JPH0568532A - 細胞配列素子および細胞培養基板 - Google Patents

細胞配列素子および細胞培養基板

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JPH0568532A
JPH0568532A JP3584691A JP3584691A JPH0568532A JP H0568532 A JPH0568532 A JP H0568532A JP 3584691 A JP3584691 A JP 3584691A JP 3584691 A JP3584691 A JP 3584691A JP H0568532 A JPH0568532 A JP H0568532A
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cells
culture substrate
cell array
array element
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JP3584691A
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English (en)
Inventor
Hideo Kawaguchi
英夫 川口
Takejiro Nochida
竹次郎 後田
Norio Shimizu
範夫 清水
Kazuo Sato
佐藤  一雄
Jun Fukuda
潤 福田
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】神経系等の、配列されていることで機能を発現
する細胞を人工的に培養基板面上に再配列する装置、お
よび人工的に配列培養された細胞の電気的機能を外部に
取り出す方法と装置を提供する。 【構成】細胞分散液プ-ル101および培養基板面に対し連
通した、培養基板面上の特定領域を区画する区画部102
を有する板状体の細胞配列素子105。これを培養基板面
上に装着し、細胞分散液を導入して区画部内の浮遊細胞
を該培養基板面上に沈降着床させた後、該素子を撤去す
ると該培養基板面上に細胞が配列できる。この時、パタ
-ニングされた白金電極202を有する培養基板を組み合わ
せて用いると該電極上の細胞の電気信号を外部に取り出
せる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、配列されていることで
機能を発現する細胞、例えば神経系、肝臓、腎臓などの
細胞を、培養基板面上の特定の領域に人工的に配列し、
生体内での配列を再構成する、細胞の配列装置に関す
る。さらに、本発明は、配列培養された細胞が発現する
機能を、外部に入出力することを可能にするよう工夫さ
れた培養基板に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、細胞培養技術の発達により、神経
系、肝臓、腎臓などの細胞を分散した状態で培養できる
ようになった。しかるに、これらの細胞は、配列されて
いることで機能を発現する。例えば、神経細胞は、生体
組織内で互いに連絡し合い回路を形成することで、情報
処理という機能を発現する。したがって、生体外におい
て、これらの細胞を配列させ培養することができれば、
種々の機能を有する人工的な生物学的装置を製作するこ
とが可能となる。
【0003】ところが、これら組織中の細胞を培養する
ために分散状態にすると、組織内で有していた細胞の配
列が破壊される。その結果、培養は可能であるが機能は
失われてしまう、という問題があった。
【0004】一方、細胞を分散せずに生体から摘出した
組織のまま培養することが可能である。しかし、今度は
組織内の個々の細胞を特定することができず、結局、利
用したい機能を取り出すことが困難であった。例えば、
神経組織において該組織内の特定の神経回路の入出力信
号を利用しようとする場合、この神経回路を構成する神
経細胞を特定することができず、上記所望の入出力信号
を利用することはできなかった。
【0005】このような問題点を解消し、一旦分散した
特定の細胞を同一基板面上に並べ、配列を再構成する一
つの方法として、セルソ−タと培養皿微動操作装置を組
合せて、細胞を一つ一つ並べて行く方法がある。しか
し、この方法は並べる細胞の数だけ配列操作を繰り返す
必要がある上、一つの細胞が基板面に着床した後次の細
胞を基板面上に置かざるを得ないため、多数の細胞を簡
便かつ迅速に配列することが困難であった。
【0006】また、他の方法として、表面に浅い溝を有
する培養皿の上に、複数の区画された連通するチャンバ
−を有する部材を設置し、該チャンバ−を介して神経細
胞の分散液を導入保持し、該培養皿上の特定の位置に該
細胞を沈降付着させ、上記部材を設置したまま培養する
方法がある(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.74,No.
