JPH0559495A - ピストンリング材 - Google Patents

ピストンリング材

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JPH0559495A
JPH0559495A JP24485991A JP24485991A JPH0559495A JP H0559495 A JPH0559495 A JP H0559495A JP 24485991 A JP24485991 A JP 24485991A JP 24485991 A JP24485991 A JP 24485991A JP H0559495 A JPH0559495 A JP H0559495A
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JP
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piston ring
carbide
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carbides
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JP24485991A
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English (en)
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Kanji Notomi
富 完 至 納
Kazuyuki Tomita
田 和 幸 富
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Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
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  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Manufacture Of Alloys Or Alloy Compounds (AREA)
  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】C 1.2〜2.5wt%、Cr 15〜25w
t%、Mo、Vの1種または2種 7wt%以下、Si
0.2〜1.0wt%、Mn 0.2〜1.0wt%を含
有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、最大粒径
が8μm以下の微細なM73型炭化物を基地中に15〜
30%含有しており、そして、シリンダー壁と摺動する
外周面が窒化されている粉末冶金法によるピストンリン
グ材である。 【効果】耐焼き付き性に優れており、製作されたピスト
ンリングは空洞がないので折損することがなく、窒化層
が摺動面から部分的にフレーク状に剥離するという現象
も起こり難く、さらに、ディーゼルエンジンのトツプリ
ングばかりではなく、ガソリンエンジン、セカンドリン
グやオイルリングのレールやスペーサーとしても優れた
耐久性を発揮するものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はピストンリング材に関
し、さらに詳しくは、自動車用エンジン等の往復動内燃
機関において、燃焼室のシールを行うことができるピス
トンリング材に関するものである。
【0002】
【従来技術】一般的に、往復動内燃機関等に使用されて
いるピストンリングは、いままでエンジンの高速化およ
び高出力化に伴い、使用材料が鋳鉄製から薄肉のスチー
ル製に変わって来ている。
【0003】また、シリンダーとの間の焼き付きおよび
摩耗を防止するために、外周面に硬質クロムめっきが行
われているピストンリングが多く使用されてきている。
しかし、クロムめっきは、燃料および潤滑油に含有され
ている硫黄のために、燃焼生成物として生成した希硫酸
により腐蝕摩耗が促進されるという問題があった。
【0004】特に、最近になって、自動車の保証期間が
延長されたことにより、ピストンリングの摩耗に対して
厳しく要求されるようになり、そのため、希硫酸が存在
する環境においても腐蝕摩耗が起こらない皮膜として、
従来の硬質クロムめっきの代わりに新しい皮膜が要求さ
れている。
【0005】そして、新しい皮膜として、イオンプレー
