JPH0598421A - エレクトロルミネツセンス発光膜の成膜方法 - Google Patents
エレクトロルミネツセンス発光膜の成膜方法Info
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- JPH0598421A JPH0598421A JP3259504A JP25950491A JPH0598421A JP H0598421 A JPH0598421 A JP H0598421A JP 3259504 A JP3259504 A JP 3259504A JP 25950491 A JP25950491 A JP 25950491A JP H0598421 A JPH0598421 A JP H0598421A
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Landscapes
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Abstract
(57)【要約】
【目的】エレクトロルミネッセンス表示パネル等用に硫
化亜鉛を母材とする発光膜を良好な結晶性で成膜してそ
の発光輝度を向上する。 【構成】母材に発光中心元素をあらかじめ添加した焼結
ペレット等の蒸着源を電子ビーム等の手段で加熱して蒸
発させ、真空蒸着法によって1〜50Å/秒の堆積速度で
発光膜を成膜することにより、発光膜中の母材の結晶粒
径を大きくしかつ蒸発源の突沸現象による異常粒子の混
入を減少させ、発光膜の結晶性を向上してエレクトロル
ミネッセンス発光輝度を高める。
化亜鉛を母材とする発光膜を良好な結晶性で成膜してそ
の発光輝度を向上する。 【構成】母材に発光中心元素をあらかじめ添加した焼結
ペレット等の蒸着源を電子ビーム等の手段で加熱して蒸
発させ、真空蒸着法によって1〜50Å/秒の堆積速度で
発光膜を成膜することにより、発光膜中の母材の結晶粒
径を大きくしかつ蒸発源の突沸現象による異常粒子の混
入を減少させ、発光膜の結晶性を向上してエレクトロル
ミネッセンス発光輝度を高める。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エレクトロルミネッセ
ンス(以下,ELという)表示装置に用いるEL発光性
の発光膜を成膜する方法に関する。
ンス(以下,ELという)表示装置に用いるEL発光性
の発光膜を成膜する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、EL表示装置は Mn,Tb,S
m,Tm等の発光中心元素を微量含むZnS,CaS,SrS 等の母材
からなる発光膜に電界を掛けた時に生じるEL発光を利
用するもので、OA機器等の表示装置に適する自己発光
性でかつフラットパネル構造のEL表示パネルとして広
く利用されるに至っている。かかる用途では軽量で薄形
であることが要求されるので、表示パネルをEL発光性
の発光膜の両面ないしは片面にSiO2,Si3N4,Ta2O5,Al2O3
等のごく薄い絶縁膜を配した薄膜積層構造として発光膜
に高い電界強度を掛けて発光させるが、できるだけ低い
表示電圧で発光膜を高輝度でEL発光させるため、発光
膜の成膜方法や成膜条件について従前から継続してなお
種々な研究が進められている。
m,Tm等の発光中心元素を微量含むZnS,CaS,SrS 等の母材
からなる発光膜に電界を掛けた時に生じるEL発光を利
用するもので、OA機器等の表示装置に適する自己発光
性でかつフラットパネル構造のEL表示パネルとして広
く利用されるに至っている。かかる用途では軽量で薄形
であることが要求されるので、表示パネルをEL発光性
の発光膜の両面ないしは片面にSiO2,Si3N4,Ta2O5,Al2O3
等のごく薄い絶縁膜を配した薄膜積層構造として発光膜
に高い電界強度を掛けて発光させるが、できるだけ低い
表示電圧で発光膜を高輝度でEL発光させるため、発光
膜の成膜方法や成膜条件について従前から継続してなお
種々な研究が進められている。
【0003】発光膜の成膜方法には大別して真空蒸着法
とスパッタ法とがあり、後者の方が絶縁膜と積層する上
で便利なので量産性の点では若干有利であるが、発光輝
度の点で優れる前者の真空蒸着法が一般に採用されてい
