JP6230853B2 - タンパク質の精製方法及び精製装置 - Google Patents

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本発明は、タンパク質の精製方法及び精製装置に関する。
有用物質を生産する上で、夾雑物から目的物質を分離精製する技術は広く使用されており、液体の化合物を加熱し、一度気体にした後に凝縮させる蒸留法、化合物を溶媒に加熱して溶かし、冷却することで行う再結晶法、化合物の溶けた溶液と化合物をあまり溶かさない溶媒(貧溶媒)とを混合することで目的の化合物を沈殿として得る再沈殿法、固体の化合物を一度気体にした後に再び固体にして行う昇華法、シリカ等に対する親和性の差を利用したカラム法等が知られている。
目的物質を劣化させることなく、高純度で精製するには、カラム法が適しており、例えば、医薬品である抗体タンパク質は、カラム法を用いて、夾雑物を多く含む細胞培養液から医薬品を劣化させることなく高純度で分離される。一方、カラム法には、他の分離精製技術と比較して、大容量を一度に精製することが困難であるというデメリットもある。
カラム法としては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられ、抗体医薬品の精製では、粗精製でプロテインAを固定したアフィニティークロマトグラフィーを用い、後工程で、イオン交換クロマトグラフィーを用いる等、複数の精製工程を組み合わせている。
大量の液を分離精製処理する場合、カラムの最大吸着容量が精製工程の律速の原因となる。効率良く分離精製するためには、可能な限りカラムの最大吸着容量まで目的物質を吸着させることが望ましいが、一部の夾雑物もカラムに結合するため、カラムに結合しきれない目的物質の素通りが発生して回収率を低下させる恐れがある。従来の分離精製用カラム設計では、回収率が低下することがないように考慮し、実際の処理量に対してカラムの最大吸着容量に余裕を持たせて安全率を高めに設定する。しかし、安全率を高くとりすぎると、プロテインA等の高価なカラム充填剤を余剰分だけ無駄にしてしまうことになるため、高い回収率を維持したまま無駄なくカラムを使用することが求められる。例えば、培養液中に不純物が大量に含まれる場合、カラムへの負担を低減するために、前処理として不純物を積極的に除去する方法が提案されている。(特許文献1)には、濁質成分を除去するろ過膜を透過させて得られる澄明液を、多孔膜状のアニオン交換膜に通液することにより、不純物が除去された目的タンパク質のろ過液を回収する旨が開示されている。また、(特許文献2)には、抗体(mAb)及び抗体フラグメント(Fab)を含む関連タンパク質を単離する方法であって、これらが正かつ比較的疎水性であり、負荷電ポリマーと反応してポリマー−タンパク質複合体の沈殿を形成するような条件下で実施される方法が記載されている。
特開2012−214408号公報 特表2012−515161号公報
不純物による目的タンパク質の回収率低下を抑制するため、培養液中の不純物を積極的に吸着させて除去する前処理方法がいくつか提案されているが、これらの前処理方法は、プロセス中に新たな工程を増設することを意味しており、クロマトグラフィーの工程を一段階増設することとあまり変わらず、プロセスコストの増大及び増設した工程による目的タンパク質の損失を招く恐れがある。したがって、溶液中に含まれる不純物の競合阻害による目的タンパク質の精製カラム素通り損失を従来に比べて簡便に低減できる方法の開発が求められている。
そこで本発明は、目的タンパク質と夾雑物との競合阻害による目的タンパク質のカラム素通り損失を低減し、高い回収率で目的タンパク質を精製する方法及び装置を提供することを目的とする。
上述の課題は以下に示す方法で解決される。すなわち、回収すべき目的タンパク質と、クロマトグラフィーカラムに吸着する不純物タンパク質とを含む混合溶液から、前記クロマトグラフィーカラムを用いて前記目的タンパク質を精製する方法であって、前記混合溶液中に含まれる目的タンパク質量、不純物タンパク質量及び総タンパク質量の少なくとも2つを測定し、前記目的タンパク質量及び前記不純物タンパク質量の総和が前記クロマトグラフィーカラムの最大吸着容量を超えないように前記クロマトグラフィーカラムに添加する混合溶液量を決定する前記精製方法である。
