JPH0578392A - 抗菌性ペプチドおよび抗菌剤 - Google Patents

抗菌性ペプチドおよび抗菌剤

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JPH0578392A
JPH0578392A JP4055741A JP5574192A JPH0578392A JP H0578392 A JPH0578392 A JP H0578392A JP 4055741 A JP4055741 A JP 4055741A JP 5574192 A JP5574192 A JP 5574192A JP H0578392 A JPH0578392 A JP H0578392A
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光徳 高瀬
Beramii Uein
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恒治 山内
Hiroyuki Wakabayashi
裕之 若林
Yukiko Tokita
由起子 時田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 副作用がなく、少量で抗菌効果を有する抗菌
性ペプチド、抗菌剤、抗菌性ペプチド配合物、およびこ
の抗菌剤をもちいて物品を処理する方法を提供する。 【構成】 Lys-X1-X2-X3-X4-Gln-X5-X6-Met-X7-Lys(こ
こでX1〜X6は、システイン残基を除く任意のアミノ酸残
基、X7はL-アルギニン残基またはL-リジン残基をそれぞ
れ示す)のアミノ酸配列を含む抗菌性ペプチドまたはそ
の誘導体、これらを有効成分として少なくとも1μMの
濃度で含有する抗菌剤、抗菌性ペプチド配合剤、抗菌剤
で物品を処理する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、新規な抗菌性ペプチ
ド、このペプチドを含有する抗菌剤、このペプチドを含
有する抗菌性ペプチド配合物、およびこの抗菌剤を用い
て物品を処理する方法に関するものである。さらに詳し
くは、この発明は、新規な抗菌性ペプチドまたはその誘
導体、このペプチド、またはこのペプチドの誘導体の塩
類、またはそれらの2以上の混合物を有効成分として含
有する抗菌剤、このペプチド、またはこのペプチドの誘
導体の塩類、またはそれらの2以上の混合物を有効成分
として含有する抗菌性ペプチド配合物、およびこの抗菌
剤で物品を処理する方法に関するものである。
【0002】本明細書において、アミノ酸およびペプチ
ドはアイユーピーエーシー・アイユービー生化学命名委
員会(IUPAC-IUB CBN )で採用された略記法に基づいて
表示され、例えば次の略号が使用される。 Ala−:L−アラニン残基 Gln−:L−グルタミン残基 Arg−:L−アルギニン残基 Glu−:L−グルタミン酸残基 Asn−:L−アスパラギン残基 Gly−:L−グリシン残基 Asp−:L−アスパラギン酸残基 His−:L−ヒスチジン残基 Cys−:L−システイン残基 Ile−:L−イソロイシン残基 Leu−:L−ロイシン残基 Ser−:L−セリン残基 Lys−:L−リジン残基 Thr−:L−スレオニン残基 Met−:L−メチオニン残基 Trp−:L−トリプトファン残基 Phe−:L−フェニルアラニン残基 Tyr−:L−チロシン残基 Pro−:L−プロリン残基 Val−:L−バリン残基
【0003】
【従来の技術】従来より、種々の微生物に対して抗菌作
用を有するペプチドについては多数の発明が知られてい
る。例えば、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に有効な
ホスホノトリペプチド(特開昭57-106689 号公報)、ホ
スホノジペプチド誘導体(特開昭58-13594号公報)、環
状ペプチド誘導体(特開昭58-213744 号公報)、抗菌お
よび抗ウイルス作用を示すペプチド(特開昭59-51247号
公報)、酵母に有効なポリペプチド(特開昭60-130599
