JPH0573356U - 自動変速機のシリンダ室構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ケースの外径寸法を十分に小さくすること。 【構成】 シリンダ室４５を形成するにあたり、ピスト
ン外周が摺動する外側摺動面４６をケース５で形成する
一方、ピストン内周が摺動する内側摺動面４７をインナ
レース７で形成し、かつ、ピストン４４に対向する立壁
４８の少なくとも一部を、インナレース７に突設された
フランジ部７１で形成し、このフランジ部７１をケース
５にボルト６で止めることで、インナレース７をケース
５に固定する構成とした。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、自動車等、車両に搭載される自動変速機の油圧室構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】

従来、自動変速機の油圧室構造としては、図３に示すような構造が知られてい る。 この構造は、ケース０１の内側にインナレース０２がボルト０３によって固定 され、前記インナレース０２に内筒部０４と立壁部０５と外筒部０６とでドラム 形状のシリンダ室０７が形成され、このシリンダ室０７にピストン０８が摺動自 在に嵌合されたもので、前記インナレース０２の外筒部１０５の内周面にピスト ン外周が摺動する外側摺動面０６ａが形成されると共に、内筒部０４の外周面に ピストン内周が摺動する内側摺動面０４ａが形成され、かつ前記立壁部０５にお いてインナレース０２がボルト０３によりケース０１に固定されてた構造となっ ていた。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、上述の従来のシリンダ室構造にあっては、インナレース０２だ けでシリンダ室０７が形成され、そして、このインナレース０２はケース０１の 内側に固定されているため、シリンダ室０７の外側はインナレース０２の外筒部 ０６とケース０１とで２重壁構造となり、その２重壁構造となる分だけケース０ １の外径寸法が大きくなってしまうという問題があった。

【０００４】 そこで、上述の問題を解決すべく、ピストン外周が摺動する外側摺動面をケー スで形成することにより、インナレースの外筒部を廃止して、ケースの外径寸法 を小さくすることが考えられる。しかしながら、図４に示すように、ケース０１ によりシリンダ室０７の外側摺動面０１ａと立壁０１ｂとを形成して、インナレ ース０２の端面をボルト０３でケース０１に固定する構造とすると、インナレー ス０２の厚みｔをボルト０３の外径よりも大きくしなければならず、このように インナレース０２が厚肉になる分だけ、シリンダ室０７の外径寸法が大きくなっ てさらにはケース０１の外径寸法が大きくなってしまうもので、十分にコンパク ト化を図ることができない。

【０００５】 本考案は、上記の問題点に着目して成されたもので、ケースの外径寸法を十分 に小さくすることを課題としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上述の課題を解決するために、本考案では、ピストンに対向するシリンダ室の 立壁の少なくとも一部をインナレースのフランジ部で形成し、このフランジ部を ケースにボルトで固定することとした。

【０００７】 すなわち、本考案の自動変速機のシリンダ室構造は、自動変速機に摩擦締結要 素が設けられ、この摩擦締結要素を作動させるピストンが設けられ、このピスト ンは、自動変速機を覆うケースと回転要素の軸受となるインナレースとの間に形 成されたシリンダ室内に摺動可能に設けられ、前記シリンダ室は、ピストン外周 が摺動する外側摺動面が前記ケースで形成される一方、ピストン内周が摺動する 内側摺動面が前記インナレースで形成され、かつ、ピストンに対向する立壁の少 なくとも一部が、前記インナレースに突設されたフランジ部で形成され、このフ ランジ部をケースにボルト止めすることで、インナレースがケースに固定されて いる構成とした。

【０００８】

【作用】

内周にピストン外周が摺動する外側摺動面が形成されたケースと、外周にピス トン内周が摺動する内側摺動面が形成されたインナレースとでシリンダ室が形成 されて、シリンダ室の外側がケースだけの単壁構造となるため、シリンダ室の外 径寸法さらにはケースの外径寸法を小さく形成することができる。

【０００９】 また、インナレースに突設したフランジ部でピストンに対向する立壁の少なく とも一部を形成するようにし、このフランジ部をケースにボルト止めしたため、 インナレースの厚みをボルトの外径寸法よりも薄くすることが可能となり、これ によっても、シリンダ室さらにはケースの外径寸法を小さく形成することができ る。

【００１０】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図面により詳述する。 図２は実施例の油圧室構造を備えた自動変速機の要部を示す断面図であって、 本実施例構造は、主変速機と副変速機Ａとを備えた自動変速機の副変速機Ａに適 用している。

【００１１】 前記副変速機Ａは、図外の主変速機からトルクを入力する入力軸１ａと、外部 にトルクを出力する出力軸１ｂと、所定の変速比が得られる遊星歯車列２と、こ の遊星歯車列２を構成する回転要素を連結させたり、固定させたりするための摩 擦締結要素としてのダイレクトクラッチ３およびリダクションブレーキ４と、こ れらを覆うケース５とを備えている。

【００１２】 前記遊星歯車列２は、入力軸１ａに結合されたリングギヤ２１と、出力軸１ｂ の外周に設けられたインナレース７に回転自在に支持されたサンギヤ２３と、各 ギヤ２１，２３に噛合されたピニオン２４を支持していると共に、前記出力軸１ ｂに結合されたピニオンキャリア２２とで構成されている。

【００１３】 前記ダイレクトクラッチ３は、ピニオンキャリア２２とサンギヤ２３の間に設 けられて、両者２２，２３を連結および切り離し可能としている。すなわち、前 記ダイレクトクラッチ３は、前記ピニオンキャリア２２に突設されたクラッチハ ブ３２と、サンギヤ２３に結合されたクラッチ用ドラム３３と、両者３２，３３ の間に介装された多数のクラッチ板３４とを備えていて、クラッチピストン３５ を作動させるとクラッチ板３４が結合する構造となっている。