10, pp.4516-4519, 1977. Science, Vol.244, pp.585-5
87, 1989.)。しかしながら、この方法は、上記部材が
神経線維の伸長および機能の発現を物理的、生物的に阻
害する恐れがあり、さらに、培養時に細胞の相互関係を
観察できないため、細胞同士の連絡関係が特定できない
欠点があった。
【0007】さらに、細胞の生体内での配列を再構成
し、その機能を利用するためには、系の無菌性を保たね
ばならず、かつ細胞に損傷を与えてはならないことはい
うまでもない。簡便であることは無菌性の維持を容易に
し、迅速に処理できることは処理中細胞の活性を損なわ
ないことを意味し、これらは、実用上軽視できない要件
である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記現状に鑑
みてなされたものであり、その課題は、一旦分散した細
胞を簡便かつ迅速に培養基板面上に並べて生体内での配
列を再構成する実用的な方法に適用する配列装置、およ
び配列培養された細胞の有する機能を利用可能とする培
養基板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】培養基板に装着されて該
培養基板面上の特定領域を区画する細胞配列素子に、細
胞分散液を導入し、該分散液中の細胞を該培養基板面に
沈降着床させた後、該細胞配列素子を該培養基板面より
撤去することにより、培養基板面の特定領域に細胞を配
列することを提案するものであり、本発明において配列
される細胞は、一種類であっても二種以上の異なる細胞
であっても良く、この点に特に限定されないが、特に二
種以上の異なる細胞を同一培養基板面上の異なる領域に
配列することにより、より有用な様々な機能を発現させ
ることが可能となる。二種以上の異なる細胞を配列する
場合、単一の区画部を有する細胞配列素子板を用いて、
細胞の種類毎に順次配列操作を行っても良いが、互いに
独立した複数の区画部およびこれに対応する細胞導入部
を有する細胞配列素子板を用いて、各々の細胞導入部そ
れぞれに異なる細胞の分散液を導入して配列操作を行う
と、同一培養基板面上の異なる領域に複数の異なる細胞
を互いに独立に、より簡便迅速に配列することが可能と
なる。
【0010】上記細胞分散液中の細胞は、自然沈降によ
り上記培養基板面に沈降着床させられ、あるいは、遠心
操作により上記培養基板面に沈降着床させられる。さら
に、上記培養基板面上には、配列された細胞の特定領
域、例えば、二つの独立して配列された細胞の夫々に独
立に接触するように導電性物質を配置し、かつ該導電性
物質を介して電気信号を入出力できる構造とすることに
より、細胞自体、あるいは細胞から伸長した神経線維を
介して、配列された細胞系の電気信号に対する応答をも
観察可能なものにしようとするものである。
【0011】
【作用】本発明では、配列素子の細胞分散液導入部に導
入された細胞分散液は、特定領域で培養基板面に対して
連通する区画部で基板面上の特定領域に沈降着床され、
残りは細胞分散液排出部より、除去される。配列素子は
その後培養基板より撤去される。培養基板面上にはパタ
−ニングされた導電性物質を備え、これを利用して培養
基板面上に配列培養された細胞の機能を外部に取り出す
ことができる。
【0012】
【実施例】本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意
研究の結果、先に特願平2−44560として細胞分散
液中の細胞を培養基板面上の特定領域に配列させる方法
に適用される細胞配列方法及び装置について提案した
が、本発明はこれをさらに発展させたものである。
【0013】本発明において、細胞配列素子によって配
列された細胞は、重力による自然沈降、または遠心力に
よる沈降で培養基板面上へ沈降着床する。自然沈降の場
合は、該細胞の損傷が極めて少ない上に、該培養基板面
上の特定領域以外へ細胞が漏出する確率も極めて小さい
利点がある。さらに、配列操作の工程が少ないため、系
の無菌性の維持も容易である。この方法は、特に、同一
培養基板面上の異なる領域に複数の異なる細胞を互いに
独立に配列する際に有効である。また、遠心力による沈
降を用いる場合は、該細胞を極めて迅速に培養基板面上
へ沈降着床させることができる利点がある。この方法
は、特に、細胞分散液の細胞濃度を高くできない時、多
