JPH057528B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、偏心軸がその延びる方向に少なくと
も３個以上の各部分においてケーシングに回転可
能に支持されている多気筒ロータリピストンエン
ジンのケーシングに関するものである。

（従来技術） 多気筒ロータリピストンエンジンには、たとえ
ば、実公昭55−14723号公報に開示されているよ
うに、外側サイドハウジング、内側サイドハウジ
ング、ロータハウジングからなる複数個のケーシ
ング構成要素によつて各気筒を形成し、偏心軸を
このケーシング構成要素に貫通させると共に、そ
の偏心軸の延びる方向に少なくとも３個以上の各
部分においてケーシングによりその偏心軸を回転
可能に支持するようにしたものが知られている。

各ケーシング構成要素には、各気筒に対応して
固定ギヤ（外歯歯車）が設けられており、この固
定ギヤを偏心軸が貫通する構成となつていると共
に、この固定ギヤはロータに取付けられているイ
ンタナルギヤ（内歯歯車）に噛合されており、各
固定ギヤの軸心を同一直線上に一致させるため
に、ケーシング位置決め用の位置決めピンを用い
て、各ケーシング構成要素の相対的な位置決めを
行つている。このものは、ケーシング構成要素に
支持されている２個の固定ギヤの軸心を一致させ
て、分割偏心軸のうち２個の偏心部を有する第１
偏心軸を固定ギヤに挿通し、この第１偏心軸両端
部分を固定ギヤを介して先にケーシング構成要素
に支持し、その後、分割偏心軸のうち１個の偏心
部を有する第２偏心軸を上記第１偏心軸の端部に
ボルトにより連結した後、ロータハウジング、ロ
ータ、外側サイドハウジングを組付けることによ
り、分割偏心軸をその中間部分と両端部分との３
個所でケーシングに回転可能に支持するようにな
つている。

ところが、第１偏心軸側の気筒を構成するケー
シングを組付けた状態で、ケーシング構成要素の
製作誤差等により、偏心軸の軸心がそれを支持し
ている固定ギヤの軸心に対して斜めに傾いている
ことがあり、その支持されていない端部、すなわ
ち、まだ組付けていない端部気筒側の偏心軸がこ
の偏心軸を支持する固定ギヤ（ベアリング）の軸
心から離れた位置にあつて、その場合に、固定ギ
ヤ（ベアリング）の各軸心を同一直線上で一致さ
せて偏心軸の斜めの傾きを矯正して、ケーシング
に偏心軸を回転可能に支持させるために、すでに
組付けられている中間気筒の外側サイドハウジン
グに対して、組付けようとする端部気筒のロータ
ハウジンングを位置決めピンにより無理に位置決
めして取り付けると、偏心軸がその支持されてい
る中間部分を境にたわんで、応力が加わり、ベア
リングが偏摩耗したり、偏心軸の振動が大きくな
るという好ましくない問題がある。

（発明の目的） 本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑み
てなされたもので、その目的とするところは、偏
心軸をその両端部分と中間部分とでケーシングに
回転可能に支持する構成のものにおいて、偏心軸
をケーシングに支持するに際しての応力が極力発
生しないようにした多気筒ロータリピストンエン
ジンのケーシング提供することにある。

（発明の構成） 本発明の構成は、端部に存在する気筒を形成す
るケーシングのうち、固定ギヤを有する外側サイ
ドハウジングとこの外側サイドハウジングと協動
して作動室を形成するロータハウジングとを固定
したまま、このロータハウジングを介してその外
側サイドハウジングとは反対側に位置する内側サ
イドハウジングに対して偏心軸の半径方向にずら
すことができるように、外側サイドハウジングと
ロータハウジングと内側サイドハウジングとの位
置決めを行う構成として、偏心軸を支承する複数
個の固定ギヤの軸心が互いに同一水平線上に一致
しない場合には、偏心軸の軸心を固定ギヤの軸心
に対して斜めに傾けたまま、固定ギヤを無理なく
偏心軸に沿わせつつ挿通して、偏心軸をその中間
部分と両端部分とでケーシングに回転可能に支持
させることができるようにしたものである。

