRSAのみが選択的に繁殖する性質を有するため、メンブ
ランにMRSAが捕集されている場合は培養により通常黄色
のコロニーが生成する。この数とメンブランの空気通過
量より、直ちにMRSAの有無及びその密度が分かる。
【0030】また本測定ユニットには図5に示す様に、
裏蓋に薬剤耐性ブドウ球菌培養液充填部を有した形態を
有するものが含まれている。カプセルで浮遊菌を捕集し
た後、裏蓋を取り付けると空気出口の突起で開口部が形
成され、培養液が吸収性パットに注入されて培地とな
り、そのままインキューベーターに入れて培養すること
が出来る様になっている。
【0031】前記の様に培地の調整、培養、MRSAの検
出、測定の操作が極めて簡単なことも本発明の測定ユニ
ットの大きな特徴の一つである。
【0032】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明する。
【0033】(実施例1)図1に本発明の薬剤耐性ブド
ウ球菌測定ユニットを構成する、(a) フィルターカプセ
ル及び、(b) 薬剤耐性ブドウ球菌培養液充填容器の一態
様の断面図及び斜視図を示す。また(c) は培養液注入用
のスポイトの斜視図を示したものである。
【0034】フィルターカプセル1の本体は透明なプラ
スチック成型品で、本体には(a) に示す様に空気流入口
の蓋2が設けられ、その内部にはメンブランフィルター
3と吸収性パット4が装着され、メンブラン及びパット
保持板5の上に取り付けられている。メンブラン及びパ
ット保持板5のパットと接触する面には多数の同心円状
及び放射線状の浅い溝が切られ、空気がメンブランの各
部分を均一な速度で通過する様な構造になっている。ま
た、保持板の中心部に円筒状の空気取出口6が設けられ
ている。(b) の薬剤耐性ブドウ球菌培養液アンプル7に
はMRSAを選択的に培養する性質を有する培養液17が滅菌
されて充填されている。
【0035】メンブランフィルター3は薄いニトロセル
ローズフィルムで、空気通過部分内径が37mm、その全面
に孔径が0.45μm のほぼ均一な、円形に近い細孔が緻密
に形成されている。また、吸収性パット4にはガス透過
性と水分吸収性が優れたセルローズ不織布が使用されて
いる。
【0036】フィルターカプセルは組み立て後、蓋の開
口部21に栓18を取り付けて密封し滅菌して保管されてい
るため、空気流入口の蓋2からメンブランフィルター迄
は滅菌状態に保たれている。吸収性パット4から空気取
出口6の間は開放されているが、空気流入口が閉止され
ているため、空気取出口6からメンブランを通過して空
気が流入することがなく、保管中にメンブランの表面に
浮遊菌が付着することはない。
【0037】次に、図2に示すような装置を使用して、
メンブランを通過する空気の空洞速度を変化せしめた場
合のMRSAの残存密度を測定した。試料は汚染度が高い病
室の空気を使用し、同一の空気溜8に2個のフィルター
カプセル1、1′を接続し、流量計9、9′及び調節弁
10、10′を経て同一の吸引ポンプ11で吸引するようにな
っている。カプセル1の空洞速度を一定に保持し、1′
の空洞速度を変化させて本発明の測定法によってMRSAの
密度を測定し、空洞速度とMRSAの残存率との関係をしら
べた。その結果を図3に示す。尚、図に表示した測定値
は20回の平均値で、測定値のばらつき範囲を縦棒で示し
た。
【0038】これにより、空洞速度が15cm/秒以上にな
ると、空洞速度の上昇と共に菌の残存率が低下し、また
測定結果のばらつきが著しく大きくなることがわかる。
従って、空気がメンブランを通過するときの空洞速度を
15cm/秒以下に保持すれば、菌の死滅が殆どなくなり、
また、測定値のばらつきも著しく小さくなることが明ら
かである。