るのが現状である。本発明もこの真空蒸着法による発光
膜の成膜に関する。なお、この真空蒸着法にも蒸発源を
抵抗加熱する方法と電子ビーム加熱する方法とがあり、
後者の方が発光膜内の発光中心元素の分布が均一でEL
発光効率が高いことが知られている。さらに、蒸発源に
母材に発光中心元素をあらかじめ含有させたペレットを
用いる方法と、母材と発光中心元素を別個の蒸発源とし
て発光膜をいわゆる共蒸着する方法とが知られている。
これらいずれの方法によるにせよ、一般に発光膜の母材
の結晶性が高い場合に高輝度のEL発光が得られること
が知られている。
とスパッタ法とがあり、後者の方が絶縁膜と積層する上
で便利なので量産性の点では若干有利であるが、発光輝
度の点で優れる前者の真空蒸着法が一般に採用されてい
るのが現状である。本発明もこの真空蒸着法による発光
膜の成膜に関する。なお、この真空蒸着法にも蒸発源を
抵抗加熱する方法と電子ビーム加熱する方法とがあり、
後者の方が発光膜内の発光中心元素の分布が均一でEL
発光効率が高いことが知られている。さらに、蒸発源に
母材に発光中心元素をあらかじめ含有させたペレットを
用いる方法と、母材と発光中心元素を別個の蒸発源とし
て発光膜をいわゆる共蒸着する方法とが知られている。
これらいずれの方法によるにせよ、一般に発光膜の母材
の結晶性が高い場合に高輝度のEL発光が得られること
が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来から発
光膜の成膜条件のごく僅かな狂いによってその結晶性,
従ってEL発光の輝度が大きく変動しやすい問題があ
り、EL表示パネルを量産する際の品質管理を困難に
し、その製造歩留まりが低下する原因になっている。発
光膜の成膜条件には蒸発源の加熱温度,蒸発源材料の純
度, 成膜時のふん囲気圧力, 成膜対象の温度等の種々の
因子があり、従来は主には経験上から成膜条件を選択す
るのがふつうで、発光膜の結晶性にどの因子がどのよう
に影響するかは必ずしも正確に知られていないのが現状
である。
光膜の成膜条件のごく僅かな狂いによってその結晶性,
従ってEL発光の輝度が大きく変動しやすい問題があ
り、EL表示パネルを量産する際の品質管理を困難に
し、その製造歩留まりが低下する原因になっている。発
光膜の成膜条件には蒸発源の加熱温度,蒸発源材料の純
度, 成膜時のふん囲気圧力, 成膜対象の温度等の種々の
因子があり、従来は主には経験上から成膜条件を選択す
るのがふつうで、発光膜の結晶性にどの因子がどのよう
に影響するかは必ずしも正確に知られていないのが現状
である。
【0005】以上のような事情から、本発明は結晶性が
良好でEL発光輝度の高い発光膜を従来より再現性よく
成膜できるとくに量産に適するEL発光膜の成膜方法を
提供することを目的とする。
良好でEL発光輝度の高い発光膜を従来より再現性よく
成膜できるとくに量産に適するEL発光膜の成膜方法を
提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】この目的は本発明方法に
よれば、硫化亜鉛を母材とするEL発光性の発光膜を真
空蒸着法を利用して1〜50Å/秒の範囲内の堆積速度で
成膜することによって達成される。
よれば、硫化亜鉛を母材とするEL発光性の発光膜を真
空蒸着法を利用して1〜50Å/秒の範囲内の堆積速度で
成膜することによって達成される。
【0007】この本発明方法の実施に当たっては、発光
膜用の材料ないし蒸発源には母材に発光中心元素をあら
かじめ添加して焼結したペレットを用いることでよく、
必要に応じ母材と発光中心元素を別の蒸発源とする共蒸
着法を利用することも可能である。蒸着時にこの蒸発源
を蒸発させるには従来どおり電子ビーム加熱法を利用す
るのが蒸発源を局部加熱できる点で有利であり、かつビ
ーム電力ないしビーム電流により発光膜の堆積速度を容
易かつ正確に設定できる点で好適である。成膜の対象物
の温度は 150〜250 ℃に保つのがよく、とくに 170〜20
0 ℃の範囲内にその温度を維持するのが望ましい。蒸着
中のふん囲気圧力は10-5Torr以下にすることでよく、10
-6Torr以下にするのがとくに望ましい。また、発光膜の
堆積速度は20Å/秒以下に設定するのが母材の結晶性を
高める上でとくに望ましく、量産のためにはこれを5Å
