JPH0589866U - 電磁式燃料噴射弁 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 固定鉄心２と可動鉄心８との燃料内での“貼
り付き”現象に起因した、ソレノイドコイル２２への給
電停止における可動鉄心８の解放遅れを解消して、応答
性の優れた電磁式燃料噴射弁を提供する。 【構成】 固定鉄心２の平坦面２ｄおよび可動鉄心８の
平坦面８ａに、それぞれ面粗度の大きいリング状の金属
被膜１０１、１００を被着することにより、両者の接触
面での“貼り付き”現象を防止する。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、内燃機関に用いられる電磁式燃料噴射弁に係り、特に、耐久性およ び応答性を改善した電磁式燃料噴射弁に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

図３は従来の電磁式燃料噴射弁の一例の縦断面図であり、当該電磁式燃料噴射 弁には、中心軸と平行な矢印Ａ方向に燃料が流入する。

【０００３】 燃料流入口には、ろ過網１８を有する異物除去用ストレーナ１９が挿着されて いる。磁性材料によって筒状に形成されたハウジング１の内部には、同じく磁性 材料によって形成された燃料供給用の中空スリーブ２８が嵌挿されている。中空 スリーブ２８は、固定鉄心部２８ａとフランジ部２８ｂを備えている。

【０００４】 前記ハウジング１と固定鉄心２８ａとの間に形成された空間には、ボビン２１ に巻回されたソレノイドコイル（以下、単にコイルと略する）２２が、前記固定 鉄心２８ａを包囲するように収納されている。

【０００５】 前記固定鉄心２８ａ内には、コイルスプリング２６およびパイプ状スプリング ストッパ２７が挿入され、該スプリングストッパ２７は、可動鉄心９を押圧する コイルスプリング２６の力が適正となるような位置で、ハウジング１に対して固 定状態とされている。

【０００６】 ハウジング１の先端部では、ニードルバルブ（以下、単にバルブと略する）１ ０を有するバルブシート１１が配設され、バルブシート１１は、ハウジング１の 開口端部でノズル２３と共に加締られている。

【０００７】 バルブ１０はバルブストッパ２０によってバルブ開度に対応した一定往復動を 規定される。バルブ１０は、バルブシート１１内において往復動と垂直な方向の 位置を規定するためにバルブシート１１の内壁と摺動するガイド部３０ａ、３０ ｂを有している。各ガイド部３０ａ、３０ｂは、円柱状体を４面平取りして構成 され、平取り面とバルブシート１１との間が燃料通路となる。

【０００８】 ハウジング１の後端部では、スリーブ２８のフランジ部２８ｂがハウジング１ の開口端部でかしめられている。前記フランジ部２８ｂ上部には、樹脂などの非 磁性材からなるコネクタ５が固定され、その内部にはコイル２２と導電接続され たターミナル６が埋設されている。

【０００９】 このような構成において、常時（コイル２２が付勢されていない時）は、スプ リング２６の反発力によって可動鉄心９が押圧され、噴射口１７からの燃料噴射 が阻止される。図３はコイル２２が付勢されていない状態を示している。

【００１０】 ストレーナ１９で濾過された燃料は、スリーブ２８の中空部およびスプリング ストッパ２７の中心部を通過し、可動鉄心９の中空孔およびバルブ１０のガイド 部３０ａ、３０ｂとバルブシート１１との間隙を介して、バルブ１０とバルブシ ート１１とで形成される空間に導かれる。

【００１１】 コイル２２が付勢されると、可動鉄心９がスプリング２６の反発力に抗してス リーブ２８の下端に吸引されるので、バルブ１０がバルブシート１１から離れ、 バルブシート１１内に供給された燃料が噴射口１７から噴射される。

【００１２】

【考案が解決しようとする課題】

ところが、上記した従来技術では、ニードルバルブ１０をバルブストッパ２０ に衝突させることでバルブ１０の開弁方向への運動を規定していたので、バルブ １０と可動鉄心９との加締部６０には可動鉄心９の慣性力に応じた大きなエネル ギが加わり、特に高速動作時の耐久性を向上させるためには、比較的高価な部材 を用いなければならないという問題があった。

【００１３】 さらに、上記した従来技術では、可動鉄心９と固定鉄心２８ａとの対向する面 積が小さいので、可動鉄心９に対して大きな磁気吸引力が作用しにくいという問 題があった。

【００１４】 本考案の目的は、上記した従来技術の問題点を解決して、可動鉄心と固定鉄心 との加締部に大きな力が加わらないようにして高速動作時の耐久性を向上させる と共に、可動鉄心に作用する磁気吸引力が大きくなるようにして、噴射弁の開閉 応答性を向上させることにある。