号公報)、グラム陽性菌に有効な糖ペプチド誘導体(特
開昭60-172998 号公報、特開昭61-251699 号公報、特開
昭63-44598号公報)、グラム陽性菌に有効なオリゴペプ
チド(特開昭62-22798号公報)、ペプチド系抗生物質
(特開昭62-51697号公報、特開昭63-17897号公報)、そ
の他北米産カブトガニの血球から抽出した抗菌性ペプチ
ド(特開平2-53799 号公報)、蜜蜂の血リンパから単離
した抗菌性ペプチド(特開平2-500084号公報)等が知ら
れている。
【0004】一方、ラクトフェリン(以下LFと記載す
る)は涙、唾液、末梢血、乳汁等に含まれている天然の
鉄結合性蛋白質であり、大腸菌、カンジダ菌、クロスト
リジウム菌等の有害微生物に対して抗菌作用を示すこと
が知られている[ジャーナル・オブ・ペディアトリクス
(Journal of Pediatrics )、第94巻、第1ページ、
1979年]。しかしながら、LFの加水分解物から単離さ
れ、特定のアミノ酸配列を有するペプチドの抗菌作用に
ついては、文献未記載であり、従来知られていない。更
に上記のアミノ酸配列を有するペプチドにおいて、抗菌
性を有する特定のアミノ酸配列については、全く知られ
ていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この発明の発明者等
は、望ましくない副作用等(例えば抗原性等)がなく、
耐熱性があり、かつ強い抗菌作用を有する物質を自然界
から安価に単離することを企図し、チーズ製造時の副産
物であるホエーに着目し、この中に含まれているLFの
抗菌性について研究を行い、LFを酸または酵素により
加水分解した分解物が未分解のLFよりも強い耐熱性お
よび抗菌性を有することを見出し、既に特許出願を行っ
た(特願平2-13315 号。以下先願1と記載する)。先願
1を出願後、本発明者等は、更にLFの加水分解物中に
存在する抗菌性物質の究明を行っていたが、特定のアミ
ノ酸配列を有する新規な抗菌性ペプチドを単離し、既に
特許出願を行った(特願平2-238364号。以下先願2と記
載する)しかしながら、このような新規な抗菌性ペプチ
ドについては、その抗菌性を有するアミノ酸配列の解明
が十分ではなかった。
【0006】この発明は、以上の通りの事情に鑑みてな
されたものであり、従来技術および先願発明の課題を解
消し、LFの加水分解物から単離または化学的に合成す
ることのできる特定の抗菌性アミノ酸配列を有する新規
な抗菌性ペプチドと、このペプチドを有効成分として含
有する抗菌剤、このペプチドを有効成分として含有する
抗菌性配合物、およびこのペプチドを有効成分として含
有する抗菌剤で物品を処理する方法を提供することを目
的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、少なくとも下記のアミノ酸配列
を含む抗菌性ペプチド、および少なくとも下記のアミノ
酸配列を含むペプチド、それらの薬理学的に許容される
塩類およびそれらの2以上の混合物からなる群より選択
される物質を有効成分として含有することを特徴とする
抗菌剤、この抗菌性ペプチドを有効成分として含有する
抗菌性ペプチド配合物、およびこのペプチドで物品を処
理する方法を提供する。 Lys-X1-X2-X3-X4-Gln-X5-X6-Met-X7-Lys (ここでX1〜X6は、システイン残基を除く任意のアミノ
酸残基、X7は、L−アルギニン残基またはL−リジン残
基、をそれぞれ示す)。
【0008】またこの発明は、上記抗菌剤、および抗菌
性ペプチド配合物が、有効成分を少なくとも1マイクロ
モル(μM)の濃度で含有することを好ましい態様とし
てもいる。以下、この発明の構成および作用、効果につ
いて詳しく説明する。この発明の抗菌性ペプチドは、常
法により分離した牛LFまたは市販のLFから酵素で加
水分解し、製造することもでき、常法により化学的に合
成することもできる。
【0009】この発明の抗菌性ペプチドを化学的に合成
する例を示せば次のとおりである。ペプチド自動合成装
置(例えば、ファルマシアLKBバイオテクノロジー社
