JPH05330912A - レーザ用多結晶透明y2o3セラミックス - Google Patents
レーザ用多結晶透明y2o3セラミックスInfo
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- JPH05330912A JPH05330912A JP4138771A JP13877192A JPH05330912A JP H05330912 A JPH05330912 A JP H05330912A JP 4138771 A JP4138771 A JP 4138771A JP 13877192 A JP13877192 A JP 13877192A JP H05330912 A JPH05330912 A JP H05330912A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 従来のYAGに代表される固体レーザ用単結
晶ではなく、透明度の優れた多結晶Y2 O3 セラミック
スを本分野に応用することによって、単結晶の構造上の
欠点や製造された素材そのものの欠点を回避すると同時
に単結晶には不可能である技術を提供する。 【構成】 焼結体の気孔率が1%以下で平均粒子径が5
〜3000μmの範囲にあり、かつランタニド元素を一
種以上含有したレーザ用多結晶透明Y2 O3 セラミック
ス。
晶ではなく、透明度の優れた多結晶Y2 O3 セラミック
スを本分野に応用することによって、単結晶の構造上の
欠点や製造された素材そのものの欠点を回避すると同時
に単結晶には不可能である技術を提供する。 【構成】 焼結体の気孔率が1%以下で平均粒子径が5
〜3000μmの範囲にあり、かつランタニド元素を一
種以上含有したレーザ用多結晶透明Y2 O3 セラミック
ス。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザ発振素子として
好適に使用されるレーザ用多結晶透明Y2 O3 セラミッ
クスに関する。
好適に使用されるレーザ用多結晶透明Y2 O3 セラミッ
クスに関する。
【0002】
【従来の技術】YAG(イットリウ・アルミニウム・ガ
ーネット)に代表される固体レーザは、その市場の約9
5%を占める重要な材料である。本レーザの利用分野と
しては半導体の微細加工、鋼材やセラミックスの切断及
び熱処理、医療用レーザメス等多岐に応用され、近年で
はSHG(第二高調波)素子を用いて波長変換したグリ
ーンやブルーレーザを、光磁気記録材料の書込み操作に
利用することも行なわれている。
ーネット)に代表される固体レーザは、その市場の約9
5%を占める重要な材料である。本レーザの利用分野と
しては半導体の微細加工、鋼材やセラミックスの切断及
び熱処理、医療用レーザメス等多岐に応用され、近年で
はSHG(第二高調波)素子を用いて波長変換したグリ
ーンやブルーレーザを、光磁気記録材料の書込み操作に
利用することも行なわれている。
【0003】ところでYAGは発光に関与する元素とし
て、Ndやその他の発光元素を添加したものが、チョコ
ラルスキー法にて製造されているが、これらは全て単結
晶となっている。
て、Ndやその他の発光元素を添加したものが、チョコ
ラルスキー法にて製造されているが、これらは全て単結
晶となっている。
【0004】このような方法で単結晶YAGを製造する
場合、育成温度として約2000℃を必要とし、かつ育
成速度が0.2〜0.3mm/hrと極めて遅い。この
ことから1本の単結晶を製造するのに約1ケ月を要し、
且つ製造された単結晶YAGの発光元素が均一とはなり
難い。特にNd元素を添加するものに限っては単結晶を
育成する際、ホスト材料中の発光元素を均一に分散させ
ることが難しいばかりでなく、その濃度も1原子%程度
が限界となっている。このことからたとえ単結晶YAG
を製造したとしても、レーザ材料として使用できるのは
ごく一部である。また単結晶育成技術では極めて高価な
イリジウム坩堝が必要なため、製造される単結晶YAG
が高価であることは勿論、生産性の面でも十分満足すべ
きものではないのが現状である。
場合、育成温度として約2000℃を必要とし、かつ育
成速度が0.2〜0.3mm/hrと極めて遅い。この
ことから1本の単結晶を製造するのに約1ケ月を要し、
且つ製造された単結晶YAGの発光元素が均一とはなり
