JPH0531356A - 化学吸着膜の製造方法 - Google Patents

化学吸着膜の製造方法

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JPH0531356A
JPH0531356A JP31220691A JP31220691A JPH0531356A JP H0531356 A JPH0531356 A JP H0531356A JP 31220691 A JP31220691 A JP 31220691A JP 31220691 A JP31220691 A JP 31220691A JP H0531356 A JPH0531356 A JP H0531356A
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小川  一文
Sanemori Soga
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 表面に活性水素基を有する基材に化学吸着剤
を反応させるに際し、化学吸着剤を溶解した溶液に超音
波を付与し、これに基材を浸漬することにより、ピンホ
ールがなく高密度の化学吸着膜を短時間で製造する。 【構成】 超音波を加えた状態で、一端にクロロシリル
基を有する化学吸着剤1を基材4の表面に吸着させ、単
分子膜5を形成する。超音波処理は、発振周波数領域2
5kHz〜50kHzの範囲が好ましい。また、単分子
膜形成後、基材を洗浄溶液に浸漬し超音波を加えて洗浄
することにより、効率的に基材上に残った未反応の化学
吸着剤分子を洗浄除去する。このような超音波処理は、
単分子吸着膜の製造にもポリマー吸着膜の製造にも適用
できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は化学吸着膜の製造方法に
関するもので、さらに詳しくは、ガラス、金属、セラミ
ックス、プラスチック、半導体等の分野において、表面
に化学吸着単分子膜またはポリマー膜を効率よく合理的
に形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ガラス、金属、セラミックス、プラスチ
ック、半導体等の分野においては、その基材表面にコー
ティング膜を設けることにより、撥水性、撥油性、防曇
性、防汚性、耐久性等の各種の性質を付与することが行
われている。あるいは前記各種の性質を付与することに
より、製品の付加価値を一段と優れたものとすることが
できる。
【0003】従来、基材表面にコーティング膜を設ける
方法としては、塗液に基材を浸漬する方法、スプレーす
る方法、刷けぬりする方法、スピンコートする方法、あ
るいは平版、凸版、スクリーン印刷などの印刷技術を用
いた方法などが良く知られている。しかしながらこれら
の従来技術にあっては、塗液を基材の表面に物理的に載
せるだけであり、基材表面とコーティング膜の接着強度
はそれ程高いものではなかった。また従来のコーティン
グ膜は、ある程度の膜厚が必要であり、ナノメーター
(nm)レベルの厚さのコーティング膜を均一にかつピ
ンホールなく得ることは困難であった。
【0004】本発明者らはすでに化学吸着法を用いて、
化学吸着膜を形成させる発明を提案している。この化学
吸着膜は、親水性基と反応する官能基を末端に有する分
子(以下化学吸着剤と称す)を含む有機溶媒中に親水性
基を表面に有する基材を浸漬し、一定温度で静置したま
まの状態、または撹拌状態で吸着反応を行わせる方法に
より製造するものである。これは、基材表面の親水性基
と化学吸着剤との反応が非常に速やかに起こり、静置ま
たは撹拌状態でも充分早く単分子膜が形成されると考え
ていたためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記し
た本発明者らがすでに提案した化学吸着膜の製造方法で
は、化学吸着剤と基材表面の親水性基との反応性が低い
場合や、化学吸着剤中に嵩の高い官能基や側鎖等が存在
する場合には、反応性もしくは立体障害の影響で化学吸
着剤が基材上に密になり難く、高密度な化学吸着膜を作
成するためには長時間を要し、また、化学吸着剤の基材
表面に存在する親水性基に対する飽和吸着量も減少し、
高密度に化学吸着した膜を作成できないという課題があ
った。
【0006】また、たとえ化学吸着剤と基材表面に含ま
れる親水性基との反応性が高い場合においても、吸着過