製。LKB Biolynx 4170)を用い、シェパード等[ジャー
ナル・オブ・ケミカル・ソサイエティー・パーキンI
(Journal of Chemical Society Perkin I),第538
ページ、1981年]による固相ペプチド合成法に基づいて
合成する。アミン官能基を9−フルオレニルメトキシカ
ルボニル(Fmoc)基で保護したアミノ酸(以下Fmoc−ア
ミノ酸と略記する)に、N,N′−ジシクロヘキシルカ
ルボジイミドを添加して所望のアミノ酸の無水物を生成
させ、このFmoc−アミノ酸無水物を合成に用いる。ペプ
チド鎖を製造するためにC−末端のアミノ酸残基に相当
するFmoc−アミノ酸無水物を、そのカルボキシル基を介
し、ジメチルアミノピリジンを触媒としてウルトロシン
A樹脂(ファルマシアLKBバイオテクノロジー社製)
に固定する。次いでこの樹脂をピペリジンを含むジメチ
ルホルムアミドで洗浄し、C−末端アミノ酸のアミン官
能基の保護基を除去する。のち所望のペプチドのアミノ
酸配列のC−末端から2番目のアミノ酸残基に相当する
Fmoc−アミノ酸無水物を前記C−末端アミノ酸残基を介
して樹脂に固定された1番目のアミノ酸の脱保護アミン
官能基にカップリングさせる。以下同様にして順次所望
のアミノ酸を固定する。全部のアミノ酸のカップリング
が終了し、所望のアミノ酸配列のペプチド鎖が形成され
た後、溶媒[例えば、94%(重量。以下特に断りのな
い限り同じ)トリフルオロ酢酸、5%フェノールおよび
1%エタンジオールからなる]でアセトアミドメチル以
外の保護基の除去およびペプチドの脱離を行い、高速液
体クロマトグラフ法によりペプチドを精製する。
【0010】この発明の抗菌性ペプチドを酵素による加
水分解で製造する例を示せば次のとおりである。LFを
0.5〜20%、望ましくは5〜15%の濃度で水、殺
菌水、精製水等に溶解し、酵素を添加し、加水分解を行
う。使用する酵素には特に制限はなく、市販品、例えば
モルシンF(商標。盛進製薬社製。至適pH2.5〜3.
0)、豚ペプシン(和光純薬社製。至適pH2〜3)、ス
ミチームAP(商標。新日本化学社製。至適pH3.
0)、アマノA(商標。天野製薬社製。至適pH7.
0)、トリプシン(ノボ社製。至適pH8.0)等のエン
ドペプチダーゼを単独または任意に組合わせて使用する
ことができる。更にこれらの酵素に、例えば特公昭48-
43878 号公報記載の方法により得られる乳酸菌由来のエ
キソペプチダーゼ、ペプチダーゼを含有する市販の醤油
酵素(田辺製薬社製)を組合わせて使用することもでき
る。酵素の量は、基質に対して0.1〜5.0%の範囲
が望ましい。
【0011】LF溶液のpHを使用する酵素の至適pH付近
に調整し、所定量の酵素を添加し、15〜55℃、望ま
しくは30〜50℃で30〜600分間、望ましくは6
0〜300分間保持し、加水分解する。のち反応液をそ
のまままたは中和し、常法により酵素を失活させ、必要
に応じて中和し、脱色することもできる。以上のよにう
して得られたLF加水分解物から通常のクロマトグラフ
法等により所望の抗菌性ペプチドを単離することができ
る。例えば、TSKゲルODS120T(東ソー社製)
を用いた高速液体クロマトグラフ法では、アセトニトリ
ルのグラジエントで単離することができる。
【0012】以上のようにして得た抗菌性ペプチド、そ
れらの薬理学的に許容される塩類、またはそれらの2種
以上の混合物を有効成分として少なくとも1マクロモ
ル、望ましくは5〜20マイクロモル、の濃度で含有さ
せ、この発明の抗菌剤を得ることができる。この発明に
よる抗菌性ペプチドまたはその誘導体は、そのまま人ま
たは動物に投与することができ、あるいは食品、医薬品
(例えば、目薬、乳房炎治療剤、下痢予防剤、水虫薬
等)、医薬部外品(例えば、口中洗浄剤、制汗剤、養毛
剤等)、各種化粧品(例えば、整髪料等)、各種歯磨用
品(例えば、歯磨、歯ブラシ等)、各種生理用品、各種
ベビー用品(例えば、オムツ等)、各種高齢者用品(例
えば、入れ歯固定剤、オムツ等)、各種洗剤(例えば、
石鹸、薬用石鹸、シャンプー、リンス、洗濯用洗剤、キ
