JPH0579346A - 樹脂製インペラの締結方法 - Google Patents

樹脂製インペラの締結方法

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JPH0579346A
JPH0579346A JP23622591A JP23622591A JPH0579346A JP H0579346 A JPH0579346 A JP H0579346A JP 23622591 A JP23622591 A JP 23622591A JP 23622591 A JP23622591 A JP 23622591A JP H0579346 A JPH0579346 A JP H0579346A
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JP
Japan
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impeller
fastening
resin
torque
resin impeller
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JP23622591A
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English (en)
Inventor
Hikari Iio
尾 光 飯
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ターボチャージャのコンプレッサ側のインペ
ラ用材料として高分子材料ないしは高分子基複合材料よ
りなる樹脂を用いたときでも、このような樹脂を用いた
場合に顕著なクリープ現象による軸力低下を最小限度に
とどめ、軸力のばらつきも小さなものとする。 【構成】 コンプレッサ用樹脂製インペラ2を備えたタ
ーボチャージャの前記樹脂製インペラ2をタービンロー
タを接合したシャフト1に締結するに際し、前記樹脂製
インペラ2の締結を前記締結によって生じる軸力を樹脂
製インペラ2の使用最高温度における弾性限界荷重以下
として行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンプレッサ用樹脂製
インペラを備えたターボチャージャにおいて、タービン
ロータを接合したシャフトに前記樹脂製インペラを締結
するのに利用される樹脂製インペラの締結方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】従来、過給式エンジンに用いるターボチ
ャージャのコンプレッサとして、アルミニウム製インペ
ラを用いることがよく行われており、タービンロータを
接合したシャフトにこのようなアルミニウム製インペラ
を締結する方法としては、例えば、図8に示すように、
図示しないタービンロータを接合したシャフト11に、
アルミニウム製インペラ12の軸孔12aをスリーブ1
3の部分にまで挿通し、ボス部14およびワッシャ15
を介してナット16をねじこむ構成として、室温雰囲気
下で図示しないトルクレンチを用いて所定のトルク値で
ナット16を締め付ける方法を採用していた(なお、こ
の種の過給式エンジンに用いられるターボチャージャに
関しては、例えば、「新編 自動車工学便覧<第4編
>」昭和58年9月30日 社団法人自動車技術会発行
の第1−30頁〜第1−32頁の『2・4・2ターボ過
給機』に説明がなされている)。
【0003】ところで、その一方においては、コンプレ
ッサインペラやタービンロータの軽量化に関しても鋭意
研究がなされており、コンプレッサインペラとしては樹
脂製インペラを用いることが検討され、タービンロータ
としてはセラミックスや金属間化合物などを用いること
が検討されていて、一部実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来のアルミニウム製インペラに用いていたシャフ
トに対する締結方法を樹脂製インペラに流用した場合に
は、締め付けトルクの低下が発生する恐れがないとは言
えないという問題点があり、このような問題点を解決す
ることが課題としてあった。
【0005】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題にかん
