JPH057951U - エンジンのピストン構造 - Google Patents

エンジンのピストン構造

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JPH057951U JP3359092U JP3359092U JPH057951U JP H057951 U JPH057951 U JP H057951U JP 3359092 U JP3359092 U JP 3359092U JP 3359092 U JP3359092 U JP 3359092U JP H057951 U JPH057951 U JP H057951U
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ピストンリングに対する潤滑を良好に行いな
がら、過給気の掃気ポートからクランクケースへの吹き
抜けを防止するとともにクランクケース内のオイルの掃
気ポートへの流出を防止する。 【構成】 ピストン上死点時においてシリンダ周壁に開
口する掃気ポート4よりも下方に位置するピストンスカ
ート部2bに設けたシールリング27により該掃気ポー
ト4を常にクランクケース21に対してシールするとと
もに、ピストンの内方空間部20をオイル通路29によ
りピストンリング溝23に連通させて内方空間部20の
オイルをピストン頂部2aに供給する。

Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、シリンダ周壁にピストンにより開閉される掃気ポートが開口したエ ンジンにおいてそのピストン構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、2サイクルエンジンとして、例えば特開昭59−158329号公報に 開示されているように、シリンダ周壁に掃気ポートと排気ポートとを開口し、こ の両ポートをピストンにより所定のタイミングで開閉して、混合気を掃気ポート からシリンダに供給する一方、排気ポートから排気ガスを排出するようにしたも のは知られている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の2サイクルエンジンにおいてその出力向上を図るべく上 記掃気ポートの上流側に過給機を配設して、該過給機で過給された混合気を掃気 ポートよりシリンダ内に供給するようにした場合、シリンダ周壁に掃気ポートが 開口しているため、この掃気ポートからクランクケースに高圧の過給混合気が吹 き抜けてクランクケース内のブローバイガス圧力が高まる。このブローバイガス 圧力によってピストンがその下降時に大きな背面抵抗を受ける結果、そのポンピ ングロスによりエンジン出力の向上を有効に図り得ない。
【0004】 また、クランクケースのオイル溜めからシリンダ周壁へ、ピストン頂部に設け たピストンリング(コンプレッションリング等)を潤滑すべく供給されるオイル の一部がその途中のシリンダ周壁の掃気ポートへ流出し、掃気時にシリンダ内に 供給されて燃焼消費されたり、排気ポートに吹き抜けたりして無駄にオイルが消 費されてしまい、オイル消費量の増大を招くという問題がある。
【0005】 本考案はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上 述の如くシリンダ周壁にピストンにより開閉される掃気ポートを開口し、該掃気 ポートの上流側に過給機を配設したエンジンにおいて、該掃気ポートよりも下方 のシリンダ周壁において掃気ポートとクランクケースとの連通をシールするとと もに、ピストン内方空間部からピストン頂部へオイルを供給できるようにするこ とにより、ピストンリングへの潤滑を良好に行いながら、過給気のクランクケー スへの吹き抜けを防止してピストンの背面抵抗を可及的に低減するとともに、ク ランクケース内のオイルの掃気ポートへの流出を防止してオイル消費量を可及的 に低減させることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本考案の解決手段は、シリンダ周壁にピストンによ り開閉される掃気ポートが開口しており、該掃気ポートの上流側に過給機が配設 されているエンジンを対象とする。