ッチン用洗剤、住宅用洗剤等)、各種除菌用品(例え
ば、キッチン用除菌ペーパー、トイレット用除菌ペーパ
ー等)、飼料、それらの原料となる素材、その他一般に
微生物の増殖の防止、抑制が望まれるあらゆる物品に添
加、配合、噴霧、付着、被覆、含浸等を行ってもよい。
【0013】また、この発明による抗菌性ペプチドまた
はその誘導体は、各々単独または他の抗菌剤と併用して
食品、医薬品(例えば、目薬、乳房炎治療剤、下痢予防
剤、水虫薬等)、医薬部外品(例えば、口中洗浄剤、制
汗剤、養毛剤等)、各種化粧品(例えば、整髪料等)、
各種歯磨用品(例えば、歯磨、歯ブラシ等)、各種生理
用品、各種ベビー用品(例えば、オムツ等)、各種高齢
者用品(例えば、入れ歯固定剤、オムツ等)、各種洗剤
(例えば、石鹸、薬用石鹸、シャンプー、リンス、洗濯
用洗剤、キッチン用洗剤、住宅用洗剤等)、各種除菌用
品(例えば、キッチン用除菌ペーパー、トイレット用除
菌ペーパー等)、飼料、それらの原料となる素材、その
他一般に微生物の増殖の防止、抑制が望まれるあらゆる
物品の処理に用いることができる。
【0014】次に試験例を示してこの発明をさらに詳し
く説明する。 (試験例1)この試験は、抗菌性ペプチドの抗菌活性を
調べるために行った。 (1)試料の調製 実施例1〜5と同一の方法により化学的に合成した試料
1〜5を用いた。
【0015】(2)試験方法 1) 前培養液の調製 大腸菌(Escherichia coli)の保存スラントから1白金
耳を採取し、標準寒天培地(日水製薬社製)に塗抹して
35℃で16時間好気培養し、標準寒天培地の表面に生
育したコロニーを白金耳でかき取り、滅菌生理食塩水に
懸濁し、分光光度計(日立製作所製)で測定した濁度
(O. D. ; 660nm)を1.0 に調整し、前培養液を調製し
た。
【0016】2) 基本培地の調製 バクトカジトン(ディフコ社製)を1%の濃度で精製水
に溶解し、1M水酸化ナトリウムでpHを7.0 に調整し、
115 ℃で15分間滅菌し、基本培地(液体培地)を調製
した。 3) 試験培地および対照培地の調製 各試料を0.01%の濃度で精製水に溶解し、滅菌フィルタ
ー(アドバンテック社製)で除菌し、0.5 ,1,2,
5,10,20および100 マイクロモル(μM)の濃度
で基本培地に添加した試験培地および無添加の対照培地
を調製した。
【0017】4) 抗菌性試験 上記試験培地および対照培地に上記前培養液を1%の濃
度で接種し、35℃で16時間好気培養し、培養液の濁
度を上記と同様の方法で測定し、次式から大腸菌の増殖
阻止率を算出した。 増殖阻止率(%)=100 (1−A/B) [ここで、Aは試験培養液の濁度差(培養16時間後の
試験培養液の濁度と培養前の試験培養液の濁度との差)
を、Bは対照培地の濁度(培養16時間後の対照培養液
の濁度と培養前の対照培養液の濁度との差)を、それぞ
れ示す。なお、増殖阻止率の百分率は重量によるもので
はない(以下同じ)。] (3)試験結果 この試験の結果は、表1に示したとおりである。
【0018】
【表1】
【0019】この表1からも明らかなように、試料1〜
5は、いずれも1μMで抗菌性が認められ、5〜20μ
Mの範囲で強い抗菌性を示し、50μM以上では濃度の
増加による抗菌性の増加は認められなかった。従って、
抗菌性を有する濃度は、少なくとも1μM、望ましくは
5〜20μMである。この量は、アミノベンジルペニシ
リンとほぼ同等の抗菌活性である。
【0020】なお、上記試料1〜5以外のアミノ酸配列
を有するペプチド、それらの誘導体、およびそれらの塩
についても抗菌性を試験したが、ほぼ同様な結果が得ら
れた。 (試験例2)この試験は試験例1で使用した抗菌性ペプ
チドのアミノ酸配列を確認するために行った。
【0021】試験例1で得た試料1〜5のペプチドを6
N塩酸で加水分解し、アミノ酸分析計を用いて常法によ
りアミノ酸組成を分析した。同一の試料を気相シークェ
ンサー(アプライド・バイオシステムズ社製)を用いて
エドマン分解を行い、11個のアミノ酸残基の配列を決
定した。その結果、このペプチドは、11個のアミノ酸
