JPH057056A - 半導体レーザ装置及びその製造方法 - Google Patents

半導体レーザ装置及びその製造方法

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JPH057056A
JPH057056A JP3278766A JP27876691A JPH057056A JP H057056 A JPH057056 A JP H057056A JP 3278766 A JP3278766 A JP 3278766A JP 27876691 A JP27876691 A JP 27876691A JP H057056 A JPH057056 A JP H057056A
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雄三 平山
Masaaki Onomura
正明 小野村
Motoyasu Morinaga
素安 森永
Nobuo Suzuki
信夫 鈴木
Tetsuo Sadamasa
哲雄 定政
Mitsuhiro Kushibe
光弘 櫛部
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 波長可変幅が広く、かつ波長可変時にスペク
トル線幅の広がらない波長可変型の半導体レーザ装置を
提供することにある。 【構成】 波長可変型のDFB半導体レーザ装置におい
て、共振器方向に沿って活性領域の量子井戸構造(例え
ば井戸数)を変えて、同一共振器内にキャリア密度−利
得特性の異なる複数の活性領域21,22a,22bを
設け、これらの活性領域21,22a,22bに対応し
て複数の電極181 ,182 ,183 を設けたことを特
徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体レーザ装置に係わ
り、特に波長が変えられる半導体レーザ装置及びその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、長距離大容量のコヒーレント光通
信システムの研究開発が盛んとなっている。なかでも、
周波数多重を用いるコヒーレント光通信システムは、従
来に比べ飛躍的に情報伝送量を増やすことができるため
有望視されている。この周波数多重光通信システムで
は、受信側においてチャンネルを選択する際に用いる波
長の変えられる局部発振用の半導体レーザが必要であ
る。このとき、波長の可変幅が大きいほど多数のチャン
ネルを受信することができる。
【0003】多電極分布ブラック反射型(DBR)レー
ザは、ブラッグ波長を大きく変えられるため現在最も大
きな連続可変量が達成されている。しかしその反面、波
長チューニング時に線幅が10〜20MHzまで増大
し、狭い線幅を要求されるコヒーレント光伝送には適用
が困難であった。これは、波長可変領域のキャリア雑音
が原因とされている。
【0004】これに対し多電極分布帰還型(DFB)レ
ーザは、線幅が狭くコヒーレント光伝送に有望である。
従来、M.C.Wu et al.;CREO'90 P.667 に論じられている
ように、活性領域が均一な量子井戸構造からなり、2つ
の電極よりキャリアの注入がなされるものが提案されて
いる。
【0005】この半導体レーザの波長可変原理は、次の
ように説明される。即ち、活性領域が量子井戸構造をと
るものにおいては、図28に示すように、利得のキャリ
ア密度依存性が非線形であるので、電極を分離してキャ
リア注入量を制御することによって、各々の電極に対応
した領域の微分利得が異なる状態で発振に必要な利得を
得ることができる。従って、発振状態でレーザ全体とし
てのキャリア密度を変化させることが可能となり、屈折
率がキャリア密度に対して線形に変化するので発振波長
を変化させることができる。
【0006】しかしながらこの場合は、微分利得の選択
領域が一つのキャリア密度−利得特性の曲線上で得られ
るものに制限されるため、発振波長の可変幅が6nm程
度と小さいという欠点を有していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の波長
可変半導体レーザにおいては、発振波長を変えた場合に
スペクトル線幅が広がる、または波長変幅が小さいとい
う問題点があった。
【0008】本発明は、上記事情を考慮してなされたも
ので、その目的とするところは、波長可変幅が広く、か
つ波長可変時にスペクトル線幅の広がらない波長可変型
の半導体レーザ装置及びその製造方法を提供することに
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の骨子は、分布帰
還型の半導体レーザにおいて、活性領域のキャリア密度
−利得特性を共振器方向で変えることにより、大きな微
分利得差を得ることにある。
【0010】即ち本発明(請求項1)は、分布帰還型の
半導体レーザからなり、同一共振器内に形成したキャリ
ア密度−利得特性の異なる複数の活性領域と、該複数の
活性領域に対応して設けられた複数の電極とを具備して
なることを特徴とする。
【0011】より具体的には、活性領域に量子井戸構
造,量子細線構造或いは量子箱構造等の量子構造を用
い、その量子構造を構成する要素のうち少なくとも1つ
を変えることにより、異なる微分利得を持つ複数の活性
領域を形成し、この複数の活性領域に対応して複数の電
極を設けたものである。
【0012】また本発明(請求項3)は、上記構造の半
導体レーザ装置を製造する方法において、半導体基板上
に共振器方向に回折格子を形成したのち、量子構造部内
に少なくとも1層のエッチングストッパー層を形成し、
次いで少なくとも一部がエッチングストッパー層に達す
るまでエッチングを行い、次いで微分利得の異なる複数
の活性領域に対応して複数の電極を形成するようにした
方法である。
【0013】また本発明(請求項4)は、波長可変型の
半導体レーザ装置の製造方法において、半導体基板上に
共振器方向に回折格子を形成したのち、共振器方向に沿
って共振器方向と略直交する方向の幅が異なる選択成長
マスクを形成し、次いでマスクを用いてキャリア密度−
利得特性の異なる複数の活性層を選択成長によって形成
し、しかるのち活性領域に対応して複数の電極を形成す
るようにした方法である。
【0014】また本発明(請求項5)は、波長可変型の
半導体レーザ装置の製造方法において、半導体基板上に
共振器方向に回折格子を形成したのち、共振器方向に沿
って共振器方向と略直交する方向の間隔が異なる一対の
選択成長マスクを形成し、次いでマスクを用いてキャリ
ア密度−利得特性の異なる複数の活性層を選択成長によ
って形成し、しかるのち活性領域に対応して複数の電極
を形成するようにした方法である。
【0015】また本発明(請求項6)は、分布帰還型の
半導体レーザからなり、同一共振器内に形成された量子
井戸の密度の異なる複数の活性領域と、該複数の活性領
域に対応して設けられた複数の電極とを具備してなるこ
とを特徴とする。
【0016】また本発明(請求項7)は、共振器方向に
複数の活性領域とそれに対応する複数の電極を有する分
布帰還型の半導体レーザ装置において、活性領域に接す
る半導体層のドーピング濃度が複数の活性領域で異なっ
ていることを特徴とする。
【0017】また本発明(請求項8)は、分布帰還型の
半導体レーザからなり、同一共振器内に形成された光閉
じ込め係数の異なる複数の領域と、該複数の領域に対応
して設けられた複数の電極とを具備してなることを特徴
とする。
【0018】
【作用】本発明(請求項1〜8)によれば、共振器方向
に量子構造が異なる複数の活性領域を形成することによ
り、図1の特性(1)(2)に示すように、それぞれの
活性領域が固有のキャリア濃度−利得特性を持つことに
なり、微分利得の差を従来より大きく持たせることがで
きる。そのため、発振しきいキャリア密度を大きく変え
ることができるので、その結果として波長可変幅を大き
くすることができる。
【0019】また、本発明(請求項4,5)によれば、
同一共振器内で組成,膜厚,歪み量の少なくとも一つは
異なる量子井戸層からなる複数の活性領域を1回の結晶