程後期には、基材上の例えば水酸基等の親水性基所謂吸
着サイトの減少と、優先的に化学吸着した分子が障壁と
なり未反応の親水性基と化学吸着剤との会合の妨害によ
り、吸着速度が著しく低下するという課題もあった。
【0007】本発明は、前記した本発明者らがすでに提
案している化学吸着膜の製造方法を改善し、より短時間
でより高密度に吸着した化学吸着膜を製造する方法を提
供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の化学吸着膜の製造方法は、表面に活性水素
基を有するか、または活性水素基を付与した基材表面に
化学吸着単分子膜を形成する方法において、少なくとも
下記[A]〜[C]の工程からなることを特徴とする。 [A] まず前記基材表面の活性水素基と反応する官能
基を末端に有する化学吸着剤を、非水系有機溶媒に溶解
して吸着液とする工程。 [B] 次いで、前記吸着液に超音波を加えた状態で前
記基材を前記吸着液に浸漬し、前記基材表面に前記化学
吸着剤分子を吸着させる工程。 [C] その後、非水系有機溶媒で基材表面の未反応化
学吸着剤を洗浄・除去する工程。
【0009】前記本発明の構成においては、未反応化学
吸着剤の洗浄・除去工程(C工程)において、有機溶媒
に超音波を付与することが好ましい。また前記本発明の
構成においては、超音波処理が、発振周波数領域25k
Hz〜50kHzの範囲であることがとくに好ましい。
【0010】また前記本発明の構成においては、化学吸
着剤の分子末端が、ハロゲン化シリル基(−SiX)、
ハロゲン化チタニル基(−TiX)、ハロゲン化スタン
ニル(stannyl) 基(−SnX)、低級アルコキシシリル
基(−SiOR)、低級アルコキシチタニル基(−Ti
OR)、低級アルコキシスタンニル(stannyl) 基(−S
nOR)から選ばれる少なくとも一つの基(ただしXは
Cl、Br、F、Iから選ばれる少なくとも一つの元素
を示し、RはC1 〜C6 の低級アルキル基(とくに好ま
しくはメチル基、エチル基)を示す。)であることが好
ましい。
【0011】また前記本発明の構成においては、化学吸
着剤が、一方の分子末端がクロロシリル基(−SiC
l)であり、他のいずれかの部分にフッ素基を有してい
る構造の化合物であることが好ましい。
【0012】また前記本発明の構成においては、非水系
有機溶媒中の化学吸着剤の濃度が、10-4mol/l 〜10
-1mol/l の範囲であることが好ましい。また前記本発明
の構成においては、基材がガラス、金属、セラミック
ス、プラスチック、半導体から選ばれることが好まし
い。
【0013】また前記本発明の構成においては、基材表
面に、前処理として予め複数のクロロシリル基(−Si
Cl)を有する化合物を接触させ、次いで未反応物を洗
浄・除去した後、加水分解し、その後単分子膜を形成す
ることが好ましい。
【0014】さらに前記本発明の構成においては、基材
として、表面を酸化処理したプラスチックを用いること
が好ましい。次に本発明の第2番目の製造方法は、表面
に活性水素基を有するか、または活性水素基を付与した
基材表面に化学吸着ポリマー膜を形成する方法におい
て、少なくとも下記[a]〜[d]の工程からなること
を特徴とする。 [a] まず前記基材表面の活性水素基と反応する官能
基を末端に有する化学吸着剤を、非水系有機溶媒に溶解
して吸着液とする工程。 [b] 次いで、前記吸着液に超音波を加えた状態で前
記基材を前記吸着液に浸漬し、前記基材表面に前記化学
吸着剤分子を吸着させる工程。 [c] その後、前記化学吸着剤分子を水分と反応させ
て基材表面にシラノール基を含む化学吸着前駆体膜を形
成する工程。 [d] 前記化学吸着前駆体膜を乾燥する工程。
【0015】
【作用】本発明方法によれば、基材表面に対してより効
率的に高密度に化学吸着膜を形成することができる。そ
の理由は、B工程において超音波を用い、基材表面の水
酸基、イミノ基、アミノ基などの活性水素基に化学吸着
剤が反応する確率を高めるとともに、既に優先的に吸着
した単分子に振動を与えることで未吸着状態で残存する
基材上の活性水素基に対しても化学吸着分子の反応確率
を高めることができる。次に、C工程の非水系有機溶媒
で基材表面の未反応化学吸着剤を洗浄・除去することに
より、均一な厚さでピンホールフリーの単分子膜を短時
間で形成することができる。
【0016】また、C工程においても有機溶媒に超音波
を付与するという本発明の好ましい構成によれば、未反