ティングによる窒化物の皮膜や、スチール製ピストンリ
ング素材を窒化処理することによりピストンリング表面
に生成される窒化皮膜が提案されている。
【0006】しかして、イオンプレーティングによる皮
膜は、高真空の装置を必要とし、厚い皮膜になると密着
性が低下するという問題があり、さらに、コストも高
く、また、スチール製ピストンリング素材を窒化処理す
る方法は、密着性およびコストの面から優れたものであ
り、このようなスチール製ピストンリング材として多く
の提案がなされている。
【0007】即ち、比較的クロムを多く含有するスチー
ル材としては、特開昭56−081243号公報、特開
昭56−098453号公報、特開昭58−04535
7号公報、特開昭59−162346号公報、特開昭6
0−13054号公報、特開昭60−294152号公
報、特開昭63−150456号公報、特開昭64−0
35173号公報等が提案されている。上記各公報に記
載されているスチール材においては、C 0.3〜1.2
wt%、Cr 10〜20wt%を主な含有成分として
おり、これらのスチール素材を窒化処理すると、Crが
多量に含有されているので、高い硬度の窒化層が形成さ
れるけれども、以下に説明するような問題がある。
【0008】耐焼き付き性がクロムめっきと比較して
低く、潤滑条件が苛酷である低温時における運転条件
や、始動時に焼き付きが発生する傾向がある。 粗大な炭化物が存在し、冷間加工時に炭化物が割れる
ことにより、微小な空洞が生成したり、或いは、基地と
炭化物の界面において微小な空洞が生じ、そのため、ピ
ストンリングの製造工程や、内燃機関への組付け時、内
燃機関の運転時にピストンリングが折損する。 窒化層中に炭窒化物がネット状に生成し易く、の空
洞の存在との相乗作用により、低温における運転時に爆
発圧力と高い摩擦力により繰り返しの応力によって、窒
化層の中から微小な割れを生じて、その後、フレーク状
に摺動面から部分的に剥離する。
【0009】その他、高Cr含有量である以外に、さら
に、Coを2〜13wt%含有させることにより、窒化
処理後の耐焼き付き性を良好にしたスチール材が特開平
01−208435号公報により提案されている。しか
し、このようにCoを含有させると、上記の問題は解
決することは可能であるが、、の問題を解決するこ
とはできない。
【0010】以上説明した提案以外に、窒化層の硬度を
さらに高くするために、含有成分のCrを1〜10wt
%に減少させ、Alを0.3〜2.0wt%含有させたス
チール材が特開昭63−140066号公報、特開昭6
3−216949号公報、特開昭63−223147号
公報、特開昭63−280960号公報により提案され
ている。しかし、このようなスチール材においても、上
記に説明した、、の問題を解決することができ
ず、逆に、Alを含有させることによって、素材中にア
ルミナを主成分とする非金属介在物が増加するので、ビ
ストンリングの製造工程、内燃機関への組み付け時およ
び内燃機関の運転時にピストンリングが折損するという
不都合が多くなる。
【0011】上記に説明した技術は、溶解材料を出発材
料とする製造方法であるが、最近になつて、粉末冶金法
による製造方法が特開平01−182667号公報によ
り提案されている。この提案によれば、中高炭素含有金
属粉末を出発材料とすることにより、中高炭素含有であ
っても曲げ加工を容易に行うことができ、耐摩耗性およ
び疲労強度の優れたピストンリングを製造できる方法で
ある。
【0012】この公報の実施例に説明されている材料
は、高速度工具鋼(1.32C−0.4Si−0.31M
n−4.01Cr−6.03W−4.98Mo−2.97V
−7.89Co−残部Fe)、ダイス鋼(2.28C−
0.31Si−0.39Mn−12.52Cr−1.46M
o−4.83V−残部Fe)、ステンレス鋼(0.89C
−0.52Si−0.41Mn−16.95Cr−0.70
Mo−残部Fe)等がある。
【0012】そして、上記の各公報に提案されているピ
ストンリングの素材は、めっき処理および窒化処理を行
うことができるものであるが、これら提案されている各
公報に説明されているスチール材を窒化処理して得られ
たピストンリングは、上記に説明した問題点のおよび
の問題点を改善する効果は認められるが、問題点の
耐焼き付き性の改善効果は認められなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記に説明し
た従来における種々のピストンリング素材の問題点に鑑
み、本発明者が鋭意研究を行い、検討を重ねた結果、腐
