JPH053758A - ラフイノース含有家畜飼料 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 家畜動物の消化器官内で、大腸菌などの有害
菌を抑制し、ビフィズス菌の増殖を行なって整腸作用を
行なうと共に、乳牛にあってはその乳量、乳脂率、乳蛋
白を増加させる飼料を得る。 【構成】 甜菜糖製造工程におけるクロマト分離工程よ
り分離されて得られたラフィノ−スを０．０１−２．０
％含有させた飼料とすることで、軟便を防止し、増体改
善を行い、かつ乳牛にあっては乳量、乳脂率、乳蛋白の
増加を行なわせる家畜用飼料を得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は甜菜糖製造工程における
糖液、あるいは廃糖蜜より、分離して得たラフィノース
を一定量含有させた家畜動物用飼料に関するもので、家
畜動物の増体改善を行い、下痢、軟便、食欲不振を防止
し、特に乳牛においては、乳量、乳脂率、乳蛋白を増加
させる効果のある家畜動物用飼料に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】家畜動物における下痢、軟便などの消化
器病は原虫、細菌、ウィルスあるいはストレスなどの様
々な要因が複合して起き、その後の成長、繁殖、家畜の
生産性に大きく影響する。特に幼動物時の下痢、軟便に
対し抗生物質あるいはサルファ剤などの薬品の投与によ
って処置されることが多いが、薬品の使用は体内での残
留、胎児への移行、生産物への汚染などの危険性があ
る。さらに、抗生物質に対して下痢、軟便の原因となる
細菌が抗体を持つ事によって、抗生物質の効力が低下す
るために、常に新たなる抗生物質が必要とされている。
その中で、オリゴ糖などが人の腸内でビフィズス菌を増
殖させ、大腸菌、クロストリディム属などの有害菌を抑
制し、整腸作用を有することが近年知られるようになっ
た。一方オリゴ糖の一種で甜菜に含まれいて、甜菜糖製
造工程において、シュクロースの結晶を阻害する製糖工
程上有害な物質であるラフィノースは、メリビアーゼに
より、シュクロースとガラクトースに分解し、シュクロ
ースの増収を行いつつ、製糖工程の改善を計っていた
が、近時製糖方法にクロマト分離方法が使用されて、シ
ュクロース画分と、ラフィノース画分と、その他の画分
分離が確実に行えることになり、分離したラフィノース
は、濃縮した後更に結晶工程をえて結晶ラフィノースと
して、試薬あるいは粉糖などと混合して甘味料として使
用されているが、家畜用飼料としての使用は未だ行なわ
れていない。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ラフィノースは難消化
性であることより、反すう動物あるいは単胃動物等の家
畜動物においても、人間と同様上部消化器管での分解が
なく、小腸以降に達することができれば、小腸下部及び
大腸内でビフィズス菌を増殖させ、特に幼畜においては
下痢、軟便を防止し、ラフィノースを給与しないものよ
り成長、生産性が優れることが推測されるが、ラフィノ
−スを含んだ甜菜糖製造工程よりの廃糖蜜は、従来より
シュクロ−スなどの糖分以外にアミノ酸、カリウム、ビ
タミン等と豊富な栄養源を含む所より、これをビ−トパ
ルプ、小麦麸などに添加して、飼料として使用されてい
るが、カリウムなどの灰分を多量に含むため、多量の摂
取は、下痢の原因になっているものであり、特に廃糖蜜
中に含まれている成分中のラフィノ−スが、実際に家畜
動物の整腸あるいは生産に寄与する目的で使用する際の
適切な使用量については明確ではない。

【０００４】さらに反すう動物である牛は、第１胃（ル
−メン）という発酵をを目的とした大消化器官を持って
いるため、このルーメンに非常に多くの微生物を棲息さ
せており、宿主である牛はこれら微生物が分解する非構
造性炭水化物であるデンプンなどを、又単胃動物にあっ
ても、消化されない構造性炭水化物であるセルロースや
ヘミセルロースなどから得られる低級脂肪酸をエネルギ
ー源として利用し、更にまた、微生物によって蛋白質、
尿素をアンモニアに分解してこれを微生物蛋白として消
化吸収して自らの維持生産を賄っているため、反すう動
物あるいは単胃動物が、この様な多くの微生物からの酵
素の影響を受けた場合のラフィノースの分解について
は、家畜動物にとって極めて重要な問題となる。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題を解決するために、甜菜糖製造工程より得られる廃糖
蜜をクロマト分離装置によりラフィノース画分を得た後
濃縮し、結晶機により結晶化させ、乾燥した結晶ラフィ
ノースを家畜動物に供与して、その成長、生産性、及び
整腸効果等に及ぼす影響について鋭意研究した所、ラフ
ィノースを供与することによって、家畜動物の消化器官
でのビフィズス菌の増殖が行なわれ、整腸効果をもたら
していることを確認した。又そのラフィノースの供与量
も供与飼料に対して一定範囲以上を越えると、整腸、生
産性の向上に対しての効果をもたらさないのみか、反っ
て悪影響を及ぼすものとなるものである。