そして、ピストン上死点時において上記掃気 ポートよりも上方に位置するピストン頂部の外周面にピストンリング溝が形成さ れ、該ピストンリング溝にピストンリングが装着されている。また、ピストン上 死点時において上記掃気ポートよりも下方に位置するピストンスカート部の外周 面にシールリング溝が形成され、該シールリング溝にシールリングが装着されて いる。さらに、ピストン内方にピストン下方に開放せしめて形成されオイルが供 給される内方空間部と、一端が上記ピストンリング溝に開口し他端が上記内方空 間部に開口して両者を連通せしめるオイル通路とが設けられているものとする。
【0007】
【作用】
上記の構成により、本考案では、ピストン位置に拘らずシリンダ周壁に開口す る掃気ポートよりも下方にシールリングが位置して該掃気ポートがクランクケー スに対してシールされるので、過給機からの過給気のクランクケースへの吹き抜 けが防止されるとともに、クランクケース内のオイルの掃気ポートへの流出が防 止されることになる。
【0008】 この場合、上記シールリングによって掃気ポートよりも上方のシリンダ周壁上 部へのオイルの供給が阻止されるものの、内方空間部に供給されたオイルがクラ ンクケース内のブローバイガス圧力によりオイル通路を介してピストンリング溝 に供給されるので、ピストンリングを良好に潤滑できる。
【0009】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
【0010】 図1は本考案を2サイクルエンジンに適用した場合の実施例を示す。1はエン ジン本体Eに形成されたシリンダ、2は該シリンダ1内に摺動自在に配設された ピストンである。該エンジン本体Eのシリンダ周壁3には、ピストン2の下降・ 上昇に伴い該ピストン2の周壁によって開閉される掃気ポート4が開口されてい る。また、上記エンジン本体Eにおいてシリンダ1のピストン上死点位置(図1 の実線位置)より上方位置には、燃料供給手段としてのインジェクタ7を備えた 吸気通路5と排気通路6とが各々吸・排気ポート8,9を介して開口されている 。該吸・排気ポート8,9には各ポート8,9を開閉する吸・排気弁10,11 が配設されている。また、上記掃気ポート4は掃気通路12により上記インジェ クタ7上流の吸気通路5に連通接続されている。該掃気通路接続部上流の吸気通 路5にはエアを過給する過給機としてのエアポンプ13が配設されており、該エ アポンプ13により過給されたエアに上記インジェクタ7から燃料を噴射供給し て混合気を生成し、吸気ポート8よりシリンダ1内に供給する一方、上記過給エ アを掃気ポート4にも掃気エアとして供給するようにしている。
【0011】 そして、上記吸・排気弁10,11の開閉タイミングは、図2に示すように、 ピストン下死点近傍で吸気弁10が開きかつ排気弁11が閉じるとともに、排気 弁11の開弁時期が掃気ポート4の開時期よりも早く、かつ吸気弁10の閉弁時 期が掃気ポート4の閉時期よりも遅くなるように設定されている。尚、14は吸 気通路5上流に配設されたエアクリーナ、15は掃気通路12の途中とエアポン プ13上流の吸気通路5とを連通するバイパス通路、16は該バイパス通路15 に配設され過給圧を所定値以下に保持制御するリリーフ弁である。また、17は 吸気通路5に配設されたスロットル弁、18は掃気通路12に配設された流量調 整用の制御弁、19は点火プラグである。
【0012】 また、図3に示すように、上記ピストン2の内方にはピストン下方に開放され た内方空間部20が形成されており、エンジン本体Eのシリンダ下方のクランク ケース21に設けたオイル面より掻き上げられたオイルあるいはオイルジェット により噴射されたオイルが供給されるようになされている。
【0013】 一方、ピストン2が上死点にある時において上記掃気ポート4よりも上方に位 置するピストン2の頂部2aの外周面には第1および第2のピストンリング溝2 2,23が形成されている。該各ピスントリング溝22,23にはピストンリン グとしてのコンプレッションリング24,25がそれぞれ装着されていて、シリ ンダ1の気密性を確保するようになされている。