【００１４】 前記リダクションブレーキ４は、クラッチドラム３３とケース５との間に設け られ、クラッチドラム３３およびサンギヤ２３をケース５に固定および離脱可能 としている。すなわち、このリダクションブレーキ４は、クラッチ用ドラム３３ に固定されたブレーキ用ハブ４１と、このブレーキ用ハブ４１とケース５との間 に介装された多数の締結板４２とを備え、シリンダ室４５に設けられたピストン ４４の作動により締結板４２が結合して、クラッチ用ドラム３３およびサンギヤ ２３がケース５に固定される構造となっている。

【００１５】 上述のリダクションブレーキ４は、本考案の実施例が適用されたもので、その 構造を図１により説明すると、前記ピストン４４はシリンダ室４５内に図中左右 方向に摺動自在に設けられている。このシリンダ室４５は、ケース５とインナレ ース７とで構成されているもので、すなわち、ケース５の内周面にピストン外周 が摺動する外側摺動面４６が形成され、インナレース７の外周面にピストン内周 が摺動する内側摺動面４７が形成されている。また、インナレース７の内側摺動 面４７の端部から外径方向にフランジ部７１が突設され、このフランジ部７１と ケース５の一部とにより、ピストン４４に対向する立壁４８が形成されている。 これら外側摺動面４６，内側摺動面４７，立壁４８によりシリンダ室４５が形成 されている。

【００１６】 また、前記フランジ部７１には、ケース５に形成された有底のネジ孔５２に符 合する位置に通し孔７２が貫通形成され、ボルト６が、この通し孔７２をシリン ダ室４５側から貫通してネジ孔５２に螺入され、これによりインナレース７がケ ース５に固定されている。

【００１７】 次に、実施例の作用を説明する。 本実施例では、シリンダ室４５を形成するにあたり、ピストン外周が摺動する 外側摺動面４６をケース５で形成し、ピストン内周が摺動する内側摺動面４７を インナレース７で形成したため、シリンダ室４５の外側がケース５だけの単壁構 造となるため、シリンダ室４５の外径寸法を小さくすることができ、それにより ケース５の外径寸法を小さくできる。

【００１８】 また、ピストン４４に対向する立壁４８の一部をフランジ部７１で構成し、こ のフランジ部７１をケース５にボルト６で止めることでインナレース７をケース ５に固定する構造としたため、インナレース７の厚みｔをボルト６の外径よりも 小さくすることが可能となり、これによっても、シリンダ室４５の外径寸法を小 さくして、ケース５の外径寸法を小さくできる。

【００１９】 また、実施例では、ケース５に有底のネジ孔５２を形成し、このネジ孔５２に シリンダ室４５側からフランジ部７１を貫通してボルト６を螺入させた構造とし たため、シリンダ室４５がボルト６の締結部を介してケース５の外部に連通する ことはなく、この部分からオイル洩れが生じるのを防止することができる。

【００２０】 以上、本考案の実施例を図面により説明したが、具体的な構成はこの実施例に 限られるものではなく、例えば、ボルト６をケース５の外側からインナレース７ のフランジ部７１に向けて螺入してもよいが、この場合には、ボルト６の締結部 のシールを十分に行なう必要がある。

【００２１】 また、実施例では、立壁４８をフランジ部７１とケース５の一部とで形成した 例を示したが、フランジ部７１のみで形成するようにしてもよい。

【００２２】

【考案の効果】

以上説明したように、本考案の自動変速機のシリンダ室構造にあっては、シリ ンダ室を形成するにあたり、ピストン外周が摺動する外側摺動面をケースで形成 する一方、ピストン内周が摺動する内側摺動面をインナレースで形成し、かつ、 ピストンに対向する立壁の少なくとも一部を、インナレースに突設されたフラン ジ部で形成し、このフランジ部をケースにボルト止めすることで、インナレース をケースに固定する構成としたため、シリンダ室の外側がケースだけの単壁構造 となるし、しかも、インナレースの厚みをボルトの外径よりも小さくすることが でき、これにより、ケースの外径寸法を小さくして自動変速機のコンパクト化を 図ることができるという効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案実施例の自動変速機のシリンダ室構造を
示す断面図である。

【図２】実施例構造を有した自動変速機の要部を示す断
面図である。

【図３】従来技術を説明する断面図である。

【図４】先行技術を説明する断面図である。

【符号の説明】

４ リダクションブレーキ（摩擦締結要素） ４４ ピストン ４５ シリンダ室 ４６ 外側摺動面 ４７ 内側摺動面 ４８ 立壁 ５ ケース ６ ボルト ７ インナレース ７１ フランジ部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 自動変速機に摩擦締結要素が設けられ、 この摩擦締結要素を作動させるピストンが設けられ、 このピストンは、自動変速機を覆うケースと回転要素の
   軸受となるインナレースとの間に形成されたシリンダ室
   内に摺動可能に設けられ、 前記シリンダ室は、ピストン外周が摺動する外側摺動面
   が前記ケースで形成される一方、ピストン内周が摺動す
   る内側摺動面が前記インナレースで形成され、かつ、ピ
   ストンに対向する立壁の少なくとも一部が、前記インナ
   レースに突設されたフランジ部で形成され、 このフランジ部をケースにボルト止めすることで、イン
   ナレースがケースに固定されていることを特徴とする自
   動変速機のシリンダ室構造。