JPH0610088A - ステンレス鋼粉末の焼結方法 - Google Patents
ステンレス鋼粉末の焼結方法Info
- Publication number
- JPH0610088A JPH0610088A JP19313092A JP19313092A JPH0610088A JP H0610088 A JPH0610088 A JP H0610088A JP 19313092 A JP19313092 A JP 19313092A JP 19313092 A JP19313092 A JP 19313092A JP H0610088 A JPH0610088 A JP H0610088A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- stainless steel
- sintering
- steel powder
- powder
- iron oxide
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Landscapes
- Powder Metallurgy (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】 Si酸化物の生成を防止して疲労強度特性を
向上できるステンレス鋼粉末の焼結方法を提供する。 【構成】 水アトマイズ法により製造されたステンレス
鋼粉末1を成形した後、焼結する場合に、この焼結前
に、上記ステンレス鋼粉末1の表面の酸化鉄膜2を除去
する還元処理を施す。また、この還元処理を、温度300
〜600 ℃の高純度水素雰囲気中にて行う。
向上できるステンレス鋼粉末の焼結方法を提供する。 【構成】 水アトマイズ法により製造されたステンレス
鋼粉末1を成形した後、焼結する場合に、この焼結前
に、上記ステンレス鋼粉末1の表面の酸化鉄膜2を除去
する還元処理を施す。また、この還元処理を、温度300
〜600 ℃の高純度水素雰囲気中にて行う。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プレス成形,押出成
形,あるいは射出成形に用いられるステンレス鋼粉末の
焼結方法に関し、特にSi酸化物の生成を防止して疲労
強度特性を改善できるようにした焼結プスセスに関す
る。本発明は、金属射出成形に用いられるステンレス鋼
粉末に適しているので、以下これを例にとって説明す
る。
形,あるいは射出成形に用いられるステンレス鋼粉末の
焼結方法に関し、特にSi酸化物の生成を防止して疲労
強度特性を改善できるようにした焼結プスセスに関す
る。本発明は、金属射出成形に用いられるステンレス鋼
粉末に適しているので、以下これを例にとって説明す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、金属粉末の射出成形法(MIM)
が注目されている。これは、図6に示すように、金属微
粉末と樹脂等の熱可塑性バインダとを混合し、これを射
出成形して所定形状のグリーン成形体を形成し、この成
形体を脱脂処理した後、真空中にて高温焼結して製品に
仕上げる方法である。この金属射出成形法は、基本的に
プラスチック成形法と同じであることから部品形状の制
約がなくなり、機械加工を行わず小型複雑形状部品を精
度良く成形できる。この射出成形法によれば、従来の粉
末冶金法,ダイカスト法,あるいはロストワックス法等
に比べて生産性を大幅に向上できるとともに、製造コス
トを低減でき、しかも焼結後の相対密度を向上できるこ
とから、引張強度,伸び等の機械的性質を向上できると
いう特長がある。このような金属射出成形には、従来、
水アトマイズ法で製造された粒径10μm 程度のステンレ
ス鋼粉末が原料粉末として多く採用されている。またバ
インダには種々のものが開発されているが、大半は樹脂
とワックスとを混合した熱可塑性バインダが使われてお
り、さらに脱脂は大気中, 又は真空中で行うのが一般的
であり、焼結は通常真空雰囲気中で行われている。
が注目されている。これは、図6に示すように、金属微
粉末と樹脂等の熱可塑性バインダとを混合し、これを射
出成形して所定形状のグリーン成形体を形成し、この成
形体を脱脂処理した後、真空中にて高温焼結して製品に
仕上げる方法である。この金属射出成形法は、基本的に