応化学吸着剤を効率的に洗浄・除去することができる。
また、超音波処理が、発振周波数領域1kHz〜100
0kHz、好ましくは25kHz〜50kHzの範囲で
あると、B工程において化学吸着剤を効率的に基材表面
に接触させ反応させることができ、またC工程において
未反応化学吸着剤を効率的に洗浄・除去することができ
る。
【0017】また本発明においては、化学吸着剤の分子
末端が、ハロゲン化シリル基(−SiX)、ハロゲン化
チタニル基(−TiX)、ハロゲン化スタンニル(stann
yl)基(−SnX)、低級アルコキシシリル基(−Si
OR)、低級アルコキシチタニル基(−TiOR)、低
級アルコキシスタンニル(stannyl) 基(−SnOR)か
ら選ばれる少なくとも一つの基(ただしXはCl、B
r、F、Iから選ばれる少なくとも一つの元素を示し、
RはC1 〜C6 の炭化水素基を示す。)である化学吸着
剤を好ましく使用することができる。とくに化学吸着剤
は、一方の分子末端がクロロシリル基(−SiCl)で
あり、他のいずれかの部分にフッ素基を有している構造
の化合物であることが、撥水性、撥油性、防曇性、防汚
性、耐久性等の各種の性質を付与するうえにおいて好ま
しい。さらに、化学吸着分子に例えば共役不飽和結合性
基を付与し化学吸着分子間を重合し共役不飽和結合を形
成すると導電性等の様々な機能を付与した単分子膜を形
成させることができる。
【0018】また本発明においては、非水系有機溶媒中
の化学吸着剤の濃度が、10-4mol/l 〜10-1mol/l の
範囲であると、効率的に単分子膜を形成できることから
好ましい。
【0019】また本発明においては、基材はいかなるも
のであっても良いが、ガラス、金属、セラミックス、プ
ラスチック、半導体から選ばれることがとくに好まし
い。同様に本発明においては、基材として、表面を酸化
処理したプラスチックを用いることが好ましい。
【0020】次に本発明の第2番目の製造方法によれ
ば、化学吸着剤分子を水分と反応させて基材表面にシラ
ノール基を含む化学吸着前駆体膜を形成し、次いで化学
吸着前駆体膜を乾燥することにより、化学吸着ポリマー
膜を効率的に製造することができる。
【0021】
【実施例】本発明の化学吸着膜の製造原理は、基材表面
の例えば水酸基(−OH)、イミノ基等(−NH)の活
性水素基と、吸着分子の一端にある例えばクロルシラン
基等の官能基との反応を用いて、吸着膜を形成すること
にある。したがって、単分子膜の形成速度、及び、膜分
子の飽和吸着量は、吸着物質の濃度、吸着温度、基材表
面と吸着分子との反応速度、吸着分子の形状、基材表面
の水酸基数、基材の表面状態などの影響を大きく受け
る。
【0022】本発明の化学吸着膜は、活性水素基と反応
する官能基を有する分子を用いるため、少なくとも吸着
膜形成工程の雰囲気は、湿度が低い方が好ましく、実質
的な絶乾状態が望ましい。
【0023】本発明の超音波は、少なくともキャビテー
ションを起こし得る周波数以上であればよく、例えば超
音波洗浄器として通常市販されている周波数域25kH
z〜50kHzでも適応でき、特に工夫を要しない。ま
た、本発明は基材を浸漬した化学吸着剤分子を含む溶液
に超音波を加えればよく、超音波発生源の形態には特に
限定を要しない。
【0024】本発明に使用できる基材としては、表面に
例えば−OH基,−COOH基,−NH基,−NH2
等の活性水素基を含む基材であれば何れでもよい。例え
ば石英ガラス、フッ化物ガラス、金属ガラス等の各種ガ
ラス、アルミニウム、鉄、ステンレス、チタン等の金属
材料、シリコン、ゲルマニウム等の半導体材料、もしく
はポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン、アク
リル等のプラスチック材料が挙げられる。但し表面の親
水性基が少ない基材、たとえばプラスチックの場合は、
例えばオゾン酸化もしくは電子線照射等の通常の手段の
化学処理によって、親水性基を増やして用いると、本発
明により適した基材とすることができる。もっともポリ
アミド樹脂やポリウレタン樹脂は、表面にイミノ基(−
NH)を有しているので、とくに前処理を必要としな
い。
【0025】ガラス、金属、セラミックス、プラスチッ
クなどの基材表面に有効な別の前処理手段としては、た
とえばシリカ(SiO2 )を蒸着したり、ジクロロシラ
ン、トリクロロシラン、テトラクロロシランなどのポリ
