JPH0569335U - 直接噴射式ディーゼルエンジンの燃焼室 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】噴霧に対する空気流の最適化を図り、特に圧縮
行程時にはキャビテイの壁面に当る前に噴霧を広げそし
て壁面に当った噴霧を壁面に沿って広げて霧化を促進
し、膨張行程時には、キャビティ内の火炎や燃料をピス
トンとシリンダヘッドとの間の隙間にすばやく流出させ
ることができる直接噴射式デイーゼルエンジンの燃焼室
を提供することにある。 【構成】ピストンの頂部にカップ状のキャビティを形成
し、キャビティ内に吸入空気のスワールを形成しつつ燃
料噴射ノズルの噴孔からキャビティの周壁に燃料を噴霧
するようにしたものにおいて、キャビティ外側のピスト
ン上面から、キャビティに通じしかも深さ方向の一面が
ピストン軸線方向と平行で他面がスワール方向に対して
深くなる傾斜を持った切欠きを、ノズル噴孔数と同数設
けた。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は直接噴射式ディーゼルエンジンの燃焼室に関する。

【０００２】

【従来の技術及びその技術的課題】

ディーゼルエンジンにおいて、ピストンの頂面に凹設したキャビティとシリン ダヘッドとで画成された燃焼室に、吸入ポートから吸入空気のスワールを形成し つつ、燃料噴射ノズルの噴孔からキャビティの内周面に向かって燃料を噴霧する 直接燃料噴射式のディーゼルエンジンが知られており、キャビティは一般に周壁 が円形のカップ状をなしており、さらに空気との混合を良くするためカップ状の 底壁に円錐状の突起を設けることが多い。 そしてかかる直接燃料噴射式のディーゼルエンジンの燃焼効率化改善策とくに 空気流の制御に関し、特開平５７−１８１９２６号公報には、キャビティの外周 にキャビティと所定の間隔をおいてピストン頂面から平面リング状ないし長円状 の空気溜め用溝を凹設したものが知られている。 しかし、この先行技術は、膨張行程の際に空気溜め用溝からピストンとシリン ダヘッドとの間の隙間に空気を供給し、燃焼を促進する効果はあるものの、圧縮 行程中すなわちクランク角度が約１７０〜１８０°での着火に対してスキッシュ 流を有効に利用できないという問題があった。

【０００３】 また、特開平１−９６４２１号公報には、ピストンの頂面に形成した開口部絞 りより下のキャビティ内周面に、長円状ないし楕円状に開口する凹部を設けるこ とが提案されている。しかし、この先行技術は、高速回転域で燃焼室内に多方向 に向かう空気流を誘発しつつ、スワール速度を適当に抑制することについては効 果があるにしても、膨張行程での逆スキッシュ効果を期待することができないと いう問題があった。

【０００４】 本考案は前記のような問題点を解消するために考案されたもので、その目的と するところは、噴霧に対する空気流の最適化を図り、特に圧縮行程時にはキャビ テイの壁面に当る前に噴霧を広げそして壁面に当った噴霧を壁面に沿って広げて 霧化を促進し、膨張行程時には、キャビティ内の火炎や燃料をピストンとシリン ダヘッドとの間の隙間にすばやく流出させることができる直接噴射式ディーゼル エンジンの燃焼室を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するため本考案は、ピストンの頂部にカップ状のキャビティを 形成し、キャビティ内に吸入空気のスワールを形成しつつ燃料噴射ノズルの噴孔 からキャビティの周壁に燃料を噴霧するようにしたものにおいて、キャビティ外 側のピストン上面から、キャビティに通じしかも深さ方向の一面がピストン軸線 方向と平行で他面がスワール方向に対して深くなる傾斜を持った切欠きを、ノズ ル噴孔数と同数設けたものである。

【０００６】

【実施例】

以下本考案の実施例を添付図面に基いて説明する。 図１ないし図４は、本考案による直接噴射式ディーゼルエンジン用燃焼室を噴 孔数が４つの燃料噴射ノズルに対応する仕様とした実施例を示している。 １はシリンダブロック、２はピストン、３はシリンダブロック１にガスケット を介して載置されたシリンダヘッドである。前記ピストン２には、頂面２０から 横断面円形状でかつ縦断面カップ状のキャビティ４が形成されており、ピストン 頂面２０とシリンダヘッド３との間には隙間Ｃが設けられている。 シリンダヘッド３にはその中心軸がピストン軸線とほぼ一致する燃料噴射ノズ ル５が設けられている。この燃料噴射ノズル５は前記隙間Ｃに先端が位置し、こ こに４つの噴孔が配設され、キャビティ４に向かって燃料を噴霧するようになっ ている。 前記シリンダヘッド３には図示しないが吸入ポートが設けられ、ここからキャ ビティ４に空気が導入され、スワール(旋回流)を構成するようになっている。

【０００７】 上記のような構成は従来のこの種の燃焼室と同様であるが、本考案は、前記ピ ストン２の頂面２０から特殊な切欠き６を噴孔数と同数すなわち４つ等間隔に形 成している。 詳しくは、前記切欠き６は、図１のように、平面から見てキャビティ４に向か って漸進的に広がったほぼ三角状ないしこれに類する形状をなし、頂点６０がキ ャビテイ４の外周面４０よりも半径方向外側のピストン頂面２０に到っている。 切欠き６は稜線６３を境とする第１の面６１と第２の面６２から構成されてい る。第２の面６２は、スワールの流れの方向側にあり、図４のように、キャビテ イ深さ方向ではピストン頂面２０とほぼ直角状(ピストン軸線とほぼ平行)をなし ており、かつ、第２の面６２は、下端すなわち稜線６３から明らかなように、頂 点６０に集束するように深さが漸次浅くなっている。 第１の面６１は、稜線６３から反スワール流方向に漸進的に浅くなってピスト ン頂面２０に達し、かつ、図３のように頂点６０からキャビティ外周面４０に向 かって漸進的に深さが増す傾斜面である。

