JPH0568178B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 本発明は絶縁材料、特に回転電機のスロツト絶
縁用の積層成形された絶縁材料に関する。

本発明は、電動機または発電機として機能する
回転電機に適用できるが、具体的例として、以下
発電機用スロツト外装（armor）について説明す
る。解決すべき問題およびかゝる問題を解決すべ
くここに開示した本発明の実施例は、適当な電動
機にも等しく適用できることを理解すべきであ
る。

工業用および電力事業用発電機は通常、直流界
磁巻線を回転子に配置し、交流巻線を回転子をと
り囲む固定子に配置した構成となつている。回転
子は、典型的には、表面に軸方向スロツトを機械
加工により設けた大きな一体の金属鍛造品であ
る。銅導体が回転子に直流励磁を行うため、軸方
向スロツト中に長さ方向に配置されている。銅導
体は軸方向にスロツトを越えて延びて、銅導体を
相互接続して閉回路とするとともに励磁電力を供
給するスリツプリングに接続するための端部ター
ンを形成できるようになつている。

絶縁用スロツト外装を通常銅導体とスロツトの
側面との間に配置して、励磁電圧の回転子鍛造体
への接地を防ぐとともに、回転子に存在する電界
に耐えるようにする。ここで問題としている発電
機では、スロツトは剛固な絶縁材料の成形物で、
２つのＬ字形成形構造物の形態とすることがで
き、これらのＬ字形成物をスロツト内に配置し
て、Ｌ字形の短い脚部がスロツト底部で互いに向
かい合うようにする。

従来のスロツト外装の１つが米国特許第
3974314号に開示されており、ここでは高誘電性
フイルムの両側を不織アラミド紙、例えばノメツ
クス（Nomex）の商品名で販売されているアラ
ミド紙の層で保護したものを用いている。アラミ
ド紙の各層の外側にさらにガラス繊維／エポキシ
積層物の保護層を配置して、少くとも５層のサン
ドイツチ構造、すなわち高誘電性フイルムを中心
にしてまず２つのアラミド紙層間に配置し、これ
らを２つのガラス繊維／エポキシ層の間に配置し
たサンドイツチ構造を形成する。通例、各ガラス
繊維／エポキシ層は、必要に応じて、織布または
不織布の単層または複数のプライ（ply）として、
または織布と不織布の組合せとして作られる。

対応するスロツト外装が、米国特許第4162340
号に開示されており、ここでは厚みを増すための
ガラス繊維／エポキシのプライを望ましい位置に
付け加えている。この外装における各層材料の基
本的な順序は前述の米国特許と同じである。すな
わち、中心の高誘電性フイルムがアラミド紙とガ
ラス繊維／エポキシ層で保護されている。

典型的な発電機回転子の直流励磁電力を導くの
に要する銅の量はきわめて大量である。このよう
な大きな質量が高回転速度、例えば3600RPMで
回転すると、銅にはこれを半径方向外向きに押し
出そうとする大きな半径方向の加速がかゝる。半
径方向の加速によつて生じる外向きの力に抗する
ため、スロツトの半径方向外端に形成されたダブ
テイル形のスロツトにはめこまれた機械加工され
たくさびを用いて、軸方向スロツト内にある銅導
体の部分を所定位置にしつかりと保持する。

回転子鍛造体の軸方向スロツトを越えて軸方向
に伸びて端部ターンを形成している銅導体の部分
は、回転子の両端の保持リングによつて半径方向
の力に抗して所定位置に保持される。従来の発電
機の一例では、デイスク形心合せリングを端部タ
ーンより軸方向例側の発電機シヤフトに焼ばめ
し、円筒形保持リングの軸方向外際の端部を心合
せリングに焼ばめしている。この構成の回転子を
始動すると、銅導体から保持リングに加えられる
半径方向外向きの力が大きくなり、保持リングの
軸方向内側の端部を千分の数インチ程度押し広げ
る。この拡張により銅導体も外向きに僅かに動き
得ることになる。銅導体のこの動きには、軸方向
スロツトのすぐ内側の部分の動きと、同スロツト
のすぐ外側の部分の動きとがある。

ベース負荷用発電機は、ひとたび始動されて電
力線に給電を行うようにされると、年単位の長い
期間にわたつて停止されることなく定常運転され
る。反対にピーク負荷用発電機は、ベース負荷用
発電系統の電力を増強するためにその出力電力が
必要なときにはいつでも、停止状態から始動され
る。その電力出力がもはや不要となつたら、ピー
ク負荷用発電機は停止される。工業用発電機も同
様に運転される。