成長で形成でき、それぞれの活性領域は固有のキャリア
密度に対する利得特性を有することになる。従って、発
振しきいキャリア密度を大きく変化できるので、その結
果として波長可変幅の大きな波長可変レーザを簡易に製
造することが可能となる。特に、量子井戸構造と結晶組
成、量子井戸構造と結晶歪程度、量子井戸構造とキャリ
ア濃度、さらには量子井戸構造と活性層幅を同時に変え
た活性領域を構成することによって前述の効果はいっそ
う有効となって現れる。
【0020】また、本発明(請求項6)によれば、共振
器方向に形成された量子井戸の密度の異なる複数の領域
においてキャリア密度−利得特性が異なることを利用
し、発振に必要なキャリア密度のしきい値を変化させる
ことができる。ここで、変化の大きさは量子井戸の密度
の差によって決まるので従来よりも大きく変化させるこ
とができ、その結果として発振波長の可変幅を大きくす
ることが可能となる。量子井戸の密度を異ならせる手段
としては、単位厚さ当りの量子井戸薄膜の数,単位断面
当りの量子井戸細線の数,又は単位体積当りの量子井戸
箱の数を異ならせればよい。
【0021】また、本発明(請求項7)によれば、活性
層にドーピングされる不純物密度を共振器方向に形成さ
れた複数の活性層毎に変えることにより、活性領域のキ
ャリア密度−利得特性を活性領域毎に変えることがで
き、これにより発振波長の可変幅を大きくすることが可
能となる。
【0022】また、本発明(請求項8)によれば、共振
器方向に形成された光閉じ込め係数が異なる複数の領域
においては、共振器内を導波する光に対する利得の寄与
がそれぞれ異なる。このため、発振に必要なキャリア密
度のしきい値を変化させることができ、その変化の大き
さは光閉じ込め係数の差によって決まるので、従来より
も大きく変化させることができる。その結果として、発
振波長の可変幅を大きくすることが可能となる。
【0023】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。
【0024】図2は、本発明の第1の実施例に係わる波
長可変型DFBレーザの概略構造を示す断面図であり、
この実施例ではウエル数を変えている。図中10はn型
InP基板であり、このInP基板10上に1次の回折
格子11が形成され、この回折格子11上にはInGa
As光導波層12が形成されている。このInGaAs
光導波層12上には、共振器方向に2層,4層,2層の
InGaAsウエル13とInGaAsPバリア層14
からなる量子井戸構造部20(21,22a,22b)
が形成されている。なお、この量子井戸構造部20には
InPエッチングストッパー層15が形成されている。
【0025】量子井戸構造部20上全面にはInGaA
sP光導波層12′が形成され、さらに光導波層12′
上全面にp型InPクラッド層16及びInGaAsコ
ンタクト層17が形成されている。そしてコンタクト層
17上にp側電極181 ,182 ,183 が、基板10
の下面にn側電極19が設けられている。
【0026】次に、上記構成の半導体レーザの製造方法
について、図3の工程断面図を参照して説明する。まず
図3(a)に示すように、n型InP基板10上に2光
束干渉露光法により、周期240nmの1次の回折格子
11を形成する。
【0027】次いで、図3(b)に示すように、回折格
子11の上部を平坦に埋め込むように1.3μm組成の
InGaAs光導波層12(厚さ50nm)を形成し、
その上にInGaAsウエル層131 (厚さ8nm),
1.3μm組成のInGaAsPバリア層141 (厚さ
10nm),InGaAsウエル層132 (厚さ8n
m)、InGaAsPバリア層142 (厚さ3nm),
InPエッチングストッパー層15(厚さ5nm),I
nGaAsPバリア層143 (厚さ3nm),InGa
Asウエル層133 (厚さ8nm),InGaAsPバ
リア層144 (厚さ10nm),及びInGaAsウエ
ル層134 (厚さ8nm)を、有機金属気相成長(MO
CVD)法(成長条件:610℃、200Torr、トータ
ル流量10 l/min)により順次形成する。
【0028】その後、共振器の両側部分に相当する領域
の量子井戸構造部22a,22bを部分的に硫酸:過酸
化水素水:水=1:1:20(室温)のエッチャントで
除去する。このとき、硫酸系エッチャントではInP層
はエッチングされないので、共振器中央部分の量子井戸
構造部21は4層のInGaAsウエル13の量子井戸
構造となり、共振器両側部分の量子井戸構造部22a,
22bは2層のInGaAsウエル層13の量子井戸構
造となる。
【0029】次いで、図3(c)に示すように、MOC
VD法によって、1.3μm組成のInGaAsP光導
波層12′(厚さ30nm)で活性領域全面を平坦に埋
め込み、さらにp型InPクラッド層16(厚さ1μ
m),InGaAsコンタクト層17(厚さ0.5μ
m)を順次成長させる。
【0030】最後に、微分利得の異なる活性領域に対応
させて、InGaAsコンタクト層17上の共振器中央
部分と両側部分の3箇所にそれぞれ電極171 ,1
2 ,173 、基板10の下に電極18を形成すること
により、前記図2に示す構造が得られる。
【0031】こうして、作成した半導体レーザに合計1
00mAの電流を注入し、電極181 ,183 に流す電
流を等しくして、電極182 に流す電流を10〜90m
Aと変化させたところ、しきいキャリア密度は大きく変
化し、波長可変量として10nmという従来のDFBレ
ーザと比べ優れた特性が得られた。一方、線幅は波長チ
ューニング時においても750kHz以下と従来のDF
Bレーザより優れた特性を示した。さらに、発振しきい
電流を小さくすることができたので、100mAの電流
に対する出力は10mWから20mWと倍増した。
【0032】なお、ここではバリア層とエッチングスト
ッパー層にInGaAsP/InPの系を用いている
が、InGaAlP/GaAs,InGaAsSb/G
aSb或いはAlGaAsSb/GaSb等の他の系を
適用することも可能である。
【0033】図4は、本発明の第2の実施例に係わる波
長可変型DFBレーザの概略構造を示す断面図であり、
この実施例では歪量を変えている。なお、図2と同一部
分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0034】この実施例と先に説明した第1の実施例と
の相違点は、異なる微分利得を得る手段として、量子井
戸構造において結晶の格子整合の歪量を変化させたこと
にある。製造工程は第1の実施例とほぼ同様であるが、
活性層を形成する際、(Inx Ga1-x )Asにおける
xの値を変動させることにより、格子定数をInPより
大きくしたものをInP基板上に成長させて、1%の圧
縮歪を加えた歪量子井戸構造を形成する。そして、共振
器中央部分に相当する領域を通常のリソグラフィー技術
により選択的にエッチング除去し、共振器両端側に歪量
子井戸構造部24a,24bの活性領域を形成し、さら
にエッチング除去した領域に4nm厚のInGaAsウ
エルに3%の圧縮歪を加えた歪量子井戸構造部23を形
成する。
【0035】この場合にも、各電極181 ,183 と1
2 に注入する電流の割合を第1の実施例と同様に変化
させたところ、波長可変量として12nmという優れた
特性が得られ、線幅の広がりも見られず500kHz以
下であった。
【0036】なお、本発明は上述した実施例に限定され
るものではない。例えば、位相制御領域をつけ加えるこ
とにより連続的に波長を変えることができる。また上記
実施例では異なる微分利得を得る方法として1つの手段
だけを用いる例を示したが、同時に複数の手段、例えば
ウエル数を変えるとともに歪量を変えるという手段によ
っても可能である。さらに、上記実施例では半導体基板
にn型を用いたが、p型でもよく、その際は各層の導電
型を反転すればよい。また、例えば図2に示す実施例に
おいて量子井戸構造部21の凸状側部における量子井戸
構造部と光導波層12′の界面を階段状のテーパー構造
にして、活性層内での反射による損失を小さくすること