残基からなり、次のアミノ酸配列を有していた。
【0022】 試料1:Lys-Thr-Arg-Arg-Trp-Gln-Trp-Arg-Met-Lys-Ly
s 試料2:Lys-Ser-Arg-Arg-Arg-Gln-Trp-Arg-Met-Lys-Ly
s 試料3:Lys-Thr-Val-Ser-Trp-Gln-Thr-Tyr-Met-Lys-Ly
s 試料4:Lys-Thr-Phe-Gln-Trp-Gln-Arg-Asn-Met-Arg-Ly
s 試料5:Lys-Thr-Leu-Arg-Trp-Gln-Asn-Glu-Met-Arg-Ly
s (試験例3)この試験は、この発明の抗菌性ペプチドの
抗菌スペクトルを調べるために行った。
【0023】(1) 試料の調製 実施例1〜実施例5と同一の方法により抗菌性ペプチド
を調製し、使用前にフィルター(0.45μmマイレッ
クス・フィルター)で瀘過して除菌した。なお、これら
の試料をそれぞれ試料1〜試料5とした。 (2) 試験方法 表2に示した各種微生物の対数期の菌株を、0、1.5 、
3、6、12、25、50、および100 μM の割合で各試料を
含む1%バクトペプトン(ディフコ・ラボラトリー社
製)からなるペプトン培地に106 /ml の割合で接種
し、その160μトンを96穴マイクロタイタープレー
ト(ファルコン社製)を用いて37℃または30℃で17時間
培養した。各種微生物の各種試料および濃度における成
育状態を660nm の吸光度で測定し、各種微生物の成育を
完全に阻止した各種試料の最小濃度から最小増殖阻止濃
度(MIC;μM )を決定した。
【0024】尚、この試験に使用した各微生物はいずれ
も東京大学医科学研究所(IID) 、理化学研究所(JCM) 、
日本国際酪農連盟(IDF) から容易に入手できるものであ
り、MMI は出願人の研究所保存株である。 (3) 試験結果 この試験の結果は、表2に示すとおりである。表2から
明らかなように、抗菌性ペプチドは、グラム陰性細菌で
あるPseudomonas aeruginosa MMI 603(表2においてPA
と表示)、およびKlebsiella pneumoniae JCM 1662T
(表2においてKPと表示)に対して50μM 以下の濃度で
抗菌作用を示し、グラム陽性細菌であるListeria monoc
ytogenes IDF 1b (表2においてLMと表示)、およびSt
aphylococcus aureus JCM 2151(表2においてSAと表
示)に対して12μM 以下の低濃度で抗菌作用を示した。
【0025】尚、この発明の他の抗菌性ペプチド、その
誘導体およびそれらの塩についてもほぼ同様の結果が得
られた。
【0026】
【表2】
【0027】(試験例4)この試験は、この発明の抗菌
剤による物品の処理効果を調べるために行った。市販の
一次加工野菜(いわゆるカット野菜)を、100gずつ2群
に分け、実施例6と同一の方法により製造した抗菌性ペ
プチド誘導体の20マイクロモル水溶液にそれぞれ30秒間
浸漬し、充分に水を切り、5℃で保存し、生菌数の変化
を常法により経時的に測定した。尚、対照として抗菌性
ペプチドを添加しない水道水に浸漬した試料ついても、
上記と同一の試験を行った。
【0028】この試験の結果は、表3に示すとおりであ
る。表3から明らかなようにこの発明の抗菌性ペプチド
誘導体で処理した野菜は、顕著に細菌の増殖が抑制され
ていた。尚、その他の実施例と同一の方法で合成した抗
菌性ペプチド、その誘導体およびその塩についても、ほ
ぼ同様の結果が得られた。
【0029】
【表3】
【0030】(試験例5)この試験は、この発明の抗菌
性ペプチド誘導体の抗菌効果を調べるために行った。
(1) 試料の調製 実施例6と同一の方法により抗菌性ペプチド誘導体を調
製した。 (2) 試験方法 試験例3と同一の方法によった。ただし、Escherichia
coli MMI 0111 およびEscherichia coli IID 861を追加
した。また菌株の入手先は試験例3と同一である。 (3) 試験結果 各微生物に対する最小増殖阻止濃度(MIC;μM )は、Es
