JPH0547306U - ロッカーアーム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【構成】 ロッカーアーム３は、バルブステムとの当た
り面にセラミック体５を配してなる。そして、セラミッ
ク体５の背面に嵌合軸５ｂを突設すると共に、ロッカー
アーム３側に嵌合孔７を穿設し、該嵌合孔７にセラミッ
ク体５の嵌合軸５ｂを圧入する。 【効果】 セラミック体５の固着に関連して加熱等の必
要がない。従って、セラミック体５を固着する前にロッ
カーアーム３に所定の熱処理を施すことができる等、セ
ラミック体５を組み込んだロッカーアーム３の製造が非
常に容易になり、耐久性に優れたロッカーアーム３を低
廉に提供することができる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、内燃機関におけるバルブ駆動機構の一部品であるロッカーアームに 関する。

【０００２】

【従来の技術】

バルブステム、プッシュロッド及びバルブブリッジのうち少なくとも一の相手 部材との当たり面にセラミック体を配することによって耐摩耗性の向上を図るよ うにしたロッカーアームが、例えば実開昭５９−９１４０４号や実開昭５８−１ ６３０２号等に開示されている。前者はロッカーアームにセラミック体をろう付 けするものであり、後者はセラミック体をアルミニウム合金により鋳ぐるむよう にしたものである。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

前者のようにロッカーアームにセラミック体をろう付けすると、ろう付け熱処 理により鋳鉄が鈍ってしまう。そのため、ろう付け後に硬度が必要な部分に焼き 入れをするか、或いは、Ｍｎ，Ｃｒ等の元素を添加して鋳鉄を鈍り難くする、等 の対策を講ずる必要があった。 また、後者のようにセラミック体をアルミニウム合金で鋳ぐるむ場合は、アル ミニウム合金の熱収縮によりセラミック体が割れてしまうことがあり、そのため セラミック体やロッカーアームの形状が制約される、等の問題点があった。

【０００４】

【課題を解決するための手段】

図４に示したように、セラミック体の背面に嵌合軸を突設すると共に、ロッカ ーアーム側に嵌合孔を穿設する。そして、その嵌合孔にセラミック体の嵌合軸を 嵌合して、ロッカーアームにセラミック体を固着するようにする。 また、セラミック体の嵌合軸の嵌合長さを、嵌合軸の軸径の約７５％以上に設 定するのが望ましい。 さらにまた、前記セラミック体の嵌合軸の一部に凹部を形成し、該凹部に向け てロッカーアームの嵌合孔を塑性変形させるようにしてもよい。

【０００５】

【作用】

ロッカーアームの嵌合孔に嵌合軸を嵌めてセラミック体を固着する構造である ため、セラミック体の固着に関連して加熱等の必要がない。従って、セラミック 体を固着する前にロッカーアームに所定の熱処理を施すことができる等、セラミ ック体を組み込んだロッカーアームの製造が容易になる。

【０００６】

【実施例Ｉ】

以下に本考案の実施例Ｉを図１〜図４を参照しつつ説明する。 図１はバルブ駆動機構を示す正面図である。バルブ駆動機構は周知のように、 カム１の回転によりプッシュロッド２を上下動させ、そのプッシュロッド２の上 下動でロッカーアーム３を揺動させると共に、さらにロッカーアーム３の揺動で バルブ４を上下動させるものである。 ロッカーアーム３は、バルブステム４ｓとの当たり面にセラミック体５を固着 し、プッシュロッド２との当たり面に浸炭焼き入れした鋼製の受け部材６をねじ 止めしたものである。