も可能である。さらに、本発明が量子井戸構造以外にも
量子細線構造,量子箱構造にも適用できることは明白で
ある。
【0037】次に、本発明の第3及び第4の実施例につ
いて説明する。
【0038】本実施例は、同一共振器内でキャリア密度
−利得特性の異なる複数の活性領域を形成するに当り、
選択結晶成長技術を用いて井戸層の膜厚,組成,歪量の
いずれかが異なる多重量子井戸構造を有する活性領域
を、1回の結晶成長で形成する半導体レーザの製造方法
である。具体的には、一対の選択成長マスクの間に結晶
成長した半導体薄膜の組成,膜厚,歪量はその選択マス
ク幅に依存することを利用し、共振器方向に複数の異な
る選択成長マスクを形成することでそのマスク間に成長
する半導体薄膜からなる活性領域は複数の異なる利得分
布を有するようになり、各利得の分布に対応してレーザ
の発振しきいキャリア密度を変えられるようにし、その
結果として波長可変幅を広く得られるようにしたもので
ある。
【0039】本実施例では、選択結晶成長マスクを設け
た結晶成長において、対に形成されるマスクの間に形成
される半導体薄膜の組成,膜厚,歪量は、マスクの幅に
依存することを見出し、これを微分利得の異なる複数の
活性領域形成に適用したことが要点となる。図5に示す
ように、特にInGaAsP/InP系では量子井戸構
造における井戸層として用いられるInGaAsの組
成,膜厚,歪量は、障壁層として用いられるInGaA
sPに比べてマスク幅に大きく依存する。この事実を利
用し、障壁層は変化させずに井戸層のみを変化させるこ
とで、微分利得は大きく異なるが、各井戸層での光のカ
ップリングやキャリアの注入効率は同じである複数の量
子井戸構造を1回の結晶成長で形成することができる。
さらに、対となる選択マスク間の幅を一部変えることで
等価的に位相シフト構造を有することができる。
【0040】この製造方法によれば、1回の結晶成長で
複数のキャリア密度−利得特性からなる活性領域を形成
できるばかりか、活性層の幅を結晶成長の前に正確に制
御でき、しかも活性層ストライプはストリエーションの
無い(111)B面で形成できる。さらに、複数のキャ
リア密度−利得特性からなる活性領域の境界は滑らかに
変化するので、それら境界での損失を低減することがで
きる。
【0041】図6は、本発明の第3の実施例に係わる波
長可変型DFBレーザの概略構造を示す断面図である。
図中30は(100)面を有するn型InP基板であ
り、このn型InP基板30上の[011]方向に回折
格子31が形成され、この回折格子31上には光ガイド
層及び量子井戸構造部からなる活性領域40が形成され
ている。活性領域40は1回の選択結晶成長によって複
数の領域が構成され、その境界領域は滑らかに変化して
いる。さらに、p型InPクラッド層36、InGaA
sコンタクト層37及びオーミック電極38は構造の異
なる各々の活性領域に対応して分割形成されている。な
お、39はn型オーミック電極、43は分離溝、45は
誘電体無反射コート膜である。
【0042】次に、上記構成の半導体レーザの製造方法
について、図7〜図10を参照して以下に説明する。図
7は選択結晶成長マスクを説明するための上からみた平
面図であって、図6に対応させて示す。図8は光出射面
を示す断面図である。図9は多重量子井戸構造と、遷移
領域を説明するための図であって、図6の波線円hの拡
大図である。図10は半導体レーザの製造工程の概略を
示すものである。図10(a)〜(d)は活性領域軸に
垂直な断面図であって、図6に示すi−j断面及びi′
−j′断面である。
【0043】まず、図6で示すように、(100)面を
有するn型InP基板30の上に、1次の回折格子31
を2光束干渉露光法によって周期240nmとなるよう
形成する。回折格子31は、レーザ共振器中央部で位相
がλ/4シフトするように形成されている。回折格子3
1の溝は、活性領域軸である[011]方向に直交する
ように選ぶ。
【0044】次いで、図7に示すように(100)In
P面に膜厚50nmのSiO2 膜を選択成長マスク47
として用いるために化学的気相成長(CVD)法で形成
した後、通常のリソグラフィ技術によって[011]方
向に2本の平行なSiO2 ストライプ47を形成する。
このとき、ストライプ長さは300μm周期とし、Si
2 マスク47の幅は、図5で示す関係からi−j断面
では1μm、i′−j′断面では4μmとし、2本の平
行なSiO2 マスク47の間の幅は1μmとしている。
【0045】次いで、MOCVD法(有機金属気相成長
法)でInGaAsP光ガイド層32をSiO2 膜厚以
上である70nmの厚さまで成長し、i−j断面の膜厚
が4nmであるInGaAs井戸層33が10層となる
ようInGaAsP障壁層34(厚さ10nm)と交互
に結晶成長し、さらにInGaAsP光ガイド層32′
を30nm成長し、InPキャップ層を10nm成長す
る。SiO2 マスク47の厚さ以上までInGaAsP
光ガイド層32を結晶成長するのは、マスク厚以上では
選択成長の横面がSiO2 マスク47の端面の凹凸に関
係なく平坦な(111)B面が形成されるからである。
このことは1991年春季応用物理学会予稿集28p−
ZK−3でも述べられている。
【0046】このようにして成長した多重量子井戸構造
において、図5で示すようにi−j断面のInx Ga
1-x As量子井戸のxは0.6なのに対し、i′−j′
断面のInx Ga1-x As量子井戸のxは0.7となる
が、InGaAsP障壁層の組成は殆ど変わらない。従
って、x=0.6の場合のInGaAsの歪量は0.4
%に対し、x=0.7では1.2%であり、この結果こ
れらの微分利得は大きく異なるが、障壁層はほぼ同じで
あるので各々の活性領域での光のカップリングやキャリ
アの注入効率等は変わらない。
【0047】次いで、図10を参照して実施例レーザを
完成するまでの一連の工程を説明する。これまでの工程
を通してできあがった構成を図10(a)に示した。図
10(a)において30はn型InP基板、47は選択
成長マスク、40は活性領域である。
【0048】次いで、図10(b)に示すように、Si
2 選択成長マスク47を通常のエッチングにより削除
し、MOCVD法で第2回目の結晶成長を行う。この結
晶成長においては、p−InPクラッド層36を2μm
成長し、続いてp−InGaAsコンタクト層37を
0.5μm成長する。
【0049】次いで、図10(c)に示すように、コン
タクト層37上にAu/Zn/Auのp電極38を真空
蒸着する。さらに、第1回目のMOCVD法で成長した
各々の活性領域に対応してp−InGaAsコンタクト
層37及びp電極38をエッチングにより削除して分離
し、各活性領域は電気的に高抵抗にする。この後で、裏
面を研磨しウエハの厚さを100μmとし、さらに裏面
にはAuGeを真空蒸着してn電極39とする。その
後、p−InPクラッド層36の一部を活性領域40の
深さまでメサエッチングする。
【0050】次いで、図10(d)に示すように、活性
領域と同時に成長した活性領域の両側40′をサイドエ
ッチングする。最後に、へき開によって形成したレーザ
端面には無反射コート膜45をp−CVD(プラズマC
VD)法によって形成することによって、前記図6に示
す構造が得られる。
【0051】以上のように作製した半導体レーザの両端
の電極に与える電流値を等しくした状態で中央の電極と
の割合を変化させながらレーザ発振させたところ、しき
いキャリア密度の大きな変化に起因にして、波長可変量
が従来のDFBレーザに比べて10倍以上の8〜12n
mという優れた特性が得られた。また、線幅は波長チュ
ーニング時においても0、8MHz以下であり、従来の
通常のDFBレーザ装置に比べて優れた特性を有してい
た。
【0052】図11は、本発明の第4の実施例に係わる
波長可変型DFBレーザの概略構造を示す断面図であ
る。この実施例では、第1回目の結晶成長の前には回折
格子を形成せず、結晶成長後に回折格子を形成してい
る。即ち、選択成長時においてまずはバッファ層として
n−InPをSiO2 マスク47の厚さ以上に成長する
ことで、選択成長における光ガイド層32を含む活性領