また、本発明は、回収すべき目的タンパク質と、クロマトグラフィーカラムに吸着する不純物タンパク質とを含む混合溶液から、前記クロマトグラフィーカラムを用いて前記目的タンパク質を精製する方法であって、前記混合溶液中に含まれる目的タンパク質量、不純物タンパク質量及び総タンパク質量の少なくとも2つを測定し、さらに前記目的タンパク質の吸着量が前記不純物タンパク質の阻害により低下する割合を測定し、前記低下する割合に基づき推定される目的タンパク質の吸着量が前記クロマトグラフィーカラムの最大目的タンパク質吸着容量を超えないように前記クロマトグラフィーカラムに添加する混合溶液量を決定する前記精製方法である。
また、本発明のタンパク質の精製装置は、混合溶液に含まれる目的タンパク質、不純物タンパク質及び総タンパク質の少なくとも2つの濃度を測定するための濃度測定部と、濃度を測定した前記混合溶液を添加するクロマトグラフィーカラムと、前記クロマトグラフィーカラムへ添加する量を調節するための流量制御部とを備えている。
本発明の精製方法及び精製装置により、クロマトグラフィーカラムに結合しきれない目的タンパク質の素通り損失を低減し、高い回収率を維持したまま効率良くカラムを使用することができる。
本発明に係るタンパク質の精製方法の一実施形態を示すフローチャートである。 抗体タンパク質のアフィニティークロマトグラフィー精製における、不純物タンパク質/抗体タンパク質存在比に対する抗体タンパク質精製効率の推定値及び実測値を示すグラフである。 本発明に係るタンパク質の精製装置の構成を示す概略図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが可能である。
本発明に係るタンパク質の精製方法は、クロマトグラフィーカラムに吸着させるための目的タンパク質と、クロマトグラフィーカラムに吸着してしまう不純物タンパク質とを含む混合溶液から、クロマトグラフィーカラムを用いて目的タンパク質を精製する方法であり、混合溶液中に含まれる目的タンパク質、不純物タンパク質及び総タンパク質の少なくとも2つの量(濃度)を測定し、目的タンパク質量及び不純物タンパク質量の総和がカラムの最大吸着容量を超えないように、クロマトグラフィーカラムに添加する混合溶液量を決定する精製方法である。これにより、目的タンパク質が不純物タンパク質の競合阻害を受けてカラムに吸着されずに素通りし、廃液として失われることを防ぐことができる。
さらに望ましいのは、目的タンパク質のカラム吸着量がカラムに吸着する不純物タンパク質の阻害により低下する割合を測定しておき、その低下する割合に基づき推定される目的タンパク質の吸着量がカラムの最大目的タンパク質吸着容量を超えないようにカラムに添加する混合溶液量を決定する精製方法である。
さらには、目的タンパク質及び不純物タンパク質それぞれのカラムへの吸着量を、下記に示す方法で推定することにより、目的タンパク質を可能な限りカラムの最大吸着容量まで吸着させるための最適な混合溶液のカラム添加量を決定することができる。
図1に、本発明の精製方法の一実施形態を示す。図1の例では、目的タンパク質と不純物タンパク質とを含む混合溶液から各物質の濃度を測定し、上記いずれかの方法によって目的タンパク質の精製効率を推定する。目的タンパク質の濃度又は不純物タンパク質の濃度のいずれか一方に代えて、混合溶液中の総タンパク質の濃度を測定し、その測定された総タンパク質の濃度に基づいて、目的タンパク質及び不純物タンパク質の濃度を間接的に求めても良い。そして、推定した精製効率が設定した精製効率を上回るように流量を制御して、混合溶液のカラム添加量を決定する。
混合溶液中に含まれる目的タンパク質及び不純物タンパク質のカラムへの吸着量を推定する方法の例として、各タンパク質の、クロマトグラフィーカラム内分子に対する結合定数より求める方法が挙げられる。
一実施形態として、抗体タンパク質及び不純物タンパク質を含む混合溶液から、プロテインAアフィニティーカラムを用いて抗体タンパク質を精製する例について説明する。