プラスチック成形法と同じであることから部品形状の制
約がなくなり、機械加工を行わず小型複雑形状部品を精
度良く成形できる。この射出成形法によれば、従来の粉
末冶金法,ダイカスト法,あるいはロストワックス法等
に比べて生産性を大幅に向上できるとともに、製造コス
トを低減でき、しかも焼結後の相対密度を向上できるこ
とから、引張強度,伸び等の機械的性質を向上できると
いう特長がある。このような金属射出成形には、従来、
水アトマイズ法で製造された粒径10μm 程度のステンレ
ス鋼粉末が原料粉末として多く採用されている。またバ
インダには種々のものが開発されているが、大半は樹脂
とワックスとを混合した熱可塑性バインダが使われてお
り、さらに脱脂は大気中, 又は真空中で行うのが一般的
であり、焼結は通常真空雰囲気中で行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の
ステンレス鋼粉末の焼結方法では、これにより得られた
焼結部品の疲労特性が低いという問題点がある。例え
ば、図5は、SUS304溶製鋼材,及びSUS304系ステンレス
鋼粉末MIM材の疲労試験結果を示す特性図である。こ
の図からも明らかなように、N=107 回で破壊しない最
大応力を疲労限度とした場合、溶製鋼材の疲労限度は38
0MPaであるのに対してMIM材は270MPaであり、溶製鋼
材に比べて約30%低下しており、この点での改善が要請
されている。
ステンレス鋼粉末の焼結方法では、これにより得られた
焼結部品の疲労特性が低いという問題点がある。例え
ば、図5は、SUS304溶製鋼材,及びSUS304系ステンレス
鋼粉末MIM材の疲労試験結果を示す特性図である。こ
の図からも明らかなように、N=107 回で破壊しない最
大応力を疲労限度とした場合、溶製鋼材の疲労限度は38
0MPaであるのに対してMIM材は270MPaであり、溶製鋼
材に比べて約30%低下しており、この点での改善が要請
されている。
【0004】本発明は、上記従来の状況に鑑みてなされ
たもので、焼結部品の疲労特性を改善できるステンレス
鋼粉末の焼結方法を提供することを目的としている。
たもので、焼結部品の疲労特性を改善できるステンレス
鋼粉末の焼結方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本件発明者らは、疲労特
性が劣化する原因を究明するために、試験後の上記MI
M材の疲労破面を電子顕微鏡で観察したところ、多数の
残留ポアが形成されており、しかもこのポア内には球状
の介在物が存在していることが認められた。この介在物
は分析した結果、Si酸化物であり、このSi酸化物の
生成によって焼結の進行が妨げられ、かつ焼結密度が下
がって多数の残留ポアを形成し、その結果疲労亀裂が容
易に発生し易くなっているものと考えられる。
性が劣化する原因を究明するために、試験後の上記MI
M材の疲労破面を電子顕微鏡で観察したところ、多数の
残留ポアが形成されており、しかもこのポア内には球状
の介在物が存在していることが認められた。この介在物
は分析した結果、Si酸化物であり、このSi酸化物の
生成によって焼結の進行が妨げられ、かつ焼結密度が下
がって多数の残留ポアを形成し、その結果疲労亀裂が容
易に発生し易くなっているものと考えられる。
【0006】図4は、このようなSi酸化物が生成され
るメカニズムを説明するための図である。即ち、水アト
マイズでは、1600℃のステンレス溶鋼に1000Kg/cm2程度
の高圧水を直接吹きつけ、これにより平均粒径5〜20μ
m のステンレス鋼粉末1を形成することから、この粉末
1が受ける冷却速度は極めて速く、通常103 〜106 ℃/s
ecの超急冷状態となっている。このため上記ステンレス
鋼粉末1が含有するCr,Si,Mn,Ni等の活性な
元素も一部は水と反応して酸化物を形成することとなる
が、大半は含有量の多いFeの酸化物,つまり酸化鉄膜
2がステンレス鋼粉末1の外表面を覆った状態で凝固す
ることとなる(図4(1) 参照)。このような酸化鉄膜2
で覆われたステンレス鋼粉末1をMIM法で、例えば室
温から1300℃に一気に昇温して1〜3時間保持する真空
焼結を行なうと、この酸化鉄膜2につられて粉末1内部
に固溶している最も活性なSiが表面に優先的に拡散し