がみてなされたものであり、ターボチャージャのコンプ
レッサ側のインペラ用材料として高分子材料ないしは高
分子基複合材料を用いた場合に生じる軸力の低下をトル
ク管理法およびトルクレンチ回転角度管理法のうちの少
なくとも一方もしくは両方を併用し、しかも、通常、こ
の種の課題を解決するために行われる締め付けトルクの
増加とは全く逆に、つまり、あえて締め付けトルクを減
少させることによって防止し、上記材料を採用した場合
に特に顕著なクリープ現象による軸力低下を最小限度に
留め、それでなおアルミニウム製インペラを使用した場
合と同時ないしはそれ以上の軸力を確保した上でさらに
軸力のばらつきの低減をも可能にする樹脂製インペラの
締結方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる樹脂製イ
ンペラの締結方法は、コンプレッサ用樹脂製インペラを
備えたターボチャージャの前記樹脂製インペラをタービ
ンロータを接合したシャフトに締結するに際し、前記樹
脂製インペラの締結を前記締結によって生じる軸力を樹
脂製インペラの使用最高温度における弾性限界荷重以下
として行う構成としたことを特徴としており、このよう
な樹脂製インペラの締結方法に係わる発明の構成をもっ
て前述した従来の課題を解決するための手段としてい
る。
【0007】また、本発明に係わる樹脂製インペラの締
結方法においては、コンプレッサ用樹脂製インペラを備
えたターボチャージャの前記樹脂製インペラをタービン
ロータを接合したシャフトに締結するに際し、前記樹脂
製インペラの締結をトルク管理法および回転角度管理法
のうち少なくとも一方を用いて行い、同じボス部断面積
を有するアルミニウム製インペラを締結する際に用いる
締め付けトルク値よりも小さなトルク値で締結する構成
とすることができ、より具体的には、例えば、締め付け
トルクを1.3kg・m以下、回転角度を83°以下の
範囲内で樹脂製インペラの締結を行う構成とすることが
できる。
【0008】さらに、本発明に係わる樹脂製インペラの
締結方法においては、コンプレッサ用樹脂製インペラを
備えたターボチャージャの前記樹脂製インペラをタービ
ンロータを接合したシャフトに締結するに際し、前記樹
脂製インペラの締結をトルク管理法および回転角度管理
法のうち少なくとも一方を用いて行い、アルミニウム製
インペラを締結する際に付加する軸力と同等ないしはそ
れ以上となる回転角度もしくは締め付けトルクを付加す
る構成とすることができ、より具体的には、例えば、ア
ルミニウム製インペラを締結する際に必要な軸力を加え
るのに要する回転角度の48%以上の回転角度あるいは
その回転角度に相当する締め付けトルクを樹脂製インペ
ラの締結に用いる構成とすることができる。
【0009】図1は、本発明に係わる樹脂製インペラの
締結方法の一実施態様を示す図であって、図1に示すよ
うに、図示しないタービンロータを接合したシャフト1
に、樹脂製インペラ2の軸孔2aをスリーブ3の部分に
まで挿通し、ボス部4およびワッシャ5を介してナット
6をねじこむ構成としており、樹脂製インペラ2はスリ
ーブ3とワッシャ5とに挟まれた状態でナット6を締め
付けることでタービンロータと接合されたシャフト1に
固定される。なお、ワッシャ5は樹脂製インペラ2のボ
ス部4の断面積と大差のない断面積を有している範囲内
では、その使用の有無が締結トルクの変化に大差を与え
ることは少ない。
【0010】この場合、ナット6を用いた締結作業は、
通常の場合、トルクレンチを用いて所定のトルク値で締
結する方法をとっているが、ターボチャージャ付き車両
の走行距離の増加とともに、換言すれば、ターボチャー
ジャの実作動時間の増加とともに、締結力が低下し、そ
の結果として、ターボチャージャの回転部位のバランス
が悪くなる可能性が考えられる。
【0011】このアンバランスは、締結力の低下によっ
てシャフト1に対する樹脂製インペラ2の取り付け位相
がわずかに変化し、この結果、初期の組立て状態におい
て達成されたバランスがくずれて、インペラ単体の持つ
アンバランスが顕在化して生じるものと思われる。
【0012】この場合、樹脂製インペラ2の有するアン
バランス値自体は非常に小さいが、周知のように、ター
ボチャージャは最高回転数で100,000rpm以上