【０００７】 前記セラミック体５は、図２の斜視図、及び、図３の正面図に示したように、 底面を球状に湾曲させた本体部５ａと、該本体部５ａの背面に突設した円柱状の 嵌合軸５ｂ、及び、この嵌合軸５ｂの先端に突設した案内軸５ｃとからなる。嵌 合軸５ｂと案内軸５ｃには、先端に面取り部５ｄ，５ｅが形成してある。セラミ ック体５は、耐摩耗性に優れた性質が要求されるため、例えば、イットリアを１ .８又は２.８モル％含有する部分安定化ジルコニアの焼成物等で形成する。 一方、ロッカーアーム３は、アルミニウム合金等の金属で形成されており、バ ルブステム４ｓと対向する部分に嵌合孔７が穿設されている。該嵌合孔７は、前 記セラミック体５の嵌合軸５ｂと案内軸５ｃとを加えた長さよりも深く、また、 嵌合軸５ｂの軸径より若干小径で、且つ、案内軸５ｃの軸径より若干大径に設定 される。なお、図３に示したように、嵌合軸５ｂが嵌合孔７の内壁に対して有効 に嵌まり合う部分の有効長さＬを「嵌合長さ」という。

【０００８】 セラミック体５の嵌合軸５ｂは、ロッカーアーム３の嵌合孔７に、以下の要領 で圧入される。なお、その圧入作業は常温で行う。 先ず、案内軸５ｃを嵌合孔７に通す。前記のように案内軸５ｃは、先端に面取 り部５ｄが形成されており、且つ、嵌合孔７より小径であるため、嵌合孔７に無 理なく差し込むことができる。 この状態でセラミック体５の本体部５ａに圧力をかけ、嵌合軸５ｂを嵌合孔７ に強制的に押し込む。このとき嵌合軸５ｂは、案内軸５ｃにガイドされながら先 端の面取り部５ｅから徐々に嵌合孔７に嵌まり込むため、比較的スムーズに圧入 することができる。

【０００９】 しかして、嵌合軸５ｂの軸径Ｄ＝５.５mm、嵌合長さＬ＝２.２mm，３.３mm， ４.１５mm，４.４mmとした４種類のセラミック体５を製造し、これを嵌合孔７の 直径５.４８５mmとしたロッカーアーム３に夫々圧入すると共に、このロッカー アーム３を排気量２７００ｃｃのＯＨＶディーゼルエンジンに組み込んで、４０ ００ｒｐｍ、フルロードで１００時間の耐久テストを行った。 なお、セラミック体５は、イットリアを２.８モル％含有する部分安定化ジル コニアを用いて金型プレスで成形し、これを大気中１５００℃の温度で焼成した 。但し、嵌合長さを４.４mmにしたセラミック体５についてはイットリアを１.８ モル％含有する部分安定化ジルコニアも使用した。案内軸５ｃの軸径は５.２mm である。また、ロッカーアーム３は、アルミニウム合金で成形した。

【００１０】 以上の耐久テストの後、セラミック体５、及び、受け部材６の当たり面の摩耗 量を夫々測定したところ、共に５μｍ以下であった。因みに、嵌合長さを４.４m mとしたセラミック体５と同形状のものを、浸炭焼き入れした鋼で製造し、同様 な耐久テストを行ったところ、当たり面の摩耗量は５０μｍ以上であった。 また、嵌合軸５ｂの嵌合長さを４.１５mm、同４.４mmとしたものでは圧入部に 異常がなかったが、嵌合長さを２.２mmとしたもので０.０１mm、同３.３mmとし たもので０.００５mmのがた付きが圧入部に発生した。この結果から、嵌合軸５ ｂの嵌合長さを、嵌合軸５ｂの軸径の約７５％以上にした場合に優れた耐久性を 発揮することが確認できた。しかし、それ以下の比率で前記のようながた付きが 発生したものでも、耐久テスト中のエンジンに異常を生じさせる程のことはなく 、実用上の問題はなかった。

【００１１】

【実施例II】

図５〜図７は実施例IIを示すもので、嵌合軸５ｂの一部に凹部８を形成したも のである。この実施例IIにおける嵌合孔７は、嵌合軸５ｂの軸径より若干大径に 形成される。そして、ロッカーアーム３の嵌合孔７に図６のように嵌合軸５ｂを 挿通した状態で、ロッカーアーム３の外から凹部８に向かって荷重を加え、該凹 部８に向けてロッカーアーム３の嵌合孔７を圧潰状態に塑性変形させるのである 。 この実施例IIのセラミック体５で前記と同じ耐久テストを実施した。 耐久テストに使用したセラミック体５は、嵌合軸５ｂの軸径Ｄ＝５.５mm、嵌 合長さＬ＝４.４mm、凹部８の深さ０.５mmであり、その他は実施例Ｉの耐久テス トで使用したセラミック体５と同じである。また、ロッカーアーム３の嵌合孔７ は５.５５mmに成形し、嵌合軸５ｂを嵌合孔７に装着した状態で１５００kgの荷 重を加えて塑性変形させた。

