JPH05310780A - 抗体の分離精製方法 - Google Patents

抗体の分離精製方法

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JPH05310780A
JPH05310780A JP4135840A JP13584092A JPH05310780A JP H05310780 A JPH05310780 A JP H05310780A JP 4135840 A JP4135840 A JP 4135840A JP 13584092 A JP13584092 A JP 13584092A JP H05310780 A JPH05310780 A JP H05310780A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】簡便な操作で、収得された抗体の活性を保持さ
せて、抗体含有液から高純度の抗体を効率良く収得する
ことができる抗体の分離精製方法を提供する。 【構成】アニオン交換基とカチオン交換基を併有するイ
オン交換体を充填したカラムに抗体含有液を通液するこ
とにより、抗体含有流出分を収得した後、次いでヒドロ
キシアパタイトを充填したカラムに前記抗体含有流出分
を通液する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、抗体含有液から、簡便
な操作で高純度な抗体を収得することができる、新規な
分離精製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】抗体は、免疫反応を司る蛋白質成分であ
るが、近年、医薬品、診断薬或いは対応する抗原蛋白質
の分離精製材料等の用途において、その利用価値が高ま
っている。抗体は免疫した動物の血液或いは抗体産生能
を保有した細胞の細胞培養液又は動物の腹水培養液から
収得される。但し、それらの抗体を含有する血液や培養
液は、抗体以外の蛋白質、又は細胞培養に用いた原料液
に由来する複雑な夾雑成分を包含し、それらの不純物成
分から抗体を分離精製するには、煩雑で長時間を要する
操作が通常必要である。即ち、硫酸アンモニウム、硫酸
ナトリウム或いはポリエチレングリコール等を多量に添
加して、それらの濃厚溶液から沈殿を採取し、次いでゲ
ル濾過クロマトグラフィー、更にDEAEセルロース等
の陰イオン交換樹脂クロマトグラフィーを経た後、プロ
テインA固定化カラム又は抗原固定化カラムクロマトグ
ラフィーで処理する手法が常用されて来た。このよう
に、従来の方法では多数の工程を経るため、多くの材料
と煩瑣な操作が必要であり、又プロテインA固定化カラ
ム及び抗原固定化カラムを用いる方法は、材料が高価で
あると共に、吸着された抗体を脱離する際に、抗体の生
物活性が喪失する危惧があるという問題がある。
【0003】簡便な操作により抗体含有液から抗体を分
離精製する方法として、ヒドロキシアパタイトを充填材
として用いるクロマトグラフィーが知られている。即
ち、スタンカーらはヒドロキシアパタイト凝集体を充填
剤としたクロマトグラフィーでモノクローナル抗体を高
純度に分離し〔ジャーナル オブ イムノロジカル メ
ソッヅ、76巻、157−169ページ、(1985
年)〕、又本発明者らは、蛋白質、核酸等の生体高分子
物質の分離精製に有効な分離用ヒドロキシアパタイトを
先に提案した(特開昭62−176906号、米国特許
第5,073,357号)。しかし、ヒドロキシアパタ
イト単独では、吸着容量が一般に小さいために、血清或
いはハイブリドーマ培養液や腹水等の夾雑成分が多い抗
体含有液から抗体を分離精製しようとすると、多量のヒ
ドロキシアパタイトが必要となり、殊に工業的規模では
このことは大きな障害となる可能性がある。