量の細胞分散液から浮遊している細胞を該培養基板面上
に迅速に集める際、有効である。
【0014】本発明における、自然沈降で上記細胞を培
養基板面上へ沈降着床させる場合は、該細胞配列素子に
保持された実質的にすべての細胞が培養基板面上へ沈降
着床するまで、該細胞配列素子が培養基板面上に装着さ
れている必要がある。しかしながら、上記細胞が該細胞
配列素子に保持されている時間は、上記細胞の活性を損
なわない範囲であることが要求される。細胞の活性を損
なわない時間の限界は、細胞の種類によって異なるため
一概に特定できないが、例えば、ニワトリ胚の網膜また
は視蓋の神経細胞では数時間である。ここで、該細胞配
列素子に保持された実質的にすべての細胞が沈降着床す
るまでの時間は、該細胞配列素子の形状と材質、細胞の
性質および該細胞が浮遊する培地の性質によって決ま
る。したがって、該細胞配列素子の形状は、上記材質お
よび性質が考慮されたものでなければならない。
【0015】一方、本発明における、遠心力による沈降
で上記細胞を培養基板面上へ沈降着床させる場合は、遠
心条件について、該細胞に損傷を与えないような緩和な
条件を選択する必要がある。例えば、ニワトリ胚の網膜
または視蓋の神経細胞では、500〜1200rpm、3分間の条
件である。
【0016】本発明の方法に使用される細胞配列素子
は、直径数10μm程度の細胞が配列操作時に培養基板面
の他の領域に実質的に漏出してはならないため、培養基
板面に密着するよう精密に加工されていることが望まし
い。特に、遠心力を用いて上記細胞を培養基板面上へ沈
降着床させる場合は、配列すべき特定領域から遠心力に
よって漏出しないように、充分精密に加工されているこ
とが必須である。
【0017】また、本発明の細胞配列素子は、細胞の配
列処理の後、培養基板面から分離され撤去される。これ
は、細胞配列素子が細胞の成育および機能の発現を物理
的、生物的に阻害することを避け、さらに、培養時に細
胞の相互関係を観察可能とし、細胞同士の連絡関係を特
定可能とするためである。
【0018】該細胞配列素子を撤去した後、細胞が特定
領域に配列された培養基板は、培養工程に付される。こ
の培養工程において、例えば、複数種の神経細胞を培養
基板面上に配列させた場合、該神経細胞から神経線維が
伸長し、シナプスを形成して互いに連結することにより
神経回路網が構築される。
【0019】さらに、本発明の方法においては、導入す
る細胞分散液の量および/または濃度を変えることによ
り、上記特定領域における培養基板面上の細胞密度を制
御することが可能である。適切な細胞分散液の量および
/または濃度を選択すると、上記特定領域に細胞を単層
に配列することもできる。
【0020】本発明の方法に使用される細胞配列素子お
よび培養基板の材質は、細胞の成育および機能の発現を
阻害しないものであればいずれのものでも良い。細胞配
列素子の材質としては、シリコン、プラスチック、ガラ
ス等、また、培養基板の材質としては、ガラス、プラス
チック、シリコン、または前記三者の表面に細胞接着性
ポリペプチド、蛋白質等を塗布したもの等を挙げること
ができる。
【0021】本発明を用いて培養基板面上に配列培養さ
れた細胞の機能を外部から観察できるようにする一つの
方法として、培養基板面上に配列された細胞に導電性物
質が接触するようにして該導電性物質と細胞間で電気信
号を入出力できる電極構造を有する培養基板を用いる方
法がある。即ち、該培養基板面上に導電性物質の電極
を、細胞配列素子により区画される特定領域の形にあら
かじめパタ−ニングしておき、この培養基板およびこれ
に見合う細胞配列素子を組み合わせて使用する方法であ
る。ここで、該培養基板面上にあらかじめパタ−ニング
する導電性物質電極の形状は、細胞配列素子を厳密に所
定の位置に設置することが困難であれば、相対的にある
程度の余裕を持たせておくことが望ましい。
【0022】上記導電性物質の材質は、細胞の成育およ
び機能の発現を阻害しないものであればいずれのもので
も良いが、例えば、白金、金、シリコン、導電性プラス
チック、またはこれらの表面に細胞接着性ポリペプチド
または蛋白質を塗布したもの等を挙げることができる。
これらの導電性物質を培養基板面上にパタ−ニングする
方法としては、半導体製造技術を活用するのが良い。な
お、金属等の表面に細胞接着性ポリペプチドまたは蛋白
質を厚く塗布した電極では、ポリペプチドや蛋白質がコ
ンデンサの役割を果たすため、細胞の電気信号の変化分