難い。特にNd元素を添加するものに限っては単結晶を
育成する際、ホスト材料中の発光元素を均一に分散させ
ることが難しいばかりでなく、その濃度も1原子%程度
が限界となっている。このことからたとえ単結晶YAG
を製造したとしても、レーザ材料として使用できるのは
ごく一部である。また単結晶育成技術では極めて高価な
イリジウム坩堝が必要なため、製造される単結晶YAG
が高価であることは勿論、生産性の面でも十分満足すべ
きものではないのが現状である。
【0005】一方、YAG等のガーネット構造を有する
単結晶以外の注目されるレーザ用単結晶としてY2 O3
も挙げられるが、この結晶は融点が2400℃と極めて
高温であることから、レーザ用単結晶育成技術として不
向きなベルヌイ法に依存しなければならない。このた
め、実用的な高品位の単結晶が製造できないばかりでな
く、その大きさには制限(相転移があるためにせいぜい
直径1cm程度)もあることから、前述したガーネット
構造を有する結晶が常用されている。
単結晶以外の注目されるレーザ用単結晶としてY2 O3
も挙げられるが、この結晶は融点が2400℃と極めて
高温であることから、レーザ用単結晶育成技術として不
向きなベルヌイ法に依存しなければならない。このた
め、実用的な高品位の単結晶が製造できないばかりでな
く、その大きさには制限(相転移があるためにせいぜい
直径1cm程度)もあることから、前述したガーネット
構造を有する結晶が常用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決すべき課
題は、従来のYAGに代表される固体レーザ用単結晶で
はなく、透明度の優れた多結晶Y2 O3 セラミックスを
本分野に応用することによって、単結晶の構造上の欠点
や製造された素材そのものの欠点を回避すると同時に単
結晶には不可能である技術を提供することにある。
題は、従来のYAGに代表される固体レーザ用単結晶で
はなく、透明度の優れた多結晶Y2 O3 セラミックスを
本分野に応用することによって、単結晶の構造上の欠点
や製造された素材そのものの欠点を回避すると同時に単
結晶には不可能である技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題は、焼結体の気
孔率が1%以下で平均粒子径が5〜3000μmの範囲
にあり、かつランタニド元素を一種以上を含有したレー
ザ用多結晶透明Y2 O3 セラミックスによって達成でき
る。
孔率が1%以下で平均粒子径が5〜3000μmの範囲
にあり、かつランタニド元素を一種以上を含有したレー
ザ用多結晶透明Y2 O3 セラミックスによって達成でき
る。
【0008】この焼結体は、固相法、すなわち、Y2 O
3 とその他の酸化物成分を各々混合する方法以外に、ア
ルコキシド法、共沈法、均一沈澱法等によって得られる
原料を用いて得ることもできる。
3 とその他の酸化物成分を各々混合する方法以外に、ア
ルコキシド法、共沈法、均一沈澱法等によって得られる
原料を用いて得ることもできる。
【0009】例えば固相法の場合、粒径1μm以下、純
度99.9重量%以上のY2 O3 粉末及び、発光元素と
なる同じく1μm以下のランタニド元素の酸化物(La
2 O3 ,CeO2 、Pr6 O11,Nd2 O3 ,Pm2 O
3 ,Sm2 O3 ,Eu2 O3,Gd2 O3 ,Tb
2 O3 ,Dy2 O3 ,Ho2 O3 ,Er2 O3 、Tm2
O3,Yb2 O3 ,Lu2 O3 )を適量加える。発光元
素の添加量方法は、その濃度によって適当な手段をとれ
ばよい。例えば、微量添加の場合は、アルコキシド法や
硝酸塩などの熱分解反応により生じる酸化物を添加する
ことが望ましい。これらの酸化物を目的の組成となるよ
うに秤量し、エチルアルコール等の有機溶媒を加えてポ
ットミル中で混合する。この粉末を乾燥後一軸プレスま
たはCIP(コールド・アイソスタティック・プレス)
等で成形して焼結する。焼結の方法は、真空焼結、雰囲
気焼結(水素や酸素等の雰囲気)、HP(ホットプレ
ス)やHIP(ホットアイソスタティックプレス)等の
従来法を使用することができるが、焼結体の粒子が組成
的、組織的に均一であり、その結果として焼結体の透明
度が優れているものが好ましい。真空焼結や雰囲気焼結
の場合は1700〜2270℃で、HP、HIPの場合