cherichia coli MMI 0111 が6、Escherichia coli IID
861が3、Pseudomonas aeruginosa MMI 603が3、Kleb
siella pneumoniae JCM 1662T が12、Listeria monocyt
ogenes IDF 1bが1.5 、およびStaphylococcus aureus J
CM 2151が3であった。尚、その他の実施例と同一の方
法で合成した抗菌性ペプチド、その誘導体およびその塩
についても、ほぼ同様の結果が得られた。
【0031】次に実施例を示してこの発明をさらに具体
的に説明するが、この発明は以下の実施例に限定される
ものではない。
【0032】
【実施例】
実施例1 ペプチド自動合成装置(ファルマシアLKBバイオテク
ノロジー社製。LKB Biolynx 4170)を用い、シェパード
等[ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティー・パ
ーキン I(Journal of Chemical Society Perkin
I)、第538ページ、1981年]による固相ペプチド合成
法に基づいて次のようにして合成した。
【0033】アミン官能基を9−フルオレニルメトキシ
カルボニル基で保護したアミノ酸に、N,N′−ジシク
ロヘキシルカルボジイミドを添加して所望のアミノ酸の
無水物を生成させ、このFmoc−アミノ酸無水物を合成に
用いた。ペプチド鎖を製造するためにC−末端のリジン
残基に相当するFmoc−リジン無水物を、そのカルボキシ
ル基を介し、ジメチルアミノピリジンを触媒としてウル
トロシンA樹脂(ファルマシアLKBバイオテクノロジ
ー社製)に固定する。次いでこの樹脂をピペリジンを含
むジメチルホルムアミドで洗浄し、C−末端アミノ酸の
アミン官能基の保護基を除去する。のちアミノ酸配列の
C−末端から2番目に相当するFmoc−リジン無水物を前
記C−末端アミノ酸残基を介して樹脂に固定されたリジ
ンの脱保護アミン官能基にカップリングさせた。以下同
様にして順次メチオニン、アルギニン、トリプトファ
ン、グルタミン、トリプトファン、アルギニン、アルギ
ニン、スレオニン、およびリジンを固定した。
【0034】全部のアミノ酸のカップリングが終了し、
所望のアミノ酸配列のペプチド鎖が形成された後、94
%トリフルオロ酢酸、5%フェノール、および1%エタ
ンジオールからなる溶媒でアセトアミドメチル以外の保
護基の除去およびペプチドの脱離を行い、高速液体クロ
マトグラフ法によりペプチドを精製した。この溶液を濃
縮し、乾燥し、ペプチド約16mgを得た。 実施例2 C−末端から7および10番目のアミノ酸残基をアルギ
ニン残基およびセリン残基に変更した以外は、実施例1
と同一の方法によりLys-Ser-Arg-Arg-Arg-Gln-Trp-Arg-
Met-Lys-Lys のアミノ酸配列を有するペプチド約20mg
得た。 実施例3 C−末端から4,5,8,および9番目のアミノ酸残基
を、それぞれチロシン残基、スレオニン残基、セリン残
基、およびバリン残基に変更した以外は、実施例1と同
一の方法によりLys-Thr-Val-Ser-Trp-Gln-Thr-Tyr-Met-
Lys-Lys のアミノ酸配列を有するペプチド約17mg得
た。 実施例4 C−末端から2,4,5,8,および9番目のアミノ酸
残基を、それぞれアルギニン残基、アスパラギン残基、
アルギニン残基、グルタミン残基、およびフェニルアラ
ニン残基に変更した以外は、実施例1と同一の方法によ
りLys-Thr-Phe-Gln-Trp-Gln-Arg-Asn-Met-Arg-Lys のア
ミノ酸配列を有するペプチド約13mg得た。 実施例5 C−末端から2,4,5,および9番目のアミノ酸残基
の種類を、それぞれアルギニン残基、グルタミン酸残
基、アスパラギン残基、およびロイシン残基に変更した
以外は、実施例1と同一の方法によりLys-Thr-Leu-Arg-
Trp-Gln-Asn-Glu-Met-Arg-Lys のアミノ酸配列を有する