域40全体がマスクの凹凸の影響を取り除いている。そ
して、回折格子31は選択成長後で、かつSiO2 マス
ク除去前に形成している。
【0053】なお、本発明は上述した実施例に限定され
るものではない。例えば、図12に示すように2本の平
行な選択成長SiO2 マスク47の中心部48のマスク
間隔を変えて活性領域を形成すれば等価的に位相シフト
レーザが得られる。
【0054】また、結晶組成と共に活性領域のキャリア
濃度も選択結晶成長マスクの有無によって変化する。例
えば、不純物としてZn、Sを添加した場合には顕著に
その効果が現れる。すなわち、常気圧の高い元素は狭い
マスクの間に付着する確率が低く、キャリア濃度が局所
的に低下する。逆に、Siを添加した場合には局所的に
高くなる。この作用と上述の活性領域の構造作用,組成
作用,歪作用等を適合させることによっても特性の向上
が認められる。
【0055】次に、本発明の第5の実施例について説明
する。
【0056】本実施例は、第3,第4の実施例と同様
に、同一共振器内でキャリア密度−利得特性の異なる複
数の活性領域を形成するに当り、選択結晶成長技術を用
いて井戸幅と障壁幅の異なる多重量子井戸構造と共に結
晶組成の異なる活性領域を同時に構成したものである。
具体的には、一対の選択成長マスクの間に結晶成長した
結晶の組成及び層厚がマスクの無い領域の組成及び層厚
と異なるようにして、局所的に微分利得の分布に対応し
てレーザの発振しきいキャリア密度を変えられるように
し、その結果として波長可変幅を広く得られるようにし
たものである。
【0057】本実施例では、選択結晶成長マスクを設け
た結晶成長において、マスク近傍の結晶組成や結晶歪度
合いがマスクから離れた領域と微妙に違ってできること
を見出し、これを微分利得の異なる複数の活性領域形成
に適用したことが要点となっている。それは結晶成長過
程において、マスク上に輸送された反応ガスが未反応状
態で窓開けされた結晶基板上に拡散して結晶成長する際
に、マスク近傍では蒸気圧の低い元素が過剰のガス状態
となり、結晶組成が僅かに異なってくることに起因して
いる。結晶組成を可変できるということは結晶成長条件
を操作することによって量子井戸構造に結晶歪を持たせ
ることも可能となり、マスク近傍に結晶成長した活性領
域の量子井戸を歪量子井戸構造とすることができる。ま
た、全域に歪量子井戸を形成した場合でも、マスク近傍
とそれ以外の領域とで歪の程度を変えることが可能であ
る。
【0058】結晶成長速度,結晶組成,結晶歪等の変化
はマスク間隔やマスクの被覆率に依存し、マスク間隔が
狭いほど、また被覆率が高いほど変化量が大きい。例え
ば、幅が10μmの一対のマスクを設けた場合にマスク
間隔が50μm以上では結晶組成変化や歪による効果は
殆ど得られず、マスク間隔が1μm以下では蒸気圧の高
いAsやPがマスク間に必要量供給されないために所望
の結晶成長が制御性良く行われない。また、マスクの被
覆率が多くなると成長速度が極端に高くなって多重量子
井戸構造の形成が困難となる。被覆率をマスク面積と間
隔領域面積との比で表した場合、被覆率は1〜50の間
で有効な組成変化が認められた。
【0059】なお、結晶成長速度,結晶組成,結晶歪等
の変化はこのようなマスクの形態だけで決まるばかりで
なく、結晶成長条件によって多くの変化や複雑な変化を
与える。例えば、マスクのない領域に結晶歪を有する結
晶成長条件として、マスクに挟まれた領域に結晶歪を与
えないようにすることも可能である。
【0060】この製造方法によれば、選択結晶成長技
術,結晶面方位の選択、且つコンタクト層を横方向エッ
チングの阻止層とする技術によって、分割された各々の
活性領域は滑らかな遷移領域によって境界での反射が防
止でき、レーザ光のモードが乱れることはない。また、
複雑の活性領域に分割するための分割溝は深さ及び幅の
寸法制御性に優れ、共振器方向側壁面と溝低面とのなす
角が鈍角となるような傾斜面、若しくは湾曲面とした構
成とすることが可能となって、レーザ光のモードの乱れ
を防止したものである。
【0061】図13は本発明の第5の実施例に係わる波
長可変型DFBレーザの概略構造を示す断面図である。
なお、図6と同一部分には同一符号を付して、その詳し
い説明は省略する。基本的な構成は第3の実施例と同様
であり、n型InP基板30上に回折格子31が形成さ
れ、この回折格子31上には光ガイド層及び量子井戸構
造部からなる活性領域40が形成されている。活性領域
40は選択結晶成長によって2種類,3領域に分けて構
成され、その境界領域は徐々に厚さが変わる遷移領域と
なっている。さらに、p型InPクラッド層36,In
GaAsコンタクト層37,p型オーミック電極38,
n型オーミック電極39,活性領域分離溝43,誘電体
無反射コート膜45も第3の実施例と同様に形成されて
いる。
【0062】次に、上記構成の半導体レーザの製造方法
について、図14〜図16を参照して以下に説明する。
図14は選択結晶成長マスクを説明するための平面図で
あって、図13に対応させて示す。図15及び図16は
半導体レーザの製造工程の概略を示すものである。図1
5(a)〜(f)は活性領域軸に垂直な断面図であっ
て、図13に示すi−j断面である。図16(a)〜
(f)は図15(a)〜図4(f)に直交する断面図で
あって、図13の波線円g領域である。
【0063】まず、図13で示すように、n型InP基
板30の上に1次の回折格子31を2光束干渉露光法に
よって周期240nmとなるよう形成する。回折格子の
溝が活性領域軸に直交するように基板面方位を決まる。
この回折格子31を形成した面が基板主面であり、基板
主面を(100)結晶面とした場合、共振器軸方向は
(0-1-1)方向となる。
【0064】次いで、図14に示すように基板主面にア
モルファスSi膜を500nm,SiO膜を200nm
の厚さに積層してなる選択成長マスク51を、化学的気
相成長(CVD)方法で形成した後、パターン化技術に
よって一対のマスクに整形する。マスクは500nm以
上の厚さにした場合には、後述する約620℃の結晶成
長温度に耐えられるように積層構造とすることが望まし
い。マスクの厚さは活性領域の必要厚さ及び耐熱性によ
って決まり、活性領域の厚さが100nm以下では光ガ
イド効果が少なくなり、1200nm以上では結晶成長
時にマスク割れが生じることとなる。図14において
は、後述の活性領域形成時にマスクの影響を受ける領域
52と、受けない領域53を示した。また、54は遷移
領域である。
【0065】次いで、マスクを通して活性領域を形成す
る。前記図9に示すように、活性領域はバッファーIn
P層とInPに格子整合したInGaAsP層からなる
光ガイド層32及び多重量子井戸層で構成され、これら
を連続して形成する。多重量子井戸構造はInGaAs
ウエル層33(厚さ4〜12nm),InGaAsPバ
リア層34(厚さ5〜12nm)を交互に3〜10回繰
り返して形成する。この際、異常結晶成長は後述のパタ
ーン化工程において障害となるので避けなければならな
い。そのために、活性領域の厚さを選択成長マスク未満
の厚さに形成することが、マスク上への異常結晶成長を
防止する方策として有効である。また、多層マスク構成
にして上層を下層マスクより大きくすることも有効であ
る。
【0066】結晶成長方法には有機金属を用いたCVD
法(MOCVD法)を使用し、各層を順次形成した(成
長条件は620℃,150Torr、総ガス流量10 l/mi
n)。活性領域はマスクの近傍で結晶成長速度が速く、
マスクからはなれるに従って遅くなることから、遷移領
域を経て連続的に活性領域の厚さが変化している。同時
に、結晶組成も連続的に変化している。結晶組成はIn
x Ga1-x Asy 1-y 井戸層のx値とy値がマスクの
有無によって局所的に0.02程度変わる。
【0067】なお、InGaAsウエル層33を形成す
る際に反応ガス供給量を変える、圧力を変える、成長温
度を変える等の結晶成長条件を操作することによって、
InGaAsウエル層33の組成が変わり、Inx Ga
1-x AsのInAs組成xが0.6程度で0.3〜0.