単位容量当たりのプロテインAアフィニティーカラム内のプロテインAに結合する抗体タンパク質量を[ProA_IgG]、プロテインAの最大抗体タンパク質結合容量を[ProA]0、プロテインAに対する抗体タンパク質の結合定数をK、プロテインAに対する不純物タンパク質の結合定数をKi、抗体タンパク質及び不純物タンパク質の単位容量当たりのカラム添加量をそれぞれ[IgG]0、[P]0とすると、下記の方程式が成り立つ。
Figure 0006230853
上記方程式を、[ProA_IgG]について解くことにより、アフィニティーカラム内のプロテインAに結合する抗体タンパク質量を推定することができる。アフィニティーカラム内のプロテインAに結合した抗体タンパク質がすべて溶出回収されるものと仮定し、アフィニティークロマトグラフィーによる抗体タンパク質の回収量を推定する。この推定値から、図2に示すような、混合溶液中の不純物タンパク質/抗体タンパク質存在比と、アフィニティークロマトグラフィーによる抗体タンパク質精製効率の相関図を得ることができる。ここで、抗体タンパク質精製効率及びカラム利用率は下記のように定義される。
Figure 0006230853
図2の相関図は、混合溶液中の不純物タンパク質/抗体タンパク質存在比が増加するほど、抗体タンパク質の精製効率が低下することを表している。また、混合溶液中の不純物タンパク質/抗体タンパク質存在比が一定の場合には、カラム利用率を下げるほど抗体タンパク質の精製効率が向上することを表している。つまり、混合溶液中の不純物タンパク質/抗体タンパク質存在比が高い場合には、カラムへの混合溶液の添加量(カラム利用率)を減少させることにより抗体タンパク質の精製効率を高く保つことができる。したがって、測定した混合溶液中の不純物タンパク質/抗体タンパク質存在比に応じて抗体タンパク質の精製効率を予測し、高い精製効率を維持できる最大限の混合溶液のカラム添加量(カラム利用率)を決定することができる。
推定された抗体タンパク質のカラム吸着量から、混合溶液の最適なカラム添加量を決定する方法を下記に示す。
混合溶液中の抗体タンパク質濃度を[IgG]0、混合溶液のカラム添加量を[V]として、プロテインAアフィニティーカラムの容量を[C]とした場合、下記の式が成り立つ範囲で[V]を決定することにより、抗体タンパク質の素通り損失がなく、高い回収率で抗体タンパク質を精製することができる。
Figure 0006230853
本実施形態において、目的タンパク質とは、例えば抗体医薬品が挙げられる。抗体とは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、免疫グロブリン等を含む。また、目的タンパク質は抗体に限らず、血栓溶解剤として利用される組織型プラスミノーゲン活性化因子等のバイオ医薬品や、その他工業的に有用なタンパク質も同様の方法により高回収率で精製することができる。
本実施形態において、不純物タンパク質とは、目的タンパク質以外のタンパク質の中で、目的タンパク質と同じくクロマトグラフィーカラムに結合するタンパク質を指す。クロマトグラフィーカラムへの結合力は目的タンパク質よりも低いものも挙げられるが、カラム内分子への結合定数が、目的タンパク質の結合定数の10−4倍よりも高いことが望ましい。例えば、細胞培養により細胞が分泌するタンパク質、培養細胞を構成するタンパク質、細胞培養用の培地にあらかじめ含まれている血清由来のタンパク質等が挙げられる。
本実施の形態で使用するクロマトグラフィーカラムには、代表的なものとして抗体を特異的に捕捉するプロテインAカラム等のアフィニティークロマトグラフィーカラムがあるが、カラムの種類は限定されるものではなく、アフィニティーカラムの他に、イオン交換カラム、逆相カラム、ゲルろ過カラム等が挙げられ、目的タンパク質を吸着させ、溶液中の雑多な不純物から目的タンパク質を分離溶出させるためのカラムであれば良い。