【0004】又、簡便な操作により抗体含有液から抗体
を分離精製する他の方法として、弱アニオン交換基と弱
カチオン交換基が結合した高分子を有するイオン交換体
を充填材として用いるクロマトグラフィーが知られてい
る。上記イオン交換体は、抗体蛋白質を主として吸着
し、他の蛋白質の大半を素通りさせる特性を有し、容易
に抗体蛋白質を濃縮分離できる特性を有しているが、こ
れを単独で用いて抗体含有液から抗体を分離した場合、
未だ夾雑成分がかなり残存しており、高純度の抗体が要
求される分野においては、更に抗体の純度を高めること
が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、簡便な操作
で、収得された抗体の活性を保持させて、抗体含有液か
ら高純度の抗体を効率良く収得することができる抗体の
分離精製方法を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため鋭意検討した結果、まずアニオン交換基
とカチオン交換基を併有するイオン交換体(以下ACイ
オン交換体ということがある)を充填材として用いてク
ロマトグラフィーを行い、その結果得られる抗体含有流
出分について、ヒドロキシアパタイトを吸着材として用
いるクロマトグラフィーを行なうことにより、極めて高
純度の抗体を得ることができることを見出し、本発明を
完成するに至った。即ち、本発明は液体クロマトグラフ
ィー法により抗体含有液中から抗体を分離精製する方法
において、ACイオン交換体を充填したカラムに抗体含
有液を通液することにより、抗体含有流出分を収得した
後、次いでヒドロキシアパタイトを充填したカラムに前
記抗体含有流出分を通液することを特徴とする抗体の分
離精製方法である。以下、本発明を詳細に説明する。本
発明の分離精製方法は、液体クロマトグラフィー法によ
り抗体含有液中から抗体を分離するものであり、具体的
には例えば以下の操作により分離することができる。即
ち、固定相充填剤をカラムに詰め、抗体含有液をカラム
に注入することにより、固定相充填剤に抗体を吸着させ
る。その後、適当な移動相液を供給することにより、固
定相充填剤に吸着させた抗体を、固定相への分配の小さ
いものから順次溶出させる。分配が大きい抗体を分離す
る場合は、移動相液の組成を変化させて固定相への分配
を小さくして溶出させることが好ましい。本発明の分離
方法は、常圧下で充分に実施することができるが、必要
に応じて加圧下で実施することもできる。本発明はAC
イオン交換体を充填材とする液体クロマトグラフィーを
第1工程とするものである。本発明における抗体含有液
は、含有される抗体の種類には全く制限がなく、Ig
G、IgM、IgA、IgE及びIgDに分類されるい
ずれの抗体でもよく、具体的には抗体を含む血清、マウ
ス腹水上清或いはin vitro細胞培養液の上清等
がある。本発明の第1工程において使用するACイオン
交換体は、抗体蛋白質を選択的に吸着する性質を有し、
他の蛋白質の大半を素通りさせる特性を有するものであ
り、アニオン交換基とカチオン交換基を併有するイオン
交換体である。アニオン交換基としては弱アニオン交換
基が好ましく、カチオン交換基としては弱カチオン交換
基が好ましく、具体的には弱アニオン交換基としてはア
ミン系のイオン交換基等があり、弱カチオン交換基とし
てはカルボン酸等のイオン交換基がある。本発明におけ
るACイオン交換体として、弱カチオン交換基と弱カチ
オン交換基が結合した高分子を有するイオン交換体が好
ましく、ACイオン交換体の好ましい具体例として、例
えば米国特許第5,092,992号、米国特許第5,
087,359号、米国特許第5,085,779号、
米国特許第5,087,359号、米国特許第5,06
6,395号、米国特許第4,721,573号、米国