は1400〜2200℃の温度範囲で適切な時間焼結す
ることによって目的とする焼結体が得られる。
度99.9重量%以上のY2 O3 粉末及び、発光元素と
なる同じく1μm以下のランタニド元素の酸化物(La
2 O3 ,CeO2 、Pr6 O11,Nd2 O3 ,Pm2 O
3 ,Sm2 O3 ,Eu2 O3,Gd2 O3 ,Tb
2 O3 ,Dy2 O3 ,Ho2 O3 ,Er2 O3 、Tm2
O3,Yb2 O3 ,Lu2 O3 )を適量加える。発光元
素の添加量方法は、その濃度によって適当な手段をとれ
ばよい。例えば、微量添加の場合は、アルコキシド法や
硝酸塩などの熱分解反応により生じる酸化物を添加する
ことが望ましい。これらの酸化物を目的の組成となるよ
うに秤量し、エチルアルコール等の有機溶媒を加えてポ
ットミル中で混合する。この粉末を乾燥後一軸プレスま
たはCIP(コールド・アイソスタティック・プレス)
等で成形して焼結する。焼結の方法は、真空焼結、雰囲
気焼結(水素や酸素等の雰囲気)、HP(ホットプレ
ス)やHIP(ホットアイソスタティックプレス)等の
従来法を使用することができるが、焼結体の粒子が組成
的、組織的に均一であり、その結果として焼結体の透明
度が優れているものが好ましい。真空焼結や雰囲気焼結
の場合は1700〜2270℃で、HP、HIPの場合
は1400〜2200℃の温度範囲で適切な時間焼結す
ることによって目的とする焼結体が得られる。
【0010】
【作用】固体レーザとして用いるためには、焼結体の密
度が理論密度の99.0%以上(気孔率では1%以下)
でかつ多結晶体を構成する粒子の平均粒子径が5〜30
00μmの範囲であることが必要である。焼結体の密度
が理論密度の99.0%未満であれば、光の透過率が極
端に低下する。焼結体の相対密度に関しては、同じ化学
組成の単結晶と多結晶を学振法又はX線法により測定し
た両者の密度を比較することで求められる。それ以外の
方法としては焼結体内部に存在する気孔を顕微鏡やSE
M等で表面観察した画像を解析することによっても求め
られる。また焼結体の粒子径が3000μmを超える
と、発光元素を均一に固溶できなかったり、粒界部に発
光元素が偏析したりして光学的に透明なものとはなりに
くく、5μm未満であると実用に供するだけの透明度が
得られない。
度が理論密度の99.0%以上(気孔率では1%以下)
でかつ多結晶体を構成する粒子の平均粒子径が5〜30
00μmの範囲であることが必要である。焼結体の密度
が理論密度の99.0%未満であれば、光の透過率が極
端に低下する。焼結体の相対密度に関しては、同じ化学
組成の単結晶と多結晶を学振法又はX線法により測定し
た両者の密度を比較することで求められる。それ以外の
方法としては焼結体内部に存在する気孔を顕微鏡やSE
M等で表面観察した画像を解析することによっても求め
られる。また焼結体の粒子径が3000μmを超える
と、発光元素を均一に固溶できなかったり、粒界部に発
光元素が偏析したりして光学的に透明なものとはなりに
くく、5μm未満であると実用に供するだけの透明度が
得られない。
【0011】また、焼結体の透明度はレーザ発振させた
場合の発振効率と密接な関係があることから、できるだ
け高いことが望ましい。この値は光吸収係数で表現でき
る。すなわち、ランバート・ベールの法則、log(I
o /I)=αd 〔ここで、Io :入射光強度,I:透
過光強度(試料を透過した光の強度) ,α:光吸収係
数,d:試料厚さ〕におけるαの値が0.204c
m-1、好ましくは0.125cm-1以下に止める必要が
ある。この光吸収係数は、光がある一定厚さの試料を通
過したときに生じる光吸収損失である。例えば、厚さ1
0mmの試料に直線光を照射した場合、その内部損失は
30%以下でなければならない。この意味は、表面の加
工精度が同一の試料において、厚さ1mmと11mmの
試料の直線透過率の差異が30%以内ということであ
る。これ以上母材内部での吸収損失が大きいことは、光
の増幅分より吸収損失が大きくなるためレーザ発振しな
いばかりでなく、場合によっては母材の破壊にまで至
る。母材の吸収損失については発光元素の吸収がない可
視波長領域(または測定波長に対する透過率のバックグ
ラウンドレベル)で、試料の厚さに対して透過率をプロ
ットしたときの傾きによって求められる。レーザ発振効
率は母材の透明度に依存する傾向との予測はできるが、