6%の圧縮歪をマスクに挟まれた領域にだけ強く加えた
歪量子井戸構造を構成することもできる。
【0068】次に、図15及び図16を参照して実施例
レーザを完成するまでの一連の工程を説明する。これま
での工程を通してできあがった構成を図15(a)及び
図16(a)に示した。図15(a)及び図16(a)
において30はn型InP基板、51は選択成長マス
ク、40は活性領域である。
【0069】次いで、図15(b)及び図16(b)に
示すように、活性領域40をパターン化技術と臭化水素
混酸によるエッチングによってストライプ状に加工す
る。このストライプは、一対のマスクの間を通すように
0.8〜1.2μm幅に形成する。この際、活性層の厚
さが部分的に異なっていることを利用すれば、自己整合
的に活性層幅の異なるストライプを簡単に形成できる。
ここで、マスクに接して成長した結晶部は厚さ制御性及
び組成制御性がマスクから比較的離れた結晶部に比べて
極めて劣ることから、これを除去して特性劣化を防止す
ることが必要である。
【0070】次いで、図15(c)及び図16(c)に
示すように、基板主面に活性層40を囲むように2回目
の結晶成長によってp型InPクラッド層36(厚さ
1.5μm)、InGaAsコンタクト層37(厚さ
0.5μm)をMOCVD方法によって順次形成した
後、パターン化技術によってコンタクト層37を4〜1
0μm幅に加工する。この際、コンタクト層37の両側
にもダミーのコンタクト層ストライプ(図示せず)を形
成しておくと、後述の横方向エッチングを完全に阻止す
ることができる。
【0071】次いで、以上のように作製した基板に対
し、図15(d)及び図16(d)に示すように、Si
O絶縁膜55を選択的に形成すると共にAuZnオーミ
ック電極56をリフトオフ加工によって形成する。Si
O絶縁膜55は常圧CVD方法によって厚さ700nm
に形成した後パターン化した。AuZnオーミック電極
56は真空蒸着方法によって形成した。
【0072】次いで、図15(e)及び図16(e)に
示すように、基板上にTiPtAu電極57を選択的に
形成し、これをマスクとしてSiO膜55をパターニン
グする。TiPtAu電極57の幅はコンタクト層37
の幅より6μm程度広く形成する。この工程によって、
p型InPクラッド層36及びInGaAsコンタクト
層37が部分的に露出することとなる。
【0073】次いで、図15(f)に示すように、Si
O膜55をエッチングマスクとして塩酸混液でp型In
Pクラッド層36を選択的にエッチング除去して、共振
器軸に沿ったいわゆる素子分離を行う。この際、p型I
nPクラッド層36の横方向侵食はInGaAsコンタ
クト層37まで到達させてはならない。それは、後述の
分割溝を形成する工程でInGaAsコンタクト層37
がエッチングされるのを防止するためである。なお、図
16(e)に示すように、露出しているInGaAsコ
ンタクト層37はエッチングされないで、InPクラッ
ド層36のマスクとして働く。
【0074】次いで、図16(f)に示すように、Si
O膜55をエッチングマスクとしてInGaAsコンタ
クト層37を硫酸混液でエッチング除去し、このInG
aAsコンタクト層37をマスクとして分割溝が任意の
深さになるように制御しながらp型InPクラッド層3
6をエッチングすることによって、活性領域分割溝43
を形成する。この際、エッチングによって形成した溝4
3の共振器方向側壁面43aと溝底面とのなす角度が鈍
角となる。これは、前述の結晶面方位指定によって達成
されたものである。また、InGaAsコンタクト層3
7によってp型InPクラッド層36の横方向侵食が阻
止されることから、分割溝幅の寸法制御性は良い。
【0075】なお、p型InPクラッド層36をエッチ
ングすると同時に素子分離で形成されたメサはさらに横
方向にエッチングされるが、InGaAsコンタクト層
37でエッチングが阻止されてInGaAsコンタクト
層37の幅に制御されたストライプメサが形成できる
(図16(f)参照)。
【0076】このように構成したレーザウエハ基板の裏
面には、TiPtAu電極57形成時に合わせて設けた
AuGeオーミック電極39が真空蒸着方法によって形
成されており、へき開によって形成したレーザ端面には
無反射コート膜45をCVD方法によって形成して半導
体レーザを完成する。
【0077】以上のように作製した半導体レーザの両端
の電極に与える電流値を等しくした状態で中央の電極と
の割合を変化させながらレーザ発振させたところ、しき
いキャリア密度の大きな変化に起因にして、波長可変量
が従来のDFBレーザに比べて10倍以上の8〜12n
mという優れた特性が得られた。また、スペクトル線幅
は波長チューニング時においても0、8MHz以下であ
り、従来の通常の DFBレーザ装置に比べて優れた特性を
有していた。
【0078】なお、本発明は上述した実施例に限定され
るものではない。例えば、図17に示すように、選択結
晶成長マスク56,57を2対設けて活性領域を成長形
成したのち、エッチングマスクを用いて活性領域をパタ
ーニングすれば、活性層厚み(量子井戸幅及び障壁幅)
と共に活性層幅58を変えることが可能である。この場
合、上述の活性層厚み,結晶組成,結晶歪,等の作用に
加えて活性層幅の作用を同時に与えることができ、これ
らの相乗効果によってさらに特性の優れた半導体レーザ
装置を構成することができる。
【0079】また、結晶組成と共に活性領域のキャリア
濃度も、選択結晶成長マスクの有無によって変化する。
例えば、不純物としてZn,Sを添加した場合には顕著
にその効果が現れる。即ち、常気圧の高い元素は狭いマ
スクの間に付着する確率が低く、キャリア濃度が局所的
に低下する。逆に、Siを添加した場合には局所的に高
くなる。この作用と上述の活性領域の構造作用,組成作
用,歪作用等を適合させることによっても特性の向上が
認められる。
【0080】次に、本発明の第6乃至第8の実施例につ
いて説明する。
【0081】本実施例は、例えば量子井戸が量子井戸箱
であって単位体積あたりの該量子井戸箱の数が異なる複
数の領域を同一共振器内に形成し、これらの領域に対応
して複数の電極を設けることによって、量子井戸の密度
の異なる複数の領域に独立に電流を注入できるようにし
た半導体レーザである。
【0082】本実施例によれば、共振器方向に形成され
た量子井戸の密度の異なる複数の領域においては、キャ
リア密度−利得特性がそれぞれ異なる。そのため、発振
に必要なキャリア密度のしきい値を変化させる事がで
き、その変化の大きさは量子井戸の密度の差によって決
まるので従来よりも大きく変化させることができる。そ
の結果として、発振波長の可変幅を大きくすることが可
能となる。
【0083】図18は、本発明の第6の実施例に係わる
波長可変型DFBレーザの概略構造を示す断面図であ
り、この実施例では単位厚さ当たりの量子井戸薄膜の数
を変えている。図中60はn型InP基板であり、この
基板60上に周期240nmの1次の回折格子61が形
成されている。回折格子61上には1.3μm組成のI
nGaAsP光導波層(厚さ50nm)62、及び共振
器方向に7層,15層,7層のInGaAs量子井戸薄膜
(厚さ8nm)と1.3μm組成のInGaAsPバリ
ア層(厚さ150nm,70nm,150nm)からな
る幅1μmのストライプ状の量子井戸活性層63a,6
3b,63cが形成されている。
【0084】活性層63a,63b,63cを埋め込む
ようにp型InPクラッド層(厚さ2μm)66が形成
され、その上には活性層63a,63b,63cに対応
してp型InGaAsPコンタクト層(厚さ0.5μ
m)67a,67b,67cが形成されている。そし
て、コンタクト層67a,67b,67c上にp側電極
68a,68b,68cが設けられ、基板60の下面に
n側電極69が設けられている。
【0085】このような半導体レーザに、電極68a,
68b,68cから合計が100mAとなるように電流を
注入し、電極68aと電極68cから注入する電流を等
しくして、電極68bから注入する電流を10mAから
