JPH0577653U - ベルト式無段変速機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 変速プーリのフランジ間隔を調整して変速操
作を行うカムとフライウェートとを備え、部品点数を増
加させず低コストでカムの異常摩耗を防止し耐久性を向
上させることができるベルト式無段変速機の提供を目的
とする。 【構成】 この考案のベルト式無段変速機１は、可動フ
ランジ５３と固定フランジ５１との間にベルト９を装着
し可動フランジ５３の軸方向移動に伴うベルトピッチ径
Ｒ₂ の変化によって変速比を調節する変速プーリ７と、
この変速プーリ７と共に軸回りを回転するフライウェー
ト６５と、その遠心力を受けて可動フランジ５３を前記
のように軸方向移動させるカム６３とを備え、フライウ
ェート６５のカム６３に対する接触面６７をカム６３の
曲面に合わせて成形したことを特徴とする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、ベルト式無段変速機に関する。

【０００２】

【従来の技術】

実開昭６２−２００８４９号公報に「カークーラ用コンプレッサの無段変速ク ラッチ」が記載されている。又、特公昭６３−３１８７号公報に「動力伝達装置 」が記載されている。これらは、いずれもフライウェートの遠心力とカムとによ り変速比を調節するベルト式無段変速機である。図３に示すように、前者は一方 の変速プーリ２０１側でフライウェート２０３の遠心力がカム２０５に掛ると可 動フランジ２０７が固定フランジ２０９側に押圧され、変速プーリ２０１と他方 の変速プーリ２１１の各ベルトピッチ径が変化して、変速比の調整が行われる。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

図４に示したように、フライウェート２０３は変速プーリ２０１が回転すると 遠心力によりポケット２１３から出てカム２０５と接触する。しかし、図５に示 すように、フライウェート２０３は円筒形であり円錐形のカム２０５に対して両 端の接触点２１５，２１７だけで接触するから、荷重がこの２点に集中しカム２ ０５が大きく削り取られて、機能不良や耐久性の低下が生じる。変速プーリは軽 量化のために一般にアルミニウム合金で作られており、この場合この異常摩耗は 甚しい。

【０００４】 フライウェート２０３の円筒面の母線全体で接触するようにカム２０５の接触 面を平面にするのは加工コストの安い旋盤加工では不可能であり、加工工数が多 く加工コストが高いフライス加工によらなければならず、コスト高になる。又、 図６のようにプレス加工によってカム２１９を平面にすると低コストで成形でき るが、カム２１９の裏面に凹部２２１ができるからこれをベルトの装着部に利用 することができない。

【０００５】 後者では、図７に示すように、ホルダー２２３を可動フランジ２２５とフライ ウェート２２７との間に配置し、ホルダー２２３にフライウェート２２７のポケ ット２２９を形成し、カム面２３１を平面にしてある。しかし、この構成では、 このホルダー２２３を用いただけ部品点数が増えると共にホルダー２２３を複雑 な形状に加工しなければならず、コスト高になる。

【０００６】 そこで、この考案は、変速プーリのフランジ間隔を調整して変速操作を行うカ ムとフライウェートとを備え、部品点数を増加させず低コストでカムの異常摩擦 を防止し耐久性を向上させるベルト式無段変速機の提供を目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

この考案のベルト式無段変速機は、可動フランジと固定フランジとの間にベル トを装着し可動フランジの軸方向移動に伴うベルトピッチ径の変化によって変速 比を調節する変速プーリと、この変速プーリと共に軸回りを回転するフライウェ ートと、その遠心力を受けて可動フランジを前記のように軸方向移動させるカム とを備え、前記フライウェートのカムに対する接触面をカムの曲面に合わせて成 形したことを特徴とする。

【０００８】

【作用】

フライウェートの接触面はカムと同一曲面に形成され接触部分が広がるから、 従来例と異って荷重の集中が生じない。従って、カム側をアルミニウム製にして も部分的な異常摩耗が防止されて耐久性が向上し、正常な機能が長く保たれる。

