JPH0581879B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （関連技術分野） 原子炉設備では、放射性物質で汚染された槽壁
をしばしば除染する必要が生ずる。この除染作業
では用具自体の汚染およびこれに基づく壁面への
二次汚染が防ぐため、槽壁上縁を走行する車台か
ら槽壁下部へ伸びる除染具を有効に片保持操作さ
せる除染機が望まれている。本発明はこの分野の
作業に極めて有効な壁面除染機に関するものであ
る。

（従来技術） 当分野の除染作業としては、従来、除染機を槽
の上縁により単に垂下させて駆動する方法、ある
いは真空吸着によつて壁面に押えつけ乍ら駆動す
る等の方法がある。後者の真空吸着の場合は前者
に比し一歩進んでいるものの、吸着盤の汚染防止
や片保持駆動のための不平衡モーメントの解決な
ど、改良すべき点が多い。

（発明が解決しようとする問題点） 本発明は、汚染されていない槽上縁で走行車台
を走らせ、これより下部に摺動性がよく、しかも
汚染し難い真空吸着盤を具えた除染ブラシを備え
た壁面除染機を提供しようとするものである。

（問題点を解決するための手段） 原子炉設備の槽壁を除染するとき、槽の上部周
縁上を走行する走行車台から槽壁に沿つて回転ブ
ラシを垂下させ、回転ブラシのブラシカバーには
特殊な真空吸着盤を付し、回転ブラシを壁面に確
実に押圧させた。

この真空吸着盤は、摺動部に二つ折りした軟弾
性体の帯状のものを、そのＵ形の底の方を吸着盤
取つけ溝に挿入して固定し、軟弾性体の開放した
先端を壁面に接するようにして円環状に囲撓さ
せ、かつ、軟弾性体のＵ形の底と吸着盤取つけ溝
を貫通して外部より給水栓を設ける。かくして、
真空吸着盤の摺動部の折目内部に潤滑用水を保持
する水潤滑吸着盤を備えた壁面除染機を構成させ
ることができた。

（作用） 本発明では、強制的な水潤滑により、吸着盤の
摺動抵抗が低減され、かつ潤滑水によつて吸着盤
は直接壁面と強く接触することがなく、しかも吸
着盤の汚染も低減される。これらによつて、槽上
縁を走行する車台からの片保持駆動の不平衡モー
メントが軽減され、かつ汚染予防のための吸着盤
の配置の制限も緩和される。

（実施例） 第１図に基いて真空吸着盤１の機構を説明す
る。２は真空吸気を囲う吸引箱で、除染機の躯体
１ａ（第２図）の両側に固定されている。３は吸
引箱２外周を摺動、伸縮する環状体で、先端に軟
弾性体（ゴムなど）４を有している。この環状体
３は、横杆５を介し吸引箱２に設けられたスプリ
ングシリンダ６で常に被除染壁面１２に向け付勢
されている。環状体３の先端には、環状体３を囲
撓して、下向の溝部７の設けられており、該溝部
の中に断面逆Ｕ字形をなすように二つ折にした帯
状の軟弾性帯４が納められ、シール部を形成して
いる。軟弾性体の折目底部８には、溝部７の頂壁
７ａを貫通して給水ホース１７に接続されてい
る。給水栓９が設けられ、軟弾性体４を内奥部か
ら水潤滑している。軟弾性体４は頂壁７ａに対
し、数個所でボルトナツト１０で固定されてい
る。さらに真空吸着盤１の内部には、吸引箱２に
固定したストツパ車輪１１が設けられ、吸気負圧
が過大になつても吸引箱２を壁面１２に対し一定
の位置に保つことができるようになつている。な
お、ストツパ車輪の位置は必要に応じ伸縮・調節
しうるようにもなつている。

第１図Ｂは、ストツパ車輪１１が壁面１２に圧
接し、吸引箱２が壁面１２に対して一定の位置に
保持されている状態を示す。第１図Ａに符号１３
で示す距離は環状体３の伸縮長さである。これ
は、除染用ロールブラシ２２（第２図）の毛先の
たわみ深さ（切込みとも言う）に相当し、これを
与えておくことにより、真空吸着盤１の軟弾性体
４が壁面１２に吸着するときロールブラシ２２の
毛先によつて邪魔されることがない。