より好ましくはその値が20%以下(α値で表現すれば
α=0.125cm-1以下)のロスに止めることが肝要
である。また、透過率の絶対値についても(試料の面粗
さが0.1μm以下のものに限って)厚さ1mmの試料
が400〜900nmの波長範囲で、発光元素等の吸収
を除く部分の直線透過率が75%以上であることも必要
である。
場合の発振効率と密接な関係があることから、できるだ
け高いことが望ましい。この値は光吸収係数で表現でき
る。すなわち、ランバート・ベールの法則、log(I
o /I)=αd 〔ここで、Io :入射光強度,I:透
過光強度(試料を透過した光の強度) ,α:光吸収係
数,d:試料厚さ〕におけるαの値が0.204c
m-1、好ましくは0.125cm-1以下に止める必要が
ある。この光吸収係数は、光がある一定厚さの試料を通
過したときに生じる光吸収損失である。例えば、厚さ1
0mmの試料に直線光を照射した場合、その内部損失は
30%以下でなければならない。この意味は、表面の加
工精度が同一の試料において、厚さ1mmと11mmの
試料の直線透過率の差異が30%以内ということであ
る。これ以上母材内部での吸収損失が大きいことは、光
の増幅分より吸収損失が大きくなるためレーザ発振しな
いばかりでなく、場合によっては母材の破壊にまで至
る。母材の吸収損失については発光元素の吸収がない可
視波長領域(または測定波長に対する透過率のバックグ
ラウンドレベル)で、試料の厚さに対して透過率をプロ
ットしたときの傾きによって求められる。レーザ発振効
率は母材の透明度に依存する傾向との予測はできるが、
より好ましくはその値が20%以下(α値で表現すれば
α=0.125cm-1以下)のロスに止めることが肝要
である。また、透過率の絶対値についても(試料の面粗
さが0.1μm以下のものに限って)厚さ1mmの試料
が400〜900nmの波長範囲で、発光元素等の吸収
を除く部分の直線透過率が75%以上であることも必要
である。
【0012】また、発光元素の均一性は焼結体で固体レ
ーザ材料を作製する際の最も大きな利点であり、特に大
型形状の大出力レーザを目的とした場合に重要な技術と
なる。その均一度については、焼結体を構成する各々の
粒子の80%以上が、濃度差が±15%の範囲(例えば
2原子%の発光元素を含むものは2±0.3%の範囲)
にあることが必要である。その濃度分布については、焼
結体の粒子の50個程度、少なくとも20個程度の粒子
をランダムに分析することによって判定する。焼結体中
の発光元素の濃度分布はEDX(エネルギー分散型X線
分光器)やIMA(イオンマイクロアナライザー)など
の微小領域を計測する機器分析装置によって容易に測定
できる。
ーザ材料を作製する際の最も大きな利点であり、特に大
型形状の大出力レーザを目的とした場合に重要な技術と
なる。その均一度については、焼結体を構成する各々の
粒子の80%以上が、濃度差が±15%の範囲(例えば
2原子%の発光元素を含むものは2±0.3%の範囲)
にあることが必要である。その濃度分布については、焼
結体の粒子の50個程度、少なくとも20個程度の粒子
をランダムに分析することによって判定する。焼結体中
の発光元素の濃度分布はEDX(エネルギー分散型X線
分光器)やIMA(イオンマイクロアナライザー)など
の微小領域を計測する機器分析装置によって容易に測定
できる。
【0013】レーザは元来フラッシュランプまたはLD
(レーザダイオード)で材料内部に存在する発光元素を
励起させ、これを連続して増幅することから強力なレー
ザ光が発振できる。ここで、多結晶セラミックスのよう
な粒界がある材料を励起させ、レーザ発振する場合、粒
子内部で増幅されたレーザ光が粒界部で損失(異相や結
晶欠陥等に起因する減衰)するため、多結晶体でレーザ
発振することは不可能と考えるのが一般的である。また
仮にレーザ発振したとしても、粒界部の光損失が大きい
はずであり、単結晶材料に比べ特性劣化が著しいと予測
されることから固体レーザ材料はすべて単結晶であるべ
きと考えられており、現状もその通りとなっている。多
結晶体は溶融しないため、粒子内部の結晶欠陥(格子欠
陥)のレベルは元来単結晶より低くなるはずであるが、
焼結過程で完璧に近い物質移動が起きにくいため粒子内
部に組織的または結晶構造的欠陥を残すこととなる。し
かしこのような不都合を回避すれば、多結晶セラミック