を取り出すことができる。
【0023】次に、本発明の実施例の細胞配列素子につ
いて図面を参照しながら説明する。図1(a)、
(b)、(c)は、本発明にかかる細胞配列素子の実施
例を示す平面図、背面図,断面図、図2(a)、(b)
及びこの実施例の変形例の為のマスク板を示す平面図
(または背面図)、マスク板を装着したときの断面図、
である。
【0024】まず、図1(a)、(b)および(c)に
平面図、背面図および断面図を示す実施例について説明
する。
【0025】本実施例においては、細胞配列素子105
は、板状体の上面に刻設された細胞分散液プ−ル10
1、該板状体の下面に刻設され、かつ、該細胞分散液プ
−ル101に連通するように延設された区画部102
(この区画部102は培養基板上への細胞配列のための
開口部である。)、該板状体の下面に刻設され、かつ、
前記区画部102に対し連通する細胞分散液回収プ−ル
103、この細胞分散液回収プ−ル103の該板状体の
上面への連通孔104とより構成されている。
【0026】図の実施例は、図の左側にある細胞分散液
プ−ル101に連通するように延設された区画部102
と、図の右側にある細胞分散液プ−ル101に連通する
ように延設された区画部102とが交互に配列されてい
る。従って、図の左側にある細胞分散液プ−ル101に
連通するように延設された区画部102は、図の右側の
細胞分散液回収プ−ル103で連通し、かつ、右側にあ
る該板状体の上面への連通孔104と連通している。一
方、図の右側にある細胞分散液プ−ル101に連通する
ように延設された区画部102は図の左側の細胞分散液
回収プ−ル103で連通し、かつ、左側にある該板状体
の上面への連通孔104と連通している。 細胞配列素
子105を培養基板上に密着させた後、細胞分散液プ−
ル101に該細胞配列素子105の上面から導入された
細胞分散液は、該細胞配列素子105の下面の区画部1
02に入り、次いで該細胞配列素子105の下面の細胞
分散液回収プ−ル103に入った後、連通孔104を経
て該細胞配列素子105の上面に至る。
【0027】即ち、本実施例では、細胞分散液の通る流
路は、該細胞配列素子105上面から見て閉じていな
い。したがって、該細胞配列素子105上面から細胞分
散液を細胞分散液プ−ル101に滴下しつつ、連通孔1
04の該細胞配列素子105上面部より細胞分散液を吸
引する操作を行うことが可能であり、この操作を数回繰
り返すことで、区画部102内の細胞分散液の細胞濃度
を均一にすることができる。さらに、区画部102内の
細胞を基板面上に沈降着床させた後、上記操作を静かに
行って、再び区画部102内の細胞を基板面上に沈降着
床させることも可能である。
【0028】この様な本細胞配列素子105は、細胞分
散液の細胞濃度を高くできない時、遠心力を用いた迅速
な配列処理と組み合わせることもできる。
【0029】本実施例では、前述したように、細胞配列
素子の左右の細胞分散液プ−ル101に連通した区画部
102は互いに独立している。したがって、左右の細胞
分散液プ−ル101の各々に異種の細胞が分散した液を
導入すると、複数組の交互に隣合った異種細胞の帯状配
列を行うことができる。しかも、本細胞配列素子は何回
でも繰り返して使用できるため、異なる基板上に異なる
細胞の組合せで全く同じ形状の配列を行うことが可能で
ある。
【0030】本実施例は半導体製造技術を応用して、厚
さ800μmのシリコンウエハ−に、幅200μm、深さ400μm
の区画部102を刻設したものである。かように複雑な
形状の細胞配列素子でも、数枚のレジストパタ−ンを用
意し、該レジストパタ−ンの該シリコンウエハ−上にお
ける位置を正確に合わせながらエッチング工程を数回実
施することで容易に作ることができる。勿論、本細胞配
列素子の材質はシリコンに限定されるものではなく、細
胞の成育および機能の発現を阻害しないもの、例えば、
プラスチック、ガラス等でも良い。
【0031】次に、図2(a)、(b)の変形例につい
て説明する。
【0032】上述の実施例では、細胞分散液回収プ−ル
103が培養基板に対し開口したものとされている為、
培養基板上に平行して配列された細胞列は、開口部に対
応した位置で連結された形となっている。培養基板上に
平行して配列された細胞列をすべて独立した配列とする
ためにはこの開口部を培養基板にたいしマスクするよう
な構造とすれば、良い分けである。図2(a)の平面図
