JPH0577903B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜発明の目的＞ 産業上の利用分野 本発明は密閉装置に係り、詳しくは、油圧装置
において軸方向に移動するロツドが壁部を貫通す
るところを密閉シールする密閉装置に係る。

従来の技術 油圧装置で軸方向に移動するロツドが壁部を貫
通するところを密閉する密閉装置は、弾性プラス
チツク材からなる密閉リングとそれより柔かいエ
ラストマー材からなる締付リングとが貫通部の壁
部の溝内に配置される構造から成つている。すな
わち、密閉リングがロツドに接触する接触面に密
閉端をもち、締付リングは過剰寸法に形成され、
溝の底面と密閉リングの外側面との間につめ込む
ときに、半径方向力を生成して両リングは密につ
め込まれている。また、密閉リングのロツドに対
向する内側面において、互いに軸方向に置かれた
２つのリング状の密閉縁が形成され、これらをロ
ツドに密着させる型式のものが提案されている。

これは所謂、“２重縁リング”であつて、これ
を持つ型式の密閉装置は、軸方向に前後に配置さ
れた２つの密閉リングを利用するタンデム原理を
実現するものである。タンデム原理については、
例えば“水力技術におけるタンデムロツドシー
ル”、、国際密閉学会、ドレスデン、1986
（KDT）に述べられている。このタンデム原理に
よる２重縁リングを有する密閉装置の利点は、必
要なスペースが小さいこと、および、製作および
設置費用が少ないということである。

２重縁リングがロツド表面に接触して密閉する
場合でも、ロツドが高圧流体が充満したところで
移動し、そこから出るときに、高圧側の流体充満
空間側に指向した密閉縁は、ロツドの動きに引き
ずられて高圧流体が流れるために、いく分か密閉
縁が持ち上げられる。この持ち上げによつて密閉
縁とロツド表面との間に〓間が生じ、〓間を通つ
てリング空間内に引き込まれる。また、後部の低
圧側の密閉縁によつてロツド上の流体はかき落さ
れ、このため、２重縁リングの２つの密閉縁の間
のリング空間内に流体は集積される。２つの密閉
縁の間のリング空間内に加圧液体が蓄積すること
自体は望ましい。すなわち、ロツドにおいて、密
閉リングの密閉縁に接する外周面を適正に構成す
ると、ロツドの移動によつて、リング空間に蓄積
された高圧液体は高圧側に直接引戻される。

また、油圧装置で加圧流体としての油で満たさ
れたところ、つまり高圧側空間からロツドが出る
ときには、油は非常に冷たく、粘性がきわめて大
きく、このため、ロツドの表面には濃厚なグリー
ス膜が生じ、このグリース膜が存在すると、密閉
縁が持ち上がり易い。この点についても、密閉リ
ングに２つの密閉縁が前後に並べて設けられてい
ると、きわめて有利になる。具体的に云うと、高
圧側の密閉縁によつてグリース膜の付着によつて
摩擦熱が生じ、この熱によつて冷たい油を暖める
ことができ、隣接する低圧側の密閉縁によつての
グリース膜のかき落しがきわめて効果的になる。

しかしながら、２重縁リングが形成された密閉
装置は上記効果が予測されるが、実際にはそれほ
ど良好な効果が達成できない。

すなわち、２重縁リングの場合、２つの縁で区
切られるリング空間は比較的小さな体積しかもた
ず、そのため、動作条件が悪いときは、引き込ま
れた加圧液体によつて、リング空間は比較的短時
間で充満してしまう。そして、さらに加圧液体が
リング空間内へ引き込まれると、リング空間内の
圧力は、すぐに、密閉液体の圧力Ｐより大きい圧
力Pzになる。

更に詳しく説明すると、低圧側の密閉縁が上記
のかき落し効果を持つために、これによつて締付
けられて封鎖されている。この場合では、引き込
まれた加圧液体は移動自在のロツドと高圧側の密
閉縁との間を通つて加圧流体は引き込みの方向と
反対に再び密閉すべき高圧側の空間内に逆流する
ことになるが、これによつて、ロツドに対する高
圧側の密閉縁の接触圧力が減じ、高圧側の外側密
閉縁の密閉効果は急激にとかれ、密閉効果が失な
われる。

また、ロツドが密閉すべき高圧側空間へ逆戻り
する間に、このロツドの移動によつて、２つの密
閉縁の間のリング空間はロツドに引きずられて負
圧化され、リング空間内の圧力は一時的に降下し
て、高圧側の外側密閉縁のロツド表面に対する押
しつけは高まつて、ロツド表面に付着している厚
いグリースなどの液体膜が高圧側の外側密閉縁に
よりかき落され、低圧側の内側密閉縁からも漏れ
が生じて好ましくない。

