JPH059831U - 切削工具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 歯切工具、機械部品の切削加工に適用される
切削工具の表面コーティング技術に関するもので、工具
表面へのコーティング膜の密着強度を向上させ、また安
定性に優れた被膜を形成させた切削工具を得ることによ
り工具寿命の向上を図ることを目的としている。 【構成】 洗浄処理を行なった切削工具１の表面にＣｒ
及びＴｉＡｌをアーク放電により蒸発させると同時にＮ
₂ ガス及び炭化水素系ガスと共にイオンプレーティング
装置の真空槽内に導入して工具１の表面にＣｒ及びＡｌ
Ｔｉの窒化物膜及び炭化物膜を中間層として形成させ、
次ぎにさらにＴｉをアーク放電により蒸発させると同時
に、Ｎ₂ ガス及び炭化水素系ガスを真空槽内に導入して
切削工具の最表面にＴｉの窒化物膜、炭化物膜を形成さ
せる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は歯切工具及び機械部品の切削加工に適用される切削工具その他表面に 耐摩耗性を要求される機械部品等の表面処理技術に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、切削工具等の寿命向上を図るために、工具表面にＴｉの窒化物及び炭化 物膜単相を、イオンプレーティング法又は真空蒸着法によりコーティングを行な うことは普通に知られている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

従来の工具表面にＴｉＮ（又はＴｉＣ）イオンプレーティング膜を施した切削 工具は耐摩耗性に優れ、非コーティング切削工具に比し約５〜１０倍の工具寿命 向上が図れている。

【０００４】 しかし、これらの硬質なコーティング膜（ＨＶ２０００〜ＨＶ２７００）と切 削工具（約ＨＶ９００）は硬さが大きく異なり、両者の界面には大きな内部応力 が生じているため、切削工具寿命の不安定要因及び膜の経時剥離の原因となり、 ＴｉＮ膜等が本来もっている性能が十分発揮されない不具合がある。

【０００５】 また、現在一般的に行なわれている、コーティング処理前の真空中でのクリー ニングは、Ａｒ⁺ ，Ｎ⁺ などのガス及びＴｉ⁺ ボンバードでは、切削工具表面の 酸化皮膜を完全に除去できず、その表面にコーティングされたＴｉＮ（ＴｉＣ） 膜は十分な密着性能を得ておらず、切削工具寿命の不安定要因となっている。

【０００６】 現状では、これらの不具合点を補うため、イオンプレーティング時の処理温度 をできるだけ高くして処理を行なうか、コーティング処理時にイオンを加速する ためのバイアス電位を印加する等の方法により処理されているが、未だ改善の余 地がある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本考案の切削工具は前記不具合点を解決するため、切削工具表面にＣｒ及びＡ ｌＴｉの窒化物及び炭化物のいずれかをイオンプレーティングして中間層を形成 し、この中間層上にＴｉの窒化物及び炭化物をイオンプレーティングして多層コ ーティング層を形成したことを特徴としている。

【０００８】

【作用】

本考案切削工具の中間層を形成するＣｒ及びＡｌＴｉは、化学的に活性である と同時に、それらのイオン質量によるスパッタリング作用との相乗効果によりコ ーティング母材表面の酸化膜等を還元及び除去させ、整合性に優れた、密着性の 高い中間層を形成することができる。

【０００９】 また、これらの中間層は、該中間層上にコーティングされる最表面コーティン グ膜ＴｉＮ，ＴｉＣ等の高硬度膜との整合性にも優れ強固な膜が形成できる。

【００１０】 また中間層としてコーティングを行なったＣｒＮ（ＨＶ１５００〜ＨＶ１８０ ０），ＣｒＣ（ＨＶ１６００〜ＨＶ２０００），ＡｌＴｉ（ＨＶ１７００〜ＨＶ ２０００）等の膜は、最表面コーティング膜を形成するＴｉＮ，ＴｉＣ等より硬 さが低く、コーティング母材である工具−中間層膜−最表面コーティング膜と硬 さが段階的に増加し、直接コーティング母材に最表面コーティング膜（ＴｉＮ， ＴｉＣ）を形成した時よりも膜が有する内部応力が分散され信頼性に優れた膜形 成が可能となる。

【００１１】

【実施例】

以下本考案切削工具の１実施例について図１を参照して説明すると、高速度鋼 で製作したソリッドホブ（材質ＳＫＨ５５）を、アルカリ洗浄→有機溶剤洗浄を 行ない、これを、イオンプレーティング装置の真空槽内で３５０〜４５０℃まで 加熱する。

【００１２】 その後、該ソリッドホブと真空槽間に５００〜１０００Ｖのバイアス電位を印 加しアーク放電によりＴｉターゲットを蒸発させ、Ｔｉボンバードによりソリッ ドホブの表面をクリーニング処理する。

【００１３】 クリーニング処理を行なった後、切削工具表面の中間層膜形成ターゲットのＣ ｒ及びＴｉＡｌをアーク放電により蒸発させると同時にＮ₂ ガス及び炭化水素系 ガス（Ｃ₂ Ｈ₂ 等）を槽内に導入し工具表面に、Ｃｒ及びＡｌＴｉの窒化物膜， 炭化物膜を形成させる。

【００１４】 中間層膜形成後さらにＴｉターゲットをアーク放電により蒸発させると同時に Ｎ₂ ガス及び炭化水素系ガスを槽内に導入し、Ｔｉの窒化物膜，炭化物膜を切削 工具最表面に形成させる。

【００１５】 これらの中間層膜及び最表面層膜の構成は表１の通りである。

【表１】

【００１６】 この様にしてソリッドホブにコーティングした切削工具１を性能評価のため、 表２の切削条件下でホブ盤にて被削材ＳＣＭ４１５材を定められた切削長の切削 加工を行なった後、図１に示すソリッドホブ１の歯形二番部最大摩耗量α（以下 最大二番摩耗量という）で膜密着性を評価した結果は表１の通りである。なお２ は摩耗域を示す。

【表２】

【００１７】 以上の結果より本考案のように切削工具表面に中間層膜を介して最表面層膜を 形成することにより中間層膜を介しない場合に比べて、耐摩耗性が向上すること がわかる。

【００１８】

【考案の効果】

本考案の切削工具によれば、切削工具表面へのコーティング膜の密着強度が著 しく向上すると共に、安定性に優れた被膜形成がなされるので切削工具の寿命を 著しく向上させることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の１実施例工具の摩耗域を示す拡大斜視
図である。

【符号の説明】

１ 切削工具 ２ 摩耗域 α 最大摩耗量

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項１】 切削工具表面にＣｒ及びＡｌＴｉの窒化
   物及び炭化物のいずれかをイオンプレーティングして中
   間層を形成し、該中間層上にＴｉの窒化物及び炭化物を
   イオンプレーティングして多層コーティング層を形成し
   たことを特徴とする切削工具。