に達する高速回転体であるために、上記のようなわずか
なアンバランスが非常に大きな振動Gの発生要因とな
る。
【0013】このようなターボチャージャ作動時に発生
する振動Gは、ターボチャージャ実用化初期にはあまり
問題とされなかったが、近年、車両の静粛性に対する要
望のたかまりに呼応してターボチャージャのアンバラン
スによって生じる異音の解消を考慮することが必要とな
ってきた。
【0014】ところで、現在、一般に使用されている図
8に示したようなアルミニウム製インペラ12に代わっ
て、図1に示したような樹脂製インペラ2を用いると、
高分子材料ないしは高分子基複合材料の場合には高温環
境下での応力緩和およびクリープ現象は宿命的現象であ
るために、軸力の低下は不可避とも言える。
【0015】この軸力の低下は、締結力の低下要因とな
るため、アルミニウム製インペラ以上に振動G変化に関
する問題は考慮されるべきである。
【0016】したがって、締結トルクの低下によって生
じる振動Gの増大を防止する締結方法の開発が望まれて
いた。
【0017】そこで、本発明者は、締結力の低下の少な
い樹脂製インペラの締結方法を開発するために、まず、
締結力の低下要因について検討を行い、主として以下の
2点に起因していることを明らかにした。
【0018】(1)ターボチャージャの高速回転時に発
生する遠心方向応力・軸方向応力によるクリープ現象 (2)高速走行後、アフターアイドルを行うことなくキ
ーオフした場合に発生するヒートソークバック現象にと
もなう応力緩和 ところで、樹脂製インペラの金属製シャフトへの締結と
いう課題を、樹脂製部品の金属部材への締結という課題
に置き替えてみると、この課題を解決する公知技術が既
無なわけではない。
【0019】このような課題を解決する最も良く知られ
た公知技術は、金属製、とくに軽量化の観点から望まし
くはアルミニウムあるいはマグネシウム等の軽金属製の
円筒パイプをインサート成形あるいは前記パイプの圧入
によって樹脂製インペラの軸孔まわりを金属部材とする
方法である。事実、樹脂製インペラの開発初期において
は、上記公知技術を用いて本発明が解決しようとする課
題の解決をはかってきた。
【0020】しかし、上記公知技術を用いた樹脂製イン
ペラを耐久試験に供してみたところ、次に示すような問
題点が明らかになった。
【0021】(1)金属製パイプのインサート成形を行
うと、樹脂材料と金属材料の熱膨張係数差に起因する残
留応力が加わるため、樹脂製インペラの耐久信頼性が低
下する。
【0022】(2)金属製パイプのインサート成形を行
うと、熱サイクルによって金属/樹脂界面の破壊が発生
する。
【0023】(3)金属製パイプの圧入を行うと、半径
方向および円周方向の応力成分が大きくなるために、高
速回転時の耐久信頼性が低下する。また、破壊回転数も
低下してしまう。
【0024】(4)インサート成形、圧入いずれの方法
も生産性が著しく低下する。
【0025】上記理由から、本発明者は軸孔に金属部材
を使用しない締結方法の検討を行った。
【0026】金属材料の締結に関する公知技術によれ
ば、こういった軸力低下の解決方法としては、締め付け
トルクの増大、シャフト径の増大がある。
【0027】しかし、意外なことに、締め付けトルクや
シャフト径の増大は、被締結体を高分子材料あるいは高
分子基複合材料とした場合にほとんど効果はなく、それ
どころか、シャフトの破損、緩みトルクのより大きな低
下等、むしろ信頼性を低下させる結果しか得られなかっ
た。
【0028】以上のように、振動Gの悪化を発生するこ
となく、しかも、耐久信頼性や生産性をそこなうことな
く、樹脂製インペラをシャフトに締結するには、公知技
術の流用では解決が困難であり、本発明者は以下のよう
な各試験を実施することによって、樹脂製インペラを締
結する最適の方法を見いだした。
【0029】高分子材料および高分子基複合材料の締め
付けトルクの低下には、クリープ現象・応力緩和現象が
大きく係わっているために、締め付けトルクや軸力を決
定するには樹脂製インペラとしての圧縮破壊荷重や圧縮
破壊変位量等の物性値の把握が必要である。
【0030】そこで、(株)島津製作所製DCS−10
Tオートグラフ試験機を使用して樹脂製インペラの実体
圧縮試験を実施した。なお、ここで用いた樹脂製インペ