【０００６】即ち、本発明者らは牛のル−メンでのラフ
ィノ−スの消長性について、供与飼料にラフィノースを
添加して摂取させて、摂取させた牛の第３胃に予めフィ
スチラを装着して、試験を行なった。その結果を表１に
示す。

【０００７】

【表１】 ------------------------------------------------------------------------ ルーメンでのラフィノースの消失率 ------------------------------------------------------------------------ 牛Ｎｏ 消失率（％） Ｌａｃｔｏｂａｃｉｌｕｓ ｒｕｍｉｎｉｓ の有無 ------------------------------------------------------------------------ １ ２１ ＋ ２ １９ ＋ ３ １０ − ４ ６ − ------------------------------------------------------------------------

【０００８】（註）１．第３胃にフィスチラを装着し、
イネ科乾燥飼料のみを給与しているホルスタイン種育成
牛に、０．５ｋｇのラフィノースを給与した後、４８時
間絶食させ、４８時間フィスチラからの流出物を全量採
取し、流出物中のラフィノース含量を高速液体クロマト
グラフィーによって定量し、供与量との差を以て消失率
とした。 ２．＋は存在が認められ、−は認められなかったことを
示す。

【０００９】上記表１に示すように、ルーメンでのラフ
ィノースの消失率は６−２１％となっており、消失の多
い個体には、Ｌａｃｔｏｂａｃｉｌｕｓ ｒｕｍｉｎｉ
ｓの存在が認められているが、給与した７９−９４％の
ラフィノースは、第３胃以降に移行しているものであ
り、大消化器官を有する反すう動物においても、充分小
腸以降に達することが確認できたものである。次いで、
このラフィノ−ス添加飼料による、乳牛の、乳量、乳脂
率の改善、軟便防止等の確認について、分娩後９０日を
経過し体重、産次、能力が揃っている乳牛６頭を３頭ず
つ二群に分け、一群には試験区として、乳牛用配合飼料
にラフィノ−スを２％添加した飼料を、１日１頭当りＦ
ＣＭ（４％脂肪補正乳）の３０％を給与し、コ−ンサイ
レ−ジを２０Ｋｇ、乾草を６Ｋｇ給与し、７０日間１週
間ごとに乳量、乳成分を測定した。他の一群は対照区と
してラフィノ−スを添加しない飼料を給与して対比し
た。その結果を表２に示す。

【００１０】

【表２】

【００１１】上記表２に示すように、ラフィノ−
ス添加により乳量、乳脂率、無脂固形分は明らかに対照
に比し向上が見られ、又軟便の程度も改善が見られてい
ることが確認されたものである。

【００１２】

【作用】甜菜糖製造の際に得られる廃糖蜜を、クロマト
分離することによって得られたラフィノ−スを所定量添
加した家畜用飼料とすることにより、嗜好性に全く問題
のない、給与した家畜動物に整腸作用をもたらし、幼家
畜動物においては増体を高め、更に乳牛においては乳
量、乳成分を高める飼料としているものである。次ぎに
実施例によって本発明を説明する。

【００１３】

【実施例】

実施例１ ８頭の繁殖雌豚から２１−２４日令で離乳した子豚（Ｌ
Ｗ×Ｈ）６４頭を同腹の雄、雌が同数となるように各群
８頭ずつに区分けした。これらに市販子豚用人工乳（前
期用Ａ、後期用Ｂ）にラフィノ−スを０．０１、０．０
５、０．１、０．５、１．０、２．０、２．５％ 配合
し、０−２０日間はＡ、２０−６０日はＢを給与して増
体重、便の状態について調査した。なお対照区としてラ
フィノ−スを配合しない前期用Ａ、後期用Ｂのみの無添
加区を設けた。その結果を表３に示す。