本発明者が観察したところでは、ピーク負荷ま
たは工業用発電機の始動―停止サイクルが数百回
から数千回繰り返された後、従来のスロツト外装
のガラス繊維外層が、その外層と銅導体との間ま
たはその外層とスロツト側面との間の摩擦によ
り、軸方向スロツトのすぐ内側とすぐ外側ですり
減つてしまう。スロツト外装がすり減るにつれ
て、その絶縁特性は劣化してくる。このような絶
縁特性の劣化は終局的にスロツト外装の絶縁破壊
につながる。スロツト外装の摩耗は、発電機始動
時の銅導体の上述した半径方向外向きの動きと、
停止時の対応する半径方向内向きの動きいよつて
起ると考えられる。

従来のスロツト外装に含まれるアラミド紙の層
はスロツト外装に幾つかの望ましくない性質を与
える。アラミド紙層は厚さ方向において十分に結
されていないことがあり、従つて層間気泡や剥離
が生じる可能性がある。その上、アラミド紙層は
大きな断熱作用を有し、かゝる断熱作用は熱が銅
導体からスロツト外装を通つて回転子鍛造体へ逃
げるのを妨げる。

発明の目的 従つて、本発明の目的は従来技術の欠点を克服
した回転電機の回転子用のスロツト外装材を提供
することにある。

発明の開示 簡略して述べれば、本発明は、回転電機の回転
子のスロツトを、このスロツトに収容された巻線
から絶縁するためのスロツト外装材を提供する。
本発明によるスロツト外装材は、ａ）硬化した硬
質の繊維強化複合材料層、ｂ）この層の少なくと
も第１表面に結合された、この層と実質的に同一
の広がりを持つ第１誘電性フイルム、およびｃ）
この第１誘電性フイルムの外側表面上の固体潤滑
材コーテイングを含み、この固体潤滑材コーテイ
ングが誘電性フイルムを実質的に摩耗することな
く誘電性フイルムの潤滑な摺動接触を許すように
作用する。繊維強化複合材料層は少なくとも一層
の硬化したガラス繊維強化樹脂層であり、第１の
誘電性フイルムはポリイミドのフイルムであり、
固体潤滑材コーテイングはFEPフルオロカーボ
ンである。ここでFEPはフルオロエチレン重合
体（fluoroethylene polymer）を表わし、その
典型例はPTFE（ポリテトラフルオロエチレン）
である。

本発明の一態様によれば、回転電機の導体を、
この導体を収容する回転子のスロツトから隔離す
るためのスロツト外装は、硬質の硬化したガラス
繊維／エポキシ複合材料の第１層と、この第１層
の外側表面すなわち回転電機の導体に面する表面
に結合された、第１層と実質的に同一の広がりの
ポリイミド高誘電性フイルムの第２層と、上記フ
イルムの外側表面上のFEPフルオロカーボンの
潤滑材コーテイングとを含み、この潤滑材コーテ
イングが実質的な摩耗なしで上記導体と上記フイ
ルムとの潤滑な摺動接触を許すように作用する。

本発明の上記およびその他の目的、特徴および
利点が、添付図面を参照した以下の説明から明ら
かになであろう。

具体的実施例の説明 第１図に回転電機１０の断面斜視図を示す。回
転子鍛造体１２の表面には複数の軸方向スロツト
１４が機械加工されている。回転子の両端には減
径シヤフト部分１６があり（片方のみ図示）、こ
のシヤフト部分は通常回転子鍛造体１２と一体に
形成されてそこから軸方向に延在していて、通常
の軸受で支えられて原動機（図示せず）に連結さ
れる。心合せリング２０がシヤフト１６に焼ばめ
されている。保持リング２４がその軸方向外側の
端部で心合せリング２０に焼ばめされている。保
持リング２４は後述するようにその内側にある端
部ターンを囲み、端部ターンの半径方向外向きの
動きを抑える。同様に、（図示してはいないが）、
回転子の反対側にも上記と対応する心合せリング
および保持リングの組合せが設けられている。

こゝで第２および３図を参照すると、各々の軸
方向スロツト１４内には複数の銅導体２８がくさ
び３０で固定されている。スロツト外装３４は銅
導体２８を、軸方向スロツト１４内で包囲すると
共にスロツト１４を越えたかなりの距離にわたつ
て包囲している。銅導体２８とくさび３０の間に
介在するクリページ（creepage）ブロツク３２
は両者間を絶縁し、銅導体２８を軸方向スロツト
１４内の所定位置に保持するのを助ける。銅導体
２８はスロツト外装３４を越えて延在し、通常の
ように銅導体２８を相互接続して連続した電気回
路、を作るための端部ターン３６を形成する。

上にも触れたように、回転電機１０を始動する
と、保持リング２４の軸方向内側端部３８が、第
２図に破線で示すように、僅かに拡張する。これ
により、銅導体２８は始動時には僅かに外側へ動
き、停止時にはその分再び内側に戻る。