本実施の形態における装置構成は、例えば遺伝子組み換え細胞にて生産される抗体タンパク質の精製の場合、図3で示されるように、培養タンク100、培養液回収タンク101、抗体タンパク質、不純物タンパク質及び総タンパク質の少なくとも2つの濃度を測定するための濃度測定部102、流量制御部103及びアフィニティークロマトグラフィーカラム104を含む。まず、培養タンク100において細胞培養が終了した培養液を、培養液回収タンク101へ送液する。培養タンク100と培養液回収タンク101の間には、遠心分離機やろ過機器等により細胞や固形物を除去する工程が含まれる場合もある。オンラインでの自動採取又は手作業採取によって培養液回収タンク101から培養液をサンプリングし、濃度測定部102において抗体タンパク質、不純物タンパク質及び総タンパク質の少なくとも2つの濃度を測定する。測定する対象は例えば抗体タンパク質と総タンパク質の濃度でも良いが、アフィニティークロマトグラフィーカラム104へ吸着することがわかっている不純物タンパク質の培養液回収タンク101中における濃度を選択的に測定する方が、抗体タンパク質のカラム吸着量を正確に見積もることができ、培養液のカラム添加量を決定する際の誤差を低減することができるため好ましい。測定により求めた抗体タンパク質及び不純物タンパク質の濃度に基づき、(1)その総和がカラムの最大吸着容量を超えないように、カラムに添加する混合溶液量を決定するか、又は(2)抗体タンパク質のカラム吸着量がカラムに吸着する不純物タンパク質の阻害により低下する割合をあらかじめ実験的に測定しておき、その低下する割合に基づき推定される抗体タンパク質の吸着量がカラムの最大抗体タンパク質吸着容量を超えないようにカラムに添加する混合溶液量を決定する。また、上記の低下する割合は、抗体タンパク質及び不純物タンパク質それぞれのカラム内分子への結合定数から求めることができる。培養タンク100からアフィニティークロマトグラフィーカラム104までの間には、培養液の塩濃度、pH等の液状態を調整する工程が含まれる場合もあり、液状態を調整する方が、抗体タンパク質によるカラム吸着の安定性が向上し、正確にカラム吸着量を見積もることができ、培養液のカラム添加量を決定する際の誤差を低減することができる。決定した混合溶液のカラム添加量に従って、流量制御部103によってアフィニティークロマトグラフィーカラム104への混合溶液の通液量を制御する。本プロセスにより、抗体タンパク質が不純物タンパク質の阻害によりアフィニティークロマトグラフィーカラムへ結合しきれずに素通りし、廃液として損失してしまうことがないように溶液添加量を制御し、高い回収率を維持したまま抗体タンパク質を精製することができる。
混合溶液中の目的タンパク質量、不純物タンパク質量及び総タンパク質量を測定する方法は限定されるものではなく、アフィニティークロマトグラフィーカラムを設置したHPLCを用いて測定する方法、抗体−抗原反応を利用したELISAにより測定する方法、また表面プラズモン共鳴測定装置を利用した方法、Bradford法によりタンパク質を定量する方法等を用いることができる。
精製用クロマトグラフィーカラムの使用態様は特に限定されるものではなく、同一のカラムを用いて、混合溶液の添加(目的タンパク質の吸着)、洗浄、目的タンパク質の溶出を1サイクルとする精製工程を複数回繰り返すことにより大量の混合溶液を処理する場合や、同時に複数のカラムを準備しておき、並列的に大量の混合溶液を処理する方法等が挙げられる。
クロマトグラフィーカラムへ添加する目的タンパク質及び不純物タンパク質を含んだ混合溶液量の調節方法は限定されるものではなく、通液速度を変えずに通液時間で制御する方法、通液時間を変えずに通液速度を制御する方法、通液量は変えずに混合溶液を希釈することにより調節する方法等が挙げられる。
クロマトグラフィーカラムへ添加する目的タンパク質及び不純物タンパク質を含んだ混合溶液量の制御は、プロセスを運転して目的タンパク質を精製する間、常時又は断続的に行うことができる。あるいは、これに限定されず、目的タンパク質の精製に先立って、プロセスの試運転時のみに添加量の制御を行い、その後は試運転時に決定した添加量を一定に保った状態で精製処理を行っても良い。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
(実施例1)
アフィニティークロマトグラフィー精製での不純物タンパク質による抗体タンパク質精製効率への影響