ペプチド約16mg得た。 実施例6 ウルトロシンB樹脂(ファルマシアLKB 社製)を用いた
以外は、実施例1と同一の方法により順次アミノ酸残基
を固定した。全アミノ酸の結合が終了後、94%トリフル
オロ酢酸、5%フェノール、および1%エタンジチオールか
らなる溶媒でアセトアミドメチル以外の保護基を除去
し、飽和アンモニア/メタノール溶液でペプチドを離脱
し、高速液体クロマトクラフィーによりペプチドを精製
し、濃縮し、乾燥し、Lys-Thr-Arg-Arg-Trp-Gln-Trp-Ar
g-Met-Lys-Lys-NH2 のアミノ酸配列を有するペプチド約
15mgを得た。 実施例7 次の配合のスキンクリームを製造した。
【0035】 ステアリン酸 150g セタノール 20g スクワラン 30g ミリスチン酸オクチルドデシル 50g グリセリン 100g 1,3−ブチレングリコールモノステアリン酸ボリオキシ エチレン(20モル)ソルビタン 30g 実施例1の抗菌性ペプチド 40mg 精製水 530g 実施例8 ブルーベリー果実4.5kg、砂糖4.5kg、ペクチ
ン0.07kg、クエン酸0.01kg、ショ糖脂肪酸
エステル(HLB:10)0.01kg、および実施例
5と同一の方法で製造した抗菌性ペプチド400mgを
水1kgと混合し、溶解し、かき取り式熱交換器を用い
て102℃で5分間殺菌し、85℃に冷却し、カラス瓶
に150gずつ充填し、密封し、冷却し、ブルーベリー
ジャム(糖度:50゜Bx)60個を製造した。 実施例9 次の配合の成豚用配合飼料10kgに実施例4と同一の
方法により製造した抗菌性ペプチド400mgを添加
し、均一に混合し、成豚用飼料を得た。
【0036】 トウモロコシ 34.7(%) マイロ 30.0 大豆油粕 9.0 魚粉 5.0 ふすま 10.0 アルファルファミール 6.0 糖蜜 3.0 リン酸3カルシウム 1.1 炭酸カルシウム 0.4 食塩 0.4 ビタミン類混合物 0.2 ミネラル類混合物 0.2 実施例10 次の配合の皮膚外用軟膏を製造した。
【0037】 ワセリン 250g パラフィン 50g セトステアリルアルコール 20g プロピレングリコール 100g ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン グリコールエーテル 30g 実施例2の抗菌性ペプチド 40mg 精製水 500g 実施例11 次の配合の皮膚用クリーム状洗浄剤を製造した。
【0038】 モノラウリルリン酸ナトリウム 35.5(%) モノセチルリン酸ナトリウム 10.0 塩化ナトリウム 7.0 ポリエチレングリコール(分子量8000) 5.0 ソルビトール 5.0 香料 0.7 実施例6の抗菌性ペプチド 0.002 実施例12 リン燐酸緩衝液(pH 6.5)120 トンに市販のセルラーゼ
製剤セルラーゼ「アマノ」(天野製薬製。繊維素糖化力
15,000 単位/g。以下単位をu と記載する)105gを添加
し、40℃に加温しながらコンニャク粉(清水化学社製)
6.0kg を攪拌溶解し、40℃に16時間保持した後に、95℃
で10分間加熱して反応を停止させた。この反応液を6,00
0 ×g で連続遠心分離し、上澄液を陽イオン交換樹脂ダ
ウエックス50W ×8 (H+型。ダウケミカル社製)1,50
0ml および陰イオン交換樹脂ダウエックス1×8(OH
− 型。ダウケミカル社製)6,000ml に順次通液して脱
塩し、濃縮し、噴霧乾燥し、中性多糖類分解物約4,200g
を得た。
【0039】この中性多糖類分解物 3000g、塩化ナトリ
ウム(石津社製)57.91g、塩化カルシウム2水塩(石津
社製)2.57g 、塩化マグネシウム6水塩(国産化学社
製)1.53g 、乳酸ナトリウム(和光純薬工業社製)39.2
g 、アミノ酸混合物(味の素社製)50g および実施例3
と同一の方法で製造した抗菌性ペプチド0.4gを、水10ト
ンに溶解し、分画分子量13,000の限外瀘過膜ACL-1050
(旭化成工業社製)を用いて限外瀘過し、得られて透過
液を121 ℃で10分間滅菌し、無菌であり、かつ発熱物質
を含まない腹膜透析液約9トンを得た。
