JPH0576133B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、密閉形鉛蓄電池の改良に関するもの
であり、特にその安全弁を改良したものである。

従来の技術 密閉形鉛蓄電池は、セパレータであるガラス繊
維性マツトに電解液を保持させて遊離の電解液を
なくしているために電解液が外部に漏出せず、近
年ポータブル機器用電源として広く普及してい
る。このような密閉形鉛蓄電池は、その大部分が
充電中に正極板より発生した酸素ガスを負極板で
吸収除去する方式を採つているので、通常は外部
へのガス放出は生じない。しかし大電流で充電し
た場合には負極板でのガス吸収速度よりも、正極
板から発生する酸素ガス量が大きくなるため完全
に密閉するとセルの内圧が上昇する。そのため内
圧が所定値よりも上昇するとセル内部のガスを外
部へ放出する安全弁が設けられているのが通例で
ある。一方自然放置状態では負極板が酸素ガスを
吸収するため、大気とセル内部とを遮断しないと
負極板が酸化されて自己放電の原因となる。従つ
て安全弁には逆止弁の機能をも要求される。通常
このような安全弁を備えた蓄電池では、セル内部
で酸素ガスを負極板において吸収除去するため減
圧状態になつている。

従来の密閉形鉛蓄電池においても上記した機能
をもつ安全弁が設けられている。その代表的構成
は、電槽を覆蓋するカバーに各セル内にそれぞれ
通じる筒状の吸排気孔を設け、その上部にゴムか
らなるキヤツプ状の安全弁をかぶせ、上カバーで
安全弁が開弁動作時に吸排気孔より離脱しないよ
うに位置決めしたものである。

発明が解決しようとする問題点 しかしこのような構造ではキヤツプ状の安全弁
を設置するために筒状の吸排気孔を必要とし、し
かも弁の形成材質や厚み、硬さにより弁の動作圧
力が経時的に変化する。また安全弁を構成する部
分の容量もかなりの量必要とし、密閉形鉛蓄電池
の小形化を図る上にで大きな障害があつた。

本発明は、上記従来の問題点を解消するもの
で、合成樹脂よりなる１枚のフイルムを安全弁に
使用し、この安全弁の信頼性向上と、弁部分の小
形、薄形化を図つて蓄電池全体の小形化を容易に
達成することを目的とする。

問題点を解決するための手段 本発明は上記目的を達成するために、充電中に
正極板より発生する酸素ガスを負極板で吸収除去
する密閉形鉛蓄電池において、電槽を覆蓋するカ
バーの凹部に設けた複数の吸排気孔の外面にこれ
ら吸排気孔全てにまたがつた１枚の合成樹脂フイ
ルムを当接し、カバーの凹部を覆う上カバーで加
圧された合成樹脂または合成ゴムからなるスポン
ジ体でフイルムをその上側から押圧したものであ
る。

作 用 このように構成することで、これまでのように
筒状の吸排気孔を必要としなく、平坦で弁部分の
占有面積が小さく、フイルムのカバーからの浮き
上りで開弁しうる安定した開弁圧力を有した安全
弁を提供でき、密閉形鉛蓄電池の小形化を可能に
できるものである。