特許第4,606,825号、米国特許第4,604,
235号及び米国特許第4,469,630号等に記載
されたイオン交換体がある。ACイオン交換体の市販品
として、ベーカーボンドABx(米国J.T.ベーカー
社製商品名)等がある。ACイオン交換体に抗体含有液
を通液する前に、予めACイオン交換体塔を平衡化する
ことが好ましい。平衡化を行うには、例えば25mMの
2−モルホリノエタンスルホン酸(pH5.6 )等の水溶
液を使用することができる。
【0007】従来の抗体精製法においては、クロマトグ
ラフィーによる処理に先立って抗体含有液に硫酸アンモ
ニウム或いはポリエチレングリコール等を添加して、所
謂塩析によって抗体を含む沈殿を分取して、これを溶
解、次いで透析脱塩した上で供給するのが一般である。
これは、血清等の抗体含有液には抗体以外の蛋白質など
夾雑成分が多く含まれ、これをそのまま吸着剤に吸着さ
せると、高価な吸着剤を乱費することとなり、これを避
けるためである。本発明においては、この方法を採用す
ることに何ら支障はないが、これらの工程は本質的に無
用であり、本発明の第1工程においては、塩析工程を省
略して、抗体含有液を直ちにACイオン交換体塔に供給
することができる。塩析工程を省略することは、特にi
n vitro細胞培養液を原料とする場合に有利であ
る。即ち、in vitro細胞培養液は、少なくとも
現時点においては産生抗体濃度が極めて低く、多くて
0.1mg/mlであり、通例はその1/10〜1/1
00であり、容量が立方メートル単位の工業的規模の場
合、塩析に要する塩の使用量は著しく多く、更に塩濃度
の高い有機性廃液の処理が難問として加わり、塩析工程
を無用とすることには大きな意義がある。
【0008】抗体含有液を通液する条件は、液体クロマ
トグラフィーとして通常採用される条件をいずれも採用
できるが、好ましくは、水で希釈する等により、抗体含
有液の含有塩類濃度を略100mM以下として、且つp
Hを4.5〜6.0の範囲に調整して、ACイオン交換
体を充填した塔(以下ACイオン交換体塔と略す)に通
液するのが良い。
【0009】次に、ACイオン交換体塔の展開溶離操作
に移る。このときの展開溶離操作は液体クロマトグラフ
ィー法で通常採用されている条件に準じて行うことがで
き、まず、稀溶離液を通液することにより、抗体以外の
蛋白質を主に含有する成分を流出させる。好ましい稀溶
離液としては、燐酸、酢酸、モルホリノエタンスルホン
酸(MES)及びモルホリノヒドロキシプロパンスルホ
ン酸(MOPSO)等のカリウム、ナトリウム、アンモ
ニウム塩の水溶液があり、これらの中でもMESは特に
好ましいものである。好ましい稀溶離液のpH及び濃度
は、各々pHが4.5〜6.0であり、濃度が10〜1
00mMであり、より好ましくはpHが4.8〜5.8
であり、濃度が10〜50mMである。
【0010】次に、グラジエント方式或いはステップワ
イズ方式により濃溶離液でACイオン交換体塔を展開す
る。濃溶離液としては、上記稀溶離液の塩類の他に、硫
酸、塩酸等のカリウム、ナトリウム、アンモニウム塩の
水溶液を使用することができ、好ましいpHは5.0〜
8.0であり、濃度の上限を必要に応じて1Mにするこ
ともできる。ACイオン交換体塔の流出液については、
例えば波長280nmにおける紫外線吸収により、流出
液における蛋白質濃度の変化を観察して、抗体流出分
(以下第1工程流出分という)を分取して、これを第2
工程においてヒドロキシアパタイトを充填した塔(以下
ヒドロキシアパタイト塔という)に載荷する。
【0011】本発明はヒドロキシアパタイトを充填材と
する液体クロマトグラフィーを第2工程とするものであ
る。第1工程流出分をそのままヒドロキシアパタイト塔
に載荷することも可能であるが、好ましくはpHを4.