【0014】 そして、図3の如くピストン2が上死点にある時において上記掃気ポート4よ りも下方に位置するピストン2のスカート部2bの外周面にはシールリング溝2 6が形成されている。該シールリング溝26にはシールリングとしてのコンプレ ッションリング27が装着されていて、掃気ポート4をシリンダ下方のクランク ケース21に対してシールするようになされている。
【0015】 さらに、図3に示すように、上記ピストン2には、一端が上記第2ピストンリ ング溝23の上記掃気ポート4と対向しない部位に開口し、他端が上記内方空間 部20に開口して両者を連通する複数のオイル通路29,29…が放射状に貫通 形成されている。このオイル通路29により、ピストン下降時には内方空間部2 0に供給されたオイルをクランクケース内で上昇するブローバイガス圧力により 第2ピストンリング溝23からピストン頂部2aに供給する一方、ピストン上昇 時には第2コンプレッションリング25により第2ピストンリング溝23に掻き 集められたオイルを上昇するシリンダ圧力により内方空間部20に戻してクラン クケース21のオイル溜めに回収するようにしている。
【0016】 次に、上記実施例の作動を説明するに、図2に示すように吸・排気弁10,1 1および掃気ポート4が閉じかつピストン2が上昇してシリンダ1内の混合気が 圧縮され、上死点前20度で点火プラグ19が点火すると混合気が爆発燃焼する 。その後、燃焼ガスの膨張によりピストン2が下死点前80度まで下降すると、 排気弁11が開いて排気が始まり、さらに下死点前50度まで下降すると、掃気 ポート4が開き、掃気ポート4からはエアポンプ13により過給された加圧エア がシリンダ1内に供給され、この加圧エアにより排気ガスが加圧エアと共に排気 ポート9から排気通路6へ効率良く掃気排出される。その際、ピストン上死点時 において掃気ポート4よりも下方に位置するピストンスカート部2bに設けられ たコンプレッションリング27はピストン位置に拘らず掃気ポート4よりも下方 に位置するので、このコンプレッションリング27のシール作用によって掃気ポ ート4に供給された高圧の過給気がクランクケース21へ吹き抜けるのを防止す ることができる。これにより、クランクケース21内のブローバイガス圧力の上 昇を抑制してピストン2の背面抵抗を可及的に低減し、よってポンピングロスを 少なくしてエアポンプ13の過給効果によるエンジン出力の向上を実効あるもの にすることができる。また、掃気ポート4から排気ポート11へエアが吹き抜け るものの、このエア中には燃料成分は含まれていないので、排気ガスの掃気を確 実かつ効率良く行いながら燃費の低減およびエミッション性の改善を図ることが できる。
【0017】 次に、ピストン2が下死点近傍まで下降すると、下死点前10度で吸気弁10 が開き、下死点後10度で排気弁11が閉じて、吸気ポート8からはエアポンプ 13により過給された混合気がシリンダ1内に供給されて給気が始まる。このよ うに吸気ポート8の開期間と排気ポート9の開期間とのオーバラップが狭められ ることにより、吸気ポート8から排気ポート9への混合気の吹き抜けが可及的に 抑制されて、燃費の低減およびエミッション性の改善の実効を上げることができ る。
【0018】 さらに、ピストン2が下死点後50度まで上昇すると、掃気ポート4が閉じる が、吸気弁10はその後も下死点後80度まで開き続けて混合気がシリンダ1に 供給される。このことにより、吸気ポート8の開く期間が長くなるので、混合気 の充填量を増大させることができる。しかも、吸気ポート8にはエアポンプ13 によって過給された混合気が供給されるので、ピストン2上昇によるシリンダ圧 力の上昇に拘らず上記吸気ポート8の開期間の間混合気をシリンダ1に強制的に 充填することができるので、充填量を確実に増大させることができ、エンジン出 力を向上させることができる。
【0019】 また、上記コンプレッションリング27のシール作用によってクランクケース 21から掃気ポート4へオイルが流出するのを防止することができる。さらに、 掃気用の加圧エアや混合気は、クランクケース21を通らずに掃気ポート4や吸 気ポート8からシリンダ1に供給されるので、この加圧エアや混合気にオイルが 混入することもなく、よってオイル消費量を可及的に低減することができる。