ハロゲン化シランなどを塗布し、非水系溶媒で洗浄する
かまたはせずして水分と反応させ、基材表面にシラノー
ル基(−SiOH)を多量に形成させておく手段があ
る。このようにすると、化学吸着剤を高密度に反応させ
ることができる。
【0026】本発明に使用できる有機溶剤は、化学吸着
剤が水系分子と反応するため非水系有機溶剤でしかも基
材を侵さず、かつ吸着分子を充分溶解させることができ
る溶剤であれば何れでもよく、例えば、長鎖アルキル系
溶剤、芳香族系溶剤、脂環族炭化水素系溶剤、含ハロゲ
ン溶剤等がある。
【0027】本発明の吸着溶液の濃度は、基材表面に存
在する親水性基の密度もしくは基材の表面積等によって
異なり一概には言えないが、濃度が低いと吸着速度が小
さくなり、実験室レベルでは適応できるが工業的観点で
は実用性に欠ける。また、あまり濃度を高くしても、基
材の表面にある親水性基に優先的に化学吸着する分子数
及び吸着速度は変化せず、さらに吸着過程後期の基材表
面に残存した未吸着の親水性基に吸着していく分子も、
既に優先的に吸着した単分子膜をいわばかいくぐって吸
着してゆき、このかいくぐることが律速となるため高密
度な吸着状態にまで達する時間にも影響が少ない。した
がって吸着液の濃度は、大体10-4mol/l 程度以上あれ
ば充分であり、好ましくは10-3mol/l 以上が適当であ
る。上限は10-1mol/l 程度が好ましい。
【0028】本発明の化学吸着単分子膜を一層だけ形成
するには、単分子吸着工程後水分に接触させずに、単分
子膜上に残存した未反応の分子を洗浄する洗浄工程を経
る必要がある。この洗浄工程にも、本発明の超音波を用
いると洗浄効率が著しく高められる。なお、洗浄方法と
しては、基材を洗浄液に移して超音波をかける方法、洗
浄液をオ−バ−フロ−させながら超音波をかける方法、
洗浄液を数回取り替える方法などがある。
【0029】本発明で使用できる好ましい化学吸着剤の
一例を下記に挙げる。 CF3 (CH2 2 Si(CH3 2 (CH2 15Si
Cl3 、F(CF2 4 (CH2 2 Si(CH3 2
(CH2 9 SiCl3 、CF3 CH2 O(CH2 15
SiCl3 、CF3 COO(CH2 15SiCl3 、C
3 (CF2 9 (CH2 2 SiCl3 、CF3 (C
2 7 (CH2 2 SiCl3 、CF3 (CF2 5
(CF2 2 SiCl3 、CF3 (CF2 7 (C
2 2 SiCl3 、CF3 CH2 O(CH2 15Si
Cl3
【0030】また本発明方法において、内層膜を設ける
場合は、クロロシリル基を含む吸着物質として、SiC
4 、SiHCl3 、SiH2 Cl2 、又はCl−(S
iCl2 O)n −SiCl3 (但しnは整数)等を使用
できる。この内層膜用吸着物質を用いた場合の反応プロ
セスも、前記した本発明方法を採用できる。
【0031】本発明は下記の用途などに広く適用でき
る。 [a] 基材が金属、ガラス、セラミックスまたはプラスチ
ック、木材、石材、繊維、布、皮革、毛皮等からなる材
料に適用できる。表面は塗料などで塗装されていても良
い。 [b] 刃物の例:包丁、鋏、ナイフ、カッター、彫刻刀、
剃刀、バリカン、鋸、カンナ、ノミ、錐、千枚通し、バ
イト、ドリルの刃、ミキサーの刃、ジュ−サ−の刃、製
粉機の刃、芝刈り機の刃、パンチ、押切り、ホッチキス
の刃、缶切りの刃、または手術用メス等。 [c] 針の例:鍼術用の針、縫い針、ミシン針、畳針、注
射針、手術用針、安全ピン等。 [d] 窯業製品の例:陶磁器製、ガラス製、セラミックス
製またはほうろうを含む製品等。例えば衛生陶磁器(例
えば便器、洗面器、風呂等)、食器(例えば、茶碗、
皿、どんぶり、湯呑、コップ、瓶、コーヒー沸かし容
器、鍋、すり鉢、カップ等)、花器(水盤、植木鉢、一
輪差し等)、水槽(養殖用水槽、鑑賞用水槽等)、化学
実験器具(ビーカー、反応容器、試験管、フラスコ、シ
ャーレ、冷却管、撹拌棒、スターラー、乳鉢、バット、
注射器)、瓦、タイル、ほうろう製食器、ほうろう製洗
面器、ほうろう製鍋。 [e] 鏡の例:手鏡、姿見鏡、浴室用鏡、洗面所用鏡、自
動車用鏡(バックミラー、サイドミラー)、ハーフミラ
ー、ショーウィンドー用鏡、デパートの商品売り場の鏡
等。 [f] 成形用部材の例:プレス成形用金型、注型成形用金
型、射出成形用金型、トランスファー成形用金型、真空
成形用金型、吹き込み成形用金型、押し出し成形用ダ
イ、インフレーション成形用口金、繊維紡糸用口金、カ