/秒以上に設定するのが実用的である。
膜用の材料ないし蒸発源には母材に発光中心元素をあら
かじめ添加して焼結したペレットを用いることでよく、
必要に応じ母材と発光中心元素を別の蒸発源とする共蒸
着法を利用することも可能である。蒸着時にこの蒸発源
を蒸発させるには従来どおり電子ビーム加熱法を利用す
るのが蒸発源を局部加熱できる点で有利であり、かつビ
ーム電力ないしビーム電流により発光膜の堆積速度を容
易かつ正確に設定できる点で好適である。成膜の対象物
の温度は 150〜250 ℃に保つのがよく、とくに 170〜20
0 ℃の範囲内にその温度を維持するのが望ましい。蒸着
中のふん囲気圧力は10-5Torr以下にすることでよく、10
-6Torr以下にするのがとくに望ましい。また、発光膜の
堆積速度は20Å/秒以下に設定するのが母材の結晶性を
高める上でとくに望ましく、量産のためにはこれを5Å
/秒以上に設定するのが実用的である。
【0008】
【作用】本発明は種々の条件で成膜された発光膜の結晶
性をX線回折法により調査した結果から、硫化亜鉛を母
材とするEL発光膜の結晶性にその蒸着時の堆積速度が
とくに大きな影響を与えることを見出したもので、前項
の構成にいうようにこの堆積速度を1〜50Å/秒の範囲
内に設定することにより発光膜の結晶性を高めてそのE
L発光輝度を従来の3倍程度にまで向上することに成功
したものである。なお、発光膜の母材がZnS以外のCaS
やSrS等である場合も、真空蒸着時の堆積速度をそれぞ
れの材料に固有なある限界値以下に設定することによっ
て発光膜の結晶性を高めることができる。
性をX線回折法により調査した結果から、硫化亜鉛を母
材とするEL発光膜の結晶性にその蒸着時の堆積速度が
とくに大きな影響を与えることを見出したもので、前項
の構成にいうようにこの堆積速度を1〜50Å/秒の範囲
内に設定することにより発光膜の結晶性を高めてそのE
L発光輝度を従来の3倍程度にまで向上することに成功
したものである。なお、発光膜の母材がZnS以外のCaS
やSrS等である場合も、真空蒸着時の堆積速度をそれぞ
れの材料に固有なある限界値以下に設定することによっ
て発光膜の結晶性を高めることができる。
【0009】
【実施例】以下、図を参照しながら本発明の実施例を説
明する。図1は本発明方法により成膜中の状態を示す真
空蒸着装置の断面図、図2は本発明方法により成膜され
た発光膜のX線回折結果を示す線図、図3は本発明の実
施対象例としてのEL表示パネルの断面図、図4は本発
明方法により発光膜が成膜されたEL表示パネルの発光
特性を従来と対比して示す線図である。
明する。図1は本発明方法により成膜中の状態を示す真
空蒸着装置の断面図、図2は本発明方法により成膜され
た発光膜のX線回折結果を示す線図、図3は本発明の実
施対象例としてのEL表示パネルの断面図、図4は本発
明方法により発光膜が成膜されたEL表示パネルの発光
特性を従来と対比して示す線図である。
【0010】図1に真空蒸着装置40の構造例と本発明方
法の実施状態を概念的に示す。装置の密閉容器41の内部
は排気管42から10-5Torr以下の高真空に引かれ、図の例
ではその上部に蒸着対象であるパネル10が取り付けられ
る蒸着台43が支柱46を介して支承され、その下側に蒸発
源20用の支持台47が配設され、その下面に図のように電
子ビーム発生器30が蒸発源20の加熱用に取り付けられ
る。発光膜4を真空蒸着すべきパネル10は蒸着台43の下
面に適宜な保持具44を介して取り付けられ、その蒸着時
の温度を所定値に保つためヒータ45が蒸着台43に組み込
まれる。
法の実施状態を概念的に示す。装置の密閉容器41の内部
は排気管42から10-5Torr以下の高真空に引かれ、図の例
ではその上部に蒸着対象であるパネル10が取り付けられ
る蒸着台43が支柱46を介して支承され、その下側に蒸発
源20用の支持台47が配設され、その下面に図のように電
子ビーム発生器30が蒸発源20の加熱用に取り付けられ
る。発光膜4を真空蒸着すべきパネル10は蒸着台43の下
面に適宜な保持具44を介して取り付けられ、その蒸着時
の温度を所定値に保つためヒータ45が蒸着台43に組み込
まれる。
【0011】この実施例では、蒸発源20として発光膜4
の母材であるZnSに発光中心元素としてMnを所定の割合