【0020】 この場合、上記コンプレッションリング27によって掃気ポート4よりも上方 のシリンダ周壁上部へのオイルの供給が阻止されるものの、クランクケース21 内のブローバイガス圧力により、内方空間部20に供給されたオイルがオイル通 路29,29…から第2ピストンリング溝23に供給されてピストン頂部2aに オイルが供給されるので、コンプレッションリング24,25を良好に潤滑でき 、リングの焼付きを確実に防止することができる。また、上記オイル通路29, 29…は掃気ポート4と対向しない部位に開口しているので、該オイル通路29 ,29…から供給されたオイルが直接掃気ポート4に流出することはなく、オイ ル消費量低減の実効を上げることができる。
【0021】 さらに、図4は本考案を別のタイプの2サイクルエンジンに適用した場合の変 形例を示す。この2サイクルエンジンでは、シリンダ周壁3にピストン2により 開閉される複数の掃気ポート4′,4′,…を開口し、該掃気ポート4′,4′ ,…に接続された掃気通路12′にルーツブロアタイプの過給機30を配設する とともに、エンジン本体Eにおいてシリンダ1のピストン上死点位置(図4の実 線位置)より上方位置に、排気通路6を分岐した2本の排気ポート9,9を介し て開口し、該各排気ポート9に各ポート9を開閉する排気弁11,11を配設し 、過給機30で過給され掃気ポート4′からシリンダ1に供給された混合気によ ってシリンダ1を掃気するとともにこの混合気をシリンダ1に充填するようにし たユニフロー掃気方式2サイクルエンジンである。そして、ピストン上死点時に おいて上記掃気ポート4′,4′,…よりも下方に位置するピストンスカート部 2bにコンプレッションリング27′を設けたものである。本例においては、複 数の掃気ポート4′,4′,…からクランクケース21への過給混合気の吹き抜 けおよびこの複数の掃気ポート4′,4′,…へのオイルの流出を防止すること が可能であり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0022】 尚、本考案は2サイクルエンジンのみならず、4サイクルエンジンに対しても 広く適用可能である。
【0023】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案によれば、ピストン上死点時においてシリンダ周 壁に開口する掃気ポートよりも下方に位置するピストンスカート部に設けたシー ルリングにより該掃気ポートを常にクランクケースに対してシールするとともに 、ピストンの内方空間部をオイル通路によりピストンリング溝に連通させるよう にしたので、ピストンリングに対する潤滑性を良好に確保しながら、過給気のク ランクケースへの吹き抜けを防止してピストン背面抵抗を可及的に低減し、エン ジン出力を向上できるとともに、オイルの掃気ポートへの流出を防止してオイル 消費量を可及的に低減させることができる。
【提出日】平成4年6月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】考案の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】 【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、シリンダ周壁にピストンにより開閉される掃気ポートが開口したエ ンジンにおいてそのピストン構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、2サイクルエンジンとして、例えば特開昭59−158329号公報に 開示されているように、シリンダ周壁に掃気ポートと排気ポートとを開口し、こ の両ポートをピストンにより所定のタイミングで開閉して、混合気を掃気ポート からシリンダに供給する一方、排気ポートから排気ガスを排出するようにしたも のは知られている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の2サイクルエンジンにおいてその出力向上を図るべく上 記掃気ポートの上流側に過給機を配設して、該過給機で過給された混合気を掃気 ポートよりシリンダ内に供給するようにした場合、シリンダ周壁に掃気ポートが 開口しているため、この掃気ポートからクランクケースに高圧の過給混合気が吹 き抜けてクランクケース内のブローバイガス圧力が高まる。このブローバイガス 圧力によってピストンがその下降時に大きな背面抵抗を受ける結果、そのポンピ ングロスによりエンジン出力の向上を有効に図り得ない。
