JPH0557308U - エンジン消音器の排気管構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 簡単かつ安価な改良を施すだけで消音効果を
向上させることができ、かつ、長期間にわたり高い消音
性能を維持できるエンジン消音器の排気管構造を得よう
とするものである。 【構成】 エンジンの運転により発生する排気ガスを排
気管の側面に穿設したガス放出孔から放出して排気ガス
を順次膨張させ、エンジン排気の騒音を低減させるエン
ジン消音器の排気管構造において、前記ガス放出孔８
は、排気管１内の高圧の排気ガスが前記ガス放出孔８を
とおって排気管１外に放出される際に、前記排気ガスが
前記ガス放出孔８の周縁を回り込んで渦を発生させない
ように、前記周縁の角部を切落したことを特徴とする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、自動車やオートバイ等のエンジン排気の騒音を低減するための消音 器の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】

一般に、自動車やオートバイなどのエンジンの排気騒音は、大気中に放出され る高温，高圧の排気ガスが急激に膨張して発するものであるため、消音器にて排 気ガスの温度と圧力を下げた後に外気に放出することにより排気騒音の低減を図 っている。そして、このような消音器としては、鋼製の筒体内部を複数の障壁で 区切り、この筒体内に、側面に多数のガス放出孔を穿設した複数本の排気管を直 列にとおした構造のものや、図８に示す消音器１６のように、筒体１７内に排気 管１９を挿通させ、前記筒体１７内の排気管１９の側面に多数のガス放出孔２０ を穿設し、この排気管１９の周囲をグラスウールなどの吸音材１８で包んだ構造 のものが知られている。 上記態様により、排気管の側面のガス放出孔から放出された排気ガスは、障壁 や吸音材１８により低圧，低温のガスに変換されて大気中に放出されるものであ る。

【０００３】 しかしながら、排気管内のガス圧力がある所定の圧力に達すると、排気ガスが ガス放出孔から放出される際に騒音性の高い、いわゆる笛吹き音が発生する。こ の笛吹き音は前記吸音材等により低減させることができるが、グラスウールなど の吸音材が飛散または劣化することによりその消音効果が低下することがあるの で、前記笛吹き音により排気騒音が法定の基準値を越えてしまい、重大な騒音公 害の一因をなすという問題があった。 このような問題点を解決するために、ガス放出孔の孔形状を長孔などに変化さ せる対策が試みられているが、排気音の音質が悪化してその商品価値が低下する という欠点があった。そこで、グラスウールなどの吸音材の量を変えたり、吸音 材の飛散を防止するためにステンレスやロープなどの吹き抜け防止材を排気管の 周囲と吸音材との間に介在させたり、筒体内の排気管の配置をかえるなど、種々 の対策が講じられている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

本考案は、上記従来の欠点に鑑み、簡単かつ安価な改良を施すだけで消音効果 を向上させることができ、かつ、長期間にわたり高い消音性能を維持できるエン ジン消音器の排気管構造を得ようとするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

上記課題を解決するために、本考案人は、排気管のガス放出孔から排気ガスが 放出される際に前記ガス放出孔の周縁部で渦が発生し、この渦の発生が騒音の発 生要因の一つになっているのではないかとの推測のもと、ガス放出孔の断面形状 を工夫することで渦の発生を防止し、排気音の低減を図ることとした。

【０００６】 具体的には、自動車等のエンジンの運転により発生する排気ガスを排気管の側 面に穿設したガス放出孔から放出して排気ガスを順次膨張させ、エンジン排気の 騒音を低減させるエンジン消音器の排気管構造において、前記ガス放出孔は、排 気管内側の開口周縁の角部を切落してなること特徴とする。

【０００７】

【作用】

本考案によれば、ガス放出孔の開口周縁の角部を切落してなるので、エンジン から発生した高温，高圧の排気ガスが前記ガス放出孔をとおって排気管外に放出 される際に、排気ガスが前記ガス放出孔の開口周縁を回り込むことによる渦の発 生を防止することができ、排気管から排気ガスが放出される際の騒音を低減させ て排気騒音の低減を図ることができる。

【０００８】

【実施例】

本考案の実施例を、図面に従って詳細に説明する。 図９は、従来の排気管に穿設されたガス放出孔の拡大断面図である。 本考案人は、消音器内を挿通する排気管７内から高圧の排気ガスがガス放出孔 １４をとおって排気管７外に放出される際に（排気ガスの放出方向を矢印で示す ）、ガス放出孔１４の周縁角部に排気ガスが回り込んで排気ガスの渦１５が発生 し、この渦１５の発生により排気騒音が高められているのではないかという推測 のもと、排気ガスの渦１５の発生を抑止できるガス放出孔１４の断面形状を種々 選択して実験を行った。

