JPH059510A

JPH059510A - 内燃機関用摺動部材

Info

Publication number: JPH059510A
Application number: JP758491A
Authority: JP
Inventors: Osamu Kawamura; 治川村; Teruo Takahashi; 輝夫高橋; Hiroaki Nishimoto; 宏明西本
Original assignee: Nippon Piston Ring Co Ltd
Current assignee: Nippon Piston Ring Co Ltd
Priority date: 1991-01-25
Filing date: 1991-01-25
Publication date: 1993-01-19

Abstract

(57)【要約】【目的】母材とチップ層との接合が強固で接合品質が
優れているとともに、低温焼結によって工業的に有利な
条件で容易かつ安価に製造することのできる内燃機関用
摺動部材を提供する。【構成】カーバイト５０〜８０重量％と、液相温度低
下金属４〜８重量％と、基地ニッケル（Ｎｉ）とを含む
焼結体からなるチップ層が母材に接合されているととも
に、該液相温度低下金属がボロン（Ｂ）、ケイ素（Ｓ
ｉ）、炭素（Ｃ）、クロム（Ｃｒ）、モリブデン（Ｍ
ｏ）およびコバルト（Ｃｏ）を含む内燃機関用摺動部材
である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、たとえば高出力、高耐
久エンジンのタペット、ロッカーアーム等の高面圧用動
弁部品に好適に用いられる内燃機関用摺動部材に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】現在、量産されている超硬系高負荷用フ
ラットタペットあるいはロッカーアーム等の内燃機関用
動弁部品は、一般にタングステンカーバイト（ＷＣ）５
０〜８０重量％およびニッケル（Ｎｉ）粉の混合粉の圧
粉体を焼結して得られるチップ層が、Ｎｉによる焼結結
合と同時に基地Ｎｉによるろう付効果によってスチール
母材とろう付接合されて製造されている。

【０００３】ところで、上記タングステンカーバイト
（ＷＣ）においては、通常、その‘ぬれ性’からコバル
ト（Ｃｏ）がバインダー金属として用いられているが、
コバルト（Ｃｏ）は高価であるため、より安価でかつカ
ムフォロワー用チップ材のバインダーとして充分な特性
を有するニッケル（Ｎｉ）が用いられている。このニッ
ケル（Ｎｉ）のろう付効果に関しては、焼結過程中、余
剰Ｎｉ分が母材側に移動して母材との接合機能を果たす
のであるが、該接合機能は一般にバラツキが大きいこと
が知られている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
たような従来のタペットあるいはロッカーアームにおい
ては、カーバイト量が多く、Ｎｉ基地面積率が小さいた
め、スチール母材とチップ層との接合強度が不充分で、
スチール母材とチップ層との剥離が生じ易いという問題
がある。

【０００５】一方、スチール母材とチップ層との接合を
充分なものとするためにＮｉ基地面積率を大きくする
と、カーバイト比率が小さくなり、相手カム材に対する
耐摩耗性が低下してしまうという問題がある。さらに、
液相発生温度が高いため（１，３００℃以上）、製造コ
ストの点で不利であるとともに安定した品質が得られな
いという問題もある。

【０００６】本発明はかかる事情に基づいてなされたも
のであり、本発明の目的は、母材とチップ層との接合が
強固で接合品質が優れているとともに、低温焼結によっ
て工業的に有利な条件で容易かつ安価に製造し得る内燃
機関用摺動部材を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明の要旨は、カーバイト５０〜８０重量％と、
液相温度低下金属４〜８重量％と、基地ニッケル（Ｎ
ｉ）とを含む焼結体からなるチップ層が母材に接合さ
れ、且つ、該液相温度低下金属がボロン（Ｂ）、ケイ素
（Ｓｉ）、炭素（Ｃ）、クロム（Ｃｒ）、モリブデン
（Ｍｏ）およびコバルト（Ｃｏ）を含むことを特徴とす
る内燃機関用摺動部材であり、前記液相温度低下金属の
組成が、ボロン（Ｂ）３．０〜５．０重量％、ケイ素
（Ｓｉ）３．０〜６．０重量％、炭素（Ｃ）０．８〜
１．５重量％、クロム（Ｃｒ）１８．０〜２２．０重量
％、モリブデン（Ｍｏ）５．０〜７．０重量％、コバル
ト（Ｃｏ）３５．０〜４５．０重量％、残部ニッケル
（Ｎｉ）である請求項１記載の内燃機関用摺動部材であ
る。