であらかじめ添加して焼結したペレットを用いる。この
ためには、ZnSとMnSの粉末を所定の割合でよく混合し
た後に高圧下のプレスにより10〜数十mm径ないし角のペ
レットに成形し、Ar等の不活性ふん囲気内の1150℃の高
温下で少なくとも2時間以上焼結して、理論比重の60%
以上の比較的高密度の焼結ペレットの蒸発源20とするの
がよい。
の母材であるZnSに発光中心元素としてMnを所定の割合
であらかじめ添加して焼結したペレットを用いる。この
ためには、ZnSとMnSの粉末を所定の割合でよく混合し
た後に高圧下のプレスにより10〜数十mm径ないし角のペ
レットに成形し、Ar等の不活性ふん囲気内の1150℃の高
温下で少なくとも2時間以上焼結して、理論比重の60%
以上の比較的高密度の焼結ペレットの蒸発源20とするの
がよい。
【0012】電子ビーム発生器30は、電子ビームEBを発
生した上で蒸発台47上の蒸発皿21に装入された蒸発源20
上に通例のように高エネルギ密度の焦点を結ばせるもの
で、通例のようにこれに電磁偏向手段を組み込んで、電
子ビームEBの焦点位置である蒸発源20の局部加熱点を図
の上下, 左右両方向に走査させるのがよい。この加熱に
よる蒸発源20の蒸発量を正確に制御するには電子ビーム
EBに対する加速電圧を一定に保った状態でそのビーム電
流を制御するのが有利である。
生した上で蒸発台47上の蒸発皿21に装入された蒸発源20
上に通例のように高エネルギ密度の焦点を結ばせるもの
で、通例のようにこれに電磁偏向手段を組み込んで、電
子ビームEBの焦点位置である蒸発源20の局部加熱点を図
の上下, 左右両方向に走査させるのがよい。この加熱に
よる蒸発源20の蒸発量を正確に制御するには電子ビーム
EBに対する加速電圧を一定に保った状態でそのビーム電
流を制御するのが有利である。
【0013】図1の真空蒸着装置40内で堆積速度を5〜
200 Å/秒の範囲に変化させて成膜した発光膜4に対す
るX線回折結果を図2に示す。蒸発源20にはZnSに 0.6
wt%のMnを添加した焼結ペレットを用い、電子ビームEB
の加速電圧を8kVに固定してビーム電流により堆積速度
を制御しながら 180℃に保ったパネル10に発光膜4を60
00Åの膜厚に成膜した。成膜中はパネル10の近傍に置か
れた水晶振動式の膜厚モニタで膜厚を測定しながらビー
ム電流を制御した。
200 Å/秒の範囲に変化させて成膜した発光膜4に対す
るX線回折結果を図2に示す。蒸発源20にはZnSに 0.6
wt%のMnを添加した焼結ペレットを用い、電子ビームEB
の加速電圧を8kVに固定してビーム電流により堆積速度
を制御しながら 180℃に保ったパネル10に発光膜4を60
00Åの膜厚に成膜した。成膜中はパネル10の近傍に置か
れた水晶振動式の膜厚モニタで膜厚を測定しながらビー
ム電流を制御した。
【0014】図2は発光膜4の母材である立方晶のZnS
の〈111〉方向へのX線回折結果を示し、同図(a) は
回折光の強度Iを堆積速度が 100Å/秒の時の値を1と
する相対値で, 同図(b) はその半値幅Wを角度でそれぞ
れ示し、いずれも横軸は堆積速度Sである。図2(a)か
らわかるよう回折強度Iは堆積速度Sが50Å/秒以下の
範囲Aで増加し、図2(b) の半値幅Wも同じ範囲Aで減
少しており、これから本発明でいう堆積速度Sが50Å/
秒以下の場合に発光膜4の母材の結晶性が向上している
ことがわかる。
の〈111〉方向へのX線回折結果を示し、同図(a) は
回折光の強度Iを堆積速度が 100Å/秒の時の値を1と
する相対値で, 同図(b) はその半値幅Wを角度でそれぞ
れ示し、いずれも横軸は堆積速度Sである。図2(a)か
らわかるよう回折強度Iは堆積速度Sが50Å/秒以下の
範囲Aで増加し、図2(b) の半値幅Wも同じ範囲Aで減
少しており、これから本発明でいう堆積速度Sが50Å/
秒以下の場合に発光膜4の母材の結晶性が向上している
ことがわかる。
【0015】また、図2の試料についてSEMにより発
光膜4の表面を観察した結果では、堆積速度Sが50Å/
秒以下の上述の範囲Aで結晶粒径の増加が認められ、さ
らにふつうは生じやすい表面の異常突起や結晶組織の不
整が少なく、20Å/秒以下の堆積速度ではほとんど認め
られなかった。なお、膜面の異常突起は母材の正常な結