(図4(2) 参照)、粉末表面で酸化鉄2のOがSiと結
合して次第にSi酸化物3を形成することとなる(図4
(3) 参照)。そして、焼結の終期になるとこれらのSi
酸化物3が多数のポア4を形成し、しかもこのポア4内
に残留することから(図4(4),(5) 参照)、上述のよう
に疲労特性を著しく低下させる。
るメカニズムを説明するための図である。即ち、水アト
マイズでは、1600℃のステンレス溶鋼に1000Kg/cm2程度
の高圧水を直接吹きつけ、これにより平均粒径5〜20μ
m のステンレス鋼粉末1を形成することから、この粉末
1が受ける冷却速度は極めて速く、通常103 〜106 ℃/s
ecの超急冷状態となっている。このため上記ステンレス
鋼粉末1が含有するCr,Si,Mn,Ni等の活性な
元素も一部は水と反応して酸化物を形成することとなる
が、大半は含有量の多いFeの酸化物,つまり酸化鉄膜
2がステンレス鋼粉末1の外表面を覆った状態で凝固す
ることとなる(図4(1) 参照)。このような酸化鉄膜2
で覆われたステンレス鋼粉末1をMIM法で、例えば室
温から1300℃に一気に昇温して1〜3時間保持する真空
焼結を行なうと、この酸化鉄膜2につられて粉末1内部
に固溶している最も活性なSiが表面に優先的に拡散し
(図4(2) 参照)、粉末表面で酸化鉄2のOがSiと結
合して次第にSi酸化物3を形成することとなる(図4
(3) 参照)。そして、焼結の終期になるとこれらのSi
酸化物3が多数のポア4を形成し、しかもこのポア4内
に残留することから(図4(4),(5) 参照)、上述のよう
に疲労特性を著しく低下させる。
【0007】本件発明者らは、上記SiO2 介在物の生
成を防止できれば、焼結を容易に進行でき、かつ焼結密
度を向上してポアをなくすことができ、ひいては疲労特
性を改善できるという観点から、還元処理を行うことに
着目した。この場合、一旦SiO2 になってしまうと、
これを還元処理で除去するのは極めて困難であり、また
他の方法を用いても容易に除去できない。一方、酸化鉄
の状態でOを還元処理すると容易に除去できることを見
出し、本発明を成したものである。
成を防止できれば、焼結を容易に進行でき、かつ焼結密
度を向上してポアをなくすことができ、ひいては疲労特
性を改善できるという観点から、還元処理を行うことに
着目した。この場合、一旦SiO2 になってしまうと、
これを還元処理で除去するのは極めて困難であり、また
他の方法を用いても容易に除去できない。一方、酸化鉄
の状態でOを還元処理すると容易に除去できることを見
出し、本発明を成したものである。
【0008】そこで請求項1の発明は、アトマイズ法に
より製造されたステンレス鋼粉末を成形した後、焼結す
るようにしたステンレス鋼粉末の焼結方法において、こ
の焼結前に、上記ステンレス鋼粉末表面の酸化鉄膜を除
去する還元処理を行うことを特徴としている。また、請
求項2の発明は、上記還元処理を温度300 〜600 ℃の高
純度水素雰囲気中にて行うことを特徴としている。
より製造されたステンレス鋼粉末を成形した後、焼結す
るようにしたステンレス鋼粉末の焼結方法において、こ
の焼結前に、上記ステンレス鋼粉末表面の酸化鉄膜を除
去する還元処理を行うことを特徴としている。また、請
求項2の発明は、上記還元処理を温度300 〜600 ℃の高
純度水素雰囲気中にて行うことを特徴としている。
【0009】ここで、上記ステンレス鋼粉末とは、オー
ステナイト系,フェライト系,オーステナイト−フェラ
イト系,マルテンサイト系,あるいは析出硬化系等の一
般鋼種の粉末で、平均粒径が5〜20μm のものをいう。
また上記ステンレス鋼粉末の成形法としては、射出成形
の他に、プレス成形,押出形成等があり、特に限定する
ものではない。
ステナイト系,フェライト系,オーステナイト−フェラ
イト系,マルテンサイト系,あるいは析出硬化系等の一
般鋼種の粉末で、平均粒径が5〜20μm のものをいう。
また上記ステンレス鋼粉末の成形法としては、射出成形
の他に、プレス成形,押出形成等があり、特に限定する
ものではない。
【0010】また、上記還元処理を行う場合、高純度水
素雰囲気中で、かつ300 〜600 ℃の温度で行うことが望
ましい。これにより一般のステンレス組成の場合、短時
間で急速に酸化鉄を還元できることが、種々の試験によ