5〜8.0、より好ましくは5.2〜7.0に調整した
上で載荷する。第2工程の展開は稀溶離液をもって始め
られ、濃溶離液をもって終わる。このときに使用する稀
溶離液として、第1工程において使用可能な溶離液はい
ずれも使用可能である。
【0012】次いで、グラジエント方式或いはステップ
ワイズ方式により、濃溶離液を通液してヒドロキシアパ
タイト塔を展開する。このときの濃溶離液も第1工程に
おいて使用可能な溶離液はいずれも使用可能である。第
1工程によって夾雑成分を分離して、抗体をかなり濃縮
した流出分を収得することができ、第2工程の展開後に
おいて、第1工程において少量残存した不純分が更に分
離除去され、高度に精製された抗体含有流出分を収得す
ることができる。第2工程の流出液については、第1工
程と同様にして、紫外線吸収を観察して、抗体含有流出
分(以下第2工程流出分と略す)を分取することができ
る。又、第2工程流出分から、適宜脱塩して更に高純度
の抗体標品を収得することができる。
【0013】本発明において、ヒドロキシアパタイトと
して特開昭62−176906号公報又は米国特許第
5,073,357号に記載されたものを使用すること
は、本発明の効果を高度に発揮させる上で有効である。
このヒドロキシアパタイト凝集体は、六角柱状又は針状
のヒドロキシアパタイト単結晶が凝集した平均粒径60
〜100μmの凝集体である。従来のヒドロキシアパタ
イトは板状又は鱗片状をなし、通液性が低い傾向がある
ことは周知であり、分析に用いる程度の流速を得るにも
加圧が必要であり、現にこれが適用されている。しかし
ながら、加圧は特別の装備を必要とし、特に多量の処理
が要請される調製用途には障害となる。殊に、本発明の
第1工程において使用するACイオン交換体は、通常常
圧で高流速をもって抗体含有液を処理できるように、粒
径を適宜選択して用いられていることからして、第2工
程において使用する充填材であるヒドロキシアパタイト
もこれに均衡したものを用いることが望ましく、これに
よって本発明の技術的価値は最も高まるのである。上記
ヒドロキシアパタイト凝集体は、極めて高い通液性を有
し、常圧においても充分に第1工程に対応する流速が確
保され、特に抗体の大量調製に威力を発揮する。
【0014】ヒドロキシアパタイト凝集体は、細孔容積
が1〜5ml/gであることが好ましく、より好ましい細孔
容積は、1.5〜3ml/gである。ここで細孔容積とは、
ヒドロキシアパタイト凝集体に含まれる細孔の全容積の
ことをいい、水銀接触角を130゜とし、表面張力を4
84dyn/cmとする条件下で、水銀圧入法により、測定さ
れる値である。細孔容積が1ml/g未満のものは、十分な
流速が得られ難いほか、目詰まりを起こし易く、又抗体
の吸着量も十分ではない。他方、細孔容積が5ml/gを越
えるものは、凝集体の強度が長時間使用するには充分で
はない。
【0015】また、ヒドロキシアパタイト凝集体の好ま
しい平均粒子径は、60〜100μmであり、ヒドロキ
シアパタイト凝集体のうち、粒径10μm未満の微小凝
集体の割合が1vol%以下であることが好ましい。粒径1
0μm未満の微小凝集体の割合が1vol%を越えると、こ
れらの微小凝集体が細孔に入り込み、目詰まりを起こし
易く、分離性能が低下する原因となり、さらに、カラム
にヒドロキシアパタイト凝集体を充填する際、上澄みに
存在する微粒子をデカンテーションで除去する必要性が
生じることがある。
【0016】ヒドロキシアパタイト凝集体は、例えばモ
ネタイトの六角柱状または針状結晶を合成し、しかる後
にアルカリ添加によりヒドロキシル化して製造すること
が出来るが、1〜5ml/gの好ましい細孔容積を持つヒド
ロキシアパタイト凝集体を得るには、六角柱状または針
状のモネタイト結晶を加熱下アルカリ処理する際に、使
用するアルカリとしてKOH又はLiOHを選択するこ
とが好ましい。
【0017】ヒドロキシアパタイト凝集体の合成例を以
下に示す。 合成例 先ず、針状ヒドロキシアパタイト凝集体を以下のように
して合成した。即ち、攪拌機及び冷却管を取りつけた3
l フラスコに純水1l を仕込み、95℃に加熱した後、
0.5モル/l の塩化カルシウム水溶液と0.5モル/
l のリン酸2ナトリウム水溶液各1l を5時間かけて滴
下し、針状結晶のモネタイトからなる凝集体を得た。引
き続き同温度で、1モル/l の水酸化カリウム水溶液3