【0039】次に、フィルターカプセルは一定の流速で
一定量の空気がメンブランを通過する様な機能を有す
る、空気中の浮遊菌の測定装置[(株) クラレ製、浮遊菌
測定器「エアトレンド」] に取り付けて使用した。空気
流入口の蓋21を外し、浮遊菌測定器のスィッチを入れ
て、空気の通過時間を20分に設定して浮遊菌を捕集し、
捕集後空気流入口の蓋を閉止した。この間メンブランの
空気通過量は4ft3であり、通過速度(空洞速度)は8.7c
m/秒であった。
【0040】次に、薬剤耐性ブドウ球菌培養液アンプル
7を切り、封入されている1mlの培養液17をスポイト19
で空気取出口6から吸収性パット4に注入した。液は速
やかにパットに吸収され速やかに培地が調整された。
【0041】培養液はマンニット及び食塩を主成分とし
た液で、その組成は、精製水1リットル当たり、肉エキ
ス2.5g、ペプトン 10g、D-マンニット10g 、塩化ナトリ
ウム75g、フェノールレッド 0.025g 及びメチシリンを
含有し、炭酸ソーダ及び希塩酸によってpHを7.2 〜7.6
に調整した液である。
【0042】次にカプセルに裏蓋をしてインキューベー
ターに入れ、常法により37℃で48時間培養した。その結
果黄色のコロニー4個がカプセルの外部から確認でき
た。浮遊MRSAの密度は1個/ft3になる。
【0043】(実施例2)図4に本発明の薬剤耐性ブド
ウ球菌測定ユニットの一態様の斜視図を示す。フィルタ
ーカプセル1は実施例1と同じ構造を有するものであ
る。(a) の薬剤耐性ブドウ球菌培養液充填容器12はプラ
スチック成型品で、成型と同時に培養液を封入し、滅菌
して保管されている。容器の先端は偏平な把手20とな
り、簡単に折れここから内容液が取り出せる様になって
いる。
【0044】充填容器はそのままスポイトになるため浮
遊菌捕集後、図(b) の様にしてカプセルの空気取出口6
から培養液を吸収性パットに注入することが出来る。
【0045】その他、浮遊菌の捕集、培養液組成及び培
養方法、条件等は実施例1と同様である。
【0046】(実施例3)図5に本発明の薬剤耐性ブド
ウ球菌測定ユニットの一態様の斜視図を示す。フィルタ
ーカプセル13は空気取出口が突起14を有する他、実施例
1と同じ構造である。また、薬剤耐性ブドウ球菌培養液
充填部15はプラスチック成型品 (ポリカーボネイト)
で、カプセルの裏蓋の内部に培養液充填部が組み込まれ
た構造になっている。充填部に培養液を注入した後、そ
の先端にはエバールフィルム16がヒートシールされ、滅
菌して保存されている。
【0047】浮遊菌捕集後、培養液充填部が組み込まれ
ているカプセル裏蓋15を、カプセルの裏側に押し込む
と、空気取出口に設けられた突起14で、充填部入口のエ
バールフィルム16が破られ、培養液が吸収性パットに注
入され培地が調整される。
【0048】培養液充填部に封入されている培養液はピ
ルビン酸ナトリウム及び塩化リチウムを主成分とした液
で、その組成は、精製水1リットル当たり、肉エキス5
g、カゼイン製ペプトン 10g、酵母エキス 1g 、ピルビ
ン酸ナトリウム 10g、グリシン12g、塩化リチウム 5g
及びオキサシリンを含有し、更に1%亜テルル酸カリウ
ム溶液20mlを添加し炭酸ソーダまたは塩酸により pH を
6.6〜7.0 に調整した培養液である。
【0049】実施例1とは異なる汚染した空気から浮遊
菌を捕集し、前記の様にして培地を調整した後、カプセ
ルをインキューベーターに入れ、37℃で24時間培養し
た。その結果のコロニー6個がカプセルの外部から確認
できた。浮遊MRSAの密度は1.5個/ft3になる。
【0050】
【発明の効果】最近は病院等医療施設において、メチシ
リンに耐性を有するブドウ球菌が広まりその感染による