【００１５】

【課題を解決するための手段】

上記した目的を達成するために、本考案では、一主面が平坦なつば状部を有す る可動鉄心が同軸状に固着されたニードルバルブと、前記可動鉄心の一主面と対 向する端面が平坦な固定鉄心と、前記固定鉄心に巻回されたソレノイドコイルと を設け、ソレノイドコイルを付勢して得られる電磁力で、可動鉄心のつば状部の 平坦面が固定鉄心の平坦面に当接するまでニードルバルブを変位させて燃料噴射 口を開くようにした点に特徴がある。

【００１６】 さらに、本考案では、固定鉄心と可動鉄心との接触面に面粗度の大きいリング 状の金属被膜を被着するようにした点に特徴がある。

【００１７】

【作用】

上記した構成によれば、可動鉄心を固定鉄心に直接衝突させることによってニ ードルバルブの開弁方向への運動が規定されるので、可動鉄心とバルブとの加締 部には可動鉄心の慣性力が作用せず、加締部に加わるエネルギが減少して高速動 作時の耐久性が向上する。

【００１８】 また、可動鉄心につば状部を設けて固定鉄心と対向する面積が大きくなるよう にしたので、可動鉄心に対する磁気吸引力が大きくなって応答性が向上する。

【００１９】 さらに、可動鉄心と固定鉄心との接触面の面粗度を大きくして“貼り付き”現 象を防止するようにしたので、電磁弁の開閉応答性が格段に向上する。

【００２０】

【実施例】

図１は本考案の一実施例である電磁式燃料噴射弁の一例の縦断面図であり、前 記と同一の符号は同一または同等部分を表している。

【００２１】 当該電磁式燃料噴射弁には、中心軸と平行な矢印Ｚ方向から燃料が流入する。 燃料流入口には異物除去用ストレーナ３１が挿着されている。磁性材料によって 筒状に形成されたハウジング１の内部には、同じく磁性材料によって形成され、 燃料供給用の中空スリーブ２ｃと一体成型された固定鉄心２が収容されている。 固定鉄心２は内側鉄心２ａおよび外側鉄心２ｂによって構成され、後述する可動 鉄心８との対向端２ｄは平坦面となっている。内側鉄心２ａと外側鉄心２ｂとの 間に形成された空間には、ボビン２１に巻回されたソレノイドコイル２２が挿貫 されている。

【００２２】 前記スリーブ２ｃ（内側鉄心２ａ）内には、コイルスプリング２６とパイプ状 スプリングストッパ２７が挿入されている。該スプリングストッパ２７は、ニー ドルバルブ（以下、単にバルブと略する）１０に固着されたつば状の可動鉄心８ を押圧するコイルスプリング２６の力が適正となるような位置で、ハウジング１ に対して固定状態とされている。

【００２３】 ハウジング１の先端部では、バルブ１０を摺動自在に収容したバルブシート１ １が、袋ナット１５をハウジング１の先端部に螺合することによって固定されて いる。本実施例では、バルブ１０およびバルブシート１１は、図示されていない シリンダーの燃焼室に直接燃料を噴射できるように、長細い形状に構成されてい る。バルブ開度に対応したバルブ１０の一定往復動は、つば状に形成された可動 鉄心８の平坦面８ａを固定鉄心２の平坦面２ｄに衝突させることにより規定され る。

【００２４】 ストレーナ３１で濾過された燃料は、スリーブ２の中空部およびスプリングス トッパ２７の中心部２９を通過し、可動鉄心８に設けられた燃料通路１２を介し てバルブ１０とバルブシート１１とで形成される空間に導かれる。

【００２５】 このような構成において、常時（ソレノイドコイル２２が付勢されていない時 ）は可動鉄心８がスプリング２６の反発力によって押圧され、噴射口１７からの 燃料噴射が阻止される。一方、ソレノイドコイル２２が付勢されると、可動鉄心 ８がスプリング２６の反発力に抗して固定鉄心２の平坦面２ｄに吸引され、バル ブ１０の先端がバルブシート１１から離れるので、バルブシート１１内に供給さ れた燃料が噴射口１７から噴射される。

【００２６】 本実施例によれば、可動鉄心８をつば状に形成したことにより、固定鉄心２と 可動鉄心８との対向面積を大きくすることができたので、可動鉄心８に作用する 磁気吸引力が強くなり、応答性が向上する。

【００２７】 また、本実施例によれば、可動鉄心８を固定鉄心２に直接衝突させることによ ってニードルバルブ１０の開弁方向への運動を規定するようにしたので、可動鉄 心８とバルブ１０との加締部には可動鉄心８の慣性力が作用せず、加締部に加わ るエネルギが減少して高速動作時の耐久性が向上する。

【００２８】 ところで、上記した従来技術では、固定鉄心２の平坦面２ｄと可動鉄心８の平 坦面８ａとが、燃料中において比較的広い面積で面接触するため、固定鉄心２の 平坦面２ｄと可動鉄心８の平坦面８ａとの間で“貼り付き”現象が発生する。

【００２９】 したがって、ソレノイドコイル２２への給電を停止しても可動鉄心８を固定鉄 心２から素早く解放させることができず、十分な応答性が得られないという問題 があった。

