JPH0544571Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 (イ) 考案の分野 この考案は、例えば船舶用推進軸や操舵軸系の
鍛造鍔軸継手の対向フランジ面間に、絶縁を目的
として介設する絶縁軸継手用の絶縁スペーサに関
する。

(ロ) 考案の背景 従来、例えば船舶用として用いられる軸継手の
対向フランジ面間には、船体と推進軸系間に発生
する微少電位の電気閉回路を遮断してホワイトメ
タル等の軸受け部材その他の放電腐食（スパーク
エロージヨン）を防止するため、絶縁板を介設し
ている。

しかし、従来のこの絶縁板はFRP（ガラス繊維
強化プラスチツク）製の円板であり、機械的強度
の最も強いエポキシガラスクロス積層板（エポキ
シFRP）を用いた場合においても、その板厚を
厚くすると、第３図に特性ｂで示す如く、圧縮応
力に対する変形量が大となる欠点があつた。

この第３図の特性ｂは、絶縁距離10mmのエポキ
シFRP製の絶縁板の特性で、わずか1000Kgｆ／
cm²程度の圧縮応力でも、0.1mm弱もの変形量が認
められた。

上述の圧縮応力に対する変形量を少なくするた
めに、絶縁距離つまり板厚の小さい絶縁板を用い
ると、板厚が薄すぎるため、絶縁軸継手の停止時
における絶縁確認（絶縁抵抗の測定）ができなく
なる問題点を有していた。

(ハ) 考案の目的 この考案は、絶縁距離を長く設定しても圧縮応
力に対する変形量が小さく、しかも絶縁軸継手の
停止時における絶縁抵抗の測定を容易に行なうこ
とができる絶縁軸継手用の絶縁スペーサの提供を
目的とする。

(ニ) 考案の要約 この考案は、金属製母材の外面全域に絶縁材コ
ーテイング被膜を形成すると共に、開口端が外周
部に露出する絶縁抵抗測定用の装着部を上記母材
に形成した絶縁軸継手用の絶縁スペーサであるこ
とを特徴とする。

(ホ) 考案の効果 この考案によれば、外面全域が絶縁材コーテイ
ング被膜によつて覆われた上述の金属製母材の存
在により、圧縮応力に対する変形量を極めて小さ
くすることができるので、絶縁距離を長く設定す
ることができる効果がある。

しかも、絶縁抵抗測定用の装着部を上述の母材
に形成しているので、絶縁軸継手の停止時におい
ては、この装着部を利用して、絶縁抵抗の測定を
容易に行なうことができる効果がある。

(ヘ) 考案の実施例 この考案の一実施例を以下図面に基づいて詳述
する。

図面は船舶推進軸の絶縁軸継手に使用される絶
縁スペーサを示し、第１図において、この絶縁ス
ペーサ１は、推進軸２，３のフランジ部４，５間
に介設した状態で、複数のリーマボルト６…およ
びナツト７…により締結している。

すなわち、上述のフランジ部４のリーマ孔４
ａ、絶縁スペーサ１のボルト孔８、フランジ部５
のリーマ孔５ａに、ボルト頭９に金属ワツシヤ１
０とFRP（ガラス繊維強化プラスチツク）製の絶
縁ワツシヤ１１とを接着したリーマボルト６を貫
通し、フランジ部５外面にFRP製の絶縁ワツシ
ヤ１２と金属ワツシヤ１３とを接着して一体化し
たものを配設して、リーマボルト６先端のネジ部
１４にナツト７を螺合することにより、対向フラ
ンジ４，５面間に前述の絶縁スペーサ１を介設し
た状態で、これら三者１，４，５を締結してい
る。

上述のリーマボルト６におけるリーマ軸部１５
外周面には、PVdF（ポリフツ化ビニリデン）等
の絶縁被覆層１６を形成している。

前述の絶縁スペーサ１は第２図に明瞭に示す如
く、金属製母材１７と、この母材１７の外面全域
に形成した絶縁材コーテイング被膜１８とから構
成している。

上述の金属製母材１７としては、例えば一般構
造用圧延鋼材SSやステンレスSUS等の金属を用
い、この母材１７の全ての端面は円弧状に切削仕
上げされたアール面１７ａと成している。