疾病の難治性が注目され、厳しい環境管理が要請されて
いる。本発明の薬剤耐性ブドウ球菌測定ユニットは、従
来の煩雑で長時間を要する測定法を大幅に簡略化し、MR
SA選択培地を使用することにより1度の培養のみで測定
を可能としたものでMRSAに対する環境管理に極めて有効
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薬剤耐性ブドウ球菌測定ユニットの一
態様を示す。(a) はフィルターカプセルの断面図、(b)
は薬剤耐性ブドウ球菌培養液充填容器である。また、
(c) は培養液注入用スポイトの斜視図である。
【図2】メンブランを通過する空気の空洞速度とMRSAの
残存率を測定する装置の系統図を示す。
【図3】メンブランを通過する空気の空洞速度とMRSAの
残存率の関係を示す。
【図4】本発明の薬剤耐性ブドウ球菌測定ユニットの一
態様の斜視図を示す。(a) は薬剤耐性ブドウ球菌培養液
充填容器の斜視図を、(b) は培養液を充填容器から吸収
性パットに注入する時の斜視図である。
【図5】本発明の薬剤耐性ブドウ球菌測定ユニットの一
態様の断面図を示す。
【符号の説明】
1、1′ フィルターカプセル 2 空気流入口の蓋 3 メンブランフィルター 4 吸収性パット 5 メンブラン及びパット保持板 6 空気取出口 7 薬剤耐性ブドウ球菌培養液充填容器 8 空気溜 9、9′ 流量計 10、10′ 調節弁 11 吸引ポンプ 12 プラスチック製薬剤耐性ブドウ球菌培養液充填容器 13 空気取出口に突起を有するフィルターカプセル 14 空気取出口の突起 15 薬剤耐性ブドウ球菌培養液充填部を有するカプセル
裏蓋 16 エバールフィルム 17 薬剤耐性ブドウ球菌培養液 18 空気流入口の蓋の栓 19 スポイト 20 プラスチック製薬剤耐性ブドウ球菌培養液充填容器
の把手 21 空気流入口の蓋の開口部

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メンブランフィルターと吸収性パットを
    装着したフィルターカプセルと薬剤耐性ブドウ球菌培養
    液充填容器からなり、メンブランフィルターは空気を流
    通せしめることにより表面に浮遊菌を捕集する機能を有
    し、吸収性パットはフィルターで菌捕集後、該培養液が
    注入されて培地となり、薬剤耐性ブドウ球菌を選択的に
    培養してメンブラン表面にコロニーを生成させ得ること
    を特徴とする、空気中浮遊薬剤耐性ブドウ球菌測定ユニ
    ット。
  2. 【請求項2】 メンブランフィルターと吸収性パットを
    装着したフィルターカプセルと、薬剤耐性ブドウ球菌培
    養液の充填部を有するカプセル裏蓋からなり、メンブラ
    ンフィルターは空気を流通せしめることにより表面に浮
    遊菌を捕集する機能を有し、菌捕集後カプセルに裏蓋を
    取り付けることにより、該培養液充填部に開口部が形成
    され培養液が吸収性パットに注入されて培地となり、薬
    剤耐性ブドウ球菌を選択的に培養してメンブラン表面に
    コロニーを生成させ得ることを特徴とする、空気中浮遊
    薬剤耐性ブドウ球菌測定ユニット。
  3. 【請求項3】 メンブランフィルターと吸収性パットを
    装着したフィルターカプセルに対し、空気を流通させて
    メンブランフィルター表面に浮遊菌を捕集後、薬剤耐性
    ブドウ球菌培養液を吸収性パットに注入して薬剤耐性ブ
    ドウ球菌を選択的に培養し、該メンブランフィルター表
    面にコロニーを生成させることを特徴とする、空気中浮
    遊薬剤耐性ブドウ球菌測定方法。
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