実施例 以下、本発明の詳細を実施例で説明する。

第１図は本発明の一実施例における密閉形鉛蓄
電池の部分断面図である。図において、１は合成
樹脂よりなる電槽、２はその中に収納された極板
群で、電解液は極板およびセパレータに含浸保持
されている。３は合成樹脂製のカバーで、電槽１
と気密に接着されている。カバー３に設けられた
長方形状の浅く平坦な凹部には吸排気孔４が各セ
ル毎にセル室側へ突出して設けられている。各吸
排気孔４は平坦な凹部の内側に配置された厚さ10
〜200μの１枚の合成樹脂フイルム５が外面から
当接することによつてふさがれている。そしてこ
のフイルム５はその上側からポリウレタンフオー
ムからなるスポンジ体で６で押圧されている。ス
ポンジ体６は凹部を覆う上カバー７で加圧されフ
イルム５に弁圧力を加えている。ここで用いるフ
イルム５の材質としては、ポリエチレン、ポリプ
ロピレンあるいはポリエチレンテレフタレートな
どが有効である。またスポンジ体６としては、フ
イルム５への加圧力をその厚さならびに発泡の程
度で加減できればよく、ポリウレタンフオームの
ほか、発泡ポリプロピレンあるいはネオプレン、
スチレンブタジエンゴム等の各種の合成ゴムから
なるものが有効である。第２図は本発明による安
全弁部の詳細図であり、スポンジ体６は上カバー
７とカバー３との間で一定の圧縮率となるような
寸法で凹部内にセツトされ、上カバー７をカバー
３に超音波溶着することにより固定される。そし
てこのスポンジ体６で上側から押圧されたフイル
ム５により各吸排気孔４は外側から閉塞される。
ここでフイルム５で押圧される吸排気孔４の周面
にはシリコーンオイル等の液状シール剤を塗布す
ることにより弁閉塞時の気密性を良好に保てると
ともに開閉弁圧はさらに安定する。安全弁として
の開閉弁圧は、スポンジ体６の厚さや硬度を異な
らせるか、あるいはその圧縮率を変えることによ
つて自由に変えることができ、電池の形状、電槽
の材質や肉厚等、電槽の耐圧特性に応じて自由に
開閉弁圧を設定することができる。

第３図は本発明の他の実施例を示し、吸排気孔
４をカバー３に設けた弁座８にねじを固定し、こ
の弁座８に１枚のフイルム５及びスポンジ体６を
上カバー７で押圧固定し、上カバー７を下カバー
３に気密に接着又は溶着したものである。この構
成はフイルムの当接する吸排気孔の周囲の平面度
の精度を高め、フイルムとの密着度を高めて開閉
弁圧の信頼性をより上げるために有効である。

発明の効果 以上述べてきたように本発明によれば、下記の
効果を得ることができる。

(1) フイルムを弁体に使用することで排気口周辺
を平坦にすることができ、スポンジは全体を加
圧することで長期間の使用によつても弾性ムラ
が無く、開閉弁圧を一定にすることができる。

(2) 弁体に１枚のフイルムを使用すると各セル間
の減圧力の差により減圧力の強い部分のフイル
ムが引つ張られる結果、排気口上のフイルムが
ずれたり、シワが発生してその部分から大気中
の酸素がセル内に導入されるため、他のセルの
密閉化を妨げることがある。しかし１枚のフイ
ルムの上側全体をスポンジ体で加圧することに
より前記問題の発生を防止できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の実施例における密閉形鉛蓄電
池の一部を断面とした図、第２図および第３図は
同安全弁部分の動作を示す詳細図である。 １……電槽、２……極板群、３……カバー、４
……吸排気孔、５……合成樹脂フイルム、６……
スポンジ体、７……上カバー。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 充電中に正極板より発生する酸素ガスを負極
   板で吸収除去する密閉形鉛蓄電池であつて、電槽
   を覆蓋するカバーの凹部底面に面一に設けた複数
   の吸排気孔の外面にこれら吸排気孔全てにまたが
   つた１枚の合成樹脂フイルムを当接し、前記カバ
   ーの凹部を覆う上カバーで加圧された合成樹脂ま
   たは合成ゴムからなるスポンジ体で前記フイルム
   を上側から押圧した密閉形鉛蓄電池。 ２ スポンジ体がポリウレタン、ポリプロピレ
   ン、ネオプレンゴム、スチレンブタジエンゴムの
   いずれかで形成されている特許請求の範囲第１項
   記載の密閉形鉛蓄電池。 ３ 合成樹脂フイルムの吸排気孔と当接する部分
   に液状シール剤を塗布した特許請求の範囲第１項
   記載の密閉形鉛蓄電池。