（実施例） 以下に本発明に係る多気筒ロータリピストンエ
ンジンの偏心軸の一実施例を図面に基づいて説明
する。

第１図は、本発明に係る偏心軸が適用される多
気筒ロータリピストンエンジンの全体構成を示す
もので、この図において、１は多気筒ロータリピ
ストンエンジン本体であつて、この多気筒ロータ
リピストンエンジン本体１は、ケーシング構成要
素としての外側サイドハウジング２，３と内側サ
イドハウジング４，５とロータハウジング６〜８
とを有しており、ロータハウジング６は外側サイ
ドハウジング２と内側サイドハウジング４とによ
り気密性を保持されて作動室９を形成し、ロータ
ハウジング７は内側サイドハウジング４，５によ
り気密性を保持されて作動室１０を形成し、ロー
タハウジング８は外側サイドハウジング３と内側
サイドハウジング５とにより気密性を保持されて
作動室１１を形成しており、１２〜２０は冷却水
通路である。各ハウジング２〜８は中空形状の位
置決めピン２１〜２３によつて互いに位置決めさ
れると共に、テンシヨンボルト２４により締付け
られて結合されており、第２図において、２５は
このテンシヨンボルト２４の挿通孔、２６は吸気
孔、２７は排気孔を示す。

多気筒ロータリピストンエンジン本体１には、
外側サイドハウジング２から外側サイドハウジン
グ３に向かつてこの多気筒ロータリピストンエン
ジン本体１を貫通する第１偏心軸２８が設けられ
ている。この第１偏心軸２８は、その軸方向に延
びる大径部２９とこの大径部２９よりも小径の小
径部３０とを有しており、ここでは、大径部２９
は外側サイドハウジング２から内側サイドハウジ
ング５にまで渡つて延びる構成とされ、小径部３
０は、内側サイドハウジング５からロータハウジ
ング８、外側サイドハウジング３を経由して外部
に突出する構成とされている。大径部２９には、
作動室９に臨む部分に偏心部３１が形成され、作
動室１０に臨む部分に偏心部３２が形成されて、
この偏心部３１，３２には、第２図に示すような
三角形状のロータ３３，３４がそれぞれ取付けら
れている。ここでは、この第１偏心軸２８には、
その大径端部３５にフライホイル３６が取付けら
れ、３７はそのフライホイルに取付けられたリン
グギヤを示し、その小径部３０の小径端部３８に
は、ボルト部３９が形成されると共に、被取付け
部材４０が取付けられている。

外側サイドハウジング２と外側サイドハウジン
グ３と内側サイドハウジング５とには、固定ギヤ
４１，４２，４３がボルト４４によつてそれぞれ
取付けられており、固定ギヤ４１，４２は第１偏
心軸２８の軸受け部を兼用する構成とされてお
り、４５，４６はそのベアリングを示し、４１ａ
〜４３ａは各固定ギヤ４１〜４３の歯部を示して
いる。各ロータ３３，３４には、インタナルギヤ
４７，４８が取付けられ、その歯部は歯部４１
ａ，４２ａに螺合されて、インタナルギヤ４７，
４８はロータ３３，３３４とともに固定ギヤ４
１，４２の周囲を遊星的に回転するものとされて
いる。

第１偏心軸２８の小径部３０には、中空形状の
第２偏心軸４９が設けられている。この第２偏心
軸４９は第３図に示すようにその軸方向に延びる
貫通孔５０を有しており、小径部３０はこの貫通
孔５０に嵌合する構成とされている。第１偏心軸
２８には、その大径部２９と小径部３０との間に
第４図に示すようにテーパ部５１が形成されてお
り、このテーパ部５１は小径部３０から大径部２
９に向かつて延びるに伴なつて次第に拡径するも
のとされ、貫通孔５０にはそのテーパ部５１に近
い側にテーパ孔５２が形成されて、このテーパ孔
５２とテーパ部５１とは圧入嵌合されており、テ
ーパ部５１とテーパ孔５２とは第２偏心軸４９に
形成されている偏心部５３の軸方向位置決め手段
として機能するものである。偏心部５３は作動室
１１に位置するものとされて、この偏心部５３に
はロータ５４が取付けられており、ロータ５４に
はインタナルギヤ５５が固定されてその歯部は固
定ギヤ４３の歯部４３ａに噛合され、インタナル
ギヤ５５はロータ５４とともにこの固定ギヤ４３
の周囲を遊星回転するものとされている。ここ
で、固定ギヤ４３は第２偏心軸４９の軸受け部を
兼用しており、５６はそのベアリングである。