晶粒子の間に異常粒子が割り込んだ場合に起きる現象
で、この実施例のように蒸着源20にMn添加のZnSを用い
る場合、ZnSが1180℃で昇華するに対してMnSの沸点が
1680℃と高いので突沸と呼ばれる現象により異常粒子が
蒸発して発光膜4に取り込まれてしまうためと考えられ
る。このSEM観察から、本発明方法では発光膜4の組
織への異常粒子の混入が少ないために正常粒子の結晶性
が向上し、結晶粒径が増加し組織の不整も減少すると考
えられる。
光膜4の表面を観察した結果では、堆積速度Sが50Å/
秒以下の上述の範囲Aで結晶粒径の増加が認められ、さ
らにふつうは生じやすい表面の異常突起や結晶組織の不
整が少なく、20Å/秒以下の堆積速度ではほとんど認め
られなかった。なお、膜面の異常突起は母材の正常な結
晶粒子の間に異常粒子が割り込んだ場合に起きる現象
で、この実施例のように蒸着源20にMn添加のZnSを用い
る場合、ZnSが1180℃で昇華するに対してMnSの沸点が
1680℃と高いので突沸と呼ばれる現象により異常粒子が
蒸発して発光膜4に取り込まれてしまうためと考えられ
る。このSEM観察から、本発明方法では発光膜4の組
織への異常粒子の混入が少ないために正常粒子の結晶性
が向上し、結晶粒径が増加し組織の不整も減少すると考
えられる。
【0016】以上説明した本発明方法により成膜した発
光膜4を組み込んだ図3に示すEL表示パネル10を試作
した。図からわかるようにこのEL表示パネル10はふつ
うの構造のものなのでその製作方法を簡単に説明する。
まず、透明なガラスの基板1の表面上にインジウム錫酸
化物の2000Åの膜厚の透明電極膜2を図の前後方向に細
長いストライプ状パターンで並べて配設し、その上にSi
O2と Ta2O5の複合膜である絶縁膜3をスパッタ法により
4000Åの膜厚で被着した。次に、本発明により発光膜4
を10および50Å/秒の堆積速度で成膜したものと, 比較
用に堆積速度が100Å/秒のものとを作り、いずれの場
合も成膜後の発光膜4に対し10-5Torrの真空下で 550
℃, 1hrの熱処理を施した。
光膜4を組み込んだ図3に示すEL表示パネル10を試作
した。図からわかるようにこのEL表示パネル10はふつ
うの構造のものなのでその製作方法を簡単に説明する。
まず、透明なガラスの基板1の表面上にインジウム錫酸
化物の2000Åの膜厚の透明電極膜2を図の前後方向に細
長いストライプ状パターンで並べて配設し、その上にSi
O2と Ta2O5の複合膜である絶縁膜3をスパッタ法により
4000Åの膜厚で被着した。次に、本発明により発光膜4
を10および50Å/秒の堆積速度で成膜したものと, 比較
用に堆積速度が100Å/秒のものとを作り、いずれの場
合も成膜後の発光膜4に対し10-5Torrの真空下で 550
℃, 1hrの熱処理を施した。
【0017】以後は発光膜4を絶縁膜3と同じ絶縁膜5
により覆い、その上に8000Åの膜厚のアルミの裏面電極
膜6を図の左右方向に細長いストライプ状パターンで並
べて配設して図のようなEL表示パネル10とした。この
EL表示パネル10はいわゆるマトリックス形で、周知の
ように透明電極膜2と裏面電極膜6の間に表示電圧を与
え、両者の交点に当たる各画素の発光膜4の部分のEL
発光を表示光DLとして基板1側に取り出すものである。
により覆い、その上に8000Åの膜厚のアルミの裏面電極
膜6を図の左右方向に細長いストライプ状パターンで並
べて配設して図のようなEL表示パネル10とした。この
EL表示パネル10はいわゆるマトリックス形で、周知の
ように透明電極膜2と裏面電極膜6の間に表示電圧を与
え、両者の交点に当たる各画素の発光膜4の部分のEL
発光を表示光DLとして基板1側に取り出すものである。
【0018】このようにして試作されたEL表示パネル
10の発光特性を図4に示す。横軸は表示電圧DVで, 縦軸
は発光輝度Bであり、図示の特性C10,C50,C100は発光膜
4の堆積速度がそれぞれ 10,50,100Å/秒の場合に対応
する。発光輝度Bは従来方法による場合の発光特性C100
の輝度Bの飽和値を 100とした相対値の対数目盛りで示
されている。図からわかるように、発光しきい値は従来
の特性C100の110V程度に対して本発明の場合は特性C50
で103Vに, 特性C10で100Vに改善されている。また発光