00mlを1時間かけて滴下し、針状ヒドロキシアパタイ
ト凝集体を得た。
【0018】上記のようにして得た針状ヒドロキシアパ
タイト凝集体について、以下のようにして細孔容積、粒
度分布及び通液性に関する評価を行った。 (細孔容積)水銀接触角を130゜とし、表面張力を4
84dyn/cmとする条件下で、水銀圧入法により、ヒドロ
キシアパタイト凝集体の細孔容積を測定した。 (粒度分布)堀場製作所製レーザー回折式粒度分布測定
装置LA−500を用いて、粒度分布を測定し、平均粒
径を求めた。 (通液性試験)内径1.25cm、長さ40cmのガラス
製オープンカラムにベッドボリューム15mlとなるよう
にヒドロキシアパタイト凝集体を充填し、さらに10mM
燐酸緩衝液(pH6.8 )を加えて全量が30mlとなるよ
う調製した。前記緩衝液を常圧下で通液し、単位時間当
りの流出量(ml/Hr)を測定した。細孔容積、平均粒
径、通液性試験及び充填率の結果を以下に記す。 細孔容積:1.8ml/g 平均粒径:89μm(10μm以下の割合:0.3%) 充填率 :4.8% 通液性 :240ml
【0019】本発明の抗体分離方法では、第2工程のヒ
ドロキシアパタイト塔の充填率を10%以下にすること
が好ましく、より好ましくは塔の充填率を2〜8%、更
により好ましくは3〜5%にする。充填率が10%を越
えると、常圧下で充分な流速が得られ難い傾向がある。
ここで、充填率(A)は下式で算出される値である。
【0020】充填率は、ヒドロキシアパタイト凝集体の
粒度分布及び細孔容積等により容易に制御することがで
きる。このように低い充填率を有するカラムを調製する
には、前記のヒドロキシアパタイト凝集体を溶媒中に分
散させ、適当な濃度のスラリー状になったものをカラム
に充填すればよい。分散させる溶媒としては、液体クロ
マトグラフィーを行う際に用いる溶液、例えば、5〜1
0mM燐酸緩衝液でよい。
【0021】上記ヒドロキシアパタイト凝集体の市販品
として、ギガパイト(東亞合成化学工業株式会社製商品
名)等がある。
【0022】ヒドロキシアパタイト凝集体を用いた、そ
の他の分離操作については、一般的な液体クロマトグラ
フィー法の操作に従えば良いが、好ましい条件として
は、例えば以下のものがある。流速:一般にカラムの大
きさにより違うが、分析用では0.5〜1ml/min、分取
用では3〜5ml/minが適当であり、例えば内径1.25
cm、長さ40cmのガラス製オープンカラムでは、2〜
3ml/minが適当である。 移動相液の通液量:カラムに充填したヒドロキシアパタ
イト凝集体の約10倍の体積量。 移動相液の組成:燐酸緩衝液、より好ましくは燐酸カリ
ウム緩衝液。 溶出条件:1〜10mMから300mMまでの勾配溶出。 カラム温度:室温。抗体の変質を防止するため、より好
ましくは4℃。 抗体含有液の負荷量:最大吸着量の約10分の1。
【0023】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明する。 実施例1 〔第一工程〕ACイオン交換体としてベーカーボンドA
Bx40μm(米国J.T.ベーカー社製商品名)を用
い、その16mlを内径1.5cmφの管に高さ9cm
充填した。10mM−KH2 PO4 (pH5.5 )を2m
l/minで流して安定させた後、ヒト絨毛性性腺刺激
ホルモンβサブユニット(hCG−β)モノクローナル
抗体(IgG)産生ハイブリドーマを接種増殖したマウ
ス腹水上清をpH5.5として、その20mlを2ml
/minで通液した。次いで、溶離液を稀溶離液である
10mM−KH2 PO4 (pH5.5 )から濃溶離液であ
る500mM−KH2 PO4 (pH5.5 )へ、直線勾配
で50%迄60分で2ml/minで移行した。塔流出
液を紫外線吸収(波長280nm)で追跡した状況を図
1に示す。図1において、横軸は通液時間を示し、又縦
軸は紫外線の吸光度(実線)及び溶離液の濃度勾配(点
線)を示す(以下図2〜図7においてその表記方法は図
1と同じである。)。予備実験により図1の斜線部に抗
体が含まれていることがわかっており、この流出分
(a)を分取して、第2段工程に移行する。なお、流出
分(a)の少量を純度検査用に使用する。図1によれ
ば、流出分(a)以外に多数の紫外線吸収ピークが認め
られ、夾雑成分が分離除去されていることがわかる。
【0024】〔第2工程〕ヒドロキシアパタイトとして