第４図に、従来のスロツト外装３４の断面を示
す。例えば前述の米国特許に記載されているよう
な高誘電性フイルムの層４０がスロツト外装３４
の中心に配置されている。高誘電性フイルムの層
４０の両面にはそれぞれ不織アラミド紙、例えば
ノメツクス（Nomex）の商品名で販売されてい
るアラミド紙の層４２が結合されている。ガラス
繊維／樹脂複合材料の保護層４４が不織アラミド
紙の各層４２の外側表面に結合されて、スロツト
外装３４が完成される。スロツト外装３４の各層
は、実際に、商業的に入手可能なガラス材料を用
いて、１層以上の材料層から形成して厚さなどの
必要な特性を満たすことができる。前に述べたよ
うに、第４図に示した従来のスロツト外装３４で
は、ガラス繊維／樹脂複合材料の層４４と軸方向
スロツト１４の壁または銅導体２８との間で摩耗
が生じることがある。始動／停止サイクルを数百
乃至数千回くりかえすと、銅導体２８とスロツト
外装３４のガラス繊維／樹脂複合材料の層４４と
がこすれるため、スロツト外装３４の内側表面の
ガラス繊維／樹脂複合材料４４の内、軸線方向ス
ロツト１４のすぐ内側とすぐ外側のところが摩耗
し侵食されてしまう。その上、スロツト外装３４
の外側表面のガラス繊維／樹脂複合材料４４と軸
線方向スロツト１４の内側表面とがこすれるた
め、スロツト外装３４の外側表面のガラス繊維／
樹脂複合材料４４が摩耗し侵食されてしまう。

第５図に、本発明の実施例のスロツト外装３４
を、軸方向スロツト１４の壁と軸方向スロツト１
４内の銅導体２８との間の所定位置に配置した状
態で示す。スロツト外装３４を構成する各層の厚
さは、説明をわかりやすくするために変えてあ
る。前述したように、スロツト外装３４とそのそ
ばにある構成要素との間には、半径方向の相対的
な動きが生じる。例えばスロツト外装３４と銅導
体２８との界面４６、特にスロツト外装３４と銅
導体２８とが軸方向スロツト１４から出る場所付
近で、相対的な動きが生じる。この相対的な動き
は、両方向の矢印４８で示してある。半径方向の
相対的な動きは、両方向の矢印５２で示すよう
に、スロツト外装３４と軸方向スロツト１４との
界面５０でも生じる。第５図のスロツト外装３４
は、スロツト外装３４と銅導体２８との界面４６
での相対的な動きによる損傷に耐えるように、特
別に構成されている。

硬質の繊維強化複合材料層５４の表面には、誘
電性フイルム５６が同一の広がりで結合されてい
る。スロツト外装３４と銅導体２８との界面４６
に隣接する誘電性フイルム５６の表面に潤滑材コ
ーテイング５８が施されている。硬質の繊維強化
複合材料層５４は多層のガラス繊維強化樹脂材料
で構成される。硬質の繊維強化複合材料層５４中
の樹脂は、熱硬化性樹脂であるのが好ましい。硬
質の繊維強化複合材料層５４は、ガラス繊維の含
有率がなるべく高いガラス繊維／エポキシ複合材
料であるのがもつとも好ましい。ガラス繊維の含
有率が高いと、硬質の繊維強化複合材料層５４は
硬さと靭性を付与され、スロツト外装３４の熱伝
導性の改善に役立つ。

誘電性フイルム５６は、適当な絶縁耐力と靭性
を有するポリイミドのフイルムである。好適実施
例では、誘電性フイルム５６は芳香族四塩基酸と
芳香族ジアミンとの重縮合反応により製造したポ
リイミド重合体フイルムである。誘電性フイルム
５６として使用するのに適した材料の１例に、デ
ユポン社からカプトン（Kapton：商標）型Ｆフ
イルムという商品名で販売されているポリイミド
のフイルムがある。商業的に入手可能なこのフイ
ルムは、潤滑材コーテイング５８に対応する、テ
フロン（Teflon：商標）という名称で販売され
ているFEPフルオロカーボンの潤滑材コーテイ
ングが設けられているフイルムとして入手でき
る。

カプトン型Ｆフイルムは、普通に使用される場
合、包装材料として使用されるときにはフイルム
同士で接着性であり、且つモータや発電機の銅導
体のような部材の包囲材料として使用されるとき
には、フイルム同士と銅導体の両方に接着性であ
る加熱封じ可能なフイルムである。本発明では、
誘電性フイルム５６を硬質の繊維強化複合材料層
５４に結合する。潤滑材コーテイング５８として
用いられたFEPフルオロカーボンのすべりやす
い潤滑性とこの材料の靭性のため、スロツト外装
３４と銅導体２８との界面４６でのこすれが摩耗
なしで生じる。