【０００８】図１に本発明の内燃機関用摺動部材の一例
の断面を模式的に示す。図１に示すように、本発明の内
燃機関用摺動部材は、チップ層１と、母材２、例えばス
チール系母材とが接合されてなるものである。そして、
チップ層１は、カーバイトを通常５０〜８０重量％、好
ましくは６５〜８０重量％の割合で含んでいる。この割
合が５０重量％未満であると、チップ層１の硬度が低下
して耐スカッフ性が劣化する。一方、チップ層１に含ま
れるカーバイトの割合が８０重量％を超えると、基地部
分が少なくなってチップ層１と母材２との強度が低下す
る。

【０００９】上記の割合でチップ層１に含まれるカーバ
イトは、ＷＣ（タングステンカーバイト）、ＣｒＣ（ク
ロムカーバイト）、ＶＣ（バナジウムカーバイト）、Ｎ
ｂＣ（ニオブカーバイト）、ＴｉＣ（チタンカーバイ
ト）等の各種カーバイトの１種または２種以上からなる
ことが好ましく、これらの中でもＷＣ（タングステンカ
ーバイト）、ＣｒＣ（クロムカーバイト）が特に好まし
い。

【００１０】チップ層１は、上記のカーバイトととも
に、液相温度低下金属を通常４〜８重量％、好ましくは
５〜７重量％の割合で含有している。チップ層１におけ
る液相温度低下金属の含有割合が４重量％未満である
と、液相発生が充分ではなくチップ層１と母材２との接
合が不充分になりやすい。一方、８重量％を超えると、
液相化が進行し過ぎてチップ層１が溶ける危険性があ
る。

【００１１】この液相温度低下金属は、少なくともボロ
ン（Ｂ）、ケイ素（Ｓｉ）、炭素（Ｃ）、クロム（Ｃ
ｒ）、モリブデン（Ｍｏ）、コバルト（Ｃｏ）およびニ
ッケル（Ｎｉ）を含んでいればよい。これら各成分金属
の割合は、ボロン（Ｂ）が通常３．０〜５．０重量％、
好ましくは３．５〜４．５重量％、ケイ素（Ｓｉ）が通
常３．０〜６．０重量％、好ましくは４．０〜５．０重
量％、炭素（Ｃ）が通常０．８〜１．５重量％、好まし
くは１．０〜１．３重量％、クロム（Ｃｒ）が通常１
８．０〜２２．０重量％、好ましくは１９．０〜２１．
０重量％、モリブデン（Ｍｏ）が通常５．０〜７．０重
量％、好ましくは５．５〜６．５重量％、コバルト（Ｃ
ｏ）が通常３５．０〜４５．０重量％、好ましくは３
８．０〜４２．０重量％、残部ニッケル（Ｎｉ）であ
る。

【００１２】液相温度低下金属の添加は、たとえばカー
バイトとニッケル粉末との配合時に行なえばよい。母材
２としては、たとえばスチール系の材料からなるものが
好適に用いられる。本発明の内燃機関用摺動部材は、た
とえば、上記のチップ層構成成分のブレンド粉を調製し
た後、該ブレンド粉を所望の形状にプレス成形して成形
体とし、該成形体を母材２上に載置した状態で焼結する
ことにより製造することができる。このときの焼結温度
は、通常、１，１００〜１，２００℃程度である。

【００１３】

【作用】上述したように、本発明の内燃機関用摺動部材
においては、カーバイト５０〜８０重量％および基地Ｎ
ｉ粉に加えて、特定の液相温度低下金属（Ｂ，Ｓｉ，
Ｃ，Ｃｒ，ＭｏおよびＣｏ）４〜８重量％の割合で添加
することにより、Ｎｉベース単独の場合に比較して積極
的に液相を誘発させているため、母材との拡散効果によ
ってチップ層と母材との充分な接合が達成される。