スの粒子内部の光学的特性は単結晶を上回り、レーザの
増幅能力は高くなる。従って焼結性の極めて良好なY2
O3 粉末を使用することが本セラミックスを製作する上
でのキーテクノロジーとなる。また、粒界部での光損失
については否定できないが、粒界部の損失を極力低減さ
せることによって実用に十分耐えうるものとなる。ま
た、レーザ材料としての特性はこの透過率だけが全てで
なく、発光元素の均一性、ホスト材料中の発光元素濃
度、材料の歪みなど様々な因子があり、透明度を除くそ
の他の要因については多結晶体の方が単結晶体よりも優
れている可能性が高いことから、特性全体から考えれば
同等または単結晶を凌駕するものが存在する。例えば材
料の歪みに関して、ベルヌイ法で作成された単結晶では
結晶育成時及び育成された結晶が冷却される場合に、2
280℃付近に存在する相転移(立方晶と六方晶)の影
響で偏光板を通して観察したときにかなりの残留歪み
や、場合によっては微小クラックが確認できるが、多結
晶体ではこのようなものは殆ど検出できないなどの優れ
た特徴を有する。
(レーザダイオード)で材料内部に存在する発光元素を
励起させ、これを連続して増幅することから強力なレー
ザ光が発振できる。ここで、多結晶セラミックスのよう
な粒界がある材料を励起させ、レーザ発振する場合、粒
子内部で増幅されたレーザ光が粒界部で損失(異相や結
晶欠陥等に起因する減衰)するため、多結晶体でレーザ
発振することは不可能と考えるのが一般的である。また
仮にレーザ発振したとしても、粒界部の光損失が大きい
はずであり、単結晶材料に比べ特性劣化が著しいと予測
されることから固体レーザ材料はすべて単結晶であるべ
きと考えられており、現状もその通りとなっている。多
結晶体は溶融しないため、粒子内部の結晶欠陥(格子欠
陥)のレベルは元来単結晶より低くなるはずであるが、
焼結過程で完璧に近い物質移動が起きにくいため粒子内
部に組織的または結晶構造的欠陥を残すこととなる。し
かしこのような不都合を回避すれば、多結晶セラミック
スの粒子内部の光学的特性は単結晶を上回り、レーザの
増幅能力は高くなる。従って焼結性の極めて良好なY2
O3 粉末を使用することが本セラミックスを製作する上
でのキーテクノロジーとなる。また、粒界部での光損失
については否定できないが、粒界部の損失を極力低減さ
せることによって実用に十分耐えうるものとなる。ま
た、レーザ材料としての特性はこの透過率だけが全てで
なく、発光元素の均一性、ホスト材料中の発光元素濃
度、材料の歪みなど様々な因子があり、透明度を除くそ
の他の要因については多結晶体の方が単結晶体よりも優
れている可能性が高いことから、特性全体から考えれば
同等または単結晶を凌駕するものが存在する。例えば材
料の歪みに関して、ベルヌイ法で作成された単結晶では
結晶育成時及び育成された結晶が冷却される場合に、2
280℃付近に存在する相転移(立方晶と六方晶)の影
響で偏光板を通して観察したときにかなりの残留歪み
や、場合によっては微小クラックが確認できるが、多結
晶体ではこのようなものは殆ど検出できないなどの優れ
た特徴を有する。
【0014】また、Ndを含有した単結晶Y2 O3 は、
Ndの濃度分布もレーザ用結晶としては充分に均一とは
言えず、またその濃度にも限度がある。焼結による多結
晶Y2 O3 セラミックスの場合であればNd濃度は任意
に選択でき、しかもその分布も極めて均一なものとな
る。このことから、小型・ハイパワー等の特徴を有する
新型固体レーザへの応用、また大型形状作製可能の利点
を生かせば大出力レーザへの応用も可能と考えられる。
Ndの濃度分布もレーザ用結晶としては充分に均一とは
言えず、またその濃度にも限度がある。焼結による多結
晶Y2 O3 セラミックスの場合であればNd濃度は任意
に選択でき、しかもその分布も極めて均一なものとな
る。このことから、小型・ハイパワー等の特徴を有する
新型固体レーザへの応用、また大型形状作製可能の利点
を生かせば大出力レーザへの応用も可能と考えられる。
【0015】
【実施例】表1にY2 O3 セラミックスをホストとし
て、これに種々の発光元素を添加したものをLDやキセ
ノンフラッシュランプで励起したときの発振特性を示し
た。実施例として、純度99.9重量%で粒径0.5μ
m以下のY2 O3 粉末と、同じく純度99.9重量%で