【００１２】 この耐久テストの結果でも、圧入部にがた付き等の異常が発生しないことが確 認できた。 なお、前記凹部８は、図５，６のように一箇所だけに溝加工する場合の他、図 ７に示したように、嵌合軸５ｂの外周を一周するように形成してもよい。 以上本考案の実施例を、バルブステム４ｓとの当たり面に適用する場合につい て説明したが、図８，９に示したように、プッシュロッド２との当たり面に受け 部材としてセラミック体５０を適用することもできる。そして、プッシュロッド ２との当たり面に適用するセラミック体５０には、図８のように当たり面を凸型 にするものと、図９のように凹型にするものとがある。 また、１気筒に吸気側及び排気側の各々に２つのバルブを備えるエンジンの場 合、ロッカーアーム３とバルブ４との間に図１０のようにバルブブリッジ９を介 することにより、２つのバルブを同時に駆動させることができるが、このバルブ ブリッジ９との当たり面にセラミック体５を適用することもできる。

【００１３】

【考案の効果】

以上のように本考案のロッカーアームは、ロッカーアームの嵌合孔に嵌合軸を 嵌めてセラミック体を固着する構造であるため、セラミック体の固着に関連して 加熱等の必要がない。従って、セラミック体を固着する前にロッカーアームに所 定の熱処理を施すことができる等、セラミック体を組み込んだロッカーアームの 製造が非常に容易になり、耐久性に優れたロッカーアームを低廉に提供すること ができる。 そして、セラミック体の嵌合軸の嵌合長さを、嵌合軸の軸径の約７５％以上に することにより、特に優れた耐久性を発揮する。 また、セラミック体の嵌合軸の一部に凹部を形成し、該凹部に向けてロッカー アームの嵌合孔を塑性変形させるようにすれば、嵌合軸を圧入する構造に比べて 、嵌合孔に嵌合軸を挿入する工程におけるセラミック体の損傷が少ないという効 果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】バルブ駆動機構を示す正面図である。

【図２】セラミック体の斜視図である。

【図３】セラミック体の正面図である。

【図４】ロッカーアームの一部を断面にして示す分解正
面図である。

【図５】実施例IIのセラミック体を示す正面図である。

【図６】実施例IIのロッカーアームを示す一部断面正面
図である。

【図７】実施例IIのセラミック体を示す正面図である。

【図８】他の適用例を示すロッカーアームの一部断面正
面図である。

【図９】他の適用例を示すロッカーアームの一部断面正
面図である。

【図１０】バルブブリッジを用いたバルブ駆動機構を示
す正面図である。

【符号の説明】

２ …プッシュロッド ３ …ロッカーアーム ４ｓ …バルブステム ５，５０…セラミック体 ５ｂ …嵌合軸 ７ …嵌合孔 ８ …凹部 ９ …バルブブリッジ

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 バルブステム、プッシュロッド及びバル
   ブブリッジのうち少なくとも一の相手部材との当たり面
   にセラミック体を配してなるロッカーアームにおいて、 前記セラミック体の背面に嵌合軸を突設すると共に、ロ
   ッカーアーム側に嵌合孔を穿設し、該嵌合孔にセラミッ
   ク体の嵌合軸を嵌合固着するようにしたことを特徴とす
   るロッカーアーム。
2. 【請求項２】 セラミック体の嵌合軸の嵌合長さを、嵌
   合軸の軸径の約７５％以上に設定したことを特徴とする
   請求項１記載のロッカーアーム。
3. 【請求項３】 セラミック体の嵌合軸の一部に凹部を形
   成し、該凹部に向けてロッカーアームの嵌合孔を塑性変
   形させるようにしたことを特徴とする請求項１記載のロ
   ッカーアーム。