JPH059672A - 切断性に優れた偏平チユーブ用Ａｌ合金ブレージングシート条の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ラジエーター等の偏平チューブ材として用い
られるアルミニウム合金ブレージングシートの切断性を
向上させ、切断時のばりの発生を低減させることが可能
なブレージングシートの製造方法。 【構成】 Ｓｉ、Ｆｅ、Ｃｕ、Ｍｎを含むＡｌ合金およ
びこれにＭｇ、Ｃｒ、Ｚｒ、Ｔｉの１種または２種以上
を含むＡｌ合金を芯材とし、Ａｌ−Ｓｉ合金ろう材を片
面に有し、犠牲効果を有するＡｌ合金を片面に有するＡ
ｌ合金鋳塊を、熱間圧延後に３０％以上の圧延率で冷間
圧延を行い、２２０〜３２０℃の温度で０．５〜１２hr
の焼鈍を施し、続いて５〜３０％の圧延率で冷間圧延を
行い、さらに３２０〜４００℃の温度で０．５〜１２hr
の焼鈍を施し、次いで冷間圧延を行う切断性に優れたチ
ューブ用アルミニウム合金ブレージングシートの製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、熱交換器の偏平チュー
ブ用Ａｌ合金ブレージングシート条に関するものであ
り、更に詳しくは、このシート条を用いて電縫加工等に
より偏平チューブとした後の偏平チューブの切断性に優
れるブレージングシートを提供するものである。

【０００２】

【従来の技術およびその課題】ラジエーター等の熱交換
器は、例えば図１及び図２に示すように複数本の偏平チ
ューブ(1) の間にコルゲート状に加工した薄肉フィン
(2) を一体に形成し、該偏平チューブ(1) の両端はヘッ
ダー(3) とタンク(4) とで構成される空間にそれぞれ開
口しており、一方のタンク(4) 側の空間から偏平チュー
ブ(1) 内を通して高温冷媒を他方のタンク(4) 側の空間
に送り、偏平チューブ(1) 及び薄肉フィン(2) の部分で
熱交換して低温になった冷媒を再び循環させるものであ
る。このような熱交換器のチューブ材およびヘッダー材
は例えばＪＩＳ３００３合金（Ａｌ−１．２％Ｍｎ−
０．１５％Ｃｕ合金、％は重量％を示す。以下同じ）等
を芯材とし、該芯材の内側、即ち水等の冷媒に常時触れ
ている側には内張材として犠牲陽極効果を有するＪＩＳ
７０７２合金（Ａｌ−１．０％Ｚｎ合金）を、そして、
該芯材の外側には、フィンと接合するための通常のＡｌ
−Ｓｉ系合金ろう材をクラッドしたブレージングシート
を使用する。そしてこのような熱交換器は、前記ブレー
ジングシートからろう材が外側となるように偏平チュー
ブを作製して所定の長さに切断したチューブと前記ブレ
ージングシートからなるヘッダー及びコルゲート加工を
行った例えばＡｌ−Ｍｎ系合金フィン、その他の部材と
ともに熱交換器コアに組立て、ブレージングシートによ
り一体に接合して製造される。上記偏平チューブは、通
常合わせ圧延により作られたブレージングシート条を電
縫加工により管状とし、これを更に偏平加工して偏平チ
ューブ材とし、これを所定の長さ例えば５００mmに切断
して製造する。この切断は近年偏平チューブ材の製造と
同時に、図３、図４に示す工具で連続して行われる。即
ち図３、図４のごとく、走行中の偏平チューブ材(5)を
切断孔(6a)を有する切断工具(6) の偏平孔(6b)に通し、
切断孔(6a)に切断刃(7) を瞬間的に通すことによりチュ
ーブ材を切断するものである。上記の切断において、従
来のブレージングシート条材では、切断の刃が新しいう
ちはきれいに切れるが、例えば１０００回程度で切断面
にばりを発生するという問題があった。ばりは偏平チュ
ーブの内側および外側に発生するが、内側に発生したば
りは熱交換器の冷媒の循環を妨げ熱効率を低下させる。
外側に発生したばりは熱交換器の組立てを行う際の妨げ
になる。又生産性の点から、１回の切断刃の調整でばり
を発生することなく多数回（例えば５０００回）切断で
きることが望まれていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、前述
の偏平チューブの切断において、多数回例えば５０００
回の切断においても、切断が可能でチューブの切断内外
面にばりを発生しない、切断性に優れた偏平チューブ用
Ａｌ合金ブレージングシート条の製造方法を提供するこ
とである。又他の課題は、熱交換器の偏平チューブ材と
して使用する場合に必要な、ろう付け性に優れ、耐食性
に優れる等の特性も合わせ具備するブレージングシート
条の製造方法を提供することである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、Ｓｉ：０．０
５〜０．８wt％、Ｆｅ：０．０５〜０．６wt％、Ｃｕ：
０．１〜１．０wt％、Ｍｎ：０．６〜１．６wt％を含有
し、更に０．５wt％以下のＭｇ、０．３wt％以下のＣ
ｒ、０．３wt％以下のＺｒ、０．３wt％以下のＴｉを１
種または２種以上含有し、残部実質的にＡｌからなるＡ
ｌ合金を芯材とし、その片面にＡｌ−Ｓｉ系合金ろう材
をクラッドし、他面に犠牲効果を有するＡｌ合金材をク
ラッドしたＡｌ合金鋳塊を均質化処理、熱間圧延、冷間
圧延、焼鈍の工程にて製造するにあたり、熱間圧延後に
３０％以上の圧延率で冷間圧延を行い、２２０〜３２０
℃で０．５〜１２hrの保持を行う焼鈍を施し、続いて５
〜３０％の圧延率で冷間圧延を行い、３２０〜４００℃
で０．５〜１２hrの保持を行う焼鈍を施し、所定の強度
を得るための冷間圧延を行うことを特徴とする切断性に
優れた偏平チューブ用Ａｌ合金ブレージングシート条の
製造方法である。