【０００９】 図１は本考案の第１実施例である。なお、図中矢印は排気ガスの放出方向を示 すものである。 ガス放出孔８は、排気管１の内側から外側にかけてガス放出孔８の径が減少す るようにその断面がテーパ状に形成されていて、排気ガス放出の際にガス放出孔 ８の周縁で排気ガスの回り込みが生じにくい形状となっている。 本考案人は、上記のガス放出孔８を穿設した排気管１を使用した消音器を製作 し、排気音の周波数と音圧レベルとの測定を行った。なお、測定にあたり、排気 管１を構成する鋼板の厚さは１．２ｍｍ、ガス放出孔８の孔径は排気管１の外側 開口部で３ｍｍ、ガス放出孔８のテーパ角は４５度のものを使用した。

【００１０】 図２は、排気音の周波数と音圧レベルとの測定結果を示すグラフである。 このグラフにおいて、横軸は周波数、縦軸は音圧レベルを示している。また、 グラフ中、実線Ａは従来の排気管を使用した消音器の測定データを、点線Ｂは本 願の排気管１を使用した消音器の測定データを示している。

【００１１】 このグラフから明らかなように、６３Ｈｚから８ＫＨｚの低中周波領域では、 本願の排気管を使用した消音器も従来の排気管を使用した消音器も音圧レベルに 大きな差異はないが、１０ＫＨｚ前後の高周波領域では、従来のものは音圧レベ ルが極めて高いのに対し、本考案のものは、８ＫＨｚ近傍から滑らかな下降曲線 を描いて音圧レベルが低下していることを示している。 以上の測定結果から、本考案によるものは、ガス放出孔の周縁角部を切落する ことにより、いわゆる笛吹き音が発生するある一定の領域内において極めて大き い騒音抑止効果を有することが確認できた。

【００１２】 図３ないし図７は、ガス放出孔の他の態様を示すものである。 図３に示すガス放出孔９は、ガス放出孔９の排気管２内側周縁に皿状の面取り 加工を施したものである。 図４に示すガス放出孔１０は、ガス放出孔１０の排気管３内側周縁にＲ状の面 取り加工を施したものである。 図５に示すガス放出孔１１は、排気管４の内側から外側に向けてエンボス加工 を施して形成したものである。 図６に示すガス放出孔１２は、排気管５の内側から外側に向けて打ち抜き加工 を施して形成したものである。 図７に示すガス放出孔１３は、排気管６の内側から外側に向けてバーリング加 工を施して形成したものである。

【００１３】 上記態様により、排気ガスがガス放出孔９〜１３の周縁角部を回り込むことに より発生する渦を防止することができる。 上記で例示したガス放出孔９〜１３の断面形状は、エンジンの排気ガス圧の高 さや消音器の構造，製造の容易さなどを考慮して適宜に選択されることは言うま でもない。また、本願考案においてガス放出孔の形状は、円形状のものに限られ るものでなく、楕円形状のものや長円形状のものであってもよい。

【００１４】

【考案の効果】

本考案は上述のとおり構成されているので、消音器内に排気ガスを導く排気管 の側面に穿設されたガス放出孔の周縁角部を切落するという、極めて簡単な改良 を施すだけで、騒音性の高い笛吹き音の発生を抑止して排気騒音の大幅低減を実 現することができた。 例えば、グラスウールなどの吸音材が飛散または劣化しても、笛吹き音の発生 を防ぐことにより、排気音の騒音値が法定の基準を越えることがなく、長期にわ たって消音器の性能を維持することができる。 従って、本願考案によれば、従来の排気管に大幅な設計を変更を加えることな く、安価かつ簡単な改良を施すだけで目的を達成することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の第１実施例にかかり、排気管の側面に
穿設するガス放出孔の断面形状を示すものである。

【図２】本考案の消音器における排気音の周波数と音圧
レベルとの関係を示すグラフである。

【図３】本考案の他の態様を示すもので、ガス放出孔の
排気管内側周縁に皿状の面取り加工を施したものであ
る。

【図４】本考案の他の態様を示すもので、ガス放出孔の
排気管内側周縁にＲ状の面取り加工を施したものであ
る。

【図５】本考案の他の態様を示すもので、排気管の内側
から外側に向けてエンボス加工を施して形成したもので
ある。

【図６】本考案の他の態様を示すもので、排気管の内側
から外側に向けて打ち抜き加工を施して形成したもので
ある。

【図７】本考案の他の態様を示すもので、排気管の内側
から外側に向けてバーリング加工を施して形成したもの
である。

【図８】消音器の一例にかかり、その構成を示す一部破
断の斜視説明図である。

【図９】従来の排気管に穿設されたガス放出孔の断面側
面図である。

【符号の説明】

１ 〜 ７ 排気管 ８ 〜 １４ ガス放出孔 １５ 渦 １６ 消音器 １７ 筒体 １８ 吸音材 １９ 排気管 ２０ ガス放出孔

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 自動車等のエンジンの運転により発生す
   る排気ガスを排気管の側面に穿設したガス放出孔から放
   出して排気ガスを順次膨張させ、エンジン排気の騒音を
   低減させるエンジン消音器の排気管構造において、 前記ガス放出孔は、排気管内側の開口周縁の角部を切落
   してなること、を特徴とするエンジン消音器の排気管構
   造。