18.5mlのギガパイト(東亞合成化学工業株式会社
製商品名)を内径1.5cmの管に高さ10.5cm充
填した。10mM−KH2 PO4 (pH5.5 )を2ml
/minで流して平衡化し、次いで第1工程の流出分
(a)20mlを2ml/minで通液した後、稀溶離
液10mM−KH2 PO4 (pH5.5 )から濃溶離液5
00mM−KH2 PO4 (pH7.0 )へ、直線勾配で5
0%迄60分で2ml/minで移行した。塔流出液を
紫外線吸収(波長280nm)で追跡した状況を図2に
示す。斜線部が抗体を含み、この流出分を(b)とし
て、流出分(b)を第1工程における流出分(a)と同
様に純度検査に使用する。図2によれば、流出分(b)
以外に若干の紫外線吸収ピークが認められ、流出分
(a)から流出分(b)以外の夾雑成分が分離除去され
ていることがわかる。
【0025】〔純度検査〕図8は1%SDS加12.5
%ポリアクリルアミドゲル電気泳動像を示す写真であ
り、レーンMは分子量マーカー、レーンAは抗体原料
液、レーン1は第1工程で収得した流出分(a)、レー
ン2は第2工程で収得した流出分(b)を示す。又、5
0K付近に現れる蛋白質は、抗体IgGの重鎖、28K
付近に現れる蛋白質は抗体IgGの輕鎖を示す。図8に
示されるとおり、抗体原料より第1工程を経て収得した
流出分(a)は夾雑成分が除去され、第2工程によって
更に精製されていることが明らかである。
【0026】実施例2 〔第1工程〕実施例1と同様に、ベーカーボンドABx
40μmを充填した塔に抗体含有液を供給した。但し、
平衡化用液及び稀溶離液として25mM−〔2−モルホ
リノエタンスルホン酸(pH5.5 )〕を使用し、濃溶離
液として1M−酢酸ナトリウム(pH7.0 )を用いて展
開溶離した。紫外線吸収(波長280nm)による追跡
は図3の通りであり、斜線部を分取し、流出分(c)と
して第2工程の原料液として使用した。
【0027】〔第2工程〕第1工程の流出分(c)を受
け、実施例1の第2工程と同様に操作して図4の斜線部
である流出分(d)を収得した。 〔純度検査〕1%SDS加12.5%ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動像を示す写真であり、レーン3は第1工
程で収得した流出分(c)、レーン4は第2工程で収得
した流出分(d)を示す。図8に示される通り、第1工
程の溶離液の選択によって精製度の向上と共に第2工程
の収得物の一層の高純度化が達成される。
【0028】〔抗体活性の確認〕実施例に用いた抗体の
抗原であるヒト絨毛性性腺刺激ホルモンβサブユニット
に対する酵素標識抗原抗体反応試験(ELISA)を行
った。各試料についての蛋白量の検出限界は、抗体原料
液については0.125mg/mlであり、第1工程を
経た流出分(c)については0.063mg/mlであ
り、第2工程を経た流出分(d)については0.032
mg/mlであった。これより、本発明の方法により収
得される抗体はその活性を傷害するものではないこと、
更にELISA法の精度から定量的ではないが、第1工
程から第2工程へと抗体純度の向上が明確に認められ
る。
【0029】実施例3 第1工程は実施例2と同様にして操作して、第2工程に
おいては稀溶離液として25mM−〔2−モルホリノエ
タンスルホン酸(pH5.5 )〕を使用し、濃溶離液とし
て1M−酢酸ナトリウム(pH7.0 )を用いて展開溶離
した。このときの溶離状況を図5に示した。この図にお
ける斜線部の流出分(e)についての1%SDS加1
2.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動像を図8にお
けるレーン5に示した。レーン5のスペクトルから明ら
かなように流出分(e)おいては全く他の夾雑成分を見
ない極めて高純度に精製されていることが判る。
【0030】実施例4 マウス腎臓基底膜由来モノクローナル抗体IgM含有マ
ウス腹水を抗体含有液として実施例1と同様にして精製
した。第1工程の溶離状況を図6に示す。この図の斜線
部は抗体IgMを含む画分であり、これを分取して流出
分(f)とした。第2工程の溶離状況を図7に示す。斜
線部が抗体IgMを含み、これを分取して流出分(g)
とした。図6において抗体以外の夾雑成分が除去されて
いるのが認められ、図7において更に他の夾雑成分が分
離除去されていることが認められ、抗体の純度を一層高