輝度Bの飽和値では、従来の特性C100の 100に対して本
発明の特性C50では 200程度に, 特性C10では 300以上
にそれぞれ向上している。
10の発光特性を図4に示す。横軸は表示電圧DVで, 縦軸
は発光輝度Bであり、図示の特性C10,C50,C100は発光膜
4の堆積速度がそれぞれ 10,50,100Å/秒の場合に対応
する。発光輝度Bは従来方法による場合の発光特性C100
の輝度Bの飽和値を 100とした相対値の対数目盛りで示
されている。図からわかるように、発光しきい値は従来
の特性C100の110V程度に対して本発明の場合は特性C50
で103Vに, 特性C10で100Vに改善されている。また発光
輝度Bの飽和値では、従来の特性C100の 100に対して本
発明の特性C50では 200程度に, 特性C10では 300以上
にそれぞれ向上している。
【0019】この図4の発光特性と前の図2のX線回折
結果を総合すると、本発明方法では発光膜4の母材の結
晶性が向上するために発光効率が高まってEL発光量が
増加するものと考えられる。また、結晶粒径が前述のよ
うに増加するので発光膜4の表面の凹凸が従来より若干
大きくなる関係から、発光膜4内で発生したEL光が表
面で全反射されて内部に閉じ込められることが少なくな
り、表示光DLとしての取り出し効率も向上しているもの
と思われる。
結果を総合すると、本発明方法では発光膜4の母材の結
晶性が向上するために発光効率が高まってEL発光量が
増加するものと考えられる。また、結晶粒径が前述のよ
うに増加するので発光膜4の表面の凹凸が従来より若干
大きくなる関係から、発光膜4内で発生したEL光が表
面で全反射されて内部に閉じ込められることが少なくな
り、表示光DLとしての取り出し効率も向上しているもの
と思われる。
【0020】さらに、これらEL表示パネル10を高輝度
発光状態で長期運転した結果では、本発明によるものが
従来より輝度の劣化が少ないことが確認された。この劣
化は主に発光膜の組織中の前述の異常粒子の付近の絶縁
破壊に基づくことが従来から知られており、本発明方法
により成膜された発光膜では異常粒子の発生が少ないこ
との証左と考えられる。
発光状態で長期運転した結果では、本発明によるものが
従来より輝度の劣化が少ないことが確認された。この劣
化は主に発光膜の組織中の前述の異常粒子の付近の絶縁
破壊に基づくことが従来から知られており、本発明方法
により成膜された発光膜では異常粒子の発生が少ないこ
との証左と考えられる。
【0021】以上述べた実施例では蒸発源として母材に
発光中心元素をあらかじめ添加した焼結ペレットを用い
たが、母材と発光中心元素を別蒸発源とする場合にも本
発明はもちろん適用が可能である。また、実施例で上げ
た数値や成膜条件はあくまで例示であり、本発明の実施
に当たって必要に応じて適宜に選択ないし設定すべきも
のである。例えば、実施例で発光膜の成膜時のパネル温
度を 180℃としたが、150〜250 ℃, より望ましくは170
〜200 ℃の範囲で選択が可能である。成膜時の真空蒸着
装置内の真空度は10-5Torr程度以下ならよく、10-6Torr
以下がとくに望ましい。発光膜の膜厚については本発明
方法の場合は5000〜8000Åの範囲内に設定するのがよ
く、EL表示パネルき量産時の発光膜の堆積速度は5Å
/秒以上に設定するのが実用的である。
発光中心元素をあらかじめ添加した焼結ペレットを用い
たが、母材と発光中心元素を別蒸発源とする場合にも本
発明はもちろん適用が可能である。また、実施例で上げ
た数値や成膜条件はあくまで例示であり、本発明の実施
に当たって必要に応じて適宜に選択ないし設定すべきも
のである。例えば、実施例で発光膜の成膜時のパネル温
度を 180℃としたが、150〜250 ℃, より望ましくは170
〜200 ℃の範囲で選択が可能である。成膜時の真空蒸着
装置内の真空度は10-5Torr程度以下ならよく、10-6Torr
以下がとくに望ましい。発光膜の膜厚については本発明
方法の場合は5000〜8000Åの範囲内に設定するのがよ
く、EL表示パネルき量産時の発光膜の堆積速度は5Å
/秒以上に設定するのが実用的である。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように本発明方法では、硫