【０００８】 図５と図６は本考案の別の実施例を示しており、第２の面６２をキャビティ外 周面４０とほぼ接線をなすように結んだものであり、第２の面６２は図５におい ては直線状をなし、図６では曲率状となっている。 これらの場合、第２の面６２とキャビティ外周面４０とでなす角度βが第１の 面６１とキャビティ外周面４０とでなす角度αよりも大きくなり、切欠き６から の空気流の流れがスムーズになるため、キャビテイ４に流れ込む空気流をより大 きく広げるとともに、噴霧のキャビティ外周面４０への接触をより広げることが できる。

【０００９】

【実施例の作用】

エンジンの運転に伴って吸入ポートから空気が導入され、エンジン回転速度に 比例した速度のスワールが形成されるとともに、隙間Ｃによりスキッシュがピス トン頂面２０に形成される。そして、ピストン２が上昇する圧縮行程の末期にお いて、燃料噴射ノズル５の各噴孔から燃料がキャビティ４に向かって噴霧される 。 このとき、図７のようにスワールとスキッシユの合成流である偏向流ｘは、 ピストン頂面２０からスワール方向におよびキャビテイ方向に傾斜する第１の面 ６１にガイドされ、第２の面６２がピストン軸線にほぼ平行でかつキャビティに 向かって広がるように傾斜しているためこれにより流れ方向が決定付けられ、キ ャビティ外周面４０に沿うようにしてキャビテイ４内に勢いよく流れ込む。 前記のように、噴孔からの噴霧燃料は、本来的には図７のＨの方向に向い、キ ャビティ外周面４０と衝突するが、前記のような偏向流ｘの流れ特性から、噴霧 燃料はキャビティ外周面４０に衝突する以前に、強い偏向流ｘとの遭遇で拡散さ せられ、キャビティ外周面４０に衝突する。次いで、キャビティ外周面４０に衝 突した噴霧燃料は、切欠き６からの偏向流ｘがキャビティ外周面４０に沿って流 れることから、これに乗ってキャビティ外周面４０およびこれの近傍で広げられ る。図７において、Ｗ₁は本考案において、噴霧燃料がキャビティ外周面４０に 当ったときの噴霧流の広がりを模式的に示しており、これは、本考案のような切 欠きを設けなかった場合の噴霧流の広がりＷ₂にくらべ著しく大きく、このため 、霧化混合が効率よく行われる。

【００１０】 そして、最適混合比になったところで着火され、キャビティ４内で爆発的燃焼 が行われ、ピストン２は押し下げられることによって膨張行程に移行する。この 膨張行程では、キャビテイ４内の火炎や燃料が隙間Ｃに向かって吹き出し(逆ス キッシュ)、隙間Ｃ内の空気によって燃焼が継続されるが、この時に、本考案は キャビティ４から隙間Ｃへの火炎や燃料の流出を迅速化できる。 すなわち、膨張行程において、図７のＹ₁、Ｙ₂で模式的に示すように火炎や燃 料はスワール方向でとなりの切欠き６に再び入り、7第２の面６２からピストン 頂面２０から飛び出すように溢流する。このため、隙間Ｃの空気が効果的に利用 されるとともに、オーバースワール(噴霧同士の干渉)も防止され、速やかに完全 燃焼される、燃焼を短時間で終了させることができる。したがって、NOx濃度の 低下など有害排気ガス成分が抑制され、また出力も向上する。

【００１１】

【考案の効果】 以上説明した本考案によるときには、簡単な構造によってスキッシユおよびス ワールを制御し、圧縮行程時にはキャビテイ外周面に衝突前後に噴霧燃料を広げ て霧化を促進することができ、膨張行程時には逆スキッシュ効果を強めて火炎や 燃料の隙間への流出を迅速化でき、これらによる空気利用率の向上で燃焼効率を 大きく高上することができるというすぐれた効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示す平面図である。

【図２】図１のＡ−Ａ線に沿う断面図である。

【図３】図２の一部拡大図である。

【図４】図１のＢ−Ｂ線に沿う断面図である。

【図５】本考案の他の実施例を示す平面図である。

【図６】本考案の他の実施例を示す平面図である。

【図７】本考案の作用を示す説明図である。

【符号の説明】

２ ピストン ４ キャビティ ５ 燃料噴射ノズル ６ 切欠き ２０ ピストン頂面 ４０ キャビティ外周面 ６１ 第１の面 ６２ 第２の面

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】ピストンの頂部にカップ状のキャビティを
   形成し、キャビティ内に吸入空気のスワールを形成しつ
   つ燃料噴射ノズルの噴孔からキャビティの周壁に燃料を
   噴霧するようにしたものにおいて、キャビティ外側のピ
   ストン上面から、キャビティに通じしかも深さ方向の一
   面がピストン軸線方向と平行で他面がスワール方向に対
   して深くなる傾斜を持った切欠きを、ノズル噴孔数と同
   数設けたことを特徴とする直接噴射式ディーゼルエンジ
   ンの燃焼室。