蝕摩耗が起きることがなく、従来提案されているスチー
ル材の窒化処理を行って得られたピストンリングにおけ
る3つの問題点を改善した。即ち、本発明に係るピスト
ンリング材は腐蝕摩耗を起こし難くするために、窒化処
理を行うことを前提としており、従来のピストンリング
材の耐焼き付き性がクロムめっきと比較して低く、潤滑
条件が苛酷である低温時における運転条件や、始動時に
焼き付きが発生する傾向があるという問題点を、基地中
に分散している炭化物をM73型とし、この炭化物の大
きさを8μm以下の微細状態として均一に分散させ、そ
して、この炭化物を基地中に15〜30%と高い量と
し、さらに、Crを多量に含有させることにより窒化層
の硬度を高くすることで解決し、また、粗大な炭化物が
存在し、冷間加工時に炭化物が割れることにより、微小
な空洞が生成したり、或いは、基地と炭化物の界面にお
いて微小な空洞が生じ、そのため、ピストンリングの製
造工程や、内燃機関への組付け時、内燃機関の運転時に
ピストンリングが折損するという問題点を、合金粉末を
出発材料として使用することにより、炭化物の大きさを
8μm以下の微細状態として、ピストンリングの製造の
際に発生する内部空洞を皆無とすることにより解決し、
さらに、窒化層中に炭窒化物がネット状に生成し易く、
の空洞の存在との相乗作用により、低温における運転
時に爆発圧力と高い摩擦力により繰り返しの応力によっ
て、窒化層の中から微小な割れを生じて、その後、フレ
ーク状に摺動面から部分的に剥離するという問題点を、
粉末冶金法による製造によって炭化物を微細にし、内部
空洞を皆無とすることと、粉末冶金法による製造によっ
て炭化物を小さく分散させることにより、窒化層中の炭
化物と炭窒化物を均一微細な状態とし、低温時における
運転においても窒化層がフレーク状に部分的に剥離する
ことを防止できる耐久性に優れたピストンリング材を開
発したのである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係るピストンリ
ング材の特徴とするところは、C 1.2〜2.5wt
%、Cr 15〜25wt%、Mo、Vの1種または2
種 7wt%以下、Si 0.2〜1.0wt%、Mn
0.2〜1.0wt%を含有し、残部Feおよび不可避不
純物からなり、最大粒径8μm以下の微細なM73型炭
化物を15〜30%含有し、シリンダー壁と摺動する外
周面が窒化されている粉末冶金法による内燃機関用ピス
トンリング材である。
【0015】本発明に係るピストンリング材について、
以下詳細に説明する。まず、本発明に係るピストンリン
グ材の含有成分および成分割合について説明する。
【0016】CはFe中に固溶することにより強度を付
与し、特に、炭化物を形成して耐摩耗性および耐焼き付
き性を向上させる重大な効果に寄与する元素であり、そ
して、M73炭化物を15〜30%とするためには、C
含有量は1.2〜2.5wt%とする必要があり、この範
囲内において炭化物をM73型とするために炭化物形成
元素の含有量との関係が重要であり、特に、Cr含有量
により調整するのがよく、Cr含有量が多い場合には、
C含有量を多くし、Cr含有量が少ない場合には、C含
有量も少なくする。よって、上記の効果を発揮させるた
めには、C含有量は1.2〜2.5wt%とする。
【0017】Crは炭化物形成元素であると共に窒化処
理においてはNと結合し易い元素であり、窒化層内にお
いて表面では炭窒化物として存在しており、また、内部
では炭化物として分散しており、かつ、炭化物として含
有されない分は基地に固溶されており、窒化処理によっ
てNと結合して窒化層の硬度を高くし、耐焼き付き性を
向上させるものであり、含有量が15wt%未満では窒
化層の硬度が不充分で耐焼き付き性を向上させる効果は
少なく、また、25wt%を越えて含有させると塑性加
工性を劣化させる。よって、Cr含有量は15〜25w
t%とする。
【0018】MoおよびVは極めて微細な炭化物とな
り、材料の高温強度および硬度を高くし、また、材料の
焼入れ性を良好にする元素であり、含有量が7wt%を
越えて含有させると、靭性が劣化して細線に加工するこ
とが困難となる。よって、Mo、Vの含有量は1種或い
は2種で7wt%以下とする。
【0019】Siは溶解時に脱酸剤として作用する元素
であり、材料の硬度を上昇させる効果があり、含有量が
0.2wt%未満では脱酸剤としての効果は不充分であ
り、1.0wt%を越えて含有させると冷間における塑
性加工性を阻害するようになる。よって、Si含有量は