【0004】 また、クランクケースのオイル溜めからシリンダ周壁へ、ピストン頂部に設け たピストンリング(コンプレッションリング等)を潤滑すべく供給されるオイル の一部がその途中のシリンダ周壁の掃気ポートへ流出し、掃気時にシリンダ内に 供給されて燃焼消費されたり、排気ポートに吹き抜けたりして無駄にオイルが消 費されてしまい、オイル消費量の増大を招くという問題がある。
【0005】 本考案はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上 述の如くシリンダ周壁にピストンにより開閉される掃気ポートを開口し、該掃気 ポートの上流側に過給機を配設したエンジンにおいて、該掃気ポートよりも下方 のシリンダ周壁において掃気ポートとクランクケースとの連通をシールするとと もに、ピストン内方空間部からピストン頂部へオイルを供給できるようにするこ とにより、ピストンリングのシリンダ周壁に対する潤滑性を確保してその摩耗や 焼付等を防止しながら、 過給気のクランクケースへの吹き抜けを防止してピスト ンの背面抵抗を可及的に低減するとともに、クランクケース内のオイルの掃気ポ ートへの流出を防止してオイル消費量を可及的に低減させることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本考案の解決手段は、シリンダ周壁にピストンによ り開閉される掃気ポートが開口しており、該掃気ポートの上流側に過給機が配設 されているエンジンを対象とする。そして、ピストン上死点時において上記掃気 ポートよりも上方に位置するピストン頂部の外周面にピストンリング溝が形成さ れ、該ピストンリング溝にピストンリングが装着されている。また、ピストン上 死点時において上記掃気ポートよりも下方に位置するピストンスカート部の外周 面にシールリング溝が形成され、該シールリング溝にシールリングが装着されて いる。さらに、ピストン内方にピストン下方に開放せしめて形成されオイルが供 給される内方空間部と、一端が上記ピストンリング溝に開口し他端が上記内方空 間部に開口して両者を連通せしめるオイル通路とが設けられているものとする。
【0007】
【作用】
上記の構成により、本考案では、ピストン位置に拘らずシリンダ周壁に開口す る掃気ポートよりも下方にシールリングが位置して該掃気ポートがクランクケー スに対してシールされるので、過給機からの過給気のクランクケースへの吹き抜 けが防止されるとともに、クランクケース内のオイルの掃気ポートへの流出が防 止されることになる。
【0008】 この場合、上記シールリングによって掃気ポートよりも上方のシリンダ周壁上 部へのオイルの供給が阻止されるものの、ピストンの内方空間部に、オイルジェ ットより噴射されたオイル、あるいはクランクシャフトによって掻き上げられた オイルが供給され、この内方空間部に供給されたオイルがピストンの下降に伴っ て、オイル通路からピストン頂部へ供給され、上記ピストンスカート部のシール リングでシリンダ周壁のオイルが掻かれたにも拘らず、ピストン頂部に設けられ たピストンリングはこの新たなオイルの供給によりその潤滑性が維持される。ま た、ピストンの上昇に伴っては、ピストン頂部のオイルは逆に、オイル通路を介 してピストンの内方空間部に戻されるので、上記潤滑性の維持と共にオイルの掃 気ポートへの流出が防止できる。
【0009】
【実施例】
以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