90mAまで変化させた。すると、発振に必要なキャリ
ア密度のしきい値は大きく変化し、その結果として発振
波長は18nm変化した。この波長可変量は、従来のD
FBレーザの波長可変量6nmと比べ3倍の波長可変幅
という優れた特性である。また、波長可変時のスペクト
ル線幅は、700kHz以下と従来のDFBレーザより
も優れた特性を示した。さらに、発振に必要な電流のし
きい値を小さくできたので、100mAの電流注入に対
する光出力は20mWとなり、従来の波長可変の半導体
レーザの10mWから倍増した。
【0086】図19は、本発明の第7の実施例に係わる
波長可変型DFBレーザの要部構成を示すもので、単位
断面当りの量子井戸細線の数を変えた量子井戸活性層の
斜視図である。この実施例と先に説明した第6の実施例
との相違点は、量子井戸薄膜活性層63a,63b,6
3cの代わりに、図19(a)に示すように量子井戸細
線活性層71a,71b,71cを用い、この量子井戸
細線の密度を共振器方向に粗密粗と変化させたことにあ
る。また、量子井戸細線の方向を変えて、図19(b)
に示すように量子井戸細線活性層72a,72b,72
c、又は図19(c)に示すように量子井戸細線活性層
73a,73b,73cのようにしてもよい。
【0087】第7の実施例における半導体レーザに、第
6の実施例と同様に注入電流を変化させたところ、波長
可変量として20nmという優れた特性が得られ、この
時のスペクトル線幅も500kHz以下であった。
【0088】図20は、本発明の第8の実施例に係わる
波長可変型DFBレーザの要部構成を示すもので、単位
体積当りの量子井戸箱の数を変えた量子井戸活性層の斜
視図である。この実施例と先に説明した第6の実施例と
の相違点は、量子井戸薄膜活性層63a,63b,63
cの代わりに、量子井戸箱活性層74a,74b,74
cを用い、この量子井戸箱の密度を共振器方向に粗密粗
と変化させたことにある。
【0089】第8の実施例における半導体レーザに、第
6の実施例と同様に注入電流を変化させたところ、波長
可変量として30nmという優れた特性が得られ、この
時のスペクトル線幅も300kHz以下であった。
【0090】次に、本発明の第9及び第10の実施例に
ついて説明する。
【0091】本実施例は、活性層に接する半導体層のド
ーピング状態を活性領域毎に変えたものであり、活性層
に接する半導体層から活性層への不純物拡散の結果とし
て、活性層のドーピング状態を活性領域毎に異ならせて
いる。
【0092】具体的な製造方法としては、半導体基板上
に活性層を形成する工程と、この活性層に接して設けら
れた活性層よりも禁制帯幅の広い半導体層の所定領域に
他の部分と異なるドーピング領域を形成する工程と、回
折格子を形成する工程と、活性層への不純物拡散工程
と、所定領域とその他の領域とに対応して複数の電極を
形成する工程とを含むものである。
【0093】また、半導体基板上に活性層を形成する工
程と、その上に活性層よりも禁制帯幅の広い半導体層を
形成する工程と、その活性層よりも禁制帯幅の広い半導
体層の所定領域をエッチングする工程と、回折格子を形
成する工程と、活性層への不純物拡散工程と、所定領域
とその他の領域とに対応して複数の電極を形成する工程
とを含むものである。
【0094】ここで、各工程の順序は上記の順序に限定
されるものではない。また、活性層への不純物拡散工程
は独立した工程である必要はなく、例えばオーバーグロ
ース工程で同時に拡散が起こるような場合も含むものと
する。
【0095】本実施例によれば、活性層にドーピングさ
れる不純物密度を、共振器方向に形成された複数の活性
領域毎に変えることができる。一般に、活性領域の微分
利得は伝導帯と価電子帯の非対称性のため、アクセプタ
・ドーピングにより大きくなり、ドナー・ドーピングに
より小さくなる。即ち本実施例によれば、容易に活性領
域の注入キャリア対利得特性を活性領域毎に変えること
ができるわけである。そして、複数の電極により、各活
性領域に注入される電流、つまり利得は独立に制御する
ことができる。
【0096】図21中に (1),(2) に示すように、それ
ぞれの活性領域が固有の注入キャリア対利得特性を有し
ているので、発振に必要な利得を得るための各電極から
流す電流の割合を変えることにより、平均の発振しきい
キャリア密度を大きく変えることができる。発振波長は
回折格子の周期と等価屈折率の積に比例し、等価屈折率
はキャリア密度が高いほど小さくなるから、平均のキャ
リア密度の変化により大きく波長を変化させることがで
きる。
【0097】図22は、本発明の第9の実施例に係わる
波長可変型DFBレーザの概略構造を示す断面図であ
る。図中80はn型InP基板であり、このInP基板
80上に一次のλ/4位相シフト回折格子81が形成さ
れ、この回折格子81上には、InPに格子整合し波長
1.15μm組成,厚さ70nmのInGaAsP光導
波層82、InPに格子整合し波長1.55μm組成,
厚さ100nmのInGaAsP活性層83が形成され
ている。
【0098】活性層83上の中央の所定領域912
は、厚さ10nmのInPエッチングストップ層84と
InPに格子整合し波長1.3μm組成,厚さ50nm
のInGaAsP拡散ストップ層85が形成されてい
る。そして、拡散ストップ層85の上及び活性層83の
両端の領域911 ,913 には、p型InPクラッド層
86,p型InGaAsコンタクト層87が形成されて
いる。p型ドーパントはZnであり、エッチングストッ
プ層84のZn濃度は1017cm-3以下、p型クラッド
層86のZn濃度は1×1018cm-3である。コンタク
ト層87の上には各領域に対応してp側電極881 ,8
2 ,883 が、基板80の下面全面にはn側電極89
が設けられている。
【0099】また、各領域の間には、絶縁分離のために
半絶縁性InP層92が形成されている。各領域91の
長さはそれぞれ約400μm、レーザの共振器長は1.
2mmで、分離領域22の長さは5μmである。回折格
子81の位相シフト93は中央部に設けられている。ま
た、両端面には反射率1%以下の無反射コーティング膜
95が形成されている。この半導体レーザは中央の電極
882と両端の電極881 ,883 に独立に電流を流せ
るように、パッケージ(図では省略)に実装されてい
る。
【0100】次に、上記構成の半導体レーザの製造方法
について、図23を参照して説明する。まず、図23
(a)に示すように、n型InP基板80の上に一次の
周期約240nmの回折格子81を形成する。このと
き、レーザの中央になる部分にλ/4位相シフト領域9
3を形成する。続いて、この回折格子81を平坦に埋込
むように、InPに格子整合し波長1.15μm組成,
厚さ70nmのアンドープInGaAsP光導波層82
を成長し、さらにInPに格子整合し波長 1.55μm組
成,厚さ100nmのアンドープInGaAsP活性層
83、厚さ10nmのアンドープInPエッチングスト
ップ層84、及びInPに格子整合し波長1.3μm組
成,厚さ50nmのアンドープInGaAsP拡散スト
ップ層85を成長する。この例では、減圧有機金属気相
成長(LP−MOCVD)法により成長を行ったが、他
の成長方法でもかまわない。
【0101】次いで、図23(b)に示すように、全面
にCVD法によりSiO2 膜96を形成し、レーザの中
央部の長さ400μmの領域212 の上に通常のPEP
によりレジストマスク97を形成する。そして、両端に
なる領域911 ,913 の部分のSiO2 膜96をフッ
化アンモニウム溶液で除去し、続いて拡散ストップ層8
5を、硫酸:過酸化水素:水=1:1:20(室温)の
エッチャントで除去する。このエッチャントはInPに
対するエッチレートが低いため、エッチングストップ層
84の上でエッチングを停止させることができる。この
後、必要に応じてエッチングストップ層84を除去す
る。
【0102】次いで、中央部912 に残ったSiO2
を除去した後、図23(c)に示すように、その上にZ
n濃度1×1018cm-3,厚さ1.5μmのp型InP
クラッド層86、Zn濃度5×1018cm-3,厚さ0.