粒径0.5μm以下のランタニド元素の酸化物を合量1
50g秤量し、ポットミル中へそれぞれの粉末とエチル
アルコール300cc、さらに鋼球芯入りプラスチック
ボールを入れ24時間混合した。混合した粉末を500
mmHgの減圧下で乾燥し、乾燥した粉末を乳鉢で軽く
再混合した。
て、これに種々の発光元素を添加したものをLDやキセ
ノンフラッシュランプで励起したときの発振特性を示し
た。実施例として、純度99.9重量%で粒径0.5μ
m以下のY2 O3 粉末と、同じく純度99.9重量%で
粒径0.5μm以下のランタニド元素の酸化物を合量1
50g秤量し、ポットミル中へそれぞれの粉末とエチル
アルコール300cc、さらに鋼球芯入りプラスチック
ボールを入れ24時間混合した。混合した粉末を500
mmHgの減圧下で乾燥し、乾燥した粉末を乳鉢で軽く
再混合した。
【0016】この粉末を直径50mm、高さ15mmの
タブレットに仮成形後、1000kg/cm2 の圧力で
ラバープレスした。
タブレットに仮成形後、1000kg/cm2 の圧力で
ラバープレスした。
【0017】この成形体を電気炉に入れ、100°C/
hrで昇温し、所定温度で焼成後、100°C/hrで
冷却した。得られた焼結体から直径6mm、厚さ10m
mの試料を作成し、両面の面粗さを5nm、平坦度を1
/8λに仕上げた。
hrで昇温し、所定温度で焼成後、100°C/hrで
冷却した。得られた焼結体から直径6mm、厚さ10m
mの試料を作成し、両面の面粗さを5nm、平坦度を1
/8λに仕上げた。
【0018】表1は、発光元素の添加量、及び焼結時間
やその温度を変えることによって、焼結体の平均粒径を
変化させたものである。
やその温度を変えることによって、焼結体の平均粒径を
変化させたものである。
【0019】
【表1】 表2は比較例を示し、発光元素として、ベルヌイ法で育
成した、1原子%のNdを含んだY2 O3 単結晶、及び
特許請求の範囲外の多結晶Y2 O3 の発振特性を示す。
成した、1原子%のNdを含んだY2 O3 単結晶、及び
特許請求の範囲外の多結晶Y2 O3 の発振特性を示す。
【0020】
【表2】 表1の実施例1〜6の試験結果より、Ndのみを発光元
素として添加した場合、その濃度上昇に伴ってレーザ出
力が高くなっていることが判る。実施例4の1原子%N
d添加の多結晶Y2 O3 の発振効率は23.5%で、比
較例1として示す同じNd濃度の単結晶Y2 O3 の出力
106mW、発振効率が15.1%に比べレーザ出力が
高くなっているのが判る。実施例5,6の高濃度Ndタ
イプのものは、濃度消光によってNd濃度に比例して出
力が増加していないものの、比較例1の2〜3倍の高出
力のレーザとなっている。また実施例7〜10は、Nd
以外またNdと他のランタニド元素を添加した例を示し
ているが、いずれもかなり高いレベルのレーザ発振をし
ているのが判る。ここに示した実施例においては相対密
度が、特許請求の範囲にあるものばかりである。また粒
径の影響については実施例1〜3に示しているが、いず
れの場合も強くレーザ発振しており、この中では平均粒
子径350μmの実施例が最も発振効率がよい。
素として添加した場合、その濃度上昇に伴ってレーザ出
力が高くなっていることが判る。実施例4の1原子%N
d添加の多結晶Y2 O3 の発振効率は23.5%で、比
較例1として示す同じNd濃度の単結晶Y2 O3 の出力
106mW、発振効率が15.1%に比べレーザ出力が
高くなっているのが判る。実施例5,6の高濃度Ndタ
イプのものは、濃度消光によってNd濃度に比例して出
力が増加していないものの、比較例1の2〜3倍の高出
力のレーザとなっている。また実施例7〜10は、Nd
以外またNdと他のランタニド元素を添加した例を示し
ているが、いずれもかなり高いレベルのレーザ発振をし
ているのが判る。ここに示した実施例においては相対密
度が、特許請求の範囲にあるものばかりである。また粒
径の影響については実施例1〜3に示しているが、いず
れの場合も強くレーザ発振しており、この中では平均粒
子径350μmの実施例が最も発振効率がよい。
【0021】表2に示す比較例2,3は、焼結体の粒度
が特許請求の範囲外のもの、比較例4は密度が特許請求
の範囲外のもので、いずれもレーザ発振しないかまたは
発振してもその効率が極端に低下した。
が特許請求の範囲外のもの、比較例4は密度が特許請求