【０００５】

【作用】次に本発明に係わるブレージングシート条の構
成について説明する。ブレージングシートの芯材の合金
はＳｉ：０．０５〜０．８wt％、Ｆｅ：０．０５〜０．
６wt％、Ｃｕ：０．１〜１．０wt％、Ｍｎ：０．６〜
１．６wt％を含有し、更に０．５wt％以下のＭｇ、０．
３wt％以下のＣｒ、０．３wt％以下のＺｒ、０．３wt％
以下のＴｉを１種または２種以上含有し、残部が実質的
にＡｌからなるＡｌ合金である。各添加元素の役割を以
下に述べる。Ｓｉは、強度向上に寄与する。これは、Ｍ
ｎの析出を促進し、分散硬化の作用を増すためである。
その量が０．０５wt％（以下単に％という）未満の場合
上記効果が十分でなく、０．８％を越えるとブレージン
グ加熱時にろうの拡散が大きくなりろう付け性が低下
し、さらにチューブの耐食性も低下する。したがって、
Ｓｉは０．０５％以上０．８％以下とするが、特に０．
３〜０．７％で安定した特性を示す。

【０００６】ＦｅはＭｎとともに金属間化合物を形成
し、強度向上に寄与する。その量が０．０５％未満では
効果が十分でなく、０．６％を越えると鋳造時に粗大な
晶出物を多く生じ、ブレージング加熱時の芯材の再結晶
粒径が小さくなり、ろう付け性が低下する。Ｃｕは固溶
状態にて合金中に存在し、強度を向上させる、さらに芯
材の電位を貴にし耐食性を向上させる働きを有する。そ
の働きは０．１％未満のＣｕでは十分でなく、１．０％
を越えて添加した場合、合金の融点が低下しろう付け加
熱時に溶融してしまう。Ｍｎは、金属間化合物を合金中
に分散させ、強度を向上させる。その量が０．６％未満
では効果が十分でなく、１．６％を越えて添加した場合
成形性が低下し、組付けや電縫加工等の加工時にブレー
ジングシートが割れてしまう。本発明ではさらに０．５
％以下のＭｇ、０．３％以下のＣｒ、０．３％以下のＺ
ｒ、０．３％以下のＴｉを１種または２種以上添加す
る。Ｍｇは合金中に固溶状態およびＭｇ₂ Ｓｉの微細な
析出相として存在し、強度を向上させる。その量が０．
５％を越えて添加すると非腐食性のフラックスを用いた
ろう付けをする場合にフラックスとＭｇが反応しろう付
けができなくなる。Ｃｒ、Ｚｒ、Ｔｉはいずれも微細な
金属間化合物を形成し合金の強度を向上させる働きを有
する。しかし、それぞれ０．３％を越えて添加した場合
成形性が低下し、組付け等の加工時にブレージングシー
トが割れてしまう。以上が本合金の成分であるが、鋳塊
組織の微細化のために添加されるＢや強度向上を目的と
して添加されるＮｉ等、上記以外の元素はそれぞれ０．
０５％以下であれば添加してもさしつかえない。