【０００９】 フライウェートの接触面の曲面加工は旋盤で行えるから低コストであり、補助 的な部材を用いないから部品点数が増えない。

【００１０】

【実施例】

図１により一実施例の説明をする。図１はこの実施例のベルト式無段変速機１ を介してエンジン駆動される機械式過給機３を示している。なお、左右の方向は 図１での左右の方向であり、符号を付けていない部材等は図示されていない。

【００１１】 図１のように、ベルト式無段変速機１はドライブプーリ５（駆動側の変速プー リ）とドリブンプーリ７（被駆動側の変速プーリ）と、これらを連結するベルト ９とを備えている。又、機械式過給機３は増速部１１と遠心コンプレッサ型の過 給機１３とを備えている。

【００１２】 ドライブプーリ５は中空軸１５と一体の固定フランジ１７と、中空軸１５に軸 方向移動自在に連結された可動フランジ１９とを備えている。中空軸１５はベア リング２１，２３を介して支持軸２５上に支承されており、支持軸２５はボルト ２７とナット２９とにより増速部１１のケーシング３１に固定されている。両フ ランジ１７，１９間に形成されたＶ溝３３にはベルト９が装着されており、可動 フランジ１９は中空軸１５に止め輪３５で位置決めされたリテーナ３７との間に 配置された皿ばね３９により固定フランジ１７側に押圧され、ベルト９に張力を 与えている。固定フランジ１７にはベルトプーリを固定するねじ穴４１が設けら れており、ドライブプーリ５はこのベルトプーリを含めたベルト伝動機構を介し てエンジンのクランクシャフトに連結され、エンジンの駆動力により回転駆動さ れる。

【００１３】 ドリブンプーリ７は、増速部１１の入力軸４３にそれぞれ圧入されナット４５ により脱落防止を施された中空軸４７及びカム部材４９と、中空軸４７と一体の 固定フランジ５１と、カム部材４９との間に設けられた噛合い部５２を介して軸 方向移動自在に連結された可動フランジ５３とを備えている。中空軸４７の右端 はベアリング５５を介してケーシング３１に回転方向に支承され、入力軸４３は ベアリング５７，５９を介してケーシング３１に支承されている。各フランジ５ １，５３間に形成されたＶ溝６１にはベルト９が装着されドリブンプーリ７をド ライブプーリ５に連結している。

【００１４】 カム部材４９と可動フランジ５３にはそれぞれカム６３，６３が形成され、こ れらの間には複数個のフライウェート６５が周方向等距離に配置されている。ド リブンプーリ７が回転するとフライウェート６５の遠心力がカム６３，６３に掛 り、生じたカムスラスト力によって可動フランジ５３が固定フランジ５１側に押 圧される。

【００１５】 エンジン回転数の上昇に伴ってドリブンプーリ７の回転数が上昇すると、カム スラスト力の増加によりドリブンプーリ７のフランジ間隔が狭まってそのベルト ピッチ径Ｒ₂ が大きくなると共に、ベルト９の張力によってドライブプーリ５側 のフランジ間隔が広がりそのベルトピッチ径Ｒ₁ が小さくなって増速比が下がる 。又、エンジン回転数が下がると、カムスラスト力が低下してドライブプーリ５ の皿ばね３９の力によりベルトピッチ径Ｒ₁ が大きく又ベルトピッチ径Ｒ₂ が小 さくなって増速比が上がる。こうして、ドリブンプーリ７の回転数変動幅はエン ジン回転数の変動幅より小さく抑えられると共に、エンジン回転数が上昇すると ドリブンプーリ７の回転数はほぼ一定に保たれる。

【００１６】 なお、ドライブプーリ５とドリブンプーリ７はいずれもアルミニウム合金で作 られており、カム６３，６３は旋盤加工で円錐形に成形されている。

【００１７】 図２に示すように、フライウェート６５の接触面６７は円錐形のカム６３と同 一の曲面を与えるために紡錐形に旋盤加工されている。従って、フライウェート ６５は母線全体でカム６３と接触しカム６３の面圧が下がるから、従来例と異っ て荷重集中によるカム６３の異常摩耗が起らず、正常な機能が長く保たれ、寿命 がのびる。