レンダー加工用ロールなど。 [g] 装飾品の例:時計、宝石、真珠、サファイア、ルビ
ー、エメラルド、ガーネット、キャッツアイ、ダイヤモ
ンド、トパーズ、ブラッドストーン、アクアマリン、サ
ードニックス、トルコ石、瑪瑙、大理石、アメジスト、
カメオ、オパール、水晶、ガラス、指輪、腕輪、ブロー
チ、ネクタイピン、イヤリング、ネックレス、貴金属装
飾製品、白金、金、銀、銅、アルミ、チタン、錫あるい
はそれらの合金やステンレス製、メガネフレーム等。 [h] 食品成形用型の例:ケーキ焼成用型、クッキー焼成
用型、パン焼成用型、チョコレート成形用型、ゼリー成
形用型、アイスクリーム成形用型、オーブン皿、製氷皿
等。 [i] 調理器具の例:鍋、釜、やかん、ポット、フライパ
ン、ホットプレート、焼き物調理用網、油切り、タコ焼
きプレート等。 [j] 紙の例:グラビア紙、撥水撥油紙、ポスター紙、高
級パンフレット紙等。 [k] 樹脂の例:ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリ
オレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポ
リアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステ
ル、アラミド、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエー
テルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、フェノール
樹脂、フラン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリウ
レタン、ケイ素樹脂、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ア
クリル酸エステル樹脂、ポリアセタール、ポリフェンレ
ンオキサイド等。 [l] 家庭電化製品の例:テレビジョン、ラジオ、テープ
レコーダー、オーディオ、CD、冷凍関係機器の冷蔵
庫、冷凍庫、エアコン、ジューサー、ミキサー、扇風機
の羽根、照明器具、文字盤、パーマ用ドライヤー等。 [m] スポーツ用品の例:スキー、釣竿、棒高跳び用のポ
ール、ボート、ヨット、ジェットスキー、サーフボー
ド、ゴルフボール、ボーリングのボール、釣糸、魚網、
釣り浮き等。 [n] 乗り物部品に適用する例: (1) ABS樹脂:ランプカバー、インストルメントパネ
ル、内装部品、オートバイのプロテクター (2) セルロースプラスチック:自動車のマーク、ハンド
ル (3) FRP(繊維強化樹脂):外板バンパー、エンジン
カバー (4) フェノール樹脂:ブレーキ (5) ポリアセタール:ワイパーギヤ、ガスバルブ、キャ
ブレター部品 (6) ポリアミド:ラジエータファン (7) ポリアリレート:方向指示レンズ、計器板レンズ、
リレーハウジング (8) ポリブチレンテレフタレート:リヤエンド、フロン
トフェンダ (9) ポリアミノビスマレイミド:エンジン部品、ギヤボ
ックス、ホイール、サスペンジョンドライブシステム (10)メタクリル樹脂はランプカバーレンズ、計器板とカ
バー、センターマーク (11)ポリプロピレンはバンパー (12)ポリフェニレンオキシド:ラジエーターグリル、ホ
イールキャップ (13)ポリウレタン:バンパー、フェンダー、インストル
メントパネル、ファン (14)不飽和ポリエステル樹脂:ボディ、燃料タンク、ヒ
ーターハウジング、計器板 [o] 事務用品の例:万年筆、ボールペン、シャ−プペン
シル、筆入れ、バインダー、机、椅子、本棚、ラック、
電話台、物差し、製図用具等。 [p] 建材の例:屋根材、外壁材、内装材。屋根材として
窯瓦、スレート瓦、トタン(亜鉛メッキ鉄板)など。外
壁材としては木材(加工木材を含む)、モルタル、コン
クリート、窯業系サイジング、金属系サイジング、レン
ガ、石材、プラスチック材料、アルミ等の金属材料な
ど。内装材としては木材(加工木材を含む)、アルミ等
の金属材料、プラスチック材料、紙、繊維など。 [q] 石材の例:花コウ岩、大理石、みかげ石等。たとえ
ば建築物、建築材、芸術品、置物、風呂、墓石、記念
碑、門柱、石垣、歩道の敷石など。 [r] 楽器および音響機器の例:打楽器、弦楽器、鍵盤楽
器、木管楽器、金管楽器などの楽器、およびマイクロホ
ン、スピーカなどの音響機器等。具体的には、ドラム、