第２偏心軸４９は、小径端部３８から小径部３
０に挿通されるものであり、小径部３０と第２偏
心軸４９との間には、第２偏心軸４９の偏心部５
３の回転方向の位置決めを第１偏心軸２８の各偏
心部に対して行うためのキー５７が設けられてい
る。第２偏心軸４９は、ボルト部３９に螺合する
ナツト５８によつて被取付け部材４０を介して小
径部３０の軸方向であつてかつテーパ孔５２がテ
ーパ部５１に接近する方向に押圧されるものであ
る。５７′は被取付部材４０（たとえば、オイル
ポンプ等の補機駆動用ギヤ）の回転方向の移動を
防止するためのキーである。第２偏心軸４９は、
小径部３０に圧入されながら嵌合されるもので、
ここでは、テーパ孔５２が形成されている端部か
ら遠い側の端部近傍部分が圧入部５０ａとされ、
この圧入部５０ａが小径部３０に圧入されるもの
となつており、第２偏心軸４９は、テーパ部５１
とこの圧入部５０ａとで圧入されて相対回転不能
に第１偏心軸２８に支持されるものとなつてお
り、テーパ孔５２と圧入部５０ａとの間は小径部
３０に圧入されない非圧入部５０ｂとされて、第
２偏心軸４９の小径部３０への挿入の容易化が図
られている。

外側サイドハウジング２とロータハウジング８
と内側サイドハウジング４とは、第１気筒を構成
するものとされ、内側サイドハウジング４と内側
サイドハウジング５とロータハウジング７とは、
第２気筒を構成するものとされ、内側サイドハウ
ジング５と外側サイドハウジング３とロータハウ
ジング８とは第３気筒を構成するものとされて、
ここでは、第１気筒と第３気筒とが端部に存在す
る気筒となつており、第１偏心軸２８と第２偏心
軸４９とからなる偏心軸は固定ギヤ４１，４２，
４３を貫通する構成とされて、この固定ギヤ４
１，４２，４３を介して各ケーシングにその両端
部分と中間部分とが支持されるものとなつてい
る。

ここでは、第３気筒の一部を構成する外側サイ
ドハウジング３とロータハウジング８とが内側サ
イドハウジング５に対して偏心軸の半径方向に位
置をずらすことができるようにされており、第５
図、第６図はこれを説明するためのもので、第２
図に示すように上下２個所に設けられている位置
決めピン２３は、内側サイドハウジング５に嵌合
される側の端部が縮径されて縮径部２３ａとさ
れ、その縮径部２３ａの外径はその内側サイドハ
ウジング５に形成されている位置決め穴５ａの穴
径よりも小径とされており拡径部２３ｂはその外
径が外側サイドハウジング３の位置決め穴径、ロ
ータハウジングハウジング８の位置決め穴径と略
同径とされて、外側サイドハウジング３とロータ
ハウジング８との位置決め精度が確保できるよう
にされている。位置決めピン２３は位置決め穴５
ａに遊嵌されるものとなつており、外側サイドハ
ウジング３とロータハウジング８との位置決め精
度を確保しつつ外側サイドハウジング３とロータ
ハウジング８とを一体的に内側サイドハウジング
５に対して偏心軸の半径方向に位置をずらして外
側サイドハウジング３とロータハウジング８とを
内側サイドハウジング５にテンシヨンボルトを使
用して組付けることができるようにされている。