の範囲外のもので、いずれもレーザ発振しないかまたは
発振してもその効率が極端に低下した。
【0022】
【発明の効果】本発明により多結晶透明Y2 O3 セラミ
ックスを用いてレーザの発振が可能となった。材料特性
上発光元素(特にNd)の高濃度化ができる発光元
素が均一となる材料の大型化が図れるなどの特徴を有
するものとなる。また、Ndを含んだYAG単結晶はレ
ーザの蛍光スペクトル幅が狭いことによる低いエネルギ
ー蓄積能(高い利得)が特徴であり、またNdを添加し
たガラスレーザはスペクトル幅が広いことによる低い利
得が特徴となっている。現在実用化されているこれらの
材料では、高いスペクトルピークと高い平均出力の両者
を満足できていない。本発明のY2 O3 セラミックスは
両者の中間的特性があり、この特徴を活かせば新規な応
用が始まる可能性が高い。従って、工業的には通常の固
体レーザとしての用途に適する以外に、レーザの小型化
や高出力化が可能となることから、最近話題となってい
るマイクロチップレーザとしての用途の拡大、更には大
型・均一化、更には高出力化が図れるメリットを利用し
て、レーザ加工やレーザ核融合などに応用が期待され
る。
ックスを用いてレーザの発振が可能となった。材料特性
上発光元素(特にNd)の高濃度化ができる発光元
素が均一となる材料の大型化が図れるなどの特徴を有
するものとなる。また、Ndを含んだYAG単結晶はレ
ーザの蛍光スペクトル幅が狭いことによる低いエネルギ
ー蓄積能(高い利得)が特徴であり、またNdを添加し
たガラスレーザはスペクトル幅が広いことによる低い利
得が特徴となっている。現在実用化されているこれらの
材料では、高いスペクトルピークと高い平均出力の両者
を満足できていない。本発明のY2 O3 セラミックスは
両者の中間的特性があり、この特徴を活かせば新規な応
用が始まる可能性が高い。従って、工業的には通常の固
体レーザとしての用途に適する以外に、レーザの小型化
や高出力化が可能となることから、最近話題となってい
るマイクロチップレーザとしての用途の拡大、更には大
型・均一化、更には高出力化が図れるメリットを利用し
て、レーザ加工やレーザ核融合などに応用が期待され
る。
【0023】また、経済性を考慮しても、従来の単結晶
育成技術で不可欠である高価な単結晶育成装置が不要と
なる。その他、焼結法では素材の焼結に必要な温度はそ
の融点より低く、また焼結時間も数〜数十時間程度であ
るので合成に消費される電力量も格段に少ない。更には
一台の焼結炉でたくさんの焼結体が作製できることやニ
アネットシェイプ技術で素材を使用する形状に近いまま
効率良く作製できるので、コスト、量産、経済性(希土
類資源の有効利用や電力費削減)等の利点がある。
育成技術で不可欠である高価な単結晶育成装置が不要と
なる。その他、焼結法では素材の焼結に必要な温度はそ
の融点より低く、また焼結時間も数〜数十時間程度であ
るので合成に消費される電力量も格段に少ない。更には
一台の焼結炉でたくさんの焼結体が作製できることやニ
アネットシェイプ技術で素材を使用する形状に近いまま
効率良く作製できるので、コスト、量産、経済性(希土
類資源の有効利用や電力費削減)等の利点がある。
Claims (1)
- 【請求項1】 焼結体の気孔率が1%以下で平均粒子径
が5〜3000μmの範囲にあり、かつランタニド元素
を一種以上含有したレーザ用多結晶透明Y2O3 セラミ
ックス。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4138771A JPH05330912A (ja) | 1992-05-29 | 1992-05-29 | レーザ用多結晶透明y2o3セラミックス |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4138771A JPH05330912A (ja) | 1992-05-29 | 1992-05-29 | レーザ用多結晶透明y2o3セラミックス |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05330912A true JPH05330912A (ja) | 1993-12-14 |
Family
ID=15229818