発明が解決しようとする問題点 本発明はこれらの問題点の解決を目的とし、具
体的には、２つのリング状密閉縁を有する密閉装
置を改良し、なかでも、上記のリング空間内の一
時的圧力降下による高圧側の外側密閉縁の接触圧
力の低下にもとずく持ち上がりの危険を避け、リ
ング空間の漏れを避ける密閉装置を提供する。

＜発明の構成＞ 問題点を解決するための 手段ならびにその作用 すなわち、本発明は軸方向に移動するロツドが
油圧装置の壁部を貫通し、この貫通場所を密閉
し、しかも、壁部に形成した溝内に、弾性プラス
チツク材からなる密閉リングと、この密閉リング
より柔かい材からなる締付リングとが配置される
密閉装置において、密閉リングのロツドに対応す
る内側面に２つのリング状の密閉縁を離間して設
けると共に、これら密閉縁の間にリング空間を形
成し、このリング空間と密閉リングで締付リング
と接触する外側面との間に通路孔を設け、この接
触する外側面上に、その中心部から密閉すべき空
間の高圧側に片寄らせて、通路孔の開口部を設け
て成ることを特徴とする。

以下、図面に示された実施例に基づいて本発明
を詳しく説明する。説明および図面に見られる諸
特徴は、発明の他の実施形式で個別的に、また、
任意の組合せで用いることができる。

まず、第１図に示す例の密閉装置は１つの密閉
リング１と、１つの締付リング２とを具え、これ
らリング１，２は油圧装置の壁部３の一部に形成
された溝３５の中に次のように組込まれている。
すなわち、密閉装置は、油圧装置において往復動
するロツド４が壁部３を貫通するところを密閉シ
ーリングする装置であつて、このところの壁部３
に溝３５を形成し、溝３５の中に密閉リング１と
締付リング２とが収容されている。

この密閉リング１は弾性にとんだプラスチツク
材などから成つて、ロツド４の円周面に接触する
側に２つの密閉縁１１，１２が形成され、密閉リ
ング１はロツド４の円周面に２つの密閉縁１１，
１２で接している。更に、これら密閉縁１１，１
２の間にはリング空間１３を形成し、このリング
空間１３に通路孔１４を設けて、通路孔１４は密
閉リング１を貫通して締付リング２のところまで
伸びている。

一方、締付リング２は溝３５の底面３１と密閉
リング１の外側面２１との間に配置されている。

このように構成される密閉リング１と締付リン
グ２とは、第１図の左側の圧力Ｐをもつ加圧液体
によつて、押圧され、溝３５の右側の壁面に押付
けられている。油圧装置でロツド４が軸方向に往
復運動するときに、高圧側の密閉縁１１のところ
に〓間が生じ、これを通つて、加圧液体が２つの
密閉縁１１，１２の間のリング空間１３内に流入
する。リング空間１３内に流入された加圧流体は
通路孔１４に入つて充満し、加圧液体がさらにリ
ング空間１３ならびに通路孔１４内に引き込まれ
るにおよんで、リング空間１３および通路孔１４
内の圧力は中間圧Pzに達する。一方、締付リン
グ２はやや大き目の過剰寸法のものが圧縮されて
溝３５内に収納されているため、締付リング２は
加圧流体の密閉圧Ｐに過剰寸法の圧縮による圧力
が加えられた圧力で密閉リング１の外側面２１の
全体にわたつて接触している。この面圧は締付リ
ング２の形状、弾性係数および過剰寸法に依存
し、面圧の経過の一例は第１図に付してあるグラ
フにおいて曲線５で示される。

すなわち、通路孔１４の開口部１５は始めは締
付リング２によつてびつたりと閉じられている。
しかし、リング空間１３および通路孔１４内に流
入した加圧流体の中間圧Pzが通路孔１４の開口
部１５における締付リング２の面圧値Pfを越え
ると、通路孔１４中の加圧流体が締付リング２を
局部的に持ち上げて、その後、直ちに、圧力Pz
の加圧流体は溝３５内で圧力Pzより低い圧力Ｐ
の加圧流体で満たされているところに向けて流
れ、逆流又は還流される。