ラの材料は、30wt%炭素短繊維強化ポリエーテルケ
トン/ポリエーテルイミド(PEK/PEI−CF3
0)であり、ポリエーテルケトン樹脂には英国ICI社
製の商品名VICTREX‘REK’を使用し、ポリエ
ーテルイミド樹脂には、General Electr
ic Plastics社製の商品名“ULTEM”を
使用した。さらに、炭素短繊維としては東邦レーヨン製
の商品名HTA‘BESFIGHT’を使用した。さら
にまた、ポリエーテルケトンとポリエーテルイミドの比
率は重量比で8:2である(上記材料を使用したより詳
細な樹脂製インペラの製造方法は、例えば、特願平1−
90828号に説明されている)。
【0031】樹脂製インペラの実体圧縮試験は、試験速
度1mm/minで図2〜図5中に記載した試験温度で
実施した。
【0032】図1に示したように、樹脂製インペラ2の
断面積は一定でないために、圧縮強度は、各温度での破
壊荷重を最小断面積を有するボス部の断面積(この場合
は約140mm2 )で割った値と定義した。同様に、圧
縮弾性率は、変位量を樹脂製インペラの高さで割った値
を歪みと定義し、上記で定義した応力値を用いて計算し
た。
【0033】図2には樹脂製インペラの圧縮変位量と荷
重との関係を示し、図3には試験温度と圧縮強度との関
係を示し、図4には試験温度と圧縮弾性率との関係を示
し、図5には試験温度と圧縮弾性限界との関係を示す。
【0034】図2〜図5の結果からもわかるように、樹
脂製インペラの場合は高温時の強度・弾性率の低下が大
きく、前記したような金属材料を締結する場合にしばし
ば使用される締め付けトルクを大きくする方法を採用す
ると、軸力/破壊荷重の比が非常に大きくなるために、
クリープ現象が顕著になることがわかる。また、シャフ
ト径を大きくすると必然的に座面の面積が減少するため
に圧縮応力が大きくなり、よりへたりが大きくなること
も容昜に推定される。したがって、締め付けトルクの増
大やシャフト径の増大は必ずしも適切とは言えないこと
が分かる。
【0035】そこで、樹脂製インペラとアルミニウム製
インペラを用いた場合の締め付けトルクとトルクレンチ
回転角度との関係について測定を行った。
【0036】この場合の測定は、プリトルク0.3kg
・mを負荷した後、樹脂製インペラとアルミニウム製イ
ンペラを用いる場合についてそれぞれ締め付けトルクと
トルクレンチ回転角度との関係を調べた。なお、ナット
/シャフト間のフリクショントルクが約0.1kg・m
程度のため、プリトルク0kg・mの状態からの締め付
けトルクとトルクレンチ回転角度との関係は測定できな
かった。
【0037】図6にその結果を示す。このとき、図6に
おいて、荷重約250kgで荷重−変位曲線が屈折して
いるのは圧縮治具のバックラッシュによるものであり、
弾性限界を示すものではない。
【0038】図6に示すように、樹脂製インペラを締結
する場合に、同一締め付けトルクを得るのに要するトル
クレンチ回転角度は、アルミニウム製インペラを締結す
る場合の約2倍に達する。
【0039】以上述べてきた試験結果を総合すると、樹
脂製インペラの締結方法は以下の項目を満たしているこ
とが望ましい。
【0040】(1)金属材料のナットの緩み対策として
しばしば使用される締め付けトルクの増大は効果が小さ
く、逆にへたりを助長する可能性がある。
【0041】(2)シャフト径の増大はナット座面の接
触面積を減少させるために、ナット座面のへたりを促進
する(シャフト径の増大に応じたボス径の増大を行えば
面積等価にできるが、合理的な設計ではない)。
【0042】(3)アルミニウム製インペラを締結する
場合に使用されているトルク値で樹脂製インペラの締結
を行うと、軸力過大となり、シャフト破損の可能性が大
きくなる。
【0043】(4)締め付けトルクを大きくすると軸力
が樹脂製インペラの弾性限界を超えてしまうために、永
久変形(つまり、‘へたり’)の要因となる。このた
め、アルミニウム製インペラの締め付けトルクよりかな
り小さな締め付けトルク設定にすることが必要であり、
かつ十分である。
【0044】(5)高分子材料および高分子基複合材料
は特に高温時のクリープが著しいために、軸力は使用最
高温度における樹脂製インペラの弾性限界以下となるよ
うに設定することが必要である。
【0045】(6)樹脂製インペラを締結する場合はア