化亜鉛を母材とするEL発光膜を真空蒸着法により1〜
50Å/秒の範囲内の堆積速度で成膜することにより、次
の効果を上げることができる。
化亜鉛を母材とするEL発光膜を真空蒸着法により1〜
50Å/秒の範囲内の堆積速度で成膜することにより、次
の効果を上げることができる。
【0023】(a) X線回折の結果からわかるように発光
膜の母材の正常粒子の結晶性が向上してEL発光効率が
高まるので、発光膜内部のEL発光量を従来方法で成膜
した場合より増加させることができる。 (b) SEM観察の結果からわかるように発光膜の母材の
結晶粒径が大きくなるので、発光膜内で発生したEL光
が表面で全反射して内部に閉じ込められることが少なく
なり、発生EL光の表示光として発光膜外に取り出す効
率が向上する。発光膜のEL発光量の増加とこの取り出
し効率の向上とにより、本発明方法では表示パネルの実
際の表示輝度を従来の3倍程度以上に向上できる。 (c) 真空蒸着時の蒸発源の突沸現象による異常粒子の混
入が減少して絶縁破壊の原因となる発光膜面の組織不整
が少なくなるので、EL表示パネルの使用中の表示輝度
の劣化や表示欠陥画素の発生が減少しその長期信頼性を
従来より高めることができる。
膜の母材の正常粒子の結晶性が向上してEL発光効率が
高まるので、発光膜内部のEL発光量を従来方法で成膜
した場合より増加させることができる。 (b) SEM観察の結果からわかるように発光膜の母材の
結晶粒径が大きくなるので、発光膜内で発生したEL光
が表面で全反射して内部に閉じ込められることが少なく
なり、発生EL光の表示光として発光膜外に取り出す効
率が向上する。発光膜のEL発光量の増加とこの取り出
し効率の向上とにより、本発明方法では表示パネルの実
際の表示輝度を従来の3倍程度以上に向上できる。 (c) 真空蒸着時の蒸発源の突沸現象による異常粒子の混
入が減少して絶縁破壊の原因となる発光膜面の組織不整
が少なくなるので、EL表示パネルの使用中の表示輝度
の劣化や表示欠陥画素の発生が減少しその長期信頼性を
従来より高めることができる。
【0024】本発明方法は、このようにEL表示パネル
の表示輝度を向上して長期信頼性を高める効果のほか、
その量産に適用して発光膜の成膜条件による表示特性の
変動を減少させ、製造歩留まりを改善して品質管理レベ
ルを向上する効果を発揮することができる。
の表示輝度を向上して長期信頼性を高める効果のほか、
その量産に適用して発光膜の成膜条件による表示特性の
変動を減少させ、製造歩留まりを改善して品質管理レベ
ルを向上する効果を発揮することができる。
【図1】本発明のEL発光膜の成膜方法による成膜状態
を示す真空蒸着装置の断面図である。
を示す真空蒸着装置の断面図である。
【図2】本発明方法により成膜された発光膜に対するX
線回折の結果を従来方法による発光膜とともに示し、同
図(a) は回折X線強度, 同図(b) はその半値幅の発光膜
の堆積速度に対する依存性をそれぞれ示す線図である。
線回折の結果を従来方法による発光膜とともに示し、同
図(a) は回折X線強度, 同図(b) はその半値幅の発光膜
の堆積速度に対する依存性をそれぞれ示す線図である。
【図3】本発明の実施対象例としてのEL表示パネルの
断面図である。
断面図である。
【図4】本発明方法により発光膜が成膜されたEL表示
パネルの発光特性を従来方法と対比して示す線図であ
る。
パネルの発光特性を従来方法と対比して示す線図であ
る。
4 発光膜 10 発光膜の成膜対象例としてのEL表示パネル 20 蒸発源 30 電子ビーム発生器 40 真空蒸着装置 A 本発明方法による発光膜の堆積速度の範囲 B EL表示パネルの発光ないしは表示輝度 DL EL表示パネルの表示光 DV EL表示パネルの表示電圧 EB 電子ビーム I 〈111〉方向のX線回折強度 S 発光膜の堆積速度 W 〈111〉方向の回折X線の半値幅
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 柴田 一喜 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内
Claims (3)
- 【請求項1】硫化亜鉛を母材とするエレクトロルミネッ
センス性の発光膜を真空蒸着法により1〜50Å/秒の範