なお、上記図示の例は、締付リング２としてオ
ーリングを用いた場合に対応する。曲線５から明
らかな通り、両リング１ならびに２間の面圧の最
大は、接触面２１のほぼ中心部にあらわれる。従
つて、最大面圧の中心部と接触面２１の高圧側端
２２とのの間に、通路孔１４の開口部１５を設け
ると、開口部１５での面圧はPf程度であつて、
加圧流体の圧力Ｐより僅か高いだけであるため、
リング空間１３ならびに通路孔１４内の流入流体
の中間圧Pzが密閉するための加圧流体の圧力Ｐ
より僅か高くなる程度で、リング空間１３ならび
に通路孔１４内の流入流体は速やかに逆流する。

第２図は第１図に示すものと同様に密閉リング
１と締付リング２からなる密閉装置を示し、第１
図の実施形式と異なる点は、高圧側の密閉縁１１
と低圧側の密閉縁１２の間のリング空間１３が切
欠き様の拡がりをもつて構成されていることなら
びに密閉リング２１の前面の高圧側にスリツト１
６が設けられていることである。このようにスリ
ツト一１６を設けると、圧力Ｐの加圧流体が締付
リング２のところに容易に達することができる。

第３図に示す他の実施形式は、密閉リングが２
つの部分リング１ａおよび１ｂから成り立つてい
る。この２つの部分リング１ａ，１ｂおよび締付
リング２は壁部３の溝３５の中に組込まれてい
る。密閉すべき加圧流体は通路３２２を通つて溝
３５内に入る。高圧側の部分リング１ａは密閉縁
１１と凸円錐形の整合面１６ａを有し、この傾斜
面１６ａに対し他の部分リング１ｂの円錐形整合
面１７ｂが当接し、他の部分リング１ｂは密閉縁
１２を有し、両部分リング１ａ，１ｂが組合わさ
れて密閉リングが構成されている。この構成の密
閉リングは２つの密閉縁１１および１２を有し、
その間にはやはりリング空間１３が形成されてい
る。リング空間１３から密閉リングの外側面２１
の間までに通路孔１４が設けられ、その先端にリ
ング状の切欠き１８が形成されている。リング状
の切欠き１８は、高圧側の部分リング１ａの整合
面２１の中に作られたくぼみから成つている。通
路孔１４の開口部１５はリング状の切欠き１８の
ところに位置する。締付リング２は溝３５の底面
３１と部分リング１ａおよび１ｂから成る密閉リ
ングの外側面２１との間につめ込まれ、締付リン
グ２はやや大き目の過剰寸法に構成されている。
リング状の切欠き１５は、締付リング２と部分リ
ング１ａ，１ｂとが接触する共通の接触面の中心
部と締付リング２の高圧側端２２との間に位置さ
せる。また、高圧側の部分リング１ａの高圧側前
面にスリツト１６を形成する。

＜発明の効果＞ 以上説明したように、本発明は、２つのリング
状密閉縁を具える型式の密閉装置の改善をはかつ
たもので、２つのリング状の密閉縁間に形成され
るリング空間から密閉リングを貫通させて通路孔
を設け、この通路孔の出口開口部を、密閉リング
がその上の締付リングに接触する外側面上の中心
部より密閉すべき高圧側端の空間に片寄らせて位
置させて成るものである。

したがつて、リング空間に浸入してきた加圧液
体は、リング空間内の圧力が高くなり、面圧を越
えるときには、通路孔を通つて加圧流体が締付リ
ングと密閉リングの間を経て密閉すべき高圧側に
戻され、リング空間内の圧力は所定値に調整さ
れ、その結果、密閉リングの高圧側の外側密閉縁
の持ち上がりや、漏れが防止できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一つの実施例に係る密閉装置
の縦断面図、第２図および第３図はそれぞれ本発
明の他の実施例に係る密閉装置の縦断面図であ
る。 符号１……密閉リング、２……締付リング、３
……壁部、４……ロツド、１１……高圧側の外側
密閉縁、１２……低圧側の内側密閉縁、１３……
リング空間、１４……通路孔、１５……通路孔の
出口の開口部、３５……溝。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 軸方向に移動するロツドが油圧装置の壁部を
   貫通し、この貫通場所を密閉し、しかも、前記壁
   部に形成した溝内に、弾性プラスチツク材からな
   る密閉リングと、この密閉リングより柔かい材か
   らなる締付リングとが配置される密閉装置におい
   て、 前記密閉リングの前記ロツドに対向する内側面
   に２つのリング状の密閉縁を離間して設けると共
   に、これら密閉縁の間にリング空間を形成し、こ
   のリング空間と前記密閉リングで前記締付リング
   と接触する外側面との間に通路孔を設け、この接
   触する前記外側面上に、その中心部から密閉すべ
   き空間の高圧側に片寄らせて、前記通路孔の開口
   部を設けて成ることを特徴とする密閉装置。