り判明したからである。即ち、図2に示すように、還元
温度を200 ℃以下にすると長時間の還元処理でも完全に
還元するのは困難であるが、300 ℃以上にすると200 分
程度で90%以上還元できるからである。また還元温度は
高温にするほど酸化鉄の還元は進むが、一方でステンレ
ス組成を構成する活性なCr,Si等の元素も酸化活性
化することとなる。例えば600 ℃を越えると上記Cr,
Si等の酸化が進行しはじめるとともに、粉末自体の焼
結もはじまることから、内部まで還元ガスが浸透し難く
なって還元効率が著しく低下する。このことから上限は
600 ℃が望ましい。
素雰囲気中で、かつ300 〜600 ℃の温度で行うことが望
ましい。これにより一般のステンレス組成の場合、短時
間で急速に酸化鉄を還元できることが、種々の試験によ
り判明したからである。即ち、図2に示すように、還元
温度を200 ℃以下にすると長時間の還元処理でも完全に
還元するのは困難であるが、300 ℃以上にすると200 分
程度で90%以上還元できるからである。また還元温度は
高温にするほど酸化鉄の還元は進むが、一方でステンレ
ス組成を構成する活性なCr,Si等の元素も酸化活性
化することとなる。例えば600 ℃を越えると上記Cr,
Si等の酸化が進行しはじめるとともに、粉末自体の焼
結もはじまることから、内部まで還元ガスが浸透し難く
なって還元効率が著しく低下する。このことから上限は
600 ℃が望ましい。
【0011】また上記還元温度の領域は、射出成形プロ
セスにおける脱脂温度の領域に相当することから、温
度, 雰囲気が条件通りに維持できるのであれば、脱脂と
還元とを同時に実施することも可能である。さらにステ
ンレス鋼粉末表面の酸化鉄皮膜を除去した後は、そのま
ま真空雰囲気に切り換えて焼結工程に入ることも可能で
ある。
セスにおける脱脂温度の領域に相当することから、温
度, 雰囲気が条件通りに維持できるのであれば、脱脂と
還元とを同時に実施することも可能である。さらにステ
ンレス鋼粉末表面の酸化鉄皮膜を除去した後は、そのま
ま真空雰囲気に切り換えて焼結工程に入ることも可能で
ある。
【0012】さらに、上記水素雰囲気の露点は−10℃以
下に維持するのが望ましい。この露点より純度の低い水
素を用いると還元が行われない場合があるからである。
さらに、上記水素の露点を維持するには、還元加熱炉の
容積, 処理粉末量に応じて随時流動させることとなる。
下に維持するのが望ましい。この露点より純度の低い水
素を用いると還元が行われない場合があるからである。
さらに、上記水素の露点を維持するには、還元加熱炉の
容積, 処理粉末量に応じて随時流動させることとなる。
【0013】
【作用】請求項1の発明に係るステンレス鋼粉末の焼結
方法によれば、ステンレス鋼粉末表面の酸化鉄膜を除去
する還元処理を施した後、焼結したので、このステンレ
ス鋼粉末を焼結する際にSiが酸化鉄のOと結合するこ
とはないから、Si酸化物の生成を防止できる。即ち、
図1に示すように、水アトマイズで製造されたステンレ
ス鋼粉末1の外表面には酸化鉄膜2が凝固することとな
る(図1(1) 参照)。これを例えば、300 〜600 ℃の高
純度水素雰囲気中にて還元処理を行うことによって上記
酸化鉄膜2が除去され、酸化膜のないステンレス鋼粉末
1が形成される(図1(2),(3) 参照)。この場合、上記
還元温度は低温であるからCr等の元素の拡散は生じる
ことはない。そしてこのステンレス鋼粉末1を真空焼結
してもSi酸化物が生成することはない。従って、残留
ポア4が極めて少なく、かつ介在物が存在しない焼結部
品が得られる(図1(4),(5) 参照)。その結果、ステン
レス鋼粉末の焼結を容易に進行でき、しかも焼結密度を
向上でき、ひいては上述の溶製鋼材と略同等の疲労特性
が得られる。
方法によれば、ステンレス鋼粉末表面の酸化鉄膜を除去
する還元処理を施した後、焼結したので、このステンレ
ス鋼粉末を焼結する際にSiが酸化鉄のOと結合するこ
とはないから、Si酸化物の生成を防止できる。即ち、
図1に示すように、水アトマイズで製造されたステンレ
ス鋼粉末1の外表面には酸化鉄膜2が凝固することとな
る(図1(1) 参照)。これを例えば、300 〜600 ℃の高
純度水素雰囲気中にて還元処理を行うことによって上記
酸化鉄膜2が除去され、酸化膜のないステンレス鋼粉末