この金属製母材１７の厚さはフランジ４，５の
絶縁距離を得るための所定厚さ例えば３〜10mmに
設定する。

また上述の絶縁材コーテイング被膜１８として
は、PVdF（ポリフツ化ビニリデン）、PPS（ポリ
フエニレンサルフアイド）、PCTFE（ポリクロロ
トリフルオロエチレン）、FEP（テトラフルオロ
エチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体）
等の高分子絶縁材を用い、まず前述の金属製母材
１７を、良好な接着強度を得るために表面処理し
た後に、上述の絶縁材を溶融して下塗り、上塗り
を施工し、ライニング厚さ約0.1〜0.5mmの絶縁材
コーテイング被膜１８に形成する。

上述の絶縁材コーテイング被膜１８としては有
機高分子絶縁材の他に、Al₂O₃（アルミナ）やSiC
（炭化硅素）等のセラミツク材コーテイング被膜
であつてもよい。

このようにして、金属製母材１７の外面全域に
絶縁材コーテイング被膜１８を形成した絶縁スペ
ーサ１には、第２図に示す如く、装着部としての
ネジ孔１９を形成している。

このネジ孔１９は母材１７に螺設され、その開
口端が外周部に露出する絶縁抵抗測定用の孔で、
絶縁スペーサ１の外周面数箇所に形成する。

図示実施例は上記の如く構成するものにして、
以下作用を説明する。

上述の絶縁スペーサ１は、その外面全域が絶縁
材コーテイング被膜１８によつて覆われた金属製
母材１７を備えているので、圧縮応力に対する変
形量を極めて小さくすることができる。

第３図の特性ａは、絶縁材としてPVdFを用
い、0.2mmのコーテイング厚みをもつた絶縁材コ
ーテイング被膜１８を、板厚9.6mmの金属製母材
１７にライニングし、全体として絶縁距離10mmの
絶縁スペーサ１の特性を示し、従来の特性ｂに対
して約10倍の圧縮強度があり、圧縮応力に対する
変形量が極めて小さいことが認められた。

しかも、上述の絶縁スペーサ１にはネジ孔１９
を形成しているので、推進軸２，３の停止時にお
いては、このネジ孔１９に絶縁チエツク用端子
（図示せず）を螺合し、高絶縁抵抗測定器いわゆ
るインスレーシヨンテスタ等を用いて第１図の各
点Ａ〜Ｅ間、つまりＡ，Ｂ間、Ａ，Ｄ間、Ｂ，Ｃ
間、Ｄ，Ｅ間の絶縁抵抗の測定を容易に行なうこ
とができる効果がある。

以上要するに、圧縮応力に対する変形量を極め
て小さくして、絶縁距離を長く設定することがで
きる効果があり、また絶縁抵抗の測定を容易に行
なうことができる効果がある。

なお、上記実施例においては絶縁抵抗測定用の
装着部としてネジ孔１９を例示したが、このネジ
孔１９の他にテスタ端子棒を挿入接触させる凹部
であつてもよい。

【図面の簡単な説明】

図面はこの考案の一実施例を示し、第１図は絶
縁軸継手に用いる絶縁スペーサの使用状態を示す
要部断面図、第２図は絶縁スペーサの部分拡大断
面図、第３図は圧縮応力に対する変形量の割合を
示す特性図である。 １……絶縁スペーサ、４，５……フランジ、１
７……金属製母材、１８……絶縁材コーテイング
被膜、１９……ネジ孔。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 絶縁軸継手の対向フランジ面間に介設する絶縁
   軸継手用の絶縁スペーサであつて、 金属製母材の外面全域に絶縁材コーテイング被
   膜を形成すると共に、 開口端が外周部に露出する絶縁抵抗測定用の装
   着部を上記母材に形成した 絶縁軸継手用の絶縁スペーサ。