7μmのp型InGaAsコンタクト層87をLP−M
OCVDに法より形成する。成長温度は620℃であ
る。このとき、クラッド層86から下の層にZnの拡散
が起こる。しかし、ZnがInGaAsP層を拡散する
速度はInP層を拡散する速度よりも遅いので、レーザ
中央部の領域912 ではZnの拡散は拡散ストップ層8
5で阻止され、アンド−プInPエッチングストップ層
84及び活性層83のアクセプタ濃度は1017cm-3
下に止まる。一方、拡散ストップ層85のない両端部で
は、p型クラッド層86から活性層83に5×1017
-3程度のZnアクセプタが拡散され、ドープされる。
【0103】この後、図には無いが、活性領域がストラ
イプ状になるように横方向の閉じ込め構造を形成する。
ここでは、活性領域の両側に活性層より深い溝を形成
し、その中をMOCVD法によりFeドープの半絶縁性
InPで埋込んだ構造を用いたが、本発明は横方向閉じ
込め構造の種類に関係なく適用可能である。
【0104】次いで、図23(d)に示すように、Si
2 膜(図示せず)をマスクとして各領域の境界部長さ
5μmの領域に分離溝を形成し、その内部にMOCVD
法によりFeドープの半絶縁性InP分離領域92を選
択成長する。その後、各領域のコンタクト層87上にp
側電極88を、厚さ80μmに研磨した裏面全体にn側
電極89をそれぞれ形成した後、長さ1.2mmのチッ
プにへき開し、SiNx 無反射コート膜95を両端面に
形成、モジュールにマウント、ボンディング、実装する
ことにより、前記図22に示すような構造が得られる。
【0105】このようにして作製された半導体レーザ
は、中央部912 の活性層のZn濃度が両端部911
913 の活性層のZn濃度よりも低くなっている。この
結果、両端部911 ,913 と中央部912 の注入キャ
リア対利得特性は、それぞれ前記図21中の (1),(2)
に示すようになる。今、最初の発振状態で動作点が図2
1でA1,A2の点にあるものとする。ここで、出力パ
ワーが一定になるように合計電流を調整しながら、両端
部911 ,913の電流を増やし、中央部912 の電流
を減らすものとする。両端部911 ,913 は中央部9
2 よりも微分利得が大きいので、両端部で増やした注
入キャリアと比べて中央部で減らした注入キャリアの方
が大きい。その結果、動作点はB1,B2に移動し、最
初の状態と同一の光出力を保ちながら、全体の実効的な
キャリア密度を最初の状態より小さくできることにな
る。
【0106】従って、全体の等価屈折率が大きくなり、
発振波長は最初の状態よりも長くなる。このとき、ブラ
ック波長そのものがモード配置といっしょに変化するの
で、モードジャンプや発振スペクトル線幅の広がり無し
に、100オングストローム程度の広い波長範囲を可変
できる。
【0107】この例では、InPエッチングストップ層
84及びInGaAsP拡散ストップ層85はアンドー
プとしたが、これらのうち少なくとも一方をnドープに
し、中央部912 の活性層をオーバーグロース時の拡散
でn型にすることも可能である。n型活性層は微分利得
が低いので、さらに両端部911 ,913 との微分利得
の差を大きくできる。この場合、InGaAsP層85
は拡散ストップ層ではなく、固相拡散層として働く。さ
らに、InPエッチングストップ層84とInGaAs
P層85の少なくとも一方にn型ドーピングを行い、ク
ラッド層86の成長開始時にドーピングを行わないこと
で、逆に中央部912 のみを高ドープn型にし、両端部
911 ,913 の活性層をアンドープないし低ドープに
保つことも考えられる。また、中央部912 と両端部9
1 ,913 の関係を逆転させ、両端部のみ911 ,9
3 にInGaAsP層85を残すことも可能である。
【0108】InPエッチングストップ層84は必須な
ものではなく、拡散ストップ層85と活性層83が直接
接していてもよい。InGaAsP拡散ストップ層85
の両端部911 ,913 は完全に除去されている必要は
なく、例えばエッチングにより薄くするだけでも拡散ス
トップ層としての働きを抑制できる。いずれの場合にお
いても、隣接する領域91のドーピング状態が変化し、
活性層83の微分利得が変化する。
【0109】図24は、本発明の第10の実施例に係わ
る波長可変型DFBレーザの製造工程を示す図である。
なお、図22と同一部分には同一符号を付して、その詳
しい説明は省略する。まず、図24(a)に示すよう
に、n型InP基板80の上に薄いアンドープInP層
101を成長し、SiO2 膜102を形成後、レーザ中
央部912 のSiO2 膜102を除去し、このSiO2
膜102をマスクにして中央部912 のInP層101
の領域103にn型のドーパントであるSiをPH3
囲気化での気相拡散によりドーピングする。次いで、S
iO2 膜102を剥離し、表面を少しエッチングして平
坦かつダメージの小さな表面を出した後に、回折格子8
1を形成する。
【0110】そして、図24(b)に示すように、回折
格子81を平坦に埋込む如くInPに格子整合し波長
1.15μm組成,厚さ70nmのアンドープInGa
AsP光導波層82を成長し、その上にInPに格子整
合し波長1.55μm組成,厚さ100nmのアンドー
プInGaAsP活性層83、InPに格子整合し波長
1.3μm組成,厚さ30nmのアンドープInGaA
sP光導波層82′、Zn濃度1×1018cm-3、厚さ
1.5μmのp型InPクラッド層86、Zn濃度5×
1018cm-3,厚さ0.7μmのp型InGaAsコン
タクト層87をLP−MOCVD法により形成する。成
長温度は620℃である。
【0111】このとき、p型クラッド層86からZn
が、またn型InP領域103からSiが活性層83に
拡散する。レーザ両端部911 ,913 ではZnの拡散
のみが起こりp型になるのに対して、中央部912 では
ZnとSiの両者が補償し合い、アンドープないし低ド
ープ領域となる。その結果、相対的に両端部911 ,9
3 の微分利得が大きくなり、第9の実施例と同様の効
果が生じる。電極その他の製造方法は第9の実施例の場
合と同じである。また、この例でも第9の実施例同様、
種々の変形応用が可能である。
【0112】上記の実施例では材料としてInGaAs
P/InP系を例にとって説明したが、InAs,Ga
As,AlAs,InP,GaP,AlP,InSb,
GaSb,AlSb,GaN,CdTe,HgTe,Z
nS,ZnSe,ZnTeなどの化合物半導体、及びこ
れらの3元混晶、4元混晶など、様々な材料に応用でき
る。ドーパントも様々なものが考えられる。活性層とし
ては量子井戸構造,歪量子井戸構造,量子細線構造など
であってもよいし、光導波層もGRIN構造であっても
よい。
【0113】また、上記の拡散制御層は光導波層の一
部、或いはクラッド層の一部として機能してもよい。回
折格子は活性層の下部でなく上部にあってもよい。これ
ら全ての例について、n型とp型の関係を入れ替えても
よいことは明らかである。その他、領域の数や位置,各
領域の長さ,端面反射率,位相シフトの有無や方法や位
置など、種々変形して応用,実施することができる。
【0114】次に、本発明の第11乃至第13の実施例
について説明する。
【0115】この実施例は、例えばクラッド層の屈折率
を変えることで異なった光閉じ込め係数を持つ複数の領
域を同一共振器内に形成し、これらの領域に対応して複
数の電極を設けることによって光閉じ込め係数の異なる
複数の領域に独立に電流を注入できるようにした半導体
レーザである。
【0116】本実施例によれば、共振器方向に形成され
た光閉じ込め係数の異なる複数の領域において、共振器
内を導波する光に対する利得の寄与がそれぞれ異なる。
そのため、発振に必要なキャリア密度のしきい値を変化
させることができ、その変化の大きさは光閉じ込め係数
の差によって決まるので、従来よりも大きく変化させる
事ができる。その結果として、発振波長の可変幅を大き
くすることが可能となる。
【0117】図25は、本発明の第11の実施例に係わ
る波長可変型DFBレーザの概略構造を示す断面図であ
り、この実施例ではクラッド層の組成を変えている。な
お、図2と同一部分には同一符号を付して、その詳しい
説明は省略する。
【0118】n型InP基板10上に周期240nmの
1次の回折格子11が形成されている。回折格子11上
には1.3μm組成のInGaAsP光導波層(厚さ50
nm)12が形成され、その上には10層のInGaAs
量子井戸層(厚さ8nm)13と1.3μm組成のIn
GaAsPバリア層(厚さ10nm)14からなる幅1
μmのストライプ状の量子井戸活性層20が形成されて
いる。
【0119】この活性層20を埋め込むように、共振器
方向に1.3μm組成のInGaAsP,InP,1.