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4138771A Pending JPH05330912A (ja) | 1992-05-29 | 1992-05-29 | レーザ用多結晶透明y2o3セラミックス |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH05330912A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002220287A (ja) * | 2001-01-19 | 2002-08-09 | Shinetsu Quartz Prod Co Ltd | 透光性セラミックス及びその製造方法 |
JP2002220278A (ja) * | 2001-01-19 | 2002-08-09 | Shinetsu Quartz Prod Co Ltd | 透光性セラミックス及びその製造方法 |
US7691765B2 (en) | 2005-03-31 | 2010-04-06 | Fujifilm Corporation | Translucent material and manufacturing method of the same |
EP2716616A1 (en) | 2012-10-03 | 2014-04-09 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Method of Manufacturing Transparent Sesquioxide Sintered Body, and Transparent Sesquioxide Sintered Body Manufactured by the Method |
-
1992
- 1992-05-29 JP JP4138771A patent/JPH05330912A/ja active Pending
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2002220287A (ja) * | 2001-01-19 | 2002-08-09 | Shinetsu Quartz Prod Co Ltd | 透光性セラミックス及びその製造方法 |
JP2002220278A (ja) * | 2001-01-19 | 2002-08-09 | Shinetsu Quartz Prod Co Ltd | 透光性セラミックス及びその製造方法 |
JP4587350B2 (ja) * | 2001-01-19 | 2010-11-24 | 信越石英株式会社 | 透光性セラミックス体の製造方法 |
US7691765B2 (en) | 2005-03-31 | 2010-04-06 | Fujifilm Corporation | Translucent material and manufacturing method of the same |
EP2716616A1 (en) | 2012-10-03 | 2014-04-09 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Method of Manufacturing Transparent Sesquioxide Sintered Body, and Transparent Sesquioxide Sintered Body Manufactured by the Method |
KR20140043874A (ko) | 2012-10-03 | 2014-04-11 | 신에쓰 가가꾸 고교 가부시끼가이샤 | 투명한 세스퀴옥시드 소결체의 제조 방법, 및 이 방법에 의해서 제조된 투명한 세스퀴옥시드 소결체 |
US9090513B2 (en) | 2012-10-03 | 2015-07-28 | Shin-Etsu Chemical Co., Ltd. | Method of manufacturing transparent sesquioxide sintered body, and transparent sesquioxide sintered body manufactured by the method |
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