【0010】 図1は本考案を2サイクルエンジンに適用した場合の実施例を示す。1はエン ジン本体Eに形成されたシリンダ、2は該シリンダ1内に摺動自在に配設された ピストンである。該エンジン本体Eのシリンダ周壁3には、ピストン2の下降・ 上昇に伴い該ピストン2の周壁によって開閉される掃気ポート4が開口されてい る。また、上記エンジン本体Eにおいてシリンダ1のピストン上死点位置(図1 の実線位置)より上方位置には、燃料供給手段としてのインジェクタ7を備えた 吸気通路5と排気通路6とが各々吸・排気ポート8,9を介して開口されている 。該吸・排気ポート8,9には各ポート8,9を開閉する吸・排気弁10,11 が配設されている。また、上記掃気ポート4は掃気通路12により上記インジェ クタ7上流の吸気通路5に連通接続されている。該掃気通路接続部上流の吸気通 路5にはエアを過給する過給機としてのエアポンプ13が配設されており、該エ アポンプ13により過給されたエアに上記インジェクタ7から燃料を噴射供給し て混合気を生成し、吸気ポート8よりシリンダ1内に供給する一方、上記過給エ アを掃気ポート4にも掃気エアとして供給するようにしている。
【0011】 そして、上記吸・排気弁10,11の開閉タイミングは、図2に示すように、 ピストン下死点近傍で吸気弁10が開きかつ排気弁11が閉じるとともに、排気 弁11の開弁時期が掃気ポート4の開時期よりも早く、かつ吸気弁10の閉弁時 期が掃気ポート4の閉時期よりも遅くなるように設定されている。尚、14は吸 気通路5上流に配設されたエアクリーナ、15は掃気通路12の途中とエアポン プ13上流の吸気通路5とを連通するバイパス通路、16は該バイパス通路15 に配設され過給圧を所定値以下に保持制御するリリーフ弁である。また、17は 吸気通路5に配設されたスロットル弁、18は掃気通路12に配設された流量調 整用の制御弁、19は点火プラグである。
【0012】 また、図3に示すように、上記ピストン2の内方にはピストン下方に開放され た内方空間部20が形成されており、エンジン本体Eのシリンダ下方のクランク ケース21に設けたオイル面より掻き上げられたオイルあるいはオイルジェット により噴射されたオイルが供給されるようになされている。
【0013】 一方、ピストン2が上死点にある時において上記掃気ポート4よりも上方に位 置するピストン2の頂部2aの外周面には第1および第2のピストンリング溝2 2,23が形成されている。該各ピスントリング溝22,23にはピストンリン グとしてのコンプレッションリング24,25がそれぞれ装着されていて、シリ ンダ1の気密性を確保するようになされている。
【0014】 そして、図3の如くピストン2が上死点にある時において上記掃気ポート4よ りも下方に位置するピストン2のスカート部2bの外周面にはシールリング溝2 6が形成されている。該シールリング溝26にはシールリングとしてのコンプレ ッションリング27が装着されていて、掃気ポート4をシリンダ下方のクランク ケース21に対してシールするようになされている。
【0015】 さらに、図3に示すように、上記ピストン2には、一端が上記第2ピストンリ ング溝23の周方向において上記掃気ポート4と対向しない部位に開口し、他端 が上記内方空間部20に開口して両者を連通する複数のオイル通路29,29… が放射状に貫通形成されている。このオイル通路29により、ピストン下降時に は内方空間部20に供給されたオイルをクランクケース内で上昇するブローバイ ガス圧力により第2ピストンリング溝23からピストン頂部2aに供給する一方 、ピストン上昇時には第2コンプレッションリング25により第2ピストンリン グ溝23に掻き集められたオイルを上昇するシリンダ圧力により内方空間部20 に戻してクランクケース21のオイル溜めに回収するようにしている。
【0016】 次に、上記実施例の作動を説明するに、図2に示すように吸・排気弁10,1 1および掃気ポート4が閉じかつピストン2が上昇してシリンダ1内の混合気が 圧縮され、上死点前20度で点火プラグ19が点火すると混合気が爆発燃焼する 。その後、燃焼ガスの膨張によりピストン2が下死点前80度まで下降すると、 排気弁11が開いて排気が始まり、さらに下死点前50度まで下降すると、掃気 ポート4が開き、掃気ポート4からはエアポンプ13により過給された加圧エア がシリンダ1内に供給され、この加圧エアにより排気ガスが加圧エアと共に排気 ポート9から排気通路6へ効率良く掃気排出される。