【０００７】本発明の外張材には通常ろう材として用い
られているＡｌ−Ｓｉ−Ｍｇ系、Ａｌ−Ｓｉ系のＪＩＳ
４００４やＪＩＳ４３４３等のろう材を用いればよい。
その外張材（ろう材）は通常３０μｍ程度である。内張
材は代表として、Ａｌ−Ｚｎ合金であるＪＩＳ７０７２
合金が上げられるがこれに限定するものでない。ただ
し、内張材の電位は芯材に対して電気化学的に卑である
必要がある。これは熱交換器の使用環境化において当該
内張材に孔食が発生した場合、それが芯材に波及するの
を防止する効果を有するためである。内張材は３０μｍ
程度である。本発明では以上の内張材にＭｇを１．５％
以下添加する場合がある。これは芯材に含有されている
Ｍｇが内張材に拡散し合金の強度が低下するのを防止す
るためである。

【０００８】更に本発明では、熱間圧延後に３０％以上
の圧延率で冷間圧延を行い、２２０〜３２０℃で０．５
〜１２hrの保持を行う焼鈍を施し、続いて５〜３０％の
圧延率で冷間圧延を行い、３２０〜４００℃で０．５〜
１２hrの保持を行う焼鈍を施し、所定の強度を得るため
の冷間圧延を行うことを規定している。このことは特に
切断性、ばりの発生機構について本発明者らが鋭意検討
を行った結果明らかにしたものである。即ち、切断時の
ばりの出方は延性と関係しており、例えば２つの材料に
おいて同じ強度ならば、延性が大きい方がばりが発生し
やすくなる。延性を抑えるには、上記の方法を行うと良
い。すなわち、転位存在下で上記の温度範囲で焼鈍を行
うと、固溶強化に寄与していた元素が析出し、固溶強化
分の強度が除かれるため、最終焼鈍後（最終冷間圧延
前）の強度は１度しか焼鈍しないものより２度行ったも
のの方が小さい。よって、２度焼鈍を行ったもので、所
定の強度を得るための最終冷間圧延で、１度しか焼鈍し
ない場合より、圧延率を大きくする必要があり、結果と
して最終板には多くの転位が存在し、延性が小さくな
る。また、２度目の焼鈍後の再結晶粒径が大きいほど応
力集中源の１つである粒界が少なく応力集中が大きくな
るため、延性が小さくなる。本発明ではこのことを利用
し切断性を向上させている。

【０００９】各製造工程の役割を以下に述べる。まず熱
間圧延後に３０％以上の圧延率で冷間圧延を行うのは、
１度目の焼鈍時に多くの転位を存在させるためである。
圧延率が３０％未満では焼鈍時に十分な析出が生じず、
延性が小さくならない。２２０〜３２０℃で０．５〜１
２hrの保持を行う焼鈍を施すのは、転位を残存させつつ
析出処理を行うことにより、保持中も析出させるためで
ある。すなわち、１度目の焼鈍時に完全再結晶組織とし
ないことが切断性を向上させる必要条件であり、保持温
度または保持時間が２２０℃または０．５hr未満では十
分な析出状態とならず、３２０℃または１２hrを越える
と完全再結晶組織となり十分な析出状態とならない。こ
こで生成した析出物は２度目の焼鈍時の析出核となり、
２度目の焼鈍時に析出を促進させる。続いて５〜３０％
の圧延率で冷間圧延を行うのは、再結晶に最低必要量の
圧下をかけることにより２度目の焼鈍時に生じる再結晶
粒を粗大にし、延性を小さくするためである。すなわ
ち、２度目の焼鈍時に完全再結晶組織とし、その再結晶
粒が粗大であることが切断性を向上させる必要条件であ
り、圧延率が５％未満では再結晶が完了せず３０％を越
えると再結晶粒が微細となるとともに焼鈍時に再結晶が
すみやかに完了するため析出が十分に生じる時間がな
く、ともに延性が小さくならない。３２０〜４００℃で
０．５〜１２hrの保持を行う焼鈍を施すのは、保持温度
または保持時間が３２０℃または０．５hr未満では完全
再結晶しないためである。また、４００℃または１２hr
を越えると内張材中のＺｎの拡散が大きく耐食性が劣
る。