1が形成される(図1(2),(3) 参照)。この場合、上記
還元温度は低温であるからCr等の元素の拡散は生じる
ことはない。そしてこのステンレス鋼粉末1を真空焼結
してもSi酸化物が生成することはない。従って、残留
ポア4が極めて少なく、かつ介在物が存在しない焼結部
品が得られる(図1(4),(5) 参照)。その結果、ステン
レス鋼粉末の焼結を容易に進行でき、しかも焼結密度を
向上でき、ひいては上述の溶製鋼材と略同等の疲労特性
が得られる。
【0014】また、請求項2の発明では、還元処理を30
0 〜600 ℃の高純度水素雰囲気中にて行うようにしたの
で、酸化鉄の除去を短時間で高い還元率で行うことがで
きる。さらに上記還元処理を脱脂処理と同時に行うこと
が可能であり、かつそのまま焼結することもでき、別途
工程を追加する必要もないから、生産性を低下させるこ
とはない。
0 〜600 ℃の高純度水素雰囲気中にて行うようにしたの
で、酸化鉄の除去を短時間で高い還元率で行うことがで
きる。さらに上記還元処理を脱脂処理と同時に行うこと
が可能であり、かつそのまま焼結することもでき、別途
工程を追加する必要もないから、生産性を低下させるこ
とはない。
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。本実施例
では、本発明の焼結方法の効果を確認するために行った
実験について説明する。この実験は、C=0.01,Ni=
10.8,Cr=18.7,Si=0.73,残部Fe(単位wt%)
からなるステンレス304 を溶製し、これを水アトマイズ
法により粒径10μm 程度のステンレス鋼粉末を製造し
た。このステンレス鋼粉末に、樹脂, ワックスからなる
熱可塑性バインタを1:1の比率で、かつ粉末の体積の
45%の量となるよう混入し、両者をラボプラストミルで
十分混練した。次に、この混合物を射出成形して5×5
×30(mm)の大きさからなるグリーン成形体を多数個形成
し、この成形体を2つのグループに分けた。
では、本発明の焼結方法の効果を確認するために行った
実験について説明する。この実験は、C=0.01,Ni=
10.8,Cr=18.7,Si=0.73,残部Fe(単位wt%)
からなるステンレス304 を溶製し、これを水アトマイズ
法により粒径10μm 程度のステンレス鋼粉末を製造し
た。このステンレス鋼粉末に、樹脂, ワックスからなる
熱可塑性バインタを1:1の比率で、かつ粉末の体積の
45%の量となるよう混入し、両者をラボプラストミルで
十分混練した。次に、この混合物を射出成形して5×5
×30(mm)の大きさからなるグリーン成形体を多数個形成
し、この成形体を2つのグループに分けた。
【0016】上記一方のグループの成形体は、上述の従
来と同様の方法でMIM焼結体を作製した。つまり真空
中にて室温から500 ℃まで20時間かけて加熱・保持して
成形体中の脱脂を行った。この後、引き続いて1300℃ま
で昇温して1時間保持し、焼結を完了した。これにより
得られた焼結体を比較試料Aとする。
来と同様の方法でMIM焼結体を作製した。つまり真空
中にて室温から500 ℃まで20時間かけて加熱・保持して
成形体中の脱脂を行った。この後、引き続いて1300℃ま
で昇温して1時間保持し、焼結を完了した。これにより
得られた焼結体を比較試料Aとする。
【0017】上記他方のグループの成形体は、露点−20
℃の水素雰囲気中で室温から500 ℃まで20時間かけて加
熱・保持して脱脂を行うとともに、ステンレス鋼粉末の
還元処理を行った。この後、引き続いて10-3Torrの真空
雰囲気に切り換えて1300℃まで昇温し、この状態で1時
間保持して焼結を完了した。これにより得られた焼結体
を本実施例試料Bとする。
℃の水素雰囲気中で室温から500 ℃まで20時間かけて加
熱・保持して脱脂を行うとともに、ステンレス鋼粉末の
還元処理を行った。この後、引き続いて10-3Torrの真空
雰囲気に切り換えて1300℃まで昇温し、この状態で1時
間保持して焼結を完了した。これにより得られた焼結体
を本実施例試料Bとする。
【0018】そして、上記比較試料A,実施例試料Bの
破断面を走査型電子顕微鏡で観察した。図3(a) は比較
試料Aの顕微鏡写真を示し、図3(b) は本実施例試料B
の顕微鏡写真を示す。同写真からも明らかなように、比