シンバル、バイオリン、チェロ、ギター、琴、ピアノ、
フルート、クラリネット、尺八、ホルンなどの打楽器、
弦楽器、鍵盤楽器、木管楽器、金管楽器などの楽器、お
よびマイクロホン、スピーカ、イヤホーンなどの音響機
器。 [s] その他;魔法瓶、真空系機器電力送電用碍子または
スパークプラグ等の撥水撥油防汚効果の高い高耐電圧性
絶縁碍子などである。
【0032】以下具体的実施例を挙げて、本発明をより
詳細に説明する。 実施例1 本発明の単分子膜の製造方法を、図1から図3を用いて
順に説明する。
【0033】まず、図2に示すように、ドライエアー中
で市販されている超音波洗浄器3に有機溶媒2と化学吸
着剤1とを加え、化学吸着剤1を非水系有機溶媒2中に
充分に拡散させておく。ここで用いた有機溶媒2は、ノ
ルマルヘキサデカン80重量%、クロロホルム12重量
%、四塩化炭素8重量%の混合溶媒(非水溶媒)であ
る。また、化学吸着剤1としては、ノナデシルトリクロ
ロシラン[C1939SiCl3 ]を用いて、10mmol/l
の濃度になるように溶かした。
【0034】次に、図3に示すように、液温を30℃と
し、この溶液にガラス基材4を浸漬し、浸漬と同時に超
音波をかけた。超音波の周波数は45kHz 、高周波出力
は60W に設定した。また、ガラス基材4は、表面に水
酸基が充分露出しているを用いた。図3に示したよう
に、化学吸着剤1が基材4上の水酸基に優先的に吸着し
た単分子吸着分子5が基材4上に存在するものと想定さ
れる。この優先的に吸着した単分子吸着分子5が、未反
応の化学吸着剤1と基材上の水酸基との反応を拒む障壁
となり、高密度に化学吸着した単分子膜形成には静置ま
たは機械的撹拌程度では、長時間を要していた。しかし
本実施例の製造方法では、例えば図3の状態で超音波を
加えるため、優先的に吸着した単分子吸着分子5に振動
を与え、基材上の水酸基をより吸着し易くするともに、
未吸着の化学吸着剤1の拡散速度も向上し、化学吸着単
分子膜の高密度化速度を促進できた。
【0035】こうして基材表面の水酸基と化学吸着剤1
との間に脱塩酸反応が進み、やがて図1に示すように基
材4上に未反応の水酸基がなくなり単分子膜吸着工程は
終了し、高密度化した化学吸着単分子膜が短時間で形成
できた。この反応式を下記式(化1)に示す。
【0036】
【化1】
【0037】また、作製した単分子膜の積層膜を完全に
化学吸着単分子膜だけにするため、本発明の方法で化学
吸着剤を吸着させた基材を、ドライエアー中で洗浄液で
あるクロロホルム中(非水溶液)に移し、本発明の超音
波を加えた洗浄工程と従来の撹拌のみの洗浄工程の2種
類の洗浄工程を行い比較した。その結果洗浄工程に超音
波を使用した場合、従来の撹拌洗浄の場合の約1/6の
洗浄時間5分で充分な洗浄が行え、洗浄速度も6倍以上
向上した。
【0038】次に、ガラス基材処理品の表面に水分を付
与するか空気中の水分と接触させると、下記式(化2)
に示す結合が形成できた。
【0039】
【化2】
【0040】次にシラノール基(−SiOH)が隣のシ
ラノール基(−SiOH)と脱水縮合して、下記式(化
3)に示す結合が形成できた。
【0041】
【化3】
【0042】このようにして得られた形成した単分子吸
着膜の厚さは約2.1nmであり、水に対する表面の濡
れ角度を測定すると、濡れ角度は約120度であった。
また撥水性、撥油性、防曇性、防汚性、耐久性等に優れ
た単分子吸着膜であった。
【0043】なお比較のため、超音波処理を行なわず、
非水溶媒中にガラス基材を静置した以外は上記実施例1
と同様にして、化学吸着単分子膜を作製した。このよう
にして得られた2種の化学吸着単分子膜の吸着分子の基
材への吸着割合をFTIRで評価し、吸着時間と吸着量
の関係を図4に示した。なお、赤外吸収スペクトルの分
析結果より、メチレン基(−CH2 −)の対称伸縮振
動、及び逆対称伸縮振動のピ−ク面積を測定し、相対吸
収強度として示した。この図4より、○で記載した本発
明の超音波を使用した場合は、●で記載した超音波を使
用しなかった従来の場合に比べて、吸着時間は約1/1
0以下即ち吸着速度は10倍以上であり、しかも両者の
差は飽和吸着領域に近づくほど大きくなることが確認さ
れた。さらに、飽和吸着量自体も、本発明の方法では約
1.2倍に増大していることから、高密度化が図られる
ことが分かる。
【0044】上記において、非水溶媒による洗浄工程を
省略し、吸着した前駆体膜を水と反応させた後空気中で