【００１４】

【表３】

【００１５】（註）軟便発生程度 １： 便が非常に硬い ２：便がやや硬い ３： 便の硬さは正常 ４：便が軟便 ５： 下痢便

【００１６】上記表３に示すように子豚の増体重におい
て、ラフィノ−ス添加飼料は、対照の無添加区に比し、
人工乳Ａでは７−１８％、人工乳Ｂでは２−１０％の体
重増を示しているものである。

【００１７】実施例２ 生後７−１０日令のホルスタイン種雄子牛４８頭を６区
に分け、ラフィノ−スを０．５、１．０、２．０、２．
５％配合した子牛用人工乳、及び対照としてラフィノ−
ス無添加の子牛用人工乳を作成した。試験開始時の給与
量は、１日１頭当り０．２５Ｋｇとし、５日ごとに０．
２５Ｋｇずつ増給し、イネ科乾草は自由摂取させた。ま
た、試験開始時より４５日間全乳を給与し、その後は水
を自由摂取させ、６０日間便の状態、飼料摂取量を観察
した。開始日より４５日までを前期、４５日から６０日
を後期とした。この結果を表４に示す。軟便発生程度は
表３に同じ。

【００１８】

【表４】 ------------------------------------------------------------------------ラフィノース 含有率(％) 無添加 0.5 1.0 2.0 2.5 ------------------------------------------------------------------------ 開始時体重(kg) 45.0 47.0 48.0 45.0 47.0 前期終了時体重(kg) 60.8 67.7 69.6 66.6 66.5 後期終了時体重(kg) 75.0 83.0 85.8 85.2 82.7 前期１日当り増体重(kg) 0.35 0.46 0.48 0.48 0.43 指数 100 131 137 137 122 通期１日当り増体重(kg) 0.50 0.60 0.63 0.67 0.60 指数 100 120 126 137 120 飼料摂取量(kg) 1.9 2.1 2.3 2.5 2.4 軟便発生程度(前期) 4 3 3 3 4 (後期) 3 3 3 3 4 ------------------------------------------------------------------------

【００１９】上記表４に示すように、子牛の増体におい
ても、ラフィノ−ス添加飼料区分は、対照の無添加区分
に比し、１日当り２０−３７％の体重増を示しているも
のである。

【００２０】実施例３ 分娩後９０日以上経過した３産以上の乳牛１６頭を４群
に分け、乳牛用配合飼料にラフィノ−スを１．０、２．
０、２．５％配合した飼料を、１日１頭当りＦＣＭ（４
％脂肪補正乳）の３０％を給与し、コ−ンサイレ−ジを
２０Ｋｇ、乾草を６Ｋｇ給与する１期２０日のラテン方
格法により泌乳試験を行なった。なお、対照区としてラ
フィノ−スを配合しない無添加区の泌乳試験も行なっ
た。その結果を示すと表５の通りである。また軟便発生
程度は表１と同じである。

【００２１】

【表５】 ----------------------------------------------------------ラフィノ -ス含有律(％) 無添加 1.0 2.0 2.5 ---------------------------------------------------------- 乳量(kg) 24.8 25.7 25.7 25.5 指数 100 103 103 102 乳脂率(％) 3.80 3.85 3.87 3.87 指数 100 101 102 102 無脂固形分(％) 8.60 8.65 8.65 8.67 指数 100 101 101 101 ＦＣＭ（KG） 24.1 25.1 25.2 25.0 指数 100 104 105 104 軟便発生程度 3 3 3 3 ----------------------------------------------------------

【００２２】上記表５に示すように、乳牛へのラフィ
ノ−ス添加飼料の給与は、対照の無添加飼料区に比し、
乳量、乳脂率、無脂固形分と全てにおいて、優れたもの
となっているものである。

【００２３】

【発明の効果】本発明のラフィノ−ス含有飼料は、各種
幼家畜動物においては、下痢、軟便を防止しして増体重
を高めると共に、乳牛においても軟便の防止のみなら
ず、ラフィノ−スの小腸以降への移行しての作用によ
り、乳量、乳脂率、無脂固形分を高める効果を奏してい
るものである。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ラフィノースを０．１−２．０重量％含
   有した家畜動物用飼料。
2. 【請求項２】 甜菜糖製造工程から得られる廃糖蜜また
   は糖液をイオンクロマト分離して得たラフィノースであ
   る請求項１の家畜動物用飼料。