ルミニウム製インペラを締結する場合に比べると比較的
小さな締め付けトルクで大きな軸力を発生させることが
容易である。この事実は、締め付けトルク管理法を使用
した場合、わずかな締め付けトルクのばらつきが大きな
軸力ばらつきとなって反映され、また、へたりによって
ナットの緩みが発生する可能性が大きくなることを意味
している。このため、ナットの締め付けは締め付けトル
クではなくトルクレンチ回転角度で管理するのがより望
ましい。
【0046】
【発明の作用】本発明に係わる樹脂製インペラの締結方
法では、コンプレッサ用樹脂製インペラを備えたターボ
チャージャの前記樹脂製インペラをタービンロータを接
合したシャフトに締結するに際し、前記樹脂製インペラ
の締結を前記締結によって生じる軸力を樹脂製インペラ
の使用最高温度における弾性限界荷重以下として行うよ
うにしており、あえて締め付けトルクを減少させるよう
にしているので、樹脂をインペラの素材とした場合に特
に顕著にあらわれるクリープ現象による軸力低下が最小
限のものとなり、アルミニウム製インペラを締結する場
合に比べて比較的小さな締め付けトルクで大きな軸力を
発生しうるものとなり、軸力のばらつきも低減されるも
のとなる。
【0047】
【実施例】本発明に係わる樹脂製インペラの締結方法の
実施例を比較例と共に説明する。
【0048】本発明の実施例および比較例においては、
上記(1)〜(6)に示した条件の一部ないしは全部を
満たす締結方法ならびに従来から行われているアルミニ
ウム製インペラを締結する締結方法を用いて緩みトルク
の経時変化を測定した。
【0049】
【表1】
【0050】(比較例1)表1のNo.1に示している
ように、従来からアルミニウム製インペラを締結する場
合に使用されているトルク管理法を用いて締め付けトル
ク1.5kg・m(アルミニウム製インペラを締結する
場合に用いられる締め付けトルク値の典型的な一例)で
樹脂製インペラの締結を行い、後記するように経過時間
と緩みトルクとの関係を測定した。
【0051】ここで使用した樹脂製インペラは、前記し
たポリエーテルケトンとポリエーテルイミドを8:2の
重量比でブレンドしたポリマーアロイを樹脂として用い
たものであり、これに重量分率で30wt%に相当する
前記炭素短繊維を添加した材料を用いた。
【0052】また、樹脂製インペラのボス部直径は1
4.8mm、軸孔直径は6.4mmであり、ナットには
現在アルミニウム製インペラを締結する際に使用してい
る緩み止め樹脂付きのナットを用いた。また、シャフト
のネジ部はM6の逆ネジに相当するものである。
【0053】(比較例2)表1のNo.2に示している
ように、従来からアルミニウム製インペラを締結する場
合に使用されているトルク管理法を用いて締め付けトル
ク2.0kg・m(アルミニウム製インペラを締結する
場合に用いても支障のない締め付けトルクであるが、ネ
ジ径を考慮するとやや過大な締め付けトルクである)で
樹脂製インペラの締結を行い、後記するように経過時間
と緩みトルクとの関係を測定した。なお、この比較例2
で使用した樹脂製インペラの材料および各部寸法は比較
例1と同じである。
【0054】(実施例1)表1のNo.3に示している
ように、従来からアルミニウム製インペラを締結する場
合に使用されているトルク管理法を用いて締め付けトル
ク1.3kg・m(この時の軸力は160℃における樹
脂製インペラの圧縮弾性限界荷重にほぼ相当する)で樹
脂製インペラの締結を行い、後記するように経過時間と
緩みトルクとの関係を測定した。なお、この実施例1で
使用した樹脂製インペラの材料および各部寸法は比較例
1と同じである。
【0055】(比較例3)表1のNo.4に示している
ように、トルク管理法と回転角度管理法を併用して0.
3kg・mで締め付けた後、トルクレンチ回転角度10
0°(この方法によって得られる締め付けトルクは単に
トルク管理法を用いて1.5kg・mの締め付けトルク
を与えた場合にほぼ一致する)で樹脂製インペラの締結
を行い、後記するように経過時間と緩みトルクとの関係
を測定した。なお、この比較例3で使用した樹脂製イン
ペラの材料および各部寸法は比較例1と同じである。
【0056】(実施例2)表1のNo.5に示している
ように、トルク管理法と回転角度管理法を併用して0.