スロツト外装３４と銅導体２８との界面４６で
こすれが生じると、潤滑材コーテイング５８中の
FEPフルオロカーボンの一部が接触点で銅導体
２８上にこすり付けられる。これによつて界面４
６に固体潤滑材の膜ができる。スロツト外装３４
は、前掲の米国特許のスロツト外装材を含む、試
験した従来のスロツト外装材に比し、耐摩耗性が
少くとも５倍は改良されている。

FEPフルオロカーボンを誘電性フイルム５６
の外側コーテイングとして使用すると、スロツト
外装３４の耐アーク性も改善される。通常のスロ
ツト外装では、高電位によりアーク放電が始まる
と、スロツト外装の表面が炭化し、その結果アー
ク放電を持続するアークトラツクを生成しがちで
ある。潤滑材コーテイング５８中のFEPフルオ
ロカーボンはアーク放電の際は炭化するよりむし
ろ気化する傾向にあり、その結果アークトラツク
の形成を抑える。

本発明で前掲の米国特許に記載の比較的良好な
熱絶縁性の不織アラミド紙を使用しない場合、前
記米国特許第3974314号の教示に従つて製造され
るような外装材の熱伝導率と較べて、スロツト外
装３４を通しての熱伝導率が約２倍になる。銅導
体２８から回転子鍛造体１２への熱の伝達が改善
されるので、このことは価値がある。

第６図に、第５図の実施例に類似した本発明の
他の実施例を示すが、この例ではスロツト外装３
４′と軸方向スロツト１４との界面５０に隣接し
て、スロツト外装３４′が誘電性フイルム５６′と
潤滑材コーテイング５８′を有する。スロツト外
装３４と銅導体２８との界面４６に較べ、スロツ
ト外装３４と軸方向スロツト１４との界面５０で
は摩耗はそれほど問題ではないものの、両方向の
矢印５２で示すように、回転子鍛造体１２とスロ
ツト外装３４′の間にも相対的な動きが生じるこ
とがあり、これは摩耗につながる。さらに、潤滑
材コーテイング５８′と誘電性フイルム５６′がこ
の位置にあることにより、第５図の実施例の誘電
性フイルム５６と潤滑材コーテイング５８につい
て先に論じた他の望ましい特性も得られる。

図面を参照して、本発明の好適実施例を説明し
たが、本発明はこれらの特定の実施例に限定され
るものはなく、当業者であれば、特許請求の範囲
で規定される本発明の範囲から逸脱することなく
さまざまな変更や改変を加えることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明のスロツト外装を適用する回転
電機の破断斜視図、第２図は第１図の２―２線方
向に見た断面図、第３図は第２図の３―３線方向
に見た断面図、第４図は従来技術のスロツト外装
の斜視図、第５図は本発明の実施例のスロツト外
装の拡大断面図、そして第６図は実施例の他の実
施例のスロツト外装の拡大断面図である。 １０…回転電機、１２…回転子鍛造体、１４…
軸方向スロツト、２８…銅導体、３４…スロツト
外装、５４…硬質の繊維強化複合材料層、５６…
誘電性フイルム、５８…潤滑材コーテイング。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 少なくとも一層の硬化したガラス繊維強化樹
   脂層と、 上記層の一方の表面に結合された、上記層と実
   質的に同一の広がりを持つポリイミドの第１誘電
   性フイルムと、 上記第１誘電性フイルムの外側表面上に設けら
   れ、上記第１誘電性フイルムを実質的に摩耗する
   ことなく上記第１誘電性フイルムの潤滑な摺動接
   触を許すのに有効なFEPフルオロカーボンの固
   体潤滑材コーテイングと、を含むスロツト外装
   材。 ２ 上記第１誘電性フイルムが、芳香族四塩基酸
   と芳香族ジアミンとの重縮合反応により製造した
   ポリイミド重合体を含む特許請求の範囲第１項記
   載のスロツト外装材。 ３ 上記第１誘電性フイルムが結合された上記一
   方の表面とは反対側の上記層の他方の表面にポリ
   イミドの第２誘電性フイルムが結合されていて、
   この第２誘電性フイルムが上記他方の表面と実質
   的に同一の広がりを持つている特許請求の範囲第
   １項記載のスロツト外装材。 ４ 上記ガラス繊維が１枚のガラス繊維布の形で
   ある特許請求の範囲第１項記載のスロツト外装
   材。 ５ 上記樹脂がエポキシ樹脂である特許請求の範
   囲第１項記載のスロツト外装材。