血清培地を用いて得られたCHO細胞培養液を用いて、遠心によって細胞を沈殿させた後除去し、0.45μmの精密ろ過膜を用いて濁質成分を除去した。その後、遠心式ろ過ユニット(分画分子量:MWCO1000)を用いて濃縮し、リン酸バッファー(20mMリン酸、pH7.0)を加えてさらに濃縮し、バッファー交換した。調整したタンパク質溶液は、ウシ血清アルブミンを標準タンパク質としたBradford法により測定し、評価に用いる不純物タンパク質溶液とした。
抗体はヒト免疫グロブリン(化血研)を使用し、上記の不純物タンパク質と混合して試験溶液を調製した。
アフィニティークロマトグラフィーカラムには、バイオモノリスProteinA(アジレント・テクノロジー)を使用した。アフィニティークロマトグラフィーカラムは、結合バッファー(20mMリン酸、pH7.0)により平衡化し、上記試験溶液を添加後、同様の結合バッファーで洗浄し、溶出バッファー(100mMクエン酸、pH3.0)で溶出させ、280nmにおける吸光度を測定した。得られるピーク面積を抗体量と仮定して、以下の式で表される値を抗体タンパク質精製効率とした。
Figure 0006230853
カラム利用率10%、30%、50%、70%のそれぞれの場合について、アフィニティークロマトグラフィーカラムによる精製における不純物タンパク質を増加させた際の精製効率の変化を調べた(図2の実測値)。利用率70%の場合、不純物タンパク質の量が増加するに伴い精製効率は低下し、抗体の3倍量存在下では精製効率は80%まで低下した。それに対して、利用率を50%とした場合、不純物タンパク質が抗体の3倍量存在する場合でも、精製効率は90%であった。さらに、利用率が10%及び30%の場合、不純物タンパク質が抗体の4倍量存在する場合でも、精製効率は90%以上を維持した。以上の結果より、クロマトグラフィー精製時において、カラム利用率が高いほど、不純物タンパク質による抗体タンパク質精製効率への阻害効果が大きくなることが明らかである。また、カラム利用率を下げることにより、抗体の素通り損失が低減し、精製効率が高いまま維持されることが示された。したがって、培養液等の混合溶液中に含まれる抗体タンパク質及び不純物タンパク質の濃度から、アフィニティークロマトグラフィーカラムへの添加量を決定する本発明の制御方法を適用することにより、精製時の不純物タンパク質の影響による抗体タンパク質の素通り損失を低減し、高い回収率のまま抗体タンパク質を精製できることがわかった。
抗体タンパク質の吸着量の推定
培養液中に含まれる抗体タンパク質濃度及び不純物タンパク質濃度から、以下の方法により、抗体タンパク質のアフィニティーカラム結合量を推定し、抗体タンパク質を可能な限りカラムの最大吸着容量まで吸着させる条件(カラム利用率)を決定した。
・競合的結合モデルによる回収率の計算
単位容量当たりのプロテインAアフィニティーカラム内のプロテインAに結合する抗体タンパク質量を[ProA_IgG]とし、プロテインAの最大抗体タンパク質結合量を[ProA]0、分子未吸着のプロテインAを[ProA]f、またプロテインAに競合的に吸着する不純物タンパク質量を[ProA_P]とすると、以下の式が成り立つ。
Figure 0006230853
プロテインAに対する抗体タンパク質の結合定数Kは、以下の式で表される。ここで、[IgG]fは遊離の抗体タンパク質を示す。
Figure 0006230853
プロテインAに対する不純物タンパク質の結合定数Kiは、以下の式で表される。ここで、[P]fは遊離の不純物タンパク質を示す。
Figure 0006230853
また、抗体タンパク質及び不純物タンパク質の単位容量当たりのカラム添加量を、それぞれ[IgG]0、[P]0とすると、以下の式が成り立つ。
Figure 0006230853
上記(6)から(10)より、[ProA_IgG]について整理することにより、下記の三次方程式が得られる。
Figure 0006230853
上記三次方程式を、[ProA_IgG]について解くことにより、アフィニティーカラム内のプロテインAに結合する抗体タンパク質量を推定することができる。