3kg・mで締め付けた後、トルクレンチ回転角度83
°(この方法によって得られる締め付けトルクは単にト
ルク管理法を用いて1.3kg・mの締め付けトルクを
与えた場合=実施例1にほぼ一致する)で樹脂製インペ
ラの締結を行い、後記するように経過時間と緩みトルク
との関係を測定した。なお、この実施例2で使用した樹
脂製インペラの材料および各部寸法は比較例1と同じで
ある。
【0057】(実施例3)表1のNo.6に示している
ように、トルク管理法と回転角度管理法を併用して0.
3kg・mで締め付けた後、トルクレンチ回転角度55
°(この方法によって得られる締め付けトルクは単にト
ルク管理法を用いて1.0kg・mの締め付けトルクを
与えた場合にほぼ一致する)で樹脂製インペラの締結を
行い、後記するように経過時間と緩みトルクとの関係を
測定した。なお、この実施例3で使用した樹脂製インペ
ラの材料および各部寸法は比較例1と同じである。
【0058】(実施例4)表1のNo.7に示している
ように、トルク管理法と回転角度管理法を併用して0.
3kg・mで締め付けた後、トルクレンチ回転角度48
°(この方法によって得られる締め付けトルクは単にト
ルク管理法を用いて0.8kg・mの締め付けトルクを
与えた場合にほぼ一致する。なお、本締結条件で軸力は
アルニウム製インペラを締結する場合に使用される軸力
とほぼ同値となる)で樹脂製インペラの締結を行い、後
記するように経過時間と緩みトルクとの関係を測定し
た。なお、この実施例4で使用した樹脂製インペラの材
料および各部寸法は比較例1と同じである。
【0059】(評価試験例)実施例1〜4および比較例
1〜3で締結を終えた各樹脂製インペラを供試体とし、
経過時間と緩みトルクとの関係を測定した。
【0060】この評価試験においては、ヒートソークバ
ック現象を考慮して、160℃に保持した小型オーブン
中に樹脂製インペラ締結体を放置し、所定の時間が経過
した後に小型オーブンより取り出し、室温下で緩みトル
クの計測を行った。そして、データはそれぞれ5点の平
均値を求めてこれを計測値とした。なお、ばらつきのデ
ータとしては、緩みトルクのばらつきよりも軸力のばら
つきの方が重要であるため、シャフト部に張り付けたひ
ずみゲージによって測定した軸力の平均値を基準とした
プラス側およびマイナス側のばらつきを平均緩みトルク
のデータとともに示した。また、一度使用した樹脂製イ
ンペラおよび緩み止め付きナットは再使用しなかった。
これらの結果を図7に示す。
【0061】また、図7の見かたを表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】この評価試験例において、上記実施例およ
び比較例では、軸力がアルミニウム製インペラを締結す
る場合と同等以上の値に保持していることを評価基準と
している。また、図7においてトルク管理法と回転角度
管理法とを併用する実施例ならびに比較例では、初期ト
ルク(つまり、経過時間0時間のトルク)はトルク管理
法換算で表示した。
【0064】図7に示したように、比較例2の場合には
軸力が大きすぎるものとなっているため、M6(逆ネ
ジ)はトルクレンチを用いた締め付け作業中に2.0k
g・m到達前後でシャフトのネジ山部が破損したため、
締め付けトルク2.0kg・mのみを表わしている。ま
た、比較例1の場合にもアルミニウム製インペラの締結
に用いられるような1.5kg・m前後の大きな締め付
けトルクとしているため軸力が過大であり、緩みトルク
の低下は著しい。この原因は、図2に示したように締め
付けトルクをアルミニウム製インペラと同等程度にしよ
うとすると、軸力が樹脂製インペラの使用最高温度にお
ける樹脂製インペラの圧縮弾性限界荷重を上回ってしま
うため、ナット座面において永久変形(へたり)を生
じ、急激なトルク低下(軸力低下)が発生するためであ
る。
【0065】したがって、金属部材を締結する際にしば
しば用いられる締め付けトルクを大きくするという対策
は全く逆の結果をもたらし、しかも図6に示したように
樹脂製インペラを締結する場合にはアルミニウム製イン
ペラを締結する場合よりも締め付けトルク等価では軸力
が大きくなってしまうために、比較例2に示したような
シャフトの破損が発生する。