乾燥させると、基材表面には吸着ポリマー膜を形成する
ことができた。この吸着ポリマー膜も十分な密着強度を
有しており、実質的にピンホールフリーで極薄で、透明
性、防汚性にも優れていた。
【0045】実施例2 また、吸着剤としてオクタデシルトリクロロスズ、溶媒
としてビシクロヘキシル80重量%、クロロホルム12
重量%、四塩化炭素8重量%の混合溶媒を使用し、実施
例1と同条件でアルミニウム基材に吸着させた。実施例
1と同様本発明の超音波を加えた単分子膜形成工程と、
静置するだけの従来の単分子膜形成工程とを比較した結
果、本発明の方法の吸着時間は従来の方法の約1/5で
飽和に達した。
【0046】なお、上記実施例は何れも超音波の周波数
は45kHz で高周波出力を60W に設定して行ったが、
本発明の効果はこの超音波条件に限定されるものではな
く、市販されている超音波洗浄器の超音波を発生させる
条件では、効果の大小は若干あるものの従来技術に比べ
格段に吸着または洗浄時間が短縮され、また吸着密度も
向上した。さらに超音波洗浄器の超音波条件以上であっ
ても、基材が割れる等の激烈な条件でなければ同様の効
果があるものと想定される。また超音波洗浄器の超音波
条件以下であっても、分子に振動を与えてさえいれば効
果はあるものと考えられる。
【0047】上記において、非水溶媒による洗浄工程を
省略し、吸着した前駆体膜を水と反応させた後空気中で
乾燥させると、基材表面には吸着ポリマー膜を形成する
ことができた。この吸着ポリマー膜も十分な密着強度を
有しており、実質的にピンホールフリーで極薄で、透明
性、防汚性にも優れていた。
【0048】実施例3 化学吸着剤であるCF3 (CF2 7 (CH2 2 Si
Cl3 を1×10-2Mの濃度でフレオン113からなる
溶媒に溶解して吸着調整液とした。この吸着調整液に、
ナイロン−6樹脂成形物からなる基材を浸漬し、超音波
をかけた。超音波の周波数は45kHz 、高周波出力は6
0W に設定した。
【0049】ナイロン−6樹脂成形物の表面にはイミノ
基(−NH)が存在しているため、フッ素を含むクロロ
シラン系化学吸着剤のクロロシリル基(−SiCl)と
イミノ基(−NH)とが反応して、脱水塩化水素反応に
より表面に下記式(化4)に示す結合が形成できた。
【0050】
【化4】
【0051】次に、ナイロン−6樹脂成形物の表面に付
着した未反応化学吸着剤をフレオン113溶液で洗浄除
去した。この時も前記と同様の超音波をかけた。超音波
の周波数は45kHz 、高周波出力は60W に設定した。
次にナイロン−6樹脂成形物処理品の表面に水分を付与
するか空気中の水分と接触させると、下記式(化5)に
示す結合が形成できた。
【0052】
【化5】
【0053】次にシラノール基(−SiOH)が隣のシ
ラノール基(−SiOH)と脱水縮合して、下記式(化
6)に示す結合が形成できた。
【0054】
【化6】
【0055】このようにして得られた形成した単分子吸
着膜の厚さは約2.1nmであり、水に対する表面の濡
れ角度を測定すると、濡れ角度は約120度であった。
また撥水性、撥油性、防曇性、防汚性、耐久性等に優れ
た単分子吸着膜であった。
【0056】上記において、非水溶媒による洗浄工程を
省略し、吸着した前駆体膜を水と反応させた後空気中で
乾燥させると、基材表面には吸着ポリマー膜を形成する
ことができた。この吸着ポリマー膜も十分な密着強度を
有しており、実質的にピンホールフリーで極薄で、透明
性、防汚性にも優れていた。
【0057】
【発明の効果】以上のように本発明は、単分子膜形成工
程時に超音波を使用することにより、従来の単分子膜形
成工程に比べ化学吸着膜の吸着時間を大幅に短縮するこ
とができ、工業的に大量生産する場合にも有効である。
また、本発明の方法によれば従来の化学吸着単分子膜に
比べて高密度に化学吸着剤を吸着できるため、ピンホ−
ルのない膜を形成することができ、膜の物理的、化学的
性質をより安定化させ、向上させることができる。さら
に、吸着分子の配向性なども向上させることもでき、様
々な応用分野に適用できる。また本発明は単分子吸着膜
の製造方法にもポリマー吸着膜の製造方法にも使用する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化学吸着単分子膜の製造方法の一実施
例の吸着工程の終了時の模式図
【図2】本発明の化学吸着単分子膜の製造方法の一実施
例における吸着溶液の模式図