3μm組成のInGaAsPからなるp型クラッド層
(厚さ2μm)16a,16b,16c,及びp型In
GaAsPコンタクト層(厚さ0.5μm)17a,1
7b,17cが形成されている。そしてコンタクト層1
7a,17b,17c上にp側電極18a,18b,1
8cが設けられ、基板10の下面にn側電極19が設け
られている。
【0120】この実施例では、光閉じ込め係数の異なる
複数の領域を得るために、クラッド層16a,16b,
16cをそれぞれ異なる組成の半導体層とし、活性層と
の屈折率差が異なるようにしている。
【0121】このような半導体レーザに、電極18a,
18b,18cから合計が100mAとなるように電流を
注入し、電極18aと電極18cから注入する電流を等
しくして、電極18bから注入する電流を10mAから
90mAまで変化させた。すると、発振に必要なキャリ
ア密度のしきい値は大きく変化し、その結果として発振
波長は12nm変化した。この波長可変量は、従来のD
FBレーザの波長可変量6nmと比べ2倍の波長可変幅
という優れた特性である。また、波長可変時のスペクト
ル線幅は、700kHz以下と従来のDFBレーザより
も優れた特性を示した。さらに、発振に必要な電流のし
きい値を小さくできたので、100mAの電流注入に対
する光出力は20mWとなり、従来の波長可変の半導体
レーザの10mWから倍増した。
【0122】図26は、本発明の第12の実施例に係わ
る波長可変型DFBレーザの概略構造を示すもので、
(a)は共振器方向の断面図、(b)は(a)の矢視A
−A′断面図である。なお、図25と同一部分には同一
符号を付して、その詳しい説明は省略する。この実施例
と先に説明した第11の実施例との相違点は、異なる光
閉じ込め係数を持つ複数の領域を得る手段として、活性
層の幅を変化させたことにある。
【0123】回折格子11の形成された基板10上に形
成された光導波層12の上に、10層のInGaAs量
子井戸層(厚さ8nm)と1.3μm組成のInGaA
sPバリア層(厚さ10nm)からなる、共振器方向に
幅0.8μm、1.2μm、0.8μmのストライプ状
の量子井戸活性層24a,24b,24cが形成されて
いる。活性層24a,24b,24cを埋め込むように
p型InPクラッド層(厚さ2μm)16が形成され、
その上には活性層24a,24b,24cに対応してコ
ンタクト層17a,17b,17cが形成されている。
そして、電極18a,18b,18cと電極19が先と
同様に設けられている。
【0124】この実施例における半導体レーザに、第1
1の実施例と同様に注入電流を変化させたところ、波長
可変量として12nmという優れた特性が得られ、この
時のスペクトル線幅も800kHz以下であった。
【0125】図27は、本発明の第13の実施例に係わ
る波長可変型DFBレーザの概略構造を示す断面図であ
る。なお、図25と同一部分には同一符号を付して、そ
の詳しい説明は省略する。この実施例と先に説明した第
11及び第12の実施例との相違点は、異なる光閉じ込
め係数を持つ複数の領域を得る手段として、光導波層の
組成を変化させたことにある。
【0126】基板10に形成された回折格子11上に、
共振器方向にそれぞれ1.1μm組成,1.3μm組
成,1.1μm組成のInGaAsP光導波層(厚さ5
0nm)12a,12b,12cが形成されている。そし
て、これらの上に活性層20及びクラッド層16が形成
され、さらに光導波層12a,12b,12cに対応し
てコンタクト層17a,17b,17cが形成されてい
る。そして、先の実施例と同様に、電極18a,18
b,18cと電極19が設けられている。
【0127】この実施例における半導体レーザに、第1
1の実施例と同様に注入電流を変化させたところ、波長
可変量として10nmという優れた特性が得られ、この
時のスペクトル線幅も700kHz以下であった。
【0128】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、共
振器方向にキャリア密度−利得特性の異なる複数の活性
領域を設け、それぞれの活性領域に対し独立に電流を注
入する構成としているので、注入する電流の割合を変化
させるだけで、波長可変量が大きく、波長可変時の線幅
も非常に狭い半導体レーザ装置を実現することが可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の作用を説明するものでキャリア密度と
利得との関係を示す特性図、
【図2】第1の実施例に係わる波長可変型DFBレーザ
の概略構造を示す断面図、
【図3】第1の実施例レーザの製造工程を示す断面図、
【図4】第2の実施例に係わる波長可変型DFBレーザ
の概略構造を示す断面図、
【図5】第3及び第4の実施例におけるマスク幅と組成
との関係を示す特性図、
【図6】第3の実施例に係わる波長可変型DFBレーザ
の概略構造を示す断面図、
【図7】第3の実施例における選択結晶成長マスクを説
明するための平面図、
【図8】第3の実施例における光出射面部構造を示す断
面図、
【図9】第3の実施例における多重量子井戸構造部分を
拡大して示す断面図、
【図10】第3の実施例レーザの製造工程を示す断面
図、
【図11】第4の実施例に係わる波長可変型DFBレー
ザの概略構造を示す断面図、
【図12】第4に実施例における選択結晶成長マスクの
一例を示す平面図、
【図13】第5の実施例に係わる波長可変型DFBレー
ザの概略構造を示す断面図、
【図14】第5の実施例における選択結晶成長マスクを
説明するための平面図、
【図15】第5の実施例レーザの製造工程を示す断面
図、
【図16】第5の実施例レーザの製造工程を示す断面
図、
【図17】第5の実施例における選択成長マスクの他の
例を示す平面図、
【図18】第6の実施例に係わる波長可変型DFBレー
ザの概略構造を示す断面図、
【図19】第7の実施例に係わる波長可変型DFBレー
ザの要部構成を示す斜視図、
【図20】第8の実施例に係わる波長可変型DFBレー
ザの要部構成を示す斜視図、
【図21】第9及び第10の実施例におけるキャリア密
度と利得との関係を示す特性図、
【図22】第9の実施例に係わる波長可変型DFBレー
ザの概略構造を示す断面図、
【図23】第9の実施例レーザの製造工程を示す断面
図、
【図24】第10の実施例に係わる波長可変型DFBレ
ーザの製造工程を示す断面図、
【図25】第11の実施例に係わる波長可変型DFBレ
ーザの概略構造を示す断面図、
【図26】第12の実施例に係わる波長可変型DFBレ
ーザの概略構造を示す断面図、
【図27】第13の実施例に係わる波長可変型DFBレ
ーザの概略構造を示す断面図、
【図28】従来のDFBレーザにおけるキャリア密度と
利得との関係を示す特性図。
【符号の説明】
10…n型InP基板、 11…回折格子、 12,12′…InGaAsP光導波層、 13…InGaAsウエル層、 14…InGaAsPバリア層、 15…InPエッチングストッパー層、 16…p型InPクラッド層、 17…p型InGaAsコンタクト層、 18(181 ,182 ,183 )…p側電極、 19…n側電極、 20…量子井戸構造部、 21…ウエル数2の量子井戸構造部、 22a,22b…ウエル数4の量子井戸構造部、 23…3%圧縮歪量子井戸構造部、 24a,24b…1%圧縮歪量子井戸構造部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 信夫 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝総合研究所内 (72)発明者 定政 哲雄 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝総合研究所内 (72)発明者 櫛部 光弘 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株 式会社東芝総合研究所内

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】分布帰還型の半導体レーザからなり、同一
    共振器内に形成したキャリア密度−利得特性の異なる複
    数の活性領域と、該複数の活性領域に対応して設けられ
    た複数の電極とを具備してなることを特徴とする半導体
    レーザ装置。
  2. 【請求項2】前記キャリア密度−利得特性の異なる活性
    領域として、ウエル数,ウエル厚,バリア厚,バリア高
    さ,バリア組成,ドーピング量及び歪み量のうちの少な
    くとも1つが異なる量子井戸構造,量子細線構造又は量
    子箱構造を用いたことを特徴とする請求項1記載の半導
    体レーザ装置。
  3. 【請求項3】半導体基板上に共振器方向に回折格子を形
    成する工程と、活性領域を構成する量子井戸構造,量子
    細線構造又は量子箱構造の内部にエッチングストッパー
    層を形成する工程と、少なくとも一部が前記エッチング
    ストッパー層に達するまでエッチングを行う工程と、キ
    ャリア密度−特性の異なる活性領域に対応して複数の電
    極を形成する工程とを含むことを特徴とする半導体レー
    ザ装置の製造方法。
  4. 【請求項4】半導体基板上に共振器方向に回折格子を形
    成する工程と、共振器方向に沿って共振器方向と略直交
    する方向の幅が異なる選択成長マスクを形成する工程
    と、前記マスクを用いてキャリア密度−利得特性の異な
    る複数の活性層を選択成長によって形成する工程と、前
    記活性領域に対応して複数の電極を形成する工程とを含
    むことを特徴とする半導体レーザ装置の製造方法。
  5. 【請求項5】半導体基板上に共振器方向に回折格子を形
    成する工程と、共振器方向に沿って共振器方向と略直交
    する方向の間隔が異なる一対の選択成長マスクを形成す
    る工程と、前記マスクを用いてキャリア密度−利得特性
    の異なる複数の活性層を選択成長によって形成する工程
    と、前記活性領域に対応して複数の電極を形成する工程
    とを含むことを特徴とする半導体レーザ装置の製造方
    法。
  6. 【請求項6】分布帰還型の半導体レーザからなり、同一
    共振器内に形成された量子井戸の密度の異なる複数の活
    性領域と、該複数の活性領域に対応して設けられた複数
    の電極とを具備してなることを特徴とする半導体レーザ
    装置。
  7. 【請求項7】共振器方向に複数の活性領域とそれに対応
    する複数の電極を有する分布帰還型の半導体レーザ装置
    において、前記活性領域に接する半導体層のドーピング
    濃度が複数の活性領域で異なっていることを特徴とする
    半導体レーザ装置。
  8. 【請求項8】分布帰還型の半導体レーザからなり、同一
    共振器内に形成された光閉じ込め係数の異なる複数の領
    域と、該複数の領域に対応して設けられた複数の電極と
    を具備してなることを特徴とする半導体レーザ装置。
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