【0040】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って以下の効果が奏せられる。 (1) この発明の抗菌性ペプチドは、天然のLFおよ
びLF加水分解物よりも顕著にすぐれた抗菌作用を有し
ている。 (2) この発明の抗菌性ペプチドは、少量で抗菌効果
を呈するので、食品等に使用した場合風味への影響がほ
とんどない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 37/02 ADZ 8314−4C // C07K 99:00 8318−4H (72)発明者 山内 恒治 神奈川県鎌倉市玉縄4−2−2 ガーデン ハイツ鎌倉玉縄405 (72)発明者 若林 裕之 神奈川県横浜市旭区南希望ケ丘118 森永 希望ケ丘寮 (72)発明者 時田 由起子 神奈川県相模原市旭町3−6 フラツトス トーン相模201号

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも下記のアミノ酸配列を含むペ
    プチドまたその誘導体。 Lys-X1-X2-X3-X4-Gln-X5-X6-Met-X7-Lys (ここでX1〜X6は、システイン残基を除く任意のアミノ
    酸残基、X7は、L-アルギニン残基またはL-リジン残基、
    をそれぞれ示す)
  2. 【請求項2】 少なくとも下記のアミノ酸配列を含むペ
    プチドまたはその誘導体、その薬理学的または食品学的
    に許容される塩類、及びそれらの2以上の混合物からな
    る群より選択される物質を有効成分として含有すること
    を特徴とする抗菌剤。 Lys-X1-X2-X3-X4-Gln-X5-X6-Met-X7-Lys (ここでX1〜X6は、システイン残基を除く任意のアミノ
    酸残基、X7は、L-アルギニン残基またはL-リジン残基、
    をそれぞれ示す)
  3. 【請求項3】 有効成分が少なくとも1マイクロモル
    (μM)の濃度で含有されている請求項2の抗菌剤。
  4. 【請求項4】 少なくとも下記のアミノ酸配列を含むペ
    プチドまたはその誘導体、その薬理学的または食品学的
    に許容される塩類、及びそれらの2以上の混合物からな
    る群より選択される物質を有効成分として含有すること
    を特徴とする抗菌性ペプチド配合物。 Lys-X1-X2-X3-X4-Gln-X5-X6-Met-X7-Lys (ここでX1〜X6は、システイン残基を除く任意のアミノ
    酸残基、X7は、L-アルギニン残基またはL-リジン残基、
    をそれぞれ示す)
  5. 【請求項5】 少なくとも下記のアミノ酸配列を含むペ
    プチドまたはその誘導体、それらの薬理学的または食品
    学的に許容される塩類、及びそれらの2以上の混合物か
    らなる群より選択される物質を有効成分として含有する
    抗菌剤を用いて物品を処理する方法。 Lys-X1-X2-X3-X4-Gln-X5-X6-Met-X7-Lys (ここでX1〜X6は、システイン残基を除く任意のアミノ
    酸残基、X7は、L-アルギニン残基またはL-リジン残基、
    をそれぞれ示す)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012229254A (ja) * 2000-03-09 2012-11-22 Lytix Biopharma As 抗菌化合物および処方物
US9207552B2 (en) 2010-08-26 2015-12-08 Ricoh Company, Ltd. Classifying apparatus, classifying method, toner and method for producing the toner
CN109678944A (zh) * 2019-03-04 2019-04-26 中国药科大学 一种抗菌多肽hf-18及其制备方法和应用

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