その際、ピストン上死点時 において掃気ポート4よりも下方に位置するピストンスカート部2bに設けられ たコンプレッションリング27はピストン位置に拘らず掃気ポート4よりも下方 に位置するので、このコンプレッションリング27のシール作用によって掃気ポ ート4に供給された高圧の過給気がクランクケース21へ吹き抜けるのを防止す ることができる。これにより、クランクケース21内のブローバイガス圧力の上 昇を抑制してピストン2の背面抵抗を可及的に低減し、よってポンピングロスを 少なくしてエアポンプ13の過給効果によるエンジン出力の向上を実効あるもの にすることができる。また、掃気ポート4から排気ポート11へエアが吹き抜け るものの、このエア中には燃料成分は含まれていないので、排気ガスの掃気を確 実かつ効率良く行いながら燃費の低減およびエミッション性の改善を図ることが できる。
【0017】 次に、ピストン2が下死点近傍まで下降すると、下死点前10度で吸気弁10 が開き、下死点後10度で排気弁11が閉じて、吸気ポート8からはエアポンプ 13により過給された混合気がシリンダ1内に供給されて給気が始まる。このよ うに吸気ポート8の開期間と排気ポート9の開期間とのオーバラップが狭められ ることにより、吸気ポート8から排気ポート9への混合気の吹き抜けが可及的に 抑制されて、燃費の低減およびエミッション性の改善の実効を上げることができ る。
【0018】 さらに、ピストン2が下死点後50度まで上昇すると、掃気ポート4が閉じる が、吸気弁10はその後も下死点後80度まで開き続けて混合気がシリンダ1に 供給される。このことにより、吸気ポート8の開く期間が長くなるので、混合気 の充填量を増大させることができる。しかも、吸気ポート8にはエアポンプ13 によって過給された混合気が供給されるので、ピストン2上昇によるシリンダ圧 力の上昇に拘らず上記吸気ポート8の開期間の間混合気をシリンダ1に強制的に 充填することができるので、充填量を確実に増大させることができ、エンジン出 力を向上させることができる。
【0019】 また、上記コンプレッションリング27のシール作用によってクランクケース 21から掃気ポート4へオイルが流出するのを防止することができる。さらに、 掃気用の加圧エアや混合気は、クランクケース21を通らずに掃気ポート4や吸 気ポート8からシリンダ1に供給されるので、この加圧エアや混合気にオイルが 混入することもなく、よってオイル消費量を可及的に低減することができる。
【0020】 この場合、上記コンプレッションリング27によって掃気ポート4よりも上方 のシリンダ周壁上部へのオイルの供給が阻止されるものの、ピストン2の下降に 伴う クランクケース21内のブローバイガス圧力の上昇により、内方空間部20 に供給されたオイルがオイル通路29,29…から第2ピストンリング溝23に 供給されてピストン頂部2aにオイルが供給されるので、コンプレッションリン グ24,25を良好に潤滑でき、リングの摩耗や焼付きを確実に防止することが できる。また、上記オイル通路29,29…は掃気ポート4と対向しない部位に 開口しているので、つまり、周方向において掃気ポート4と対向しない部位にオ イル通路29,29…が開口しているので、 該オイル通路29,29…から供給 されたオイルが直接掃気ポート4に流出することはなく、オイル消費量低減の実 効を上げることができる。また、ピストン2の上昇に伴っては、ピストン頂部2 aのオイルは逆に、オイル通路29,29…を介してピストン2の内方空間部2 0に戻されるので、上記潤滑性の維持と共にオイルの掃気ポート4への流出を防 止することができる。