【００１０】さて、本発明の製造方法は以上の条件を満
たせばよく、鋳塊は通常のＤＣ鋳造法で作製する鋳塊を
用いればよく、その後の均質化処理は常法により５００
℃〜６００℃にて１ｈ〜２０ｈ程度行ってもよいし、行
わずに鋳塊を熱間圧延するための加熱処理のみとしても
よい。熱間圧延は常法により行えばよく、熱間圧延板の
厚さは特に定めないが通常２〜１０mm程度である。２度
目の焼鈍（最終焼鈍）後には最終冷間圧延を行うが、こ
こで所定の強度を得るように圧延率を適度に調整すれば
よく特に定めないが、通常１０〜７０％程度である。

【００１１】

【実施例】以下に本発明の実施例を比較例、従来例とと
もに具体的に説明する。表１の組成のＡｌ合金芯材を用
い、この一面にＡｌ−７．４８％Ｓｉ合金材をクラッド
し、他面にＡｌ−１．０８％Ｚｎ合金材をクラッドし、
常法に従って均質化処理、熱間圧延し、続いて冷間圧
延、第１焼鈍、更に冷間圧延、第２焼鈍、最終冷間圧延
を行って、厚さ０．３２mmの偏平チューブ用ブレージン
グシート（厚さ；芯材０．２７mm、クラッド材各々０．
０２５mm）を作製した。その詳細な製造条件を表２に示
す。引張強さは、最終冷間圧延率を調整することによ
り、１７kgf ／cm² とした。これらのシートは幅４８mm
にスリッター加工してブレージングシート条コイルとし
た。偏平チューブの切断試験は、幅４８mmのブレージン
グシート条を電縫加工及び成形加工して偏平チューブ材
を作製し、図３、図４に示す切断工具で、長さ５００mm
に連続的に切断を行った。５０００本切断後の破面を観
察し、ばりの発生状況、切断の可否を調べ、この結果を
表３に示した。

【００１２】

【表１】

【００１３】

【表２】

【００１４】

【表３】

【００１５】表３から明らかなように、本発明に係わる
ブレージングシート条は、偏平チューブにした後の切断
時に、切断面にばりが発生することなく５０００回の如
く多数回の切断が可能である。本発明の条件からはずれ
たブレージングシート条は、５０００回切断出来ないか
又は切断出来ても切断面にばりを発生している。

【００１６】

【発明の効果】以上説明したように本発明に係わるブレ
ージングシート条は偏平チューブに要求されるろう付け
性、耐食性等の特性を具備し、偏平チューブ加工後のチ
ューブ切断性に優れているため、熱交換器の生産の向上
及び使用上の性能の点で大きく寄与し、工業上顕著な効
果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】ラジエーターの概略を示す斜視図である。

【図２】図１のラジエーターの一部断面を示す斜視図で
ある。

【図３】偏平チューブの切断方法を示す斜視図である。

【図４】図３の矢印Ａ−Ａに沿う断面の斜視図である。

【符号の説明】

１ 偏平チューブ ２ フィン ３ ヘッダー ４ タンク ５ 偏平チューブ材 ６ 切断工具 ７ 切断刃

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 【請求項１】 Ｓｉ：０．０５〜０．８wt％、Ｆｅ：
   ０．０５〜０．６wt％、Ｃｕ：０．１〜１．０wt％、Ｍ
   ｎ：０．６〜１．６wt％を含有し、更に０．５wt％以下
   のＭｇ、０．３wt％以下のＣｒ、０．３wt％以下のＺ
   ｒ、０．３wt％以下のＴｉを１種または２種以上含有
   し、残部実質的にＡｌからなるＡｌ合金を芯材とし、そ
   の片面にＡｌ−Ｓｉ系合金ろう材をクラッドし、他面に
   犠牲効果を有するＡｌ合金材をクラッドしたＡｌ合金鋳
   塊を均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍の工程にて
   製造するにあたり、熱間圧延後に３０％以上の圧延率で
   冷間圧延を行い、２２０〜３２０℃で０．５〜１２hrの
   保持を行う焼鈍を施し、続いて５〜３０％の圧延率で冷
   間圧延を行い、３２０〜４００℃で０．５〜１２hrの保
   持を行う焼鈍を施し、所定の強度を得るための冷間圧延
   を行うことを特徴とする切断性に優れた偏平チューブ用
   Ａｌ合金ブレージングシート条の製造方法。