めることができたことが明らかである。
【0031】
【発明の効果】本発明は、本質的に僅か2工程からな
り、従来法に比較して極めて簡便な工程で、常圧下にお
いても高い流速で抗体を高純度で分離精製することを可
能とするものであり、温和な条件下で且つ僅かな工程で
分離精製することができることから、本発明により、抗
体を高い収率で収得することができ、しかも抗体活性を
保持させることができる。特に、in vitro細胞
培養からの抗体調製で、塩析を省略することは、分離精
製に必要な材料の消費と廃液処理を節減することができ
ることにつながり、今後の工業的規模での発展を促進す
ることが期待される。又、抗体IgMの精製が本発明に
より可能となったことは、従来法による抗体の精製の重
要な手段とされていたプロテインA固定化吸着材がIg
Mに対して非力であったことから、此の分野に新しい有
力な技術を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の第1工程流出液の観測結果を示すク
ロマトグラムである。実線は波長が280nmである紫
外線の吸光度を示し、点線は溶離液の濃度勾配推移を示
す。
【図2】実施例1の第2工程流出液の観測結果を示すク
ロマトグラムであり、実線及び点線は図1と同じ意味で
ある。
【図3】実施例2の第1工程流出液の観測結果を示すク
ロマトグラムであり、実線及び点線は図1と同じ意味で
ある。
【図4】実施例2の第2工程流出液の観測結果を示すク
ロマトグラムであり、実線及び点線は図1と同じ意味で
ある。
【図5】実施例3の第2工程流出液の観測結果を示すク
ロマトグラムであり、実線及び点線は図1と同じ意味で
ある。
【図6】実施例4の第1工程流出液の観測結果を示すク
ロマトグラムであり、実線及び点線は図1と同じ意味で
ある。
【図7】実施例4の第2工程流出液の観測結果を示すク
ロマトグラムであり、実線及び点線は図1と同じ意味で
ある。
【図8】SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動像で
あり、レーンAは実施例1,2及び3において使用した
抗体含有液の像であり、レーン1,2,3,4及び5は
各々流出分(a)、流出分(b)、流出分(c)、流出
分(d)及び流出分(e)の像である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 G01N 33/531 A 8310−2J

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体クロマトグラフィー法により抗体含有
    液中から抗体を分離精製する方法において、アニオン交
    換基とカチオン交換基を併有するイオン交換体を充填し
    たカラムに抗体含有液を通液することにより、抗体含有
    流出分を収得した後、次いでヒドロキシアパタイトを充
    填したカラムに前記抗体含有流出分を通液することを特
    徴とする抗体の分離精製方法。
  2. 【請求項2】ヒドロキシアパタイトとして、六角柱状ま
    たは針状のヒドロキシアパタイトの凝集体であり、細孔
    容積が1〜5ml/gであるヒドロキシアパタイト凝集体を
    用いることを特徴とする請求項1記載の抗体の分離精製
    方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2004087761A1 (ja) * 2003-03-31 2004-10-14 Kirin Beer Kabushiki Kaisha ヒトモノクローナル抗体およびヒトポリクローナル抗体の精製
US7122641B2 (en) 2001-12-21 2006-10-17 Immunex Corporation Methods for purifying protein
JP2011517462A (ja) * 2008-04-08 2011-06-09 バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド 抗体のクロマトグラフィー精製法
CN102485752A (zh) * 2010-12-01 2012-06-06 上海丽珠制药有限公司 人绒毛膜促性腺激素的纯化方法

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