【0066】逆に、締め付けトルクをアルミニウム製イ
ンペラを締結する場合よりも小さくすると、緩みトルク
の低下は減少し、実施例1に示したように軸力を使用最
高温度下でも樹脂製インペラの圧縮弾性限界荷重以下と
なるように設定すれば、クリープ現象・応力緩和現象が
生じても振動Gの劣化が発生しない十分なトルク値を維
持することができる。
【0067】ただし、比較例1と比較例3、実施例1と
実施例2の比較からもわかるように、初期の締め付けト
ルクがほとんど同じ値であってもトルク管理法と回転角
度管理法を併用したほうがトルク低下が小さく、しか
も、ばらつきも少ない。この現象は、図6に示したよう
に、樹脂製インペラを締結する場合には同一締め付けト
ルクを得るのにかなり大きなトルクレンチ回転角度を必
要とする特性に起因している。
【0068】なお、図7に示したように、実施例3・実
施例4に見られるごとくトルク管理法と回転角度管理法
を併用してトルク管理法相当で非常に小さなトルクとな
るようにすると、トルク低下は皆無に等しくしかもばら
つきも小さいことが認められた。
【0069】このように、本発明に係わる樹脂製インペ
ラの締結方法では、締結に用いるナット座面におけるへ
たりの発生を著しく減少させることができ、さらには樹
脂製インペラを締結する際にトルク管理法を用いてアル
ミニウム製インペラを締結する場合と同等ないしはそれ
以上の締め付けトルクを加えるとむしろ急激なトルク低
下が発生することにかんがみ、トルク管理法を用いる場
合にはアルミニウム製インペラを締結する場合よりも小
さな締め付けトルクに設定することによってトルクの減
少代を改善することが可能となった。
【0070】また、樹脂製インペラを締結する場合には
アルミニウム製インペラを締結する場合と比較すると同
一締め付けトルクを得るのに必要なトルクレンチ回転角
度が大きくなることにかんがみ、トルク管理法と回転角
度管理法を併用することによって軸力のばらつきを大き
く改善することが可能となった。
【0071】そして、上記樹脂製インペラの締結方法の
うち少なくとも一方法を実施することによって、樹脂製
インペラのナットによる締結状態を著しく改善すること
が可能となり、ナットの緩みによって発生する圧縮効率
・加速性能の低下や異音の発生を防止することが可能と
なった。
【0072】さらにまた、上記実施例および比較例にお
いては、上記条件を満たす最大軸力は約2000kgf
であり、締め付けトルクは最大1.3kg・m,トルク
レンチ回転角度は0.3kg・m与えた後では83°以
下である。
【0073】しかし、この値は当然のことながら樹脂製
インペラの材質やボス部の直径、軸孔直径、ネジのサイ
ズ、締結を行う雰囲気温度等に依存しており、これらの
条件が変わることによって上記値は当然変化し得るもの
であって、上記した軸力・締め付けトルク・トルクレン
チ回転角度の上限値を超えることがただちに本発明の効
果を無効とするものではない。
【0074】また、アルミニウム製インペラを締結する
際に必要な軸力を加えるのに要する回転角度の48%以
上の回転角度あるいはその回転角度に相当する締め付け
トルクを樹脂製インペラの締結に用いるようにするのが
望ましいのは、図6に示したように、実験に使用した樹
脂製インペラとアルミニウム製インペラとでは同一締め
付けトルクを得るのに必要なトルクレンチ回転角度がア
ルミニウム製インペラの場合を100とすると樹脂製イ
ンペラの場合に48%で等価となるためである。
【0075】さらにまた、本発明方法は、上述した樹脂
製インペラに限らず、フランジ構造を有する高分子材料
あるいは高分子基複合材料製部品の締結にも有効であ
る。
【0076】
【発明の効果】本発明に係わる樹脂製インペラの締結方
法では、コンプレッサ用樹脂製インペラを備えたターボ
チャージャの前記樹脂製インペラをタービンロータを接
合したシャフトに締結するに際し、前記樹脂製インペラ
の締結を前記締結によって生じる軸力を樹脂製インペラ
の使用最高温度における弾性限界荷重以下として行う構
成としたから、ターボチャージャのコンプレッサ側のイ
ンペラ用材料として高分子材料ないしは高分子基複合材
料を用いたときでも、この場合に生じる軸力の低下を締