【００３０】 そこで、以下に説明する本考案の第２実施例では、固定鉄心２と可動鉄心８と の“貼り付き”現象に起因した可動鉄心８（バルブ１０）の解放遅れを解消する ようにしている。

【００３１】 以下、図面を参照して本考案の第２実施例を詳細に説明する。なお、本考案の 電磁式燃料噴射弁は、主に可動鉄心８および固定鉄心２近傍の構成に特徴がある ので、ここでは可動鉄心８周辺の断面図のみを参照して本考案を説明する。

【００３２】 図２は、本考案の一実施例である電磁式燃料噴射弁の主要部の断面図であり、 前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。

【００３３】 本実施例では、固定鉄心２と可動鉄心８との“貼り付き”現象を防止するため に、固定鉄心２の平坦面２ｄおよび可動鉄心８の平坦面８ａに、それぞれリング 状の金属被膜１０１、１００を、バルブ１０を中心にして被着した点に特徴があ る。

【００３４】 本実施例では、各金属被膜１０１、１００を内径４ｍｍ／外径１０ｍｍのリン グ形状とし、面粗度は１０μ以上、膜厚はそれぞれ約５０μ、約２０μとした。 なお、このような金属被膜としては、例えばメッキ加工によって被着されるハー ドクロームメッキなどが有効であり、初めに比較的厚めの膜厚で被着した後、適 宜に研磨して所望の膜厚とすることで形成できる。

【００３５】 本考案によれば、ソレノイドコイル２２が励磁されて可動鉄心８が固定鉄心２ に吸引され、可動鉄心８の平坦面８ａに被着されたリング状金属被膜１０１およ び固定鉄心２の平坦面２ｄに被着されたリング状金属被膜１００同士が燃料内で 面接触しても、接触面の面粗度が大きいために貼り付き現象が発生しない。した がって、ソレノイドコイル２２への給電停止時には可動鉄心８が固定決心２から 素早く解放され、バルブ１０の立ち下がりレスポンスが向上して応答性が向上す る。

【００３６】 なお、本考案は上記した実施例のみに限定されるものではなく、各金属被膜１ ０１、１００を、例えば内径４ｍｍ／外径６ｍｍ程度に小さくして接触面積を小 さくすれば、面粗度が１μ以下であっても十分な効果が得られる。

【００３７】

【考案の効果】

上記したように、本考案によれば、以下のような効果が達成される。 (1) 可動鉄心８をつば状に形成し、固定鉄心２と可動鉄心８との対向面積を大き くするようにしたので、可動鉄心８に作用する磁気吸引力が強くなって応答性が 向上する。 (2) 可動鉄心８を固定鉄心２に直接衝突させることによってニードルバルブ１０ の開弁方向への運動を規定するようにしたので、可動鉄心８とバルブ１０との加 締部には可動鉄心８の慣性力が作用せず、加締部に加わるエネルギが減少して高 速動作時の耐久性が向上する (3) 可動鉄心８と固定鉄心２との接触面の面粗度を大きくして“貼り付き”現象 を防止するようにしたので、ソレノイドコイル２２への給電を停止すると可動鉄 心８が直ちに解放され、電磁弁の応答性が格段に向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の一実施例である電磁式燃料噴射弁の
縦断面図である。

【図２】 本考案の他の実施例である電磁式燃料噴射弁
の主要部の断面図である。

【図３】 従来技術の電磁式燃料噴射弁の縦断面図であ
る。

【符号の説明】

１…ケーシング、２…固定鉄心、２ａ…内側磁気コア，
２ｂ…外側磁気コア、８、９…可動鉄心、１０…ニード
ルバルブ、１１…バルブシート、１５…袋ナット、２１
…ボビン、２２…ソレノイドコイル、２６…スプリング
コイル、２７…スプリングストッパ、３１…異物除去ス
トレーナ、１００、１０１…リング状金属被膜

フロントページの続き (72)考案者 石田 喜三 埼玉県和光市中央一丁目４番１号 株式会 社本田技術研究所内

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 一主面が平坦なつば状部を有する可動鉄
   心が同軸状に固着されたニードルバルブと、 前記可動鉄心の一主面と対向する端面が平坦な固定鉄心
   と、 前記固定鉄心に巻回されたソレノイドコイルとを具備
   し、 ソレノイドコイルを付勢して得られる電磁力で、可動鉄
   心のつば状部の平坦面が固定鉄心の平坦面に当接するま
   でニードルバルブを変位させて燃料噴射口を開くことを
   特徴とする電磁式燃料噴射弁。
2. 【請求項２】 前記可動鉄心のつば状部の平坦面および
   固定鉄心の平坦面の少なくとも一方には金属被膜が被着
   されたことを特徴とする請求項１記載の電磁式燃料噴射
   弁。
3. 【請求項３】 前記金属被膜はメッキ加工により被着さ
   れるようにしたことを特徴とする請求項１または請求項
   ２記載の電磁式燃料噴射弁。