較試料Aの場合は、残留ポアが多く、しかもこのポア内
にSiO2 の介在物が多数存在している。これに対して
還元処理を行った本実施例試料Bの場合は、残留ポアが
少なくなっており、かつこのポア内には介在物が全く存
在しておらず、極めて良好な組織が得られていることが
わかる。
破断面を走査型電子顕微鏡で観察した。図3(a) は比較
試料Aの顕微鏡写真を示し、図3(b) は本実施例試料B
の顕微鏡写真を示す。同写真からも明らかなように、比
較試料Aの場合は、残留ポアが多く、しかもこのポア内
にSiO2 の介在物が多数存在している。これに対して
還元処理を行った本実施例試料Bの場合は、残留ポアが
少なくなっており、かつこのポア内には介在物が全く存
在しておらず、極めて良好な組織が得られていることが
わかる。
【0019】このことからも明らかなように、焼結前
に、ステンレス鋼粉末表面の酸化鉄膜を除去する還元処
理を施すことによって、ステンレス鋼粉末の焼結を容易
に進行でき、しかも焼結密度を向上でき、ひいては疲労
特性を向上でき、かつポアを低減できる分だけ引張強度
の向上も図ることができる。
に、ステンレス鋼粉末表面の酸化鉄膜を除去する還元処
理を施すことによって、ステンレス鋼粉末の焼結を容易
に進行でき、しかも焼結密度を向上でき、ひいては疲労
特性を向上でき、かつポアを低減できる分だけ引張強度
の向上も図ることができる。
【0020】
【発明の効果】以上のように本発明に係るステンレス鋼
粉末の焼結方法によれば、焼結前に、ステンレス鋼粉末
の酸化鉄を除去する還元処理を施したので、Si酸化物
の生成を防止でき、それだけ疲労特性を向上できる効果
がある。
粉末の焼結方法によれば、焼結前に、ステンレス鋼粉末
の酸化鉄を除去する還元処理を施したので、Si酸化物
の生成を防止でき、それだけ疲労特性を向上できる効果
がある。
【図1】本発明のステンレス鋼粉末の焼結方法を説明す
るための模式図である。
るための模式図である。
【図2】本発明の還元処理温度を見出した試験結果を示
す特性図である。
す特性図である。
【図3】本発明の一実施例による焼結方法の効果を確認
するために行った焼結体の金属組織を示す顕微鏡写真で
ある。
するために行った焼結体の金属組織を示す顕微鏡写真で
ある。
【図4】従来の焼結方法を説明するための模式図であ
る。
る。
【図5】従来の焼結方法による疲労試験の結果を示す特
性図である。
性図である。
【図6】一般的な金属粉末の射出成形法による焼結プロ
セスを説明するための工程図である。
セスを説明するための工程図である。
1 ステンレス鋼粉末 2 酸化鉄膜
Claims (2)
- 【請求項1】 アトマイズ法により製造されたステンレ
ス鋼粉末を成形した後、焼結するようにしたステンレス
鋼粉末の焼結方法において、上記焼結前に、上記ステン
レス鋼粉末表面の酸化鉄膜を除去する還元処理を施した
ことを特徴とするステンレス粉末の焼結方法。 - 【請求項2】 請求項1において、上記還元処理を温度
300 〜600 ℃の高純度水素雰囲気中にて行うことを特徴
とするステンレス鋼粉末の焼結方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19313092A JPH0610088A (ja) | 1992-06-25 | 1992-06-25 | ステンレス鋼粉末の焼結方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19313092A JPH0610088A (ja) | 1992-06-25 | 1992-06-25 | ステンレス鋼粉末の焼結方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0610088A true JPH0610088A (ja) | 1994-01-18 |
Family
ID=16302773
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP19313092A Withdrawn JPH0610088A (ja) | 1992-06-25 | 1992-06-25 | ステンレス鋼粉末の焼結方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0610088A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5800026A (en) * | 1994-06-01 | 1998-09-01 | Komatsu Ltd. | Elastic-bodied crawler plate and crawler band |