【図3】本発明の化学吸着単分子膜の製造方法の一実施
例における吸着工程の模式図
【図4】本発明の一実施例における吸着時間と吸着量の
関係を示す図
【符号の説明】
1 化学吸着剤 2 有機溶媒 3 超音波洗浄器 4 基材 5 単分子吸着分子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 曽我 眞守 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に活性水素基を有するか、または活
    性水素基を付与した基材表面に化学吸着単分子膜を形成
    する方法において、少なくとも下記[A]〜[C]の工
    程からなることを特徴とする化学吸着膜の製造方法。 [A] まず前記基材表面の活性水素基と反応する官能
    基を末端に有する化学吸着剤を、非水系有機溶媒に溶解
    して吸着液とする工程。 [B] 次いで、前記吸着液に超音波を加えた状態で前
    記基材を前記吸着液に浸漬し、前記基材表面に前記化学
    吸着剤分子を吸着させる工程。 [C] その後、非水系有機溶媒で基材表面の未反応化
    学吸着剤を洗浄・除去する工程。
  2. 【請求項2】 未反応化学吸着剤の洗浄・除去工程(C
    工程)において、有機溶媒に超音波を付与する請求項1
    記載の化学吸着膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 超音波処理が、発振周波数領域1kHz
    〜1000kHzの範囲である請求項1または2に記載
    の化学吸着膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 化学吸着剤の分子末端が、ハロゲン化シ
    リル基(−SiX)、ハロゲン化チタニル基(−Ti
    X)、ハロゲン化スタンニル(stannyl)基(−Sn
    X)、低級アルコキシシリル基(−SiOR)、低級ア
    ルコキシチタニル基(−TiOR)、低級アルコキシス
    タンニル(stannyl) 基(−SnOR)から選ばれる少な
    くとも一つの基(ただしXはCl、Br、F、Iから選
    ばれる少なくとも一つの元素を示し、RはC1 〜C6
    低級アルキル基を示す。)である請求項1に記載の化学
    吸着膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 化学吸着剤が、一方の分子末端がクロロ
    シリル基(−SiCl)であり、他のいずれかの部分に
    フッ素基を有している構造の化合物である請求項1に記
    載の化学吸着膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 非水系有機溶媒中の化学吸着剤の濃度が
    10-4mol/l 〜10-1mol/l の範囲である請求項1に記
    載の化学吸着膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 基材がガラス、金属、セラミックス、プ
    ラスチック、半導体から選ばれる請求項1に記載の化学
    吸着膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 基材として、表面を酸化処理したプラス
    チックを用いる請求項1に記載の化学吸着膜の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 表面に活性水素基を有するか、または活
    性水素基を付与した基材表面に化学吸着ポリマー膜を形
    成する方法において、少なくとも下記[a]〜[d]の
    工程からなることを特徴とする化学吸着膜の製造方法。 [a] まず前記基材表面の活性水素基と反応する官能
    基を末端に有する化学吸着剤を、非水系有機溶媒に溶解
    して吸着液とする工程。 [b] 次いで、前記吸着液に超音波を加えた状態で前
    記基材を前記吸着液に浸漬し、前記基材表面に前記化学
    吸着剤分子を吸着させる工程。 [c] その後、前記化学吸着剤分子を水分と反応させ
    て基材表面にシラノール基を含む化学吸着前駆体膜を形
    成する工程。 [d] 前記化学吸着前駆体膜を乾燥する工程。
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