【００１８】 カム６３やフライウェート６５の旋盤加工は加工コストが安く、その上図７の 従来例におけるホルダー２２３のような補助的な部材が用いられず部品点数が増 加しない。従って、低コストである。

【００１９】 こうして、ベルト式無段変速機１が構成されている。

【００２０】 増速部１１はプラネタリーギヤ式の変速機構であり、インターナルギヤ６９は 入力軸４３の右端側に一体形成されており、ピニオンギヤ７１はベアリング７３ を介してピニオンシャフト７５に支承されている。ピニオンシャフト７５はケー シング３１のフランジ部７７に支持され、ねじとボールとからなる脱落防止手段 ７９により脱落防止が施されている。サンギヤ８１は過給機１３のインペラシャ フト８３の左端側に形成されている。インペラシャフト８３はユニットベアリン グ８５とオイルフィルムダンパ８７とを介してフランジ部７７に支承されている 。

【００２１】 ベルト式無段変速機１を介して増速部１１に入力したエンジンの駆動力は、イ ンターナルギヤ６９からピニオンギヤ７１とサンギヤ８１とを介して増速されイ ンペラシャフト８３を回転駆動する。

【００２２】 入力軸４３とケーシング３１との間及びユニットベアリング８５とインペラシ ャフト８３との間にはそれぞれシール８９，９１が配置されケーシング３１から のオイル洩れを防止している。オイルフィルムダンパ８７にはケーシング３１に 取付けられオイルポンプに接続されたオイルプラグ９３からノズル９５と油路９ ７とを介してオイルが供給される。このオイルはユニットベアリング８５や増速 部１１などを潤滑し、排出口からケーシング３１の外部に排出される。

【００２３】 過給機１３のインペラシャフト８３の右端にはインペラ９９が圧入され、その 右には脱落防止部材１０１が加締められている。コンプレッサハウジング１０３ はケーシング３１の円周溝１０５に係合した連結部材１０７とボルト１０９とを 介してケーシング３１に取付けられている。

【００２４】 こうして構成された機械式過給機３はベルト式無段変速機１と共にケーシング ３１を介してエンジンに組付けられ、加圧した吸気によりエンジンを過給する。

【００２５】

【考案の効果】

この考案のベルト式無段変速機は、変速プーリのフランジ間隔を調整して変速 操作を行うフライウェートのカムに対する接触面をカムの曲面に合わせて成形し 部分的な荷重の集中を防止した。従って、例えばカム部材を軽合金製にしても異 常摩耗が発生せず耐久性が向上し、正常な機能が長く保たれる。又、カム面及び フライウェートの接触面の加工は旋盤で行えると共に、補助的な部材を用いず部 品点数が増えないから、低コストである。

【図面の簡単な説明】

【図１】一実施例を示す断面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図である。

【図３】第１の従来例の断面図である。

【図４】図３の従来例と類似構造のカムとフライウェー
トとを示す正面図である。

【図５】図４のＢ−Ｂ断面図である。

【図６】第２の従来例の部分断面図である。

【図７】第３の従来例の要部を示す正面図である。

【符号の説明】

１ ベルト式無段変速機 ７ ドリブンプーリ（変速プーリ） ９ ベルト ５１ 固定フランジ ５３ 可動フランジ ６３ カム ６５ フライウェート ６７ 接触面 Ｒ₂ ベルトピッチ径

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 可動フランジと固定フランジとの間にベ
   ルトを装着し可動フランジの軸方向移動に伴うベルトピ
   ッチ径の変化によって変速比を調節する変速プーリと、
   この変速プーリと共に軸回りを回転するフライウェート
   と、その遠心力を受けて可動フランジを前記のように軸
   方向移動させるカムとを備え、前記フライウェートのカ
   ムに対する接触面をカムの曲面に合わせて成形したこと
   を特徴とするベルト式無段変速機。