【００１４】また、このような特定の液相温度低下金属
の添加により、タングステンカーバイト（ＷＣ）等のカ
ーバイト量を５０〜８０重量％の比較的大きな割合で用
いても適度な液相状態が得られるので、チップ層と母材
との拡散効果による充分な接合が達成され、チップ層と
母材との剥離を抑制しつつ耐摩耗性が確保される。した
がって、本発明の内燃機関用摺動部材は、たとえばタペ
ット等の焼結動弁部品に好適に用いられる。

【００１５】

【実施例】次に、本発明の実施例を示し、本発明の内燃
機関用摺動部材についてさらに具体的に説明する。タン
グステンカーバイト（ＷＣ）粉、クロムカーバイト粉
（ＣｒＣ）粉、ニッケル（Ｎｉ）粉および液相温度低下
金属粉を用い、以下の表１に示す４種類（Ａ，Ｂ，Ｃ，
Ｄ）の配合を行なった。なお、液相温度低下金属粉の組
成は、ボロン（Ｂ）：４重量％、ケイ素（Ｓｉ）：５重
量％、コバルト（Ｃｏ）：４０重量％、クロム（Ｃ
ｒ）：２０重量％、炭素（Ｃ）：１．２重量％、モリブ
デン（Ｍｏ）：６重量％、残部ニッケル（Ｎｉ）とし
た。

【００１６】

【表１】

【００１７】上記の配合Ａ〜Ｄのそれぞれに１．０重量
％の潤滑剤（ステアリン酸亜鉛）を添加し、造粒を行な
ってブレンド粉を得た。次に、このブレンド粉を円板状
にプレスして圧粉体にした後、この円板状圧粉体をスチ
ール母材上に載置し、真空焼結炉を用いて１，１００〜
１，２００℃の温度で４５分間焼結を行ない、図１に示
すようなチップ層１と母材２とからなるタペットの製造
を試みたところ、以下の結果が得られた。

【００１８】Ａ：未焼結であり、チップ層とスチール母
材とはまったく接合しなかった。Ｂ：焼結が充分に進行し、チップ層とスチール母材との
接合は面積率で１００％であった。Ｃ：焼結が充分に進行し、チップ層とスチール母材との
接合は面積率で１００％であった。

【００１９】Ｄ：チップ層が溶け、チップ層とスチール
母材とが合金化した。この結果から、チップ層が液相温度低下金属を４〜８重
量％の割合で含有すると、チップ層と母材との接合品質
の優れた接合焼結タペットが得られることが確認され
た。

【００２０】

【発明の効果】本発明によれば、以上の構成としたの
で、チップ層と母材との接合が強固で接合品質が優れて
いるとともに、低温焼結（チップ層と母材との接合面積
率を１００％とするための焼結温度は、従来は１，３０
０℃以上であったのに対し、本発明の内燃機関用摺動部
材の焼結温度は１，１００〜１，２００℃程度）により
工業的に有利な条件で容易に製造可能な内燃機関用摺動
部材を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の内燃機関用摺動部材の一例を模式的に
示す断面図である。

【符号の説明】

１チップ層２母材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁵ 識別記号庁内整理番号ＦＩ技術表示箇所Ｆ０１Ｌ 1/18 Ｍ 6965−3Ｇ

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】カーバイト５０〜８０重量％と、液相温
度低下金属４〜８重量％と、基地ニッケル（Ｎｉ）とを
含む焼結体からなるチップ層が母材に接合され、且つ、
該液相温度低下金属がボロン（Ｂ）、ケイ素（Ｓｉ）、
炭素（Ｃ）、クロム（Ｃｒ）、モリブデン（Ｍｏ）およ
びコバルト（Ｃｏ）を含むことを特徴とする内燃機関用
摺動部材。
【請求項２】前記液相温度低下金属の組成が、ボロン
（Ｂ）３．０〜５．０重量％、ケイ素（Ｓｉ）３．０〜
６．０重量％、炭素（Ｃ）０．８〜１．５重量％、クロ
ム（Ｃｒ）１８．０〜２２．０重量％、モリブデン（Ｍ
ｏ）５．０〜７．０重量％、コバルト（Ｃｏ）３５．０
〜４５．０重量％、残部ニッケル（Ｎｉ）である請求項
１記載の内燃機関用摺動部材。