なお、１４はスプリングシリンダ６の押圧力を
加減する調圧キヤツプである（軟弾性体４の壁面
１２に対する押圧力は吸気負圧の範囲内ならば、
このスプリングシリンタ６の力によつて決る）。
１５は吸引箱２と環状体３とを気密に保つＯリン
グである。２８は軟弾性体４に補助的弾性強度を
与える添えシードである。１６は吸引空気から水
滴を分離するデミスタである。１７は給水ホー
ス、１８は真空吸気ホース、１９は吸引箱２の頂
部に取付けられた環状体のカバーである。

第２図を参照するに、２０は除染機の走行車輪
で、該走行車輪２０は、除染機の躯体を保持し、
その全重量を支えている。走行車輪２０は前後に
２個設けられていて、原子炉設備の槽壁上縁２１
の上面を走行できるように配置されている。ロー
ルブラシ２２を内蔵するブラシカバー２３の両側
に、躯体１ａを介して結合されている１対の真空
吸着盤１があり、これによつて、ロールブラシ２
２は壁面１２に押圧されている。

なお２４は除染機躯体上部を槽壁上縁２１に把
持させるサイドローラ、２５はブラシモータ、２
６は走行モータ、２７は電源ケーブルである。

（発明の効果） (1) 真空吸着盤の壁面とのシール部は、常に内奥
より給水潤滑されるので、極度に摩擦抵抗が減
少する。

(2) 真空吸着盤の軟弾性体（シール部）を水潤滑
するので、乾いた状態では摩擦抵抗が大きいゴ
ム等の軟弾性体を積極的に使うことができるの
で、被除染壁面の凹凸への密着性がよく、吸着
性能が増大する。

(3) 真空吸着盤の壁面との吸着部は常に水潤滑さ
れているので、汚れた壁面からその放射性物質
の転移付着することが少なく、壁面除染の清浄
度を高めることができる。

(4) 原子炉設備で常用しているクロムニツケル鋼
板の槽壁は強い撥水性を有しており、外部から
の散水潤滑だけでは不充分であるが、本発明の
給水方式によれば常に軟弾性体の内奥から給水
するので、十分な潤滑が可能である。

(5) 除染用ロールブラシの位置を下げてゆくと、
走行車輪は旋回モーメントをうけ走行不安定に
なるが、本発明の水潤滑の真空吸着盤の使用に
よれば、その低摩擦のため槽壁深部までの片支
持走行が可能である。

(6) 本発明によればシール部を構成する軟弾性体
（ゴムなど）を真空吸着盤への着脱、交換を迅
速に行うことができ、かつ軟弾性体は、その折
曲底部で給水栓およびボルトナツトで固定され
ているので取付の溝部への保持強度が高く、隔
離された原子炉設備内の定期検査、メインテナ
ンス作業には最適である。

【図面の簡単な説明】

第１図は真空吸着盤の構成を示し、第２図は本
発明の除染機全体構成を示す。 図において；１……真空吸着盤、１ａ……躯
体、２……吸引箱、３……環状体、４……軟弾性
体、５……横杆、６……スプリングシリンダ、７
……溝部、７ａ……（溝部の）頂壁、８……折目
底部、９……給水栓、１０……ボルトナツト、１
１……ストツパ車輪、１２……壁面、１３……環
状体の可動距離、１４……調圧キヤツプ、１５…
…Ｏリング、１６……デミスタ、１７……給水ホ
ース、１８……真空吸気ホース、１９……カバ
ー、２０……走行車輪、２１……槽壁上縁、２２
……ロールブラシ、２３……ブラシカバー、２４
…サイドローラ、２５……ブラシ駆動モータ、２
６……走行モータ、２７……電源ケーブル、２８
……添えシート。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 原子炉設備の槽壁を除染する装置において、
   槽の上部周縁上を走行する車台に回転ブラシを縦
   方向に設け、該回転ブラシのブラシカバーには、
   真空吸気により壁面に吸着し、かつ摺動可能な吸
   着盤が設けられていて、該吸着盤は吸引箱と該吸
   引箱に対し伸縮可能に嵌挿され、かつ伸長方向に
   常時付勢された環状体からなり、該環状体はその
   周縁下部に下向溝部を具え、該溝部に断面逆Ｕ形
   をなすよう二つ折にした帯状の軟弾性体が、その
   折曲部を前記溝部内へ挿入し、その開放部を壁面
   に接するようにし、さらに軟弾性体のＵ形折曲部
   と前記溝部の頂壁を貫通し、軟弾性体の折目内部
   に通ずる給水栓を設けたことを特徴とする水潤滑
   吸着盤を備えた壁面除染機。