【0021】 さらに、図4は本考案を別のタイプの2サイクルエンジンに適用した場合の変 形例を示す。この2サイクルエンジンでは、シリンダ周壁3にピストン2により 開閉される複数の掃気ポート4′,4′,…を開口し、該掃気ポート4′,4′ ,…に接続された掃気通路12′にルーツブロアタイプの過給機30を配設する とともに、エンジン本体Eにおいてシリンダ1のピストン上死点位置(図4の実 線位置)より上方位置に、排気通路6を分岐した2本の排気ポート9,9を介し て開口し、該各排気ポート9に各ポート9を開閉する排気弁11,11を配設し 、過給機30で過給され掃気ポート4′からシリンダ1に供給された混合気によ ってシリンダ1を掃気するとともにこの混合気をシリンダ1に充填するようにし たユニフロー掃気方式2サイクルエンジンである。そして、ピストン上死点時に おいて上記掃気ポート4′,4′,…よりも下方に位置するピストンスカート部 2bにコンプレッションリング27′を設けたものである。本例においては、複 数の掃気ポート4′,4′,…からクランクケース21への過給混合気の吹き抜 けおよびこの複数の掃気ポート4′,4′,…へのオイルの流出を防止すること が可能であり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0022】 尚、本考案は2サイクルエンジンのみならず、4サイクルエンジンに対しても 広く適用可能である。
【0023】
【考案の効果】 以上説明したように、本考案によれば、ピストン上死点時においてシリンダ周 壁に開口する掃気ポートよりも下方に位置するピストンスカート部に設けたシー ルリングにより該掃気ポートを常にクランクケースに対してシールするとともに 、ピストンの内方空間部をオイル通路によりピストンリング溝に連通させるよう にしたので、ピストンリングのシリンダ周壁に対する潤滑性を良好に確保してそ の摩耗や焼付等を防止しながら、 過給気のクランクケースへの吹き抜けを防止し てピストン背面抵抗を可及的に低減し、エンジン出力を向上できるとともに、オ イルの掃気ポートへの流出を防止してオイル消費量を可及的に低減させることが できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施例を示す全体概略構成図である。
【図2】掃気ポートおよび吸・排気弁の開閉タイミング
を示す説明図ある。
【図3】要部拡大断面図である。
【図4】変形例を示す図1相当図である。
【符号の説明】
E エンジン本体 1 シリンダ 2 ピストン 2a ピストン頂部 2b ピストンスカート部 3 シリンダ周壁 4,4′ 掃気ポート 5 吸気通路 12,12′ 掃気通路 13 エアポンプ 20 内方空間部 21 クランクケース 22 第1ピストンリング溝 23 第2ピストンリング溝 24,25 コンプレッションリング(ピストンリン
グ) 26 シールリング溝 27,27′ コンプレッションリング(シールリン
グ) 29 オイル通路 30 過給機

Claims (1)

  1. 【実用新案登録請求の範囲】 【請求項1】 シリンダ周壁にピストンにより開閉され
    る掃気ポートが開口しており、該掃気ポートの上流側に
    過給機が配設されているエンジンにおいて、 ピストン上死点時において上記掃気ポートよりも上方に
    位置するピストン頂部の外周面にピストンリング溝が形
    成され、該ピストンリング溝にピストンリングが装着さ
    れており、 ピストン上死点時において上記掃気ポートよりも下方に
    位置するピストンスカート部の外周面にシールリング溝
    が形成され、該シールリング溝にシールリングが装着さ
    れており、 ピストン内方にピストン下方に開放せしめて形成されオ
    イルが供給される内方空間部と、一端が上記ピストンリ
    ング溝に開口し他端が上記内方空間部に開口して両者を
    連通せしめるオイル通路とが設けられていることを特徴
    とするエンジンのピストン構造。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN108590847A (zh) * 2018-07-03 2018-09-28 甘立武 曲轴顶置二冲程发动机

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JPS51105514A (ja) * 1974-12-24 1976-09-18 Furanku Barutaa
JPS58192948A (ja) * 1982-01-19 1983-11-10 バ−ナ−ド・フ−パ− エンジン用段付きピストン

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