0.2〜1.0wt%とする。
【0020】MnはSiと同様に溶解時に脱酸剤として
作用する元素であり、基地に固溶して焼入れ性を向上さ
せる効果を有しており、さらに、材料の強度および靭性
に悪影響を与える不純物としてのSと結合して硫化物と
し、強度および靭性への影響を低減させる効果があり、
含有量が0.2wt%未満ではこのような効果は少な
く、また、1.0wt%を越えて含有させると塑性加工
性を阻害するようになる。よって、Mn含有量は0.2
〜1.0wt%とする。
【0021】本発明にかかるピストンリング材における
炭化物はM73型とするのであり、窒化処理により炭窒
化物を形成し易いM3C型、M73型、M236型の炭化
物の中で最も硬度が高く、耐摩耗性および耐焼き付き性
に優れているからであり、従来のスチール材のように、
MC型、M3C型、M6C型、M73型、M236型の炭
化物の1種またはこれら炭化物が混在したものとは全く
異なっている。
【0022】また、M3C型、M73型、M236型の炭
化物は、他の炭化物に比較して窒化処理に対して、以下
説明するような優れた効果がある。即ち、M3C型、M7
3型、M236型の炭化物は、他の炭化物に比べて結晶
構造が不安定な化合物であり、従って、窒化処理によっ
て炭化物中のCがNと置換される時、その結晶構造が不
安定であるため容易に置換され、炭窒化物を形成し易
く、硬度の高い炭窒化物とすることは耐摩耗性および耐
焼き付き性に有効であり、高い含有量のM73型炭化物
を有しているピストンリング材は、M73型炭化物の優
れた特性に加えて、炭窒化物との相乗効果により優れた
耐摩耗性および耐焼き付き性を有する。
【0023】M73型炭化物の最大粒径を8μm以下と
するのは、炭化物の粒径が大きいとピストンリング材を
製造する過程における塑性加工工程において、延性が不
足し、高い加工率の変形を容易に行うことができず、小
さい加工率により何回も繰り返す必要が生じるためであ
る。
【0024】また、炭化物粒径が大きいと塑性加工によ
って炭化物が割れることによる空洞や基地と炭化物との
界面に空洞を生じることにより、ピストンリングの製造
時および組付け時、或いは、内燃機関の運転時にピスト
ンリングが折損してしまう。
【0025】その他、炭化物の粒径が大きいと窒化層中
に炭窒化物が粗大ネット状に生成し易く、さらに、粗大
炭化物が存在すると空洞の存在による両方の影響により
低温における運転時に、爆発圧力と高い摩擦力の繰り返
し応力によって、窒化層の中から微小な割れが生じて、
ついにはフレーク状に摺動面から部分的に剥離する。従
って、M73型炭化物の最大粒径は8μm以下とする。
【0026】次に、M73型炭化物の含有量(面積率)
を15〜30%とするのは、従来のスチール材において
は5〜20%であることから、15%未満では耐焼き付
き性が不充分であり、また、30%を越えると細線に加
工することが困難となるからである。よって、M73
炭化物の含有量(面積率)は15〜30%とする。
【0027】本発明に係るピストンリング材を製造する
方法について簡単に説明すると、上記に説明した含有成
分および成分割合の合金を溶解し、この溶解した合金溶
湯を窒素雰囲気においてガスアトマイズにより合金粉末
とし、この粉末を100μm以下に篩分けを行い、軟鋼
製の容器に充填して真空引きしながら容器のシール溶接
を行う。
【0028】その後、熱間において静水圧で完全な真密
度とするためにHIP処理を行う。このHIP処理後表
面の軟鋼を切削除去し、分塊圧延を行ってφ8mmの丸
棒とした。次いで、熱間圧延を行った後、冷間において
線引を行ってから、950〜1000℃の温度に加熱し
た後急冷し、600〜750℃の温度において焼戻しを
行い、基地中に分散する炭化物をM73型とし、さら
に、炭化物の最大粒径を8μm以下の微細な状態として
均一に分散させ、かつ、基地中に占める炭化物を15〜
30%の含有量(面積率)とした。そして、この線材を
カム形状にコイリングして、窒化処理後に所定形状のピ
ストンリングとするのである。
【1129】
【実 施 例】本発明に係るピストンリング材の実施例
を比較例と共に説明する。
【0030】
【実 施 例 1】第1表の記号A、B、C、D、E、
F、Gで示す含有成分および成分割合のFe合金を溶解
した後、窒素ガス雰囲気においてアトマイズ法により合
金粉末を製造し、100μm以下に篩分けを行い、軟鋼
製容器に充填して真空引きしながら容器のシール溶接を
行い、その後、熱間において静水圧のもとで完全に真密
度とするHIP処理を行った後、表面の軟鋼を切削除去