め付けトルクの減少によって防止し、上記材料を採用し
た場合に特に顕著なクリープ現象による軸力低下を最小
限度に留めることが可能であり、しかもアルミニウム製
インペラを使用した場合と同等ないしはそれ以上の軸力
を確保した上でさらに軸力のばらつきの低減をも可能に
するという著しく優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる樹脂製インペラの締結方法の一
実施態様による締結構造を例示する断面説明図である。
【図2】樹脂製インペラの実体圧縮試験を行った場合の
荷重と圧縮変位との関係およびその試験温度依存性を示
すグラフである。
【図3】樹脂製インペラの実体圧縮試験によって得られ
た実体圧縮強度の試験温度依存性を示すグラフである。
【図4】樹脂製インペラの実体圧縮試験によって得られ
た樹脂製インペラの実体圧縮弾性率の温度依存性を示す
グラフである。
【図5】樹脂製インペラの実体圧縮試験によって得られ
た実体圧縮弾性限界の温度依存性を示すグラフである。
【図6】樹脂製インペラおよびアルミニウム製インペラ
を締結する際の締め付けトルクのトルクレンチ回転角度
依存製を示すグラフである。
【図7】本発明実施例および比較例で採用した締結方法
を用いた場合の平均緩みトルクおよび軸力ばらつきの経
過時間依存性を示すグラフである。
【図8】従来のアルミニウム製インペラの締結構造を例
示する断面説明図である。
【符号の説明】
1 シャフト 2 樹脂製インペラ 2a 樹脂製インペラの軸孔 3 スリーブ 4 ボス部 5 ワッシャ 6 ナット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F04D 29/28 L 7314−3H

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンプレッサ用樹脂製インペラを備えた
    ターボチャージャの前記樹脂製インペラをタービンロー
    タを接合したシャフトに締結するに際し、前記樹脂製イ
    ンペラの締結を前記締結によって生じる軸力を樹脂製イ
    ンペラの使用最高温度における弾性限界荷重以下として
    行うことを特徴とする樹脂製インペラの締結方法。
  2. 【請求項2】 コンプレッサ用樹脂製インペラを備えた
    ターボチャージャの前記樹脂製インペラをタービンロー
    タを接合したシャフトに締結するに際し、前記樹脂製イ
    ンペラの締結をトルク管理法および回転角度管理法のう
    ち少なくとも一方を用いて行い、同じボス部断面積を有
    するアルミニウム製インペラを締結する際に用いる締め
    付けトルク値よりも小さなトルク値で締結することを特
    徴とする樹脂製インペラの締結方法。
  3. 【請求項3】 コンプレッサ用樹脂製インペラを備えた
    ターボチャージャの前記樹脂製インペラをタービンロー
    タを接合したシャフトに締結するに際し、前記樹脂製イ
    ンペラの締結をトルク管理法および回転角度管理法のう
    ち少なくとも一方を用いて行い、アルミニウム製インペ
    ラを締結する際に付加する軸力と同等ないしはそれ以上
    となる回転角度もしくは締め付けトルクを付加すること
    を特徴とする樹脂製インペラの締結方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013515208A (ja) * 2009-12-22 2013-05-02 ボーグワーナー インコーポレーテッド 排気ガスターボ過給機のシャフト組立体
US10975878B2 (en) 2016-03-03 2021-04-13 Ihi Corporation Rotary machine
US10982680B2 (en) 2016-09-02 2021-04-20 Ihi Corporation Turbocharger impeller
CN114776386A (zh) * 2022-04-29 2022-07-22 中国北方发动机研究所(天津) 一种钛铝涡轮与转轴的锥体连接结构

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