上記計算より、カラム利用率が10、30、50及び70%のときの抗体タンパク質精製効率の推定値を図2に示す。上記方法による精製効率の推定値は上述の実測値と良く一致しており、不純物タンパク質の増加に伴い、競合吸着阻害が原因で抗体タンパク質精製効率が低下している。本計算結果に基づき、適切なカラム利用率を決定することができる。例えば、回収率(精製効率)を90%以上に維持する場合、不純物タンパクと抗体タンパク質の存在比が3であれば、カラム利用率を50%以下にすれば良く、不純物タンパクと抗体タンパク質の存在比が2であれば、カラム利用率を70%以下にすれば良い。
プロテインA(あるいはプロテインG、その改変体も含む)と抗体タンパク質との結合定数は10M〜10Mである。本実施例では、不純物タンパク質の結合定数は、抗体タンパク質の結合定数の10−4倍であり、図2に示すように不純物タンパク質による抗体タンパク質精製効率の低下が見られる。一方、式(1−1)から式(1−5)の計算において、結合定数の比が10−5の場合は不純物タンパク質による抗体タンパク質精製効率の低下は生じなかった(精製効率95%以上)。以上より、不純物タンパク質の結合定数と抗体タンパク質の結合定数の比が10−4倍以上大きいと抗体タンパク質精製効率の低下が生じるため、本発明による精製方法が効果的である。
適切なカラム利用率が決まれば、事前に測定している培養液中の不純物タンパク濃度、目的タンパク質(抗体)濃度、使用しているカラムの最大吸着容量の値より、カラムに流し込む培養液量を決定することができ、送液ポンプを制御して流量を調整し、回収率を低下させることなく抗体タンパク質を精製することができる。
具体的に、推定された抗体タンパク質のカラム吸着量から、混合溶液の最適なカラム添加量を決定する方法を下記に示す。混合溶液中の抗体タンパク質濃度を[IgG]0、混合溶液のカラム添加量を[V]として、プロテインAアフィニティーカラムの容量を[C]とした場合、下記の式が成り立つ範囲で[V]を決定することにより、抗体タンパク質の素通り損失がなく、高い回収率で抗体タンパク質を精製することができる。
Figure 0006230853
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
100 培養タンク
101 培養液回収タンク
102 濃度測定部
103 流量制御部
104 アフィニティークロマトグラフィーカラム

Claims (6)

  1. 回収すべき目的タンパク質と、クロマトグラフィーカラムに吸着する不純物タンパク質とを含む混合溶液から、前記クロマトグラフィーカラムを用いて前記目的タンパク質を精製する方法であって、前記混合溶液中に含まれる目的タンパク質量、不純物タンパク質量及び総タンパク質量の少なくとも2つを測定し、さらに前記目的タンパク質の吸着量が前記不純物タンパク質の阻害により低下する割合を測定し、前記クロマトグラフィーカラムに添加する目的タンパク質量が、前記低下する割合に基づき推定される目的タンパク質の吸着量超えないように前記クロマトグラフィーカラムに添加する混合溶液量を決定する前記精製方法。
  2. 前記目的タンパク質の吸着量が不純物タンパク質の阻害により低下する割合を、前記目的タンパク質及び前記不純物タンパク質それぞれのクロマトグラフィーカラム内の分子への結合定数から求める請求項1に記載のタンパク質の精製方法。
  3. 前記不純物タンパク質の結合定数が、前記目的タンパク質の結合定数の10−4倍より高い請求項2に記載のタンパク質の精製方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の精製方法を行うためのタンパク質の精製装置であって、混合溶液に含まれる目的タンパク質、不純物タンパク質及び総タンパク質の少なくとも2つの濃度を測定するための濃度測定部と、濃度を測定した前記混合溶液を添加するクロマトグラフィーカラムと、前記クロマトグラフィーカラムへ添加する量を調節するための流量制御部とを備えている前記精製装置。
  5. 前記流量制御部による前記クロマトグラフィーカラムへ添加する量の調節が、前記目的タンパク質を精製する間、常時又は断続的に行われる請求項4に記載のタンパク質の精製装置。
  6. 前記流量制御部による前記クロマトグラフィーカラムへ添加する量の調節が、前記目的タンパク質の精製に先立って行われる請求項4に記載のタンパク質の精製装置。
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