してから、分塊圧延によりφ8mmの丸棒を製造した。
【0031】これらの各丸棒から5mm角で長さ10m
mの角状の試験片を作成し、950〜1000℃の温度
に加熱後、急冷し、600〜750℃の温度において焼
戻しを行い、硬度をHRC39〜42の間に揃えた。
【0032】この試験片の端面(5mm角)の研磨仕上
げを行った後、ガス窒化処理を行った。この窒化処理を
行った後、最表面に形成された脆い窒化物を取り除くた
め、摺動面を15〜20μm程度ラップ仕上げにより除
去し、表面粗さRz:0.6〜0.8μmとした。
【0033】第2表に、試験前の試験片について窒化処
理前にX線回析による炭化物の定性分析、画像解析装置
による炭化物の含有量(面積率)の定量測定を調査した
結果、また、窒化処理後の窒化層の硬度および窒化深さ
を示してある。
【0034】第2表に示す記号A、B、C、D、E、
F、Gの試験片は、何れも粉末冶金法により製造したも
のであるから、炭化物の平均粒径は2μm以下である。
本発明に係るピストンリング試験片(D、E、F、G)
は、炭化物はM73型で、含有量(面積率)は18〜2
5%であり、窒化層の硬度はHmV1160以上と高
く、さらに、M73型の炭化物であるので、窒化処理に
より結晶構造が不安定であることから、容易にCがNと
置換されて炭窒化物になり易く、高い硬度の炭窒化物と
なる。従って、本発明に係るピストンリング試験片は高
い含有量(面積率)のM73型炭化物であるから、M7
3型炭化物の元来保持している特性に加えて、炭窒化
物との相乗効果により、優れた耐摩耗性および耐焼き付
き性を期待することができる。
【0035】これに対し比較材材Aは、窒化層の硬度は
HmV1200と高いけれども、炭化物の含有量(面積
率)は13%と低く、炭化物もMC型、M6C型、M23
6型の混在したものである。また、比較材Bは、炭化
物はM73型であり、炭化物の含有量(面積率)も20
%と高いが、Crの含有量が低いために窒化層の硬度が
低い。さらに、比較材Cは、炭化物はM236型であ
り、かつ、炭化物の含有量(面積率)も低い。従って、
これらの比較材は、窒化処理後の炭窒化物の含有量およ
び残存する炭化物の硬度も低いので、優れた耐摩耗性お
よび耐焼き付き性を期待することはできない。
【0036】上記に説明した試験片の試験装置について
説明すると、試験装置はピンーディスク型摩耗試験機で
あり、ピンは上記に説明した5mm角の試験片を用い、
ディスクに直径70mm、厚さ8mmの研磨仕上げを行
ったシリンダーライナー材(FC−25)の円盤試験片
を用いた。試験においては、試験装置にピンおよびディ
スクを固定し、所定の押し付け圧力によりピンとディス
クを接触させる。この接触面に所定量のエンジンベース
オイル#30を供給しながら、ピンを円弧状に8mm/
secの一定速度で摺動させる。この時、試験片に働く
押し付け圧力を段階的に増加させ、摩擦力によって生じ
るトルクが急増する時の面圧により、焼き付き発生面圧
とし、その大小により耐焼き付き性の相対比較を行うも
のである。
【0037】上記の条件において試験を5回繰り返して
行った。また、比較のために窒化処理を行わない比較材
Cの摺動面に、100μmの厚さの硬質クロムめっき処
理を行ったものに、同様に試験を行った。結果を図1に
示す。
【0038】その結果、本発明に係るピストンリング材
の試験片(D、E、F、G)は、比較材の硬質クロムめ
っき処理を行った試験片よりも優れた耐焼き付き性を示
した。また、比較材(A、B、C)は、硬質クロムめっ
き処理を行った試験片よりも耐焼き付き性に劣ってい
る。なお、靭性を向上させるために、Niを0.2〜2
wt%含有させることができる。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【実 施 例 2】実施例1と同様な方法により製造した
φ8mmの丸棒を、さらに、φ5mmの長尺丸棒にする
ために熱間圧延を行い、外周の黒皮部を機械加工により
除去した後、冷間において線引加工を複数回行い、95
0〜1000℃の温度に加熱後急冷を行い、600〜7
50℃の温度で焼戻しを行い、2.2mm×3.3mmの
断面を有する硬度HRC39〜42の線材を製作し、所
定のカム形状に巻回し、ピストンリング形状に加工し
た。
【0042】次いで、570℃の温度において6時間の
窒化処理を行った後、機械加工により外径85mm、B
寸法2mm、T寸法3.1mmのトップリングを作成し
た。このピストンリングを水冷式6気筒で、排気量2.