にマスク板の例を示す。マスク板105’は細胞配列素
子105の区画部102に対応した切欠き102’を有
する。このマスク板105’は、図2(b)に示すよう
に細胞配列素子105の底面に貼付られて使用される。
このようにしたときは、図2(a)に示すとおりの細胞
配列が得られる。即ち、培養基板上に平行して配列され
た細胞列をすべて独立した配列とすることが出来る。
【0033】この細胞配列素子105を使用するに際し
ては、例えば、一定の深さを有するプラスチック等から
なる培養皿内に培養基板を収納し、該培養基板に細胞配
列素子105を密着して装着し、次いで細胞分散液を前
述したように該細胞配列素子に導入して細胞を沈降させ
た後、該細胞配列素子を該基板より撤去することが適当
である。
【0034】図3は本発明にかかる培養基板の実施例を
示す平面図である。、この例は培養基板面上に配列培養
された細胞の機能を外部に取り出すための電極を配列し
たものである。本実施例の培養基板は、ガラス板20
1、ガラス板201上に存在するパタ−ニングされた白
金電極202、およびガラス板201上に存在し、かつ
白金電極202に電気的に接続され外部への電線を接続
するための白金製ポ−ト203より構成されている。
【0035】本培養基板では、パタ−ニングされた白金
電極202、白金製ポ−ト203の数は任意に設定でき
るが、細胞配列素子105の区画部の数に合わせたもの
とすれば、互いに独立した白金電極202上に、それぞ
れ異なった種類の細胞、特に神経細胞を配列培養するも
のとできるから、細胞の電気信号への応答を独立に観測
することが出来る。この観測は細胞に接する白金電極2
02を使用して行うことが出来るので、細胞に殆ど損傷
を与えず、従って、長期間の観測が可能となる
【0036】。
【実験例1】図1の細胞配列素子を使用し、海馬神経細
胞を配列した。
【0037】直径35mm、深さ10mmのプラスチック製培養
皿内に敷いた、基板となる22mm×24mmのカバ−ガラス上
にアルコ−ル滅菌後した細胞配列素子105を密着固定し
た。培養皿にPIT培地(無血清細胞培養マニュアルp1
97:講談社サイエンティフィク)を2ml加え、さらに、
細胞濃度約1×107cells/mlのラット胚海馬神経細胞分散
液0.2mlを細胞分散液プ−ル101から区画部102に導入
し、余分な分散液を連通孔104の上面から吸引した。こ
れをCO2インキュベ−タ内で30分静置し、海馬細胞を
ガラス面上に沈降着床させた後、細胞配列素子105をガ
ラス面上から撤去した。さらに、70時間CO2インキュ
ベ−タ内で培養し、ガラス面上の細胞の状況を観察し
た。
【0038】結果を図4(a)、(b)に写真で示す。図4
(a)が細胞配列素子105をガラス面上から撤去した直後、
図4(b)が培養開始70時間後のガラス面上の細胞の状況
である。図4(a)より、本素子を用いると、僅か30分間
の自然沈降で、海馬細胞をほぼ均一な密度に配列できる
ことが分かった。これは、本素子105の区画部102の高さ
が基板面から400μmと低く、沈降距離が短いためであ
る。また、図4(b)より、海馬の神経細胞が多数の長い
神経線維を伸ばしていることから、本素子を用いて細胞
を配列すると、細胞への損傷が少ないことが分かった。
【0039】以上より、本素子を使用すると、一旦分散
した細胞の活性を損なうことなく、簡便な自然沈降によ
り、基板面上へ細胞を配列できることが明らかとなっ
た。
【0040】
【実験例2】図1の細胞配列素子を使用し、2種の神経
細胞を配列した。
【0041】直径35mm、深さ10mmのプラスチック製培養
皿内に敷いた、基板となる22mm×24mmのカバ−ガラス上
にアルコ−ル滅菌した細胞配列素子105を密着固定し
た。培養皿にPIT培地を2ml加え、さらに、細胞濃度
約1×107cells/mlのニワトリ胚網膜または視蓋神経細胞
分散液それぞれ0.2mlを、各々別の細胞分散液プ−ル1
01からそれぞれの区画部102に導入し、余分な分散
液を各々の連通孔104の上面から吸引した。これを、100
0rpm、3分間の遠心処理をした後、CO2インキュベ−タ
内で静置し、細胞をガラス面上に着床させた。2時間
後、細胞配列素子105をガラス面上から撤去した。さら
に、88時間CO2インキュベ−タ内で培養し、ガラス面
上の細胞の状況を観察した。
【0042】結果を図5(a)、(b)に写真で示す。図5