US6213573B1 (en) | 1998-03-01 | 2001-04-10 | Bridgestone Corporation | Rubber pads |
-
1992
- 1992-06-25 JP JP19313092A patent/JPH0610088A/ja not_active Withdrawn
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US5800026A (en) * | 1994-06-01 | 1998-09-01 | Komatsu Ltd. | Elastic-bodied crawler plate and crawler band |
US6213573B1 (en) | 1998-03-01 | 2001-04-10 | Bridgestone Corporation | Rubber pads |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
TWI542707B (zh) | 用於粉末射出成型之以鐵為主之粉末 | |
TWI714649B (zh) | 用於粉末射出成型之以鐵為主之粉末 | |
WO2008093430A1 (ja) | 高圧縮性鉄粉、およびそれを用いた圧粉磁芯用鉄粉と圧粉磁芯 | |
EP0378702A1 (en) | Sintered alloy steel with excellent corrosion resistance and process for its production | |
JP2010100932A (ja) | 粉末冶金法による焼結体の製造方法 | |
JP2008507623A (ja) | ナノ寸法の金属粉末のフィードストックを調製する方法及び該フィードストックを用いた焼結体を製造する方法。 | |
CN107365925A (zh) | 一种氮掺杂钴铬合金及其制备方法、应用 | |
JP2009544841A (ja) | 鉄基粉末 | |
JP2587872B2 (ja) | Fe―Si合金軟質磁性焼結体の製造方法 | |
JPH0610088A (ja) | ステンレス鋼粉末の焼結方法 | |
US6770114B2 (en) | Densified sintered powder and method | |
KR102271296B1 (ko) | 철동 합금 분말, 이의 제조방법, 및 이를 이용한 소결체 | |
JP3918198B2 (ja) | 部分合金化鋼粉の製造方法 | |
JPH03173702A (ja) | 金属粉末射出成形による鉄系金属焼結体の製造方法 | |
JPH04337001A (ja) | 粉末冶金用低合金鋼粉及びその焼結成形体並びに調質成形体 | |
JPS61127848A (ja) | 焼結アルニコ磁石の製造方法 | |
KR20000042176A (ko) | 오스테나이트계 스테인레스의 분말사출 성형방법 | |
JPH059705A (ja) | 均質で優れた磁気特性をもつ高珪素鋼板の製造方法 | |
JPH06316704A (ja) | 金属焼結体の製造方法 | |
KR101675317B1 (ko) | 철계 확산 접합 분말 및 이의 제조 방법 | |
JPH07331379A (ja) | 高密度ステンレス鋼焼結品の製造方法 | |
JPH06172809A (ja) | 金属射出成形体および金属射出成形体の製造方法 | |
JP2003193108A (ja) | 金属焼結体の製造方法 | |
JPH04298006A (ja) | Fe−Si−Al合金焼結軟質磁性体の製造方法 | |
CN118450954A (zh) | 粉末冶金用铁基混合粉末和铁基烧结体 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 19990831 |