8リットルのディーゼルエンジンに組み込みベンチで、
低水温の条件下において耐久試験を行った。 回転数 : 2000rpm 水温 : 40℃ 負荷 : 4/4(全負荷) エンジンオイル : ディーゼル用オイル(UDスーパ
ーS3 #30) 運転時間 : 100時間
【0043】なお、比較のために、溶解法により製造し
たスチール材(SUS440B,硬度HRC40)を上
記と同一条件により窒化処理を行ったトツプリング(比
較材H)と、SUS440B,HRC40のスチール材
でシリンダー壁と摺動する外周部に硬質Crめっきを行
ったトツプリング(比較材I)を作成した。
【0044】上記に説明した各材料の顕微鏡組織を観察
すると、比較材Hおよび比較材Iは、最大20μm程度
の粗大な炭化物が存在しており、炭化物の割れによる空
洞や炭化物と界面の間にも空洞が観察された。しかし、
本発明に係るピストンリング材においては、炭化物は最
大でも8μm程度であり、空洞は全然観察されなかっ
た。
【0045】ベンチ耐久試験の前後に、ピストンリング
の寸法測定を行い、シリンダー壁と摺動する面の摩耗量
を調査した結果を図2に示す。図2から明らかである
が、硬質クロムめっきの摩耗量に比較して、本発明に係
るピストンリング(トツプリング)の摩耗量は極めて少
なく、また、100時間の耐久後、リングの外周面を顕
微鏡により観察した結果、比較材Iでは一部にフレーク
状の剥離に至る前兆である摺動方向の略直角方向に微小
な亀裂が観察された。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るピス
トンリング材は上記の構成を有しており、以下の効果を
有するものである。 (1)耐焼き付き性が従来のクロムめっきに比較して高
く、潤滑条件の苛酷な低温時における運転条件下および
始動時に焼き付きが発生し難い。 (2)粗大な炭化物が存在することなく、炭化物は全て
微細状態で分布しているため、冷間加工時にも炭化物が
割れることによる微小な空洞や、或いは、基地と炭化物
との界面に微小な空洞が生じることがないので、ピスト
ンリングの製造工程、内燃機関への組み付け時、内燃機
関の運転時にピストンリングが折損することがない。 (3)窒化処理によっても、窒化層中の炭化物と炭窒化
物は、均一で微細状態であるから、低温における運転時
に、爆発圧力と高い摩擦力により繰り返しの応力によっ
て、窒化層の中から微小な割れを生じて、ついには摺動
面から部分的にフレーク状に剥離するという現象も起こ
り難い。 (4)実際のエンジンにおける耐久試験は、ディーゼル
エンジンのトツプリングについて行ったが、ガソリンエ
ンジンにおいても同様であり、また、セカンドリングや
オイルリングのレールやスペーサーとしても同様に優れ
た耐久性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験片の焼き付き発生面圧を示す図である。
【図2】試験片の外周摩耗量を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F16J 9/26 A 7366−3J

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C 1.2〜2.5wt%、Cr 15〜2
    5wt%、 Mo、Vの1種または2種 7wt%以下、 Si 0.2〜1.0wt%、Mn 0.2〜1.0wt%
    を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、最大
    粒径8μm以下の微細なM73型炭化物を15〜30%
    含有し、シリンダー壁と摺動する外周面が窒化されてい
    ることを特徴とする粉末冶金法による内燃機関用ピスト
    ンリング材。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE19957323C1 (de) * 1998-05-22 2001-01-25 Hitachi Powdered Metals Sinterlegierung mit besserer Abriebbeständigkeit und Verfahren zu ihrer Herstellung
KR101295322B1 (ko) * 2013-04-16 2013-08-12 정광주 피스톤 링 제조 방법 및 이 방법에 의해 제조된 피스톤 링

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