(a)が細胞配列素子105をガラス面上から撤去した直後、
図5(b)が培養開始90時間後のガラス面上の細胞の状況
である。ここで、図中401は網膜細胞を、402は視蓋細胞
を示す。図5(a)より、本素子を用いると、異種の神経
細胞を交互にほぼ均一な密度の帯状に配列できることが
分かった。また、あらかじめロ−ダミン6Gで蛍光標識
しておいた網膜細胞の分布を、細胞配列素子105をガラ
ス面上から撤去した直後に蛍光観察したところ、網膜細
胞の視蓋細胞領域への迷入は殆どなかった。これは、本
素子105の下面の平面性が極めて良く、基板面と良く密
着しているためである。さらに、図5(b)より、網膜お
よび視蓋の神経細胞が神経線維を伸ばしていることよ
り、本素子を用いて細胞を配列すると、細胞への損傷が
少ないことが分かった。
【0043】以上より、本素子を使用すると、さらに、
本素子を用いると、異種の細胞を相互に混じり合うこと
なく基板面上に配列できることが明らかとなった。
【0044】
【実験例3】図3の培養基板を使用し、図1の細胞配列
素子を用いて、2種の神経細胞を配列培養した。
【0045】直径35mm、深さ10mmのプラスチック製培養
皿内に敷いた、22mm×24mmの図3の培養基板上にアルコ
−ル滅菌した細胞配列素子105を密着固定した。培養皿
にPIT培地を2ml加え、さらに、細胞濃度約1×107cel
ls/mlのニワトリ胚網膜または視蓋神経細胞分散液それ
ぞれ0.2mlを、各々別の細胞分散液プ−ル101からそれぞ
れの区画部102に導入し、余分な分散液を各々の連通孔1
04の上面から吸引した。これを、1000rpm、3分間の遠心
処理をした後、CO2インキュベ−タ内で静置し、細胞
をガラス面上に着床させた。2時間後、細胞配列素子105
をガラス面上から撤去した。さらに、68時間CO2イン
キュベ−タ内で培養し、ガラス面上の細胞の状況を観察
した。
【0046】結果を図6に写真で示す。図6は培養開始
70時間後のガラス面上の細胞の状況である。ここで、図
中401は網膜細胞を、402は視蓋細胞を、202は白金電極
を示す。図6より、本培養基板および細胞配列素子105
を用いると、各々の白金電極202上にそれぞれ異種の細
胞を配列することができ、さらに、長期間培養が可能
で、かつ異種の神経細胞間にシナプス連絡の形成が可能
であることが分かった。また、あらかじめロ−ダミン6
Gで蛍光標識しておいた網膜細胞の分布を、細胞配列素
子105をガラス面上から撤去した直後に蛍光観察したと
ころ、網膜細胞の視蓋細胞領域への迷入は殆どなかっ
た。さらにまた、白金電極202から網膜細胞群に電気刺
激を与えると、他方の白金電極202から視蓋細胞群の応
答が記録できることを確かめた。
【0047】以上より、本培養基板および細胞配列素子
105を用いると、各々の白金電極202上にそれぞれ異種の
細胞を配列培養することができることが明らかとなっ
た。さらに、白金電極202を経て、神経細胞に刺激を与
え、同時に神経細胞の応答を記録することが可能なこと
が明らかとなった。
【0048】
【発明の効果】本発明の素子を用いれば、細胞に損傷を
与えずに、一つまたは複数の種類の細胞を同一培養基板
面上の特定の領域に配列することが可能となる。ゆえ
に、本発明の素子は、一旦分散した細胞を人工的に並べ
て生体内での配列を再構成することができる実用的な装
置である。さらに、本発明の培養基板と、これに見合う
細胞配列装置を用いて配列した細胞を培養することで、
その細胞の持つ機能を引き出すことが可能となる。例え
ば、簡単な神経回路網を生きたまま構築することができ
る。この神経回路網は、それ自身でバイオチップあるい
はニュ−ロコンピュ−タとなる他、タンパク質を配列し
て作ったバイオ素子の入出力インタ−フェイスとして用
いることができる。
【0049】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)、(b)及び(c)は、本発明にか
かる細胞配列素子の実施例を示す平面図、背面図及び断
面図。
【図2】図2(a)及び(b)は図1の実施例の変形例
の為のマスク板を示す平面図(または背面図)及びマス
ク板を装着したときの断面図。
【図3】図3は本発明にかかる培養基板の実施例を示す
平面図。
【図4】図4(a)、(b)は図1に示す実施例によっ
て細胞配列した細胞の細胞配列直後の培養基板面上の細
胞の状況を示す写真、および培養開始70時間後の培養基