このように構成することにより、第１気筒と第
２気筒とを組付けた状態で第１偏心軸２８との軸
線が水平線に対して傾斜している場合であつて
も、第１偏心軸２８に第２偏心軸４９を嵌合した
後、該第２偏心軸４９の偏心部５３にロータ５４
を嵌合し、その後外側サイドハウジング３とロー
タハウジング２３とを位置決めピン２３により互
いに半径方向にずれないように固定した第３気筒
のケーシングを内側サイドハウジング５側に突出
した端部の外形を内側サイドハウジング５の位置
決め穴５ａの穴径より、上記傾斜によつてずれた
分を十分吸収できるように小さく形成しているた
め、すなわち、ロータハウジング８を偏心軸の半
径方向に移動できるようにしているため、位置決
めピン２３を位置決め穴５ａに容易に嵌合するこ
とができる。

以上実施例について説明したが、本発明はこれ
に限らず、例えば次のような場合をも含むもので
ある。

○イ 実施例では、偏心軸を第１偏心軸と第２偏心
軸との２分割構成のものとして説明したが、偏
心軸が分割されることなく一本の構成のものに
も本発明は適用できるものである。

○ロ 実施例では、偏心軸をケーシングに３個所で
回転可能に支持するようになつているが、４個
所以上で支持する構成とすることもできる。

○ハ 実施例では、位置決めピンの内側サイドハウ
ジングに臨む側の端部を縮径してその内側サイ
ドハウジングに形成されている位置決め穴に遊
嵌する構成としたが、位置決めピンは縮径せず
に、内側サイドハウジングに形成されている位
置決め穴の穴径を位置決めピンの外径よりも大
きく形成して遊嵌する構成とすることもでき
る。

○ニ 実施例では、外側サイドハウジング３から内
側サイドハウジング５に渡つて一本の延びる位
置決めピンを使用する構成としたが、ロータハ
ウジング８を通過する部分を境に位置決めピン
を２分割する構成とすることもできる。

（発明の効果） 本発明は以上説明したように、ケーシング構成
要素に先に中間部分と端部部分とで支持されてい
る偏心軸の支持されていない端部を後から支持し
てケーシング構成要素に回転可能に偏心軸を支持
するときに、偏心軸の軸心がその偏心軸を先に支
持する固定ギヤ（ベアリング）の軸心に対して斜
めに傾いて取り付けられている場合であつても、
その偏心軸の軸心を固定ギヤ（ベアリング）の軸
心に対して斜めに傾けたまま、偏心軸をその中間
部分と両端部分とでケーシング回転可能に支持す
ることができるようにしたから、偏心軸がたわん
で偏心軸とベアリングとの間に応力が発生するの
を極力防止できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る多気筒ロータリピストン
エンジンの全体構成図。第２図は本発明に係る多
気筒ロータリピストンエンジンの内部構成図。第
３図、第４図は本発明に係る偏心軸の側面図。第
５図は本発明に係る多気筒ロータリピストンエン
ジンのケーシングの要部構成を示す部分断面図。
第６図は第５図のＸ−Ｘ線に沿う断面図。 １………多気筒ロータリピストンエンジン本
体、２，３……外側サイドハウジング、４〜６…
…内側サイドハウジング、６〜８……ロータハウ
ジング、９〜１１……作動室、２１……位置決め
ピン、２２……位置決めピン、２３……位置決め
ピン、３３……ロータ、３４……ロータ、２８…
…第１偏心軸、４１……固定ギヤ、４２……固定
ギヤ、４３……固定ギヤ、４９……第２偏心軸、
５４……ロータ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 偏心軸をその両端部分と中間部分とでケーシ
   ングに回転自在に支承する多気筒ロータリピスト
   ンエンジンにおいて、 両端気筒のうちいずれか一方の気筒のケーシン
   グを構成しかつロータの内歯歯車と噛合する外歯
   歯車が設けられた外側サイドハウジングとロータ
   ハウジングとが位置決めピンによつて互いに固定
   され、該ロータハウジングが内側サイドハウジン
   グに対して偏心軸の半径方向に移動することがで
   きるように、前記ロータハウジングが位置決めピ
   ンによつて内側サイドハウジングに位置決めされ
   ていることを特徴とする多気筒ロータリピストン
   エンジンのケーシング。