囲内の堆積速度で成膜するようにしたことを特徴とする
エレクトロルミネッセンス発光膜の成膜方法。 - 【請求項2】請求項1に記載の方法において、蒸発源と
して母材に発光中心元素を添加した焼結材料を用い、こ
れを電子ビームにより局部加熱しながら蒸発させ、電子
ビームの電力によって発光膜の堆積速度を設定するよう
にしたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス発光
膜の成膜方法。 - 【請求項3】請求項1に記載の方法において、発光膜を
5〜20Å/秒の堆積速度で成膜するようにしたことを特
徴とするエレクトロルミネッセンス発光膜の成膜方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3259504A JPH0598421A (ja) | 1991-10-08 | 1991-10-08 | エレクトロルミネツセンス発光膜の成膜方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3259504A JPH0598421A (ja) | 1991-10-08 | 1991-10-08 | エレクトロルミネツセンス発光膜の成膜方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0598421A true JPH0598421A (ja) | 1993-04-20 |
Family
ID=17335023
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3259504A Pending JPH0598421A (ja) | 1991-10-08 | 1991-10-08 | エレクトロルミネツセンス発光膜の成膜方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0598421A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1994015442A1 (en) * | 1992-12-23 | 1994-07-07 | Westinghouse Electric Corporation | High contrast thin film electroluminescent display |
US7067985B2 (en) | 2002-06-21 | 2006-06-27 | Hitachi Displays, Ltd. | Display device |
-
1991
- 1991-10-08 JP JP3259504A patent/JPH0598421A/ja active Pending
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1994015442A1 (en) * | 1992-12-23 | 1994-07-07 | Westinghouse Electric Corporation | High contrast thin film electroluminescent display |
US7067985B2 (en) | 2002-06-21 | 2006-06-27 | Hitachi Displays, Ltd. | Display device |
US7425794B2 (en) | 2002-06-21 | 2008-09-16 | Hitachi Displays, Ltd. | Display device |
US7557494B2 (en) | 2002-06-21 | 2009-07-07 | Hitachi Displays, Ltd. | Display device |
US7928639B2 (en) | 2002-06-21 | 2011-04-19 | Hitachi Displays, Ltd. | Display device |
US8198804B2 (en) | 2002-06-21 | 2012-06-12 | Hitachi Displays, Ltd. | Display device |
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