板面上の細胞の状況を示す写真。
【図5】図5(a)、(b)は図1に示す実施例によっ
て細胞配列した細胞の細胞配列直後の培養基板面上の細
胞の状況を示す写真、および培養開始90時間後の培養基
板面上の細胞の他の状況を示す写真。
【図6】図6は図1及び図3に示す実施例によって細胞
配列した細胞の培養開始70時間後の培養基板面上の白金
電極上にある細胞の状況を示す写真。
【符号の説明】
101…細胞分散液プ−ル、102…区画部、103…細胞分散
液回収プ−ル、104…連通孔、105…細胞配列素子、201
…ガラス板、202…白金電極、203…白金製ポ−ト、401
…網膜細胞、402…視蓋細胞。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年8月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】(a)は図1に示す実施例によって配列された
生物の配列直後の培養基板面上における生物の形態を示
す写真、(b)は培養開始70時間後の培養基板面上に
おける生物の形態を示す写真である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】(a)は図1に示す実施例によって配列された
生物の配列直後の培養基板面上における生物の形態を示
す写真、(b)は培養開始90時間後の培養基板面上に
おける生物の形態を示す写真である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】図1及び図3に示す実施例によって配列された
生物の培養開始70時間後の培養基板面上の白金電極上
における生物の形態を示す写真である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
フロントページの続き (72)発明者 佐藤 一雄 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 福田 潤 東京都渋谷区広尾4丁目1番7号

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の要素よりなる細胞培養基板上への細
    胞配列素子 所定の形状の幅と長さを有し板材の一面に連通するスリ
    ットを有し所定の厚さを有する板材、 前記スリットの一端を前記板材の他面で連通する開口
    部、 前記スリットの他端を前記板材の一面で連通するととも
    に前記他面の前記開口部とは異なった位置で前記板材の
    他面にも連通する開口部
  2. 【請求項2】請求項1において、前記板材の一面に以下
    の要素が付加された細胞培養基板上への細胞配列素子 前記板材のスリットと実質的に同一の配置スリットを有
    するマスク板
  3. 【請求項3】請求項1または2において、前記開口部の
    一つが細胞分散液の導入口である細胞配列素子
  4. 【請求項4】請求項1または2において、前記開口部の
    一つが細胞分散液の導出口である細胞配列素子
  5. 【請求項5】請求項1ないし4のいずれかにおいて、培
    養基板が、ガラス、プラスチック、シリコン、または前
    記三者の表面に細胞接着性ポリペプチドまたは蛋白質を
    塗布したものである細胞培養基板
  6. 【請求項6】請求項5において、培養基板が、ガラス、
    プラスチック、シリコン、または前記三者の表面に細胞
    接着性ポリペプチドまたは蛋白質を塗布したものであ
    り、前記培養基板面上の特定領域には、少なくとも前記
    細胞配列素子の細胞配列部と一部が一致し、かつ互いに
    独立した細胞配列部にのみ接触する位置に独立した導電
    性物質が存在し、かつ該導電性物質と電気的に接続され
    た電極を有する培養基板
  7. 【請求項7】以下の要件よりなる培養基板 一面にガラス、プラスチック、シリコン、または前記三
    者の表面に細胞接着性ポリペプチドまたは蛋白質を塗布
    した板材、 前記板材の所定の位置に白金、金、シリコン、導電性プ
    ラスチック、または前記四者の表面に細胞接着性ポリペ
    プチドまたは蛋白質を塗布した導電性物質が配置されて
    いる。
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